白桜

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1:市:2016/04/17(日) 21:23 ID:T7w

この物語は、化け物が自分を探す物語です、否。これは主人公がただ振り回される物語です。

2:市:2016/04/17(日) 21:45 ID:T7w

ピピピッッ…ピピピッッ…ピピ…
カーテンの隙間から軽く朝日が入って明るくなったがまだ少し薄暗い朝。うるさく電子音が鳴り響き、私の瞳を開かせる。ああ、今日も私は生きていられたのか。まだ、この世界の物語に捨てられていないのか…。嬉しくもないし悲しくもない。昨日もそうだった。全く同じことを思い、同じ行動パターンをこなし生きていた。今日も。
私の名前は白桜 桃花。読み方は「はくおう とうか」。年齢14歳、中学三年生。誕生日3月21日。
「バッカみたい…。」
口からは何があったわけでもないが声が漏れる。声というよりは愚痴だろう。月曜日で今日は学校だ。しんどいです、だるいです。面倒です。私が、学校に対してバカみたいと思うようになった理由は少し時を遡ること2年前。
「クラス委員を今日は決めたいと思う。もちろん、その他の役員もな。とりあえず希望者はいるかー?」
担任の有田先生の言葉にざわつくクラスメイトたち。一人の女子生徒…確か名前は高橋さん。高橋さんは小さく先生、とは言ったもののしっかりと腕はピンと伸びた挙手をした。
「おっ!希望とは早いじゃな」
「いえ、提案なのですがよろしいでしょうか?」
先生の言葉を押しのけるように高橋さんは続ける。
「ここは無能力の白桜 桃花さんにやってもらった方が良いと思います。」
へ?私!?何で?
「ああ、訳は?」
「はっきり言って彼女はこのクラスでは底辺に位置する人間です。」
「…た、高橋さ…!」
声を思わずかけてしまう。反射的に。クラスで底辺ってことだけで委員長やらせるってあまりにも自己中心的過ぎませんかねえ?


【一旦切ります。】

3:市:2016/04/19(火) 18:33 ID:T7w

「俺もそうした方が良いと思いまーす。」
「私も〜、そんな面倒なことは暇人がやった方が良いと思います。」
「え…」
次々とクラスメイトの賛成の声が上がっていった。やめて、私にできるわけない。
「じゃあ、クラス委員は白桜で。…いいよな?白桜?」
先生は笑顔で私の目を見つめる。でも、それは決して私を安心させるようなものではなかった。先生の瞳はまっすぐ私を見つめられていなかった。でも先生の視線は強く、断る選択肢は私には用意されなかった。
「…はい。」
…そして現在成り行きで生徒会長。生徒会役員たちはおかしな人ばかり。紹介しよう。三年A組副会長の白坂 拓哉くん。いつもその辺のヤンキーと喧嘩をしているそうです。ですが決して先生たちに知らされたことはないとか…。そして書記の三年B組、守屋 美琴と同じく三年B組、守明 亜蓮。二人とも仲良しとは言えない感じで、何とも言えぬ雰囲気。でも二人ともどちらかというとそこまで真面目ではない。そしてこのぐうたら生徒会を支える、もとい、さらにぐうたらにする先生こそ!彼、及川 ケン先生。メガネで、ハゲで、のんびり先生。
「及川先生、仕事して下さい。」
窓辺で優雅にくつろぐ及川先生に声をかける。
「…えー、仕事ぉ〜?なんかあったっけ?」
悪びれる様子もなく及川先生は言う。少しは悪びれろよ。
「…一度先生に目を通してもらわないといけない書類、各クラスからの要望募集箱の中身の整理、及川先生がやるって言ったんですが…。」
「ご、ごめんごめん、忘れてたよ。今からやるから怒るなって。」
「怒ってませんから、さっさと仕事片付けて下さい。」
「す、すみません。」
及川先生は、せっせと書類に目を通し始めた。問題は残り3人。副会長と書記二人。

