new 悪ノ娘〜金のヘルエンジェル〜

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1:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:00 ID:HrU

前に作ったスレの改良版です
悪ノ娘〜黄のクロアテュール〜と言う小説をもとに書きますね
はじめの方はそっくりすぎてパクリっぽいですが
結末は全然違うので

下手ですがよろしくお願いします☆
感想・アドバイスもよろしく!

2:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:02 ID:HrU

序章

むかしむかしあるところに とてもわがままなおうじょさまがいました
おうじょさまはおかねをいっぱいつかって あそんでばかりいました
そしてさからうひとたちを つぎつぎところしてしまいました
あまりのひどさに おうじょさまは
「あくのむすめ」とよばれるようになりました

ひとびとは おかねもたべものもなくなり とてもこまってしまいました

そのとき あかいよろいをまとったおんなけんしがあらわれ「あくのむすめ」にたたかいをいどんだのです
はげしいたたかいのすえ ついにおんなけんしは「あくのむすめ」をつかまえました

「あくのむすめ」はひとびとのまえで しょけいされることになりました
ひとびとは みなよろこびました

だけどだれよりもわらっていたのは しょけいだいにいた「あくのむすめ」でした かのじょはさいごにこういいました

「あら おやつのじかんだわ」

きょうかいのかねがさんかいなったとき
「あくのむすめ」はくびをきられました
こうして へいわがもどりました

めでたし めでたし

 ―フリージス童話「あくのむすめ」より―

3:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:09 ID:HrU

第一章 一節 ―十四歳ノ誕生日−
―――――――――――――――――――――――

アレクシル 〜ルシフェニア王宮内「アレクシルの部屋」にて〜

「あっ、もうおやつの時間だ」
三回鳴る鐘の音、それを聞いた時、僕が口にしたのはその言葉だった。
レヴィン大教会の巨大な鐘の音は、遠く離れたこの王宮まで届く。
僕は、ユリンお姉さまの部屋に向かった。
おやつはユリンお姉さまの部屋で、僕とリリアンヌとユリンお姉さまの3人で食べる。
部屋に着いたら、ユリンお姉さまとリリアンヌが待っているだろう。
リリアンヌはおやつが大好きで、鐘がなる前にユリンお姉さまの部屋に行くんだから。
部屋に行く途中、「天国庭園(ヘブンリーヤード)」が見える。
そういえば、今日はユリンお姉さまの14歳の誕生日で、舞踏会が開かれるんだっけ。使用人たちが天国庭園を掃除しているし。
でも、この庭園の広さは尋常じゃないし、使用人たちは6人で作業しているから、間に合わなさそうだな。
手伝ってあげたいけど、僕が「手伝います」なんて言ったら、「アレクシル王子に手伝っていただくなんて、とんでもありません!」って追い返されるだけだ。
そんなことを考えている間に、ユリンお姉さまの部屋に着いた。
ドアを開けると、リリアンヌ1人だけだった。

4:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:11 ID:HrU

アレクシル 〜ルシフェニア王宮内「ユリティランの部屋」にて〜

「リリアンヌ、ユリンお姉さまは?」
僕はリリアンヌに聞いた。
なぜなら、おやつの時間にユリンお姉さまが部屋にいらっしゃらないなんて1度もなかったからだ。
「知らない。私が来た時には誰もいなかったよ」
僕はだんだん青ざめていった。
「大丈夫?アレクシル」
その時、使用人のネイが、おやつを持って入ってきた。
「失礼いたします。本日のおやつは…」
ネイが言いかけたとき、僕は大あわてで言った。
「たいへんだよ。ユリンお姉さまがいない!!」
「なんですって!?」
ネイは驚きのあまり、持っていたおやつを落としそうになった。

5:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:18 ID:HrU

シャルテット 〜ルシフェニア王宮内「天国庭園(ヘブンリーヤード)」にて〜

「もうおやつの時間ッスか?」
レヴィン大教会の鐘の音を聞いて、私がつい口にしてしまったのはそんな言葉だったッス。
昼過ぎからこの庭園の掃除を始めたのに、いまだに終わる気配はしないッス。
何しろ広さは尋常(じんじょう)じゃ無いッスからね。6人の使用人で行うこと自体おかしいッス。
でも、だいたいの使用人たちは舞踏会の準備をしてるッスから、これ以上の人数を割り当ててもらえそうにもないッスね。
私は、ほかの使用人に話しかけた。
「あ〜!疲れたッス!疲労困憊(ひろうこんぱい)ッス!ねえ、もう後は適当にそこらへんを掃き掃除して終わりじゃだめッスか?」
「そういうわけにもいかないだろ。まだ大噴水の周りなんか手つかずだし。 今日は他国の王族も来るからピカピカにしとけってマリアム様にも言われただろ?」
「そんなもん、多少汚れていてもばれないッスよ。舞踏会は夜にやるんだし」
「…でもね、今日はユリティラン様のお誕生日をお祝いしてもことだぞ。マリアム様は、いつもよりピリピリしていたし、もしばれたら大変だぞ」
私は無言で掃除を再開した。それにつけても、そもそも私は女王付きの使用人で、庭園の掃除はほかの使用人に任せればいいッス。
しかし、なぜ私が参加しているかというと、原因は私にあるッス。
私が食事の準備や、着替えの手伝いなどをしようものなら、馬鹿力で食器は破壊するわ、衣装はビリビリに引きさくわで散々ッス。
よくクビにならないものだと私でも思うけど、力仕事に関していえば男以上に得意だし、何より私がどんなものをこわしても女王ユリティランが許してくれるッス。
実際、女王付きの使用人と言うのは“どんな王宮のの仕事よりも楽”、といっても過言ではないッス。
もし女王の宝石などをこわしてしまっても、悲しげなそぶりを少しも見せずに微笑んで許していただけるッス。
私も先月にはダイヤモンドのついた指輪をこわしてしまったが、ユリティラン様におこられもせずに許していただいたッス。

6:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:20 ID:HrU

「よ〜う、頑張ってるかい?ガキんちょども」
庭園に突如(とつじょ)ひびいた大きな声。
元をたどると、正門から赤い鎧(よろい)に身を包んだ精悍(せいかん)な男が、笑みを浮かべて私のもとへ向かってきていたッス。
「女王付きっていうのも大変そうだな、シャルテット」
「親衛隊長の職務ほどではないッスよ。レオンさん」
「ははは、まあな」
レオンハルトが頭をかく。
その気の向けた様子を見ていると、彼がかつて『三英雄』と呼ばれた勇者の一人だとは信じられなくなるッス。
「お前がここに仕え始めて、もう一年ちょっとか。どうだい?元気でやっているか?」
「まあ、ぼちぼちッスよ。レオンさんも…ジェルメイヌも元気ッスか?」
「ジェルメイヌか…あいつは元気すぎて困ってるくらいだよ。昨日も街のゴロツキと乱闘(らんとう)さわぎを起こしてな…」
「でも、ジェルメイヌが勝ったんッスよね?」
「勝ったどころか、かすり傷一つ負っちゃいなかったよ…。あいつももう少し女らしくというか…あれじゃ嫁の貰い手もねえぞ

7:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:28 ID:HrU

「で、今日は何しに来たんスか?」
「何って…、舞踏会の警備に決まってるだろ。親衛隊長(しんえいたいちょう)としての職務をまっとうしに来たというわけだ」
「なんだ〜、また貯蔵庫の酒をあさりにでも来たかと思ったッス」
「そんなことやったことねえよ!第一、ここ最近は酒をことわっている」
「ほえ?あの酒好きのレオンさんが禁酒ッスか?何でまた?」
レオンハルトが酒を断っているという事実に私はおどろいたッス。
彼の養女であり私の幼なじみのジェルメイヌの家でのお泊り会を思い出すッス。
知っている限り、レオンハルトとジェルメイヌが酒を飲まなかった日など一日としてなかったからッス。
「…おりからの不作による食糧不足がいよいよ深刻でな。民(たみ)はみんな飢え(うえ)に苦しんでいる。王族の親衛隊長があまりぜいたくをするわけにもいくまい」
「…その言葉、みんなに聞かせてやりたいッス」
私の声は先ほどまでとはちがい、暗くしずんでいたッス。
「最近、ユリティラン様のごきげんが悪いのは、その所為ッスか?」
私がたずねるとレオンハルトは肩をすくめた。
「まあな。食糧不足とはいっても王宮にはまだたくわえが結構ある。それを民に分けてやれればいいんだが…ミニス殿たちも、なかなか首を縦に振ってくれなくてな」
レオンハルトと宰相ミニスの話し合いは今日に始まったことではないッス。ずぼらでいい加減で酒好きだが、自分の職務と民への思いに関してはマジメなレオンハルトが、何かにつけて大臣たちと会議を開く光景は、王宮ではよく見られるッス。
「ユリティラン様も今日でもうじゅうろ―十四歳になられるのだから、大臣たちをどうにかしてくれないと」
レオンハルトが言いたいことは何となく理解できる。女王の目は民衆へ向けられているのだが、近臣たち、特に親の七光だけで出世した宰相(さいしょう)ミニスの無能(むのう)さゆえなかなか女王の声が民衆に届かないみたいッス。

8:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:34 ID:HrU

「さて…ところでだ」
いすまいを正すと、レオンハルトが話題を変えてきた。
「ここに来る前に馬小屋によったんだが…今ユリティラン様はお出かけ中なのか?」
「そんなはずは…ないと思うッスけど。まさか誕生パーティーが行われる日に王宮を出ることなど…」
嫌な予感がしたッス。
レオンハルトがいぶかしげな顔で言う。
「そうか…だがな、馬小屋にいなかったぞ。ジョセフィーヌ」
ジョセフィーヌというのはユリティラン専用の馬の名前ッス。
「まさか、ぬすまれたッスか?」
私の問いにレオンハルトが答える。
「ありえないな。今日は警備も一段ときびしくなっている。そう簡単に王宮への侵入(しんにゅう)など…」
「侵入者への警戒(けいかい)を強くしている分…脱走者(だっそうしゃ)に十分な注意をはらえていない、なんてことはないッスか?」
レオンハルトの顔色が変わる。
「おいおい、まさか…」
その時、王宮から叫び声が聞こえた。あれは…ネイの声ッス!
ネイも私と同じように、女王付きの使用人の一人ッス。
仕事なら私よりよっぽどそつなくこなすし、ユリティランの物をこわすこともないッス。
さすがは侍女長の愛娘(まなむすめ)、といったところだろうか。
でも、なんだかいつもと様子がちがうッス。
「ユリティラン様〜!どこに行かれたのですか!ユリティラン様〜!」
私とレオンハルトは顔を見合わせると、声の聞こえる方へ急ぐ。
王宮に入り、鏡の間に出たところで声の主を見つけたッス。
ユリティランの二つ下の双子の、リリアンヌ様とアレクシル様もいっしょッス。
私はあわてて話しかける。
「ネイ!ユリティラン様がどうかしたッスか!?」
ネイが半分泣きそうな顔で答える。
「シャルテット…どうしよう…。ユリティラン様、いなくなっちゃった」

9:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:47 ID:HrU

アレクシル 〜ルシフェニア王国「迷いの森」にて〜

ここルシフェニア王国、通称「黄ノ国」の北には、森が広がっている。
「迷いの森」とも呼ばれる、木々のおいしげったこの森に道らしい道はなく、地元の木こりでもないかぎり、不用意に入ることは自殺行為だ。
「迷いの森」は隣国エルフェゴートの「千年樹の森」に続いており、そこを抜ければエルフェゴートの首都アケイドまで遠くない。
しかし、実際にルシフェニアからエルフェゴートに向かう場合、ほとんどが、大きく東に迂回(うかい)して街道を通る。
わざわざ「迷いの森」を抜けるような者は、よほど急いでいるか、ただのもの知らずかのどちらかだ。
元々はエヴィリオス地方にある小国の一つにすぎなかったルシフェニアを、軍拡政策(ぐんかくせいさく)によって一代にして現在のような大国に成長させたのが初代国王、アルスだ。
彼が軍事的に脆弱(ぜいじゃく)なエルフェゴートを攻めなかったのも、この森がじゃまで大規模な軍事侵攻(ぐんじしんこう)ができなかったため、らしい。
そんな森の中を、もう日が暮れようというこの時間に、王族の親衛隊、および使用人たち、さらに王族の僕たちまでもの集団が女王さがしのために徘徊(はいかい)している。
なぜ女王がこの森に入ったことがわかったのかというと、何のことはない、馬小屋から続くジョセフィーヌのひづめのあとが、この森に続いていたからだ。
もっとも、地面に残るたくさんの足あとの中からジョセフィーヌの足あとだけを見分け、追跡(ついせき)するなんて芸当ができるのはレオンハルトぐらいのものだが。
親衛隊の隊員はとにかく必死だ。無理もない。女王の身を守るはずの彼らがユリンお姉さまのゆくえを失うばかりか、彼女が向かったのが「迷いの森」だというのだから。
もしユリンお姉さまの身に何かあれば、どうなることか知れたことではない。
暗がりの中、副隊長が新入りらしき兵に怒号(どごう)をあびせている。
「なぜ、ユリティラン様が外に出るのを止めなかったのだ!」
「しかし…あのユリティラン様のことですよ?そんな失踪(しっそう)するなんて思わないじゃないですか」
「確かにそうだが、もしものことを考えなかったのか!バカモノ!」
今にも泣き出しそう、というかすでに半泣きの新入りをこれ以上責めてもしかたないだろうに。

