儚い瞬間の中で

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1:  るい。  ◆ESlA:2017/08/03(木) 19:27



      季節は移り変わっている
      気持は移り変わっている
      儚い瞬間の中で少しずつ

      新しい感情が創られている


    ___たくさんのおはなしの中へどうぞ


           🥂


               >>2
   

   
      

2:  るい。  ◆ESlA:2017/08/03(木) 19:31



   ▼ 色々短編書いていきます
   ▼ 感想、アドバイス等はご自由にどうぞ
   ▼ 荒らし、なりすまし他はご遠慮ください
   ▼ 書き溜めているものなのでジャンル偏り気味です
   ▼ 基本登場人物の紹介は作中では書きません

   よろしくお願いします、
   

3:  るい。  ◆ESlA:2017/08/03(木) 21:47



>>2

文章おかしいところあったので訂正……


   ▼ 色々短編書いていきます
   ▼ 感想、アドバイス等はご自由にどうぞ
   ▼ 荒らし、なりすまし他はご遠慮ください
   ▼ 書き溜めているものなのでジャンル偏り気味です
   ▼ 基本登場人物の紹介は作中で書きます
   

4:  るい。  ◆ESlA:2017/08/04(金) 20:06



        【 泡の弾ける音 】


「 ねぇねぇ環葵……、これどうやって解くの……? 」

「 えぇ?またわかんないの?全くもう……。 」

全開になった窓から、風が吹き込んでくる。
がらんとした教室に、あたしと一人の男子が向かい合って座っている。
からっぽになった机と椅子が、あたしたちを冷たく見ているような気がする。

あたしの目の前で“わからない”だの“こんなの解けるわけない”だの喚いているのは、まぁ世間でいう腐れ縁と
いう関係にある、相庭春という奴だ。
名前からすると完璧に女子だが、男子だ。
とってもまったり、マイペースすぎる男子だ。

もちろん勉強はダメダメである。あたしがいなかったら多分、テストや模試は最悪の点数だったと思う。
だってあたしが教えてもあの点数なんだから………。

「 これはね、さっき教えたやつを使うの。こうやって……。 」

「 あぁ、なるほどなるほど……!そういうことか! 」

「 ………ほんとにわかってんの?一応受験生なんだからね?真面目に勉強しないと……。 」

あたしがびしっと言うと、春はたちまち小さくなる。

「 環葵、怖い……よ?僕だって自分が頭悪いことくらいわかってるんだから……。 」

あたしは小さくなった春を慰める。もちろん勉強させるためだ。

「 はいはい。今日もあと3ページ頑張ったらご褒美だから、ね?」

あたしが『ご褒美』という言葉を発すると、春の顔がきらきらし始める。

「 ほんと⁉あと3ページで!ありがとう! 」

あたしのいう『ご褒美』の正体。
それは、炭酸だ。
春は炭酸が大好きだ。炭酸水から味付きの炭酸まで、ありとあらゆる炭酸が大好きなのだ。

春は思えないようなスピードで3ページを終わらせた。
まぁあたしにすれば遅い方だが、春にすれば速すぎる方。

教室を出て昇降口まで歩く。

「 今日は何の炭酸にするの? 」

あたしが春に訊くと、春の目が輝いた。

「 うーん………。どうしよっかなぁ。暑いからレモンソーダも良いし、あ、炭酸水も美味しいよね! 」

なんで同意を求めるのだろう。
炭酸水なんて殆ど無味無臭。しゅわしゅわするだけではないか。

「 あぁ……うん、そうだね……。まぁあたしは炭酸水あんまり好きじゃないけど……。」

仕方ないので正直に答える。春は、そっかぁ、と伸びをしながら呟いた。

外は熱気でいっぱいだった。もう9月の終わりだというのに、暑くて仕方ない。
あたしたちは自転車に跨り、漕ぎ出す。暑いけれど、風は気持ち良かった。

5:  るい。  ◆ESlA:2017/08/05(土) 15:28



「 ねぇ春、今日は海に行かない?天気も良いし。 」

あたしは、すぐ隣で自転車を漕いでいる春に問いかける。
あたしたちの通っている燕山( つばめやま )中学校は、海に近い。
もっとも、あたしたちの住んでいる町が海辺の町なのだ。
だから、学校から坂を下れば海に出る。

「 うん、良いよ。 」

春が同意する。
海辺にはコンビニがある。だからそこで『ご褒美』の炭酸を買うのだ。

自転車を漕ぐこと数分。海に付いた。
海には漣が打ち付けている。見るだけで涼しくなってくる。
コンビニに自転車を止め、店内に入る。思った通り冷房が効いていて、ものすごく涼しい。

