遠い街のどこかで。

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1:しおん:2015/08/06(木) 20:27

絶え間なく、セミが鳴き続ける。
太陽が容赦なく照りつける中、僕は、ある人のお墓に来ていた。
墓石に掘られた名前は「近藤ゆかり」。
僕は、その名前から顔をそむけ、お供え物のバームクーヘンをおいた。
それから手を10秒ほど合わせると、そそくさと立ち去る。
僕の時間は、ある時からずっと止まったままだ。
そう、6年前のあの日から―。

2:しおん:2015/08/06(木) 20:57

1話「僕と彼女」

「あっち〜。この暑さ、何とか何ね―かなぁ……」
僕、佐藤圭太は、教室の窓際で、下敷きをうちわ代わりにして仰いでいた。
「おい圭太。お前何下敷きなんか持ってきてんだよ!」
友人の東が笑いながら僕を肘で突っついてきた。
「下敷きねぇと、文字がゆがむんだよ」
「何乙女なこと言ってんだよ!」
東が大声を出したせいで、男子がうじゃうじゃ集まってきた。
そんな男どもと、たわいもない話をしていると
「佐藤君!ゆかりちゃんが来たよ!」
女子の中村が声を上げて手招きをした。
見ると、確かに、その言葉通り、ゆかりが来ている。
ゆかりが僕に向かって、小さく手を振った。
そんな彼女を見て、東がまた僕をからかう。
「お〜!新婚ラブラブだねぇ〜。圭太君?」
「ばっ、バカ言ってんじゃねーよ!じゃな!」
僕は東の話を切り上げ、鞄をつかんでゆかりのところへ駆け寄った。
「わり、待った?」
「ううん。全然」
ゆかりのホワン、とした笑顔を見ると落ち着く。
通学路を歩いていると、ゆかりが思い出したように話しかけた。
「ねぇ、圭太」
「ん?」
「あのさ、ちょっと寄りたいとこあるんだけど……いい?」
ゆかりは、俺の顔を少し覗き込むようにして尋ねた。
上目使いがまたかわいい。
「おー。別にいいけど。どこ?」
俺がそう答えると、ゆかりは目を輝かせて手を打った。
「あのね、駅前に、新しい店ができたんだって!」
「へぇ〜」
「でね、そこのバームクーヘンがすごく美味しいらしいの」
「オッケ。じゃあ、行こうか」
「うんっ!」
俺とゆかりは、こんな感じでお付き合いしています。
付き合って2か月だというのに、まだ手もつないでいないし、キスだって……。
でも、いいんだ。
俺は、ゆかりを大切にしたいから。
「けーた?早くいこーよ」
ゆかりがぼーっとしていた俺に声をかけてきた。
「あ、う、うん」
でも、やっぱり僕はゆかりと―。

3:ゼシル :2015/08/06(木) 23:49

主人公の一人称がバラバラなんで統一した方がいいのでは?あと、人物に対する描写が少ないです。容姿、特徴などをもう少し書くようにしましょう。

4:しおん:2015/08/07(金) 18:38

分かりました。
ありがとうございます!

5:ゼシル :2015/08/07(金) 18:46

>>4
一応小説書いてるのでw
アドバイスですよー!

6:しおん:2015/08/07(金) 19:04

2話「夏祭り」

ゆかりとバームクーヘンを食べに行ったあの日から2か月がたった。
暑さはますます厳しくなってきている。
俺は太陽の陽ざしに耐えながら一人で通学路を歩いていた。
吹奏楽部のゆかりは、今日は部活があるからと言って部活に向かってしまった。
どうやら、近々コンクールがあるらしい。
特に、3年生が引退して、2年生がリーダーとなったこの時期は、とても大切らしい。
俺は暑さでボーっとしている頭をたたいて、ふと電信柱に目を向けた。
そこには、ポスターが貼られていた。
『7/14〜7/16まで、富岡神社で夏祭りを開催!ぜひ来てください!』
夏祭りか……。
そう言えば、ゆかりとデートしたのはまだ一回しかないな。
ゆかりを誘おうかどうかさんざん迷ったが、やっぱり彼女といかないのは少しおかしい気がして、ケータイを取り出した。
ゆかりにメールを送って、返事が来るまで家で待つ。
夜の7時頃、ようやくメールが来た。
『いつから?』
あ、そういえば、日付を書いてなかった……。
『7/14〜7/16まで。いつ行く?』
すると、すぐに返事が返ってきた。
『できれば16日がいいかな?後の二日は部活あるし。圭太はどう?』
俺は嬉しくなって超高速で親指を動かした。
『もちろん!』
『そっか!じゃあ、浴衣着ていくね☆』
浴衣……。
俺は、少しゆかりの浴衣姿を想像してみた。
きっとかわいいんだろうな……。
俺は笑いをこらえるのに必死だった。

