ーもう涙はいらないー

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1:ゆうか:2017/10/27(金) 22:20

第1話「美和の場合」ー心ー

「美和ー!」
昇降口に向かう私の背中に声がかかった。振り返ると、恵里香と真依、千冬が手を振って近づいてくる。
3人は同じ1年3組のクラスメートで同じ美術部員、いつも一緒の友達。
「美和、部活でないで帰るの?」
「うん、今日はお母さんが病院に行く日だから、私がご飯の支度当番なんだ。」
「えー、せっかく私今日塾なくて部活出られるのに…」
恵里香がお人形みたいに可愛い顔を少し歪める。
「ごめんごめん、うちお父さんが料理全くできないから…と、恵里香大丈夫?」
「え?」
「顔色悪いよ」
私の言葉に恵里香はハッと頬を手に当てた。
「そ…そう?」
「うん、なんか目も赤いね。勉強しすぎじゃない?」
恵里香の様子を見て私は心配になった。恵里香は学年トップクラスの秀才でいつも平均点の前後でウロウロしてる私とは正反対。でもそんな私でも恵里香が塾に通ったりして人よりもずっとずっと努力しているのはわかる。
「そんなことない大丈夫」
「大丈夫って自分では思っててもさ体って気が付かないうちに悪くなっていくよ。だから無理しちゃダメだよ」
「無理なんかしてない!」
恵里香はキッと私を睨みつけるとプイっと後ろを向いていってしまった。

2:ゆうか:2017/10/27(金) 22:32

恵里香はキッと私を睨みつけるとプイっと後ろを向いていってしまった。
「恵里香…!?」
「じゃあね、バイバイ、美和」
真依と千冬が慌てて恵里香を追っていく。
恵里香怒った…?でもなんで…?
「…と、いけない!こんな時間!」
時計を見て私は慌てて昇降口に向かった。
「あ、由奈!」
「美和!」
下駄箱の前に立っていた由奈が小さく笑った。
「今日美和早く変える日でしょ?一緒に帰っていい?」
「うんもちろん!てか由奈ひょっとして待っててくれたの?わわ、ごめん!」
「あ、いいよ慌てなくって」
いそいで靴を履こうとしてコケかけた私を由奈が支えてくれる。そのまま私たちは手を繋いで昇降口を出た。
そこにランニングで走ってきた野球部の男子たちが
「なんだー、美和と由奈、またてぇ繋いで!」
「金魚と糞かー!?」
「うるさーい!」
ゲラゲラ笑って走っていく男子達に私は怒鳴りつけた。
由奈はと言うと泣きそうな顔をして俯いている。
「気にしない気にしない!由奈‼」
私は繋いだ手を大きく降った。
中学生にもなって友達と手を繋ぐのっておかしいのかな?でも私たちは小学校の時からずっと手を繋いできてたから。
小4の時から同じクラス。
なぜだか分からないけど由奈といるとすごく安心してあったかい気持ちになれるんだ。
恵里香に前言われたことがある。由奈がいない時だけど。
「由奈みたいに目立たないこといて何が楽しいの?」って
私は由奈のことそんなふうに言わないでって怒ったんだ。
その時思った。由奈は私の大事な親友なんだって。

