脱出 〜デスゲーム〜

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1:ちか◆g:2019/05/19(日) 10:23

誰かを救うためには誰かが犠牲にならなければいけない―――


感想◎ 荒らし× なりすまし×

2:ちか◆g:2019/05/19(日) 10:50

「ただいま」も言わずに、靴を脱ぎ捨て、すぐに自室へ向かう。

今日は非常に眠かった。

私の足音に気がついたのか母がこちらを向く。

「あら、帰ってたのね。おかえり」

「ただいま」

私は無愛想に答え、自室のドアを開ける。

私はいつもは真っ先に宿題をする派なのだが今日は真っ先にベッドに倒れこむ。

倒れこんだ瞬間、一気に眠気は襲ってきた。

意識がぼんやりとしていき、私は寝た。


「………い……おーい。聞こえてんのかー?」

誰かが私に呼びかけてるような気がした。

体を起こし、誰かを確認する。

「……ぬいぐるみ?」

右耳は破れ、継ぎはぎのクマのぬいぐるみがボタンの目で私を見つめていた。

あ、これは夢だな。私はすぐに気がついた。

「ぬいぐるみじゃなーーーーーい!!!おれは悪魔だ。次、ぬいぐるみだなんて呼んだら、どうなるか分かってんだろ
 
 うな?」

「悪魔…?」

クマは誇らしげに話した。

「そうさ、おれは悪魔なんだ。夢の中のわっるーい、悪魔さ。おれたち悪魔はテキトーに人を選んで、夢の中に連れ去

 り、夢の中に閉じ込めてしまうんだ。お前は運が悪かったな。

 あ、いいことを教えてやろう。おれたちが命令を出す。その命令に全部従えたら、出してやるよ」

「おれたち」ということは他にも悪魔が複数いるのだろうか?

夢の中に連れ去った?もし「命令」とやらに従えなければ――――。

「命令に従えなかったらどうなるの……?」

「おっと、物好きだねぇお嬢ちゃん。従えなかったら―――――


 死んでもらうよ」


「し、死ぬ?夢の中で?」

「夢の中だから大丈夫だと思ったか?もう二度と目を覚まさなくなるよ。

 だからせいぜい頑張ってね。

 おっと、言い忘れた。閉じ込められてるのはあんただけじゃないよ。だから協力して頑張るんだね。

 さ、他のやつらはこっちにいるから――――」

とクマは言い。私を暗闇に突き落とした。

3:ちか◆g:2019/05/19(日) 11:09

気がつくと、私はつめたい床の上に倒れていた。

辺りを見渡すと、人が一人だけいた。

クマは「閉じ込められてるのはあんただけじゃないよ」と言っていたが、私の他は一人しかいないのだろうか?

「やっと起きたみたいだね。じゃあ命令を始めるよ」

クマの姿は見えないのに、声が部屋中に響き渡った。

「ちょ、ちょっと待って!」

私は思わず、声をかけた。

「ん、なんだい?」

「閉じ込められてるのって二人だけ?」

「ううん。他にも違う部屋にいるよ」

「会える?」

「ここの部屋を脱出できて、生きていたらね」

クマはニヤリと笑った。

「それって、死ぬかもしれないっとこと?」

私よりも先に、私と閉じ込められている人が聞いた。

「うん。じゃあ命令に移ってもいいかな?」

私たちは返事が出来なかった。

死ぬかもしれない………。

「命令1。

 ―――鍵を制限時間内に見つけてこの部屋から脱出しろ―――

 制限時間は二人の自己紹介とかもかねて、今回は長めに設定してあげるよ。

 生きていれば、これからも協力していく「ペア」となるから、しっかりとね。

 「ペア」っていうのはね、これからの命令でも一緒になることが多いよ。「ペア」の片一方が死んだら

 一人で行動することになるから「ペア」はちゃんと守ってね。

 命令1の時間制限は2時間。命令1だから、簡単だよ。これからもっと楽しませてもらわないといけないからねぇ。

 ルール説明は終わり!

 ―――スタート―――」                                         

4:ちか◆g:2019/05/19(日) 12:04

「おれはお邪魔だと思うから失礼するよ」

といいクマは姿を消した。

「と、取り合えず自己紹介でもしましょうか…?」

と私は話しかけてみた。

「あ、うん。そうだね。僕から言うよ。

 僕の名前は 福積 千夜(フクズミ チヤ)チヤって呼んでくれて良いよ。

 年齢は16で高1だよ。帰宅部だから、足手まといになったらごめんね……」

チヤと名乗った人は気弱そうな人だった。

ブカブカな黒い服を着ており、襟ぐちは大きく開かれていて肩から今にも服がズレ落ちそうだった。

丈も長く、尻まですっぽりと隠れる長さだった。

明らかにサイズが合っていないようだが、そういうのが流行っているのだろうか?流行に疎い私にはさっぱり分からな

い。

「……この服装気になる?」

ジロジロ見すぎたのだろうか。チヤが自分から聞いてきた。

「あ、はい。私、流行に疎くて……」

「あはは、流行ではないと思うよ

 あ、時間もないと思うし、自己紹介お願いしてもいい?」

私は「はい」と言い、自己紹介をする。

「私の名前は 桜木 凪(サクラギ ナギ)です。ナギって呼んでくれていいです。

 歳は14で中二です。部活は陸上部をやってるので、チヤさんを連れて逃げるのは任せてください!」

「……頼もしい」

とチヤがつぶやいた。

「あ、ありがとうございます。

 あの、自己紹介も終ったので、そろそろ鍵を探しませんか?」

「そうだね、どこにあるのか全く分からないし、散らかしてみる?

 散らかすのは……得意なんだよね」

最後の一言を聞き、チヤの自室は想像できた。

「そうですね、散らかしてみましょう」

二人で散らかしていると、思ったより早く、容易に見つけることができた。

「思ったより……早く見つかったね」

「はい。あとはこの鍵で脱出するだけですね」

私はドアに鍵を差し、まわすとカチャリっと開く音がした。

ドアノブに手をかけまわして開けて見ると、何も見えないほど真っ暗な空間が広がっていた。

「い、行きますか……?」

思わず足がすくみ、チヤに聞いた。

「行くしかないよね。僕が先に行くよ」

チヤはそう言い、足を踏み出した瞬間チヤは消えた。

「ち、チヤさん?」

とドアの向こう側に行ったはずのチヤに呼びかけるが返答は返って来ない。

もしかして、真っ暗な空間には道はなくてチヤさんは堕ちた……?

私は落ちることを覚悟して、一歩踏み出す。

思ったとおり、そこに道はなく私は闇に堕ちて行った。

クマに突き落とされた時のように……。

もしかしたら、ここでの移動方法は堕ちることなのかもしれない。

私はそんなことを考えていたが、すぐに気を失ってしまった。

5:ちか◆g:2019/05/25(土) 13:03

「……さん…ナギさん…!」

私は誰かに呼びかけられる声で目が覚めた。

「ナギさん…!大丈夫?」

チヤが私を心配そうに見ていた。

「ち、チヤさん……ここは…?」

私はあたりを見渡した。チヤと私以外にも複数人の人がいて、みんな私と同じように混乱した様子だった。

「ここは命令2を行うところだよ。でも、新しく会う人もいるから情報交換をする時間を与えてあげるよ」

クマがチヤの代わりに答えた。

「く、クマ…!命令2の内容って……?」

「それはぁ教えられないよ。そんなことよりも情報交換……自己紹介をしておくといいさ。

 これから協力していくことになるからね。


 ……生きていれば…だけどね。


 それじゃぁ俺は失礼するよ」

クマは質問をする時間を与えずにさっさと消えてしまった。私だけではなく、他の人たちも呆然としているようだっ

た。

その中でも、スーツ姿のしっかりとしたような風貌の男性が皆に話しかけた。

「敵の言うとおりにするのは悔しいが、情報交換は必要だと思う。自分がなにものか。

 ここに来る前、何をしていたか。命令1の内容とか…。

 最低限の情報でいい。初対面の人を怪しんで自分のことを言いたくないのは分かる。

 だからこそ、皆を信用して言ってくれる人はいないか…?」

私たちは俯いたままで誰も言おうとしない。


「私……言ってもいいです」


小さい声だが確かに聞き取れた。

「私、皆さんのこと信用してみます!」

そういって立ち上がったのは私と同じくらいの年齢に見える、制服姿の女の子だった。

6:ちか◆g:2019/05/25(土) 13:31

「私の名前は 宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)です。

 15歳で中学生です。まさか…こんなことが起きるなんて思いませんでした…」

コトと名乗った女の子は勇気を出して、自分のことを話した。

「ここに来る前、何してた?」

スーツ姿の男性が聞くとコトは少し思い出すような素振りを見せた。

「そうですねぇ……。あ…確か、私は受験勉強してて疲れて寝ちゃったはずです。

 いつもは寝ないのに……」

「命令1の内容は?」

スーツ姿の男性がまた問う。

「【ペアと協力してドアを破壊する】という内容でしたよ。幸い、ペアが男性で、ドアが思ったより脆かったので助か

りました」

「そうか……命令1の内容は同じとは限らないんだな。

 俺とペアが実行した命令1は【鍵を探して脱出する】とうものだった。

 命令1は簡単に作られているようだな」

「そ、その命令1の内容は私たちと同じです…!」

私が口を挟むと、男性はこちらを向いた。

「同じ?命令1はランダムだったのか…?なんか遊ばれているみたいで悔しいな…」

男性はなにかを考え始め黙り込んでしまった。


「このスーツ男。人の情報は聞くのに、自分のことは何も言わないんだね」


誰かがつぶやく声が聞こえ、私は反射的に振り返ってしまった。

目が合う。

「なに?だってそう思わない?人のこと聞くなら先に自分から話すのが常識だろ?」

スーツ姿の男性は彼のことを見ていた。

彼の言うことは正しい。でも、そんなにはっきりと言わなくても………。


―――喧嘩の火種になる。


 

7:ちか◆g:2019/05/25(土) 13:48

「そ、そうだな。すまない」

スーツ姿の男性は私が思っていなかった、大人な反応をした。

「俺の名前は 依田 信二(ヨリタ シンジ)だ。

 32歳の会社員だ」

32歳…。学生だけかと思いきや、色々な年齢層の人が閉じ込められたのだろうか?

どっちにしろ、大人がいてくれると安心する。

「ヨリタさんは私のペアです」

とコトは言った。

大人の男性がペアならコトの心配は要らないだろう。少し安心した。

「きみは自分のこと、話したくないのか?」

ヨリタは私に聞いてきているようだった。

「あ、私も…自己紹介します!

 私の名前は 桜木 凪(サクラギ ナギ)です。

 歳は14で中二です。なので…コトさんと仲良くできたら嬉しいです…!」

「わ、私もナギさんと仲良くしたい!よろしくね、ナギちゃん!」

コトは顔を少し赤らめて言った。

8:ちか◆g:2019/05/25(土) 13:50

>>7名前ミスりました。
コトのペアはヨリタではないです。まだ名前が明かされていない男性です。

9:ちか◆g:2019/05/25(土) 14:11

「そろそろ、僕も自分のこと話したほうがいいよね…」

チヤが小さな声で言った。

「ああ、簡単なもので構わん」

ヨリタがそう言うと、チヤは話し始めた。

「僕の名前は 福積 千夜(フクズミ チヤ)

 年齢は16で高1だよ。ナギさんのペアね」

「ナギとチヤがペアか……。

 コトのペアは自分のこと…話したくないか?」

今までずっと黙り、私たちと会話のする気のなさそうな男性に聞いた。

「あぁ俺か。俺は 倉井 俊介 (クライ シュンスケ)

 17歳の高校生」

シュンスケは私たちのほうも見ずにそう言った。

「あまり俺たちに協力する気配はなさそうだな…」

ヨリタは彼の様子を見てそういった。

私のペアはチヤ、コトのペアはシュンスケ、ヨリタのペアは…?

『このスーツ男。人の情報は聞くのに、自分のことは何も言わないんだね』

とヨリタに悪態をついた男性を思い出した。

「あ、あの。ヨリタさんのペアって…もしかして…」

「あ?あぁ。彼じゃないよ。俺のペアは命令1の部屋を出てからはぐれてしまったんだ。

 俺のペアもはやく捜さないとね……」

ヨリタは辺りを見渡しながらそう言った。

部屋がたくさんあり、見つけるのは時間がかかりそうだ。

10:ちか◆g:2019/05/25(土) 14:27

「きみのペアはいなくなったのか?あと、そろそろ自己紹介を頼む」

とヨリタは彼に言った。

「……美川 京(ミカワ キョウ)

 21歳。大学生。

 僕のペア?そこにいるじゃん」

そう言って、キョウと名乗った男性が私たちの後ろのあたりを指差した。

「え?」

私たちが振り向くと、少しはなれたところに壁にもたれかかって座っている女の子がいた。

ヨリタが駆け寄って優しく話しかける。

「どうしたんだ?」

「あ……あの、えっと、私……。話すの…苦手で…」

彼女はしどろもどろに話した。

「そうか…。自己紹介はできるか?」

ヨリタは慎重に話しかける。

「は、はい。私は 柚木 桃香 (ユギ モモカ)です…。

 中一…です」

「よし。良く頑張ったな」

とヨリタは言った後、キョウに向き直る。

「こんな状態のモモカとどうやって命令1をクリアしたんだ?」

「えっと――――」

11:ちか◆g:2019/05/25(土) 14:51

「【ペアと協力してドアを破壊する】ってコトさんたちと同じ命令だったよ。
 
 モモカさんに話しかけてもまともに話してくれなかったから、モモカさんのこと何も知らないけど…」

『まともに話してくれなかったから』って……。もう少し相手を思いやった言動ができないのだろうか。

中一の女の子がこんな人とペアだと心配だ。

「おい!クマ!いるんだろ?出てきてくれ!」

ヨリタが不意に呼びかけた。

「な、何故クマを……?」

コトが不安そうに問う。

「なにか用かい?さっかく寝てたのになぁ」

クマが何もなかった空間からいきなり現れた。


「ペアって代わる事はできるのか?」


「えぇ?うん。いいよ。でもペアの交替は一度きりにするよ。

 ちゃんと、しっかり話し合って決めてね。

 もういいかな?失礼するよ」

クマは再び消えた。

一度きり………。今するべきなのか、とっておくべきなのか…。

「交替は…とっておくべきだと思います。

 まだ、どんな人なのか分かっていないし……」

「僕もコトと同じで交替はとっておくべきだと思うな…」

コトとチヤはヨリタにそう言った。

キョウがどういう人か分からないけど、モモカを放っておくのは危険なような気もする。

12:ちか◆g:2019/05/26(日) 15:17

「それはそうだな…。でも、ペア関係なくできるだけ大人数で動くように気をつけろ」

「はい」と私たちはヨリタの言うことに頷いた。

「もう、いいかなぁ?命令2を始めるよ」

クマはいつものようにどこからともなく現れた。

誰も返事はしない。死ぬかもしれないのに覚悟を決められるわけがない。

「う〜ん。相変わらずみんな、おれのこと無視するね。肯定ってことでいいかなぁ?」

クマは私たちに答える暇も与えず続きを話し始める。

「命令2。

 ―――かくれんぼ―――

 ルール説明をするね。

 そこのキミ」

クマはそういい、ヨリタを指す。

「キミのペアは命令1の部屋から出てからはぐれてしまったんだろう?

 キミのペアと同じように命令1の部屋から出て違うところに飛ばされた人が、あと3人いるんだ。

 その人たちを捜してあげてね。制限時間内に彼らを見つけないと、見つけられなかった人たちは死ぬよ。

 彼らの命はキミたちにかかっているのさ。よろしくね?

 制限時間内は3時間。十分だろう?じゃあ……

 ―――スタート―――」

私たちに命がかかっている?

そんなの重すぎる……。

そんな重大なこと、私が出来るのだろうか?