【一旦切ります。】

4:市:2016/04/20(水) 22:43 ID:T7w

先生は一旦片付いたとして、白坂君と、美琴さん亜蓮。本当に問題児たちだ。学校の生徒の健全さが疑われるのではないのだろうか、亜蓮君は堂々とエロ雑誌らしきものを見てニヤニヤしているし、美琴さんはマスク越しだが少し興奮しているように見える、最近の趣味は二次元の女の子の下着、あるいは水着姿を見ることなんだそう。白坂君は健全…だよね…いや、違う、バットに付着した血を自分に向けられた凶器、まさにこちらを向いているナイフくらい怖い顔だ。…三人ともかわいそうに…いや、四人。先生も含めて。みんな残念な人たちだ。だが、みんな私より上なのだ。断然。勝てるわけがない。私は無能力なのだから。
「亜蓮君、美琴さん!書記の仕事完全にサボってるでしょ!前の会議の事もメモしていないし!」
「うわあああ、ももちゃん怒らないでよぉ〜。」
今更怒ってるって気付いたんですか。バカですか、美琴さんは。
「ももじゃなくてとうかって読みます。仕事して。」
「ねー、俺今ちょっと忙しいんだけど…」
エロ雑誌手にしながら言われても説得力もクソもないです。はい。
「エロ雑誌読むことがそんなに忙しいんですか?というか、もう少し恥というものを知って下さい!」
私はふぅ、ふうといきを荒くしているところに先生は横槍を入れる。
「今日もナイスツッコミっぷりだね!」
そんなツッコミなんてやりたくないです、本当に。親指を立てないで下さい。なおさら悲しくなります。みなさん、恥を知って下さい。…恥という言葉の意味がわかりますか…。
「と、とりあえず赤子ではないんだから、聞く耳を持ち、実行する力をつけてください。」
「はあ〜い。」
と美琴さん。
「自信ないけどわかったよぉ〜。」
と続けて亜蓮君。
「先生は従っとけば一件落着だねえ〜。」
と先生。
…え?白坂君は放置なの?って?あれで正解なんです。人は見た目じゃわからないっていうけれど、あの人は見た目からして、行動や言動からして危険な人。危ない雰囲気がだだ漏れ。白坂君は私の目をまっすぐに見る。獲物を捕らえるかのように。
「…おい、白桜。」
「は、はい!?」
声がひっくり返ってしまった。思わず。唐突に話し出したのは白坂君だった。
「…白桜、俺は叱らねえのか?」
「え、あの、その…。」
言葉に詰まる。白坂君は怒れない。怖かったから。私よりも強い、強過ぎる、そう確信し、理解していたから叱ることができない。白坂君は口を開く。
「…俺はサボっててもいいっていのかよ。守屋たちはダメで俺はいいのか?」
銀色の鉄製の金属のピアスが煌めく。輝く。
「よく、ないです。」
反省します。そのことは私が正しくなかったから。