10:Lisbeth:2014/02/08(土) 22:53 ID:HrU

多少同情したが、こちらもそれどころではない。
もっともかわいそうなのはネイの方である。
衣服にどろがはねてよごれるのも気にとめず走り回っている。
彼女がユリンお姉さまの部屋をおとずれた時、部屋のあるじの姿はそこにはなく、最初は王宮内の散歩にでも行ってらっしゃるのかしら?ぐらいにしか思っていなかったらしい。
しかし、何度部屋におとずれても姿はなく、王宮のどの部屋にも姿が見えなかった時には顔面蒼白(そうはく)になったそうだ。
シャルテットは捜索(そうさく)に参加していない。彼女が森へ入ることを断固(だんこ)、こばんだからだ。
どうやらシャルテットは使用人になる前の幼いころ、この森で迷子になった挙句(あげく)、当時ここを根城(ねじろ)にしていた盗賊団に拉致(らち)されたことがあったらしい。
その時は、何とか救い出されたそうだけど、彼女はそれがトラウマになっているらしい。
「あまりはなれないでください。迷いますぞ」
となりを歩いていたレオンハルトが僕とリリアンヌに声をかける。
「大丈夫よ。この森には前にも来たことがあるし」
「…そうでしたな」
レオンハルトの言葉にリリアンヌが答えた。
そう、僕とリリアンヌはこの森に来たことがあった。
幼い頃、王宮を抜けだして、この先の海岸でユリンと出会って…
「レオンハルト殿。少しはなれます」
「それなら護衛(ごえい)をつかせましょう」
「いえ…」
僕は軽く首をふった。
「…何か、心当たりがあるのですな」
僕は言葉につまり、ほんの少し下を向いた。
だがレオンハルトは何も聞かず、
「もう一度言いますが、迷わないでくださいよ」
と言った。
その言葉を背に、僕とリリアンヌは走り出した。
もしかしたら、ユリンはまたあそこで…。
だとしたら急がないと!

11:Lisbeth:2014/02/08(土) 23:00 ID:HrU

アレクシル 〜ルシフェニア王国「名もなき海岸」にて〜

森を抜けた先にある海岸。
少し西に行けば小さな港町があり、そこにはエルフェゴートの大商人・キール=フリージスの寄付によって建てられた修道院もある。
だが今回の目的はそこではない。
港へ向かって歩いていると、小柄な馬と女性の人影が見えた。
彼女は砂浜から一歩、また一歩と歩いていき、足に波が押し寄せて来て宝石のちりばめられたハイヒールがぬれても、気にしなかった。
そうしているうちに腰まで海にしずんでいったが、彼女はぼうっと歩き続ける。
きれいなドレスが台無しだ、などと考える余裕はない。
リリアンヌは思わず彼女に向かってさけんだ。
「ユリンお姉さまっ」
すると、彼女――ユリンお姉さまは一瞬ビクリと身体をふるわせ、そしてこちらをゆっくりと向いて言った。
「リリアンヌ様、アレクシル様…」
ユリティラン=ルシフェン=ドートゥリシュ。今日で十四歳の誕生日をむかえる彼女が、ルシフェニア王国の現統治者(とうちしゃ)だ。
「また、あなたたちに見つかってしまったようですね」
僕とリリアンヌはユリンお姉さまのところへかけ寄った。とはいっても、身体が海水にぬれない所までだが。
「レオンハルト殿が心配しておられましたよ」
ユリンお姉さまはぐっしょりとぬれたドレスを少し持ち上げて、砂浜に引き返してきた。