もし、見つけられなかったら―――――――――。

私が思考を廻らせていると、不意に肩にぬくもりを感じた。

「大丈夫だよ。ナギちゃん。みんなで協力するんだから…。ね?」

コトが私の様子に気づいてか、私の肩にポンと手を置き、優しく言った。

「こ、コトちゃん……。ありがとう」

私はコトに笑顔を向けた。

心配させてはいけない。私だけではなくコトも……みんな不安なのだから。

13:ちか◆g:2019/05/26(日) 17:24

「そろそろこの部屋を出て他の部屋を探索してみようか」

ヨリタは立ち上がって私たちに声をかけた。

「ねぇ、別行動なの?それと………」

チヤはそういって、モモカに視線を向けた。

「全員で行動するようにしよう。モモカは…歩けるか?」

「歩け…ます…」

モモカはヨリタの手を借りて立ち上がった。

「キョウ、キミがモモカの世話をするんだ」

ヨリタは私たちが思ってもいなかった発言をした。

「何故……キョウさんに…?」

私は思わず尋ねた。

「キョウが直接モモカになにかしたわけじゃない。

 ただ口調がきついだけかもしれないだろ?このゲーム内では仲間を信じることが大切だ……。

 それに、これから先ペアで動かされることもあるかもしれん。今のうちに慣れておかなければな…」

ヨリタは「モモカをよろしくな」と言い、キョウの方へ促した。

「えぇ、なんで僕が……はっきり言って足手まと…」

体格の良いヨリタがキョウを睨み付けるとキョウは呆気なく黙った。

「はいはい、僕がモモカさんに手を貸せばいいってことだね」

キョウはそういうと、モモカに肩を貸した。

不安だけど何事もなく全員を見つけ出せればいいのだが……。

「じゃあ行こうか」

ヨリタは先頭で歩き始めた。

「みんな、しっかりついてくるんだよ」

14:ちか◆g:2019/05/26(日) 17:56

<人物まとめパート1>
【仲間】
・桜木 凪(サクラギ ナギ) 
年齢:14歳 学年:中二 部活:陸上部 ペア:チヤ
外見:身長は152a 体重は41kg セミロングの髪型 目が大きく可愛らしい顔立ち 
備考:主人公

・福積 千夜(フクズミ チヤ)
年齢:16歳 学年:高一 部活:帰宅部 ペア:ナギ
外見:身長は165a 体重は48kg 黒髪でストレートな髪型 中性的な顔立ち 細身な体型

・宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)
年齢:15歳 学年:中三 部活:吹奏楽部 ペア:シュンスケ
外見:身長は155a 体重は43kg 髪型二つ結び 童顔 大人しそうな雰囲気

・依田 信二(ヨリタ シンジ)
年齢:32歳 ペア:???
外見:身長は183a 体重は68kg 髪型は短髪 はっきりとした顔立ち 筋肉質 
備考:まとめ役

・倉井 俊介 (クライ シュンスケ)
年齢:17歳 学年:高二 部活:パソコン部 ペア:コト
外見:身長は174a 体重は58kg 髪型は前髪が目にかかっている 暗い雰囲気
備考:協力する気はない

・美川 京(ミカワ キョウ)
年齢:21歳 学年:大学生 ペア:モモカ
外見:身長は168a 体重は52kg 癖毛 顔は整っているが性格が悪いと思われがち

・柚木 桃香 (ユギ モモカ)
年齢:13歳 学年:中一 部活:文芸部 ペア:キョウ
外見:身長は148a 体重は38kg ロングヘア 可愛らしい顔立ち
備考:コミュ障

【敵】
・クマ(悪魔たち)
夢の中にみんなを閉じ込めた悪役。
外見:右耳は破れ、継ぎはぎのクマのぬいぐるみ。目はボタン

※詳しいことが決まれば人物のまとめを再び出すかもしれません。

15:ちか◆g:2019/05/29(水) 19:07

ヨリタが私たちのいた部屋の隣の部屋のドアをそっと開ける。

中は真っ暗で音は一つも聞こえない。

「誰かいないか!!!」

ヨリタが真っ暗な空間に向かって呼びかけた。

返事は返って来ない。いないようだ。

「部屋は何部屋あるんでしょうか……」

コトがヨリタに聞く。

「見たところ……5部屋だな。部屋数も少ないし、時間もある。みんな、焦らずに捜そう」

「はい」と私たちは返事をした。

ヨリタが部屋の外に出て、また隣の部屋のドアをそっと開ける。

電気は点いており、うずくまった人の姿がはっきりと見えた。

「だ、大丈夫ですか!!!!????」

私は思わずかけよる。

「大丈夫です……。

 ヨリタさん…。あなたなら私を見つけてくれると……信じていました」

確か、ヨリタは『ペアとははぐれた』と言っていた。それなら彼女は――――

「ヨリタさんのペアですか…?」

「ああ、そうだ。【ペア】だけじゃない。彼女は会社の同僚だ。

 ツグミ。みんなに自己紹介をしてやってくれ」

ツグミと呼ばれた女性は「はい」と大きく頷いた。

ヨリタの方が上司なようだ。

「私の名前は 明石 亜実(アカイシ ツグミ)です。

 28歳でヨリタさんと同じ会社に勤めています」

ツグミもヨリタと同様、スーツを着ており、しっかりとした雰囲気の女性だった。

「ツグミは今回の命令は知っているのか?」

「はい、知っています。【かくれんぼ】ですよね?

 私は隠れる役でした…。本当は速く見つけて欲しかったんですけどね。私は物音に気づいてくれたおかげで…」

隠れる…というより隠される側の人間の方も今回の命令の内容は知っているようだ。

なら、見つけてもらうためにツグミのように物音を出すなどして存在を知らせてくれるのかもしれない。

「知っているのなら話は早い。次の部屋に入ろう」

ヨリタはそういい、隣の部屋のドアを開けようとする。


「あ、開かない……?」


ヨリタはドアノブをガチャガチャと回す。

しかし…開かない…。

「そ、そんな……。誰かいるの!!??」

チヤは部屋に向かって呼びかける。


「いる!!います!!助けて…」


中から声が聞こえた。

「何人だ!!??」

ヨリタが呼びかける。

「2人です!!だけど、中からは…どうにもできない…」

「そんな…!!今助ける!!」

そういい、ヨリタは力ずくでドアをこじ開けようとする。

「ヨリタさん待ってください…。まだ時間はあります!!落ち着いてドアを開ける方法を考えましょう!!」

私はそう言ったが、全くと言っていいほどドアをあける方法は考え付かなかった。

16:ちか◆g:2019/05/31(金) 17:51

「ガラスを割るしか……」

ヨリタは手を振り上げる。

「ま、待ってください!!!」

私は慌てて止める。

「ヨリタさんが怪我してしまうじゃないですか!!それに、穴を開けたとして、ある程度の大きさじゃないと入れませ

んし、仮に人が通れる大きさの穴が出来たとしても、通っている間にガラスの破片が突き刺さってしまいます…!」

「クソ…!どうすれば…」

ヨリタは再び手荒にドアをこじ開けようとする。

「なにか方法があるはずです!シュンスケさんもこんな時ぐらい協力してください…!」

私は興味がなさそうに辺りをフラフラしているシュンスケに声をかけた。

「俺は協力する気はないね。俺には関係ねえから」

あまりにも冷たすぎる態度に私は呆気にとられていると―――――


ガシャン!!!!


ガラスの割れる音が不意に聞こえた。

まさか…ヨリタが素手で……ガラスを……。

この私の考えはドアの方を見た瞬間打ち消された。

―――キョウが左手にそれほど大きくない金属のような棒を持っていたのだ。

キョウの見ている方向には小さな穴があった。

「その穴の大きさじゃ手しか入らないじゃないか。一体どうするつもりだ」

ヨリタはその小さな穴を見ながら言った。

「ヨリタさん。その穴に手を入れてみてよ」

ヨリタは言われ通り恐る恐る手を入れようとする。

「ヨリタさん…!危ないです!」

コトがとっさにヨリタの手を掴んで引きとめる。

「大丈夫だ」と言い、ヨリタはガラスの破片に当たらないようにそっと手を入れた。

「……これは……!!」

ヨリタが目を見開く。

「うん」とキョウが頷くとヨリタはゆっくりと手を回し始めた。

動いたら危ないと思い、私が止めようとしたが、その必要はなかった。


―――カチャリ


鍵の開くような音が聞こえたのだ。

17:ちか◆g:2019/05/31(金) 18:21

「なんで…開いたの?内側に鍵があったのだったら中に閉じ込められている人たちは開けれるんじゃないの?」

チヤが私が同じように思っていた疑問を述べる。

「ドア、開けて見て」

チヤはキョウに言われるがまま開ける。

部屋には真っ暗な空間が広がっていた。

「内側に鍵があることに気がつかなかったのか…!」

ヨリタがそう言い、「なるほど」と私たちは納得する。

「一番最初の部屋も真っ暗だったから、この部屋も真っ暗で閉じ込められた人たちは内鍵の存在に気づいていないん

 じゃないかって思ったんだ。最初は閉じ込められた人にドアのもとまで行かせようと思ったんだ。

 でも、真っ暗な部屋で人を歩かせるのは危ないと思ってね、外側から内鍵の近くのガラスを割って、手を入れて

 開けることにしたんだ」

キョウが頭の整理のつかない私たちに説明した。

キョウは今まで人のことを考えた発言ができていなかったため、キョウが協力的な行動をとったのは意外に思えた。

「なぁ電気はないのか?」

私が思考を廻らしている間もヨリタは部屋のドアの近くを手探りで電気を探していた。

「ないみたいですね……」

私も同じように探ったが手に何かがあたる感触は感じられなかった。

「大丈夫か!?出てこれるか!?」

ヨリタが部屋の方に向かって呼びかける。

「大丈夫です…!」

部屋の中の二人は廊下の薄暗い電気を頼りに恐る恐る出てきた。

閉じ込められていたのは制服を着た女子高生と優しそうな男性だった。


「お前だったのか………。助けるんじゃ…なかった……」


消え入りそうなぐらい小さな声が聞こえた。

声のした方を見ると殺意のこもった目で男性を見るキョウの姿があった。

18:ちか◆g:2019/06/01(土) 18:01

「キョウ…さん?どうしたんですか?」

私は小声でキョウに呼びかけた。

「あ、あぁ。全員見つかって良かったんじゃない?」

まるで会話が噛み合っていない。やっぱり何かこの男性と過去に何かが―――――

「やぁ。命令2は達成できたみたいだね。次のルール説明に移ってもいいかな?」

いつものように突然クマが現れた。

「待て。この二人との情報交換が先だ」

ヨリタは女子高生と優しそうな男性を指した。

「そうだね。ごゆっくりどうぞ」

クマはそう言い。再び消える。

次のルール説明、とクマは言っていた。やはり命令はまだ続くのだろうか……。

「じゃあ、俺から話します」

優しそうな男性がそう言い、話し始める。

「俺の名前は 神埼 優(カンザキ ユウ)です。

 年齢は21歳で大学生です。

 さっき、あんな部屋にいた。理由は分かりません…。命令1をクリアして、部屋を出ると下に落ちていくような感覚

 がしました。その後気を失って、気づいたらあの部屋でした」

21歳で大学生………。キョウさんと同じだ。やはり何か関わりが……。

「キョウとは知り合いか?」

ヨリタはキョウを指しながら言った。ヨリタもキョウと同じ21歳で大学生というところに疑問を持ったようだ。

「…ち、違います。知らない人です」

ユウはキョウを見た瞬間、少し表情が変わったような気がした。

驚いたような、戸惑っているような……。

「そうか」

ヨリタはそれ以上追及しようとはしなかった。

「あ、あの、私も話したほうがいいですよね…?」

女子高生は遠慮がちに言った。

19:ちか◆g:2019/06/01(土) 18:24

「ああ、頼む」

ヨリタがそう言うと女子高生は話し始めた。

「私の名前は 綾瀬 楓(アヤセ フウ)です。

 17歳の高校2年生です。

 あの部屋に閉じ込められていた理由は私も分かりません…。気づいたらあの部屋にいました。

 あ、私はユウさんのペアです」

「そうか。ありがとう。

 おい、クマ!情報交換は終った。次は何の用だ!」

ヨリタが何もない空間に向かってクマを呼ぶとクマは姿を現した。

「あぁ終ったんだね。じゃあ少し話しをさせてもらうよ。

 みんな、そろそろ命令にはなれたかい?」

なれるっていうか…。まぁ簡単だし…。と私たちは思い、曖昧に頷く。

「簡単だって思ってるでしょ?これからメインの命令に移るよ。

 今までの命令はサブだと思ってくれていいよ。これからメインの命令を合計三回下すよ。

 生き残っていていたら生き残っていた人の勝ち!どうだい?楽しそうだろ?

 メインの命令の間にもサブの命令をちょくちょく挟んでいくよ。サブの命令は休憩だと思ってくれていいよ。

 これまで通り簡単だからね。

 試しに今からメインの命令1をやってみよう。

 …あ、ちなみにメインの命令では必ず最低一人は死ぬよ」

「ま、待ってよ!今からって……。まだ覚悟できてないよ!!」

チヤは焦ったようにクマに訴えかけた。

「大丈夫だよ。メインの命令も最初は難易度を低めにしているからね」

「でも…最低一人は……死ぬんでしょ?」

コトが怯えたように聞くとクマは悪気のないように「うん」とあっさりと頷いた。

「そんな…!どうすれば!!!」

動揺がどんどん広がっていく。

「みんな、落ち着いて!少し時間をくれないか?クマ」

その中でもヨリタは私たちに何かを訴えかけようとしていた。

「…少しだけね」

20:ちか◆g:2019/06/01(土) 18:41

「みんな!!落ち着いて俺の話を聞け!!」

ヨリタの声に私たちは少し平静を戻した。

「これから最低一人死ぬことは確実だ…。その中でも協力していくことが大事なんだ!!

 絶対に殺し合いなんかしちゃいけない!これから聞く命令の内容がどんな内容だとしても平静を出来るだけ保つんだ!

 焦っちゃいけない。正しい判断をして、出きるだけ犠牲が出ないようにしよう…!分かったな!?」

焦ってはいけない。私は自分に言い聞かせた。私は命令の内容を聞く覚悟を決めた。

チヤもコトも先程よりかは平静を保って、覚悟を決めているように見えた。

「やれやれ。暑い事言うねえ。それじゃあメインの命令1を言うよ。

 メイン命令1。

 ―――女神の生け贄―――

 ルール説明をするね。

 この棟の中央に女神の像があるんだ。100年に1度女性を生け贄に捧げないといけないんだ。

 それで今日は丁度、100年に1度の生け贄を捧げる日なんだ。だから、せっかくだからキミたちに犠牲になってもらお

 うと思ってね。ちなみに生け贄は女性じゃないといけないんだ。ここを注意して生け贄を決めてね。

 男性を捧げたところで意味はないんだ。この空間は壊れて、おれたちもキミたちも全滅だよ。

 制限時間は3時間に設定しておくけど手早く決めてね。それじゃあ………。

 ―――スタート―――」

21:ちか◆g:2019/06/02(日) 16:08

クマは命令の説明をするだけして、姿を消してしまった。

辺りは静まり返り誰も口を開こうとしない。

誰か一人を生け贄にしなければいけない…。

「誰かさっさと生け贄になってくれ。あ、そうだ。モモカがタヒねばいいんじゃないか?」

それほど大きくない声だったが静まった空間で確かにそう言ったのがはっきり聞こえた。

――――シュンスケが…。

「わ、私……?そうですよね…。私、みんなの役に立てないし迷惑かけてばっかり。

 私が生け贄になります……」

「シュンスケ…!!なにを言ってるんだ!?モモカが生け贄になる必要はない!!子どもをころすなんて絶対しちゃい

 けないことだ!!」

ヨリタが慌てて反論をする。

「じゃあ誰が死ぬっていうんだよ?本人も死ぬっつってんだよ。誰か一人を犠牲にしないと全滅だぞ?わかってんのか

 よ!!」

「ヨリタさんの言う通りです。子どもを生け贄にするのはあってはならないこと……。

 ここは大人の私が生け贄になるわ」

今まで黙って話を聞いていたツグミが口を開いた。

「ツグミ…!!ダメだ!!!!!!」

ヨリタは慌ててとめる。その様子を見てシュンスケが嘲笑う。

「ヨリタさんはツグミさんとモモカ。どっちが死んで欲しくない?ツグミさんだろ?

 やっぱり役立たずのモモカを生け贄にするべきなんだよ。

 あ、それとも役立たずのチヤが死ぬ?」

私はシュンスケの言葉に違和感を感じた。

『ちなみに生け贄は女性じゃないといけないんだ。ここを注意して生け贄を決めてね。

 男性を捧げたところで意味はないんだ』

クマは確かそう言っていたはずだ。

「待ってください!生け贄になるのは女性ではないといけないはずです!チヤさんを生け贄に捧げたとして無駄死に

 になってしまいます…!!」

全滅だけは免れないと……。私はそう思いシュンスケに説明する。


「知ってるよ」


シュンスケは当たり前だろ?とでも言うようにそう言う。


「チヤは男性のふりをした女性だ。

 チヤ……キミが死ぬべきだ。発言力がなくて体力もない。高校生だからモモカほど幼くない。

 だから、みんなもモモカを生け贄にするよりも心は痛まないはずだ。キミが生け贄に抜擢なんだよ。

 だから――――――――――――

                                     死んでくれ。チヤ」

22:ちか◆g:2019/06/02(日) 16:43

「チヤさん…!!女性じゃないですよね!?」

私はチヤに問う。

「………」

チヤは無言のままだ。これでは肯定したようなものじゃないか…!!

