真っ暗闇と光と霊

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1:千景◆2DOA:2016/12/13(火) 17:37

初めまして、千景です。
スレタイ中二病ですが…、恋愛系の小説を書いていこうと思います!
コメントは(辛口でも)大歓迎です!
中傷、荒らしなど、サイトポリシー違反コメントは禁止です。
亀更新ですが、よろしくお願いします!

2:千景◆2DOA:2016/12/13(火) 17:52

★登場人物★
・本城 花澄(ほんじょうかすみ)【主人公】
  中学二年生。
  大人しい性格。照れ屋で人見知り。好きな人の前では素直になれないタイプ。
  花が好きな優しい少女。勉強は出来るほう。

・笹原 悠人(ささはらゆうと)
  中学二年生。花澄のクラスメイト。
  優しくて明るい、クラスの人気者。運動が得意。
  会話上手。

・稲見 紗世(いなみさよ)
  中学二年生。花澄の親友。
  しっかり者で、頼りになるお姉さんの様な存在。
  いつも背中を押してくれる、いい人。

3:千景◆2DOA:2016/12/14(水) 17:09

───二十四時間前。
ガヤガヤした教室の中で、花澄は一人、本を読んでいた。
「悠人ー!数学の宿題見してくれェ〰〰〰〰‼」
クラスの男子が一人、叫ぶ。悠人。その名前を聞くだけで、心臓がドキンと音をたて、頬が熱くなる。
「またやってきてないのかよ、ったく、たまには自分でやれよ」
と、言いながらも顔は笑っていて、その男子の前にノートを差し出す。
…私たちが初めて話した時も、悠人はそんな風に優しくしてくれたっけ。
その優しい笑顔を、少し離れた席から見ながら、心の仄温かさを感じていた。
笹原悠人。私の、好きな人。
見ているだけでいい。私には、片想いで充分だ。
告白なんて、大胆なことは考えていない。私は彼がもたらす、温かい気持ちを大切にしようと思う。
花澄は、静かに目線を本に戻した。

4:千景◆2DOA:2016/12/16(金) 07:50

─20分前─
花澄は冬の道を早歩きで学校へ向かっていた。
…いつもなら、この時間帯はもう学級に着いて、本を読んでいる時なのに。
運の悪いことに、今日は雪で視界が悪い。
「…あ」
道路の向かいに、紗世の姿を見つける。そんなに遅い時間でないことに安堵し、ウズウズしながら、信号が変わるのを待つ。
信号が変わる。相当足場が悪い中、必死で走る。
「紗世」
紗世が振り返り、こっちに気付いた。温かい笑顔をこちらに向けるが、次の瞬間、顔が強ばった。
視線の先は、花澄の横。
猛スピードの車が迫っていた。
「…え」
気が付いた時には大きなブレーキ音、タイヤが滑る音、絶叫が入り雑じった騒音が耳を襲う。
…え、私、轢かれる…!?
「花澄っ!」
足場が悪くて、避けることも叶わないまま、それでも止まらない車を、信じられない思いで見ていた。
…嫌だ、誰か。
紗世が走ってくる。
「…っ」
─ドンッ!
鈍い衝突音。
「……!」
紗世はその場で気を失った。

5:千景◆2DOA:2016/12/18(日) 16:29

紗世は目を開けた。保健室のベッドの上だった。
…何で、私はここに?
「…あ、思い出した」
慌てて立ち上がる。
「花澄は…っ?」
隣に、居ない。
「稲見さん、気が付いた?」
保健室の青木先生が声をかけた。
「あなた、気を失ってたのよ、先生が学校まで運んで来て…。座ってなきゃダメじゃn…」
「先生、花澄は……」
「…本城さんは」
青木先生が奇妙な沈黙の後、言いにくそうに言った。
「事故にあって、今は病院に…」
「…嘘」
…私が教えてあげてたら、花澄はそんな目に合わなかった?
さっき見てたことなのに、実感が湧かない。恐怖の中、紗世は信じられない思いで青木の顔を見上げる。
「…花澄……」
どうしようもない、今は花澄の無事を祈ることしか出来ない。
不安が心を支配する。逃げるように紗世はぎゅっと目を閉じた。

6:千景◆2DOA:2016/12/20(火) 17:15

…嗚呼、眠たい。
花澄は静かに目を開けた。いつもと変わらない朝……かと思ったら。
「!?」
…何で、こんな所に!?
黒い地面を見下ろし、自分が道路に寝かされていたことに気づく。一体何で、こんな危険で不恰好なことになっているのか。
慌てて体を起こし、走って脇によける。
「…あれ?」
体が浮き上がるような、不思議な感覚。てっきり、滑って転んだのかと思ったが、地面に叩きつけられる感じがしない。
「何コレっ!?」
自分の手を見て、絶叫した。手が、半透明に透けている。いや、体全体が、そうなっていた。
流石に恐怖を感じ、とりあえず家に戻ろうと思い、そこで、初めて辺りを見回した。
道路の脇に、いくつもの花が一ヶ所に供えられていた。その前に、憔悴しきった顔の紗世が、手を合わせていた。
「紗世!」
助けを呼ぼうと声をかける。だが、紗世は気付かないようだ。低い声で、花の前で何か話している。
「花澄、ごめんね、私…。一緒に登校してれば、こんなことにならなかったのに。私が気付いてもっと早く声をかければ、花澄は……」
「……え?」
記憶が蘇る。そして、やっと自分の身に起こったことを理解する。
「私…」
怖くて、口に出せない。有り得ないと、否定したい。
…私は…死んでしまったの…?
恐怖の現状が、胸の中で言葉になる。
「嫌だ…」
もし本当なら、今の私は幽霊だ。まだ14年しか生きてないのに。もう、お母さんともお父さんとも紗世とも悠人くんとも話せないの……!?そんなの、嫌だ。
涙が溢れてきた。視界が霞んで、もう前が見えない。
実体のない体で少しだけ浮きながら、花澄は途方に暮れていた。

7:千景◆2DOA:2016/12/24(土) 11:08

……私、本当に死んじゃったんだなぁ。
花澄が亡くなってから眠っていた間は2週間。葬儀も済んでいるようだ。
もしかしたらまだ生きてるかも、なんて望みはもう誰も持っていない。
絶望で落胆したが、身体は失っても魂はまだ残ることに、花澄は少しだけ安心していた。
…普通の人として、隣で歩いたり話したりは出来ないけど、皆を見てることは出来るんだ。

───でも、これからどうしよう…。

8:千景◆2DOA:2016/12/28(水) 22:55

「出席とるぞー」
朝の教室に、先生の声が響く。
先生が点呼をとり、生徒たちはやる気無さげにそれに答える。
「稲見!」
紗世の名前の所で途切れた。彼女の席は、空席だった。
「稲見…稲見紗世はまた欠席か…」
「……」
クラスに重苦しい沈黙が流れる。花澄の事故死の日から、彼女は休みがちだった。
「…大川」
先生が次の名前を読み上げる。暗い余韻が残る教室内は、気まずさが立ち込めていた。
……紗世。
花澄は悲しげに空白の彼女の席を見下ろしていた。彼女は今、どんな気持ちなのだろう。
…私の死がここまで紗世を追い詰めるなんて。
全て自分の死のせいだ、なんて自惚れた考えをしたわけでは無いが、申し訳無くてたまらなくなった。
「……」
花澄は静かにその場を離れた。


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