3:ゆうか:2017/10/27(金) 22:53

その時思った。由奈は私の大事な親友なんだって。

「ただいまー!」
玄関のドアを開けるとフワンといい匂いがしてきた。
これはシチューの匂い?私が慌ててキッチンに駆け込むと、
「あら美和おかえり」
お母さんがお鍋を混ぜながらニッコリと笑った。
「お母さんたら今日は私の食事当番って朝言ってったでしょ!?無理したらまた熱が出るよ!」
私は急いで手を洗って制服の上にエプロンをつけた。
「お母さんは大丈夫よ、最近ずっと調子いいしお薬も減ったのよ」
「ダメ‼」
「それより、そろそろこの間のテストが返ってきてるんじゃないの?」
ギクッ
お母さんから横取りしたおたまが宙に浮く。
「…うーん、戻ってきてるけどぉ…」
「なあに?」
「お母さんせっかく調子よくなってきたのにあんなの見たら体に良くないからやめた方がいいと思うよ」
私の言葉にお母さんはくすくすと笑った。
「いいから見せてご覧なさい」
戻ってきてた定期テストをしぶしぶ渡す。
数学と英語と社会と理科と国語。特に国語がひどかった。
「…ごめんなさい」
「でも前より少し上がってるのもあるじゃない」
「でも悪いよ」
「このテストの前お母さんずっと熱出して美和が家のことしなくちゃならなかったからあまり勉強出来なかったものね」
お母さんは丁寧にテストをたたんで私に返しながら
「お母さんこそごめんね。ちゃんと勉強させてあげられずに美和に甘えてばかりで。」
「そんなことないよお母さん。私家の事するの好きだし学校も成績は悪いけどさ友達いっぱいいて楽しいし何もかもOKだよ‼」
「美和…」
お母さんは私の手を取ってじっと目を見つめた。
「お母さんね、嬉しい。美和がこんなにいい子に育ってくれて本当に嬉しい!」
「うん!」
私はにっこり笑った。
お母さんは体が弱くてずっと入退院を繰り返していた。やっとこのごろ安定してきて、通院で済むようになってきたんだ。心配をさせてまたぶり返すようなことは絶対にしたくない。
「次はもっと頑張るね!」
「そうねでも無理しないでね」
「大丈夫‼さ、続きは私が作るからお母さんは休んでて!」
私はサラダを作るために花歌を歌いながらきゅうりを切り出した。大好きな友達、大好きな家族、大好きな人達に囲まれた幸せな毎日。コレからもずっとそんな毎日が続くと思っていた。
本当に…この時までは。

4:ゆうか:2017/10/27(金) 23:11

本当に…この時までは。

翌朝。
朝日が差し込む階段を駆け昇り私は教室のドアを開けた。
「オハヨー!」
教室はいつものように光が溢れている。
でも…いつもと違う。
私が入った途端ガヤガヤしていた教室の中がシン…と静まり返った。
「…?おはよー」
もう一度言ったけど誰も何も言わない。
由奈は教室にいない…。
いつもならわっと昨日のテレビの話で盛り上がる恵里香と真依、千冬は窓際で雑誌を見ている。
「ねぇ何?何かあったの?」
私は恵里香の肩に手を置いた。
すると恵里香は私の手を払いのけた。
「え…」
「真依、千冬、ベランダに出よう」
「うん」
恵里香は真依と千冬と一緒にベランダに出て楽しそうにおしゃべりしながら雑誌を広げている。
私の方など見向きもしないで。
…ううん。
私なんてまるでいないかのように。
教室を振り返るとクラスメートの皆が私から目をそむける。
…どうして…?
私は心臓がドキドキしてきた。
そこにドアが開く音が聞こえた。
いつものように俯き加減に由奈が入ってきた。
「…由奈!」
いつもだったらパッと顔を明るくして「美和オハヨー!」と言ってくれる。
でも今日は……
由奈は黙って席につくと、髪で顔を隠すようにして教科書を出し始めた。
私は体がすうっと冷たくなっていくのを感じた。ベランダからは恵里香たちの賑やかなおしゃべりが聞こえてくる。
教室の中にもざわめきが戻ってきた。いつもと同じ喋り声、笑い声、誰かが歌う声…。
いつもと同じ。
私は………?私は……。