12:Lisbeth:2014/02/08(土) 23:04 ID:HrU

「ああユリンお姉さま、どうしてこんなことを…」
リリアンヌがユリンお姉さまの前であわてふためいている。
するとユリンお姉さまは急に声をあらげて
「お姉さまだなんて呼ばないで!」
と言って、あわてて口に手を当てて僕たちの前にひざまずいた。
「無礼なふるまい、失礼いたしました、リリアンヌ様、アレクシル様。ですがわたくしは、あなた方の『お姉さま』ではないのです」
「ユリンお姉さま、それは言ってはいけないことです」
「おやめくださいアレクシル様!わたくしが何をしようとしていたかおわかりでしょう?わたくしはもう、いやなのです。わたくしはお二人よりもはるかに身分が低い。それなのにこんなドレスを着て、宝石をつけ、国を統治するなんていけないのです!しかも今日は舞踏会まで開かれるのですよ?誕生日でもないのに誕生パーティーの舞踏会を開かれ、わたくしよりはるかに身分の高い各国の王族にひざまずかれるなんていやなのです!第一わたくしはじゅうろ…」
「ユリン!」
僕は叫んだ。
するとユリンお姉さま――ユリンはビクリとして言葉を止めた。
下を向いているが、確かにユリンは歯をかみしめて、泣いていた。
「帰ろう」
リリアンヌがユリンに手を差し出した。
ユリンはだまってそれにつかまり、静かに立ち上がった。
ぬれていたドレスは、ひざまずいたせいで砂だらけになっていた。

13:Lisbeth:2014/02/08(土) 23:08 ID:HrU

「もう日が暮れます。帰りは森を通らず、港町の方を通って行きましょう。森を通るよりも早いですし」
僕が言うと、ユリンは少しおびえた様子を見せた。
「港町では、人に見つかってしまうのでは?」
「大丈夫です。こんな時間だと、人はもう家の中に入っているでしょう」
「そう。それならよかった」
ユリンは真っ赤になった目を細めて微笑んだ。
「リリアンヌ、アレクシル、ジョセフィーヌにはあなたたちが乗って」
「えっ」
「私は乗馬があまりうまくないの。だから」
「それならっ」
リリアンヌがジョセフィーヌにとび乗った。
「僕はユリンお姉さまといっしょに歩きます」
この分なら、舞踏会には何とか間に合いそうだ。
僕とユリンお姉さまは、リリアンヌの乗った馬を引いた。

ユリティラン=ルシフェン=ドートゥリシュ。
今夜の舞踏会の主役。
ルシフェニアの支配者。



















そして

僕とリリアンヌとは血のつながりが全くない、
エルフェゴートでずっと迫害されてきた、金髪の一般人だ。

14:Lisbeth:2014/02/09(日) 00:06 ID:HrU

シャルテット 〜ルシフェニア王宮内「鏡の間」にて〜

ルシフェニア女王・ユリティラン=ルシフェン=ドートゥリシュの十四回目の誕生日を祝うべく行われた舞踏会は、とどこおりなく進行していたッス。
鏡の間にかざられた絢爛豪華(けんらんごうか)な調度品の数々、そして招かれた客人たちのそうそうたる顔ぶれは、エヴィリオス地方におけるルシフェニア王国の権力の強さを表していたッス。
「緑ノ国」エルフェゴート国王、ソーニ=エルフィン。
同じくエルフェゴート商業連合総帥(しょうぎょうれんごうそうすい)、大商人キール=フリージス。
そして「青ノ国」マーロン国の若き王、カイル=マーロン。
他にも各国の国王、有力者がルシフェニアの幼き支配者の誕生日を祝うべく、この宮殿(きゅうでん)にやってきていた。
彼らは一様(いちよう)にユリティラン様の前にひざまずき、祝辞(しゅくじ)の言葉を並びたてるッス。
私はというと、ユリティラン様さがしに昼から庭園掃除をしていた使用人のうち私以外の5人が行き、ひとりでやっていたがなかなか進まず、戻ってきた5人は疲れ切っていているという散々な状態になってしまったッス。
女王捜索に人手をさいたせいで舞踏会の準備は予定よりだいぶ遅れてしまっていて、使用人たちは全員全力で働かないといけなかったッス。
舞踏会が始まっても、休めるわけではないッス。
なにしろ各国のすごい人たちがたくさんいるッス。決して粗相(そそう)のないよう、進めないといけないッス。
すみのほうで、どこかの貴族らしい男たちが話しているッス。
「女性の強い時代になったものだ」
「まだ十四歳の娘が、この強大なルシフェニア王国の統治者とはな」
「そもそも、この国の領地拡大に貢献(こうけん)した『三英雄』も、三人中二人が女性だというじゃないか」
「マーロン国も、表向きは若きカイル王が治めているが、実際に権限を持っているのは母君のプリム皇太后だというぞ」
「豪商(ごうしょう)mpキール殿も、夫人には頭が上がらないというしな」
貴族たちは私などには目もくれないッス。
彼らにとって私たち使用人など、家畜や道ばたに転がる石と大差のないものッス。
会場がさわがしくなってきたッス。
そろそろ舞踏会が始まるようッス。

