*゜・。+゜Freegenre*゜・。+゜

葉っぱ天国 > 短編小説 > スレ一覧キーワード▼下へ
1:紺音 シキ:2014/05/27(火) 14:21 ID:Yzc

なんかかっこつけて『Freegenre』なんてつけちゃってますけど、ちゃんと短編集ですので・・・w
とりあえず、グダグダとのんびりゆっくり書いていきます、ハイ。

+:★*ルール+:★*
*荒らしや中傷コメは絶対やめてください。
*雑談は少しくらいまでならokですが、読者様同士の深い関わりを持ちたい方は交流版へどうそ。

リクエストや感想、アドバイス等は受け付けます!
感想、アドバイスは辛口で全然okですので、作品を読んで思った事を素直に書き込んでください。

2:紺音 シキ:2014/05/27(火) 15:36 ID:Yzc

【冬の春】
   *ジャンル* 
恋愛
   *主な登場人物* 
     ・仲瑞 架友[ナカミズ カユ]
     ・椎田 尚哉[シイダ ナオヤ]
     ・桂島 静果[カツジマ シズカ]
      
  

3:しょこら:2014/05/27(火) 22:09 ID:kQs

おぉ!!スレ名かっけぇ!!w
楽しみにしてるよん〜!!

4:あゆみ:2014/05/27(火) 22:45 ID:cEM

あゆみです。覚えていますか??
この小説も頑張ってください!ちょくちょく
コメントしようと思っています。よろしくお願いします!!

5:紺音 シキ:2014/05/28(水) 13:44 ID:Yok

>>しょこら
ありがとう♪早速来てくれると思わなかったw
いや、日本語に直したら「フリージャンル」ってそのままジャンw

>>あゆみ様
ありがとうございます!
えっと、確か何かのスレでお話しさせていただきましたよね。
間違っていたら本当にすみません。
応援ありがとうございます!こちらこそよろしくお願いします!!
パーフェクト教室の方も読んでいただいて本当に感謝します!

6:紺音 シキ:2014/05/28(水) 13:45 ID:Yok







吐き出した白いため息が凍りそうになりそうなほどのこの寒さ。本当にどうにかしてほしい。
今は12月7日。今日は晴天だが、昨日降った真っ白い雪が道に降り積もり、歩くたびに綺麗に足跡を残してゆく。
そんな雪道を歩きながら、私は高校を目指す。

「架友っ」

「キャアッ!」

急に後ろから抱き着かれて、近所迷惑になるほどの大きな声を上げてしまった。
ハァ、と別の意味でため息をついて後ろを振り返ると、見慣れた顔がそこに会った。

「静果―・・・。」

「ヘヘッ、ビックリした?にしても架友は朝から元気だねぇ」

「誰のせいでこんなに大きな声出すハメになったと思ってるの?」

ジト目で静果を見ると、静果は「ごめんなさぁい」とニコニコ笑顔で謝った。いや、そこはもうちょっと反省してる顔で言おうよ。
桂島静果。私の親友。
静果は明るい性格と可愛らしい顔立ちで、美少女として同級生から拝められている。自慢の親友だ。

「ところでさっ、なにか情報掴めた?」

「え?・・・あー、ハイハイ。」

私はカバンの中から一冊のノートを取り出した。静果は嬉しそうな笑顔を浮かべた。
このノートの中身は私が書いている。このノートは静果の為に作られた、私と静果だけが中身を見れるノート。

「見せて見せてっ」

「ハイハイ。」

渡すと、静果は頬を赤く染めながらノートに夢中になった。
あのノートの中身は私の幼馴染、椎田尚也に関する情報が記されたノート。
そのノートの情報収集は私の役目。静果は私が集めた情報を見て、尚也にアプローチするだけ。
そう、静果は尚也に恋をしている。それも、今年の10月から。
・・・正直に言うと、私は尚也の事が好き。ずっと前から、中学の時から尚也に恋し続けているんだ。

「すっごぉい!いっぱい情報増えてるっ!ありがとう、架友!」

「えっ、あぁ、うん。」

けれどある日、静果が私に相談してきた。「実は私、椎田君の事が好きなの」、と。
私だって、尚也の事が好きだ。けれど、静果は自分以上に大切な私の親友。
尚也だって、私なんかより静果の方がいいだろうし、私が尚也に告白したところで困られるに決まってる。
だから、自分の気持ちは永遠に抑え込むことにした。私は、静果に協力することにした。

「架友?」

ハッとして顔を上げると、静果が心配そうに私の顔を覗きこんでいた。本当に可愛いんだから。
私は静果に協力したことを後悔していない。だから、私の分まで静果には幸せになってもらわなくっちゃね。


◆ ◇ ◆


「おはよう、尚也くぅん」

教室に入って早速のアプローチ。尚也も笑ってるし、まんざらじゃなさそう。
私はお邪魔かな。私はソッと自分の席に座った。

「・・・ん?」

教材を机の中に入れようとして、私は机に入れた覚えのない紙のようなものが手に着いたのに気が付いた。
不思議に思ってその紙のようなものを引き抜いてみると、それは一通の手紙だった。
なに、これ?