【一旦切ります。】

5:市:2016/04/21(木) 14:59 ID:T7w

「だったら、見た目がどうのこうのとかで従える人を選んでんじゃねえよ。」
ごもっとも。言動からしてなんて思ってしまうけれど、言っていることはだいたい筋が通っている、それが白坂君なのだ。
「…白坂君はいいの?私みたいな人に従ってて。美琴さんも、亜蓮君も!私は無能力なの!わかっているでしょう!?この学校に二年間いるからわかるでしょう!?知っているんでしょう!?」
口に慌てて手を当てる。口を塞ぐ。美琴さんが、亜蓮君が、白坂君が、みんな驚いた顔をしている。真っ青になる。私の顔は。
「…す、すみません。取り乱しました。し、仕事を続けておいてください。時間になったら寄り道をせずに下校して下さい。私の仕事は終わったので先に帰らせていただきます。さようなら。」
手短に。できるだけ短く、用件だけを伝え、机の上の筆箱を乱暴に自分の鞄に詰め込む。風邪のように私は生徒会室から出た。白桜 桃花、私は最低な人間だ。無能力の癖に、無能力の癖に…最低なのだ。校門から出れば胸元の赤いリボンを解き、シャツのボタンを二つ外す。そして学校前の横断歩道を渡ろうと一歩を踏み出したときだった。人の声が、聞こえたのは。
「白桜ーー!」
「ひっ!」
いきなり肩を掴まれる。
「…はあ、はあ、はあ。」
あのヤンキーの白坂君が息切れをしていた。いつも喧嘩をするのだから、しかも一人で複数人と喧嘩をするのだから体力はついているはずなのに。
「…し、白坂君?」
どうしたの、と声をかける前に白坂君は声を挟んできた。
「馬鹿かお前!」
「え?」
「お前、そんなに死にてえのかよ!?」
「は?」
「お前、引かれるとこだったんだぞ!馬鹿野郎!」
私は自分を引いてしまうところであっただろう赤い車を見る。大型ではないし、学校の前だったとのこともあってスピードもあまりなかったような気がするのだが。
「白坂君、手、離して。痛い。それと落ち着いて。私死んでないから。」

【切ります】

6:市:2016/04/23(土) 00:17 ID:T7w

「…ああ、ごめん。」
いっそ、私なんて助けてくれなければよかったのに。もう死んでいいよって言って欲しい。もう要らないって。君は不良品になったからって。心臓を鋭く閃光が瞬くような一瞬で貫いてぐちゃぐちゃに。
「ねえ、少しだけ…愚痴っていいかな?」
「愚痴…?構わねえけど。」
「私ね、元々は自分で言うのもなんなんだけれど、白坂君に匹敵しちゃうくらいの能力の持ち主だったの。」
そう。でも、もう無い。それは。とうの昔になくして、落として、ぐちゃぐちゃにしてしまった。
「…白坂君の能力は、火力重視の爆発。カッコいいよね。でもそんなの気にもとめてなかった時期があったんだよ、私にも。うーん、全部説明するとね、長くなるんだけど、白坂君の気になりそうなところだけ話すよ。」

七年前
「…こ、こんな能力、信じられない!」
と研究者さん。
「へ?」
間抜けな顔で言葉を返せないのが幼き日の私。
「えーと、桃花ちゃんだっけ?桃花ちゃん、君の能力は、たいして珍しく無い。」
珍しく無いのになんだよ、あのリアクションは。研究者さん、研究のしすぎでひょっとして頭が…
「だが、珍しく無いが、だけど!君は普通の能力者たちの二倍、もしくはもっと上…私たちには計り知れないが、力を引き出せるサブのおまけ付きだ!」
「サブ?」
「君のメインの能力が実験でわかったんだが、メインは磁力、重力といった目に見えない力だ。ここで普通は説明終了。だけど君はサブの能力があった。それが能力の力を普通の二倍かそれ以上出せるという能力だ。」
「にばい?」
「そう、二倍。普通の人がこの消しゴム一個分の力を持っているとしよう、そうしたら君はもう一個の消しゴム分の力が出せるということなんだ。」
「将来が楽しみだね。桃花ちゃん。」
「うん!」