「いいがかりだ!!チヤが男装する理由なんてないじゃないか!!」

ヨリタがチヤを庇う。

「お前はチヤの何なんだ?チヤの何が分かる?なにかしらの理由があるかもしれないだろ!

 それでお前はチヤを庇ってどうするんだ?他に誰が死ぬんだ!!??チヤかモモカが死ぬしかないんだ!」

シュンスケは目血走らせていた。感が高まっているようだ。

「僕の…」

チヤが恐る恐るといった様子で口を開いた。

「僕のどこが女性だと思ったの…?僕を生け贄にしても意味はない。死にたく……ない……」

「その黒いブカブカな黒い服…。体のラインを隠そうとしてるんじゃないか?

 喋り方も女みたいだ。一人称が「僕」っていうのも男のふりをしていることからの罪悪感じゃないのか?

 何故男のふりをしているかは分からないが、自分の身を守るためにしていることはなんとなく分かるぞ。今だって、

 そのおかげで助かっているじゃないか!!!」

シュンスケは早口でまくしたてた。

チヤは肩を震わせて俯いたままで反論をしようとしない。

否定してくれ…。私はそう思った。【ペア】というだけで特別な関係はないが、命令1のときチヤのおかげで私は脱出

できた。きっと一人だったらパニックになって何もできなかっただろう。お願い…反論して…。

「あはっ……あはは。スゴイ想像力だね。でも、キミの推理は全部間違ってるよ。

 ブカブカな黒い服でラインを隠そうとしてるって?笑えるね。そんなわけないじゃないか」

チヤは躊躇うことなく黒い上着を脱ぎ捨てた。

チヤが肩を震わせていたのは泣いていたのではなくて笑っていたのか……。

チヤはシュンスケの推理をさらに覆す。

「一人称が「僕」っていうのも男のふりをしていることからの罪悪感ってさらに笑わせるね。

 だったらキョウくんもそういうことになるんじゃない?キョウくんの一人称も「僕」だ。

 自分の身を守るために男装?意味が分からないね。

 これで、僕が死んだところで無駄死にってことが分かったでしょ?僕の他に死んでもいい人を決めるんだね」

チヤが捲くし立てるとシュンスケは呆気に取られているようだった。

死んでもいい人――――――――――――

そんな人なんで誰もいない……。

誰を生け贄にすればいいんだ?

―――――――――――― 私…か?

23:ちか◆g:2019/06/02(日) 18:18

「んなっ…!じゃあやっぱりお前がタヒね。モモカ」

シュンスケは矛先をモモカに戻す。

「あ、あぁぁぁ。さっきは私が生け贄になります…なんて言いましたけどやっぱり死ぬのは……怖いです…」

コトは震えるモモカの背中を優しくさすった。

「モモカちゃん……大丈夫だから…」

モモカの嗚咽だけが聞こえる中、フウが小さな声で呟いた。

「私……生け贄になってもいいです」

フウの表情に怯えた様子はなく、既に覚悟は決まっているようだった。

私たちが呆然とした中、フウは続ける。

「私、実は自殺しようとしてたんです。

 親からもクラスメートからも嫌われていて辛かったんです。私のことを好きになってくれる人はいないんだってこと

 やっと分かって、死ぬ覚悟は決めていました。でも、いざ屋上に行くと怖くなってたった一歩が踏み出せなかったん

 です。私は今が今度こそちゃんと死ぬ機会だと思ったんです。しかも今回は私の死が人の役に立てる。

 こんなチャンスはもう二度と来ないと思います。長く語ってすみません。私のことなんて興味ないですよね。

 短い間でしたが…ありがとうございました!

 みなさんお元気で…!!」

フウはそう言うと中央にある女神の像の下へと歩き始めた。

後ろを振り返ろうとはせず、一歩一歩には躊躇いがなかった。

止めるべきなのか、止めないべきなのか私は迷った。どっちか彼女にとって良いことなのか……。

女神の像まであと3歩……。

「フウちゃん…!!!!!私はお前のこと好き!!!!」

コトが掠れた声でそう言った。

「少ししか話したことないのにそんなこと言わないでよ…。

 死ににくくなっちゃうじゃん……。またね…コトちゃん。私もコトちゃんのこと大好き!!」

フウはそう言って、誰にも止めさせまいと女神の像の下へ走った。

フウが女神の像の下まで辿り着くと女神の不気味に光った。

その瞬間、フウの姿は跡形もなく消え去った。

残ったのはフウの身につけていたブレスレットだけだった。

 

24:ちか◆g:2019/06/02(日) 18:22

>>23
ミスです。
「フウちゃん…!!!!!私はお前のこと好き!!!!」ではなくて
「フウちゃん…!!!!!私はキミのこと好き!!!!」でした。
もともとこの台詞はヨリタに言わせるつもりだったので「お前」となってしまいました。

この小説見てる方いますかね?
感想お待ちしております。

25:ちか◆g:2019/06/03(月) 13:27

「このブレスレットはキミが持っておくんだ」

ヨリタはフウの身につけていたブレスレットを手に取ると、女神の像の前で嗚咽を漏らしていたコトに渡した。

コトはブレスレットを受け取ると、手首に身につけた。

「フウちゃん…。フウちゃんの分まで頑張るからね…!」

私はこんな時でも人のことを想って泣けるフウを美しく思った。

私はフウが死んだ悲しみよりも、次は自分が死ぬかもしれないという恐怖に吞まれていた。

『じゃあ誰が死ぬっていうんだよ?本人も死ぬっつってんだよ。誰か一人を犠牲にしないと全滅だぞ?わかってんのか

 よ!!』

と騒ぎ立てていたシュンスケも流石に黙っていた。

「みんな、ここで立ち止まっていても仕方がない。フウを無駄死にしないようにするんだ。

 これ以上誰も死なせやしない。みんなで脱出するんだ…!!」

ヨリタは力強くそう言ったが、ショックで誰も動こうとしない。

「そりゃ…そうだよな。今すぐ動けないよな…。

 なら、今動ける人だけでも最善をつくそう。今、少しでも動ける人は俺のまわりに来てくれ」

ヨリタは再び私たちに声をかける。

私は遺された人たちのためにも少しでも最善をつくしたい、うじうじしていても仕方がないと思い、私はやっとの思い

で立ち上がった。

ヨリタのもとへ来たのは、チヤ キョウ ツグミ ユウ 私 の5人だった。

シュンスケが来なかったのはショックで動けなかったのではなく相変わらず協力する気がないからだろう。

「…まずは【ペアの交替】をするべきだと思うよ。モモカさんやシュンスケさんのことも考えてね」

チヤがそう言うとヨリタは少し悩んだ後、話し始めた。

「俺が思う、最善なペアは ツグミとモモカ シュンスケと俺 コトとチヤ………。

 ん?待てよ。フウがいなくなったから奇数になるじゃないか…!!」

この場合はどうするのだろう…。最悪の場合、また一人が死ななければならないのか…!?

「あぁその説明してなかったっけ?」

クマが不意に現れ面倒くさそうに説明し始めた。

「ペアが死んだ場合は一人行動だよ。だから今回みたいに奇数でペアを入れ替えるのならペアが既に死んでいる人
 
 が出てくるね」

「ペアが死んだ場合不利になることはあるのか…?」

「ペアで命令に従わなければいけない内容のときはペアが死んでいた場合、ペアは死んだ人のダミー人形になるよ。

 ダミー人形だからペアは人形として存在はするけど全く役に立たないから不利になるよ」

なら、フウのダミーのペアになる人は自分の意思で動けるしっかりした人ではならないといけないのか。

「なるほど。なら、最善なペアを考え直さないといけないな。

 俺とシュンスケ ツグミとモモカ。これは絶対だ。あとはキョウを見張ってくれる人が欲しいな。

 彼はサブ命令2のとき協力はしてくれたものの何を考えているか分からない」

26:ちか◆g:2019/06/03(月) 13:44

「モモカさんは弱い人ではないと思うわ。だから、モモカさんを精神面でサポートしてくれる人がいるのなら、私はフ

 ウさんのダミーのペアになります」

ツグミがそう言うとヨリタは悩みこんだ。

「私がモモカちゃんを精神面でサポートします…!」

いつの間にか目元を真っ赤にして泣き腫らしたコトの姿があった。

「コトは…大丈夫なのか?」

ヨリタの問いにコトは大きく頷く。

「私に出来ることは精神面のサポートだけなんです。その役、私にやらしてください」

ヨリタは「頼んだよ」と言って優しくコトの頭を撫でた。

まだペアが決まっていないのは チヤ キョウ ユウ 私の4人だった。

私はキョウとユウを一緒にしてはいけないと思い、私はキョウの見張りを立候補することにした。

「私がキョウさんの見張りをします」

ヨリタは残ったメンバーを見て「そうだな」と頷いた。

「見張りはナギが最適だな」

「そんな…!ナギさんが!?危険じゃないの?僕が見張ろうか?」

チヤが心配そうに言った。

「チヤ、ナギ。少しこっちに来てくれ」

ヨリタは私とチヤをみんなから少し離れたところに呼び出した。

「ナギはもう、気づいてるかもしれないが……キョウとユウのことについて話したいことがあるんだ」

27:ちか◆g:2019/06/03(月) 14:06

「サブ命令2で、部屋の中からフウとユウを救出したときのことだ。

 キョウはユウの姿を見たときに

 『お前だったのか………。助けるんじゃ…なかった……』

 と小さく言っていた。聞こえたのは俺だけだと思っていたけど、ナギはそれが聞こえた瞬間、キョウの方を見ていて

 たから気づいていたんだろ?」

私も聞こえてたのは私だけだと思っていたが、ヨリタも聞こえていたのか…。

「はい。そのときのキョウさんは殺意のこもったような目でユウさんを見ていました」

「そう、そこが問題なんだ。あの二人は間違いなく過去に会っていたことがあってトラブルがあったはずだ。

 だから、あの二人を放置しておくとあの二人の間でなんらかのトラブルが起きる可能性がある。

 大きな問題にもなりかねない。

 そこで、ナギにはキョウ。チヤにはユウを見張っていて欲しい」

私とチヤは「はい」と頷いた。

「頼んだぞ」と言うとヨリタはみんなのいる方へ行き、最善なペアを発表していた。

「聞いてくれ。俺の中での最善なペアを考えたんだ。異論があったら迷わず言ってくれ。

 俺とシュンスケ コトとモモカ ナギとキョウ チヤとユウ ツグミとフウのダミー。

 …異論はあるか?」

私は異論はなかった。みんなも納得しているようだった。

「クマ!!ペアの交替は終ったぞ!!」

ヨリタが呼びかけると、クマが現れた。

「ほぉ、良く考えたペアだねぇ。じゃあこれでもう確定するよ。

 今日はメイン命令もあって疲れただろう?個別の部屋を用意しているからゆっくり休むといい。

 三日後にメイン命令2を出すからね。覚悟を決めておくんだよ」

クマは私たちを小さな個別の部屋に案内すると、とっとと消えてしまった。

夢の中でこんなに疲れたのは初めてだ。

部屋に入って座っていると、どっと疲れが来たので少しの間考えることをやめて休憩することにした。

28:ちか◆g この小説みてる方いますか?:2019/06/03(月) 20:02

改めて確認すると部屋の中には小さなベッドとモニターしかなかった。

モニターは真っ暗で点く気配はない。

なんのためにあるんだろう?

不意にコンコンっとノックが聞こえた。

「少し、入ってもいいかい?」

ドアの向こうからクマの声が聞こえた。何の用だろうか。

「何の用?ドア越しに伝えてくれない?」

クマは敵側なので私はクマを部屋に入れて二人っきりになるのは避けることにした。

「う〜む。警戒してるようだね。二者面談をしにきただけだよ。おれたち悪魔はデスゲームの参加者の精神的サポート

 も必要だからねぇ。で、仲イイ人は誰だい?」

クマは学校の先生が聞くような質問を投げかけてきた。

「コトちゃん…かな」

私は隠す必要もないので素直に答える。

「そうなんだね。コトのところにも二者面談に行って来たけど「ナギ」って言っていたよ。

 これから、心配なことは?」

これからのこと、全てが心配だ。と言いたいところだったが、一番心配なことを告げる。

「新しくペアになった、キョウさんとの相性……」

「なるほどね」とクマは言い、私が思ってもなかったことを口にする。


「彼は大嘘つきだよ。彼の嘘を暴くのもペアのキミの使命じゃないかなぁ」


「どういう…こと?」

クマは「詳しくはプライベートのことだから言えないけど…」と少し考えてから言った。

「根本的な嘘をついてるんだよ…」

29:ちか◆g:2019/06/06(木) 17:38

「ど、どういうこと!?」

その嘘がデスゲームに関係することだったら大変なことになりかねない。

「んー、デスゲームに関係することではないよ。でも、彼の嘘で仲間内での空気は険悪になる可能性はあるね」

「そんな……!」

命令に従うためには「チームワーク」が一番大切だ。険悪にさせるわけにはいけない。

「これ以上のことは詳しくは言えないよ。

 だいぶここで時間をくってしまったようだね。おれは他の奴らのとこにも二者面談しに行かないといけないから

 失礼するよ」

クマはそう言うとさっさと消えてしまった。

ただ中学生の私に出来ることは「人と人のつなぎ役」

それぐらいだ。私は「チームワーク」が崩壊する前に嘘を暴くことを静かに決心した。

まずはキョウとユウの関係について情報を集めよう。私はチヤと合流したときにユウが何か情報を漏らしていないかに

ついて聞いてみようと思った。

考えていると少し疲れてきたので部屋の隅に追いやられているベッドに寝転がった。

すると、すぐに眠気が襲ってきた。

夢の中なのに眠れるんだ。

そう思うと同時にこれがただの夢ではないことを改めて実感する。

このまま寝ようとしていると再びコンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「起きてる?飯持ってきてやったよ」

クマの声が聞こえた。このような場所でもご飯はくれるんだなと思った。アメとムチの原理で

私は「ありがとう」と言いかけたが、クマは私たちを夢に閉じ込めた悪い奴だということをとっさに思い出し無言で

受け取る。

「なんだよぉ。せっかく持ってきてあげたのに「ありがとう」の一言もないのぉ…?」

私が無言で受け取るとクマが不満そうな声をあげたので私が「あ、ありがとう…」というとクマは満足そうに帰ってい

こうとした。

このご飯は食べても大丈夫なのだろうか…?

