華乃's Library -短編集-

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1:華乃 ◆dqtg:2014/01/18(土) 22:04 ID:Ifw

皆様、はじめまして。
華乃の図書館へようこそいらっしゃいました。

小説を書くことは大好きで、昔からよく書いていましたが、投稿することはありませんでしたが、
今回、自分の実力を試してみたい、という理由で、前から度々閲覧していた葉っぱ天国に投稿させていただくことにしました。
長編を続けていく自信があまりないので、短編集という形にします。

いくつかルールがあります。
・雑談、雑談に繋がるような話をしない。
 (感想はもちろんOKです)
・荒らし等の非常識な書き込みをしない。
・このスレッドのURLの無断転載をしない。

・アドバイス、評価はどんどん受け付けております。
 
良い作品が出来るよう、私の力を出し切って頑張りたいと思います。
よろしくお願いします!!
  

2:華乃 ◆dqtg:2014/01/18(土) 22:21 ID:Ifw


>>1で、なんか日本語のおかしいところがありますが、気にしないでください←

追記……ですが、
短編でも1レスで終わるものや、わりと長いものまでさまざまです。
華乃の気分や、話の都合によって長さはバラバラになると思います。
ご了承ください!!

3:華乃 ◆dqtg:2014/01/19(日) 08:47 ID:Ifw


[Wind music of the happiness!!]
 
 運動は出来ないから、文化部にしよう。

 中学に入ったときからそう決めていた。
 運動部は練習がハードで、先生もすごく厳しいというイメージがある。
 体力がなく、メンタルが弱い私なら絶対に無理だと思った。
 とはいっても文化部は、美術部、科学部、そして吹奏楽部の三つだけ。
 絵を描くのが好きなわけでも得意なわけでもない。
 理科は好きじゃないし、この中学校の科学部は変わった人が集まるという噂も聞いた。
 音楽は――、嫌いじゃないけどピアノをやっていたわけでもないし、楽譜だってすぐに読めない。正直やっていける自信もなかった。

「ああ、もうどうしたらいいんだろう……」
 
 部活見学の時間になった放課後、私は人気(ひとけ)のない廊下でぼそりと呟いた。
 自分の声だけがやけに響いて、なんだかすごく寂しくなる。
 いっそのこと帰宅部に入ってしまおうか……。

 春。
 中学校に入学して、4日目のきょう。
 窓から見える桜は満開を過ぎ、少しずつ桜吹雪を見せ始めている。
 小さな小さなピンク色の花びらが時折、ガラスにくっついては離れる様子がすごく美しかった。
 その木々から覗く空は雲一つなく、青く澄み渡っている。

 ほんの一週間くらい前までは、中学校の新しい生活に胸を膨らませていた。
 新しい制服、新しい教科書、新しい校舎……。
 たくさんの“新しい”に出会い、それを見たり体験するたびに嬉しい気持ちが溢れ出して止まらなかった。新しい友達もそれなりに出来た。
 でも、部活だけが唯一の悩み。
 きっと今頃みんなは、希望の部活を見学し、楽しんでいるところだろう。
 それなのに私だけ、誰もいない廊下をとぼとぼと歩き続けている。

4:華乃 ◆dqtg:2014/01/19(日) 09:02 ID:Ifw


 ――そのときだ。

 隣の校舎から響いた、“音”。
 思わず窓に駆け寄って、外を覗き込んだ。
 それは吹奏楽部のものだろうと、一瞬で理解する。
 小学生の頃少しだけ見たことがある金管楽器らしきものが、窓から少しだけ見え、日光を受けてキラキラと輝いていた。

 もっとあの音を近くで聞きたい。
 それぞれの楽器は、どんな音が出るのか。
 あの音がどのように発せられていて、どのように1つになるのか。

 知りたい、そして“聴きたい”。

 衝動に駆られたかのように、無我夢中で走り出した。
 『第一音楽室』を目指して。

5:華乃 ◆dqtg:2014/01/19(日) 19:24 ID:Ifw

 
 先日、校舎内見学をしたため、第一音楽室の場所を探すのに時間はかからなかった。
 白い壁には可愛らしいデザインの紙がぺたりと貼られており、丸っこい字で『吹奏楽部・ここです。みんなで作り上げるコンサートを是非聞いて下さい』と記されている。そのまわりには、たくさんの楽器の絵が描かれていた。
 閉まった扉の小さな隙間から、音が漏れ出している。
 さっき廊下で聞いた音楽の、続きだ。
 