「んー?」

思わず声を漏らしてしまう。後ろに静果がいたのに気付かないまま。
すると、静果が私の手からヒョイッと手紙を奪った。

「あっ!」

「なにこれ?あっ、ラブレター?」

「はぁ?そんなわけないでしょ。ていうか返してよ。中身見なきゃ意味ないじゃん。」

もう一度静果の手から手紙を奪うと、改めて中身を確認しようと思−・・・

キーンコーンカーンコーン

ハイ、保留。

7:紺音 シキ:2014/05/29(木) 14:10 ID:lW2

「ここの問題をー・・・仲瑞!」

「わかりませーん。」

黒板を見ずに即答してやると、先生は「まぁた、お前は・・・」と、笑いながら言った。
すると、一人が笑い始め、みるみるうちに教室は笑いで包まれていった。
ちらりと尚也を盗み見ると、尚也も笑っていた。あぁ、やっぱりカッコイイなぁ。
・・・ダメダメ。もう尚也は諦めたんだから。こんな感情捨てなくっちゃ。

「もうっ、ちゃんと答えなきゃダメでしょ!?」

と、斜め後ろの静果が笑いながら言ってきた。

「じゃ、静果が代わりに答えてよ。センセー、静果が答えるってー。」

「えぇ!?」

「おぉ、じゃあ桂島、解いてみろっ!!」

「そんなぁ・・・」

とかなんとか言いながらも黒板に向かって歩いていく静果。本当に可愛いんだから、もう。
もう一度尚也を見てみると、興味なさ気にボーっと窓の外を眺めていた。せっかく静果が前に居るのに・・・。
すると、不意に尚也と視線がパッチリ合った。慌てて視線を逸らし、問題を解いている静果を見る。

「できましたっ」

「ん、正解だー。じゃぁ、席についていいぞ」

「は−い。」

なにあの可愛い生き物は。正解って言われてはにかむ天使を見ながら私は静果を見つめた。
静果は席に座ると、私に「ひどい!」と訴えてきた。私としてははにかむ静果を見れて嬉しかったんだけどね?
「ハイハイ」と適当に受け流して、授業終わりのチャイムが鳴るのを気長に待つことにした。


◆ ◇ ◆


「え?明日告んの?」

「うんっ!情報も結構集まったし、勝算があるからね!」

授業は順調に進んでゆき、放課後になった今、二人きりの教室で静果が急にそんなことを言ってきた。
「よっしゃー!」と言いながら拳を高らかに突き上げる静果を見ながら、私は自分の気持ちを処理していた。
これで、静果の恋のお手伝いも終わりってとこか。悲しい?そんなわけないよ。もう、とっくに、そんな感情持ち合わせないようにしたから。

「これでやっと静果のお守りも終了ってとこかぁ」

わざとらしく言ってやると、静香は口を尖らせた。あら可愛い。
そんなじゃれ合いをしていたら、静果が急に慌てはじめた。忙しい子だなぁ。

「ごめん、今日ピアノこのままいくからもう行くね!?」

「あー、そういやそうだったね。ん、バイバーイ」

手を振って走っていく静果を見送る。さて、私は暇だからどっか寄って帰ろうかな。そう思って私はカバンを手に取った。
その時。

ガラッ

教室のドアが開く音がした。もう下校時間ギリギリなのに、何の用があって教室にきたんだろう。
私は不審に思って、教室のドアの方に目を向けると、そこにいたのはなんと尚也だった。

「えっと、尚也?」

「尚也だけど?」

「なにしてんの?もう下校時間ギリギリだよ?」

「いや、忘れ物取りにきただけ。ていうか架友こそなにしてんだ?」

「静果としゃべってたら遅くなっちゃって。でも、静果も習い事で帰っちゃったし、私も帰ろうかなって。」

「フーン。・・・あ、そうだ。一緒に帰るか?」

「いーよ。なんか久々だね。」

「確かにな。」

もう恋愛感情は捨てたんだから一緒に帰るなんて緊張しない。それに、明日静果と両想いになるんだから関係ないよね。
私は自分にそう言い聞かせて、高ぶる気持ちを落ち着かせた。

8:紺音 シキ:2014/05/30(金) 18:38 ID:UKE

◆ ◇ ◆


いつもの帰り道、私の横には静果とはまた別の、大切な友人がいた。
私の初恋の人で、幼馴染。そんな近くも遠くもない、いい感じの距離を今でも保ててると言う事は自分でもすごいと思う。

「にしても、尚也背伸びたねぇ。羨ましい限りで。」

「そりゃ、男だもんな」

「いいなぁ、私も男に生まれたかった。なんか尚也より背が低いって屈辱的なんだけど。」

「どーとでもほざいてろー。ぜってー俺の背は抜かせねぇからな。」

「うっわー、本当に昔っから変わってないんだから。」

「それを言えばお前もだろ?」

「まぁね。」

なんてしゃべっていたら、もう家が見えた。あぁ、なんで尚也といると時間を短く感じちゃうんだろう。
今でもそんなこと思ってるのか、と未練がましい自分を叱りながら、フッと微笑んだ。

「あ、そだ。明日良いことあるから楽しみにしてなよー」

「は?なんだ、それ。」

「じゃ、バイバーイ」

「お、おう?」

家が斜め前の尚也は不思議そうに私を見ていた。まぁ、私なんか見なくていいよ。明日には静果を見てるんだから。
なんとなく、この場を早く去りたくて、逃げる様に家に入った。


_____その時、尚也が私の背中を見つめていた事なんて私は知らなかった。


◆ ◇ ◆


自分の部屋に入った私は勉強しようとカバンを開けると、私の目に留まったのは、白い封筒だった。
・・・あ。忘れてた・・・。
迷わず封を切ると、可愛らしいピンク色の便箋が入っていた。

[ 仲瑞 架友さんへ
   いきなりでごめんなさい。
   実は、僕は桂島静果さんのことが好きなんです。
   明日、告白しようと思うのですが、お手伝い願えないでしょうか?
                                  3年6組 嶋田 愁汰 ]

おぉ、こんなところでも静果モテてるじゃん。すごーい!やっぱり静果はモテモテだね!
・・・さてと、この返事なんだけ・・・。「実は明日、静果に彼氏ができちゃうんですっ(ニコッ」なんて言えるわけがない・・・。
しかも3年生とか先輩だし。これはどうしようか。