「ちょ、ちょっと待って!!」

私が慌てて止めるとクマはゆっくりと振り向いた。

「毒…とか入ってないよね?」

私がそう言うとクマは自分の体に縫い付けられたポケットから紙を取り出した。

「この紙に書いてあるとおりね、おれたちクマは直接参加者に危害をくわえていはいけない決まりになってるんだ」

30:ちか◆g:2019/06/06(木) 17:40

>>29
ミス。
「おれたちクマは直接参加者に危害をくわえていはいけない決まりになってるんだ」…×
「おれたち悪魔は直接参加者に危害をくわえていはいけない決まりになってるんだ」…○

31:ちか◆g:2019/06/06(木) 17:55

【ゲームを進行する悪魔たちのきまり】

1.参加者に直接危害をくわえてはならない。
2.食事は与えなければならない。
3.参加者の体調管理はしなけなばならない。
4.参加者に触れてはならない。


紙にはそう書かれていた。

この【きまり】はクマの上の人たち。…つまり黒幕が作ったのだろうか。

「取り合えず、おれたちには警戒しなくてもいいってことさ。ちゃんと食べるんだよ。キミたちが体調崩して怒られる

 のはおれたちだ」

そう言うとクマは部屋を出て行った。

クマが持ってきた料理を改めて見るとハンバーグにレタス、スープなどと以外と普通なもので食べてみると味付けも

良かった。お腹いっぱいになって再びベッドに寝転がった。

キョウの嘘や明日の命令のこと。そもそもクマたちは私たちを脱出させる気があるのか。

一人になると、不安なことばかり考えてしまうので早めに寝ることにした。

と、いっても時計がなく、時間なんて分からないのだが。そもそもこの空間では時間がないのだろうか。

もし、時間が進んでいたら今頃家ではいつまで経っても目覚めない私を家族は心配しているだろうなと思った。

――――必ず脱出する。

みんなで、だ。

これ以上犠牲を出してはいけない。

私はフウのことを想った。

32:ちか◆g:2019/06/22(土) 10:34

「……おーい、起きてるかー?」

不意に部屋にクマの声が響き渡り私は目を覚ました。

声のする方に向くと、モニターの画面にクマの顔が映っていた。

「起きたようだねぇ。それじゃあ、昨日みんなが集まっていたメイン部屋に来てね。

 あ、拒否権はないよ。来なければキミは死ぬからね〜」

プツリとモニターは消え、再び真っ暗な画面が広がった。

こんなところで死ぬわけにもいかないので、私はすぐさま行くことにした。

部屋から出、私はうろ覚えに廊下を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。

「おはよう、ナギちゃん」

振り向くと、柔らかい笑みを浮かべたコトが立っていた。

その優しい表情中に、疲労が雑じっているような気がして私は少し心配になる。

「おはよう。コトちゃん……どうしたの?なんか…しんどそうだけど…」

「な、なんでもないよ」

コトは必死に笑顔を取り繕っているようだった。

「コトちゃん…。私、協力するよ。大丈夫だから…」

私はコトの手を優しく包んだ。コトは私の手を握り返すと躊躇い勝ちに口を開いた。

「じ、実はさっき自分の部屋から出たときに部屋の目の前にこんな紙が落ちてたの」

コトは制服の胸ポケットから紙を取り出して私に見せた。


【ここに連れてこられたのは偶然やランダムじゃない。お前らには心当たりがあるだろ?】


鉛筆かシャーペンのようなものでしっかりとした字で大きくそう書かれていた。

「偶然やランダムじゃない。お前らには心当たりがあるだろ?って書かれていたから、私たち何か悪いことしたのかな

 って思って…。コトちゃんは何か心当たりある?」

私も人に恨みを買うようなことなどしていない。

「ん〜、心当たりはないかな…」

「だよねー。これ、誰が書いたのかな?敵側が書いたのかな…。でもあの子達ぬいぐるみだし…」

「う〜ん…敵側が全員ぬいぐるみだとは限らないし、仲間の中にこのデスゲームの真相をしっている人がいるのかも」

私は仲間の中に裏切り者がいる可能性も考えたが黙っておくことにした。

「まぁ考えたって分からないよね。いたずらの可能性もあるし、あまり気にしないで置こうか」

コトは紙を再び胸ポケットにしまった。

メイン部屋に着くと、私とコト以外の全員がすでに集まっているようだった。

私はヨリタとユウが真剣に話しこんでいるのが目に入った。

33:ちか◆g:2019/06/22(土) 11:05

ユウが話し終え、ヨリタから離れて行くと私はすぐにヨリタに駆け寄った。

「何を話していたんですか?」

「…キョウのことだ。キミにはユウとの話しの内容を伝えるべきか迷ってるんだキョウのペアとして知っておいたほう

 がいいのか悪いのか」

ヨリタは最後の方は私に言ってるのではなく独り言のように呟いているようだった。

私はクマとの会話を思い出した。

『彼は大嘘つきだよ。彼の嘘を暴くのもペアのキミの使命じゃないかなぁ』

ユウとの会話がキョウの嘘に繋がるのであれば、私は仲間内で険悪な空気になるのを防ぐために知っておかなければ

ならないと思った。

「あの、ヨリタさん…昨日、クマが言っていたんですけどキョウさんは大嘘つきらしいです。

 その嘘を暴くのが私の使命でもないんじゃないのかなって言われたんですけど……。

 ユウさんとの会話はそれに関係しそうですか?」

「そうだったのか…!関係するかどうかは分からないが、許容範囲の話の内容を教える。

 ユウのペアはチヤだろ?チヤも連れてきてくれないか?ユウにも関係することなんだ」

「分かりました」と私は言い、辺りを見渡してチヤの姿を探した。

チヤがユウと話している姿が見え、チヤと目が合ったので、私はユウに気づかれないようにチヤに手招きした。

チヤはユウに「少し抜けるね、ごめん」と言って、私たちの方へ来た。

「少し場所を変えよう」

私とチヤはヨリタについて行き、みんなから少し離れたところで話をすることにした。

「ユウから気になることを聞いたんだ。この話はユウやキョウ、他の人にも言ってはいけない。約束できるか?」

「はい」と私たちは頷くとヨリタは重い口を開いた。そして思いも寄らないことを言った。



「キョウは既に死んでいるのかもしれない…」



 

34:花鳥風月:2019/06/30(日) 19:23

「ど、どういうことですか!?」

「ユウが言うに、キョウは高校生の頃に自殺しているんだ。

 ユウとキョウは高校の同級生らしい。何故自殺をしたのかはユウも分からないと言っていた」

キョウは自殺をしていた…?

なら、ここにいるキョウは――――――――

幽霊…なのか?

「じゃあ、キョウくんは何でここにいるの?実はキョウくんは生きていたって落ち?」

チヤが聞く。

「ここは夢の中だ。死んだ人間も来れるんじゃないのか?」

なるほど、と私とチヤは頷く。

「キョウさんは「生きている」ってことが嘘だったんでしょうか…?」

「いや…微妙だな…。キョウは自分で「僕は生きている」と言っていないからな」

確かに「僕は生きている」とキョウは言っていない。もし、彼が死んでいたとしても嘘をついていることにはならない

のだ。

「なら…嘘とは一体…?」

「考えるだけ無駄だ。想像にすぎない。いつか本人の口から吐かすしかないだろう。

 この話から推理できることは【死んだ人間もこの空間に来ることができる】だ。

 もしかしたら、消えてしまったフウたちも助けることが出来るかもしれない…」

『助けることが出来るかもしれない』

私たちに少し希望が与えられたような気がした。



――――――――――推理に…すぎないが、だ。

35:あ:2019/07/04(木) 18:43

「はいはい、注目〜」

クマが短い手をパンパンと叩く。

「みんな集まったし命令するよ。

 サブ命令1。

 ―――拘束を解け―――

 ルールはまぁそのまんまの意味だね。拘束を解くんだ。

 ペア同士で手首と足首を片一方ずつ拘束するから鍵を見つけて拘束を解くんだよ。ペアとの相性が試されるね。

 制限時間は…んー、そうだねぇ……サブだし一日あげるよ。

 それじゃあ…―――スタート―――」

クマが「スタート」と言うのと同時になにもなかったところに手錠が現れ、私とキョウの手首を拘束した。

足元を見ると二人三脚の状態になっていた。

辺りを見渡すとみんなもペアどうしで拘束されていた。

取り合えず、鍵を探さなきゃ…。

辺りには鍵が置いてそうなところはない。

「移動しましょう」

私は足を踏み出そうとしたが、キョウと息が合わず私はバランスを崩し、私たちは転倒してしまった。

「痛!」

「……何してんの?」

キョウは冷たい目で私を見ていた。

―――私だけが悪いんじゃないのに…!

「キョウさんもちゃんと息を合わせてくださいよ!!立てりますよ!せーの!!」

しかし、上手く息が合わず、再び転倒してしまった。

「ちょ、ナギさん重い重い重い!!」

私はキョウに折り重なるように転倒していた。

…重いとは失礼な!!

「ご、ごめんなさい…!」

文句を飲み込み私は取り合えず謝った。

36:ちか◆g:2019/07/04(木) 19:45

私はふと気づいた。

―――キョウは体温がある。

生きている…のか?死んでいないのか?
ならユウの知っているキョウは何者なんだ?
私の頭の中で疑問が溢れる。しかし、答えなんて見つかるわけがない。


「何ぼーっとしてんの?取り合えずどいて!!」
私はキョウに押しのけられ我にかえる。
私は身動きにしにくい拘束された体をなんとか動かした。
「あ、すみません…!取り合えず立てりましょうか。せーの!!」
やっと私たちは立てる事が出来た。
「鍵を探しにあの部屋へ入ってみましょう」
私は適当な部屋を指した。
「そうだね。ナギさん、次こそ転ばないでね」

―――だから私だけが悪いんじゃないってば…!

私は争ってる場合ではないと思い、その言葉を腹の底に飲み込んだ。
私たちは転倒しないようにゆっくりと覚束ない足取りで部屋へ向かった。
やっとのことで部屋に入ると、私はさっそく探索を始めた。部屋の中は意外と綺麗に整頓されていた。それほど時間は
費やさなくても大丈夫そうだ。
私たちは時間のロスを少なくするため言葉も発さず、黙々と探索を続けた。
時間のロスを少なくするため、といっても実質、話さないのは彼と話すことなどないからなのだが…。


部屋の探索を一通り終えると、「ここにはないみたいだね」と言って他の部屋を探索すること3時間。
一向に鍵は見つからなかった。
私たちは少しの間だけ休憩することにした。

「はぁ一体どこに隠してるんだよ……鍵なしで開けられないかな」
キョウはガチャガチャと手錠をいじった。
「まぁ無理でしょうね…。まだまだ時間もありますし、焦らずに探しましょう」
「そうだけど24時間も他人と拘束されたまま過ごすなんて絶対無理だろ。最大でも5時間ぐらいじゃない?さ、行こ行こ」
私はキョウに急かされるまま立ち上がった。
あんまり休憩してないのに……。

私たちは再び、部屋を入っては出るの作業を繰り返すことにした。


*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*
文章の書き方変えました!!
前の書きかたの方が良かったな、と思ったら教えてください~!

37:Re~ありさ:2019/07/04(木) 20:45

>>36
初見失礼します(^^)とても面白いです
投稿頻度もちょうどよくて、いいです!!

文章の書き方ですが、今の方がいいと思いました。(個人の感想です)
これからも読みます‼よろしくお願いします!

38:ちか◆g:2019/07/05(金) 17:58

>>37
見てくださってありがとうございます!!
受験生なので投稿頻度が下がってしまうかもしれませんがこれからも宜しくお願いします<(_ _)>

わかりました!では次回もこの書きかたで行かせてもらいますね~!
ありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします!!

39:花鳥風月:2019/07/08(月) 17:19

「キョウさんは仲間を信頼してますか?」
探索中、私は何気なく問いかけた。
「いいや、少なくともあのスーツ男とユウさんのことは信頼してないね」
キョウは冷たく言い放った。
スーツ男とはヨリタさんのことであろう。
「…そうなんですか。私は皆さんとのこと信頼…してます」
私が言い切るとキョウは冷たい目で私を見た。
「どうせ、口だけでしょ?」
「そんなことありません!!キョウさんは冷たいこと言いますけど、本当はいい人だって、信じてまよ!」
「どうせ口だけだ」とキョウに言われることを覚悟していたのだが、キョウは呆然と私を見るだけで何も言ってこなかった。キョウの真っ黒な瞳をみていると吸い込まれそうだった。

「あ、あの…」
私は静かな空間に少し気まずくなり、話しかけた。
「あ、ごめん…えっと…僕…」
キョウは何か言いかけたが口を閉ざしてしまった。
「どうしたんですか?」
私が問いかけるとキョウは意を決したように私を真っ直ぐな目で見た。

「俺、実は――――――――」

キョウがそう言うと同時にカチャリ、とドアの開く音がしヨリタとシュンスケが入ってきた。
「どうしたんだ?二人ともそんなに改まって…。お邪魔してしまったか?
でも、キョウ。女子中学生とは駄目だぞ」
ヨリタが真顔でそんなことを言い放った。
「いやいやいやいやいや!!そんな趣味ないから!!!!」
キョウは今まで見たことのなかった必死さで否定していた。

―――『実は』の続きは聞けそうにないな。

一体なんだったんだろう、と考えているとヨリタが不意に話しかけてきた。
「ナギは何か手がかりを見つけたか?」
「いや、まだ鍵も見つけられていません」
「そうか…どこにあるんだろうな」
そういうとヨリタは部屋の中の机の上を探り始めた。
ふと、シュンスケの方を見ると、シュンスケも意外にも鍵を探しているようだった。

「手分けした方が早いよな…。俺たちはキッチンみたいな部屋に行ってくるからナギとキョウは実験室みたいなところを探してきてくれないか?」
ヨリタは私たちにそういい残すと部屋を出て行った。

40:花鳥風月:2019/07/08(月) 19:55

番外編(フウ)

「私、実は自殺しようとしてたんです。
親からもクラスメートからも嫌われていて辛かったんです。私のことを好きになってくれる人はいないんだってこと
やっと分かって、死ぬ覚悟は決めていました。でも、いざ屋上に行くと怖くなってたった一歩が踏み出せなかったん
です。私は今が今度こそちゃんと死ぬ機会だと思ったんです。しかも今回は私の死が人の役に立てる。
こんなチャンスはもう二度と来ないと思います。長く語ってすみません。私のことなんて興味ないですよね。
短い間でしたが…ありがとうございました!
みなさんお元気で…!!」

言い切った。言い切ったぞ。私はもう、過去みたいな弱い私じゃないんだ。
私は女神の像まで歩きだした。

――――嫌な思い出を思い出しながら…。

一歩踏み出す。
私はクラスメートに屋上に閉じ込められたことを思い出す。
私は「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝るが、彼女たちは私を開放する気はない。私を見て高笑いをしている。

二歩目を踏み出す。
私は親に裏切られたことを思い出す。
私は親にいじめのことを相談する。親は「今、忙しいから」と言って、私の相談を明日に後回しする。
明日も明日に後回しする。そして明日も――――。

三歩目を踏み出す。
私はあの、ヒドイ担任の先生を思い出す。
私は先生にもいじめのことを相談する。先生は「彼女らにいじめをやめさせる」と私に約束する。
しかし、実際は先生は彼女らを注意すらしていなかった。

女神の像まで後一歩。

「フウちゃん…!!!!!私はキミのこと好き!!!!」

突然私に声をかけられ、私は思わず振り向く。
そう言ったのはコトだった。私は思わず嬉しくなるが、すぐにその感情を抑える。

―――私は今から死ぬんだ。

この決意は今さら変えれない。
「少ししか話したことないのにそんなこと言わないでよ…。
死ににくくなっちゃうじゃん……。またね…コトちゃん。私もコトちゃんのこと大好き!!」

41:花鳥風月:2019/07/08(月) 19:58

フウの番外編が思ったより長くなってしまったので、次に番外編#2を更新します~!
他のキャラの番外編が見たい!というのがあればリクエストお願いします!

42:花鳥風月:2019/07/09(火) 19:42

番外編(フウ#2)

私はそう言うと、決心をし、誰にも止めさせまいと振り返りもせず女神の像の下へ走った。
走っている間、みんなのことを考えていた。

コトちゃん。コトちゃんの持ち前の明るさで、みんなと仲良くして欲しいな!
ユウさん。サブ命令2の【かくれんぼ】で、私たちが閉じ込められたとき、怖がる私を励ましてくれて安心できました!
ヨリタさん。あなたがいるととても安心できます!みんなのことをよろしくお願いします。
チヤさん。今まで通り、みんなに優しくね!絶対、みんなで脱出するんだよ!
シュンスケさん。いつか、みんなと笑って話せるときが来ることを願っているよ!
キョウさん。少し、冷たいけれど本当は優しいですよね!モモカちゃんのことよろしくね!
モモカちゃん。どうしたのかな?少し、心配だよ…?モモカちゃんと話してみたかったけれど、時間が許してくれないみたい…。
ナギちゃん。ナギちゃんともっと仲良くなりたかったなぁ…。もう誰も失わないでね!犠牲者を最低限にする。じゃなくて、みんなで脱出が目標だよ!

みんな、頑張ってね!
…少しの間だってけれど、私のこと、忘れないで欲しいな…。

―――またね。

フウが女神の像の下まで辿り着くと女神の不気味に光った。
その瞬間、フウの姿は跡形もなく消え去った。

残ったのはフウの身につけていたブレスレットだけだった。

43:花鳥風月:2019/07/09(火) 19:44

>>42
ツグミさんを忘れてしまいました~…
申し訳ないペコリ(o_ _)o))

44:花鳥風月:2019/07/13(土) 19:48

「はい…あの……話の続きを…」
私は『俺、実は――――――――』の後、何を言おうとしたのか気になって、思い切って聞いてみた。
「…あ、あぁ忘れて。…実験室、行くよ」
キョウは私と拘束されている側の手を引っ張って部屋をそそくさと出て行こうとした。私も引っ張られて仕方なくついて行く。

部屋を出ると、目の前に実験室があった。中に入ってみると、かすかに消毒の臭いがした。
「うわっ、不気味だね…」
キョウは部屋を見渡してそう言った。部屋の真ん中にはベッドがあり、その周りには点滴や注射なども置いてある。
「そうですね。手速く探索を終えて、部屋を出ましょう…!」
あまり長居はしたくないような場所だ。さっさと探索を済ませよう。まずはあの棚から……。
私が歩き出した瞬間……。

――――――――うわっ!!!!!!!!

足にぬるっとした感触がし、私は転んでしまった。

「ナギ!!!何してんの!?!?――――――――ってうわ!!な、ナギさん…足もと、それって…」
私は反射的に足元を見た。床にはドロドロとした液体が広がっていた。

……血?

