空ーKaraー

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1:魑魅魍魎:2016/11/06(日) 23:00

空ーKaraー
空っぽだ。こんな身体、要らない。

2:魑魅魍魎:2016/11/06(日) 23:30

私の身体は、他の人よりも優れているそうだ。頭と身体を切り離しても、頭は身体に引き寄せられ、細胞は融合し合い、元に戻る。他の人よりもずっと遅く成長する身体で、特に反抗期や思春期の間、ちょうど小学校六年生から二十歳を過ぎるくらいまでが遅いらしい。似たような病気はあるが、頭と身体を切り離しても元に戻るというのは、もはや病気という名詞でくくれるものではないと医師には言われた。
もう何年経ったかなど、生きたのか分からない。心臓は動かないように思う事だってある。本当はこの心臓は動いてはいなくて、これは…勝手に見ているだけの幻想なのではないのかと。
「優子、お前は何があっても俺が守る。」
そう言ってくれた男の子がいた。私は恋に夢見る12歳ほどの頃だった。
だが、
「優子!お前キモいんだよ!」
そう言われて身体のいたるところを刺された。こんな身体でも一応痛覚はある。身体中が痛みに襲われた。私が何をした?腹、右腕の二の腕、右胸、左太もも、腹、右目、左目、鼻、左ほほ。身体だけでなく、心まで刺されているような気分だった。私はその間、彼の泣いて叫び、すぐに元どおりになる便利な便利な刺せるサンドバッグになった。
「痛っいよ!やっ…いやっ!…めてよぉ…あゔぅっ…!ぐっ!かはっ!…和樹ぃ、やっだっ!イタイヨ…うぐっぅぁっ!」
何回も何回も刺された。どんなに微量の血も全て戻ってくる。この便利な身体でも、心は元には戻してくれなかった。
「優子…早くっ!死んでっ…くれっ!」
そう言いながら彼は私を刺し続けた。なぜ彼は私を刺したのか、分かりません。彼は私がその後すぐに…おっと、これ以上言ってしまうと怖がられてしまいますね。一つ忠告を。あなたも私に××××××かもしれませんね?

3:魑魅魍魎:2016/11/07(月) 17:49

私の身体は、傷ついてもすぐに回復してしまう代物です。生きるのが辛くなりました。
「私、後何年生きているんだろう…。」
少女は小さな橋の上で呟きました。光り輝く無数のライトの光が遠くで煌めく、今は12月。クリスマスが近い頃。そんな極寒の中少女は薄手の白いワンピース一枚に素足でした。少女に話しかける人はおらず、人々はただ少女を変な奴だ、と眺めて去って行った。
「…寒くないんですか?」
こんな夜中にいるのはおかしいくらいのメガネで真面目そうな黒髪の青年は少女に声をかけた。
「…寒くなぃ、ような気もする。」
少女のあまりにも曖昧で素直さに欠ける言葉にも笑顔で青年はまたふんわり語りかける。
「寒いんですね。僕のコートを着てください。僕の家が近いので…その、君さえよければ来ませんか?温かい紅茶を出しますよ?」
「…つか、あんた誰?」
「僕ですか?…僕は、篠原 和也です。」
「そ、私は…そうね、橘よ。」
「下の名前は?」
会話をしつつ和也は少女こと橘の肩にコートをかけた。
「下の名前、そこまで名乗る義理はないと思うのだけれど。」
「…強がってもいいことありませんよ?」
「はあ?意味わからない。寒いなんて一言も言ってな…、何するっ!離せっ!」
先程までの優しい青年とは打って変わり、和也は力強く橘を抱き上げた。
「そんなに騒いでは目立ってしまいます…、橘さん…お静かに。」
「これがそんな事言っていられる状況!?誘拐よ!誘拐!」
「…では僕の家までダッシュですね。」
「はあ!?ちょ、まっ!」
じたばた抵抗するが、走り出す和也に打ち勝つ力は橘には無かった。

まだ学生なのであろう制服姿の和也は外ではそんなこと全く気にならなかったが制服がすごく似合っていた。
「…温かい。」
「暖房入れましたからね。」
リモコンを木のテーブルに置いて笑う和也から橘は目を逸らした。
「…橘さん〜、紅茶とミルクティーとお茶どれも温かく作れますよ、どれが飲みたいですか?」
台所へ走っていく和也は橘に一本ずつ数えるように指を折りながら聞いた。橘は指を四つ立てた。
「第四の選択、ブラックのコーヒーで。」
「…マジですか!僕でもまだブラック苦手なのに…少学生の女の子に先越されちゃうなんてなぁ〜。」
小学生とは見た目での判断である。こんな見た目でも記憶は豊富で、味に関しては苦手意識すらもうないように思える。だが、脳では大人な考えを考えることが苦手らしい。いかにも小学生の脳みそといえどひどい話である。
「…家に入れてくれたお礼に下の名前とか色々教えてあげる。私は、橘ではなく鈴川 色美。」
「色美ちゃん、か。覚えたよ!それでそれで?どこから来たの?迷子?」
「んなわけあるか!こう見えても私は100歳超えているんだから…」
「またまた、そんな冗談言って〜!」
和也は、コーヒーの入った温かいカップをテーブルに置いた。
「…もういいよ。まあとりあえず、鈴川 色美だから、名前。」
カップにベビーピンクの綺麗な唇を寄せてひとくち口に含む色美。
「うん。で、どこから来たの?」
「…鹿児島県だったと思う。」
「へ?ここ東京都だけれども?」
目を丸く和也はした。


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