5:ゆうか:2017/10/27(金) 23:26

私は………?私は……。

休み時間。
次は音楽で、移動教室だ。
みんなおしゃべりしながら教室をぞろぞろと出ていく。
いつもなら誰彼となく、肩を並べて一緒に歩いていくのに今日は誰1人として私の近くには来ない。
私が席から立ち上がると皆私をさけるように目をそむけて行ってしまった。
どうして…?
私は一番理由を聞きたい人を追った。彼女は教室から一番先に逃げるように走り出た。
「由奈!」
追いついて腕を掴むと由奈は叩かれそうになった子が小さく体を縮こませるようにして立ち止まった。
青ざめた顔を俯かせて唇を噛んでいる。
「どうしたの由奈?なんでそんな顔するの?ねぇなんで私のこと無視するの?私なにかした?私何したの?」
私は必死で聞いた。
由奈は親友だもの。何かあったのならきっと話してくれる。ちゃんと私の話も聞いて分かってくれる。きっと私の味方になってくれる。…でも…
由奈は何度も首を振って私の手を振り切って走っていってしまった。
「…由奈…」
残された私は呆然と立ち尽くした。
手。
小学校の時からずっと繋いでいた手。
その手を由奈は振り切った。
悲しくて苦しくて涙がこぼれそうになった。
その時後ろの方からくすくす笑い声が聞こえてきた。
恵里香と真依、千冬。
「急ご急ご」
「遅れちゃう」
笑いながら3人はわたしをわざと避けるようにして廊下を走っていった。…何がおかしかったの…?
小さくなっていく三人の後ろ姿を見ながら私の中に黒い考えが広がってきた。
まさか恵里香たちが?
ううん!まさか、恵里香達がそんなことするはずない!
恵里香たちが中心になって私をくらす中で無視するなんて理由がない。第1恵里香達は仲良しの友達だよ。
…でも…

6:ゆうか:2017/10/28(土) 13:22

放課後。

私は部活のある美術室のドアを開けた。
先に来ていた恵里香、真依、千冬が楽しそうにおしゃべりしている。私の方など見向きもしないで。
私は自分のイーゼルを3人から離れたところに立てた。
…やっぱり変だ。
ほかのクラスのみんなは同じ無視するでも、私を「見ない」ようにしている。でも恵里香達は私を「見えない」存在にしている。私のことを消しているんだ。
心が痛い…苦しい。何でこんなことするの…?
私なにか悪いことしたのかな?なにか悪いこと…
私はハッと気づいた。
そういえば昨日恵里香怒ってた。私を睨んで走り去っていった。そう、私が恵里香に無理しないでって言って…。顔色が悪くて心配だったから。あれ…あの時のことまだ怒っていて…?
でも私恵里香のことを心配して言ったのに。
私は必死になって考えた。それでも私には判らない理由があって、あの言葉はひょっとしたら恵里香をすごく傷つけたのかもしれない。だとしたら悪いのは私だ…‼
私は立ち上がった。
仲良くおしゃべりしながら絵を描いている恵里香たちの方に歩み寄る。
「ねぇ…」

7:ゆうか:2017/10/28(土) 13:41

私が話しかけても3人はまるで無視して話し続けている。
私は胸が痛くなった。
私はこんなに嫌な態度を取らせるほど恵里香に嫌な思いをさせてたんだ。
「…ごめんなさい‼」
恵里香に…3人に頭を下げた。
3人は驚いた顔をして私を見ている。
「ごめん…私昨日すごく嫌な事言ったんでしょ!?傷つけてごめんなさい。気が付かなくてごめんなさい‼」
3人は何も言わなかった。
ずっと頭を下げていたから3人がどんな表情をしているかわからない。しばらくの沈黙のあと恵里香が口を開いた。
「別にいいよ…」
私は顔を上げた。恵里香は笑って私を見ている。いつもの笑顔で。…良かった。私はホッとした。
「ちょっと恵里香!」
「いいの!?」
「いいじゃん。頭下げてきたんだからさ。」
恵里香はそう言うと描きかけの絵の方に向き直った。そして、
「あー、なんか喉乾いた。美和ジュース買ってきて。」
「え?あぁうんいいよ」
「千冬と真依の分もね」
恵里香はまた千冬と真依とおしゃべりを始めた。
…あれ?お金…は…?
「ちょっと何してんの?」
立ち尽くしてる私を恵里香は睨みつけた。
「え…えっと…」
「あー…ジュース代?アンタ友達のジュース代を立て替えるお金もないの?ホラ」
恵里香は小銭を床にばらまいた。私は床に這いつくばって慌てて小銭をかき集める。その背中に恵里香の冷たい声が浴びせられた。
「盗まないでよね。ビンボー人」
恵里香の言葉に真依と千冬が大きな声を上げて笑った。
私はたまらなくなって廊下に飛び出した。
胸がズキズキと痛い。あんなひどいこと言うなんて。
恵里香仲直りしてくれたんじゃないの…?
私を許してくれたんじゃなかったの…!?