「ナギさん!!大丈夫!!??それってナギさんの血じゃないよね!!??」
私は自分の足を見てみるが、傷もないし、痛くもない。
「はい。私の血じゃないです…。…ん?これって…」
私は床に違和感を感じた。
「ど、どうしたの?」
「…この床板、外すことができます!!キョウさんはそちら側を持ってください!!」
私たちは床板を外そうとしたが、ぬめぬめとした血が邪魔して上手く持ち上げることが出来ない。
どうすれば……。
「何か棒みたいな、床板を持ち上げられそうなつっかえになるものはないかな?」
キョウは血だらけの手で、ベッドの周りを探索し始めた。
「確かに、つっかえになるものがあれば床板を持ち上げることができますね。探しましょう!!」

45:花鳥風月:2019/07/15(月) 15:11

私はごちゃごちゃとした棚の上を必死に探した。
「ありました!!」
意外とすぐに見つけることが出来た。私は何に使うのか分からない、細長い棒を見つけた。
「よし!じゃあ、その棒を床板に挟んで持ち上げよう!」
私が棒を使って、少し床板を浮かせると、キョウは手で床板を外した。
床板のあった下には真っ赤な水溜りがあり、血が私たちのいる場所へと溢れ出した。
「…なんなんだ?罠だったのか!?ナギさん!血で動けなくなる前にこの部屋から出よう!!」
キョウは床に溢れ出した血に滑りながらもなんとか立ち上がった。

…あれ?水溜りの中になにか見えるような……。

「ナギさん!何してるの?早く立って!」
キョウはいつまでも座って真っ赤な水溜りを見ていた私を急かした。
「待ってください!!水溜りの中に何かあります…!!」
水溜りを凝視していると、何かがだんだんと浮かび上がってきた。
「ほ、本当だ…どうする?取ってみようか」
キョウは一瞬躊躇ったが、真っ赤な水溜りの中に手を入れ、「何か」を掴んだ。
「それって…鍵の形をしてませんか?」
血が周りに凝固して、見えにくかったが鍵のような形をしていた。
キョウは自分の着ていたTシャツの裾で血を拭った。

「鍵だ…!!!!!」

「これでやっと拘束が解ける!!」
キョウは手錠に鍵を差し込んだ。

ガチャガチャ…ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…。

「あ、あれ?おかしいな…。なんで…」
キョウは次は足の拘束に鍵を差し込んだ。

―――――ガチャッ。

足の拘束を解いた瞬間、鍵は消え去ってしまった…。

「足の拘束専用の鍵だったんですかね…。手錠専用の鍵も見つけないといけないのでしょうか」

46:セーラームーン 月にかわってお仕置きよ:2019/07/15(月) 15:12

すごい!!頑張ってください!

47:花鳥風月:2019/07/15(月) 15:15

>>46
ありがとうございます~!そう言って下さるとやる気がでます!

48:タピオカパン:2019/07/15(月) 15:25

>>47 
いえいえ〜✧◝(⁰▿⁰)◜✧

49:花鳥風月:2019/07/15(月) 16:01

>>48
実は自分もタピオカパンさんの小説読ましてもらっています!
面白いです!!頑張って下さい~!

50:タピオカパン:2019/07/15(月) 16:30

>>49
ホントですか!?
ありがとうございます!嬉しいです!(◍•ᴗ•◍)❤

51:花鳥風月:2019/07/19(金) 16:21

「そうっぽいね…。時間に余裕はまだあるのかな」
「時計がないので分かりませんけど、制限時間が24時間なので、焦る必要はないと思います」
「そうだよね……」

しばらく私たちが無言でいると、突然、カチャリとドアが開けられた。
「どうだ?何か見つかったか?
 ……って!!うわっ!!どうしたんだ…!!それ……」
ヨリタは血だらけの私とキョウに驚いたようだ。
「大丈夫か!!」
ヨリタは慌てて私たちの元へ寄ってきた。
「大丈夫です。私の血じゃないんです」
「じゃあ、その血はなんだって言うんだ!?」
「えっと、それは――――――――」
     






「なるほど…そんなことがあったのか。俺たちも鍵を見つけて足の拘束だけは解くことが出来たんだ…でも、手錠はまだ……」
ヨリタはシュンスケと拘束された左手を私に掲げて見せた。
シュンスケを改めてみてみると、かなり不機嫌なようだった。彼はメイン命令1。 ―――女神の生け贄――― の時以来、特に言葉を発していない。少し心配だ。

「二つも鍵があるとなると、少し、探索を急いだほうがいいのかもな。…行くぞ」
ヨリタはシュンスケを連れて部屋を出て行った。

…もしかすると、シュンスケはヨリタに仕切られることが気に入らないのかもしれない。
いつ何かが起きてもおかしくないぞ…。
「キョウさん!ヨリタさんが心配です…!二人の後をつけましょう!」

52:花鳥風月:2019/07/19(金) 16:49

「……」
「どうしたんですか?早くしないと見失ってしまいます…!」
動こうとしないキョウを私は急かした。
「…なんでだよ?」
「なんでだよって…。シュンスケさんの様子がおかしいんです!!ヨリタさんが心配です!!」
私は長ったらしく説明している時間などないと思い、簡潔にそう言った。
「いいんだよ。あんな御節介なやつなんて放っておいて」
どうやらキョウもヨリタのことをあまり良く思っていないらしい。
「でも……」
「あんな厳ついおっさんが男子高校生に負けるかよ。いいんだって。僕たちがしないといけないことは探索だよ」
「確かに……」

私たちは鍵の探索を再開した。
でも、本当に放っておいて良かったのだろうか。…少し心配だ。
……シュンスケが何もしなければいいのだが。

私たちは無言のまま鍵の探索を2時間ほど続けた。時計がないので、正確には何時間なのか分からないのだが。
「見つからないですね」
「…うん」
私が悪いのか、彼がわるいのか、会話は全くと言っていいほど続かない。

「ねえ…」
唐突にキョウが話しかけてきた。
「はい?」
「…そろそろ急ピッチで鍵、探索しない??」
「はい????」
『急ピッチ』は死語なのではないか?というツッコミは抑えて、私は
「なんでですか?」
と聞く。
「前にさ、24時間も他人と拘束されたまま過ごすなんて絶対無理。最大でも5時間ぐらいじゃない?って言ったよね?
もうとっくに5時間すぎてるよ!かれこれ10時間は拘束されてるんじゃない…!?」
10時間は言いすぎだと思うが、確かに5時間以上は拘束されていると思う。
キョウの言うとおり急ピッチ(笑)で進めたほうがいいのかもしれない。

53:ちか◆g:2019/07/24(水) 12:36

探索の途中、フウのダミー人形を引きずるツグミさんを見かけた。
ツグミ一人で探索しているため、手錠も足の拘束もまだ解けていないようだ。
「大丈夫ですか…?」
「え、えぇ大丈夫よ…。コトさんや、モモカさんたちの方がよっぽど辛いはず…」
ツグミは無理やりぎこちない笑顔を浮かべた。
「そうですか…」
私はそうとしか言えなかった。
「えぇ、だから私のことは構わないで、あなたたちも鍵を早く見つけなさい。キョウさん、ナギさんのこと頼みますよ?」
「分かってるって…」
キョウが小さくそう言うと、ツグミは少し微笑んで、その場をあとにした。
ツグミさんも早く鍵を見つけれるといいな…。

探索を再開する。
黙々と探索をしていると私はいろいろ考え込んでしまう。
家族のこと、学校の友達のこと、本当に脱出出来るのかどうか…本当は脱出口なんてないのではないか?そもそも何故くまたちは私たちを夢に閉じ込めたんだ?本当にランダムだったのか?何故、何故…私なんだ?
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
なんで私だけこんな思いをしなければいけないだ…!?普通に…普通に暮らしたかっただけなのに…!
しんどい。もう誰かが死ぬのを見たくない。もう、こんな思いをするのなら…私は…

―――――死にたい。

私は突然、ふらっとして冷たい床に倒れこんだ。
「…おい!ナギ!…な……ど、うし……な………………」
誰かが呼びかけている声がする。次第に意識は遠のいていき、だんだんとその声は聞こえなくなっていく。
…私、死んじゃうのかな。『死にたい』なんて思ったけど、やっぱり死ぬのは怖いよ…。
みんな…ごめんね。

私の意識は完全に途絶えてしまった。

54:花鳥風月:2019/07/27(土) 10:27

ここは…私の部屋?
何故私は今、自分の部屋にいるんだ…?だって私は今、デスゲームをさせられてるじゃないか。
私の目の前には見間違えるはずのない、見慣れた薄暗い自室が広がっていた。

―――ガチャッ

不意に扉の開く音がして、誰かが入ってくる。
誰だろう?と私は薄暗い部屋の中、目を凝らした。

え、私?

入ってきたのは『私』だった。
私はここにいるのに…。一体誰なんだ。
『私』はベッドの近くの棚の上にある小さな瓶を手に取り、錠剤を手のひらに数え切れないほど出した。

ちょっと待って!私この続き見たくない!!やめて!やめてよ『私』!!
「ねえ待って!やめて!!それを飲んだらダメ!!」
私は『私』の手を掴もうとしたがスッと私の体が透けて、『私』を触ることが出来ない。
何これ!?私が幽霊みたいじゃない!!
私はどうすることも出来ないの!?私は必死に止める方法を考えた。しかし、間に合わず………。

『私』は手のひらに出した、数え切れないほどの錠剤を一気に口に放り込んでしまった。

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

やめて、やめて!!思い出したくない!『私』、寝ないで!!お願い!!

そうじゃないと私……

――――死んでしまうの

しかし、私の願いは届かず、『私』は寝てしまった。
私は怒りなのか、悔しさなのか、悲しさなのか分からないが、負の感情を抱き、私の飲んだ錠剤…いや、『錠剤』呼ばわりをして、現実逃避をするのはやめよう。
…睡眠薬の入っていた小さな瓶を割った。

55:花鳥風月:2019/07/27(土) 10:29

>>54訂正。
改行されていて変になっていました。

<訂正>
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

56:花鳥風月:2019/07/29(月) 13:39

「ナギー?ご飯よナギー?」
一階から母の声がする。しかし、致死量の睡眠薬を飲んだ『私』は寝ているままだ。
「ナギー?どうしたのよ?下りてきなさいよ」
パタパタと音がする。母がスリッパで階段をあがってきているようだ。
私はどうすることなく、呆然と『私』を見ていた。『私』は死んでいるように眠っていた。死んでいないといいのだが…。

―――コンコン

母が私の部屋の目の前まで来たようだ。
「ナギ…?いるの?入るわよ」
ガチャ。
母は部屋に入ってくると、寝ている『私』を見て、少し呆れたようにため息をついた。
「ナーギ、起きなさい、ご飯よ」
母は『私』の体を揺さぶる。しかし、『私』はビクともしない。
「ナギ?ナギ??ナギ!!??」
何度呼びかけても起きない『私』に母は違和感を感じだようだ。
「どうしたの!!!???眠いの!?起きてよ!!!!」
母は激しく『私』を揺さぶる。しかし、『私』はビクともしない。
「……ナギ…ナギ…私、どうしよう、どうしよう……!!」
『私』を揺さぶるのを止め、母は棚の上の固定電話に手を伸ばした。
「…?なにこれ」
母は固定電話の隣にあった、小さな瓶に気がついた。中身はもうほぼない。
「す、睡眠薬!?ナギはこれを飲んだの…!?でも、なんで……」
母は泣きながら、固定電話を手にとり「110」を震える手で押した。
「なんでって…なんでって……あの男、お父さんのせいだよ!!アイツさえ…アイツさえいなければ私はお母さんと弟と、楽しく…幸せに暮らせるんだよ!!」
私は母は聞こえるはずはがないのに思わずそう母に言った。

母は電話を終えると、『私』の手を握って、祈っているようだった。
しばらくすると、救急車が来て、『私』は運ばれていった。
私は騒然とした光景を呆然と見ているだけだった。

57:花鳥風月:2019/08/01(木) 16:23

私は誰もいなくなった自室でさっきまで『私』のいたベッドに倒れこんだ。
私は自分がデスゲームに巻き込まれる前の自分の『記憶』を思い出す。


私はいつもは真っ先に宿題をする派なのだが今日は真っ先にベッドに倒れこむ。

倒れこんだ瞬間、一気に眠気は襲ってきた。

意識がぼんやりとしていき、私は寝た。


私は覚えていないのだが、さっきの光景が正しければ、あの眠気は睡眠薬による眠気だ。
あの光景は正しいのだろう…。私は父の日々の暴力に耐え切られなくなっていた。父は飲酒をすると、自暴自棄になり、私に手を出してきた。もちろん私だけではなく、弟や母にも手を出していたのだが、私にはよりいっそう酷い暴力や、罵声を浴びせていた。
なんで私ばかりなのだろう。
弟や母が助かることは嬉しいが、私は暴力を振られるたびにそう思った。そして、もう一つ―――――――


楽になりたい、と。


その日の朝、私はまた暴力を振られた。罵声はもう、痛くないからまだ耐えられるのだが、暴力は何度やられても痛い。その日はいつもより酷かった。会社でいやなことでもあったのだろうか。父は私の腹部を何度も何度も蹴った。母の温かい朝食を食べた後だった。私は気持ち悪くなったが、学校を休めば、父……いや、アイツと家で過ごさなくてはいけなくなるので、私は心配する母を無視して学校に行った。学校では友人に傷を心配されたが、無理に笑ってごまかした。ちゃんと笑えていたのだろうか。

私はもう耐えられなかった。
あのとき、私は強く自殺願望を持ったことを覚えている。それで、致死量の睡眠薬を飲んだのだろう。
今は致死量の睡眠薬を飲んだことを後悔している。なんで、あんなやつのために命を捨てようとしたのだろうと、命を賭けたデスゲームを通してそう思った。みんな必死に生きようとしているんだ。あんなことで死のうとした私が馬鹿らしくなった。

私はまだ死んでいるとは限らない。夢から脱出すれば、私は目を覚ますかもしれない。
――――絶対みんなで脱出しよう
私は改めて決意した。

58:猫又◆l2:2019/08/05(月) 22:36

こんにちは、猫又と申します。
脱出 〜デスゲーム〜、読ませていただきました。

読んでみての感想ですが、
色んな背景設定があって、よく設定を考えられた作品だなと感じました。
次々とキャラクター達の謎が明かされ、これからもっと面白くなるのかな、という期待もあります。
ですが。肝心の本編がゆるすぎてキャラが立っていないかなと個人的に思いました。

脱出を目標とする文学、いわゆるクローズドサークルは難解な課題と、それにぶつかったキャラ達の個性とリアクションによるハラハラ感が重要です。
ただこの作品ではその課題があっさりクリアされすぎて、キャラクターが立つ場所が無く、少し面白みに欠ける。というのが私の個人的な感想です。

もう少し、各キャラの特徴が生かせる課題を考えてみて下さい。
例えば主人公。「みんなで協力してここを出よう」という意思を持つ主人公ならば、
周囲が疑心暗鬼に駆られていたほうが好都合です。

主人公を見るなり、黒幕だと言う人間や
誰かを消そうとしている人間。
全く協力せず、檀独行動する人間。
知り合い同士でグループを作っている女子などなど……。

こういうキャラクターを出して主人公の前に問題を作り
(一体主人公はどうやって説得するのだろう)というドキドキを作り出すことも一つだと思います。

とかく、各キャラの背景や設定が生かせるような課題(問題)を作り、
存分に読者にそれをアピールし常にハラハラした展開を書いていく、それがクローズドサークルの書き方の基本です。

ちかさんの文章は決して伝わらないレベルのモノではありません。だからこそ惜しいと感じます。
もう一段、少しそういった『キャラを生かす舞台作り』を意識して書けば、さらに良い作品になるかと思います。

あくまで私の意見ですが、何か参考になれば嬉しいです。それでは〜

59:ちか◆g:2019/08/06(火) 13:10

>>58
細かいアドバイスをありがとうございます!!
自分でも少しキャラが成り立っていないかな、と悩んでいたので参考にさせていただきます!