「そ、そんな能力って…。」
白坂君は私から一歩遠ざかる。当然だよ、普通はサブの能力があること自体がおかしいのだから。
「怖がらないでよ。そんな力、もうどこにだってありはしないんだから。」
そう、あの日から、物語の脇役になった。
「私の欠落した部分、わかる?」
「欠落…?」
「そう。私ね、もっと早くに白坂君に会っていたかった。出会いたかったな。」
「前にもあったの、今みたいな事が。でもその時は助けてくれる人なんていなかった。白坂君、私は交通事故にあったんだよ。四年間眠り続けていたの。」
「四年間も…⁉」
「まあね。私まださ、上手く能力を扱えなくってさ。まだ、研究者さんの診断を受けて一週間ほどしか経っていなかった、そんな時にね、交通事故にあって脳に大きくダメージを負ったみたいなの。」
私という人間は、他人事のように自分には関係無いように話す。
「そしてこの中学に来た。記憶とかはあまりなくなってなかったし、余分な予習とか結構していたから受験はそんなに苦難ではなかったの。」
苦難、それはその後だ。無能力、それだけでいじめが続く。能力が全て。使えない奴は切り捨てる。
「白坂君、ごめんね。もう帰らなきゃ。」
ふと目に入った腕時計は短い針が6を指すところだった。
「引き止めて悪かった。女の子をこんな時間まで話しこませちまった。」
「ううん。引き止めたのは私だったから。あ、今の話はみんなには内緒だからね。今日はありがとう。私をたくさん叱ってくれて。目が覚めたよ。色々な意味で。」
私は左右を確認して横断歩道を渡った。
「また、明日な。」
「私がこの世にいれば、また明日。」
軽く手を振った。白坂君に向けて。青い空はずっと向こう側から赤く染まり始めていた。雲もサーモンピンクだったかな、そんな色になっていた。

7:市:2016/04/23(土) 14:32 ID:T7w

夜は深みを増し、そしてまた夜は開けて朝になる。
「…昨日、話しすぎた。」
白坂君に、引かれるのは嫌だった。仲が良いわけでも、腐れ縁というわけでも無いが、あそこまで必死に私を救い出そうとしてくれたのは白坂君が初めてだった。心は感情で満たされていた。嬉し泣きなのか、ただ泣きたいだけなのか、瞳からは涙がこぼれる。
07:13、家のドアを開ける。もちろん蹴り飛ばして開けたりはしない。普通の女子中学生風にだ。
「ひゃぁッッ⁉」
ドアを開けたのは良いのだが、学ランに身を包んだ男子生徒の姿がそこにはあった。特徴、身長が高い。髪の毛ツンツン。以上。
「…⁉もう、家出るのかよ。早えな。」
「し、白坂君…。」
なんで、家知ってるの…。
「いやあ、苦労したんだぜ?この家探すの。」
「…誰に、聞いたの?誰も知っているはず無いのに。」
「案外そうでもなくってな。名門中の生徒会長がこのレベルの顔ならちょっと怖いやつらが後つけてたりするもんだぜ?」
「うわ、キモ。」
「うわ、酷。」
「…そんなことどうでもいい。それよりなんでここに来たの、迷惑よ。」
「…昨日のことが気になってさ。」
能力の話、か。また面倒な話を持ちかけやがって。
「能力の事?洗いざらい全て話したはずなのだけれど。」
「欠落した部分、聞いてない。」
「…欠落、ああ。話の途中だったわね、そのことに関しては。欠落したのは私の価値。以上。そこを退いて。先生に早く提出しないといけない書類があるの。」
「…おい、価値なんて曖昧な表現してんじゃねえよ。逃げたつもりかよ?」
「…価値は価値よ。逃げてもいないわ。言いがかりはやめて。」
助けて。気づいて。
「お前の価値は上がってもねえし、下がってねえ。気づけや。」
「はあ?私に喧嘩売ってるの?」
まずい、いくらムカついたからといって白坂君にキレるなんて。殺される。
「白桜 桃花!お前は、誰かしらに愛されてるってことだよ!」
「…。」
愛?私は愛されているの?誰かに?どこからの誰かしらに?
「例えお前がこの世界から見放された存在でもお前を知っている奴や、友達や、愛している人からしたらお前の価値は最高値まで上がりきっていて下がってねえよ!いい加減現実を見ろ!うつむいていたって何も変わらないし生まれない!」
「…ッッ!」
視界が揺らぐ。目の前のものが全て、見えているものが全て歪む。涙。今日はもう二回目だ。でも一回目よりも二回目の方が涙の量が多かってような気がする。そんな泣き虫な私を白坂君は優しく抱いて撫でてくれた。