7:しおん:2015/08/07(金) 19:29

当日、俺は鳥居の前でゆかりを待っていた。
もうすぐ待ち合わせの7時になる。
すると
「圭太〜!お待たせ!」
耳触りの良い明るい声がした。
見てみると、案の定、ゆかりがそこにいて。
ゆかりはメールの通り蝶の模様が付いた浴衣を着ていて、普段は腰辺りまで自然におろしていた髪の毛を、ポニーテールにして結んでいた。
少し癖のある髪の毛なので、パサッとなっているが、それもまたかわいい。
「……」
俺が無言で見つめていると、ゆかりが不思議そうに「どうしたの?」と聞いた。
「あっ、わ、悪ぃ!あー、そのー……えっと……」
「圭太?」
「ゆっ、浴衣!」
「え?」
さらに不思議そうにするゆかり。
「浴衣っ!似合ってんじゃん!」
きっと、俺の顔は、真っ赤になっているに違いない。
ゆかりはそんな俺を見て、目をぱちくりさせた後、笑顔でにっこりと笑い
「ありがとー」
と言った。
何だか恥ずかしくなってこれ以上は我慢できない。
「いっ、行こうぜ……」
「うん!」
しかし、いざ屋台まで来てみると、人だらけで少し暑苦しかった。
はぐれたりしないかな?
そんなことを思っていると、ゆかりの方から手をつないできた。
「えっ!?」
俺がオーバーに驚くと、ゆかりはさも不思議そうに返してくる。
「だって、はぐれちゃダメでしょ?」
「おっ、おう……」
ゆかり……なかなかSだな。
そんなことを思っていると、ゆかりが手を引いてきた。
「ね、イカ焼き食べていい?」
「あっ、ああ……」
マイペースなゆかり。
でも、そこがかわいい。
……俺は、ゆかりをかわいいとしか思ってないんだろうか?
いや、そうじゃないと思う。
確かにゆかりはかわいいけれど、それだけじゃない気がする。
「圭太?どうしたの?」
ゆかりが俺の顔を覗き込んで尋ねてきた。
「い、いや……何でもない……」
「本当にどうしたの?圭太……」
「いや、いいんだ。次はどこに行く?」
話題を変えると、ゆかりはそうだねぇと言いながら歩き始めた。
ゆかりはあまり深入りしない性格なので、こういう時は、ありがたい。

8:しおん:2015/08/08(土) 18:38

「あ、そうだ!」
ゆかりは思い出したように手を打った。
「おみくじ、買お?」
「うん」
ゆかりに連れられ、本堂の方へときた俺たちは、適当に10円お賽銭をしてからおみくじを買った。
少しわくわくしながら開くと、そこには「小吉」というまあまあな文字が印刷されていた。
「圭太は?」
「俺は小吉。ゆかりは?」
「ちょい待ち……」
ゆかりは紙を開くと、少し唖然とした表情を見せ、俺の方に向き直った。
「ゆかり?」
「圭太……これ……」
ゆかりが渡したおみくじを見ると、そこには「大凶」という不吉な文字が。
大凶って、ホントにあるんだ……。
俺が感じた率直な感想はそれだったが、それを言うわけにもいかず、ゆかりの頭にポン、と手を置いた。
「大丈夫だって。気にすんな」
「うん!」
俺が言うと、ゆかりはようやく安心したような表情を見せた。
「じゃあ、もう帰るか?」
「そうだね」
ゆかりを家まで送り、俺は夜道を一人で歩いていた。
俺は、ゆかりとずっと一緒に居たい―。

9:しおん:2015/08/09(日) 13:36

3話「フルートの時」

夏休みに近づいてきたころ、俺は自転車で文化会館へと向かっていた。
今日は、ゆかりが所属している吹奏楽部の発表会。
ゆかりはフルート担当で、今日演奏する曲ではメインになる楽器だ。
だから、すごく緊張していると思う。
俺は、自転車置き場に自分のものを置き、鍵をかけて会場へ。
会場に入ってみると、クーラーがすごく効いていて、少し肌寒かった。
腕時計で時間を確認すると、開始まで10分近くある。
だから、俺はパンフレットを見たりして時間をつぶしていた。
そんなことをしているうちに、だんだん眠くなって……。
まぶしいライトに目を開けると、もうゆかりたちは準備を始めていたらしい。
そして、俺はそのゆかりの格好に目を見開いた。
俺が、その自分の彼女に抱いた印象は、クリアな白。
まぁ、白い服だったから、そう感じただけかもしれないけれど。
でも、少なくとも俺は、その子に目を奪われたよ。
だって、そのポニーテールをした白い子は、綺麗だったんだから。
とても、とても。
それから俺は、正直に言うと、演奏はほぼ聞いていなかった。
ただ、そのゆかりの白に目を奪われていただけ。
それだけ、俺はゆかりの事が好きだったんだ。

10:しおん:2015/08/09(日) 18:50

無期限休業と取らせていただきます。
気が向いたら書く予定ですのでお願いします。


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