薄桜鬼 オリジナル小説

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1:なちりん:2015/06/29(月) 21:37 ID:Mck

最近アニメを見終わったばかりで、いい小説を書けるか不安ですが、読んで頂けると嬉しいです。
原作に沿って、現パロ小説を書こうと思っています。
コメント宜しくお願いします。

2:なちりん:2015/07/18(土) 14:52 ID:YyI

今から投稿する小説はpixivなどで投稿しています。
できればそちらの方にも足を運んでもらえると嬉しいです。

3:匿名さん:2015/07/18(土) 14:54 ID:YyI

love chronicle

ねぇ、貴方は、恋の仕方を知っていますか?
―今まで、出会いは『いつか来る別れの始まり』だって、いつの間にか決めつけてた。
でも、不思議だった。貴方に出会ってから、出会いっていうのは、大切な物なんだって。貴方は教えてくれたね。

貴方を愛した証を此処に残します。



第一章 出会い
季節は、秋から冬に変わる頃。私は運命の出会いをした。相手は、私より背が高くて、ニカっと笑ってくれて、優しいお兄ちゃんって感じの人。その頃の私は、運命何て信じない。友達が居ればいいっていう感じで、過ごしていたのだ。

その運命の相手に出会う、二時間前の事。
学校帰りに私は友達と、買い物に出かけていた。友達の名前は、雪村千鶴と永瀬千姫ことお千ちゃん。
「見て見て、これ。平ちゃんに似合いそう」
それは、下地が水色で、両肩に白いレースのリボンがあり、腰の所にベルトが付けられるようになっている。裾のちょっと上の方に、リボンが、両側と真ん中についているワンピースだった。千鶴は、私にそれを合わせてきた。
「どう?お千ちゃん」
「良いんじゃない?腰にベルトがついてるから、平助が細いって言うのが強調出来るし。あっ、ちょっと待ってて」
お千ちゃんはそんな事を言って、近くに合った茶色いブーツを持って来た。
「これと合わせたら、最高じゃない?」
「うん、似合うー。平ちゃん、これ私達が買ってあげるから、ここで来て帰ってね?」
そう言って二人は、私に有無を言わせないまま、ダッシュで会計をしに行った。
―毎回、服を買いに来るとこう成ってるから、呆れるどころか、口出しをするのもままならない。
そんな事を考えている内に、息を切らした二人が戻って来ていた。
「はい、・・・平ちゃん」
千鶴が、ユニクロと書かれている、袋を渡して来る。
私は、仕方なく受け取ると、
「着替えて来るから、待っててね」
と二人に言って、試着室に向かった。

4:なちりん:2015/07/18(土) 14:54 ID:YyI

溜息を着きながら試着室に入ると、制服の上に羽織っている茶色のコートを脱ぎ、置いてある籠に畳んで入れた。それから、制服・スカート・ブラウスを脱ぎ、畳んで籠に置くと、ユニクロの袋から、水色のワンピースを出す。
裾から、腕を通し、頭を出すと、膝下の裾を引っ張り、皺を伸ばした。
着替え終わると、袋の中に入っているブーツを取り出すとその中に、制服とかを入れ込んで、試着室のカーテンを開けた。
そして、そこにブーツを置くと、足を通した。
「うわぁ、可愛い」
「本当、いつもより断然可愛いよ、平助」
「あっ、・・・ありがとう」
女子なんだから、可愛いと言われて嬉しくない筈がない。でも、いつも自分が悲観的過ぎるからか、いつも男っぽい服装しか、していなかった。いざ、こういう格好をしてみると、気分が本当に女の子って感じで、恥ずかしくなる。
「良し、じゃぁ行こっか」
「えっ、どこに?」
「合コン」
あっ、合コンか・・・。ほっとしたのも束の間、
「合コンーーーーーーー?」
そう叫んでしまった。
お千ちゃんが、口を塞いでくれたから良かったものの、もうちょっとで大恥をかくところだった。

5:なちりん:2015/07/18(土) 14:55 ID:YyI

合コンの席だから、当然なんだけど・・・。男子が三人と女子が三人。向かい合って座っている。
「こんにちわ、永瀬千姫です。高校二年の十七歳です」
「俺は、原田左之助。K大の一年で十九才だ」
「私は、雪村千鶴です。お千ちゃんと同じ高校の二年生です」
「俺は、土方歳三だ。中学校の先生をしていて、年は二十二才だ」
今は、自己紹介タイム。ついに、私の番まで回ってきたんだけど、何故か恥ずかしくなって言葉が出て来ない。実はこういうのは初めてなのだ。
皆が、心配してか、私を見てくる。
「えっと、この子は藤堂平助。私達と同じ高校二年生」
お千ちゃんが、私の代わりに名前を言ってくれて、最後の人の番になった。
「俺は、永倉新八。K大の1年で18才。宜しくな」
そう言ってニカッと笑った笑顔は、まだヤンチャで、とても歳上とは思えない程、優しそうだった。
―自己紹介タイムが終わった後、ここでいるのもなんだから、って今はカラオケに来ている。
で、後から思い出したんだけど・・・。

6:なちりん:2015/07/18(土) 14:56 ID:YyI

「えっ?原田さんが、あの左之兄だったの?」
「おう。久し振りだな、平助」
左之兄っていうのは、私が小さい頃、一緒に遊んでくれた、お兄ちゃん替わりの人。
小さい頃は、よくあって遊んでくれてたけど、左之兄が中学生になってからは、今日まであっていなかった。
「えっ、じゃぁ・・・」
永倉さんは、左之兄の友達の新八さん?って聞くと、隣にいた永倉さんが頷く。
「にしても、大きくなったなぁ。オチビちゃん」
頭をとんとんって叩きながら、新八さんが私に向かってそう言ってくる。
「五年も経ってるんだよ?もう、オチビちゃんじゃないもん」
と膨れながら、新八さんを見つめる。すると何が可笑しかったのか分からないけど、カッカッカッと、見て笑い出す。
「新八、本当の事言ってやれよ」
本当の事?
私は、突然真面目に言った左之兄の言葉に、頭の中がはてなマークで埋まる。
「わーってるって。・・・可愛くなったな。平助」
突然、笑いだしたのを止めた新八さんが、急に真面目な顔になり、私に向かってそう言ってくれた。そう言われたとたん、私は頬を真っ赤にそめて、ありがとうと言った。
「怪しまれちゃ行けねぇから、戻るぞ平助」
左之兄が左で、新八さんが右にいて、私はその真ん中にいた。突然二人からそう言われて、私たちはカラオケルームに戻った。

7:なちりん:2015/07/18(土) 14:57 ID:YyI

「あっ、平助。お帰り。今、歳三さんが歌ってるんだけど・・・」
私達が部屋に帰ってきたのを気づいた千鶴が、私にそう言いながら、土方さんが歌っているのを、愛おしそうに聞いている。
「へぇー、土方さん歌上手いんだねぇ」
あのお千ちゃんまで、聞き惚れるほどの歌声だった。

新八Side
そいやー、今日は合コンの日だったよなー。
そんなことを考えながら、授業の話も耳に入らず空を見上げる。俺の席は、一番の奥の窓際で、丁度窓が空いていた。
もう冬に入るってのに、今日はそんなに寒くはなかった。
「おい、新八。授業終わったぞ」
隣の席に座っていた左之に、授業が終わった事を聞き、俺は鞄の中に教科書を放り込み、チャックを締めると、ナップサックを背負うかのように、手提げ用の鞄の持つところに両腕を通した。
「良し。じゃぁ行くか」
左之の言葉に頷くと、土方さんと合流する為、H中学校に向かった。

土方さんは、俺らより四つ歳上の二十二歳。漆黒の髪で、ショートカット。
今は、5時半。丁度、土方さんと約束していた時刻だ。
「おう、お前ら。悪ーな、遅くなっちまって」
「いいんですよ。土方さんだって一応先生なんですから」
相変わらず一言多い左之は、土方さんに睨まれて居るが、本人は余り気にしていないらしい。まぁ、この中で一番モテていて、かっこいいのは左之だからなぁ。と心のどこかでそう思っている自分に呆れたりする。
「良し、じゃー行くかっ」
左之の一言で俺達は、待ち合わせ場所である、友達の斉藤が働いていると言う店に行った。

