廃墟と月の少女

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1:匿名:2017/08/16(水) 00:12

 冒険家ーーなどでは、ない。
 私はバックパッカーのような格好をしているけれど、
もし誰かが私の心を除いたとしたら、彼は弱虫を見るだろう。
 ええ、そうです。家庭から、逃げてきたのだ。

2:匿名:2017/08/16(水) 00:14

 なんて馬鹿な。逃げても社会は追ってくる。家内が、失踪届けを出す。
警察が、私を見つける。私は連れ戻される。そして、余計家庭が嫌になる。
 わかってる。そんなことは。私は、それでも家庭から逃げずにはいられなかった。
 はっきり言って、私には生きて行く自信が微塵もないのである。

3:匿名:2017/08/16(水) 00:19

 森を抜けると城の廃墟があった。
 川端康成の、トンネルを抜けると雪国だった、とでもいうような心地で、私は
この城跡に何かの予感を感じ取った。
 予感。
 無論、あてにならぬ。気のせいかもしれない。とにかく、私はこの城跡の中へ入ったのである。
 蜘蛛の巣が顔にかかって、ピンチの猫みたいに、私は自分の顔をめくらめっぽうに引っ掻いた。
 ああ、風呂に入りたい。

4:匿名:2017/08/16(水) 00:25

 誰もいないはずの城なのに、暖かい湯の匂いがする。
 その方へ行って見ると、風呂場で、電気もついており、しかも暖かい湯がたぷたぷ沸いていた。
 私は感動して、「わにわにのおふろ」でもあるかのように、勢いよく服を脱いで、浴槽に飛び込み、
歌った。
 さっぱりして上がると、お腹がギュウッと鳴った。


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