◆ ◇ ◆


「静果―・・・。あのさ、お願いがあるんだけど・・・。」

「ん?言ってみ?」

次の日の朝、私は早速持ちかけてみることに決めた。
嶋田先輩、頑張って下さい。フラれるって分かってるんですけど、想いを伝える場だけは用意しますんで。

「あのね、今日の放課後の5時30分に体育倉庫裏に来てほしいの。あ、別に怪しいことするわけじゃないからね!?」

「わかってるってぇ。あ、でも告ってからでいいかなぁ?」

「うん!全然いいから!とりあえず来てね!?」

「うん!」

よかった。静果が単純で。疑われなくって心底安心したよ。
さて、次はっと・・・。

9:紺音 シキ:2014/05/30(金) 18:39 ID:UKE

◆ ◇ ◆


う〜・・・。なんで私がこんな目に・・・。
今は3年フロア。1年はなかなか来れるようなところじゃないのに、私は来た。もちろん、嶋田先輩に会うために。

「あっ、真智ちゃん!」

「ん・・・?あ、あぁ架友じゃんか。え?なんで3年フロアにいるの?」

真智ちゃんとは私の年上の従姉妹。容姿端麗、成績優秀者。本当に自分と違繋がっているのか疑いたくなる。
で、今は万智ちゃんのことは置いておいて・・・。

「万智ちゃんって嶋田愁汰って人知ってる?」

「知ってるよー」

「ちょっと呼んできてくれないかな?実は嶋田愁汰先輩に用が合って・・・ってなんでニヤニヤしてるの?」

「いやぁ、ついに架友も愁汰に恋しちゃったかぁ、と思ってねぇ?」

「ごめん、わけわかんない。というか嶋田先輩に会ったことないし。」

「え〜?一度は名前聞いたことあるでしょ?」

「ううん。昨日初めて知った。」

「えぇ!?架友がそこまで情報に疎いと思わなかったわ・・・。ま、愁汰に用があるんでしょ?今呼んでくるから待ってて。あとで話聞かせてね!」

「え、あぁ、うん?まぁ、ありがとー」

真智ちゃんの背中を見届けて、私は溜息をついた。
嶋田先輩ってそんなに有名人なのかな?でも、聞いたことなかったし・・・。もしかしたら学校一の問題児とか!?
・・・いやいや、でもそんな人が私に手紙を書いたり協力を求めたりするはずがないし。

・・・ん?
人が近づいてくる気配がして顔を上げると、そこには言葉を失ってしまうほどの美形さんがいた。

「君、仲瑞さんだよね?」

「えっ、あ、はい。あ、もしかして嶋田先輩ですか?」

「そうそう。で、なにかな?」

「静果に放課後の5時30分に体育館裏に来るように言っておいたので、5時30分、体育館裏に行ってください。」

「本当?ありがとう、仲瑞さん。」

「いえいえ。」

「仲瑞さんに協力をお願いして正解だったよ。本当にありがとう。」

「そんなことありませんよ。頑張ってくださいね。」

「本当にありがとうー」

そんな声を背中に受けながら、階段を下りる。
・・・ていうか女性の先輩方、そんなきっつい視線送らなくてもいいじゃないですか。別に嶋田先と関係を持ってるわけじゃないんですし・・・。

10:紺音 シキ:2014/06/01(日) 13:47 ID:4nk


◆◇◆


「さてと、帰りますかな。」

時が過ぎるのは早すぎるぐらいだった。いつの間にか放課後になっていた。
あー・・・。これで私の長かった情報収集もおしまいってことか。なんか、寂しいな。・・・なんてさ。

「あ、架友。」

「なに?しずー・・・かじゃなかった、尚也。」

「声で分からなかったのかよ」

そりゃぁ、そんなこと考えてる暇なかったし。それに、私の名を呼ぶなんて静果くらいだと思ったから。
で、用件は何だろう。そう思って私が首を傾げると、尚也は思い出したように私を見た。

「今日お前ん家泊まるから。」

「は?なんで。」

「いや、実は母さんと父さんが一泊二日の旅行行くからって架友の家に行くよう言われたんだよ。多分、お前のお母さんにも話はいってると思うぞ。」

「ん、まぁ了解。じゃ、私先帰るからねー。」

「は?お前日直だろ?」

その瞬間、私の体から血の気が引いていく気がした。どんどん体が冷たくなっていく。うわ、マジでヤバいよ。
そういえばそうだった。私、日直だった。

「手伝ってやろうか?」

「え。なにそれ。尚也にしては優しいじゃん。でも、いいや。呼び出されてんでしょ?」

「え、何で知ってんだよ。」

「呼び出したご本人から聞いたんですー。ね?良いことあるって言ったでしょ?」

おめでとー、と拍手して祝福してやると、尚也は思いっきり顔を歪めた。そして、歪めたかと思うと、次の瞬間には不機嫌そうな顔になっていた。なんで?
あぁ、そういえばなんか昔もこんなことあったな。なんか私が男子に告られた時だっけ?結局付き合って破局したんだけどね。
あー、もう、やっぱり今でも尚也の怒る地雷が分からない。

「ねぇ、尚−・・・」

「んじゃ、俺行ってくるわ。」

「はぁ?なんで怒ってるかぐらい理由言ってからにしてよ。」

「お前には関係ねぇよ。」

なにそれ。なんか私ってホントに報われないじゃん。
静果の為に私は尚也に対する恋愛感情を友愛感情に変えた。張り裂けそうな思いの中、静架に協力した。見ず知らずの先輩に協力した。しまいには尚也との喧嘩。
私の高校生活って一体なんなの?私は誰かに協力するために高校に来たの?自分の事、何もできないの?

