ピーター・パン~崩れかけたネバーランド~

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1:AL ◆6.:2020/10/15(木) 19:43

前から暖めていた小説を上げていきたいと思います。
今書いている小説の箸休め、みたいな感じですが……
読んでいただければ幸いです。

感想待ってます!
マイナスコメントは禁止させて頂きます。

2:AL ◆6.:2020/10/15(木) 20:00

ーー私はもう、大人になる準備が出来た。
でもそれは、彼らの存在を忘れたり信じなくなる
ことじゃない。ネバーランドは、目を閉じれば
今も私の心の中にあるから。


「さよならピーター!ずっと信じてるわ!」

ーーウェンディはピーターパンに別れを告げました。
大きく大きく手を振ります。ですがピーターは
手を振り返しません。それどころか、そこから離れようと
しないのです。

「ピーター?何か問題でもあったのかしら?」

心配になったウェンディは聞きました。
すると、そこでピーターはようやく口を開きました。

「ウェンディ、どうしてさよならだなんて言うんだい?
まるで、永遠の別れみたいじゃないか」

そんなことをピーターが言うものですから、ウェンディは
すっかり困ってしまいました。

「だってピーター、私達、二度と会えないのよ」

「それは違うね。だって君は、人間界……すなわち
ロンドンとネバーランドを繋ぐ架け橋なんだから!」

ピーターのこの言葉に、ウェンディは大層驚きました。
そして、彼の言葉の意味が理解出来ませんでした。

「ロンドンとネバーランドを繋ぐ架け橋?私が?

ピーターは大きく頷きました。

「そうさ!君には重要な役目がある。ロンドンに
どのくらい僕らの存在を信じてくれている子供がいるか
調べて貰う。そして、その結果を僕に伝えるんだ」

ピーターパンは笑顔で言いました。
その笑顔に、ウェンディはドキドキしましたが、すぐに
我に返って言いました。

「私、飛べないわ。貴方に何度もここへ来て貰う訳にも
いかないでしょう?それに、妖精の粉も沢山必要に
なってしまうし」

突然ピーターは、ウェンディに左手の薬指を出すように
言いました。ウェンディは彼に言われるまま、薬指を
出しました。すると、ウェンディの美しい薬指に
綺麗な指輪をはめました。それはまるで、結婚指輪のように
見えました。

「まぁ、綺麗な指輪ね」

ウェンディはうっとり、自分の薬指に光る指輪を
見つめました。ピーターはまた話し始めました。

「その指輪に、ネバーランドに行きたいと願うと
パッとネバーランドに行けるんだ!凄いだろう?
いつだって行けるんだ。君が妖精や僕らの
存在を信じる限りね」

ウェンディは嬉しくなって、ピーターパンを抱き締めました。

「とっても素敵!嬉しいわピーター!!」

3:AL ◆6.:2020/10/15(木) 20:07

ティンカーベルが、ピーターの裾をぐいと引っ張りました。

「なんだい、ティンク。あ、そうだった!
ウェンディウェンディ、その指輪を作ったのは
彼女、ティンクなんだよ」

ウェンディはパッと顔を輝かせ

「ありがとう、ティンク!」

と言いました。

「別に。全部、ピーターの為なんだから」

ティンクは答えました。ティンクの喋る言葉が
伝わって、ウェンディは驚きました。

「私……彼女の言葉が分かるわ!」

「そりゃあそうさ。もう君は、僕らの仲間だからね!」

ピーターはニッと笑ってそう言いました。
この瞬間から、ウェンディとティンカーベルは
和解したのでした。

4:AL ◆6.:2020/10/15(木) 20:20

ーーウェンディは、ピーターの思い描くような
架け橋になりました。いつまでも彼らの存在を
忘れなかったのです。いつの間にかウェンディは
17歳、高校生になっていました。
それでも彼女は、信じる気持ちを忘れませんでした。
**
ウェンディがいつものように学校へ向かい、教室へ
入ると、何やら騒がしかったので、友達に何があったのか
聞きました。