店内の飲料売り場に行き、春が決めるのを待つ。
あたしもたまには飲もうかな、と気まぐれに呟いてみた。

春はすぐに反応する。

「 飲みなよ!美味しいよ、炭酸。 」

無邪気な顔であたしに笑いかける春は、どう見ても中学3年生とは思えない。

「 で、どうするの、今日は。あたしはぶどうにするけど。 」

そう言いながらあたしはぶどうソーダの入ったペットボトルを取り出す。

「 え、もう決めたの?んーと………じゃあ今日はレモンソーダにしよっと。 」

台詞からすると完全に女子だな、春は。あたしよりも女子っぽいのかもしれない。
あたしは会計に向かい、春は先に外へ出た。
お釣りと炭酸の入った袋を貰って、あたしは外に出る。
むわっとした熱気が身体にまとわりつく。

「 ありがとう、環葵! 」

あたしが春にペッドボトルを差し出すと、春は飛び上がった。

あたしと春は海まで降りた。気持ち良い海風にあたりながら、波消しブロックの残骸に腰掛ける。
波消しブロックは無数あり、どれも砕け散った破片が近くに散らばっていた。

ぱしゅっと炭酸の入ったペットボトルを開ける。
一口飲むと、たちまち炭酸のしゅわしゅわした泡が口に広がった。
   

6:  るい。  ◆ESlA:2017/08/07(月) 19:09



「 ……ぷふぁ!あぁ〜、やっぱ炭酸さいっこー! 」

春が口元を拭いながら嬉しそうに声をあげた。
やめてよ、そのおっさんがビール飲んだあとみたいな感想。
言おうと思ったけど、春の嬉しそうな横顔を見ていると、なんだか悪い気がしてしまって、声が出なかった。
春は、炭酸が本当に好きなんだ。ビールが本当に好きなうちのお父さんと一緒で。
だからそういう風には言っちゃいけない。
春は大好きなんだ。そんな炭酸と春の気持ちを、あたしが抑えちゃダメだ。

「 久しぶりにあたしも飲んだけど、頭の中の嫌なこと全部飛んで行っちゃいそう。 」

あたしも声を上げる。炭酸のしゅわっとした爽快な味で、嫌なことは何処かへ行ってしまいそう。

「 でしょ!だから言ったんだよ。美味しいからって。 」

春はそう言いながらも炭酸を口に含む。これは意外と、あたしも炭酸に病みつきになりそう。


春とは家が隣同士だ。そのため昔から一緒に過ごしてきた。
幼稚園も小学校も一緒だった。小学校ではいつもあたしが勉強を教えていた。
中学校もそうだ。
でも高校生になると、どうなるかわからない。
勉強は教えられるけれど、あたしと春が同じ学校に行けるとは思わない。
春がすごく頑張って勉強すればそれも一理あるかもしれない。

でも………。

春がそれをするとは思えなかった。
あたしはずっと前から高校を決めていた。
私立蒼葉学園だ。お父さん一家は代々通っている名門校。
それなりに偏差値は高いし、ハイレベルな学校だ。
春がもしあたしと同じ学校に行きたいと言っても、はっきり言って無理なのだ。
何もかも適当にやってきた春は、受かるとは思わない。勉強すると思わない。

だから春と過ごすのは今年が最後だ。それもあと、5ヶ月。
春にはちゃんとした高校に行って欲しい。だからあたしが勉強をしっかり教えないといけないのだ。

あたしはそんな思いを巡らせながら、参考書の山を見つめた。
   

7: (ゆら*´・ω・)つ:2017/08/07(月) 19:25


好きです…‼

8:  るい。  ◆ESlA:2017/08/07(月) 19:45



>>7   (ゆら*´・ω・)つさん

ありがとうございます‼
これからも見てやってください(*´ ꒳ `*)
   

9:  るい。  ◆ESlA:2017/08/08(火) 19:54



「 環葵〜、ご飯だってさ。 」

あたしが春と海に行って帰って来てから、勉強に浸って1時間半。
階下から上がってくる足音が聞こえると思ったら、ガチャっとドアが開いて、お兄ちゃんが入って来た。

「 にしてもすごい参考書の量だよなぁ。俺だってここまではなかったぞ。 」

2つ歳上のお兄ちゃんは、もちろん私立蒼葉学園だ。
部活もバスケをやっていて、ものすごい長身。

「 だって受けるからにはしっかり勉強して受けたいじゃん……。お兄ちゃんだってそれなりにやってた
でしょ。 」

あたしが顔を上げてそう言うと、お兄ちゃんはちょっと笑った。

「 はいはい。早く行かないとご飯冷めるよ。あ、わかんないとこあったら言ってね。 」

お兄ちゃんはそう言って出て行った。中3女子の部屋にノコノコ入って来て勉強教えてあげるよと言うのは、
俗に言うシスコンというやつなのだろうか………。
まぁそんなことは良いんだ。それより春だ。あいつ、どこ受けるんだろう……。
そう思いながら階段を降りる。美味しそうなごま油の匂いが漂ってきた。


