崖っぷちなやつら

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1:うさぎのツノ:2018/04/29(日) 21:25

【ざっと大まかあらすじ紹介】
司法試験合格したての新米おちこぼれ弁護士である葉ノ宮つかさは、亡くなった父親が経営していた『葉ノ宮弁護士事務所』の所長を引き継ぐことになる。

しかし営業成績は悪く勝率も0%、依頼人は来ない……
このままでは事務所の経営が破綻してしまう。

そんなある日、ひょんなことから殺害容疑をかけられた脱獄犯、篠塚鋼をかくまうことに。
冤罪を晴らすため、つかさと鋼は証拠集めに奔走する。

2:うさぎのツノ:2018/04/29(日) 21:50

・葉ノ宮つかさ(はのみや つかさ)♂ 25years
弁護士をしていた父に強制され、弁護士の道を歩むことになった。
しかし父が亡くなり、葉ノ宮弁護士事務所を25歳という若さで継ぐことに。
民事裁判しか経験がなく、勝率も低いため依頼人はあまりいない。

自称天才と謳っており、司法試験の成績もトップクラスと、天才に見合う頭脳は持っている。


・篠塚鋼(しのづか はがね)♂ 23years 
貴崎亮太郎殺人の罪を着せられ、懲役10年を言い渡されてしまう。
2年前に投獄されたが、刑務所内で起きた爆発事故のどさくさに紛れて脱獄した。
つかさに出会い、彼の事務所に匿ってもらうことになる。

血の気の多い性格で怒りっぽいため、よくトラブルを起こす。
身体能力が非常に高い。母親を幼くして亡くしているため、炊事や洗濯などの家事もお手の物。


・貴崎亮太郎(きざき りょうたろう)♂ 60years
鋼に殺されたとされる男性。貴崎財閥の取締役だった。


・三廻部 心鈴(みくるべ ここり)♀ 28years
殺人事件の担当刑事で、脱走した鋼の行方を追っている。
しっかり者で気が強い。

・貴崎 京太郎(きざき きょうたろう)♂ 30years
貴崎財閥の跡取り息子で、取締役の遼太郎が殺されたことで多大な権力を持つ。
鋼のことを知っているらしい。

3:アーリア◆Z.:2018/04/29(日) 21:58

個人的に興味がわきそうです!
頑張ってください(最近は「頑張って」という言葉も禁止ワードになりつつありますが、私に害意はありません)。

4:うさぎのツノ:2018/04/29(日) 22:04


──いいか、つかさ。お前は立派な弁護士を目指すんだ。
小さな諍いから大きな事件まで、勝て!とにかく勝つんだ──


まるで、目の前の墓石から聞こえるようだ。


俺の親父は小さい頃の俺に何度もそう言い聞かせ、洗脳しようとしていた。
勝つことへの執着心は異常なくらいで、少し滑稽だった。
勝つことが全てだと力説する親父を、俺はいつも冷めた視線で見ていた気がする。

まぁ、そんな親父のもとに生まれた俺の運命は決まっているわけで。
弁護士になる以外の道なんて用意されているわけがない。

中学に上がった時には進級祝いだとか言って、六法全書を買い与えられたこともある。
与えられた本は、本と呼べるか怪しいくらい分厚く、人を殴る鈍器のようだった。
司法試験をパスしてから、親父の呪縛から解放されたくてその六法全書を売り飛ばしたっけか。


そんなことを思い出しながら、俺は墓に花を添えた。
別段、悲しみを感じることもなく。
ただただ他人事のように、誠に遺憾です、と心で呟いて。

5:うさぎのツノ:2018/04/29(日) 22:05

>>03 ありがとうございます!
頑張って、が禁止ワードになりつつあるんですか……
素直に応援だと受け取らせていただきます!

6:うさぎのツノ:2018/04/30(月) 11:49

墓参りを終えてその場から立ち去り、帰路についた。

しがない小規模ビルの3階が、俺の住居兼仕事場だ。
エレベーターもなく、ところどころ赤錆に浸食されている古びた階段を上った先にある。
ガチャリと鍵を開ければ、いつもの散らかった事務所がお出迎えだ。

「やっべ、燃えるゴミの日って今日か。あぁーすっかり忘れてたー」
床に散乱するカップ麺の容器やコンビニ弁当の蓋、割り箸を無造作に地区指定のゴミ袋へ突っ込んでいく。
ここ最近まともな手料理を口にしていない。
いつもレトルトやコンビニ弁当、栄養補助食品で済ませる。
そしてそのゴミは床や机に置きっぱなしにし、いつの間にかゴミで溢れかえっているのが現状だ。
家事ができないほど多忙なわけでもない。むしろ暇だ。
単純に家事ができないだけである。

掃除や洗濯、炊事もできる家政婦でも雇えたらと願うものの、そんな経済的余裕はない。
なんせこの事務所はそう、経営難なのだから。

依頼が一つもないとなると、ニート同然の状態だ。
父の残した貯金で何とか生活しているものの、このままでは貯金も底を尽きてしまう。
「手っ取り早くでっかい事件とっ捕まえて解決できたら、事務所の評判上がるよなぁ……」
そう呟いた直後、ぐぅーっと腹の虫が鳴き始めた。

「……まずは飯だな」
俺はスラックスの尻ポケットに革財布を突っ込むと、行きつけの定食屋へ向かった。
冷蔵庫は確認するまでもない。
どうせ使いもしない調味料と麦茶しか入っていないのだ。

7:錦はがね:2018/06/17(日) 12:41

錦はがね(前うさぎのツノ)です。
しばらく他の作品を中心に執筆していたため、こちらの更新がだいぶ疎かになってしまいました。
本日より少しずつ亀更新ですが進めていきたいと思います。

8:錦はがね:2018/06/18(月) 22:14

 事務所の鍵を閉めて赤錆びた階段を下り、人影疎らな昼間の道を歩く。
 暖かな日差しにモンシロチョウと、麗らかな正午。
 この時間だと、犬を連れて散歩する老婦人や子連れの親子と数人すれ違うくらいだ。
 夕方以降はこの道もサラリーマンや学生でごった返すため、このくらいが丁度いい。

 行きつけの定食屋は、事務所から歩いて約20分のところにある。
 日替わり定食が美味しいと評判で、和食洋食中華と幅広いメニューが出されるので毎日行っても飽きない。
 しかも300円、ご飯おかわり無料。
 その辺の社員食堂より遥かにコスパが良い。

 週に数回は昼食か夕食をそこで済ませているため、店長のおじさんとは顔見知りだ。
 温厚で親しみやすい中年のおじさんで、以前は三ツ星レストランを営んでいたらしいが、紆余曲折あって今の定食屋に落ち着いたという。
 もっと客足があってもよいと思うのだが、あまり繁盛はしていないらしい。

 なんせ近くに、大規模な刑務所があるからだ。

 日本でも数か所しかないという、死刑囚も収容される刑務所。
 犯罪者が収容されている刑務所の周辺は、住民も気味悪がって避ける。 
 駅や住宅街からその定食屋に行くためには、どうしても刑務所の前を通り抜けなくてはならない。
 
 こんな立地だから繁盛しないんだよ、なんて店主と語ったこともあったが、代々受け継いだこの土地を手放すつもりはないらしい。
 本人がそれでいいならいいし、俺も刑務所を気味悪がって避けるような玉じゃないから、これまで通り利用するだけだ。


 そんなことを思いながら歩いている内に、刑務所前へと差し掛かった。
 


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