「ああ、今日転校生が来るの」

その子が答えました。ウェンディはお礼を言いながら
転校生について考えました。
ウェンディが考えていると教室のドアが開き、
転校生が入って来ました。
癖のある赤毛とそばかすが特徴の少年でした。
何処と無くピーターパンに似ていると、彼女は思いました。

「ピーターです、よろしく!」

ウェンディは少年の名前を聞いて、さらに驚きました。
まさか、名前まで似ているとは!
偶然にもピーター少年は、ウェンディの隣の席でした。

「よろしくね、ピーター。私はウェンディよ」

ウェンディは軽く自己紹介しました。

「仲良くしてね、ウェンディ!」

その笑顔も、何処と無くピーターパンに似ていました。

ーーその頃のネバーランド。ティンクは空を飛びながら
何かを、或いは誰かを探していました。

「ピーター!ピーターパン!!何処行ったのよ!?」

どうやら、ティンカーベルはピーターパンを
探しているようでした。
そこへ、迷子たち(ロストボーイズ)の一人が現れました。

「ティンク!どうしたんだい?」

「ああ、ねぇピーターパンを見なかった?
さっきから探しているんだけど、いないのよ」

迷子たちは首を振りました。

「もう!何処へ行ったのかしら!」

彼女は文句を言い、飛び去りました。

5:AL ◆6.:2020/10/16(金) 18:27

ーーその頃、ロンドン。
ウェンディは授業中、異変を感じました。
あの指輪がチクチクし始めたのです。
指輪がチクチクすると、それは、ネバーランドで何かが
起こっている証拠でした。例えば、海賊の襲撃が
起こったり、迷子たちの一人が行方不明に
なってしまったりなどです。ウェンディはネバーランドで
何が起きているのか知りたくて堪らなくなりました。
今すぐネバーランドに行きたい衝動に駆られましたが
ここは学校です。学校で指輪に願いをかけることは
出来ません。急にウェンディが消えたと、騒動に
なるからでした。ですから、ウェンディは学校の授業が
終わるまで待つしかありませんでした。
それに、前にもこうしたことがあり、ピーターが
解決したのでしょう、いつの間にか指輪のチクチクが
なくなったこともありました。ウェンディは彼が
解決してくれることを祈りながら、指輪のチクチクに
耐えました。ですが、授業が終わって一時間経っても
指輪のチクチクは消えませんでした。
ウェンディは心配になりました。ピーターパンは
いないのでしょうか?

6:AL ◆6.:2020/10/18(日) 10:03

いつの間にか、授業は終わっていて、休憩時間に
なりました。ウェンディの元に、友達のメアリがやって
来ました。転校生、ピーター少年のことを教えてくれた
例のあの子です。そして、ウェンディにこう話しかけました。

「ねぇウェンディ、ピーター君って誰かに似てる
ような気がしない?」

ウェンディはそれを聞くと、少しドキリとしました。

「誰だったかしら……あ、そうだわ!小さい頃に
良く夢に出てきたピーターパンに似てるのよ!
笑い方とか、そばかすとか、あんな感じだったような
気がするわ」

メアリは言いました。

「私も実は、そう思っていたところなの」

と、ウェンディも答えましたが、メアリの話を
あまりちゃんと聞いていませんでした。何故なら
まだ指輪はチクチクしているし、ネバーランドで今、
何が起こっているのか知りたかったからです。
そして、ウェンディは立ち上がり、こう口走りました。

「私、早退するわ、先生に伝えておいて!」

そう言った次の瞬間、ウェンディは走り出していました。
呆気にとられるメアリを置いて。

7:AL ◆6.:2020/10/18(日) 10:11

ーー学校から出て、小さな茂みに隠れると
ウェンディはチクチクする指輪に願いをかけました。

「お願い、私をネバーランドへ連れていって!!」

キラキラと辺りが光輝き、その光がウェンディを
包み込み、瞬きする暇もなく、次の瞬間には
ウェンディはネバーランドへ来ていました。
迷子たちの家の前へ来ると、何かを探して飛び回る
ティンカーベルの姿が見えました。