8:ゆうか:2017/10/28(土) 14:00

「…ただいまー!」
私は明るい声で元気に玄関に入った。
「あぁ、おかえり、美和」
お母さんがパジャマにカーディガンを羽織って出迎えてくれた。
「お母さん寝てていいよ、ここんとこまた少し調子悪いんだから」
「大丈夫よ…あらそこどうしたの?」
お母さんは私の制服についた汚れを指さした。
千冬や真依に蹴られたところだ。
あの日からずっと私は恵里香たちにいじめられ続けている。
私は慌てて手で払いながら
「うん…掃除の時男子とふざけてて」
「あらあら中学生にもなって」
「へへへ。じゃあ私宿題するからお母さんも休んでて!」
「ハイハイ、頑張ってね」
お母さんは小さく笑うと寝室に戻っていった。
私は大きくため息をついた。良かった、またバレなかった。
お母さんには絶対学校でのことを知られちゃダメ、心配かけちゃダメ、絶対!
私は勉強机の上に学校で配られた宿題用の作文用紙を広げた。
国語の宿題…テーマは「友達」
…友達。
胸がふさがった。何を書けばいいんだろう。
由奈。恵里香、真依、千冬…
過去形になんてしたくないよ。また戻りたいよ。
みんなで仲良く笑っておしゃべりしていた頃に…戻りたいよ…‼
お母さんに聞こえないように私は声を押し殺して泣いた。
涙で濡れて作文用紙はぶわぶわになっていった。

9:ゆうか:2017/10/28(土) 14:16

翌日。

しばらく学校を休んでいた由奈が学校に来ていた。
病気でもしたのか、それとも大きな怪我でもしたのかととても心配していたけど…
良かった、学校に来られるようになったんだ。
前のことがあったから、声はかけられないけど本当にホッとした。
「美──和」
歌うように、恵里香が私の机に近づいてきた。当然真依と千冬も一緒だ。
「ねぇ宿題の作文書いてきた?」
「う…ん」
「見せなさいよ」
「え?」
「見せなさいよ!私達『友達』でしょ!?」
そう言うと3人は私のカバンを探って作文用紙を引っ張り出した。
「ちょっとやめてよ…!」
「えーと何これだけ!?『友達は大事です。宝物だと思います』…なーに、これー!?」
3人はたった一行だけの作文を読み上げてゲラゲラと笑った。
そんな、たった一行だけど私にとっては心の底からの言葉だった。
「やだ、返してよ!」
「あんた馬鹿だからこんなのしか書けないのよねー?可愛そー、仕方ないなー」
そう言うと恵里香は私の作文を消しゴムで消し出した。
「やっ…何するの!?」
「ほら、私のうつさせてあげるわよ」
恵里香は真っ白になった私の作文用紙の上に自分の作文用紙を乗せた。
「学年トップの作文写していいって言ってんのよ、ホラ!」
「え…そんな…」
写すと言っても普通の宿題とは訳が違う。作文を写すということは……
「恵里香がいいって言ってくれてんのよ!?」
「早くしなさいよ!授業始まるじゃない!」
真依と千冬が私にシャーペンを握らせ作文用紙の上に押さえつけた。
「遠慮しないで…私達『友達』でしょ?」
恵里香は冷たく笑った。
その声を聞きながら私は無理やり作文を写させられた。
そんな私たちの周りでクラスはやっぱりいつも通り賑わっていた。