 美しく、繊細な音。
 澄みきっていて、流れるような音。
 力強く、炎が燃え盛るように迫力のある音。
 軽快で楽しい雰囲気が感じられる音。

 一つの音楽なのに、さまざまな音が重なり合い、曲の場面を作り出している。
 名前も知らないクラシック曲だが、頭の中にはその曲中の情景がくっきりと浮かび上がる。
 音の出るタイミングも、音が終わるタイミングも、全てが整っていて。この部活の一体感がすごく表れている気がした。
 低い音の楽器がメロディーを支え、響きをつくっているように聞こえる。
 メロディーの楽器は強弱をはっきりとつけ、場面の変化を表現している。
 たぶん打楽器だと思うものは、曲中のリズムをはっきりとつけて、全体を引っ張っているように思える。
 
 初めて聞く音楽なのにその曲の物語さえもはっきりとイメージできる。
 それぞれの名前も知らない楽器たちから発せられる音は、どれも生きているようだった。
 音と音が糸のように絡み合い、一つの音楽を紡ぎ出す。

 ここが音楽室の外だということも忘れて、私はこの音楽に聴き浸っていた。
 
 ふいに音がやむ。
 ――曲が変わるんだ。
 

6:華乃 ◆dqtg:2014/01/21(火) 19:02 ID:Ifw


「1、2、3!!」
 はきはきとした女子の声を合図に、また違う曲が始まった。
 
 今度は今流行りのポップス。
 大人気の男性アイドルグループの曲で、桜をテーマにしたアップテンポの明るい曲だ。
 聞くと元気が出るような歌詞とメロディーで入学にはぴったりの選曲だ。私も音楽番組などで何度か聞いたことがあり、CDを買おうかと迷っているところ。
 
 だが今聞いている音楽は、アイドルのものとはひと味違う。
 一番の違いは『豪華』なところだと思う。
 音が華やかできらびやかで、本当に聞くだけで明るい気持ちになれる感じ。
 一曲目と全く違う雰囲気の曲なのに、しっかりと吹き分けられているのが凄いと思った。
 と、そこで全体の音が少し小さくなっていくのに気がつく。
 よく聞かないと分からないが、少しずつ、少しずつ、ボリュームのダイヤルを一目もりずつ回していくかのように。

 そのときだ。
 小さな音を割るかのように、一筋の大きな音が入ってきた。金管楽器のような華やかさを持っていて、まわりの音に向かってついてこい、と言わんばかりに音楽をつき進めている。
 そう、これはきっと“ソロ”だ。
 力強いその音は音楽全体を動かすような力を持っているように思える。
 一人だというのにその音からは恐れるような気持ちは微塵も感じられない。
 きっと、すごく責任感とリーダーシップがある人なのだろう。
 音にその人の人柄がにじみ出ている。音楽って、すごい。
 さらにまわりの音が伴奏の役割を担い、ソロをより一層引き立てる。

 ソロが終わったと思えば、まわりの音が音量をあげる。
 まるでソロの人に、「ありがとう。あとは私たち・俺たちに任せろ」そう言っているかのように。
 素晴らしいドラマが音楽に映し出される。
 すごい、その一言しか言えないくらいに、すごい。
 
 音楽でこんなに感動するとは思わなかった。
 ここの音楽には、色んなことが詰まっている。
 物語と、美しい景色と、ドラマと、絆と――。
 数えきれないほどたくさんの感動が、たくさん詰まっている。
 
 一日目の部活見学の終了を告げるチャイムが鳴り響く。
 明日も絶対ここに来よう。
 夕焼け色に染まった誰もいない廊下を、軽快に進んでいった。

   Wind music of the happiness!! 完 
 

7:華乃 ◆dqtg:2014/01/21(火) 19:08 ID:Ifw


*あとがき*
 第一作目、Wind music of the happiness!!が一応完結いたしました。
 かなり短い作品です、すみません。
 この作品は、私が吹奏楽部に所属しているということもあり、
その経験などもちょっぴり混ぜて書いてみました。
 まだまだの文章力でお見苦しい点も多々あったかと思いますが、
読んでくださりありがとうございました!!
 部活系の話は好きなので、また書くかもしれません。

 次回は、今回の話とは全く別の話になるかな、と思います。
 良いものになるよう頑張るのでよろしくお願いします。
 


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