8:なちりん:2015/07/18(土) 14:58 ID:YyI

「よぉっ、斉藤」
バーテンダーをしている、俺の幼馴染みであり同士である斎藤一は、紫の髪で、片目が隠れていて、男の俺から見ても格好いい。
「あぁ、新八か。どうしたんだ、今日は」
「いや、それがよぉ、人数合わせってことで、合コンに誘われてよう」
などと話していると、多分合コン相手だろう高校生の三人組が入って来た。その中の一人に、俺は目を見開いて、驚いてしまった。
それはそうだろう。小学生の頃、よく左之と一緒に遊んでやった平助が、女の子っぽい格好していたのだから。
「おいっ、新八。さっさと来いよ」
思わず平助に見惚れていた俺は、左之に呼ばれて、はっとすると、左之の方へと向かった。

「こんにちは、永瀬千姫です。高校二年の十七歳です」
最初は、紹介タイムから始まった。何故か俺は話も耳に入らず、平助に見惚れていた。前に左之に言われたことがあるが、俺は一つの事に集中すると、それに集中して周りが見えなくなるらしい。
平助を見ていると、ほんとうにあの時のおチビちゃんか?と見違えるくらいに変わっていた。髪の長さはショートカットで前と同じだけど、成長したのは、身体付きだけじゃなく顔もだ。ぷっくりとした、ピンク色の唇、色白の肌、ぱっちりと大きく開いた目。どれを見たって可愛く思える。
服装だってそうだ。ちょっと谷間が見えそうな位開いている、襟。布上で水色のワンピース。両肩に付いてる白いレースのりぼん。
年下に何欲情してんだっ、って思うと自分が笑えてくる。
そして、自己紹介が平助の番に成っていた。あの時だったら絶対に感じさせない程の、お淑やかそうな顔。赤くなって、何も言えない平助を見ていたくなるのはどうしてなんだろうか。
「えっと、この子は藤堂平助。私たちと同じ高校二年生」
最初に自己紹介をした千姫とやらが、平助の事を紹介した。今度は、俺の番だな。
「俺は、永倉新八。K大の1年で十八才。宜しくな」
俺は、平助を見つめながら、いつもの様にニカっと笑うとそう言った。

―多分俺は、平助に一目惚れしたんだろうな。

9:なちりん:2015/07/18(土) 14:59 ID:YyI

love chronicle―冬―

合コンから二ヶ月が立った頃。
六人の中でも、色々と合ったんだよ。
先月に、千鶴が土方さんと付き合ってるっていうことを本人から聞いた。
私は、千鶴が土方さんのことを好きなのは分かっていたから、心からの祝福をした。
普通に恋ができる周りの子たちが羨ましい。私だって、恋したいけど、やり方なんて分からないし・・・。
―そ言えば、誰かが言っていたっけ?
恋とは、するものではなく落ちる物だと。
私は、恋をした事もないし、好きになった事さえない。
この先恋が出来るのだろうか?
と考えながら、大通りを歩いていると、こちらに曲がってきた大柄の男の人にぶつかった。
「ごめんなさい」
ぶつかった衝撃で、後ろに倒れた体を片手一本で支えるようにしてバク転をして何とか転ばずに済んだが、ぶつかったのは大柄の男だ。絶対に絡まれそうだと思い、謝ると・・・
「いやいいけどよ・・・。流石は平助だな。転ばずにバク転するとはよぉ」
聞き覚えのある声が、上から聴こえてくるのだ。まさかとは思ったけれど、あの人かな?と思い顔を上げてぶつかった人の顔を見た。
「新八さん」
「よっ。どうしたんだ、こんなとこで」
別にふらふらしてただけ・・・とは言えず、言い訳を考えてこう言った。
「今日は、友達とカラオケに行く約束で・・・」
「ぷっ、そりゃー嘘だな」
私が必死に言い訳を探してそう言ったのに、新八さんはすべてお見通しのように、幼さの残る悪戯な笑みを浮かべながらそう言ってくる。確かに嘘なのは認めるけど、言い方を考えて欲しかった。そう考えながら。膨れていると、不意に新八さんの人差し指が私の頬をそっとつついた。
「膨れた顔も、可愛いな」
私より十センチちょっと背の高い新八さんが私の目線までしゃがんで、頭を撫でながらそう言ってくる。
「余計なお世話だよ」
男勝りな言い方で、新八さんにそう言うと、優しい目で、私の事を見つめてくる。べつに何をしようと言うわけじゃぁ無いのだろうが、見つめられると恥ずかしい物で・・・。顔を真っ赤にして、目線を逸らしていると・・・。
「そいやー平助。今日暇か?」

10:なちりん:2015/07/18(土) 14:59 ID:YyI

さっき、そう持ちかけられた時はびっくりした。急に、暇かって聞かれるから、反射で頷いたんだけど。
そうして連れてこられた場所は、誰かのアパートと思われる家だった。
「散らかってるけどよ、まぁ上がれよ」
「お邪魔、しまーす」
明らかに男の一人暮らしの家で、新八さんの言う通り、散らかっていた。服は投げてあるし、ゴミ袋は溜まっているし・・・。
「あのー?」
「ん?」
結構言いにくいことなんだけど、言わないとっ。
「ゴミ出しの日って何時ですか?」
「んー?確か、月曜日と木曜日だったはずだぜ」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、溜まっているゴミ袋を持ち、さっき見かけたゴミステーションに持っていくため、部屋を後にする。
―何度かに分けて、ゴミ袋を出し終えると、今度は部屋の片付け。
閉じたままのカーテンを開き、空気を入れ替えるために窓を開けると、まず引いたままであろう布団を日干するために、そんなに広くはないが、庭に出て布団を干す。
「平助。わりぃな、掃除やってもらってよ」
「いいんですよ。新八さんは、捜し物して下さい」
私は笑顔でそう応えると、部屋に戻る。
そして、ゴミ袋を持ってきて、机の上に転がっているカップ麺のゴミや、割り箸などを入れる。必要そうな物はどけて、明らかに要らないだろう物はゴミ袋に突っ込んだ。
「・・・、新八さんは何を探してるんですか?」
「ん?・・・、映画のチケットだよ。この前左之に貰ってんたんだ」
どこ仕舞ったかなぁ・・・、と言いながら机の上や、参考書の間に挟まって無いかを探す新八さん。
―私は、はっとした。
そ言えばさっき、ぐちゃぐちゃに成っていたが、映画のチケットらしきものを見つけたんだった。
それに気づいた私は、ごみ袋の中を漁る。
「あっ、・・・ありましたよ」
「・・・、おう、それだ。ありがとよ」
私がそれを渡すと、ホッとした様な、少し嬉しそうな顔をしてそれを受け取った。
そして、遠慮がちに・・・。
「平助よぉ、一緒に行かねぇ?・・・丁度、二枚あるしよ」

11:なちりん:2015/07/18(土) 15:00 ID:YyI

新八Side

俺が、映画に行こうと誘った時。それを遮るように電話が鳴った。
「平助、ちょー悪ぃけど出てくる」
平助に断りを入れ、玄関の戸を開けて、外に出ると、着信に応じた。
―電話をかけてきたのは、元カノである美咲。
俺の初恋でもあり、初めて付き合った相手だった。
『新八?私だけど・・・』
か弱そうな声でそう言って来る美咲。
いつもそうだった。
そんな声で言うから何かと思えば、男と遊んで振られただとか、酔ったから連れて帰れだとか・・・。
俺を何だと思ってんだって、話だ。
「・・・、どうしたんだよ。別れた男になんの様だ」
別れた男という言葉にドスを利かせて、美咲に問い掛ける。
『私は別れたつもり、無いよ。新八が今でも好きだもん』
この色仕掛けも、何回使われた事か・・・。俺だって最初の頃は、許してたよ。好きな女に好きだって言われたんだから嬉しくねぇ筈がねぇ。だけど、こう何度も何度も、事を起こされる度に電話がかかって来るのは、正直鬱陶しい。
「その話はもう着けただろ。俺は言った筈だ。もう金輪際、俺に関わるなって」
そう、二年前に言ったんだ。俺の気持ちを弄んどいて、また俺に関わろうとして来る。
『でも、まだ好きなの。新八の事が同仕様もなく』
「信じられるわけねぇだろ。これで何回目だと思ってんだ。・・・それに俺には、今好きな奴いっから」
止めの言葉を言うと電話を切り、頭に巻いてあるタオルをとって、床にたたき着けた。
(ふざけんなよっ。オレの事を弄んどいて、何回も好きだなんて言われても、嬉しくねぇんだ)
くそっ、と呟き家の中に入ると玄関先に、困った様な顔をした平助が俺の前に立っていた。

12:なちりん:2015/07/18(土) 15:00 ID:YyI

「あの、新八・・・さん?大丈夫ですか?」
よっぽど、心配してくれたのだろう。目の端涙が溜まっていて、触れたら零れそうな程だった。
俺は、出来るだけ平助の不安を解くように、何時もの様に・・・とは行かないが、今出来るだけの笑顔を向けてやる。
「良しっ、映画見に行くか」
もうちょっとで、泣き出しそうだった平助の手を握り、映画館に行く。
まるでその道が今の俺には、三途の川を渡るかのように、憂鬱だった。