60:ちか◆g:2019/08/06(火) 16:58

「……きぜつ…だけ……だいじょう…だよ」
誰もいなくなった自室からどこからともなく聞き覚えのある少年の声がぼんやりと聞こえた。
「ど、どうしよう。ナギちゃん大丈夫かな…」
今度ははっきりと聞き覚えのある少女の声が聞こえた。私のことを心配しているようだ。
「あ、意識が少し戻ったみたいだよ」
少年がそう言った瞬間、どこからともなく強い光が射した。私は思わず目を瞑る。

「…ナギちゃん?」
うっすら目を開けると、コトが心配そうな表情で私を見つめていた。
「よかった!!体調は大丈夫?」
コトはそう言うと、ペットボトルの水を渡してくれた。
「うん。ありがとう」
私はペットボトルを受け取ると、水を一口だけ飲み、
「私…倒れてた?」
と簡潔に聞いた。
「うん。モモカちゃんと隣の部屋で休憩してたら急に人の倒れる音がしたから、急いでここに来て見たらナギちゃんが倒れてたよ。キョウくんに事情を聞いても、探索してたら急に倒れたってことしか分からなかったの。やっぱり体調が悪かったの?大丈夫?」
「ちょっと、動きすぎたのかな。疲れちゃってて…」
私はあの『夢』は言わないことにした。
「な、ナギさん…何でも言ってください…あの、私でよければ…なんでも聞きますので」
モモカは小さな声だったが、私の目を見てそう言った。
「モモカちゃん、ありがとうね!でも、私大丈夫だから心配しないで!」
私が、笑顔を向けると人見知りのモモカはぎこちない笑顔を返してくれた。

「あ、あの…!キョウさんもありがとうございます!それと、迷惑をかけてしまって…」
私はずっと座り込んで黙っていたキョウに声をかけた。
「あのさぁ、疲れたならちゃんと言ってよ。倒れられたら迷惑なんだよ…」
「す、すみません…」
私は不機嫌そうなキョウにとっさに謝った。
「まぁまぁ、ナギちゃん。そう落ち込まないで!キョウくんはツンデレなんだよ〜」
コトは笑いながらそう言って、少し、場の雰囲気を和ませた。
「…は?僕がつ、ツンデレ?」
「ナギちゃん、キョウくんに襲われたらすぐに私を呼んでね!助けてあげる!じゃあ私たちは探索の邪魔になっちゃいけないし、もう行くね!ナギちゃんお大事に!」
「は?は?いやいや、ちょっと待ってよ!!」
コトは呼び止めるキョウを無視して部屋を出て行った。

61:ちか◆g:2019/08/07(水) 19:59

<人物まとめパート1(訂正版)>
【仲間】
・桜木 凪(サクラギ ナギ) 
年齢:14歳 学年:中二 部活:陸上部 ペア:チヤ 交替後:キョウ
外見:身長は152a 体重は41kg セミロングの髪型 目が大きく可愛らしい顔立ち 
備考:主人公

・福積 千夜(フクズミ チヤ)
年齢:16歳 学年:高一 部活:帰宅部 ペア:ナギ 交替後:ユウ
外見:身長は165a 体重は48kg 黒髪でストレートな髪型 中性的な顔立ち 細身な体型

・宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)
年齢:15歳 学年:中三 部活:吹奏楽部 ペア:シュンスケ
外見:身長は155a 体重は43kg 髪型二つ結び 童顔 明るい子

・宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)
年齢:15歳 学年:中三 部活:吹奏楽部 ペア:シュンスケ 交替後:モモカ
外見:身長は155a 体重は43kg 髪型二つ結び 童顔 明るい子

・依田 信二(ヨリタ シンジ)
年齢:32歳 ペア:ツグミ 交替後:シュンスケ
外見:身長は183a 体重は78kg 髪型は短髪 はっきりとした顔立ち 筋肉質 
備考:まとめ役

・倉井 俊介 (クライ シュンスケ)
年齢:17歳 学年:高二 部活:パソコン部 ペア:コト 交替後:ヨリタ
外見:身長は174a 体重は58kg 髪型は前髪が目にかかっている 暗い雰囲気
備考:協力する気はない

62:ちか◆g:2019/08/07(水) 20:01

<人物まとめパート2(訂正版)>
・美川 京(ミカワ キョウ)
年齢:21歳 学年:大学生 ペア:モモカ 交替後:ナギ
外見:身長は168a 体重は52kg  顔は整っているが性格はよくないと思われる

・柚木 桃香 (ユギ モモカ)
年齢:13歳 学年:中一 部活:文芸部 ペア:キョウ 交替後:コト
外見:身長は148a 体重は38kg ロングヘア 可愛らしい顔立ち
備考:コミュ障

・明石 亜実(アカイシ ツグミ)
年齢:28歳 ペア:ヨリタ 交替後:フウ(ダミー人形)
外見:身長は161a 体重は50kg 黒髪を後ろで束ねている 凜としている
備考:ヨリタと同じ会社に勤めている

・神埼 優(カンザキ ユウ)
年齢:21歳 大学生 ペア:フウ 交替後:チヤ
外見:身長は171a 体重は57kg ふわっとした茶髪の癖毛 名前通り優しそうな印象

・綾瀬 楓(アヤセ フウ)
年齢:17歳 学年:高二 ペア:ユウ 交替後:――
外見:身長は156a 体重は44kg 生まれつきの薄い茶髪のセミロング 儚い印象

63:ちか◆g:2019/08/12(月) 19:22

「あ、あの…探索……手伝い、ましょうか?」
声のした方を見ると、モモカが遠慮がちに立っていた。
「あ、ありがとう!ってあれ?拘束は全部解けたんだ?」
「はい…」
モモカの手首と足首を見ると、既に拘束はなくなっていた。
「でもいいの?せっかく頑張って自分たちの鍵は見つけたのに、私たちのも手伝ってもらって…」
「は、はい。あの…み、みんなに迷惑をかけてしまったと思うので…」
モモカは私に背を向けて、近くにあった本棚を探り始めた。
「全然迷惑じゃないからね!手伝ってくれて本当にありがとう」
モモカは一瞬ビクッっとすると私の方を少しだけ見て「いえ…」と言った。

三人で探すと速かった。一時間ほどで3部屋を探索することができた。
しかし、一向に鍵は見つからない…。

「鍵って全員分あるのかな…」
調理室を探索しているとき、ポツリとキョウがそう言った。
「流石にあると思います…!だってサブ命令ですもん、きっとありますよ…」
私はそう言いながらも、少し不安に思った。
鍵が全員分あったとしても、時間内に見つけられるだろうか…。
この施設はとてつもなく広い。終わりがないように感じる。それに、制限時間も残り少ないだろう。

「とにかく、制限時間内に精一杯探しましょう!きっとあるはずですよ!!」

64:ちか◆g:2019/08/17(土) 13:51

時計がないから今が何時なのかも残り時間も分からない。しかし、残り時間が十分にないことは分かっている。
私たちは緊張でピリピリとした空気の中、無言で手早く探索した。

「残り時間1時間だよ」

突然どこからともなくクマの声が部屋全体に響いた。
そして続けて言う。


「精々足掻いてね」


―――残り一時間
その言葉が私たちを不安に…そしてパニックにさせた。

「ねぇ!クマ!!一時間なんて無理だよ!!!許してよ!ねぇ!!!私たち何も悪いことしてないじゃない!!!」
「悪いこと……ねぇ―――」
突然クマが私たちの前に現れた。
少し怒っているように感じられた。私はいつもと違う雰囲気のクマに後ずさる。
「最初にキミたちがここに閉じ込められたのはランダムだって言ったのは嘘だ」
「じゃあ何でなの!?私たちが何かしたって言うの!!??」

「うん」

クマは当たり前だとでも言うように頷いた。
「キミたちは償いきれない罪を犯している。キミたちに罰を与えるために夢に閉じ込めたんだよ。
そして、罪の重さを理解してもらうためにね。

そうだねぇ―――――

自分たちの犯した罪、このゲームの真相を暴いてごらん。
暴けたらここを出してあげてもいいよ」
「暴かないと脱出できないの…?」
「いいや、出来るよ。前にも言ったとおりメイン命令を三回下して生き残っていた者の勝ち。
でも、考えてみて。ただただゲームをクリアして、何も分からずに脱出する。罪も分からずにのうのうと生きるのと、真相を暴いて脱出する。そして自分の罪を理解して償いながら生きるのとどっちがいいんだい?
後者の方が断然いいだろう?」

確かにそう言われると前者の方ではもやもやする。

65:若美小説◆YQ:2019/08/17(土) 21:30

ここまで読ませていただきました。
感想onアドバイスをご希望なので、分けて書きますね。

 感想
正直な感想としては、続きが気になります。一つひとつ命令をクリアしていくごとに、キャラの秘密が分かる所が癖になると言いますか…読みごたえがありますね。
描写もちゃんとしていて、かなり読みやすかったです。
 アドバイス
今のままでも十分面白いですが、>>58さんもおっしゃっているようになりますが、キャラの性格を生かしてクリアしていく…となると、さらに読み手に次はどうなるんだろう、と思わせることができると思います。

とても面白い作品ありがとうございます!これからも更新頑張ってくださいね!

66:◆g:2019/08/18(日) 14:38

>>65
感想onアドバイスありがとうございます😎💖
キャラの性格を生かせるよう練っていきたいと思います!

そう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます!!

67:ちか◆g:2019/08/22(木) 14:39

<人物まとめパート3>
【敵】
・クマ(悪魔たち)
夢の中にみんなを閉じ込めた悪役。
外見:右耳は破れ、継ぎはぎのクマのぬいぐるみ。目はボタン

・その他の情報
まだ姿は現していないが、ナギは黒幕がいると予想している(参照>>31
※【ゲームを進行する悪魔たちのきまり】を作っていると思われる。


※【ゲームを進行する悪魔たちのきまり】

1.参加者に直接危害をくわえてはならない。
2.食事は与えなければならない。
3.参加者の体調管理はしなけなばならない。
4.参加者に触れてはならない。

68:砂子◆g:2019/08/24(土) 17:59

「わ、分かった!このゲームの真相暴いてみせる」
私がそう言うとクマは満足そうに頷いた。
「うんうん。その意気だよ。自分たちの罪をちゃーんと理解しなよ」
クマはそう言うと私たちの前から姿を消した。

「罪、かぁ……」
私は犯罪を犯したことなどない。私は父からDVを受けている。むしろ被害者なのだ。
「今は考えても仕方ない。速く鍵を探そうよ。死んだら何も分からないままなんだからさ」
キョウの言葉にモモカも小さく頷いていた。
「そうですね。今さらですが、三人もいるのですし手分けして探しませんか?その方が効率がいいと思います」
「そうだね。じゃあ僕は女神の像の辺りに行ってくるよ」
キョウは早足で部屋を出て行った。
「わ、私は書物庫に……」
「分かった!私は食堂に行ってみるね」
私とモモカも部屋をあとにした。

私は早足で食堂を目指した。
施設が広くて相変わらず場所が曖昧だ。確かメイン部屋の近くだっけな。
私は曖昧な記憶を辿ってなんとか食堂に辿り着くことができた。
ここまで来るのにそこまで時間はかかってないはずだ。数分ぐらいだろうか。
私は一番最初に目についたたくさんのテーブルから探索することにした。
 

69:めろるん◆g:2019/08/27(火) 16:33

ミスりました…!!
なんで拘束されてるのにナギとキョウは別行動ができてしまっているのか…💦
訂正したの後に出します!

70:めろるん◆g:2019/08/28(水) 16:56

>>68の訂正

「わ、分かった!このゲームの真相暴いてみせる」
私がそう言うとクマは満足そうに頷いた。
「うんうん。その意気だよ。自分たちの罪をちゃーんと理解しなよ」
クマはそう言うと私たちの前から姿を消した。

「罪、かぁ……」

私は犯罪を犯したことなどない。私は父からDVを受けている。むしろ被害者なのだ。
「今は考えても仕方ない。速く鍵を探そうよ。死んだら何も分からないままなんだからさ」
キョウの言葉にモモカも小さく頷いていた。
「そうですね。今さらですが、手分けして探しませんか?その方が効率がいいと思います」
「そうだね。じゃあ僕らは どこに行く?やっぱ近いトコだよね」
「そうですねぇ……。ここから近いですし、食堂とかはどうですか?」
確か食堂はここから近いはずだ。メイン部屋の近くだっけな…。
「食堂って近いしいいんじゃない?モモカさんはどこへ?」
「わ、私は書物庫に……」
モモカはそう言うと早足で部屋をあとにした。

「私たちも行きましょう」
私たちは急いで部屋を出ると、食堂を目指した。
施設が広くて相変わらず場所が曖昧だ。

私は曖昧な記憶を辿ってなんとか食堂に辿り着くことができた。
ここまで来るのにそこまで時間はかかってないはずだ。数分ぐらいだろうか。
私は一番最初に目についたたくさんのテーブルから探索することにした。

71:めろるん◆g:2019/09/01(日) 16:23

テーブルの上を一つ一つ丁寧にそして、素早く調べる。
テーブルに備え付けられている椅子の座面からテーブルクロスの下までくまなく探す。

この作業を数十回ほど繰り返して全ての机を調べきった。
しかしどこにも鍵は見当たらない。

疲れた。もう時間がないんだ。探したって無駄なんだ。
そんな考えが一瞬頭によぎったが、すぐにキョウの方へ振り払って
「ここにはないですね…。隣の部屋に行きましょう」
と声をかけて気を紛らわした。
「うん」
といつも通りの無愛想で冷静な返事を聞くと、私は部屋をすぐに出て、隣の部屋へ小走りで向かった。

ほとんどの部屋のドアには部屋名を書いたプレートが掛けられているのだが、この部屋にはプレートが掛けられていなかった。

「何の部屋でしょうね…?」
そう言いながら私は少し古びた鉄の扉を引く。

…ギイィ

「うわぁ、真っ暗だね」
キョウが電気のスイッチを押すと、部屋は薄暗く照らされた。


「ひっ!!」


私が思わず小さく声をあげる。
室内にはたくさんのぬいぐるみがあり、ぬいぐるみたちが照明で不気味に照らされた。

72:めろるん◆g:2019/09/05(木) 19:56

「大丈夫だって。はやく探そう」
キョウはドアの前でつっ立っていた私の横をすり抜けると、部屋の中に入った。
「ちょっとビックリしただけですよ…」
私はそう言ったが、内心この部屋を探索するのは気が引けた。

「はぁ…何びびってんの。僕がぬいぐるみを探るから、ナギさんは棚を探索しなよ」
キョウは不気味に照らし出されたぬいぐるみを無造作に掴むと、テーブルの上にあったカッターでぬいぐるみの腹を引き裂いた。

「ちょ、ちょっと…そんなことしてもいいんですか…?」
何かバチが当たるような気がした。
「いいでしょ。もし、ぬいぐるみの中に鍵があったらどうすんの?ぬいぐるみを切り開かないと鍵取り出せないじゃん」
「そうですね…」

腹を引き裂かれたぬいぐるみが恨めしそうな顔で私を見ているような気がした。気味が悪い。
しかし、ここで手間取っている場合ではないので私はキョウに言われたとおり、棚を探索することにした。

私は最初に目に付いた棚の隅の方に置いてある、両手で抱えるほどの大きな箱を棚から取り出して床に置いた。
私は手についたホコリを払って蓋に手をかける。

…変なモノが入っていないといいなぁ。

私は恐る恐ると蓋を持ち上げた。

73:めろるん◆g:2019/09/05(木) 19:57

アドバイスがあったら宜しくお願いします!

74:めろるん◆g:2019/09/08(日) 19:34


―――!?

「と、時計…!?」

箱の中にはアンティークのような時計が入っていた。
かなり、ホコリを被っていて古いようだが、針は動いているようだ。

「え!時計!?」
キョウが時計を覗き込む。
「時間が正確かどうかは分かりませんが、動いていますね…」

11:35をさしていた針が11:36へと変わった。

「時計は見つかったけど残り時間が分からないね」
「そうですよね…」

クマは制限時間は一日、つまり24時間だと言っていたが、スタートした時間が分からなければ
残り時間は分からない。

「キリのいい時間は0:00だよね…」
キョウがポツリと呟いた。

「そ、それじゃあ残り時間は30分もないじゃないですか…!!」

「キリのいい時間を言っただけだよ。でも確実に残り一時間もないんだからさ、制限時間が0:00では
ないとしても急がないと死ぬよ」

キョウが他人事のように淡々とそう言った。

――鍵が見つからなければ、自分が死ぬというのに。

「キョウさんは…死ぬのが怖くないんですか?」

その疑問が自然と口に出た。
すぐに「あっ」と思い、私は「なんでもないです!」と言って無理矢理に笑顔を浮かべる。

「……いよ」
キョウが小さな声で呟いたような気がした。
「な、なんですか?」

「怖くないよ」

次ははっきりとした声でそう言った。
 

75:めろるん◆g:2019/09/09(月) 19:59

<人物像>

・桜木 凪(サクラギ ナギ) 
協調性のある心優しい女の子。

・福積 千夜(フクズミ チヤ)
中性的で弱々しい印象。メイン命令1で性格が…?

・宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)
場を明るくするのが得意な気遣いができる女の子。

・依田 信二(ヨリタ シンジ)
場のまとめ役。しっかりしていて頼れる人。

・倉井 俊介 (クライ シュンスケ)
協力する気がない。周りに無関心。

・美川 京(ミカワ キョウ)
協力はするが、どこか冷たい印象。

・柚木 桃香 (ユギ モモカ)
人見知り。自分なりにみんなの役に立とうと頑張る。

・明石 亜実(アカイシ ツグミ)
凜とした女性。面倒見がいい。

・神埼 優(カンザキ ユウ)
優しそうな印象。常に笑顔。

・綾瀬 楓(アヤセ フウ)
儚い印象。最期までみんなを想った、思いやりがある。

*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*
リア友に、「キョウとシュンスケの違いが分からない」とアドバイス?
をもらったので全員の人物像を簡単に書きました~!