ご飯を食べ終わり、あたしはまた部屋に閉じこもって勉強をした。
参考書の山から一冊取っては戻す、一冊取っては戻すという繰り返し。

ふと気になってカーテンを開けてみた。正面には春の勉強部屋があるはずだ。
暗くなっていると思ったら、カーテンから光が漏れている。
もしかして春、勉強しているのだろうか。
嘘だ、そんなの………。でも………。

春が勉強している。自分から。
こんなの初めてのことだ。あいつも成長したんだなぁ。
昔は勉強なんて大っ嫌いで、スマホばっか弄ってたのに。

ということは、高校も決まってるんだ。
明日聞いてみよう。どこを受けるのか。
   

10:  るい。  ◆ESlA:2017/08/11(金) 15:36



次の日、放課後また春に勉強を教える。
その時、昨日のことを聞いてみた。

「 ねぇ春、昨日の夜勉強してたでしょ。っていうことは、志望校決めたの?決めたなら早く言ってよね、
あたしもそこにあった勉強教えてあげるから。 」

あたしが言うと、春が唖然とした顔になった。

「 え……確かに勉強してたけど……でも……。 」

なにか口をもごもごさせながら言っている。どうしたのだろうか。
あたしの言ったことがまずかったのかな。そんなことはないはずだけど……。

「 どうしたの、春? 」

下を向く春に声をかける。

「 志望校はまだ決めてないんだ。ただ、模試のために勉強してただけだよ。 」

春はそう言ってにこりと笑った。
けれど、いつもの笑い方じゃなかった。炭酸を飲んで嬉しそうにしている春ではない。
なにか隠してる。絶対。
だけどそれは聞いて良いことじゃないんだ。春にとって都合の良くないことだから。

私は春の機嫌を直そうと、

「 そっか。じゃあ模試頑張ろ! 」

と思いっきり笑った。
春もつられて笑顔になる。

「 うん! 」

その日も1時間ほど勉強してあたしたちは帰った。
『ご褒美』は週に一回だ。そうしないと春の歯に細菌がつきまくる。あたしのお小遣いが底をつく。


あたしは昨日と同じように、ご飯の前と後に勉強をした。
参考書の山から参考書を引っ張り出すには毎回雪崩が起こる。

「 ふぁぁ……。 」

あくびをしながら伸びをする。
それにしても春はどうして、志望校のことを隠そうとしたのだろうか。
   

11:  るい。  ◆ESlA:2017/08/17(木) 13:07



春の志望校を知らないまま季節は過ぎ去り、今はもう12月だ。
街ではマフラーを巻いたり手袋をしたりする人が増え、街全体がクリスマスカラーに染まっている。
今年のクリスマスは楽しんでいる場合じゃない。
なんたって、2月が高校受験なのだ。気を抜いたら落ちる。

2個上のお兄ちゃんだって、2年前のクリスマスは切羽詰まった顔をしていた。
いつものお兄ちゃんは、クリスマスになると浮いている。
でも受験のときはそういうことはなかった。あと2ヶ月。

「 あ、おはよ〜、環葵。今日も寒いね……自転車通学なんていいことないよ……。 」

外に出ると、裏から春の声がした。相変わらずの、無邪気な顔。

「 あぁ、おはよう。自転車通学のいいところっていうのは、寝坊しても間に合うってところだよ。 」

冗談めかしてあたしは言った。春は、あぁ〜と頷いている。
いつからかこいつと通学するのが当たり前になっていた。
まぁ、家が近いから当たり前のことかもしれないけど。
あたしたちの住んでいる地区は人数が少ない。だから自然とそうなっていた。

「 にしてもほんと寒いね、今日。マフラーしてくれば良かった……。 」

あたしがそう呟くと、春は隣で得意そうな顔をした。

「 おばあちゃんに言われたんだ、今日寒くなるからマフラーしてきなって。いいでしょ! 」

そういえば今日、春はマフラーをしている。暖かそうな手編みのマフラーだ。
春のおばあちゃんは縫い物が得意で、春はおばあちゃんの作ったマフラーや手袋をしている。

学校に着いて教室に入ると、男子生徒から声をかけられた。

「 おまえら、ほんと仲良いな。付き合ってんの? 」

…………は?