10:ゆうか:2017/10/29(日) 08:42

「昨日提出してもらった作文の中にまったく同じものが二つありました。」
翌日の国語の授業で先生は入るなり固い声でそう言った。
読みます、と言って先生が読み出した作文は当然恵里香のものだ。私は身体中がどんどん冷えていくのを感じた。ガクガク震えてくる。
「…もう1人が全く同じものを書いています。一体これはどういうことかしら?」
先生が、私の顔をじろりと睨みつけた。
言わなきゃ…恵里香が写せって言ったって。
でもそうしたらきっと「どうして?」って聞かれる。
そうしたら恵里香達からいじめを受けていることを言わなきゃならなくなる。
それは嫌だ…‼先生に言ってしまったら仲直りできなくなってしまう。
また前のように楽しく笑ったり、おしゃべりしたり…。
その時、
「…ひどい‼」
恵里香が声をわぁっとあげて泣き出した。
「西村さん!?」
「ひどい、美和…盗作するなんて!先生私、美和がどうしても作文かけないから、参考にしたいからって言うから見せたんです。まさか、全部真似するなんて!」
「…恵里香…!?」
私は耳を疑った。
「ひどい美和」
「サイテー、盗作なんて」
千冬と真依の冷たい声が上がる。
先生の私を見る目がどんどん険しくなってくる。
「ち…ちがう…ちがいます!私はっ…」
「何が違うの?ねぇみんなも見てたよね?美和が恵里香の作文見ながら書いてたの。」
千冬の言葉に先生はクラス中を見渡した。
「そうなんですか?どうなんですか?」
クラスのみんなは俯いて黙りこくっている。
「…そうですか」
先生は冷ややかに言い放った。
「高野さん、一行でもいい、自分の考えを書くのが作文ですよ。体裁をとりつくろおとして作文が上手な人のものを写すなんて最低です。こんなに情けない気持ち私は教師になって初めてです。…西村さん」
先生は優しい眼差しを恵里香に向けた。
「もう泣かなくていいですよ。大丈夫、先生はあなたを信じてましたから。」
恵里香は顔を手で覆ったまま頷いた。
そのまま、もう何も無かったように授業に入っていった。
私は頭の中が真っ暗になっていた。

11:ゆうか:2017/10/29(日) 09:28

休み時間のチャイムが鳴り学校中がざわめき出す。
そんな中私は席を立てないでいた。
「ちょっといつまでここにいんのよ」
千冬と真依が私の椅子を蹴った。
「ドロボーは早く教室から出ていきなさいよ」
「警察に自首してきたら?」
「今の格好じゃドロボーだってわかんないわよ」
2人の後で恵里香がニヤニヤ笑いながら言った。
「背中にドロボーですって書いといてあげたらどうかしら?」
「うん、それがいいね」
「…やめて‼」
私は抵抗しようとしたけど千冬と真依に押さえつけられて動けなくなった。
恵里香はそんな私の制服のジャケットを脱がせて白いシャツの背中に油性マジックを押し付けた。
「恵里香!」
「やーん、動いたら上手にかけないー」
「やめて…やめて‼何でこんなことするの!?」
必死に叫ぶ私に恵里香は鼻歌を歌うように言った。
「面白いから」
「…え…」
「ほら出来た!じゃ、さよならー!」
そう言って、恵里香は私を廊下に突き飛ばし教室のドアを閉めた。
「開けて…開けてーっ‼」
どんなに叫んでも教室の中から恵里香たちの笑い声が聞こえてくるだけで誰も開けてくれない。クラスの…誰も…。
「え…何あのこの背中?」
「『私は人の作文を盗作するドロボーです』だって」
廊下を行き交う生徒達のひそひそ話が聞こえてくる。
私はたまらなくなって学校を飛び出した。
何度も何度も耳の奥底で恵里香の言葉が響き渡る。
《おもしろいから》
《おもしろいから》
《おもしろいから》………


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