誰かを待っているの
>>2
観覧ありがとうございます。
◆ 不定期更新。
◇ アドバイス・感想はご遠慮なく。
◆ 辛口アドバイス・感想も歓迎いたします!
◇ マナーを守って読んでいただければと!
◆ 登場人物の紹介はありません。また、会話文や地の文にはネットスラングは使いませんので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
1章 水無月
6月は蒸し暑い。雨は降っていなくても、じっとり、べったり、黒いもやを纏ったような重たい空気が肩に乗っかったり髪にまとわりつく。
そんな空気から首を逃がしてあげようと、私は手に通していた髪ゴムで髪をひとつに、高い位置で束ねた。
「千代崎さん」
カウンターには同じ学年の柚原ほたるさんが立っていた。
「借りさしてや、」
うん、と返事をし彼女の持っていた二冊の本を受けとる。バーコードをスキャナーで読み込む。今回柚原さんが借りたのは読書感想文の課題図書と、新撰組を連想されるような人が表紙に描かれた本。
「はい、どーぞ」
ありがとう、と顔にパッと向日葵のような花を咲かせて言った。
成る程、これなら今年の四月に転校して来てもすぐに回りと打ち解ける訳だ。馴染んで、広島弁もマスターしている。
失礼しました、と元気よく挨拶をし、引き戸を静かに閉める。彼女がスキップする足音も聞こえてきた。
私とは正反対だな。
そう思い、私は読みかけの本を手に取った。
気づいたら寝ていた。カウンターに突っ伏した状態で。
昨日遅くまで本を読んでいたせいか、と思いながら目を閉じ、目を少し弱めの力をかけてに擦る。瞼って薄いから、あまり刺激するのは良くないと聞いたことがあるから。
時計を見ようと、ぼんやりとする頭を起こしながら目線を上に移す。昼休み終了時間の2分前だ。まだ此処に居れる。安心して、頬杖をついてふはぁ、と溜息、というか欠伸を吐く。寝ていたのは5、6分くらいだろう、図書室内に居る人の人数は全く変わっていない。
ふと、窓の外に目を向ける。少し、ぱらぱらと雨が降っていた。寝る前は降っていなかったのに。雫は窓にぴたりと引っ付いてするするとガラスをつたっていく。窓のすぐそこの、まだ青々としている紅葉の葉にぱたぱた、と当たって跳ねて踊る。
「やった、」
私はそう小さく呟いた。