15:Lisbeth:2014/02/09(日) 00:41 ID:HrU

「みなさま!本日はようこそおこしくださいました!このあとは食事とお酒を用意しておりますゆえ、ゆっくりお召し上がりいただき、ご歓談(かんだん)くださいませ」
宰相のミニスがあいさつをするッス。
その後ろでは、ユリティラン様が玉座で微笑んでいた。
さっきまで城を抜け出して、海岸でびしょ濡れ(なぜかは私たち使用人にはわからないッス)になっていたとは思えないッス。
私はほかの使用人たちとともに、鏡の間に食事を運ぶ。はずだったのだが、侍女長にその役から降ろされてしまったッス。
確かに、私が食事を運んだらどうなるか解んないッスからね。
ふと、入り口で警備をしていたレオンさんがたいくつそうにあくびをしているのが目に入ったッス。
私は仕事をしながら、庭園掃除の時に聞いた彼の言葉を思い出していたッス。
もし、これだけの食事を町へと持っていければ、どれだけの民衆を救えることだろう。
ため息をついたレオンさんは、だんだん腹が立ってきたのか、怒った様子で鏡の間から出て行ったッス。
私はあわててレオンさんを追いかけたッス。
「レオンさん!警備はどうするんスか!」
「外を回ってくる!!女王も民衆のことを考え、近臣たちの好き放題させるのを止めてほしいものだ」
レオンさんは最後にそう吐き捨てて、その場を立ち去ったッス。
私は何も言うことができず、ただ立ちつくしてしまったッス。
「レオンハルトの言うことが、もっともなんだけどね…」
いつの間にか侍女長がとなりに立ち、私に話しかけてきたッス。
近くで聞いていたようッス。
侍女長マリアム。彼女もまたレオンさんと同じく『三英雄』と呼ばれた一人ッス。それほどの勇士が、なぜ今は使用人などしているのか。そんなこと、答えてくれないだろう。
「私には、よくわからないッス」
「そうね。使用人が政治にあまり関わりすぎるのはよくないわ。でも…ユリティラン様は許しすぎるのよ」
「お母さま!シャルテット!」
侍女長と話していると、ネイがこちらに歩いてきたッス。
「そろそろ舞踏会が終わるようです。片付けの準備をしなければいけません」
「そう。まずは使用人たちを連れて庭園に行きなさい。客人のお見送りの準備をするの」
侍女長の指示で私とネイは庭園に向かったッス。
レオンさんのことは私が考えてもしかたないッスね。

16:Lisbeth:2014/02/09(日) 01:17 ID:HrU

アレクシル 〜ルシフェニア王宮内「鏡の間」にて〜

舞踏会では、僕とリリアンヌはユリンお姉さまから少しはなれた位置にある椅子に座っていた。
「みなさま!本日はようこそおこしくださいました!このあとは食事とお酒を用意しておりますゆえ、ゆっくりお召し上がりいただき、ご歓談(かんだん)くださいませ」
宰相のミニスがユリンお姉さまの前であいさつをする。
ユリンお姉さまは玉座で微笑んでいた。
さっきまで城を抜け出して、海岸で自殺しようとしていたとは思えない。
それを表情に出ないよう必死なのだ。
女王なんてものはそう簡単にできるものではない。
我慢強さが必要とされ、“女王のふり”となればい演技力もいるだろう。
彼女はどちらも持っていた。
エルフェゴートでの日々、それがこの力を付けた。
僕はエルフェゴートのことをくわしく知らないから本当なのかわからないが、エルフェゴートの異民族への迫害はすごいらしい。
金色の髪を持つ人間がそこに行けばどうなるのか、想像したくない。
ユリンお姉さまが侍女長を呼んで話している。
そして立ち上がると、歩き始めた。
「どこへ行くのですか?」
ユリンお姉さまが僕のそばに来た時、僕は話しかけた。
「部屋に戻るの。もうあいさつも終わったようだし、この舞踏会は私が主役ではいけないわ。これだけは、許して」
僕は何も言えなかった。
来客たちはおろか、リリアンヌまでがユリンお姉さまの様子に気が付いていない。
これならきっと、退出できるだろう。
ずっと我慢してきたのだから、これだけはかなえてあげたい。
「わかりました。きっと大丈夫でしょう。僕もできる限りのことはします」
僕は微笑んだ。
「ありがとう」
彼女も微笑んだ。