「ティンク、こんにちは。ピーターは何処にいるの?
異変を感じて来てみたんだけれど……」

ティンクは少し不機嫌な様子で応じました。

「ウェンディ、あたしはそのピーターを探してるのよ!
さっきからずっと探し回ってるのに、いないのよ!」

それを聞いたウェンディは驚きましたが、指輪が
ひっきりなしにチクチクしていることに納得がいきます。
事実、今も指輪はチクチクしているのです。

8:AL ◆6.:2020/10/18(日) 16:46

「それなら、私も探すの手伝うわ」

ウェンディは言いました。それで、二人でピーターを
探すことにしたのです。人魚の入江やインディアンの
洞窟など、ピーターがいそうな場所はくまなく
探しましたが、何処にもいませんでした。

「本当に、何処に行ったのかしら」

ピーターパンを探し回って、へとへとに疲れている
ウェンディが、心配になって呟きました。
結局、ピーターを見つけることが出来なかった二人は
諦めて迷子たちの家に帰ることにしました。

迷子たちの家に着くと、どれだけ探し回っても
見つからなかったピーターパン本人がそこにいました。

「やぁ、ティンク!それに、ウェンディも!
何処行ってたんだい?」

「それはこっちの台詞よ!心配になって、あたし
ずっと探してたのよ!?何処ほっつき歩いてたのよ!」

強気なティンクがすぐさま言い返しました。
ピーターは笑い、

「ごめんごめん。つい、あちこち冒険に出掛けてたんだ」

と言いました。ティンクはまだむっとした表情をしています。

「そんなに怒ることないだろ、ティンク」

「彼女が怒るのも無理ないことよ、ピーター。
私も、ずっと心配してたのよ。指輪がひっきりなしに
チクチクしているものだから」

ウェンディもティンクに加戦しました。

9:AL ◆6.:2020/10/20(火) 20:16

「悪かったって。さ、家へ入ろう」

そう言うと、ピーターは一人でさっさと家の中へ
引っ込んでしまいました。ティンクはむっとして、

「本気に反省してるのかしら、ピーターったら!!」

と叫びました。

「まぁまぁ、ティンク。落ち着きましょうよ。
私達も家へ帰りましょ」

ウェンディがティンカーベルをなだめすかします。
そうしてようやく、二人も家へ入りました。

「ねぇ、ウェンディ母さん!学校のお話してよ!」

家へ入り、ソファーに座るなり、迷子たちが
揃って言いました。最近は、ウェンディから学校の
話を聞くのが、迷子たちのお気に入りなのでした。

「良いわよ」

ウェンディは応じると、話始めました。

「あのね、今日転校生が来たの。ああ、そうそう……
転校生って言うのはね、新しく学校へ来たお友達のことよ」

迷子たちが質問する前に、ウェンディは説明しました。
そして話を続けます。

「その転校生がね、ピーターに似ていたの!
そばかすとか、笑った時の顔とか、本当にピーターに
そっくりだったわ!」

そのウェンディの話に、迷子たちは大層興奮しました。

「ピーターに、そっくりだって!?」

「ええ、そうよ。そっくりだったわ」

ウェンディは頷きます。

「僕にそっくりな奴がいるもんか!」

ピーターは叫びました。

「それが、ピーター、いたのよ。でも、貴方の方が
とっても魅力的よ」

ウェンディは優しく言いました。
ピーターは調子に乗って、部屋中を飛び回りました。

「そうさ、僕は魅力的なのさ!」

その姿さえ、魅力的だと言わざるを得ませんでした。

「ピーターにそっくりな人かぁ、僕、会ってみたいなぁ」

迷子たちの一人が言いました。

「確かに、あたしも興味あるわ」

ティンクが話に入りました。

10:AL ◆6.:2020/10/21(水) 20:33

そこで、ウェンディは思い付いたように言いました。

「ーー私も、もう、本当にネバーランドに来ることが
出来なくなるわね……」

ウェンディがそう言った理由は、18歳からは
大人として扱われるからです。18歳までは、まだ
何とか子供として振る舞うことを許されていました。
ですが、18歳になれば変わります。
本当の意味で、大人になるのです。