映画館に着くと、チケットを使って中に入り、ジュースなどを買う。
「平助。お前はジュース、何が良い?」
「私は、コーラで」
いつの間にか泣き止んでいた平助は、元気に俺にそう返し、パンフレットを読んでいる。
「じゃぁ、コーラフロート2つ下さい」
「かしこまりました」
俺に注文を取った定員は、奥に入り頼んだ物を用意している。俺はその間、嬉しそうにパンフレットを読んでいる平助を見つめていた。
「お客様?」
「あっ、すんません。・・・ありがとよ」
さっきの無理した笑顔ではなく、いつもの様にニカっと白い歯を出して笑い、頼んだ物を受け取ると、平助の元まで行き、コーラの上にバニラが乗っかっている、ジュースを平助に手渡す。
「ほらよ、平助」
「ありがとう、新八さん」
俺が来たことに気付き、パンフレットから顔を上げると、嬉しそうな顔で、ジュースを受け取り、俺に向かってそう言った。

13:なちりん:2015/07/18(土) 15:01 ID:YyI

「んじゃぁ、行くか」
「うん」
俺が歩き出すと、平助もひょこひょこと金魚の扮の様に俺の後ろを歩く。その姿はまるで、可愛いヒヨコが、親鳥の後を着いて歩く様な感じだった。
―会場に入り、指定席に着くと、平助と隣同士で座った。
後五分で開演だから、皆携帯をつついたり、予告を見たり、パンフレットを見たり色々としている。
俺は、さっきの事を思い出さなくていいように携帯の電源をシャットダウンして、平助に声を掛けた。
「そんなに楽しみなのか?この映画」
「うん、だって。今女子の中で話題の作品なんですよ。私も見たくて見たくて」
平助は、目をキラキラさせながら、俺にそう言っている。確かに左之も言っていた。今度、平助と二人で行って来いって。
その時は俺も興味半分で受け取って、誘ってみるかぁ・・・てなぐらいしか思っていなかった。
でもよく聴いてみると、これを見たカップルは、成立しなかったことが無いらしい。
「始まるぞ、平助」
「うん」
舞台は京の都だった。話的には、恋愛ものだ。
主人公かと思われる少女は、島原で女役として働いていて、周りから妬まれるほどの美人だった。訛りも、上手く使われていて、周りの男を魅了させる程。
その少女が男にレイプされそうになった時、そこを通りかかった青年が助けた。その青年は、名も名乗らず笑顔を見せると去って行った。
それから2日立ち、少女はいつも通り仕事をこなしていると、少女を指名する客が来た。
勿論のこと、そんな事は初めてだった少女は、戸惑いながらもその客の元へと向かった。
その客は、2日前にその少女を助けた張本人だった。
―隣にいる平助は、映画に夢中になり、俺が隣にいることをまるで忘れているような感じで、黙って映画を見ていた。

14:なちりん:2015/07/18(土) 15:01 ID:YyI

映画もクライマックスを迎えて、平助は涙を流していた。俺は、映画のセリフを真似するかのように、平助の顔を見てこう言った。
「平助。・・・俺は、お前が好きだ」
その時の、平助の驚いた顔は、とっても・・・。いや、今までに見た事の無いほど可愛かった。

15:なちりん:2015/07/18(土) 15:03 ID:YyI

love chronicle ―春―

季節は春を迎え、桜が咲き始めた。
―あの後どうなったかというと・・・
「平助・・・、俺は、お前が好きだ」
新八さんが、私の手を握り、真面目な顔で私の目を見据えて言ってきた。
驚いたのは確かだけど、それに答える勇気が私には無かった。だって、映画に行く前、私は聞いたんだ。美咲と言う女の人の名前を。
「・・・、信じても、良いの?」
私が、新八さんに、困ったようにそう言うと、いきなり私の事を抱き締めて、こう言ってくれた。
「あったりめーだ。てめぇの好きな女に、心配される程、俺も落ちぶれてねぇよ」
耳元で、囁くと、私の事をギューッとさっきより力強く抱き締める。
私はそんな中、やっぱり美咲さんのことが気に掛かっていた。
―そんな事になり、私達は付き合う様になった。


季節は春。いよいよ年明け恒例のクラス替え。
私も、高校3年生になり、今年は受験生。
勉強とかは、そんなに好きでは無く、嫌いという程でも無いが、一番不安なのは、忙しくて新八さんと会えなくなるっていう事。
友達とは、クラスが一緒になったからいつだって会えるから良いんだけど、家に帰ったら勉強勉強って煩くて、新八さんに会おうと思っても中々会えない。
「何ぼーっとしてるの?平助らしくないよ」
そうして考えているうちに、時間は経って行って、何時の間にか、オリエンテーションが終わっていた。終わった事を知らせる為か、お千ちゃんが呼び掛けてきた。
「あっ、ごめん。・・・帰ろっか」
何時もより軽い鞄を持ち、何故か重い、足を立たせた。

16:なちりん:2015/07/18(土) 15:04 ID:YyI

そうして、校門を出た所で、今一番私を悩ませている主が、目の前に現れた。
しかも、綺麗な女の人と一緒だった。
新八さんは、その女の人に腕を組まれて、肩を並べて歩いていた。
やっぱり、私と肩を並べて歩くより、こう言った、何処から見てもお似合いだって思う女性のほうが、新八さんだっていい筈。
そんなあやふやな事を考えている内に、何時の間にか隣にいた筈のお千ちゃんが、新八さんの前に立ちはばかっていた。
「永倉さん、あなた平助と付き合ってたんじゃ無かったんですか?」
凄い剣幕で睨みつけて来る、お千ちゃんを止めようと、急いで隣に行った。
「お千ちゃん、もう良いから。行こう?」
出来るだけ、新八さんとその女性を見ない様にしながら、お千ちゃんの制服の裾を引っ張る。
「ごめんなさい。新八さん。じゃぁ・・・」
目も合わせないまま、露骨に謝ると、新八さんに背を向けて走り出した。でもやはり、男子と女子じゃ足の歩幅も早さも違うため、直ぐに右手を掴まれた。
「ちょっと待てよ、平助。あいつは・・・」
「言い訳なんていい。もういいから、私の事なんてほっとけよ」
男口調でそう叫ぶと、再び掴まれた手を払い、背を向けて走った。
溢れてくる涙は、天から降ってくる雨の様に、私の服を濡らした。
―家に帰ると、ただいまの挨拶もせずに、部屋に閉じこもると、制服のままベットの上に突っ伏した。面白いくらい、止まらない涙は、今度は服ではなく、頬や枕を濡らした。
涙は止まらないまま、携帯を見ると、不在着信が五件。それも、全部新八さん。
私が走って逃げたのに、追ってこなかった新八さんだった。
涙でボヤける視界の中で、新八さんと表された電話帳の一件を削除した。
―私の心の中の、新八さんも全て・・・。

季節は春の筈なのに私の心の中は、夏の梅雨のようにジメジメとしていた。千鶴達・・・、いやお千ちゃんが気を使ってか、あの後からは、新八さんの名前を出さなかった。いや、お千ちゃんの場合、出さなかっただけなのかも知れない。
―やっぱり、人の心なんて、簡単に信用するもんじゃないな・・・。
新八さんに再会する前の私に戻ったかのように、そう考えていた。
新八さんに会わない間、私の心には、壁に穴が空いたかのように、ピューピューと風がすり抜けていた。まるで、北風に飛ばされた最後の一枚の落ち葉の様に、私の心にも北風が通り掛かった様。
そんな時だった。
多分(いや絶対?)、私に用が有る人物が、話し掛けてきた。
「よぉ、平助。・・・今、暇か?」
「あっ、左之兄。暇だけど?何かあったの?」
「親友の一大事だから、ちょいと顔貸してくれ」
左之兄が私にそう言うと、急に真面目な顔をして、私の腕を掴み、歩き始めた。
どこに行くのかは、着いてから解ると言われたから、敢えて理由は聞かなかった。
左之兄の親友は、あの人だけ・・・だから。