「あっそ。じゃあサッサと行けばいいじゃん!」

思わず声を荒げる。こんな大きな声で言うつもりじゃなかったのに。
二人きりの教室に私の声が響いた。尚也も突然あらわした私の怒気に驚いているようだ。
でも、私は自分の制御ができなくなっていた。言葉は続いてゆく。

「あの子は寒い中アンタを待ってんだから!私の努力だって無駄になるのは絶対許さないから。」

「は?お前の努力?意味わかんねぇよ。」

「あんたには関係ないよ、バーカ。」

私は尚也に背を向けると、カバンを掴んで、尚也の横をスルリと通り抜けた。
その時に尚也がそんな顔をしていたかなんて、私は知らない。知りたくもなかった。

11:二神:2014/06/06(金) 20:35 ID:HDo

凄く面白くて、続きが気になります!これからも頑張ってください!!応援しています☆〜(ゝ。∂)

12:紺音 シキ:2014/06/08(日) 18:05 ID:7Dk

>>二神
うん、ありがとう^^*
でも、なんで敬語?二神らしくないねぇw
あ、そういえばだけどスレ立てしたからきてね〜

http://ha10.net/test/read.cgi/yy/1402218106/l50

13:二神:2014/06/09(月) 20:11 ID:HDo

おk
これからタメにするw
スレ立て感謝
逝ってくる←

14:紺音 シキ "":2014/06/11(水) 15:58 ID:0bM

>>二神
逝ってくるってww
まぁ、とりあえずきてくれてありがとー♪

15:紺音 シキ:2014/06/11(水) 16:32 ID:0bM

サクサクと音を立てて足跡を残していく真っ白な雪を見ながら、とぼとぼと一人、歩いていた。
尚也は何も悪くないのに。あんなのただの八つ当たりじゃん。私って本当に最低・・・。

「・・・あっ!!」

フと思った。私、日直なのに放棄してきちゃった・・・。
ヤバい、戻ったほうがいいかな。いや、でも学校には尚也と静果がラブラブになってるから邪魔できないよね。
私はふぅ、と息を吐いた。
あぁ・・・、もう私どうしたらいいんだろう。

「・・・っ」

気が付いたら視界が歪んでいて、頬に生暖かい水が流れた。
だめ、泣いちゃダメだ・・・っ。
そう思って涙をふき取り、気持ちをしっかり整えたとき、背後から近づいてくる気配に気が付いた。
まさか、と思って振り返ると、そこにいたのは

涙を流した静果の姿だった。


◆◇◆

今、私は静果の家にいる。
静果は涙を止めることなく、嗚咽を漏らして泣いている。
静果は尚也と両想いになったんだ。それで、嬉しくって泣いているんだ・・・。

「ごめっ、ひっく、架友っ・・・!!」

「え、嘘、なんで謝ってるの?」

静果は泣き続け、謝った理由を一向に話そうとしなかった。
私はそんな静果の震える背中を摩り続けた。

◆◇◆

「・・・あたしね、本当は知ってたんだ。」

ようやく泣き止んで息を整えた静果は、私の目を真っ直ぐ見ながら話し始めた。
私も静果から目を逸らさず、じっと静果の話を聞いた。

「架友が尚也くんのこと好きだって。」

「は・・・はぁ!?」

「毎日横にいてたらさすがに気づくよ〜?まぁ、話は戻るんだけど、知ってのとおり私はフラれちゃったの。」

「え、えぇえ!?」

「えぇ!?嘘、え、気付いてなかったの!?」

「いや、嬉し泣きじゃなかったの!?」

「当たり前じゃん!!というか嬉し泣きでここまで涙出ないよっ!!」

ハァ〜と頭を抱えて溜息を付く静果。
というかフラれちゃったんだ・・・。もう、尚也って馬鹿じゃないの!?私の努力無駄にするなって言ったじゃん!

「まぁ、アレだよ。3年の愁汰先輩に告られてokしたんだけどねっ!愁汰先輩超優しくてイケメンっ!」

「あ、よかったー!実は私、嶋田先輩に協力してたんだよ〜、静果に告るためのねっ!」

「それ本当に〜?・・・ん、まぁなんでもいいや。」

「いや、もっと教えてよっ!」

「それはまた明日ね。それより架友。次はあんたが幸せを掴む番でしょ?」

「え?」

「今、尚也くんに告白しようとする人はいないよ。だから架友。いまがチャンスなんだよ!」

そういうと、静香は無理やり私を家から追い出した。
え、ちょ、急になに!?ていうか寒いんだけどっ!

「じゃ、頑張ってね!」

ってドア閉めるな!なにその最後の満面の笑み!本当にさっきまで泣いていたのか!?
ため息をつくと、しょうがなく私は家に向かって足を進めた。

16:バニカ:2014/06/11(水) 19:31 ID:fDQ

読んだze
もう完全に取り残されたと思いつつ最後まで読んだ私に拍手!←

17:紺音 シキ:2014/06/12(木) 18:57 ID:Ihs

>>バニカ
お疲れっ!
大丈夫だ、これはあくまでも短編集。
いつでも読み返せるぞw
そして私の文章力の無さに笑うがよい!!ww

18:AI:2014/06/12(木) 23:40 ID:YRw

来たよ〜ふぁ‥‥ここで良かった?

19:りったん:2014/06/13(金) 01:46 ID:pBA

やっほー
来たよ!こっちも面白いね!!

20:AI:2014/06/13(金) 21:40 ID:YRw

来たよ〜ふぁ‥‥ここで良かった?

21:紺音 シキ:2014/06/14(土) 06:56 ID:kfo

>>りったん
え、読んでくれたの!?
ありがとう!!
短編とか苦手だから話にまとまりがないかもしれないw

>>AI
おぉ〜!きたか!
じゃあじゃあ、次はここ来てね!
http://ha10.net/test/read.cgi/yy/1402218106/l50

22:紺音 シキ:2014/06/18(水) 14:26 ID:.Uk

だいたい私が幸せを掴む番って、一体なんなの?それ。
確かに私は尚也の事が好き。その気持ちは誰にも負けていないと思う。
でも、尚也は?
尚也が私のこと好きでもなんでもない、ただの幼馴染と思っているのならば、きっと私からの告白は迷惑にしかならないだろう。別にそれでもいいんだ。むしろ、その方が良い。


