*☆登場人物★*
【中学1年生】
及川 由湖 オイカワユコ
吹奏楽部
楽器:バリトンサックス
柚木 香緒里 ユズキカオリ
吹奏楽部
楽器:トランペット
田角 英梨香 タズミエリカ
吹奏楽部
楽器:ユーホニウム
林 美優 ハヤシミユウ
吹奏楽部
楽器:チューバ
綾鷹 芙蓉 アヤタカフヨウ
吹奏楽部
楽器:フルート
舞 エレン マイエレン
吹奏楽部
楽器:パーカッション
【中学2年生】
魚住 優香 ウオズミユウカ
吹奏楽部
楽器:アルトサックス
栄川 陽太 エイカワヨウタ
吹奏楽部
楽器:トロンボーン
相田 璃潤 アイダリウル
吹奏楽部
楽器:クラリネット
【中学3年生】
佐竹 凛音 サタケリオン
吹奏楽部
楽器:ホルン
大石 風子 オオイシフウコ
吹奏楽部
楽器:トランペット
江口 莉楽 エグチリラ
吹奏楽部
楽器:トロンボーン
新田 由紀 アラタユキ
吹奏楽部
楽器:クラリネット
【その他の方達】
顧問:新川 仁奈 アラカワニナ
由湖の友達:亜豆 伊緒 アズキイオ
エレンの彼氏:藤堂 璃宮 トウドウリク
主(登場人物長ぇ……)
1.
「え、私、バリトンサックスなんですか?!」
今日は、念願の楽器発表の日。
私、第一希望、クラリネットで出したのに。
低音の、地味で目立たない、あのバリトンサックスだなんて……。
とは言えず。
目の前にいる先生が、書類を見ながら私が選ばれた理由を口にした。
「理由は、ずばり、身長です。」
私は165pある。女子の中では高い方だ。
せめて、「前にうまく吹けていたからです。」とか言うべきじゃないですか先生。
そうツッコみたい気持ちをぐっと抑えて、私はお得意の由湖スマイルを先生に浴びせた。
「やったぁ!頑張りまーす!」
小学校のときに演劇部に入っていただけあって、私は演技がうまかった。
2.
「ぉ願いしまーす。」
私は気怠い表情でアルトサックスの魚住優香先輩に挨拶をする。
感情のこもっていない無機質な声が、南館の廊下の壁に反射した。
この中学の吹部はサックスの人数が少ない(というか皆無)ので、バリトンの先輩がいないのだ。
同じサックスでも、バリトン、テナー、アルト、ソプラノ等、幾つかの種類に分かれているらしく、魚住先輩は今回のためにバリトンサックスの練習をしてくれたらしい。
まぁ、とりあえず優しい先輩らしい。
先輩後輩一人ずつなので、あまり上下関係を気にしないで良さそうだ。
まず最初、基本中の基本。
リード、リガチャー、マウスピースの付け方。
これは割とあっさり覚えた。
「うん、それでこれは……うんそう。で?リードは〜、そうそう。」
先輩は私の横にピッタリくっついて、手とり足取り教えてくれる。
ちょっと楽しいかも。
次はネックで音を鳴らす。
ピーッ!
高っか!
耳に響く、不快な音が廊下中に響く。
「……っ、そうそう、最初はみんなこうなるからね。」
先輩は苦笑いをしながら、コツを教えてくれた。
・上唇、下唇を巻く(下唇に力を入れすぎると高い音が出るのでリラックスして)
・喉を開けるイメージで
・腹式呼吸
ボォー
「そう!それ!由湖りんセンスいいじゃない。」
いつのまにか私のあだ名が由湖りんになっているのはスルーして、褒められるのがちょっと嬉しい。
「ありがとうございまーす。」
それは、無機質じゃなくて、照れと嬉しさの混じった、甘酸っぱい声で。