17:なちりん:2015/07/18(土) 15:05 ID:YyI

左之兄が私の手を引張って連れてきた所は、前に行ったマンションではなく、一軒家の立派な家だった。郵便ポスト入れの上に、黒い字で永倉と書かれていたから、新八さんの家だろう。
「左之兄?」
「まぁ、騙されたと思って、入って見ろって」
左之兄は何処か、何かを企んでいる様な、不気味な笑みを浮かべ、そう言ってきた。
私が、ドアノブを掴んで開けようとした瞬間、私が来たのを図ったかのように、ドアが開いた。
「いらっしゃい」
そういったのは、以前見た綺麗な女の人だった。
―そう。新八さんと一緒に歩いていた女性。
「左之兄、・・・酷いよ」
帰る・・・、小さくそう告げた所で、さっきの女性が、私にこう言った。
「平助ちゃん・・・だよね?私の事覚えてない?・・・覚えてないか、あったのは平ちゃんが五歳の頃だったかんね。・・・私、新八の母の
井波」
新八さんの、お母さん?井波さん・・・?五歳の時に会っている・・・?
私は、その三つに思い当たる点があった。井波さんは確か、母さんの親友で、新八さんの母親でもあって、五歳の時にあっているのだ。
「・・・、井波さん?」
「いやーねー。平ちゃんったら、可愛くなっちゃって。やっぱり、こんな子がうちの娘だったら良かったのにぃ」
「・・・、すみませんねぇ。むさくるしい息子で・・・」
今まで、聞きたくてどうしようも無かった人の声が、後ろから聞こえた。私が振り返ると、その人の顔が、真近にあって、もうちょっとで唇が当たりそうだった。
「んんっ、仲直りしたのはいいんだけどよ。お二人さん。人の目の前でキスするとはどういう条件だ?」
いきなりそう言って来たのは、二人の中を取り持とうとしてくれた、左之兄だった。絶対に何処か企んでいる様な笑みを浮かべる左之兄に、冷や汗を感じるのは、多分(いや、絶対)私だけでは無いだろう。
「そんな所で油売ってないで、さっさと入んなよ。平ちゃんも。今、新八の大好きなカレー作ってるから」
「はーい」
私は、右に自分の彼氏である新八の腕に、自分の腕を絡め、左手に兄貴替わりのような存在である。左之兄の腕に自分の腕を絡めて、引っ張る様に、中に入った。

18:なちりん:2015/07/18(土) 15:05 ID:YyI

既に部屋の中にはカレーの匂いが、広まっており、腹ペコのお腹を唆る。
「平ちゃん、そこにあるお皿。出してちょーだい」
井波さんは、おたまで底にカレーのルーが引っ付かないように、混ぜているので手が離せないので、私に皿を出すように、と頼んできた。
「はーい」
私は、井波さんに言われた通り戸棚から、皿を四枚出すと、机の上に置いた。
「あと、ご飯もついで貰えるかしら?」
「良いですよ。作ってもらうだけじゃ、私も面目が立たないってゆうか」
私は、その続きを躊躇しながら、考えたが、急に出てくるわけも無く、ため息を吐くと、ご飯をついで行った。左之兄や新八さんはよく食べそうだから多めに。そして、私と井波さんは少なめにご飯をついだ。
「新八さん、左之兄。ご飯だよ」
私は、キッチンから、リビングに行くと、新八さんたちに(特に新八さんに)、そう言った。すると、新八さんたちは、子供のように目を輝かせるのが早いか、キッチンに急いだ。
そんな様子に笑みを浮かべながら、私もキッチンに行き、席に着いた。
私は、新八さんの隣で、目前には左之兄と井波さんが座っている。そのうちの二人は、頂きますを言うのが早いか、ルーとご飯を混ぜて、食べ始めた。
こんなところでも競争なの?とつい笑ってしまう。
・・・私の方が、年下だって言うのに、新八さんたちの方が(ご飯を食べる時は)、子供みたい。そんな光景に、口元を緩めながら、私も一口一口、口元に運んで行く。
「うん、美味しい」
「まぁ、ありがとう、平ちゃん。そいえば平ちゃんもカレー、大好物だったわね」
「はい」
こういう風に、叔母さんたちとご飯を食べていると、何故か楽しい。勿論、家でも楽しいけど、どう言葉にすれば良いのか、想像もつかない。でも、心が和むと言うか何というか・・・。

19:なちりん:2015/07/18(土) 15:06 ID:YyI

ご飯をご馳走になって、ふと時計を見ると、夜の九時。日が西の空に沈む代わりに、空にはオレンジ色の満月が輝いていた。そろそろ帰らないと・・・、と身支度をしていると、井波さんから提案があった。
「平ちゃん、今日は家に泊まってかない?香澄には、私から電話しておくし」
「良いんですか?」
「もっちろん。平ちゃんなら大歓迎よ。旦那は今日は出張で留守だから、心配しなくて大丈夫よ。・・・、あっ、部屋は新八と同室になるんだけど、良い?」
「はい、大丈夫です」
私は身支度した荷物を持つと、井波さんにそう答え、新八さんの部屋に向かった。
左之兄は、用事があるやら難やらで帰って、今は居ない。それよりも、新八さんの部屋に入るのなんて初めてで、緊張してドアをノックする手が震える。
「新八さん・・・?入るよ・・・」
何とか震える手でノックすると、小さい声でそう言うと、ガチャッとドアを開けて、中に入って、床に荷物をおろした。
・・・、部屋の中はいかにも男の子の部屋って感じだった。DRAGONBALLやBLEACH、後はONE PIECEなどの、漫画が置いてあった。壁には、星の写真いっぱいに飾ってあり、まるでこの部屋自体が、空のようだった。
「気に入った?」
後ろから、急に抱き締められて、耳元でそう呟かれた。
「うん、綺麗だね」
首元に回された腕に手を回し、体重を新八さんにあずけた。
壁全体に貼られた写真が、まるで本当の星かのようにキラキラと光っているように見える。
「平助・・・、ずっと」
「ずっと・・何?」
「ずっと、・・・そうやって俺の傍で笑って居てくれ」
首筋に顔を渦めながら、優しく呟いてくる新八さん。その声は、以前にも聞いたことの無い、新八さんらしくもない弱弱しい声だった。

20:なちりん:2015/07/18(土) 15:06 ID:YyI

love chronicle―ゴールデンウィーク―

いよいよゴールデンウィーク。
前に合コンしたメンバーで、グループデートをする事になった。
私と新八さん・・・改め新八は勿論のこと。千鶴ちゃん&土方さんカップルと、お千ちゃんと左之兄の六人。左之兄が言うには、お千ちゃんとは気が合うけど、付き合う気にはなれないらしい。
―私からすれば、双方とも好きあっているように見えるんだけど。

まぁ、そんな事は置いておいて。
・・・私は今、明日着る服を選んでいた。明日からはゴールデンウィーク。四日間とも、グループデートだから、四日分着替えを選ばないといけない。・・・恋人が出来て初めてのゴールデンウィーク。しかも、ゴールデンウィーク中は泊まり掛けのデート。人の恋路に口を挟む前に、自分の事を考えないといけない。それに、部屋は新八と同室。・・・よく自分の身は自分で守れと言われていて、空手・剣道を習わされて、護身術位は身に付けているけど、私より力も背も上の新八に叶うはずも無い。
双方の両親達が一週間ほど前に、私達を結婚させたいって言い出して、色々準備をし始めて居るんだけど・・・。未来の事なんて考えた事の無い私達には、爆弾発言だった。
・・・それからというもの、お互いに何故か躊躇してしまって、まともに話せなかったから、明日からのグループデートは私にとって・・・否、私達にとって、本当に嬉しいもの。
―準備を済ませ、時間を見ると、もう九時半を指していた。
何時もだったら、もうちょっと遅くまで起きているんだけど明日、朝早いから早く起きるために、早速ベットに入って、目覚まし時計を設定する。
明日は9時集合。・・・そんなに早いわけじゃ無いんだけど、念には念を入れて置かないと。
―目覚まし時計を置くと、眠りにつくために、ベットの上に転び、目を瞑った。