「どうしてだい、ウェンディ」

ピーターは聞きました。その無邪気な顔に、
思わずウェンディは目を背けたくなりました。
ウェンディは、やはりまだ大人にはなりたくないのです。
今やピーターよりも高くなってしまった背丈も、彼女の
悩みの種でした。

「だってピーター、私は18歳になったら子供では
いられなくなるのよ」

ピーターから目を背けたくなるのをぐっと堪えて
ウェンディは応じました。

「それが何だって言うのさ!君は君だ、ウェンディ。
君はいつまでも僕らを信じてくれるだろ?」

ピーターは、白い歯を見せて笑いました。
でも、ウェンディには少し気にかかるものがありました。
ピーターパンは、世界中の誰よりも、大人を忌み嫌って
いるはずなのです。それなのに、18歳を過ぎても
ネバーランドに来ることを許してくれるなんて。

「貴方は、大人を嫌っているはずじゃあ、なかったかしら」

ウェンディの代わりに、ティンクが言いました。
ピーターは苦々しく頷きました。

「そうとも。だけどね、ウェンディは別さ!
ウェンディは、僕が世界で最初に好きになる大人さ」

このピーターの言葉にウェンディは満面の笑みを
浮かべました。そして、背筋を伸ばしたのです。
ウェンディは、ピーターより高くなってしまった背丈を
嫌い、ネバーランドにいる時はずっと、猫背で
いたのです。

11:AL ◆6.:2020/10/22(木) 20:07

「ああ、私、そろそろ帰らないと」

ウェンディが、思い出したように言いました。

「もう帰るのかい?もう少しだけでも……」

ピーターは引き止めましたが、ウェンディは首を振りました。

「貴方は、大人になるのを許してくれたわね。
大人になるには準備がいるの。今日はね、タペストリーを
織るのよ。私、まだ上手く織れないから休む訳には
いかないの。ごめんなさいね、ピーター」