まぁこんな感じです~!笑

76:めろるん◆g:2019/09/13(金) 18:13

「でも、まだタヒねない」

「どうして…?」

私はキョウの意味ありげな言い方に、思わず尋ねる。

「僕が生きていて、ナギさんが生きていたらいずれ分かる」

私はこれ以上尋ねてはいけない雰囲気を感じて黙る。
微妙な居づらい空気が流れていた。

「最期まで頑張るんだよ。死にたくないだろう?」

突然、明るい調子で流れ出したクマの放送が沈黙を破った。
クマは放送を続ける…。

「残り10分だからね〜」

そう言われた瞬間、はっ、と時計を見る。
時計は11:50を指していた。
10分後、と言うことは……。

「12:00まで…!!??」

キリいい時間…。
やっぱりキョウの予想は当たっていたんだ!

こう考えている間にも時間が削られていることに恐怖を感じる。

―――まるで私の寿命が削られているようで。

 

77:めろるん◆g:2019/09/14(土) 19:54

「焦っちゃだめ、焦っちゃだめ、焦っちゃだめ」

私はそう自分に言い聞かせる。
自分では丁寧に探しているつもりなのだが、自然と手が速く動く。

「ぬいぐるみには鍵なかった…」

キョウの足元にはズタボロになったぬいぐるみがいくつも落ちていた。

「う、うそ…。どうします?隣の部屋に移動しますか?」

私は探す手を止めることなく、早口で聞く。

「いや、移動する時間が無駄」

「そうですね、ここに鍵があることを願って探しましょう」

私は一つ棚を探しおえると、すぐに隣の棚に移った。
何かのホルマリン漬けがあったが、それに驚いている暇なんてない。

「なにそれ…気持ち悪いね」

キョウはホルマリン漬けのビンを持ち上げた。

「はい、なんなんでしょうね」

私はホルマリン漬けを気にしている場合ではないと思い、そちらを見ずに作業品しながら返事をした。

「割ってみようか」

「な、なんでですか!?」

私は思わず手を止めて、キョウの方に振り返った。

「鍵が入ってるかも」

キョウはビンを持った手を振り上げると、床にビンを叩きつけた。
床に濁った液体が広がる。

「きゃあ!!」

私は声をあげて後ずさりをする。

キョウは構わず、床に広がったものを見ていた。

「あっ」

キョウは何かを見つけると、一瞬躊躇ったあと、液体の中に指を入れて何かを拾い上げた。

「なんですか?それ…」

「お前、たちは…誰を……こ、ろした?って書いてる」

キョウは私にヨレヨレになった紙のようなものを差し出してきた。
それには薄くなり、液体でにじんだ文字で【お前たちは誰を殺した?】と書いていた。

78:めろるん◆g:2019/09/14(土) 19:57

>>77
あ~!ミスりました…

「そちらを見ずに作業品しながら返事をした。」
ではなく。
「そちらを見ずに作業をしながら返事をした。」

です! すみません汗

79:めろるん◆g:2019/09/21(土) 08:47

テストが近くて時間ないので、番外編書きます…。

<番外編>

本当は俺はデスゲームの真相に薄々気づいてる。
確信はない。
でもそうじゃないのかなって……。

みんなも本当は気づいてるんだろ。
自分の罪ぐらいさ。

本当にみんな脱出したいの?
現実の何がいいの。
みんな逃げ出そうとしてたくせに。

―――本当は死にたいんだろ。

*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*

この番外編が誰目線なのか、本編が進むに連れて分かるかもしれません。

80:めろるん◆g:2019/09/27(金) 17:42

「何か、心当たりある?」

キョウがヨレヨレな紙を私に見せながら聞く。

「な、ないです!!一体何なんでしょうか…」

【お前たちは誰を殺した?】
これは私たちに向けて書いた言葉なのだろうか。
【お前たち】は一体誰なのか……。
考えても謎は深まるばかりだ。

「さぁ、そろそろ時間だよ〜」

突然、いつものように何処からともなくクマの陽気な声が聞こえてきた。

―――そろそろ時間!?

私は一瞬頭の中が真っ白になったが、すぐに我を取り戻して時計で時間を確認しようとする。
しかし、その前にクマは、

「カウントダウン、スタート!」

と今から楽しいことでも始まるのかと疑うような声色でそう言った。

「この時計がずれてるだけかもしれないけど、残り一分もない…」

キョウは時計を見てそう小さく呟いた。

「うそ…!!??」

私はすぐ近くにあった棚を急いで探り始めた。
もう、既に探索をしたような気もするがそんなこと関係ない。

「ナギさん…!キョウさん…!」

そう声がし、勢いよくドアが開いた。

モモカだ。

「モモカちゃん…!見つかったの!!??」

 

81:三弦色 すみれ ◆96:2019/09/29(日) 08:30


批評を依頼されたと云うコトで、僭越ながら批評をさせて頂きたいと思うッス!

先ず良いトコロから、
最初に小説を読んだ第一印象は「 シナリオ管理が上手だな 」と云うコトッス!物語の起承転結、まとめ方等が丁寧なので読者が置き去りにされるコトなく読み進めるコトが出来て、迷走感も全体的に少な目に抑えられていると思うッス!
次にッスけどキャラクターの作り込みが細かく、キャラクターの背景事情や過去を素早く把握するので愛着が湧き易いッス!どのキャラも様々な思考や思惑で動いているのが文章内で説明されている為に読んでいて飽きるコトなく思う存分キャラクターに感情移入出来るッス!


次に改善点ですが、
テンポが緩めの作品なので、デスゲーム特有の「 臨場感 」や「 疑心暗鬼 」を感じ辛く打ち消している様に感じられて、正直なトコロ「 飽きも来る 」って話になっていると思うッス。
「 読むのが止まらない! 」と読者に感じさせる様な文章を書きたいならば
この作品で描かれる「 デスゲーム 」はどちらかと云えばサイコポップ的な悪趣味さに浸るコトを重視したモノだと思うので、それなら寧ろテンポは早めの方が雰囲気に合っていると思うッス。

拙いアドバイスッスけど参考になったら幸いッス、それではドロンッ!させて頂くッス!

82:めろるん◆g:2019/09/29(日) 14:55

>>81
アドバイス感謝です😎💖
ねるほど…!テンポ早めだったら中身が薄くなって、面白くなくなるのでは?っと思って
緩めにしていたので、自分では気づくことができませんでした、本当にありがとうございます!!

83:めろるん◆g:2019/09/29(日) 17:36

「ご、ごめんなさい…見つからなかった、です……」

モモカは申し訳無さそうに目を伏せた。

「モモカちゃん…協力してくれて本当にありがとう!」

「でも、ナギさんたちは……」

モモカは今にも泣き出しそうな表情で私を見る。
そんなモモカに私は、

「私たちは大丈夫だから!」

と根拠なく大丈夫だと言いきり、モモカを優しく撫でた。

しかし、モモカも小さな子供ではない。
私たちが決して「大丈夫」ではないことは分かっているようだった。

「じゅー!きゅー!は〜っち!」

クマのカウントダウンがスタートしたようだ。
小さな子どもが鬼ごっこをしているような陽気なカウントダウンが始まる。
その陽気さが余計に不気味さを放っている。

――――諦めよう

そんな考えが頭に浮かんだ。
どうせ数秒しかない。足掻いても無駄だ。

私はつっ立ったままクマのカウントダウンを呆然と聞いていた。

「さ〜んっ!にぃーい!いっち!」

…私、死ぬんだ。

「ぜろーーー!!」

クマの声が部屋全体に大きく響いた。

84:めろるん◆g:2019/10/04(金) 18:18

****

「カウントダウン、スタート!」

部屋中にクマの明るい声が響く。

ついにか。

私は不思議と怖くなかった。
…あと、数秒後に私は死ぬのかもしれないのに。

みんなは鍵、見つけられたのかな。
見つけられてないの、私のチームだけだといいな。

――だって……私、一人だけのチームだから。

私は拘束の解けていない手足の先にいるフウのダミー人形を見た。
それは、生きていた頃の本物の彼女と、姿形が全くもって一緒で、少し不気味だった。

「じゅー!きゅー!は〜っち!」

再びクマの楽しそうな声が聞こえる。
私は探索をしようともせず、ただ呆然とフウのダミー人形を見つめていた。

――また、助けられなくて、ごめんね。

私はフウのダミー人形の頭を撫でた。
……冷たい。

「さ〜んっ!にぃーい!いっち!」

みんな、元気でね。

そして、クマが私に最期の言葉を告げる。

「ぜろーーー!!」

クマの声が部屋全体に大きく響いた。

85:めろるん◆g:2019/10/06(日) 13:17

****

……あれ?
私、生きてる?

つい先程、クマの『ぜろーーー!!』と言う放送を間違いなく聞いた。

「サブ命令で二組も失格となっちゃ困るなぁ…」

戸惑う私にクマがそう困ったように呟く声が聞こえた。
二組…?私たちの他にも一組、命令に従えなかったチームがあるの?
私、助かるの?

「そうだ!!」

クマが何かを思いついたようだ。楽しそうな声だ。
何か嫌なことが起きる予感がする…。

「助けてあげるよ。おれ、優しいからね〜!」

嫌な予感に反して、クマはそんなことを言い始めた。

「命令に従えたイイ子ちゃんたちもメイン部屋に来て。ルール説明をするから!」

ルール説明?一体クマは何をするつもりなんだ…?

突然、強い眠気が襲ってきた。
私は眠気に抵抗することが出来ず、床に倒れこむ。
冷たい床の感触が皮膚に伝わってきた。

そういえば、一日ぐらい寝てないな…。

私はそんなどうでもいいことを考えながら、深い眠りについた。

86:めろるん◆g:2019/10/13(日) 13:55

「おはよう」

決して大きな声ではなかったが、よく響くクマの声に私は深い眠りから目を覚ました。

私は辺りを見渡す。
どうやらメイン部屋に連れてこられたようだ。
他のみんなも起きたばかりのようで、状況を把握するために辺りを見渡している。

「よし、みんな起きたようだね。みんなに報告することがある……」

クマはそう言うと、ワザとらしく溜め息をついて続ける。

「命令に従えなかった悪い子が三人もいるんだ。残念だなぁ…。おれ、失望しちゃったよ」

クマはそう言って、私、キョウ、そして――ツグミを見た。

「サブ命令で三人も脱落されちゃうと面白くないんだよねえ…。そこでさ、おれから提案!どちらか一組助けてあげるよ!」

そして「はい、鍵!」とクマは私たちの方へ一つ、鍵を投げた。
鍵がチャリン、と音を立てて床に落ちる。私はその鍵を無言で見つめることしか出来なかった。

「どっちが使うかは、みんなで決めてね。話し合い、騙しあい、暴力。なんでもアリだよ。
そうだねえ…制限時間が必要だよね。う〜ん、制限時間は10分にするよ。制限時間内に決めれないと全滅だよ。時間を有意義に使ってね!」

クマはそう言うと、いつも通りどこかへ消えてしまった。

「取り合えず、話し合いで決めるのが一番だよな…」

そう言ってヨリタは鍵を拾い上げる。

「ヨリタさん、その鍵…


 ――こちらに、ください」


そう誰かが言った、次の瞬間、ヨリタの手から鍵は奪われたのだった。

 

87:めろるん◆g:2019/10/14(月) 14:33

「何故そんなことをするんだ…


 ――ツグミ」


ヨリタは鍵を持ったツグミに疑いの目を向けた。

「みんなで話し合って、どちらのグループが使うか決めよう。な?
だから、ツグミ…。その鍵はこちらに渡すんだ」

ヨリタはそう言って、ツグミの持っている鍵に手を伸ばす。
しかしツグミは、

「あなたには渡せません」

と言うと鍵を勢いよく放り投げた。
数秒経って、チャリン!と私の足元で音がする。

ツグミは私とキョウの方へ鍵を投げたのだった。

「ツグミ…さん?」

私は状況が飲み込めず、ただ、ツグミを見つめることしか出来なかった。

「話し合いをする必要はないわ。
どうせ結果は決まってる…分かってるの。時間の無駄だわ。

……ナギさん、キョウさん。あなたたちが使いなさい」

88:めろるん◆g:2019/10/17(木) 19:16

「結果は、決まっている…?どういうことだ?
ナギとキョウに渡してしまえばツグミは…」

「よく、考えてみてください」

ツグミがそう言ってヨリタを遮る。

「ナギさんとキョウさんが鍵を使えば、二人が助かる…。
でも、私が使っても助かるのは私一人だけ。私のペアは…もう、いないの」

ツグミはどこか寂しげな声でそう言って、ダミー人形の頭を優しく撫でた。

「た、確かにそうだ。そうだけど、それじゃツグミが死んでしまうじゃないか…」

「ヨリタさん…」

ツグミがそう言って、駆け寄る。

「あなたは出会った頃から強い人でした。あなたなら、私なんかいなくても大丈夫」

ツグミは母親のように優しくて、穏やかな声色でそう言った。
こんな状況だったが、私もなんだか安心できた。

「ツグミ…上司命令だ。


――絶対デスゲームから脱出しろ」


ヨリタのその言葉にツグミは「冷静なヨリタさんらしくないですね」と微笑む。

「ごめんなさい。それは、できないです。
ヨリタさん…。こんな我が儘で、上司の命令も聞けない私の最期のお願い、聞いてもらえますか?」

「ああ…」

ヨリタの短い返事を聞くと、ツグミは満足そうに話し始めた。

「私はもう若い子たちを犠牲にしてまで生きたくないんです。
だから、ここで終らさせてください。
そして、みなさんを宜しくお願いします。絶対、もう犠牲者は増やしてはダメよ」

そして、ツグミは私たちの方へすぐに向き直ると、

「さあ、その鍵を使って!ヨリタさんに止められる前にね!」

と悪戯っぽい笑みを浮かべたのだった。

89:めろるん◆g:2019/10/19(土) 14:32

~かっこいい自己紹介をさせてみたかった~


『命令に従えなかったらどうなるの……?』

【桜木 凪(サクラギ ナギ)】

14歳/陸上部/私/152a/41kg/セミロングの髪型/目が大きく可愛らしい顔立ち 
ペア…チヤ⇒キョウ



『……この服装気になる?』

【福積 千夜(フクズミ チヤ)】

16歳/帰宅部/僕/165a/48kg/黒髪でストレートな髪型/中性的な顔立ち/細身な体型
ペア…ナギ⇒ユウ


『私、皆さんのこと信用してみます!』

【宇都宮 琴(ウツノミヤ コト)】

15歳/吹奏楽部/私/155a/43kg/髪型二つ結び/童顔/明るい子
ペア…シュンスケ⇒モモカ

90:めろるん◆g:2019/10/24(木) 19:05

ツグミにそう言われたものの、私は鍵に手を伸ばせないでいると、

「ツグミさん、ごめん」

と言う声と共に床に落ちていた鍵はキョウの手へと移った。

「キョウさん!!本当に…使うんですか?」

私は思わずキョウにそう問いかけた。

「ナギさん…キミは死にたい?死にたくないでしょ?
僕はまだ死にたくない…というか、タヒねない」

私だって、死にたくないに決まっている。
でも、私たちが鍵を使えばきっとツグミは……。

そう考えると、私ははっきりと答えることができず、

「それは……」

と言葉に詰まってしまった。

「誰かを犠牲にしたくない。みんなで脱出したい。だなんて、甘いこと考えないで。
どちらかが絶対に死ななきゃいけないんだよ。
ツグミさんもああ言っていることだし……」

キョウは冷たく、突き放すような言い方でそう言ったが、最後の方は言葉を濁しているようだった。
彼もまだ、鍵を使うことに躊躇いがあるようだ。

「そうよ。キョウさんの言うとおり…」

いつの間にか、隣で話を聞いていたツグミは鍵を手に取ると、無理やり私たちの手首を拘束していた手錠の鍵穴に鍵を突っ込んだ。

「ツグミさん…!!??」

私は驚きの声をあげたが、ツグミは私には目もくれず、手を止めなかった。
ツグミが無理やり、鍵を持った手を右に回す…。

――カチャリ

部屋中に鍵の開く、聞き心地のいい音が響いた。

91:めろるん◆g:2019/10/26(土) 10:15

一瞬、何が起きたのか分からなかった。
しかし、私たちの手首を拘束していた手錠が消えていくのを見て、ツグミが鍵を解除したことを理解した。

「これでよかったの…」

ツグミは私たちを見て、微笑んでいたが、目には涙が浮かんでいた。

「ツグミさん……ごめんなさい…」

言いたいことはたくさんあった…のだと思う。
しかし、言葉に表せず、出てきたのは謝罪の言葉だけだった。

「さぁ、鍵を使ったみたいだね」

静かな空間にクマの声が響き渡る。

「鍵を使えず、命令に従えなかった愚か者のツグミ…失格だ」

クマがそう言うと、ツグミの手首にはめられた輪が、どんどんと小さくなっていった。
ツグミの手首をギリギリと締め付ける。
ツグミは苦痛に綺麗な顔を歪める。

「大丈夫か!!」

そんなツグミを見て、ヨリタがすぐに駆け寄り、ツグミの手を優しく握った。

「ヨリタさん…みんなを、よろ…しく、ね」

ツグミはヨリタを見て、無理やり笑顔を作った。
しかし、次の瞬間、耐え切れない苦痛に顔を歪めた。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