こんな苦しい想いを抱くくらいならば、もう尚也のことを嫌ってしまいたい。


◆◇◆


「ただいまぁー・・・」

家に入ると、返事はなかったが、尚也の靴らしきものだった。尚也、帰ってたんだ。
複雑な気持ちで靴を脱いでリビングに入った。リビングは暖かかった。

「・・・おかえり。」

リビングに入った瞬間私の目に飛び込んできたのは、食卓の椅子でコーヒーを飲む、超がつくくらい不機嫌だった尚也の姿だった。
まるで自分の家の様にくつろいでいる尚也の姿を想像したいただけに、不機嫌そうな顔の尚也の登場にかなり私に衝撃をうけた。

「た、ただいま・・・」

苦笑いで返事をすると、尚也はフイッと私から顔をそむけた。ひどっ。
私も今の気持ちのままで尚也と喋ったらなにを言うか分からないから、かえって都合がよかった。
カバンをソファーの上に置き、ポスンと座り込んだ。フッカフカのソファーは気持ちが良かった。

「・・・なぁ、架友。」

「な、なに?」

内心メッチャ焦っていたものの、なんとか返事だけは返した。・・・ビクビク怯え気味に。
だって、尚也の表情といい、声といい、絶対キレてるもん!!長年そばにいてもこんなキレてんの久々に見たよ!

「桂島のことだけど。」

「・・・あぁ、そのこと。静果から聞いたから。フッたんでしょ?」

「違う、そうじゃない。」

じゃあなんなの、と聞きそうになって、口を噤んだ。
尚也が私を思いっきり睨んでいて怖い。だから、黙ってしまった。

「なんで桂島に協力なんてしたんだよ。」

「え・・・、だって、それは、静果は私の親友だし、親友を手伝うのは当たり前の事じゃないの・・・?」

「別に当たり前じゃないだろ。それに、嫌ならきっぱり断れよ。」

「な、なにそれ。別に嫌じゃなかったし。私は静果と尚也が結ばれるのを願って・・・」

「お前、俺の事好きなんだろ?」

「・・・は?」

私の言葉を遮ぎった言葉に、思わず聞き返してしまう。
今の言葉が私の聞き間違いではないのならば、他人からすれば「自意識過剰乙ww」、と笑ってしまう言葉。
でも、私にとっては紛れもない真実。

「な、何言ってんの!?」

「桂島が言ってた。違うか?」

「し、静香が、え、うそ、え、な・・・」

「その慌てよう、肯定ととっていいのか?」

静果、なんでそんなこというわけ!?静果、絶対フラれるってわかって言ったんだ!自分が両想いになれなかったからって・・・!!
怒りやらパニックやらもう、訳が分からなくなって、気が付いたら涙が流れてきた。

「架友!?」

「うっさい!ほっといてよ!」

慌てる尚也の声をかき消すように、私は金切り声をあげた。
もう嫌だ、なんでこんな思いしなくっちゃいけないの・・・!?
私はもう限界だった。無意識のうちに、私は自分の想いを涙ながらに告げていた。

「そうだよ!!私はずっと、ずっと尚也が好きだった!でも、静果が好きだって言うから自分の気持ちはとっくに捨て去ったよ!」

もう、自分でも何を言っているのか分からなかった。
ただただ、感情の赴くままに言葉を吐き出していた。

「静果に嫌われたくなかったし、尚也には静果みたいな子がお似合いだって思った!私はただ、二人に幸せになってほしかっただけだよ!」

23:紺音 シキ:2014/06/19(木) 15:45 ID:wJE

私がすべての感情をぶちまけ終えると、尚也がため息をつくのが分かった。
いくら迷惑だからって、そんな態度とらなくたっていいじゃんか・・・。
怒りやパニックの涙はいつからか、悔しさや悲しみの涙へと変わってしまっていた。

「なぁ、架友は俺と桂島の幸せになってほしかったんだよな?」

「そうだけど・・・」

目に溜めた涙を拭い、弱弱しい声で呟いた。
私は脱力をして、ソファーの背もたれにもたれかかって、腕で目を隠した。

「架友ってバカ?それとも天然?」

「なっ!失敬な!どっちも違うし!」

こんなフインキの中でも私を貶してくる尚也に、思わず立ち上がって反論する。
私より20cmぐらい背の高い尚也の顔を見るには、どうしても見上げる形になってしまう。
尚也、背高いなぁ・・・。いや、私が小さいだけ?まだ157cmだし。でも、まだ女子の中ではまだ大きい方だよね?
なんて本当にどうでもいいことを考えていたら、また尚也のため息が聞こえてきた。

「じゃ、鈍感ってことで。」

「はぁ!?」

なんか勝手に鈍感と決めつけられたのだが。なにそれ、いくらなんでも幼馴染だからってひどいよね?ね?
・・・あー、もうなんか疲れた。
急に疲れが襲ってきて、もう一度ソファーに座り込んだ。

「だってそうだろ?俺の気持ちにも気づいてねーんだし。」

「え・・・、嘘、なに!?あんた好きな人いるの!?そのくせに私に告白させたの!?うっわー、ないわー。マジ最低。」

私がそう言って、尚也を睨むと、尚也はむっと眉を寄せ、不機嫌そうな顔になった。
不機嫌そうな顔になりたいのは私だっつーの。
そう思って今度は私がため息をつくと、急に尚也が私の腕を荒々しく掴んで、私を無理矢理立ち上がらせた。

「きゃっ・・・!!」

「最低なのはお前だろ?」

尚也の声が耳元で聞こえたかと思うと、次の瞬間には息ができなくなっていた。目の前には尚也の顔あった。
驚いて尚也の肩を叩くと、尚也は離れて行った。

「えっ、なに、いまのき、ききき、き・・・」

「キス?」

「なんで恥ずかしげもなくサラッと言えちゃうわけ!?ていうかなんで私にするの!?練習台!?」

「好きだから。」

「は・・・!?」

「だーかーら、俺は桂島じゃなくて架友が好きだって言ってんの。そりゃあもう、ずっと前から。」


◆◇◆

あれから、どんな反応をして、そんな返事をしたのか、すっごく曖昧。
でも、尚也と付き合うことになったのは、鮮明に覚えている。
周りの人は、「え、今まで付き合ってなかったの?」だとか「やっとくっついたか・・・」だとか「椎田くんの気持ち気づいてなかったの?」とか、なんか色々失礼だった。

