気紛れ更新短編小説集

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1:椛◆xI:2015/07/20(月) 22:20


気まぐれに更新して行きます。

ホラーだったり恋愛だったり、色々。

荒らしは帰ってね。

気まぐれなので更新は亀速度です…

2:椛◆xI hoge:2015/07/20(月) 22:36





ふと、目が覚めた。

下を見ると階段が続いていた。
同じく上も階段が続いていた。
どうやら、これは所謂螺旋階段というやつだ。
そして何故私がここに居るか考える。
うーん、と唸りながら捻り出した答えは、ここは夢の中という事だ。

「私は今、夢を見ているのね?」

勿論、私が語りかけた空中には人なぞ居らず、私の言葉は空に消えた。
取り敢えず、私はその場でジッとしているのが嫌になって、螺旋階段を登り始めた。
上を見る限り、この螺旋階段は永遠に続いている様に思えた。
しかし、私は登る。登り続ける。
夢の中はとても気持ちが良くて、ふわふわしていて、居心地が良くて……
私の乏しい語彙力では、現せない程夢の中は何だか気持ちいい。宛ら、お母さんのお腹の中みたいだ。
悪い気分はせず、寧ろここにずっと居たいと思った。



*************



「やぁ、また会ったね」

歩き疲れて、少し休んでいた頃、誰かに話しかけられた。
誰、と咄嗟に周りを見回す。が、誰も居ない。
はてな、と首を傾げながら前を見てみると、なんと其処には先程までは、居なかったはずなのに何処からとも無く表れたのか分からない一匹の黒猫が居たのだ。

3:椛◆xI hoge:2015/07/20(月) 23:04




「え、え……」

いきなり起きた事の現状を把握出来ず、口をあんぐりと開けていると、また猫が喋り始めた。

「そんなに驚かないでくれよ。君は僕の恩人じゃないか」

いきなり目の前に猫が表れた事よりも、猫が喋っている事に驚いた。

「ここは夢の中じゃないか。夢の中だったら何でも出来るだろう?」

心の中を見透かされている様な発言にも、また驚いた。
だが夢の中、と言われ納得がいった。

「あの…、貴方は誰、なの?」

恐る恐る、猫に聞いてみる。

「そうだね…、簡単に言うと昨日、君がたこ焼きをあげた猫、とでも言っておこうかな」

ああそう言えば昨日、路地裏で見つけた黒猫にたこ焼きを半分あげたっけ…
あのたこ焼き、食べてくれたんだ。

「ねぇ、君それよりこの夢から早く目覚めた方がいいよ?」

「それは何故?」

質問を質問で返す。

「この夢はね、死んだ人が見る夢なんだよ」

えっ…!それじゃあ私も目が覚めないままこのままこの夢の中を彷徨い続けるの?

「じゃあ、貴方はもう死んでしまったの…?」

「そうだよ。車に撥ねられて一撃さ。」

その時の映像を一瞬想像してしまい、口元を抑える。

「おっと。無駄話が過ぎたね。とりあえず君をここから出してあげる。」

「ありがとう。でも貴方は、ここから出なくていいの…?」

「いいんだよ、僕は。だってもう死んじゃったからさ」

自嘲気味に笑いながら言った。
それを聞いたら何だか、目の前に居る猫がとても可哀想に思えてきた。

「同情は要らないよ。さぁ、早くこっちにおいで。急がないと」

私は猫に寄り添った。

「君はまだ、生き続ける可きだ。僕よりも長生きして、うんと幸せを掴むんだよ」

その猫の言葉が聞こえた途端、突然光に襲われた。
眩い光に目を開けていられず、私は目を閉じた。

4:椛◆xI hoge:2015/07/20(月) 23:52





ハッ、と目が覚めた。
ここは何処、と起き上がり周りを見渡す。
どうやら病院の一室らしい。

不意に、廊下のナースと目が合った。
ナースは私を見るなり、慌てた様子でバタバタと走って行った。

暫くぼーっと天井を眺めていたら、病室に誰か入ってきた。
見覚えのある顔。お母さんとお姉ちゃんだ。
私の顔を見るなり、お母さんとお姉ちゃんは抱き合って泣き出した。
その状況に理解が追いつかず、ただ見ていたら後ろから医師が来た。

「君は、交通事故に遭って、左足を無くして四年間目を覚まさなかったんだ。所謂、植物状態だね」

そう言って私の頭を撫で「よく頑張ったね」と褒めた。
お母さんは私の事を力一杯抱き締めた。お姉ちゃんは「偉かったね、辛かったね」と慰めながら、頭を撫でてくれた。



************.



今考えてみると、もしかしたら夢に出てきた黒猫は私の身代わりになってくれたのだと思う。
これから、色々と大変だろうと思うが、黒猫の事を思い出して辛いことも頑張ろうと思える。



***Black cat***

5:椛◆xI hoge:2015/09/06(日) 04:44




僕は電車が嫌いだ。

ホームでの待ち時間も、列車の中で泣き喚く赤ん坊も、新聞紙を読みながら咳き込むおっさんも

全部引っ括めて大嫌いだ。

そもそもの原因は、あの蒸せ返るような暑い日の事だった。


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