21:なちりん:2015/07/18(土) 15:07 ID:YyI

案の定、直ぐに深い眠りにつけた。だからかどうか分からないけど、幼い頃の夢を見たの。

場所は多分、近くの公園。
井波さんと、うちの母さん。それに新八お兄ちゃんと私が、仲良く手を繋いで歩いていた。
「新八お兄ちゃん。・・・一緒にあそぼ?」
「良いよ。何して遊ぶの?平助ちゃん」
私の小さな手をとって、優しく聞いて来る新八お兄ちゃん。新八お兄ちゃんの手は、冷たかったんだけど、それだけお兄ちゃんの心があったかいんだなぁーって、思った。
「鬼ごっこしよ?」
「二人で?」
「うん、二人で。お兄ちゃんが鬼で、私を捕まえてね?」
「良いよ」
私は、目を瞑って十秒をかぞえるお兄ちゃんの姿を見て、草むらを小さい足で架けた。
十秒を数え終わったお兄ちゃんが、わたしよりも長い足で私を捕まえようと走って来る。私も、お兄ちゃんに負けないぐらい走って、お兄ちゃんに捕まらないようにした。
下を見て、歩いて無かったから、下にあった空き缶のゴミに気付かなくて、
「平助ちゃん、危ない」
新八お兄ちゃんに言われて、下を見た時、やっと空き缶の存在に気付いたんだけど、遅くて転んじゃった。
と思ったんだけど、新八お兄ちゃんが支えてくれて何とか転ばずに済んだんだけど。
「あ〜あ、捕まっちゃった」
・・・今やっていたのは、鬼ごっこ。と言うことは、鬼に捕まったらそこでお終い。だから、残念そうにしていたのに。新八お兄ちゃんに、頬を叩かれた。
「平助・・・。お前って奴は・・・。転ばなくて済んだから良かったけど、転んでたらどうしてたの?」
初めてちゃん付けじゃなくて、名前を呼ばれた瞬間は、初めて新八お兄ちゃんに怒られた時だった。
「ごめんなさい」
「解ったなら良いよ。・・・平助?俺は、お前を一生守ってやるからな」

22:匿名さん:2015/07/18(土) 15:07 ID:YyI

その言葉を聞いた時、目が覚めて時計を見ると、今は六時半。アラームは七時半にセットしていたはずだから、一時間も早くに目が覚めた・・・という事だろうか。
もう一度寝ようかな?とも思ったりしたんだけど、寝られる筈もなく・・・。
ベットから起き上がり、鏡が置いてある所に立って、くしで髪をとかす。何時もだったら、めんどくさいからいいや・・・なんだけど、今日はグループデートの初日だし、何より新八に会える。そう思うと、自分の格好をいつもより可愛く見せたいと思うのが女心と言う物だ。
・・・昨日用意した服を見つめて思う。何時もだったら、動きやすい服メインで、コーデしているのに、今日はミニスカに上はセーラー服みたいなやつ。まだ春だし、肌寒いから上は長袖重視でしてみると、こんな服装になった。
この一式の服は、新八に初めて買ってもらったもの。初めは
「これ、コスプレみたいじゃん」
何て言ってたんだけど、新八が絶対似合うって言ってくれたから、今では私のお気に入りの服なんだ。
ネグリジェから、そのお気にの服に着替えて、新八に貰ったネックレスを首につける。
今日のコーデは、新八に貰ったものを重視で選んだ。
新八に喜んで欲しくて・・・。
新八にかわいいって言って貰いたくて・・・。
気付いたら、新八の事で頭がいっぱいに成っていた。雑誌を見ていても、これ新八に似合いそうだなぁ・・・とかいつの間にか考えてるし。満天の綺麗な星空を見ていたら、新八も見てるのかな?といつの間にか思ってる。
私、新八にハマっちゃってるよ。好きで好きで、たまらなく好きで。格好良い姿も、格好悪い姿も知っているからこそ、新八の事がとっても愛おしい。

早く、会いたいな。

23:なちりん:2015/07/18(土) 15:08 ID:YyI

ゴールデンウィーク1日目

待ち合わせ場所に行くと、殆どのメンバーが集まっていた。そう、新八以外のメンバーが。
「おはようっ。あれ?新八は?」
「あぁ、それがよ。すぐ行くから待っててくれって、さっき電話があってよ」
左之兄が、言い終わるや否や、私は自分の携帯を見た。何故かマナーモードにしてあったらしく、新八から電話があったのに出られ無かった。私はその事に気付き、慌てて電話を掛けようとした時、誰かに視界を覆われて、電話を掛けぞこなった。
「だーれだ?」
手で目隠しをされていた事に気付き、その手を触る。私がその手を触った時、愛おしくて今一番会いたかった人の声が聞こえた。
「新八でしょ?」
ちっ、ばれたかーとぼやきながら、私の視界を塞いでいた手を離した。
「おはよう、新八」
「おうっ、おはよう」
皆がいる時に見せるニカッとして笑う表情を私に向けてくる。そんな中、そんな私たちを置いて行こうとしている四人。私達は慌てずに、かと言ってゆっくり過ぎずに進んでいく。
新八が、私の指を自分の指に絡めて、世間でいう恋人繋ぎをする。そんな新八に、自分の肩をあずけながら、歩いて行く。
「・・・新八・・・?」
「どうした?・・・平助?」
何時もより随分低く、色気のある声で言ってくる新八。私はそれにドキッとしながら、今日夢で見た事を言う。
「今日、夢でね。幼い頃の夢を見たんだ」
「うん」
「それでね、新八がね。私の事を一生守ってやるからなって言ってくれた事、思い出しちゃって」
それを自分で言うのも、ちょっと恥ずかしいけど、新八には包み隠さずに全部言えちゃう。多分、目を合わせてたらこんな恥ずかしいこと、絶対に行けないけど。
「今もそうだよ、平助。俺は、一生お前を守ってやる。約束するよ。何があっても、俺は何時もお前の事が好きだよ」
そんな事を思ってたら、見透かされたかのように、私の目を見て大告白&守る宣言をして来る新八。
「私も。大好きだよ、新八が」
顔が赤くなるのを承知で、新八に自分からも愛の告白。それを聞いて満足そうに微笑む新八の顔は何時に無く、カッコ良かった。

24:なちりん:2015/07/18(土) 15:09 ID:YyI

テーマパークに付くと、それぞれのカップルで別行動を取った。私と新八は、一緒にメリーゴーランドへと向かった。
「こうやって二人っきりで遊ぶの、楽しいね」
「そうだな」
並んでいる間、そんな会話を交わしながら、二人で笑い合う。手は繋いだままで、二人の距離も近い。さっきみたいに、新八の方に頭を置いていると、私たちの番が来た。
「平助、これ。二人で乗るか?」
「うん」
白い馬に私を待たがらせると、新八が私の後ろに乗って、後ろから抱きしめられる形となった。
「ちゃんと捕まってろよ」
そう言って、片方の手を私が掴めるように持ってくる。そんな新八の手に、素直に捕まると、まるでそれが合図になったかのように動き始めたメリーゴーランド。人の目がこちらに向いていたとしても、私には全然関係無い。ただ、私の傍に新八さえいれば。それだけで十分。
「平助、降りるぞ」
そう考えた間に、動いていたメリーゴーランドはいつの間にか止まっていて、他の人達も降りる準備をしていた。
「うん」
新八にそう笑顔で頷くと、差し出された手を取り、乗り物から降りた。
それから時間になるまで、たっぷりと遊ぶ筈だったんだけど、新八さえいれば二人っきりで居たって楽しい。
「平助?パレード見に行くか?」
ほら、同じ事を考えてる。そんな事に嬉しさを感じて、唇を緩めて頷く。
「じゃぁ、一番ゆっくり見える観覧車に乗るか?」
「うん」
私は、新八の口車に乗ってしまったことも知らず、笑顔で頷いた。
―そして、観覧車乗り場まで行くと、この時間帯はがら空きで、すぐに乗れる様だ。
「良し。乗るか」
新八がそう言って、新八が先にゴンドラに乗り込み、その後にわたしが乗り込んで、乗り込んだのを確認して、乗務員が扉を閉めた。
私は、新八に示されて、その隣に座った。新八が、私を強く抱き締めてキスをして来る。最初は、触れるだけのキスだったのに、数を重ねる毎に、それは熱を帯び、次第に新八が私の唇が息を吸いたくて開いた時に、下を入れてきた。新八の舌が私の口の中のあらゆる所を舐め回してくる。時折、私の口の中に新八が唾液を送りこんで来て、私の下を己の下で絡めて来た。

25:なちりん:2015/07/18(土) 15:09 ID:YyI

接吻(ソレ)を何度繰り返したんだろうか。キスが終わった時には、私の息は荒い。必死で、降りる前に息を正そうと、深呼吸をした。
「平助・・・。余り、俺を煽るなよ。我慢してるこっちの身にもなれよ」
新八が頬を染めながら、そっぽを向き、そう言ってきた。
―観覧車を降りた後、集合時刻まで、まだまだ時間があるので、二人でその辺をブラブラと、歩いて居た。
―日が西に傾いて来た頃。
もうそろそろ集合時刻の五時を迎える。先に付いた私達は、別に何をするのでもなく、ベンチに腰をかけていた。私は、繋いでいる手にギューッと力を入れて、新八の方に自分の頭を預ける。
五時まであと五分になった頃。左之兄とお千ちゃんが肩を並べて歩いてこっちに向かって来ている。普通なら、結構な距離をとって歩いているんだけど、今日は肩が引っ付くぐらいの小さな距離しか取って居なかった。
左之兄のお千ちゃんを見る目も、本当に優しそうだし、逆にお千ちゃんも見上げる形に左之兄をみて頬を染めている。
「どうかしたか?平助」
「ううん。良かったなーって思って」
そんな二人を見ながら、新八に聞かれたことに応えた。