「架友―」

尚也に名前を呼ばれ、尚也の元に駆け寄る。
ニコッと微笑みを浮かべて手を取ってきたので、思わず頬が赤く染まる。
赤く染まった頬に、ちらついている雪が触れ、その雪は一瞬だけ、ピンク色に染まる。
ピンクの雪は、二人で迎える初めての春が訪れる予兆のようにすぐに溶けてなくなっていったのだった。

24:紺音 シキ:2014/06/19(木) 15:46 ID:wJE

うわああぁあぁぁ!!
なんかラストすっごい適当だったー!!

25:紺音 シキ:2014/07/30(水) 11:21 ID:6y2

【幼馴染への恩返しは】
   *ジャンル* 
     恋愛
   *主な登場人物* 
     ・紫月 真凌[シヅキ マシノ]
     ・神上 逸輝[カミジョウ ハヤテ]
     ・南 藍紗[ミナミ アイサ]

   
   (小説家になろう、からの自作品転記です。)

26:紺音 シキ:2014/07/30(水) 11:22 ID:6y2

私の隣の家の幼馴染は、完璧だ。
勉強も、運動も、家事も、容姿も、性格も、人気も、オシャレも、もう全部。
私はそんな完璧幼馴染に、いつだって支えられて生きてきた。
私も、そんな幼馴染に恩返ししたいなぁ・・・。


.。゜+..。゜+.  .。゜+..。゜+


「え〜? 真凌が恩返し〜?」


私、紫月しづき 真凌ましのは、中学校からの親友、南みなみ 藍紗あいさに相談事を持ちかけていた。
その相談事とは、幼馴染、神上逸輝かみじょう はやてにどう恩返しするか、だ。
けれど、私には無理だとわかっている藍紗はケラケラと笑うだけで、真剣に考えてくれない。


「ちょっと、藍紗! 真剣に考えてよっ」
「え〜? だって真凌がハヤッちに何かするとか普通に考えて無理でしょ〜!」
「し、失礼な! 私にだってできるしっ!」
「じゃあ、なにかひとつハヤッちに勝るところある?」
「うっ……」


思わず言葉を詰まらせてしまう。だって、返す言葉が見つからないんだもん……。
藍紗の言っている通り、逸輝にはなにしても勝てない。
いや、私は平凡。逸輝が完璧すぎるだけなんだ!!そうに決まってる!


「ま、真凌はいつも通りしてればいいと思うよ?」
「それじゃあダメなんだって!」
「じゃー、もう本人に直接聞いた方が早くない?」
「サプライズ感が全くないじゃん!」
「あーもー、メンドクサいなぁ。じゃあ、アンタのお守りでも解放してあげれば?」
「え? お守り?」


私って、逸輝にお世話されてたの?
信じられないと言う風に藍紗を見つめると、藍紗は溜息をついて頭を掻いた。


「自覚無かったわけ?」
「え、だってお守りなんて……。それは逸輝が勝手に!」
「それは知らないけど……。ほら、ハヤッちも真凌ももう高2なんだから、彼女彼氏ができてもおかしくないわけじゃん」
「うん」
「真凌に彼氏ができた時に、ハヤッちと一緒にいてて、彼氏に誤解されて別れちゃうーなんてこと、あるよ? 一応、それはハヤッちからしても同じこと」


 ……イコール、逸輝から卒業しろってこと?
 でも、どうやったら逸輝から卒業すればいいの?逸輝はもう、お兄ちゃんみたいな存在で一緒にいるのが当たり前なのに。方法がわかんないよ。


「どうすればいい?」
「簡単じゃん。真凌が彼氏作ればいいじゃんっ!」
「彼氏、かぁ。そんなの私に出来るかな?」
「あったり前じゃん! よし、思い立ったら即行動! 待ってろよー、男子共!」
「いや、なんで藍紗が彼氏探してるみたいになってるの〜?」


 藍紗はそういうと、すごい勢いで教室から去って行った。
 私も慌ててその後を追う。

……よし!絶対逸輝から卒業してやるっ!

27:紺音 シキ:2014/07/30(水) 11:23 ID:6y2


 今日は休日だが、いつも通り家に来る逸輝。だから私もいつも通り自分の部屋に連れて行く。
 あー……、朝から無駄にキラキラオーラ放っていらっしゃることで。


「おはよー」
「そういえば、昨日なんで先に帰ったんだよー」
「え、それは……」


 口ごもる私。言えるはずがない。逸輝を卒業したいから、だなんて。
 咄嗟に言い訳をする。


「それは、その、用事があったから……?」
「なんで疑問形なんだよー。つか、用事があるなら言えよな?」
「う、うん。ごめん」


 アハハッと笑い合う私たち。
 ……あれ?これじゃいつもと変わりなくない?これじゃいつまでたっても逸輝から卒業できないじゃん。
 あ、そうだ。私に彼氏じゃなくて、逸輝に彼女でよくない?
 唐突に思いついたその思考。


「ねぇ、逸輝」
「おー?」
「好きな人とかいる?」
「ブッ」


 私が聞くと、逸輝は飲んでいたジュースを盛大に噴出した。
 私は驚いて逸輝の横から飛びのいた。


「うわぁっ!! ちょ、逸輝、なにやっての!? ここ私の部屋!」
「ゴホッ、ゲホッ……。いや、お前急になに聞いてくるんだよ!」
「え、その反応ってことは、いるの!?」
「はぁあ!?」
「良い反応だね〜。ってことはいるんだね?誰!?」


