たんぺんしゅう

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1:虹楼◆..2fGmuL3.F0w:2017/08/30(水) 19:29




短編集です。




2:虹楼◆..2fGmuL3.F0w:2017/08/30(水) 20:26




今はみんなが笑顔。
緊張する必要も、元凶もいないんだ。
それは、あの日の話___



何も変わらない、そんな日があってたまるか。
1日1日が大切な、その貴重な時間。
もし、その時間を無駄にしてしまっては___



「やっほぉ!
私の執事ちゃん、メイドちゃん。」

黒沢莉咲、所謂お嬢様。
つまらない、気の利かないやつは遠慮なく排除する。
黒沢莉咲の家族が賄賂を渡していたり、理事長だったりして、学校側はそのやり方に文句を言えない。

「今日は誰が堕落するのかしら。
ねぇ、松前遥飛。」

僕は、松前遥飛。
この前、お茶を黒沢莉咲のスカートにかけてしまって、怒られたんだ。
排除されないように挽回したから、排除は免れたけど、立場は危うい。

「前も言ったわよね。
このクラスは縦社会よ。
一番上は私、勿論ね。
その次に優秀な執事ちゃん、メイドちゃんが来るわ。
始めのランクは皆、そこだったのよ。
失敗したらランクが下がって、私がいいと思ったらランクが上がるの。
一番下はbの15よ。
上からaの1、2とランクがあって、aの15の次がbの1ね。
aにいる限りはどんなにひどい失敗をしてもaの15になるだけよ、bの場合もbの15に移動するだけ。
でもbの16になると排除するわ、必要ないもの。
松前遥飛はbの15じゃなかったかしら。
さあさあ、挽回してみなさい。
同じランクに入れる人は3人までよ。
4人になったら、その中で古くからそのランクにいる人が下のランクに移動するの。
bの15とかいう、低ランクには誰もいないわ。
そもそもbの階にいる人は、松前遥飛、あなたしかいないわ。
aの1と、15だけは3人以上でもいいって決めてるの。
みんなaの15で止まってるわ、松前遥飛と違ってね。」

僕はもうすぐ、排除されるのか。
もう変わって、こんな日。

「ぼおっとしちゃって、生意気ね。ランクを落とされたいのかしら。
じゃあいいわ、今日から松前遥飛はbの16よ!
さあ、天に舞いなさい。」

僕は、屋上に連行された。
反抗も反論もできない。
大人などにチクることも許されない。
それが決まりで、守ることが暗黙の了解だった。
ああ、そうだ。
せめて___



「この薬を飲みなさい。
意識が途絶えそうになったなら、ここから身を投げなさい。
さもなければ___
えっ!?
誰かっ、助けてぇっ!」

薬を飲んで、僕も___



天に舞ったんだ。




3:虹楼◆..2fGmuL3.F0w:2017/08/30(水) 20:29




あとがき。
結末は予想して下さいね、書くつもりはないので。
何となく、曖昧な結末にしました。
「僕も」っていうところがありましたが、何故「も」なのでしょう。
そういう所も考えてくれると嬉しいです。




4:虹楼◆..WsZ0LOdWfYU:2017/08/31(木) 19:02




たった一つの願い、叶えたくて___



「へぇ、葫冴芦、応援団なの。」

もうすぐ運動会。
私は応援団になった。
あ、私は飫架都樹葫冴芦。
誰も読めないような名前がずっとコンプレックスだった。
飫架都樹葫冴芦は、あかづきこころって読む。
なんで全部一文字なんだよ!
って、思ったことしかないから、書く時は全部平仮名で書くの。
誰もが私の名前を見ては笑う。
それがきっかけで、虐められていたことだってあった。
でも、親友の華浜アリスは違った。
アリスは私の名前を見てもなんとも言わずに、接してくれたんだ。

「そうだよ、アリスは?」

アリスに問いかける。

「私も応援団なの。
応援団長で、少し大変なんだ。」

アリスは俯きながら言った。
アリスと私は、組が違う。
アリスは白組で、私は赤組。

「そうなんだ。
お互いがんばろ!」

勿論!
そう返してくれると思った。
だって私達、親友なんだから!

「ごめん。」

えっ___
一瞬頭が揺れた。
頭がズキズキする。


「葫冴芦、私が考えてた応援歌のネタ、パクったでしょ?」

5:虹楼◆..WsZ0LOdWfYU:2017/08/31(木) 19:24

「は?
パクってないよ。
普通にしてただけだけど。」

パクってなんかない!

「でも、赤組と白組の応援歌のネタが全部被ってるの。
これって___」

「たまたまだよっ!」

考えるより先に言っていた。
言わなければならなかった。

「もういいよ。
じゃ、ね。」

ええっ___



アリスとの関係は戻らないまま、運動会当日を迎えた。
たくさんの練習があって、しんどかったけど、やれることは全部やった。
午前中は白組の勝ち。
でも僅差だった。
赤組はこれくらいでへこたれるほど、弱いものじゃないから!

「では、これから午後の部門を始めます。
まずは、応援合戦です。
今年の応援団対決は、リレーです。」

応援団対決とは毎年変わる種目。
その時まで分からない、ドキドキの種目で、6年の応援団がその種目で競い合う。
勿論、応援し合うけど。
私は6年だから、リレーをしなくてはならなかった。
ハチマキを外して、椅子に置いた___筈だったんだけど。

「では第一走者、準備お願いします。
位置について、よーい、どん!」

走り出す走者。
私は第三走者だ。
どんどん順番がやってくる。
赤は、今2位と4位。
これじゃあ駄目だ!

「葫冴芦!
パスっ!」

あっという間にパスを受け取り、走る。
3位と並んだ。
抜けそうで抜けないっ!

「葫冴芦!
頑張れ!」

応援に乗せられたように足が動き出す。
三位を抜き、二位も抜いた。
あとは、1位だけっ!



そんな時、ある声が聞こえた。

「頑張って、葫冴芦!
いつだって頑張ってたから、だから、負けるな!」

それは___の声?



足が早くに動く。
1位を抜きそうなところでバトンをパスする。
アンカーに繋がったバトンはグングン伸び、見事一位に輝いた。

「やったぁ!
葫冴芦のおかげだよ!」

得点は、少しだけ赤組がリード。
このまま、走り抜けろ!


歓声に包み込まれた。
無事、運動会が終わった。
勝ったのは___



___汗で滲んだハチマキは見当たらず、空が涙で滲むだけだった。




6:虹楼◆..WsZ0LOdWfYU:2017/08/31(木) 19:26




あとがき。
なんとなく運動会ネタ。
勝ち負けは書かないので想像を。
勝っても泣くし、負けても泣くし。
あの声は誰なんだろうね。





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