あやかしはやし

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1:ネコ汰:2017/08/27(日) 18:36

自分の文才を褒めて貰いたくてここに来た人です。
二年程前から執筆しています。

この話は妖怪の話です。
ファンタジーもので、流血表現があります。
首が飛ぶ、眼が潰れるなどの残酷で暴力的な描写もありますので、そういうのが苦手な方はブラウザバックしてください。
更新が途中で途切れる場合があります。
完結しないものと思って見てください。

2:ネコ汰:2017/08/27(日) 19:08

ある昼の事。
白髪の美しい女がつと蒼空を仰ぎ見ると、何やら黒く大きな物が、此方に向かって落下してきているのが見て取れた。
女は眼を見開き、何事かと驚愕の声をあげる。
どうやら『それ』は、女の頭上に位置するようだ。
このまま此処で突っ立っておれば、『それ』は己の脳天に激突するだろう。
何が何だか解らぬままだが、女は右に身を移した。
すると、つい先刻まで己が立っておった場所に、『それ』が勢いよく激突した。
地の頑固な土はぺっこりとへこみあがっている。
女は思わず身震いした。
土の有り様に気を取られておると、『それ』は土煙を纏いながら「あいたた」と立ち上がった。
現状把握ができておらぬ女は、『それ』を一つの人間として心配した。
「おまえさん、大丈夫けな?」
どこの方言か。
優しげな口調に、『それ』は手をひらひらとさせて「いんや、大丈夫じゃねぇ」と言った。
「そりゃあそうじゃがなぁ…変なこたぁ訊いたのう。許してくれり」
女は眉を八の字にして、ぺこりと頭を下げた。
美しく輝く白髪が、肩を伝ってはたはたと降りてくる。
『それ』は痛みが和らいだのか、毒気のない無邪気な微笑みを浮かべた。
「いやいや、アンタの優しさだろう」『それ』はそう言うと、すっと笑みを顔から消して、顎をさすりだした。「それにしても…ここぁドコだ?アンタの口調からすると、ドッカの田舎らしいな」
女は顔を上げると、首を傾げて言った。
「こっちゃ『妖林(あやかしばやし)』ゆぅトコでぇ?あだもやんけど、古くから居られる『妖さま』の子孫がんだと居る國けや。この世界は、『妖さま』がんだと居られるじゃろ?そん中ぁでも、『玉藻前さま』や『一目蓮さま』のよぉな、大妖怪さまがんだと居られるんやけ。今なおも、『白狐さま』のような御方は、あんの山さばに居を構えてらっしゃるんじゃ」訛りの強い方言で、この國の事を『それ』に説明する。「ちなみに、あだは『白面金毛九尾の狐さま』が先祖け。こんの白けぇ髪も、先祖からのモンじゃ。今は隠しとっけど、九つのおっぽもあるけな」
『それ』は「ふ〜ん」と、興味の無さそうな返事をする。
しかし、その双眸には、女とこの國に対する『興味』があった。
「大層な『妖さま』が、ねぇ……面白ぇ國だな。今や妖怪は廃れていってるのかと。俺ん所は混ざりに混ざっちまって…逆にアンタのような奴は虐めの対象さ」
『それ』はまた無邪気な微笑みをすると、女に対して一つ言った。

「俺ぁ、名は『幻寺丸』つーんだ。アンタの名には興味ねぇが、この國とアンタ自身にはスゲェ興味がある。一つ、頼まれてくれねぇか?」
「俺をここに置いてくれねぇか、って」

3:ネコ汰:2017/08/28(月) 18:37

「あだは『白舞』ゆぅんで。かっちゃん曰く、『白面』ってぇ名にさしよっとしてたらしいけな」白髪の女…白舞(はくま)はけらけらと笑った。
「ふぅん。アンタらの種族は、名に白が付くのか?」
首を傾げると、白舞は「んだんだ」と頷いた。
「酒呑童子さまならば酒が付くけ。一目蓮さまやったら、一目が付くけぇの」
「玉藻前さまは?」
「九尾の狐じゃから、普通は九が付くんじゃけど…玉藻前さまなら玉が付くけ」
ほうほうと、納得の表情を見せる。
その様子が無知な小人に見えたのか、白舞はくすくすと口に手を当てた。
「なにが可笑しいんだ?」とこっぱずかしそうに問うと、「いんやぁのぉ、におさんの顔がなんやけ、小に見えての。おかしゃあておかしゃあて、笑いが零んだんけ」と言った。
『におさん』と言うのは、『妖林』の方言で、『知り合いのお兄さん』のことを指す。
お姉さんの場合は『ねおさん』となる。
また、『小』というのも、『妖林』の方言であり、『子供』のことを指す。
幻寺丸は更に頬を赤らめると、話を逸らそうと、更に問うた。
「アンタはここで一人なのか?見た感じ…二十歳は越えてるだろうが……あっ!でも、狐ならばこんな若い面して婆だっーーー」そこで、幻寺丸の言葉は途切れた。
白舞が、微笑みを絶やさずに、畏怖の気を発したのである。
図星なのかどうかは本人にか分かり得ぬことだが、白舞の怖ろしいったらありゃしないオーラに、幻寺丸は子犬のようにしゅんとなった。
大人しく、口を噤んだ幻寺丸を見、白舞はオーラを優しい彩へ戻した。
「あだの歳は訊かんでくれり。乙女さば、色々あるけぇな……じゃから、あだの身の上話はにおさんには話せん。白面金毛九尾の狐さまは、つい最近まで生きておられた。我ら子孫も、白面さまには及ばんやんけど、長生きするけぇな。勿論、その分秘密さば、んだとあるんやけ」
先刻までの微笑みは何処へやら。
台詞が終わりに近付くにつれ、白舞の双眸には鋭い光が宿った。
思わず、幻寺丸はその眼に吸い寄せられそうになった。
狐の祖先であろうか、なにやらその眼には、不思議な気が感じ取れた。


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