彼女は黒い。
彼女は羽がある。
彼女は足が十本ある。
彼女は目が三個ある。
彼女は、
______化け物だ。
>>002
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暴力表現(誤魔化してます)注意。
感想歓迎。宜しくお願いします。
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化け物ってのは、つくづく気持ち悪い物だ。
僕はそう思いながら、彼女に目をやった。
今にもとろけそうなマシュマロみたいな色の肌に、艶やかな髪。
化け物とは正反対の容姿をした彼女とは、つい先日付き合い始めた。
告白はもちろん僕からだ。僕の熱い気持ちを伝えると、彼女は口を小さく、もごもごと動かしてから「いいよ」と呟いてくれた。
嬉しすぎて涙が溢れた。顔から、耳から、足の先から熱が沸きだして、言葉にし難い興奮がその時あった。
そんな回想はさておき、僕は彼女に先程思った化け物云々について言うとする。
「化け物って怖いよね…」
端的に一言。
彼女は何故か体をびくつかせると、返答に困ったのか視線を膝にやる。
「どうした?」
「え、あ。いや…」
「まさか昔化け物に襲われたとか?」
そう言うと、彼女は先程の1.5倍程に体をびくつかせ、「あ…実は」と答える。
「マジ?大丈夫だった?」
「うん…」
「どんな化け物?」
「えっとね…」
そう言うなり彼女はアンティークな取手の引き出しから画用紙を一枚引っ張りだし、可愛らしいピンク色のシャープペンシルと共に床に広げる。
その様子はとても愛らしく、僕の心は簡単にキュンとしてしまった。
「こんな、感じかなぁ」
「結構絵上手いんだね」
「お母さんが絵描く仕事してたから」
「へぇ」
彼女はシャープペンシルを滑らかに画用紙の上で滑らせ、見たのであろう化け物を描いていく。
化け物は目が三個あった。右から赤、青、赤の順らしく、ぎょろりと光っている。
脚は十本。毛がぼうぼうと生えていて、爪は鋭く尖っている。
オウムの様な、可愛く言えばさつまいもの様な形の胴体からは、真っ黒の毛が生えていて、腰と思える辺りからは紅色の液体。
抽象的に言えば、かなりグロテスクだ。
「気持ち悪いね……」
「……」
「どのくらいの大きさ?」
「…和也君よりちょっと大きい」
「でかっ」
僕が176pだ。僕よりちょっと大きいとなると、180は越えているのだろう。
そんな化け物に襲われていたのか…
「……気持ち悪い?」
彼女が珍しく僕に話題をふってくる。
その真意はわからなかったが。
「気持ち悪いってもんじゃないよ。恐ろしいくらいだよ。」
「そか……」
彼女の目を、彼女の艶やかな黒髪が隠す。
彼女は一言。
「じゃあね」