そんなこんながあり千鶴たちとも合流して、今は予約していたホテルの部屋の中にいた。借りた部屋は三部屋。最初は心配していた左之兄とお千ちゃんは、今では初々しいカップルになってくれたし。これで一見落着。
そう思ってたんだけど・・・。
その事の発単は、ランチをしていた時に起こった。

26:なちりん:2015/07/18(土) 15:10 ID:YyI

love chronicle―ゴールデンウィーク後編―

新八side
夕食を食べる為、今はホテルの一階に来ていた。まさかここで、あいつに合うとは思っていなかった。
―俺は、平助と手を繋いで、一階のファミレスまで歩いている。
「新八?」
聞き忘れることのない声が、俺を呼んだ。そう、榊原美咲と言う俺の元カノの声。俺は平助の手を握ったまま、振り返った。
「何でこんなとこに、いんだよ。美咲」
平助に気を使って、他の人から聞いても明らかに怒っていると感じる様なドスの入った声で話す。
「何でって・・・。新八に会いに来たの。・・・実は新八のお母さんに、今日新八がこのホテルに泊まることを聞いて・・・」
「何で今更・・・。俺には、未来を考えてる奴が居るんだ。お前に話すことは、何もねぇ」
今言ったことは全て本心だった。俺は平助との未来を考えている。お袋たちだって、俺らの事を認めてくれているんだ。
―今更お前が入り込む隙間なんて、ねぇ。
「新八・・・。そんなに、その子が大事?」
「あぁ、大事だ。美咲、お前を愛した頃よりずっと。・・・、お前なんかとは比べもんになんねぇくらい大事だ」
「わかった・・・。じゃあね」
・・・正直、別れた頃は未練タラタラだった。そりゃあ、俺の初恋だから。って理由もあんだけどよ。
・・・でも今は、未練も後腐れも無い。俺は今、本気で平助に恋≠オてるんだ。
俺は、美咲の後ろ姿を見ながら心の中で語っていた。
「平助・・・、話がある」

27:なちりん:2015/07/18(土) 15:10 ID:YyI

平助side

「平助・・・、話がある」
美咲さんが去って行った後、わたしの方を向いて新八さんが言ってきた。すると、私が返事を返さない間に、私の左手を優しく掴み、人毛のない場所に移動した。
「話って・・・、何?」
もしかして、別れ話でもされるんじゃないかって言う不安から、そんな言葉を切り出した。
「あっ、いや、その・・・」
私の切り出したその言葉に、躊躇した様な様子で話し出した。
「さっきのは、俺の元カノの美咲。・・・勘違いすんなよ。今はなんの関係もねぇ女だ」
切羽詰った声で、新八が話し出す。多分本題はそこでは無いはず・・・。私は新八が話すその本題≠聞くために身構えた。
「俺、さ。・・・・・・こんなこと言ってお前が承知してくれるか分かんねぇけどよ。俺は、お前が好きだ。・・・だから、さ。・・・・・・・・・これ」
間を起きながら話す新八は、何処か余所余所しかったが、本気だって言うことは目を見れば分かる。
・・・これ、と言って差し出してきたのは白い小さな箱だった。
「これって・・・」
私は受け取りながら、呟いた。
その受け取った白い箱の中に入っていたのは、シルバーの指輪。ちょうど頂点の所にshinpachiと名前が掘られている。
指輪を見ていた目を、新八の方へと向けた。
「それ、対になってるんだ。・・・ほら」
新八が自分の左手を私の目の前に持ってきた。私の指輪とは違ってふた回りぐらい大きな指輪。色はゴールドで、heisukeと文字が掘られているもの。

28:なちりん:2015/07/18(土) 15:10 ID:YyI

「上手くは言えねぇけど、我慢してくれ・・・。平助、愛してる。俺と結婚してくれ」
「・・・はい。喜んで」
一瞬は別れ話でもされるんじゃないかって言う不安があったんだけど、それはただの自分勝手だった。新八が、こんな事を言い出すなんて、思いもしなかった。
だって、新八が不器用なの知ってたから。
私は、涙を流しながら、新八に抱きついた。
「ありがとよ、平助・・・」
抱きついた私の背中に、大きな手を回してギュッと抱き締めてくれた。まるで私をずっと離さないというかのように強く。
私も負けずと、新八の背中に回した腕に力を入れた。

この時の私はまだ、新八の抱えていた不安や恐怖をまるで知らなかかったんだ。ただ、今だけはこうして抱きついていたい。
―そう思ったんだ。



ゴールデンウィーク最終日

あれから2日、何事もなく楽しいゴールデンウィークを過ごした。
今日は、最終日。
夕方ぐらいにはうちに帰る予定だから、今日はお昼まで遊べることになっている。
最初の日は本当にどうなるかと思ったけど、嬉しかったし楽しかった。
ゴールデンウィーク・・・。
去年までは、暇だし楽しくないって思ってたんだけど、新八と会った頃から、休みの日が退屈ではなくなった。

楽しかったゴールデンウィークだったはずなのに、ある一つの事件でぶち壊されるなんて思いもしなかった。

29:なちりん:2015/07/18(土) 15:11 ID:YyI

―それは、新八と二人でお土産を買っていた時のこと。
いつもの様に、手を繋いでお互いに意識しないまま歩いていた時。
「永倉、新八さんですか?」
若い男連中が、私達を囲んだ。見るからに柄の悪い連中のリーダー格の男が新八の名前を呼んだ。
「誰だ・・・テメー」
私を背に隠しながら、相手を睨んで言う。その新八の鋭い目に、相手は怖気ずく様子もなく、リーダー格の男はポケットに手を突っ込みながら新八を見る。
「嗚呼、人の名を言う前にまずは自分からってな?・・・初めまして。伊坂徹です。榊原美咲さんに頼まれて来ました」
榊原・・・美咲?
その名前に、聞き覚えがあった。・・・確か、新八の元カノ。
でも何で・・・。
「やっぱか。そうだと思ってたよ」
唇を緩めながら、お気に入りの緑のタオルを外した。
「平助・・・。下がってろよ」
背に私を隠しながら、私の背を壁に当てる様に後ろへと下がった。私に背を向けた新八のシャツをギュッと掴んだ。
「大丈夫だ。俺を信じろ・・・、な?」
私を横目で見て、優しい目で笑う。そんな新八に答えるかのように、頷く。
「良しっ」
新八は優しく笑った後、目は真剣になり、口元は緩めたままで、伊坂徹の方に顔を向けた。
「何笑ってんだ?テメー」
リーダー格の男は、いつの間にか輪の後ろに下がっていて、他の四人の一人が新八に喰ってかかった。
「いやぁ、こうやってやるのも久々だなって思ってな・・・。なぁ、左之」
「えっ、左之兄?」
私は新八の言葉に驚いて、あたりを見回した。
・・・ふと見た右側の壁の影に、見た事のあるシルエットがあった。

30:なちりん:2015/07/18(土) 15:11 ID:YyI

「ちぇっ、バレてたのかよ。まぁ、新八とやるのも高校以来だしよ」
そのシルエットは、新八の言ったとおり、左之兄だった。悪戯する前の子供のような表情を浮かべて、壁の影から出てきた。
「じゃぁ、いっちょやってやるか。久々だからって腕を鈍らせてねぇだろうな?新八」
指をポキポキと鳴らしながら、新八に問いた。
「左之に心配されるほど、落ちぶれちゃねーよ」
左之兄が隣に来た事を確認すると、左之兄と新八は背中合わせになった。
「そいや、あん時はこれより多かったよなー」
「ああ、二十人くらいだったか?」
新八が言った事にびっくりした。二十人を二人で相手したなんて・・・。
私がポカンとしていた間に、四人とも倒れていた。後は、リーダー格の男のみ。
「・・・テメーは、どうすんだ?」
傷一つしてない二人が、リーダー格の男に迫って、新八がリーダー格の男の胸ぐらを掴んで言った。
「ごっ、ごめんなさい・・・」
新八の・・・いえ、新八達の迫力に驚いたのか、伊坂徹とか言うリーダー格の男が怯んで、謝ってきた。新八は、
「もう二度としねぇんだなぁ?」
と忠告すると、リーダー格の男が頷いてきた。
「良し」
ニッコリと笑って居るんだけど、見ているこっちからすると、笑っている方が怖い・・・。
リーダー格の男は、私と同じようにそう思ったのか、怯えながら逃げて行った。
「新八・・・。やっぱおめぇには負けるわ」
苦笑しながら、左之兄が言う。
「うっせーな。俺はああいう奴らが一番ムカつくんだ。喧嘩売るんなら、頼まれたからじゃなく、自分から売ってこいっての」
珍しく、真面目な顔をしながら新八が言う。
それが可笑しかったのか、左之兄が声をあげて笑いだした。自分でも可笑しかったのか、新八も声をあげて笑い出す。