8:市:2016/04/24(日) 15:38 ID:T7w

現在進行形で死にたい。なんであんなに子供みたいに泣き叫んでしまったのか。なぜ今二人で学校をサボっているのか。
「…ごめん。」
「あ?なんでだよ。」
「白坂君の上辺しか今まで見てなかった。強い人だと思ってた。でも、本当に中身は優しくて。安心した。温かかった。」
「それと…やっぱりそのつもりはなくても、私の心は逃げてた。自分の気持ちを殺して。」
殺シテ。逃ゲテ。目ヲ背ケテ。立チ向カウ勇気ガ無カッタ。
「…よせよ、恥ずかしい、」
ヴヴヴゥゥーーーーーーー!
「…サイレン、の音?」
急に、サイレンの音がこの地区一帯に広がる。
「…随分と余裕だなあ。」
「え?」
「お前だよ。逃げなくていいのか?」
「…このサイレンの音が何を示しているかわかる?」
「…能力を使って悪さしているやつがこの地区の中に入ってきた、ってことじゃねえのか?」
「そうなんだけどさ。この音の大きさからしてね、ここの近くだよ、そいつがいるのは。」
ずううぅぅん…、
「…!なんだよ、これ!」
空気が重くなる。重い服を全身にまとっているような、少しも動くことができない。重力全てが身の上にのしかかるような。
「わっ!?」
身体が、浮かんだ。宙に。床から30pほど。そして何かが腹に巻きつく。きつく、ひたすらきつく私を巻きつけた。…蛇。
「…は、白桜!!」
「白坂君!」
懸命に私に伸びてくる白坂君の手、温もりそのもの。でも、私は自らの手を出すことを怖がって恐れて躊躇して。手を取ることができなかった。
「…お前、まだ躊躇すんのかよ!」
叫んだのは白坂君。無理もない。私はまだ迷っていたのだから。ぐるぐるぐるぐると。
「白坂君、ごめん。本当に。ごめん。」
「やあ、こんにちは。僕ら兄弟は毒ヘビと重力野郎って呼ばれている兄弟だよ!よろしくね。ほら、毒ちゃん、挨拶して?」
毒ちゃん、弟の方の呼び名か。ネーミングセンス無さすぎ。
「俺は毒ヘビ使いの弟だよ〜。兄さんは重力使い。よろしくね〜。」
「人質…?」
人質ってことはわかったけれど。
「そう。君の価値を利用させてもらうってことだよ。」
…さっきの自己紹介いらない!なんでこんな状況で、能力まで自己紹介してんだよ!っていうか、顔は結構似てるし、蛇の方はあからさまに危ない模様と色の蛇を肩に乗っけてるし。さっきの重い空気とかからしてこいつの能力は重力だってわかる。アホなのか。いや、罠なのか?…バカなのか。
「説明がわかりやすいな、兄さん。」
毒ヘビ使いが言う。毒ヘビの方の能力は多分操作系だろう。まだ能力を使っていないから詳しくはわからなくとも。毒ヘビを従えるとはなかなか頭のいいことをしやがって。しかも蛇、でかい。
「まあな。そう褒めんなって、毒ちゃん。あの子の価値を利用する。させてもらうにあたって、あの子を助けに来る奴は片っ端から毒ヘビの餌食さ。その時はたくさん活躍してもらうよ。あの子にも、お前にも。」
価値…?私の価値?そんなの、そんなの、あるの、ないの?わからない。白坂君はあるって言うけれど、私の、私の中ではない。
「…。」
「あ、あれれ?泣いちゃった?怖いかなあ?でもね、君が泣けば泣くほど向こうは手が出せないかもしれないね?」
「な、泣いてなんか…!」
「君、能力使わないとこから見て無能力者だね?」
「…ッ!」
「やっぱり。君、顔に出るタイプだ。」