17:Lisbeth:2014/02/09(日) 22:27 ID:VvQ

ジェルメイヌ 〜ルシフェニア王国「アヴァトニア邸」にて〜

「さ〜け〜が〜の〜み〜た〜い〜!」
後で聞いた話だが、この時の私のさけびはこの家から1q以上はなれた仕立屋のベッキンソンの家まで届いていたらしい。
禁酒を始めてから何日目になるだろうか。
食糧問題が解決するまでは酒を飲まない、という父さんに付き合った結果なのだが、時折無性に飲みたくて飲みたくてしかたない時がある。
おとぎ話に出てくる吸血娘ヴァニカ=コンチータは、3日に一度生き血で作ったワインを飲まないとくちてしまう身体の持ち主だったらしいが、もしかしたら私はそのヴァニカ嬢の生まれ変わりなのかもしれない。
何より、家に一人でいるのがいけない。
父さんは王宮で行われている舞踏会の警備で、今日は帰りがおそくなるはずだ。
王宮では、私なんかが目にしたこともないような、高級なワインなんかも貴族たちにふるまわれているのだろう。
そんなことを考えているうちに、私はなんだか無性に腹が立ってきた。

そもそも私が酒を飲めないのはなぜだ?食糧が不足しているからだ。
ではなぜ食糧が不足しているのか?ただでさえ少ない今年の収穫のほとんどを、王宮、いや、あのいまわしき『悪ノ娘』ユリティランが民衆からうばって、食糧庫にたくわえているからだ!

民衆のことなど何も考えちゃいない。
自分たちさえよければそれでいい。
そんな貴族たちの元締めがユリティランだ。
民衆はあいつのことを『女王』とは呼ばない。
あれはただの『小娘』だ。いや、それよりもっと性質の悪い『悪ノ娘』だ!
…とはいえ、私はユリティランの姿をよく覚えていない。
ユリティランは王位継承後しばらくは時々民衆の前に現れたのだが、最近は一切姿を見せない。
今ではもう、民衆たちのほとんどが彼女の容姿を覚えていないだろう。
きっと最近は、王宮にこもって遊びふけっているのだろう。
彼女にとって民衆は搾取(さくしゅ)対象でしかないのだ。
まあきっと、とんでもないブサイクなのだろう。人は性格が顔に出るというし。
こんなうっぷんを、ほかの人には言えないのもつらい。
私の父は王族直属の親衛隊長だ。王族の悪口など、言える立場じゃない。
「王宮か…」
シャルテットは元気でやっているだろうか。
あの馬鹿力で使用人になると言い出した時は、実はすごくびっくりしたものだ。

18:Lisbeth:2014/02/09(日) 22:31 ID:VvQ

「お〜う!帰ったぞ〜!ジェルメイヌ!」
そんなことを考えていると、父さんが帰ってきた。
「お帰りなさい。ご飯は?」
「ああ、食ってきた…って、なんだ、おい?」
私は父さんに鼻を近づけて、においを確かめる。
うん、大丈夫だ、酒のにおいはしない。
「飲んでは来ていないみたいね」
「当たり前だ、約束だからな」
さすがは血のつながらない私を育て上げてくれた尊敬すべき父・レオンハルト=アヴァドニア。
約束はしっかり守る。

19:杏音 モエ:2014/02/17(月) 17:27 ID:A1.

悪の娘 の話と似てるかな・・・と思ってみてみたら、
ありゃ! 話が違う!
私的には大満足です。
悲しくないし☆
楽しみですね。


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