31:なちりん:2015/07/18(土) 15:12 ID:YyI

「そいやーよ、お千はどうしたんだよ?左之」
そ言えばそうだ。左之兄は居るけどお千ちゃんの姿が無い。左之兄とお千ちゃんは一緒に行動していた筈だし・・・。
「もういいぞ。出て来いよ」
左之兄が苦笑しながらそんな事を言うと、さっきまで左之兄が隠れていた所から、お千ちゃんが出てきた。
「じゃぁ、一緒に行動してねぇって訳じゃ無かったんだな?」
「当たりめぇだろ。さっき通りかかった所で、おめぇらを見かけて、声かけようと思ってたら、さっきの連中に囲まれてたろ?これも親友の一大事だから、お千には隠れてもらってたんだよ」
「左之兄って、よっぽど友達想いなんだ・・・。意外・・・」
見た目は、そういう風に見えないのに・・・と明らかに挑発的に言った。
「まぁな。新八は恩人だしよ」
なぁ?と投げかけるように言う左之兄は、昔のことを言うかのように、遠い目をする。
「そいやー、そうだな」

新八side
「そいやー、そうだな」
俺も、昔のことを言うかのように言った。
あの時は確か、高二の時だったか?
左之が女関係で、先輩に目をつけられて、ぼこられた日。俺は、そういう奴をほっとけ無くて先輩をボコった。
そんなに怪我はしていなかった癖に、包帯撒いて、来た時には正直驚いた。怪我してない癖に、あの先輩たちが
「昨日、永倉新八と言う二年生にやられました」
って嘘の事実を吐き、俺は見事学校を転校させられた。俺たちが通っていたのは、有名な高校で、事件を一度も起こしたことが無い超セレブ校だから、その事件も俺が転校したことで隠滅。
―俺が転校したところは、ヤンキー校。
勿論男子ばっかの、むさくるしい学校だった。やんちゃして喧嘩しても、ゼッテー怒られなかった。
毎日男連中と喧嘩して、俺はナンバーワンまで登りあげ、その学校を二年で束ねた。
その学校では、下級生からも上級生からも慕われて居て、毎日が楽しかった。
そんな時、左之が転校してきて、ナンバーワンとして戦った所、決着が付かず史上最強の仲良しペアを組んだ。
左之は、俺が病気である事を知っても、それが何だよって笑っていてくれた。

32:なちりん:2015/07/18(土) 15:12 ID:YyI

その病気の事は、平助にも時期に話さないといけなくなる。
でも俺は話せるのか?

「・・・ぱち。新八?」
いつの間にか、左之とお千は居なくて、俺と平助だけが残っていた。
「なぁ、平助?もしも俺が思い病気に掛かっていて、ずっとそばにいて欲しいって言ったら、どうする?」

平助side

「なぁ平助?もしも俺が重い病気に掛かっていて、ずっとそばにいて欲しいって言ったら、どうする?」
新八が突然、そんなことを聴いてきた。私は、冗談でもそんな事は考えたく無いけど、もしも新八が重い病気に掛かっているならきっと、私ならこうする。
「勿論。学校辞めてでも、新八と一緒に居るよ」

33:なちりん:2015/08/19(水) 19:07 ID:TTc

新八と別れてから1ヶ月。季節は夏を迎えたというのに、気持ちはまだ冬の冷たい心のまま。
水もご飯も喉を通らなくて、体重が10kgも減っていた。お陰で、大好きな体育でも、貧血を起こして倒れてしまって、受けれなかった。
ただでさえ、苦手な理数系のテストも赤点に近くて・・・。
私は、どうしてしまったんだろう。
今でも好きなのに・・・。大好きなのに。どうしようもなく新八に会いたいのに。
でも会えない。
人目でも会えればいい。会えれば、それだけで良い。

どうしたらいいの?
私はどうすれば良いの?

私がそんな事を、ベットで転んで考えていると突然、ドアがノックされた。
「平助・・・、居るか?」
ノックされた後に聞こえたのは、今一番会いたかった人の声ではなく、左之兄の声だった。
「どうしたの・・・?左之兄」
部屋の鍵を開けて左之兄を部屋に入れながら聞いてみた。
「実はよ。・・・新八の事なんだよ」
「新八の・・・事?」
さっきまで新八の事を考えていたから、そう意味あり気な言葉を言われると、ちょっとびっくりしてしまった。
「新八から、お前にだけは言うなって言われてたんだけどよ。お千の奴が、平助の様子が可笑しいからって・・・。んで、本当のこと話す決心で来たんだ」
「何?本当の事って・・・」
本当の事って、どういう事?
さっきまで、眠りにつこうとばかり思っていたけれど、新八の事≠ノなると寝ても居られない。

34:なちりん:2015/08/19(水) 19:08 ID:TTc

「嗚呼。本当の事だからよ。しっかり聴いとけ」
左之兄は、一回深呼吸をすると、話し始めた。
「あいつは、よ。・・・QT延長症候群なんだよ」
QT・・・?えんちょう・・・?
聴いたこともない病名だ。
「俺も、何だよそれって聞いたんだけどよ。よくは答えてくれねかったんだよ。・・・だけどよ、あいつ泣いてたんだよ。あんな彼奴、初めて見た。・・・泣きながらよ、平助に会いてぇ≠チて俺に・・・」
目に手を当てて、俯いた。そんな左之兄は生まれて初めて見た。
「平助・・・、行ってやれよ。・・・新八だって、本気で別れてーって・・・思ってる訳じゃねぇからよ・・・」
左之兄にそう言われた時私の中で何かが吹っ切れた。
―気付けば自分の体が、新八の家へと向かって走っている。
私はどこかで一線引いてたかもしれない。好きだけど、新八の横は・・・新八の隣の居場所はもう私の居場所じゃ無いんだって。
でも、まだ好きなんだ。別れたいなんて一度も考えられないくらいずっと。

新八の事が大好き、です。

35:なちりん:2015/08/19(水) 19:09 ID:TTc

新八の家に着き躊躇いもなく訪問を知らせるチャイムを鳴らす。すると訪問者が私である事を全く知らない新八が出てきた。体調が悪いのか顔色も悪い。
私はそんな新八に抱き付いた。
「平助・・・?」
初めて訪問者が私だったことに気がついた新八が前に聞いたことのある弱々しい声で私の名前を呼んだ。
「・・・ごめん・・・ごめんね新八。私何も知らずに・・・。でも、でもね?・・・私は新八の事が好き。突き放されて解ったの・・・。新八が例え病気だったとしても・・・。病気だったとしてもこの気持ちは抑えられない」
今の言葉に嘘偽りは無い。新八の事が好き。
人を好きになることがこんなにも辛いなら恋なんてしない▼・・。そう思っていた筈だった。
でも、やっぱり新八の事が好き。
「平助・・・何でそれを・・・?」
私の目を見てそう問いてきた。
「左之兄から聞いたの。・・・それで走って来た」
「そうか。・・・平助、来てくれてありがとな」
左手を私の右の頬に当てて今まで見たことのない弱々しい笑顔を見せて又私に背を向けた。今度こそ逃げないで欲しい・・・そう思いその背中に抱きいた。
「行かないで?・・・お願い」
涙を流しながらそう告げた。私の気持ちが迷惑だと思うならそれでも構わない。
私がそう思って力を入れて抱き締めると。
その抱きしめていた手を離されて、今度は新八が抱き締めてくれた。
「いつ死ぬかも分かんねぇんだぞ?それでもいいのか?」
「良いの。何も知らずに一人で暮らすのと、何もかも知ってて新八が隣にいてくれた方がよっぽどマシ」
「お前はそれで幸せなのか?」
「幸せだよ。新八が隣にいて笑顔で笑ってくれてるだけで。新八がいない方が私にとって不幸なの」
頬に涙が伝った。
お互い好きなのに分かれるのと、お互い好きだから一緒に居るのはやっぱり違う。
「一緒にいて、痛みも苦しみも一緒に味わいたい」
「平助・・・」
行く筋もの涙が溢れる中、私は久しぶりに感じる新八の温もりを感じていた。