9:市:2016/04/24(日) 15:48 ID:T7w

「他にあの家に人は?」
「…い、いない。」
「ふーん。嘘だね?」
「!!」
「ねえ、毒ちゃん。お願いがあるんだけどー、あの家の中にいる人連れ出せない?」
「…無理じゃねえけど。この上ちゃんが能力バラしたらどうする?」
「じゃあこの子に毒回して?即効性の痺れるやつがいいな。そんなに長い間痺れるやつじゃなくっていいからさ。そして、命に関わらないやつ。」
「ok。」
そう言った瞬間、毒ちゃんの肩にいた蛇は私の肩にかぶりついた。
「いっ!ああ、ぁ。」
全身の力が吸い取られるように抜けていく。口がまるで動かない。なのに足だけは地面についたままだ。つまり、立っている。これも、重力使いの能力か。それよりもこれでは、このままでは白坂君が逃げる前に白坂君が殺されてしまう!
「…ろ、て。」
「なあに?お嬢さん?」
兄貴さんが首をかしげる。
「殺…して。私…を。」
「晒し首にして町を歩くのもいいけど、趣味じゃないんだよねえ。っていうか、結構強い痺れる毒のはずなんだけど?よく話せるねえ、以外と能力者だったりするの?」
兄貴さんの隣の毒ちゃんが横槍を入れる。
「能力があれば、…あんた、たちなんかすぐにでも、倒してる!」
「…威勢のいいお嬢さんだなあ。」
「…けはっ」
私の腹をきつく毒ちゃんの毒ヘビが締め付ける。二匹、いたんだった。毒ちゃんの蛇。
「お嬢さんは、動けないから二匹、蛇肩に乗っけてていいよ。毒ちゃん。」
「ありがとう。二匹いないと心細いんだよなあ。」
蛇がそんなに大事か、蛇野郎。するりと私の腹から蛇は離れた。蛇が離れると同時に私の足は立つことができなくなった。正確には重力使いが能力を私に対して使うのをやめた。
「あの子は?」
「お嬢さんが言っていたいない、はずの子じゃない?」
「あの殺る気満々な顔見ろよ。能力持ちだ。」
「そうだね、兄さん。久しぶりに楽しめそうだよ。」
「に、げて、白坂君。」
「てめえら、兄弟二人まとめて丸焦げの豚にしてやるよ。ああ"?」

10:市:2016/04/25(月) 16:48 ID:T7w

白坂君は堂々と大人二人の前に立ちはだかった。たった一人で。不安はないのか、怖くはないのか、聞きたいことは山ほどあるが今はそういう状況ではない。
「女を人質にするなんて卑怯だなあ、随分と。俺みたいなのとタイマン張るのも怖いのかなあ?」
挑発的口調で白坂君は淡々と言葉を並べていく。
「はは、弱い子を捉えて強いものを抑える、これ人質の基本でしょ?」
「…白坂、君!危ない!」
パシッ…!そんな音だった。それと同時に激しい爆音と爆風に煽られた。
「…!蛇ちゃん!!」
毒ちゃんこと毒ヘビ使いは叫ぶ。よほど毒ヘビが好きなのだろう。痛々しい。
「…兄さん、こいつ!」
「ああ、相当やるな。」
間を取らずに重力使いさんが言う。
「…っ!」
私の首には毒ヘビが巻きついてきた、そういえば人質だったんだっけ、私。
「…白坂君、だっけ?動くなよ、俺たち兄弟はな結構人殺すのにも慣れてんだよ。動いたらこのお嬢さん…どうなっても知らないからね?」
「…クソッ!」
吐き捨てるように白坂君は言う。そして動きを止めた。
「…あ、う、」
言葉がついに出なくなった。痺れる毒とやらが効いてきたらしい。呻き声のようなものしか出ない。この状況をどう乗り切る?白坂君だけを逃す?そんなの無理だ、本人が承諾してくれるはずがない。なら、嘘で騙す?騙す、騙ス。
「…この際、なんでもいい。コノ体ガ、コノ身ガドウナロウト、ドウデモイイ。」
「…!?白、桜?」
頭の中に知らない記号や言葉が流れてくる。聞いたことがあるような、懐かしいもの。
「…天ト地ヲ結ブ、空ト土ヲ結ブ。天地逆転!」
地が揺れる。今の私なら、この地区を、いいや、この地球を…もっと!この宇宙をねじ曲げることができる…!
「アハハ、ハハ!」
なにこれ、楽しい。世界の法則も、宇宙の法則もどんな生物も、私には関係ない。
「なんだよこの嬢ちゃん、能力使ってるぜ、しかも…天と地をって、能力っていうよりも、魔法?」
「そ、そんなのあるわけ…ねえ。」
「毒ちゃん、ここは一時退却だ!」
「お、おう!」
全ては去った。全ては消えた。重力使いも毒ヘビ使いも、逃げた。白坂君、だけが残った。淡々と話し出したのは白坂君だ。
「お、おい!いい加減目え覚ませよ!俺まで巻き込んでなにになんだよ!お前は、お前は、いつまでたっても変われねえのかよ!馬鹿野郎!」
「…ら、かくっ!」
「白桜!」