「 何言ってんの和田くん!そんなわけないでしょ、僕たちただの友達だよ!? 」

春が明らかに動揺した声をあげる。
声をかけたやつは野球部で学校一モテると言われている和田慎だ。
頭にきた。あたしはそんな暇人じゃない。

「 あのさ、この時期忙しいのにそんなのに時間費やすわけないでしょ?あたしそんな馬鹿じゃないから。 」

あたしは吐き捨てるように言った。和田慎はそそくさと自分の席に戻っていった。
   

12:  れいん。  ◆ESlA:2017/08/20(日) 18:59



「 ちょ、ちょっと環葵……あんなこと言ったらあとですごいことになるんだよ!!
だって和田くんってお、女の子に人気でしょ?環葵責められて大変になるよ! 」

春があたふたしながら訊いてくる。

「 わかってるって、それくらい。だって頭にきたんだから。春、ああいうのに言われっぱなしに
されてる方があとは壮絶なんだから。言いたいことははっきり言わなきゃ。 」

そう言いながらはぁ、と息をつく。朝から疲れた。もうあんなやつとは関わりたくない。
いや、前から関わってなんていなかったけれど。

「 だけど……もしあとでそんなことになったら、全部僕のせいでしょ?そんなのかわいそうだよ、
環葵はなにも悪くないのに…………。 」

「 だけど、だけどって言ってる場合じゃないでしょ。春は気にしなくていいから。 」

あたしも自分の席についた。春が後ろででも…でも…と言っている。
なんで和田慎はそんなことを言ったのだろうか。どういう意味で?関心でもあったのだろうか。
……こんなことを考えるのはもうやめよう。もう終わりだ。

放課後いつも通り春に勉強させようとしていると、教室のドアがガラッと開いた。
誰だろう。みんなもう帰ったはずなのに。部活も終わっている。

「 勉強中悪いけど、環葵に話したいことあるから借りてくね。 」

和田慎だった。春は呆然としている。
ていうか、なんで名前呼びなんだ。馴れ馴れしい。

「 ちょっと待ってよ、いきなり来たと思えばなんな…… 」

あたしが言い終わらないうちに、和田慎は教室からあたしを引っ張り出して、音楽室に連れて行った。

「 話ってなんなの?あたし忙しいんだけど。 」

ツンとして言うと、和田慎はちょっと赤くなった。なにやってんだろう、こいつ。

「 えっとさ、急で悪いんだけど、俺と付き合ってくれないかな? 」

は?

「 いやさぁ、実は前から気になってたんだよね。勉強もできるし、正義感強いし。でもさ、あいつ。
相庭春が邪魔だったんだよな。でも朝聞いたらあれでしょ、付き合ってないんでしょ?だったら俺と
付き合っちゃえばいいじゃん。 」

和田慎はばばばばっと喋った。時々赤くなりながら。1人で心酔してる。

「 いや、悪いけど断る。だってあたしそんな暇じゃないし。受験もうすぐなんだから、そんな
くだらないことをしてる暇なんてないから。じゃ。 」

あたしはきっぱり断って、教室に戻った。なんなんだ、もう。
どうにかできないのだろうか。きっと、これからも言い寄って来るだろう。

なんで、なんでこんな時期に?春もあたしも、受験間近なのに………。
   

13:  れいん。  ◆ESlA:2017/08/22(火) 18:59



「 ごめん、春。勉強続けよう。 」

あたしは教室に入るやいなやそう言った。
真冬なのに、走ってきたせいか身体が暑い。汗がほとばしる。

「 あ、うん。あ、のさ……どうしたの、環葵?まさか、なんか言われたとかじゃないよね? 」

春の目が心配していることを表していた。
大丈夫なの?春の目がそう言っている。

あたしは春と自分自身を落ち着かせるために口を開いた。

「 ううん、大丈夫だよ。そんなことなかったし、くだらないことだから。 」

そう言いながら微笑むと、春は安心したようにほっと息をついた。

「 なんだぁ、よかった。 」

春が落ち着くのを見て、あたしはちょっとからかう。

「 じゃ、早く勉強続けるよ!模試も浮かんなそうだもん、今のままだと。 」

「 ちょっ、ひどいよ環葵!僕だって勉強頑張ってるんだからね! 」

「 はいはい……。 」


家に帰ってから、真っ先に机に突っ伏した。
今日は勉強する気になんてなれない。和田慎のせいだ、全部。
あいつの変な言動のせいで、よくわからなくなっている。
あたしはおかしくなっている。真偽が見出せない。勉強もできそうにない。
どうすればいいんだろう。思いっきり、誰かに吐き出したい。

ふと気になってカーテンを開けてみた。春はあの時からずっと、勉強している。
あたしも頑張らなきゃ。いつしか、春のおかげであたしは生きられるようになっていた。
大げさかもしれないけれど。
   


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