ウェンディは寂しげに言いました。
ピーターの表情も、何処か寂しげでした。

「またすぐ来るわピーター」

ウェンディは言いながら、ピーターの手を取りました。

「約束だぞ、ウェンディ」

「勿論よ」

ウェンディは頷き、指輪に願いをかけました。

「ロンドンへ、私を連れてって」

ネバーランドに来た時と同じように、キラキラとした
光がウェンディを包みこみ、気付いた時にはもう
ウェンディはロンドンにいました。

12:AL ◆6.:2020/10/22(木) 20:13

「やぁ!ええと……君は確か、ウェンディだったかい?」

親しげな声が聞こえ、ウェンディは振り向きました。
(ネバーランドへ来る前と同じ場所にいたのです)
振り向くと、ピーター少年がいました。

「あら、ピーター君じゃない」

「君が早退したから、心配になってね」

ピーター少年が言いました。

「気にかけてくれて、ありがとう」

ウェンディは優しく微笑みました。
ピーター少年も、にっと笑います。やはり、その笑みは
先ほどまで一緒だったピーターパンにそっくりでした。

「何処へ行くんだい?」

ピーター少年が楽しげな声を出しながら、聞きました。

「アンデスおばさんの家よ。タペストリーを織るの」

ウェンディは答えました。

13:AL ◆6.:2020/10/25(日) 11:28

「僕も一緒に行って良いかい?」

ピーター少年は申し出ました。

「え?ええ、それは構わないんだけれど、貴方には
つまらないと思うの。私の弟のジョンとマイケルも、
初めは私と一緒に着いてきたけれど、すぐに止めたもの」

ウェンディはおずおずと言いました。

「じゃあ一緒に行くよ!そんな経験がないからね、僕は
やってみたいんだ!」

ピーター少年は微笑みながら応じました。

「分かったわ、一緒に行きましょう」

ーーアンデスおばさんの家へ向かう途中、ウェンディは
何気なく聞きました。

「ねぇ、ピーターパンって知っている?」

「ピーター……パン?僕の名前に似てるね!」

ピーター少年は何か面白いことがあったかのような
笑顔を浮かべ、答えました。

「知らない?子供の頃に、彼の夢を見たりしなかった?」

ウェンディは、確かめるようにもう一度聞きました。

「いやぁ。覚えがないな」

考え込むような仕草をしつつ、ピーター少年は
言いました。
その彼の言葉にウェンディは、大層驚きました。
この世界に、まさか、ピーターパンを知らない子供が
いるなんて考えたこともなかったからです。

「驚いてるね、ウェンディ。そんなに可笑しなことかな?
ピーターパンって奴を知らないことが」

ピーター少年は、彼女の心の中を見透かしたように
そんなことを言いました。

「いいえ、別に、そういう訳じゃないのよ。
ただね、貴方が……ピーターパンに似ていたものだから」

ウェンディは慌てて言いました。

14:つむぎ ◆..ttBQIFPGEKI:2020/10/29(木) 16:43

遅くなってごめんね!


  良い点
・ストーリーがしっかりしてる
・第三者(語り手)目線で書かれてる
・状況などが飲み込みやすい



僕が読む限り修正すべき点は見付からなかったよ!素人目線だからもっと良い点とか修正すべき点、どちらもあるのかもしれないけど、いつも通り物語に引き込まれて行くように理解しやすくて良かったと思う!これからも頑張ってね!

15:AL ◆6.:2020/11/09(月) 19:59

ありがとう!これからも頑張ります✨
読みやすいって言ってくれて嬉しい!

16:AL ◆6.:2020/12/21(月) 20:03

ーー丁度同じ頃、ネバーランドに変化が
訪れていました。それはまだ、ピーターもティンクも
気付いていませんでしたが。

ピーターパンの宿敵、ジェームズフックが右手に
嵌めたフックを磨いておりました。
その目は、ピーターに対する復讐心に燃えていました。
そこへ、水夫長のスミーが現れて、こう告げたのでした。

「船長!船の前に餓鬼が立っていやがりますぜ」

フック船長は振り向き、スミーを見やると

「餓鬼、だと?それは奴の手下の迷子達のことか?」

と、問いました。

「いやぁ船長、それが………見たことない餓鬼なんでさぁ」

スミーはずれた眼鏡を直しながら答えます。

「連れて来い!ピーターパンの手下だったら縛り上げて
海に落とすのだ!」

フックは立ち上がり、鋭くスミーに命じました。

「アイアイサー!」

スミーは敬礼し、船長室を出ると、船から下りました。
船の前に、茶髪でつり目の美しい少女が立っていました。

「あんた、ピーターパンの手下かい?」

スミーは単刀直入に聞きました。
少女は鼻で笑い、嘲るように言いました。

「とんでもないわ!それどころか、ピーターパンなんか
嫌いよ。だから、貴方達の仲間になりたくて」

少女は思いがけない言葉を口にしました。
まさか、少し大人に近い見た目とは言えピーターパンを
嫌いな子供がいるとは!スミーは驚愕しました。

17:AL ◆6.:2020/12/31(木) 21:47

スミーがぽかんと口を開けている所に、
このジョリーロジャー号の船長であるフックが
出てきました。堂々たる雰囲気の、ジョン・シルバーが
恐れた唯一の男です。

「ごきげんよう、ミスター・フック」

大人の男でも震え上がるほどの船長を見ても、少女は
物怖じ一つしませんでした。フックは胸の内では
驚いたでしょうが、顔には出しませんでした。

「あ、あのぉ、船長……この餓鬼は船長の手下に
なりたいんだそうで……パンを嫌ってるらしく……」

おずおずと、スミーがそう言いました。


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