「好きだ!」


「んっ。」
白い天井…。男の人の眠りの吐息。ここは…?
「私の、部屋?…白坂君?」
私をベッドに寝かせて、看病していたら寝てしまったというところか。それにしても気持ちよさそうに寝ている、起こさないでおいてあげよう。ちらっと見た時計は八字を指していた。もう遅いし、親に電話の一本でも入れさせないと。
「…ん〜、はくおー」
「し、白坂君?」
…寝言か。私が白坂君の夢に?…あ、起きたらなにを話せばいいんだろう、まず記憶をたどろう、毒ちゃんこと毒ヘビ使いと重力使いに白坂君が立ち向かって、痺れが効いてきて。ダメだ、よく思い出せない。

11:市:2016/04/25(月) 17:50 ID:T7w

なんでこんなに記憶が混濁しているのだろう?特に何かあった覚えはない。何かした覚えも、された覚えも。
「んぅ〜〜〜〜、あれ?白桜、起きた?」
「…ん、」
うまく返事ができない。何も変わってはいないはずなのに。
「白桜、お前大丈夫なのか?」
「?なにが?」
「なんか、天地逆転って言ってたやつ。」
「天地逆転…?」
「覚えてねえのか?」
「うん、そうみたい。何があったの?」
「お前が、神に見えた。この際どうなろうと、どうでもいいって言ってた。俺をかばってくれた…ぽかった。」
「私って、いったい…なんなの?」
「俺にもわからねえ。わかるのは、お前が能力を使ってたってこと。」
「能力を、私が?」
「うん。」
「もう一度、研究者さんのところで診断を受けるってのも一つの手だぜ?怖いなら俺も一緒に行ってやる。」
「で、でも。」
「何迷ってんだよ?」
「また、言われるのが怖い、あなたは無能力になりましたって。無能力のままですよって。」
「その時のために俺がついて行ってやろうか、って言ってんだろ?」
「…っ、白坂君は私が壊れてもいいの?まあ、他人事だけどさ。」
「俺が治すから大丈夫。」

【診断結果】
能力者。
前回よりは能力の著しい低下が見られるが、問題がない程度。重力、磁力での重力の部分が欠けたようです。能力の力を1〜10で表すならば、重力:4、磁力:10。この能力の危険度を1〜10で表すと、10。
サブの能力
二倍、もしくはそれ以上能力を活性化させる。能力の危険度を1〜10で表すならば、8。(メインの能力にもよる。)

「うそ、でしょ?」
「俺が保証する、お前は能力者だ。」
私に、まだ力が残っていた?能力が、能力があるの?


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