悲鳴に近い声でそう叫ぶとツグミは床に横倒れになる。
ツグミの手首は既に血だらけで、今にも手首が切れ落ちそうだ。
床がどんどん赤く染まっていく。

私は見ていられなくなって、目を瞑る。

「キャアアアアアアアアアアアア!!」

耳を劈くような悲鳴が聞こえた。
それから、しばらくして音は何一つ聞こえなくなった。

ツグミは……。
私は恐る恐る目を開けた。

92:めろるん◆g:2019/10/30(水) 18:14

そこには変わり果てたツグミの姿があった。
手のないツグミの横には切れた落ちた手と真っ赤な血溜まりが広がっていた。

「ツグミ!ツグミ!お願いだ…返事をしてくれ!!」

ヨリタは必死にツグミに呼びかけ、揺さぶるが、ツグミはピクリとも動かない。
ヨリタの服の袖口が、真っ赤な血でみるみると染まっていく。

「まだ…今なら間に合うかも…!」

そうコトが呟き、ツグミのもとへ駆け寄り、呼吸を確認する。

「ど、どう…?」

私は恐る恐る結果を聞く。
「もしかしたら」と小さな希望を持って…。

「………」

コトは私に悲しげな表情を向けると、無言のまま力なく首を横に振った。
私の小さな希望は一瞬にして砕け散った。


――これが現実なのだ。


「いや、いや…やめて!ああああああああああああ!!」

モモカは怯えた声でそう叫ぶと、膝から崩れ落ちた。

『誰かモモカを頼む』

…いつもならヨリタがそう声をかけてくれる。
そして、誰かが寄り添ってくれる。

しかし、今は誰ひとり、ひとのことを気にかけている余裕なんてなかった。
次は自分が死ぬかもしれない、という恐怖と、仲間が死んだ悲しみに誰も動くことが出来なかった。

この先、私たちはどうなるのか…。
不安はどんどんと膨らんでいく。

93:めろるん◆g:2019/11/02(土) 19:58

「はぁ……」

私は溜め息をついて、自分の部屋の隅に追いやられているベッドに座る。

あれから、どうやって自分の部屋まで戻ってきたのかはあまり覚えていない。
確か、あの場所にいるのが苦痛で、一刻も早く離れたくて、ここに来たのだと思う。

「ごめん…ごめん、ごめんなさい…」

私は気がつくと何かに謝っていた。
…救えなかったツグミへの謝罪?犠牲になったフウへの謝罪?

勝手に涙が溢れ出す。


――コンコン


不意にノックの音が聞こえる。
私は服の裾で乱暴に涙を拭うと「はい」と返事をする。

誰だろう?クマかな?

ガチャ、と静かな音を立ててドアが開く。

「ごめん、一人だと寂しくて…」

そこには少し微笑んだコトが申し訳無さそうに立っていた。

「ううん、全然。私も一人だと色々考えちゃうから…。
どうぞ、どうぞ。入って」

「ありがとう」

私とコトは狭いベッドに腰を下ろすと、しばらくの間話していた。
学校のこと、テレビのこと、オシャレのこと、趣味…そして恋愛のことも。
私とコトの住んでいる街は遠いようで、私の知らないことも、たくさん教えてくれた。

ここに来てから、こんなに楽しく話したのは初めてだった。
時間を忘れてしまうようだった。

「ごめん、ついつい話しすぎちゃったね。私、そろそろ戻ろうかな」

コトがそう言うと、私は急に寂しくなって、

「私は全然大丈夫。むしろ、ここに居ない?」

とコトを引きとめる。

「いいの?じゃあ、ここにいようかな〜。一人だと寂しいしね!」

コトは嬉しそうにそう言った。
この夢から脱出した後も、こうして仲良く出来たらいいな。

94:めろるん◆g:2019/11/06(水) 18:37

一人で寝ても狭いような、小さなベッドに二人で寝転がる。
とても窮屈で寝づらいが、窮屈なおかげでコトのぬくもりが伝わってきて安心することができた。

「おやすみ、ナギちゃん」

そう言って、コトが電気を消す。
ただえさえ、薄暗かった部屋は真っ暗になった。

「うん、おやすみ…」

一人になると色々と考え込んでしまうから、できるだけ早く眠りに着きたかったが、全くと言っていいほど
眠くなかった。
しかし、辺りが真っ暗になり視界が奪われると自然と眠たくなっていくのだった。

そして、私は完全に眠ってしまった。



――ピヨロロロロ、ピヨロロ

何か音が聞こえる。
…鳥の鳴き声?なんで、鳥がいるんだ?

私は不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。
どこからか差し込んでくる眩い光に私は思わず顔をしかめる。

少し光に目が慣れると、この光は小さな窓につけられたカーテンの隙間から漏れ出ているものだということが
分かった。

なんなんだ、この光は。まるで、日光のようじゃないか。

しかし、ここは夢の中。
鳥がいるわけがないし、ましてや太陽が存在するわけがない。

私はこの状況を飲み込めないでいると、

「どう?びっくりした?
キミたちが住んでいる世界に似せてみたよ。少しでも気軽に、ここにいられるようにね」

といつの間にやら私の目の前にいたクマが説明した。

…そんな配慮をしてくれるのならば、脱出させてほしい。

私はそんなことを思いながらも「すごいね」と思ってもないことを口にする。
「絶対思ってないだろ」などと、クマに言われると思いきや、意外にも「でしょでしょ!」と嬉しそうな反
応を返した。

「あっ、そうそう。コトはもうメイン部屋に集合してるよ。キミも早く来てね」

クマにそう言われて、私は一緒に寝ていたはずのコトがいないことに気づく。

「う、うん」

私の返事を聞くと、すぐにクマは部屋から出ていった。

95:めろるん◆g:2019/11/07(木) 18:34

<お知らせ>

違う場所で「脱出 〜デスゲーム〜」の訂正版を書き始めました。
始めから読もうと思う方や、ちゃんとしたものが読みたいと思う方などは下のリンク先の方をお読み下さい。
URL↓
http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=5572

訂正版の方でも、もちろん、感想やアドバイス◎です。
宜しくお願いいたします。

96:めろるん◆g:2019/11/10(日) 15:44

私がメイン部屋へ行くと既に、私以外揃っていた。
しかし、ヨリタの隣にツグミはいない…。

「よしよし。全員集まったみたいだね。
じゃあ、今日もゲームを――」

不自然にクマの言葉は途切れた。
クマの横には怒ったような表情をしたコトが立っていた。

「な、なんだい。突き飛ばすんじゃないよ!」

クマは継ぎはぎの体を無理やり動かすようにして、ヨロっと立ち上がった。

「もう満足でしょ!!ツグミさんとフウさんを殺しておいて、一体何がしたいの!
私たちが何をしたって言うの…!?」

「そうか…『あのこと』はナギとキョウにしか言っていなかったね」

「『あのこと』って…?」

コトがそう聞き返すとクマは「みんな聞いてくれ」と言うように、私たちを見渡した。

「キミたちは償いきれない罪を犯している。キミたちに罰を与えるために夢に閉じ込めたんだよ。
そして、罪の重さを理解してもらうためにね」

「罪」というワードに皆、何か言いたげにしたが、クマは間髪を入れることなく続ける。

「自分たちの犯した罪、このゲームの真相を暴くことが出来たら脱出させてあげる。
暴かなくても脱出はできるよ。もちろん、最初に言ったとおり、メイン命令を三回下して生き残っていた者の
勝ち」

クマがそう説明し終わると、最後に私とキョウに問いかけた言葉を再び口にする。

「…キミたちは何も分からずに脱出する。罪も分からずにのうのうと生きるのと、真相を暴いて脱出する。そして自分の罪を理解して償いながら生きるのとどっちがいいんだい?」

「……後者」

少し間があり、チヤがそう答えた。
他の皆は黙ったままだ。目を瞑って考え込んでいる者や、俯いている者もいた。
罪について考えているのだろうか…。

「そうだよね、前者の方ではもやもやするんじゃないかなぁ?
暴くことが出来たら全員で答えを決めて、おれに言いに来てね。期待してるよ。

…じゃあ、ゲームに移っていいかな?」

いつもなら、みんな黙り込み、それをクマは肯定とみてルール説明を始める。
しかし、

「待てよ!おかしいだろ!」

とシュンスケが声をあげたのだ。

97:めろるん◆g:2019/11/18(月) 10:09

私たちはシュンスケの方へ振り向くと、シュンスケの次の言葉を待つ。

「お前、嘘ついてんだろ」

シュンスケはそう言って、クマを鋭く睨み付けた。
クマは「何のことやら」と小さい肩をすくめた。

「どういうことなのか説明してくれないか?」

先程まで黙って、自分の中に閉じこもっていたヨリタがいつもの調子で、そうシュンスケに問いかけた。
彼は強い人なんだな、と私は改めて感心させられた。

「俺らに「罪」なんてないんだよ!」

「どうして?」

チヤがシュンスケに恐る恐るといった様子で説明を求めた。

「だって「罪」って自分で分かってるものなんじゃないのか?
なんで俺たちは自分の「罪」が分からないんだよ!!」

確かに、殺人犯は自分の犯した「罪」が人を殺したことだと分かっている。
窃盗犯は自分の犯した「罪」が人の物を盗んだことだと分かる。
でも、私たちの「罪」が何なのか全く分からない。

「少なくとも、そこの二人は「罪」が何なのか分かってるんじゃないかなぁ?」

クマはそう言うと、キョウを見た。キョウは表情を変えず、クマを見返した。
そして、クマはゆっくりと顔を動かすとユウの方へ顔を向けた。ユウは一瞬、ぎょっとした目になったが、す
ぐにクマから目を背けた。

98:めろるん◆g:2019/11/25(月) 13:38

「何か知ってるのか!?教えてくれ」

ヨリタがすかさず二人にそう聞く。

「な、何も知らないですよ!こいつが勝手に言ってるだけです!」

そう言ってユウはクマを指した。
しかし、クマはユウに反論することなく「教えなよ」とキョウに話すように促した。

「…これかなって思ってるものはあるんだけど、根拠がないから言えない」

キョウはそう言ったものの、私は「罪」が何なのか全く分からない。
「これかなって思ってるもの」とは一体何なのだろう。

「それって何なんですか?気になります…間違っててもいいから言ってみてくださいよ」

コトも私と同じことを思っていたようで、キョウにそう尋ねた。

「じゃあ…えっと――」

とキョウが「罪」を言おうとした瞬間、ユウはポンっとキョウの肩に手を置いて、

「キョウさん。みんなが混乱するかもしれないから止めておきましょう」

とキョウが話すのを遮った。
私にはユウが「言うな」とでも言っているように感じられた。
ヨリタやチヤも少し疑い掛かった目でユウを見ていた。

「そっかそっか、まだ根拠がなかったんだね。ごめんごめん。まぁいずれ分かると思うよ。
それで、他に何か言いたいことある?」

クマはそう言うと私たちを見渡した。

「何も解決できてねぇよ。結局のところ、なんで俺たちは自分の「罪」が分からないのか分かってないじゃねぇか。お前、教える気ねぇだろ。つーか、ヒントぐらいくれよ」

シュンスケがあまりにもまともなことを言うので、失礼なことに私は少し驚いた。

「ヒント?たくさんあげてるじゃないか」

クマは不思議そうな顔で私たちを見た。
ヒントなんてもらったっけ…?

99:めろるん◆g:2019/12/07(土) 10:16

「あ、もしかして…」

そう言ってコトが私を見つめる。
私は一瞬、何のことなのか分からなかったが、少し前にコト拾い、私に見せてくれた紙を思い出し、私はコトを見つめ返し「うん」と頷いた。
私が頷いたのを見るとコトは胸ポケットを探り始めた。

「みんな、これなんだけど…」

そう言ってコトは紙をひろげた。
前と変わらず、しっかりとした大きな文字で【ここに連れてこられたのは偶然やランダムじゃない。お前らには心当たりがあるだろ?】と書いてあった。

「その紙はいつ拾ったんだ?」

ヨリタは紙を見ながらコトにそう聞いた。

「えーっと……メイン命令1が終ったぐらいのときだと思います。自分の部屋に行ったらドアの前に紙が落ちてました」

「そうか…ていうことは俺たちがまだ、連れてこられたのはランダムだと思っていたその時から『ランダムじゃない』と伝えようとしていたんだな…。
他にヒント持ってる人はいるか?」

ヨリタにそう問われ私はサブ命令1で鍵を探していたときに見つけた紙を思い出した。

「キョウさん、キョウさん、あの紙持っていますか?」

私は何となく大きな声で言ってはいけないような気がして小声で尋ねた。

「あの紙?……ああ、あれね。持ってるよ」

「あの紙、見せるんですか…?あの紙の内容を見たら、きっとみんな混乱してしまう…」

私は紙に書かれた内容を思い出す。
確か【お前たちは誰を殺した?】と書かれていたはずだ。
あの時は私たちに向けて書いたヒントだとは知らず、誰に向けて書いたのか、【お前たち】は一体誰なのかとは分からなかった。しかし、これが私たちに向けてのヒントなのだとすると【お前たち】はここにいる【私たち】だ。つまり、私たちが【人を殺した】ということになるのだ。

「見せたほうがいいと思うよ」

キョウがあっさりとそう答えた。

「なんでですか?あの内容、覚えてますか…?」

「覚えてる。【お前たちは誰を殺した?】でしょ?
確かに、これは僕たちが人を殺したって言っているようなものだけど、これは僕たちを混乱させる罠なのかもしれない。信じすぎないほうがいいよ」

罠…。
確かに、このヒントは敵側からのものだ。嘘の情報だってある。でも、私はこのヒントは放っておいてはいけないような気がした。しかし、私は

「そうですね…。人殺しをしていたとすれば、そんな凶悪な犯罪、自分自身も覚えてるはずですよね。私たち、覚えていないのですから…」

キョウにそう言いながら、自分に「私たちは人殺しなんてしていない」と言い聞かせた。

「それじゃあ、みんなに見せましょうか」

そう言って、もやもやとした気持ちを取り合えず押し込んだ。

100:めろるん◆g:2019/12/24(火) 12:27

私の言葉にキョウは小さく頷いた。それから、ズボンのポケットから小さく折りたたまれた薄汚れた白い紙を取り出し、

「ヒント」

と素っ気なく言い、皆の前に紙を突き出した。

「あ、その紙はサブ命令1で鍵を探していたときに見つけました」

私がすぐさま、そうフォローした。
私の言葉にヨリタは「そうか」と言うと紙を覗き込んだ。

「なんだこれ…」

ヨリタは紙を見ると、顔をしかめ、そう声を漏らした。
その反応に、皆は「なにが書かれているのだろう」と、紙の周りに集まっていき、紙の周りには人だかりができた。

私はこの紙の内容に書かれていることを読んで、皆がどのような反応をするのかドキドキしていた。
やはり、最初に「この紙に書かれていることは罠かもしれない」と言っておくべきだっただろうか。

「えぇ!?どういうこと!!」

「僕たちが人殺しをしたって言いたいの…?」

「な、なんで…ころした、なんで……」

紙を見た皆は口々にそう言った。
私はそんな皆を落ち着かせようとして、

「あ、あの、みんな。この紙に書いてることは罠かもしれないから…お、落ちついて」

と言ったが、逆効果だった。

「ふざけんなよ!!罠なのかよ!?罠だったらブチころすぞ!!」

「罠」と言う言葉がシュンスケを逆立ててしまった。
シュンスケはクマの首元を掴み、小さなクマの体をひょいと持ち上げた。

私たちはシュンスケの行動を止めなかった。
いつもなら、ヨリタが止めていただろうが、今はクマの回答が訊きたかった。

101:めろるん◆g:2019/12/24(火) 12:33

ついに>>100レス超えることができました~!
アドバイス、感想など、本当にありがとうございます!
最近、更新が遅いですが、まだまだ続けていきたいと思っていますので、これからも宜しくお願いします💖

訂正版( http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=5572 )
の方も更新していきたいと思っているので、宜しくお願いします~


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