 私が詰め寄ると、逸輝は顔を真っ赤にしながら後ざすった。
 何度聞いても逸輝は硬く硬く口を閉ざし、答えてくれなかった。
 お願いしてみようかな。


「お願い、教えて! ね?」
「それは無理」
「え〜。」


 いつもなら何でも教えてくれるのに。
 私がつまんなーい言う風に、ベッドに寝そべると、逸輝はポンポンと頭を撫でてくる。
 もう……。いつまでも子供扱いするんだから。
 私はそんなことを思いながらも、だらしなく頬が緩んでしまう自分を腹立たしく思いながら、意識を手放した。



「え……」

 目を覚ましてベッドから起き上がると、逸輝がベッドに凭れかかって寝ていた。
 うわ……、まつ毛なっが。女装しても気づかれないんじゃない?
 なんて、逸輝の寝顔を覗き込みながら思っていたら、慌ただしく階段を駆け上がってくる足音が聞こえた。


「まーしのっ!」
「しーっ!!」


 咄嗟に部屋に入っていた人物を注意する。
 逸輝が起きちゃうじゃん!


「ごめんごめん」

 そう小声で謝ってきたのは、藍紗だった。
 藍紗は私の家の近所に住んでいるため、よく家に来てくれる。


「で、今日はなにしにきたの?」
「え〜。ひまだから」
「なにそれっ」
「まぁ、いーじゃん。こんなことよくあるんだし。……ところで、なんでハヤッちがいるわけ?」
「え、わかんない。なんか来たから上げただけだよ」


 私がしらっとしてそう答えると、藍紗は呆れたような顔をして、ため息をついた。
 え、なんで?
 首を傾げると、チョップされた。手加減ないし、すっごい痛い。


「急になにすんのっ」
「あんたがバカなこと言うからでしょ!? 本当にハヤッちから卒業する気あんの?」
「あったりまえでしょ!」
「じゃあなんでハヤッち家にいるの! これじゃ今まで通りでしょ!? これじゃ恩返しできないよ!?」
「それでいー……よくない! だめじゃん!」
「そう、だめなの。今度ハヤッちが来たら冷たーく突き返すこと。いい? 冷たくよ」
「う、うん。わかった」


 あーもう、本当にあたしの馬鹿っ!いつも通りで過ごしてたら意味ないじゃんっ!!
 頭を抱えて唸っていると、藍紗が優しく肩を叩いてくる。
 なに?と思って顔を上げると、藍紗が妙に優しい微笑みで私を見つめていた。


「ショッピングいこっか。ついでに卒業作戦でもたてよーよ」
「本当に? 藍紗、付き合ってくれるの?」
「当たり前でしょ。さ、早く準備して」
「うん! ……あ、でも逸輝どうしよう」
「置手紙でも置いておいたら? というか、ハヤッちの存在忘れてたわー」
「ていうか、私たち普通の声で喋っちゃってたよね! 大丈夫かな、起きてないかな、聞こえてないかな」


 今の会話を聞かれてたらって思うと、背筋が凍りそう。
 でも、その心配は必要なかったようで、逸輝は規則正しい寝息を立てている。
 ふぅ、と安堵のため息を漏らし、準備を進めた。

28:紺音 シキ:2014/07/30(水) 11:23 ID:6y2


「真凌!!」


 次の日、藍紗が嬉しそうな顔をして私の机までやってきた。
 藍紗がテンション高いって、珍しい。朝には弱いはずなのに。

「どうしたの?元気だね〜」


 私は、藍紗に苦笑いで言った。
 藍紗は何も言わず、上機嫌でスッと一枚の封筒を差し出した。


「なに? これ。」
「ハヤッちから!」
「は、逸輝から?うそ、なんで?」
「さあね?フフフッ!」


 藍紗はそれだけ言って、スキップしそうな勢いで自分の教室へと戻って行った。
 私は藍紗の背中をただ、呆然と見つめていた。なんか、今日の藍紗変だな……。
 けれど、私の視線はすぐに机に置かれた封筒に移った。


「なんで、手紙……?」


 メールでいいじゃん……。
 そんなどうでも良い事を考えながら、ゆっくりと封筒の封を開ける。


[今日、放課後に4階の空き教室集合。]


 と、綺麗な字で書かれていた。
 ……なぁんだ、緊張した私がバカみたい。さて、どうしよう。行こうかな。さすがに無視は人間としてどうかと思うし、やっぱり行こう。



 そんなこんなで、時間は進む進む。あっという間に放課後だ。
 帰ろうと席を立つと、ふと、逸輝からの手紙を思い出した。
 ……あ、そういえば4階の空き教室に呼ばれてたんだった。行かなきゃね。


「じゃあね、真凌! 頑張ってね!!」


 藍紗は私をちらっと目を向けて、ひどく嬉しそうな顔でそう言われた。
 ……がんばるって、なにが?
 私が首を傾げてみても、藍紗は笑顔しか返すことなく、教室から出て行った。
 やっぱり、今日の藍紗は変だ。

29:紺音 シキ:2014/07/30(水) 11:24 ID:6y2

「逸輝ー?」


 4階にある唯一の空き教室にヒョコッと顔を覗かせると、誰もいなかった。
 えぇ?自分から呼んでおいて、こないってどういうこと?
 怒っても仕方ないかと、空き教室にある机の椅子を引いて座った。

 ガラガラガラ……

 座るやいなや、空き教室のドアが開く音がした。
 先生!?とびっくりして振り返ると、そこにいたのは逸輝だった。


「あ、逸輝! もう、何の用?」
「いやー……あのさ」
「なに?」
「恩返しって、どういうことだよ」


 えぇ!?なんでバレてるの!?
 目を見開くと、逸輝はあからさまにため息をついた。


「で、卒業ってなんだよ?」
「えぇえ!? うそ、なんでそこまで知ってんの!?」


 私も我慢の限界に達したようで、思わず大きな声を出してしまった。
 だって、藍紗以外知らないはずのことが、まさか本人にバレてると思わないし!!


