彼女は公園

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1:佐那間◆qs:2016/04/03(日) 01:23 ID:baI

彼女は毎夜そこを通る。

そこを通ると公園がある。
街灯纏う舗装道路、黄色い光に包まれ歩く。その左手には迷い子の森林、その右手には彼女の公園。
そこで彼女は立ち止まる。
その公園には何かがある。
緑の芝しかない公園、そこに何かが描かれる。

描かれるが出現する。

2:匿名:2016/04/03(日) 20:49 ID:uc6

彼女も初めは怖かった。
初めは夏の夜だった。

ガコン

と何かが落ちる音でハッとする。
彼女は自販機の前にいた。
ゆるゆると怠そうにしゃがみこむ。自販機にぬめる手を差し込むとそのままジュースの缶を滑らせた。
帰路に着く。
どうにも気分が落ち着かない。
大きめのサンダルが彼女の足を煩わせる。
自宅に向かうと三本の道が現れた。影が揺れる。街灯に目が眩む。意識が飛んでいく。汗が落ちる。固まっていた足がほどける。
再び影が揺れる。

彼女の足は本来無いはずの右の道を指していた。

3:佐那間◆qs:2016/04/04(月) 21:17 ID:2Mw

暗闇が彼女を覆う。

彼女はいつの間にか暑さを忘れただ足を動かすだけの意識になっていた。しばらく街灯のない木々の道が続く。
不意に彼女の足はコンクリートを踏んだ。
顔を上げると、彼女の目は茶色い壁に支配された。煉瓦の塀。彼女は眼球をギョロと右に動かす。煉瓦の塀。
彼女は左に体を翻す。街灯を連れた舗装道路。果ては無さそうに見える。
彼女は微かに頬を緩めながら前に進んだ。ちゃぽんちゃぽんとひっきりなしに缶が鳴る。
いつの間にか右手にあった煉瓦が途切れている。振り替えると煉瓦の壁は随分遠くにある。そのまま上に首を振るとそこには仰々しい館があった。彼女にとってそれは恐ろしいものにも思えたしとてもコミカルなものにも思えた。
彼女が首をゆっくり戻すと視界にちらつく緑に気づいた。芝生。野原。街灯の灯り。公園。
ゆっくり、その中央に目をやる。何もない。暗い緑。さほど広くはない緑。
駆け出して一人遊ぼうかとも考えた。しかし実際に彼女の足が動かされることはなかった。
何かが少しずつ、彼女の目の中央に描かれ出した。徐々に出現する。複数が蠢きながらガリガリと。

彼女の全ては動くことを許されなかった。


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