「南から聞いた」
「藍紗か……。まぁ、バレたなら仕方ないよね! ん、いいよ、教えてあげるっ!」


 これで、逸輝も満足するよね?
 私はそんな期待も込めて、今までの作戦を告げることにした。


「いつも逸輝にはお世話されて迷惑かけてばっかりだから、その迷惑をなくそうと思ったの。それで、私は逸輝のそばにいたら結局甘えちゃうから、もう離れちゃえっ! ってなったの」


 国語力のない私が上手く説明できるはずもなく、結局こんな説明の仕方になっちゃったけど、長年一緒にいる逸輝なら読み取ってくれただろう。
 私はすべて話し終え、机に突っ伏した。


「それ、俺の意思、すっげー無視してね?」
「え……、あ、そっか。じゃあ、どうやったら逸輝から卒業できる?」
「は?」
「え?」


 なんでポカンと口を開けて固まっているのだろう。なんかおかしいこと言ったかな?
 意思を無視ってことは、逸輝のやり方で卒業しろってことだよね?これで合ってるよね?
 すると、逸輝は静かに隣の机に座った。
久しぶりに逸輝と視線が合う高さになり、互いの視線が交わる。


「なあ……。その恩返しって、俺が決めてもいいわけ?」
「うーん……。よくないことはないんだけどね」
「それって、真凌に拒否権ないよな?」
「うん。あ、でも、私でも出来ないことは無理って言うからね?」
「あ、じゃあ、言っていいか? これは、真凌しかできないことだ」
「いいよ!」


 ドキドキする。
 いつも完璧で、何不自由ない生活をしている逸輝に、私にしかできないことがあるなんて。


「……ん?」


 フッと影ができたような気がして、顔をパッとあげた。
 その時だった。

 唇が重なった。

 その瞬間、時が止まったような気がした。目の前には逸輝の顔。
 なにもできずに呆然としていると、スッと逸輝の顔が離れて行った。


「俺と付き合おっか?」


 いつもは見ないちゃんとした『男』の笑みの告白と、さっきのキスとが重なって、私の顔が紅に染まる。
 まるで、全身の熱が顔に集中的に集まったかのように、頬が熱い。
 ……え?今、逸輝、私の事好きみたいなこと……。


「え、なに、うそ、私の事好きだったの?」
「ん? 悪いか?」
「い、いえ、別に……。」


 こんなアッサリ肯定されるもんだから思わず俯いてしまう。
 やばい、なにこれ、めっちゃ恥ずかしいんだけど……。
 ドッキリ?だってそうでしょ?なんでもできて、モテモテで……、そんな奴が私の事を好き?


「で、拒否権ねーんだもんな?」
「う、ん……。まぁ、ね」


 恥ずかしさあまり、机に突っ伏してしまう。
 なんでだ、私。相手は逸輝だよ!?小さいころから一緒の幼馴染だよ!?


「なんか、今失礼なこと考えてるよな?」
「え?」
「お仕置き」


 声を近くに感じて、ガバッと顔を上げた。
 そこには、意地悪な顔をした逸輝がいた。嫌な予感がする。


「んっ……!」


 また、キスされた。
 なんの予告も無く、唐突にされた。
 あれ?逸輝って、こんな甘い奴だっけ?

 そんなことを考えながら、甘いキスに浸っていた。

30:紅:2014/08/02(土) 21:45 ID:7LQ

紺音シキs!!
2作品とも、めっちゃ面白いです!
涙でちゃいましたよ!
新しい作品作っていただけるなら、楽しみに待ってます!!

31:紺音 シキ:2014/08/11(月) 14:36 ID:60s

>>紅様
ありがとうございます!!

ヤバいです、嬉し過ぎて言葉が出てこないです!
涙出ちゃいましたって、嘘でも嬉しい言葉ですよ!!
いや、もう、本当にありがとうございます!!

はい、更新は必ずしますよ!
次回予告ですが、友情系にしたいとおもってます!
ぜひ、読んでください!

コメントありがとうございます!

32:れき:2014/08/11(月) 19:49 ID:eKU

おもしろいです!!てか甘い(´∀`*)
はやてやばぁ(*・ω・`*)

33:紺音 シキ:2014/08/12(火) 09:28 ID:4tg

>>れき

ありがとう♪

小説家になろう、からの転記だったから甘めだったかも?w
逸輝には二次元の理想を詰め込んでみたw

34:あえ:2014/08/14(木) 20:52 ID:uv6

とっても、面白いです。(本も出してほしい
ほどファンになっちゃったかも!?)
更新頑張っテクダサイ


下さい

35:紺音シキ:2014/08/16(土) 18:18 ID:m8w

>>あえ様
 ありがとうございます^^*
 マジですか!! 自分にファンがいてくれるなんて・・・・・・((°д°;))
 驚きのあまり言葉が出ませんw
 本当にありがとうございます!頑張ります♪

36:あえ:2014/08/18(月) 15:09 ID:uv6

がんばです!

37:妃芽:2014/08/19(火) 23:24 ID:Z6U

>>シキ
二つとも、すっっっっっっごく面白いよ!!

38:紺音シキ:2014/08/21(木) 13:13 ID:qK6

>>あえ様
 ありがとうございます!
 あえ様のその応援で頑張れる気がします!w

>>ひめたん
 ありがとう!!
 短編にまでコメントくれるとはびっくりしたw
 でも、本当に嬉しい! ありがとう♪

39:妃芽:2014/08/22(金) 00:27 ID:Z6U

>>シキ
だって、シキの小説面白いんだもーん!
虹色教室の方も頑張ってね!!

40:紺音 シキ:2014/08/22(金) 10:50 ID:FtE

>>ひめたん
 お世辞でもうれしいw
 虹色教室……放置気味なんだけどw


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