36:なちりん:2015/08/19(水) 19:09 ID:TTc

新八に出会ってから、何もかもが変わった。
いつも一緒に居たからこそ、一緒にいた時間が多すぎてそれが当たり前≠セと思っていた。
だけど、新八と別れた時その当たり前≠セと思っていた事は実は珍しい事なんだって・・・。そう教えて貰った。
それを知ったからこそ、当たり前≠ニ思うのではなく、大切な時間だと思うこと。それが今の私に出来る最大限の事なんだ。

新八と元通りになってから数ヶ月。もうちょっとで秋になる。
季節の変わり目は風邪を引きやすいと良く言うのだけれど。
「ッゴホ。っゴホッゴホッ」
・・・まさか自分が流行りのインフルエンザに掛かるなんて。実に情けない。だってインフルエンザに掛かって居ること知ったの、新八とのデートの日だったの。
でもその代わり、
「大丈夫か?ちょっとは寝てろよ」
新八が、インフルエンザに掛かっている間は一緒にいてくれるから、そう言う所は良いんだけど。体温が熱いし、意識もボーッとし始めてきた。
「うん・・・。ごめんね?」
薄らいでくる意識の中、軽く謝ると眠りについた。
だから新八が
「謝るなよ」
と言いながら頬に口付けてくれたことに気づかなかった。

37:なちりん:2015/08/19(水) 19:10 ID:TTc

新八side
俺は正直驚いた。そんじょそこらの女子高生ならば、普通は自分から別れを切り出すはずだ。なのにアイツは、
「良いの。何も知らずに一人で暮らすのと、何もかも知ってて新八が隣にいてくれた方がよっぽどマシ」
だと言った。
正直泣きそうになったのは事実。美咲でさえ俺の病気を知って離れて行ったのに、平助は俺に抱きついて笑い泣きしながらそう言ってくれた。なのに俺は・・・。
「お前はそれで幸せなのか?」
素直になれないまま、ぶっきらぼうな口調でそう言ってやると、千鶴は目に涙を今にも溢れそうなくらい溜めて俺に言った。
「幸せだよ。新八が隣にいて笑顔で笑ってくれてるだけで。新八がいない方が私にとって不幸なの。・・・一緒にいて、痛みも苦しみも一緒に味わいたい」
俺はその時、何かが吹っ切れた。
「平助・・・そばにいてくれ」
そばにいてくれ・・・そういったのは小さくて聞こえなかっただろうか。
平助は行く筋もの涙が流れる中、俺の頬にキスをして来た。
まだ強がっていた俺も其のキスで泣いてしまった。俺の頬を涙が伝う中、俺は頬にキスをしてきた平助の唇に己の唇を充てた。

まるで何年も何十年もずーっとあっていなかったかのように互いが満足出来るまでずっと、互いの体をあずけていた。

38:なちりん:2015/08/19(水) 19:11 ID:TTc

平助は俺に愛を教えてくれた。
人を愛する事。本気で愛するというのは何なのかと言うこと。
自分の考え一つで愛する人と離れるって言うのは、やっぱり自己中何だという事。
全部平助から教えられた。
でも離れてから分かった事が合った。それは、やっぱり平助の事が愛おしいという事。好きを飛び越えて愛しているという事。
俺はやっぱり、平助の事が好きだ。自分の心を騙してまで離れているのは、それだけでも嫌だ。俺ができる最大限、一分一秒でも平助のそばに居る事。

次の日。
左之と約束していたバーに向った。
中を覗くと、若い女性に話しかけられている左之の姿を見つけた。
自動ドアから中に入ると、左之が座っている席へと向った。
「左之〜」
女性に話しかけられて、明らかに困っている左之の名を呼んだ。
「・・・新八。連れが来たからよっ。すまんな」
「いっ、いえ」
女性は左之に謝られて、とんでもないと言うように首を振ると、自分の席に戻った。
「左之、場所変えるか?ここじゃ安心して話せねーしよ」
「っそうだな。行くか?」
4本指を口元に持っていき、酒を飲むような素振りを見せる。
「おう」

39:なちりん:2015/08/19(水) 19:12 ID:TTc

呑みに行くと言っても、バーとかで飲むのではなく、コンビニで缶ビールを買って、左之か俺の家で飲むのが俺達の普通。
「今日はどっちの家で飲むんだ?」
「俺んちに行くか?」
左之が俺んちで飲むかと言ってくれたので、直ぐにどっちの家で飲むか決まった。
左之の家に着くとどこから聞きつけたのか、土方さんたちが居た。
「っすまん、新八。俺が連絡したんだ」
左之が右目を粒りながら謝ってくる。俺がポカンとしながら突っ立っていると、いつの間にか目の前にいた平助が俺の名前を呼んでくる。
「新八」
「平助・・・?」
そう言った後目の前が真っ白になって、近くで聞こえているはずの声が、まるでプールの中で聞いている声のようにうっすらとしか聞こえない。
俺はその後意識を失った。

40:なちりん:2015/08/19(水) 19:12 ID:TTc

「新八っ?」
目の前で新八が倒れた。こっちにもたれかかって来たから何とか支えたけれど、相変わらず返事は無く。
「俺が救急車に電話する」
新八の隣に居た左之兄がポケットから携帯を出して、救急車に電話をする。
私は新八の名を呼ぶ事しか頭に無く、左之兄が何を喋っているのか、分からなかった。
それから数分たち、救急車が到着した。倒れた新八を救急台に乗せ、救急隊員が運んで行く。
「平助、行ってやれ。お前が行ってやらねーでどうする」
いつの間にか私の前に座っていた左之兄が、私の肩を揺さぶった。
「でも、私じゃ何も出来ない」
パニックになりながら、左之兄の目を見る。その目はいつになく真剣で、怖かった。
「お前は何言ってんだよ。新八はお前が居ねーとしぬぞ?それでもいいのかっ?」
新八が・・・死ぬ?
私は居ない、と?
「・・・嫌。新八が居なくなるのは絶対に」
泣きながら左之兄を見つめて言うと、眉間に皺を寄せていた左之兄が優しい顔で微笑んで私の肩を押してくれた。
私は振り返らず、まだ居るであろう救急車まで走った。
救急車に乗った私は最愛の人の手を握った。その手に温もりは無く、ピクリとも動こうとはしない。
「藤堂さん?・・・最後の言葉を聞いてあげてください。藤堂さん」
私の隣に座っていた救急隊員が私に声を掛けてくる。
「最後の・・・言葉ですか?」
新八の、最後の言葉?
それって、もう持たないって事?
私は目から溢れる涙を留められないまま、新八の言葉を聞くために、新八の口元に耳を近づけた。
「・・・へい、すけ。・・・・・・・・・あい、して・・・・・・・・・・・・」
ルの字を言う前に心臓が停まったことを知らせる音が、救急車内に響き渡る。
新八の最後の言葉は、私を愛してるという事。
「・・・っ新八?・・・新八ー?」
次々と頬を伝う涙を留めないまま、寝ているのかと言うぐらい綺麗な肌に触れる。
「午後九時三十二分。御臨終です」
そんな救急隊員の声も耳に入れぬまま、ただひたすら目の前で眠るように亡くなった新八の顔を見つめる。手で新八の温かい体温を感じようとしても、その体は、手は、冷たいままビクともしない。
嘘だよね?新八?
いつもみたいに嘘だって言って笑ってよ。私の大好きな笑顔で笑ってよ。
そんな願いも叶うわけがなく、ただ時間だけが過ぎて行った。

41:なちりん:2015/08/19(水) 19:13 ID:TTc

新八がこの世を去ってからもう1ヶ月。
1ヶ月も立つというのに、未だに自分を思いつめてばっかりいたそんなある日、左之兄が珍しく家に来た。
「平助?いつまでそうやって居るつもりだ?お前がそうやっていて、新八が喜ぶと思ってるのか?」
私の目を見つめて、何処か切なそうな顔をした左之兄が言う。
「俺が今日来たのは、こんな事言う為じゃねーんだ。・・・これ。新八に預かってたんだ」
「新八に・・・?」
左之兄が新八にあずけた物・・・、それは。
「手紙・・・?」
そう手紙だった。茶封筒に平助へと書かれた物。新八が書いた物だと一瞬で分かった。
「じゃーな。俺はこれから用事合っからよ」
右手を軽く上げると、左之兄はドアを開けて私の部屋を出て行った。私はそれを確認すると、左之兄から預かった茶封筒を見つめた。
裏返すと、閉じて無い封を開けて、中に入っている便箋を出した。

平助へ
俺が手紙書くなんて柄じゃねーって思ったろ?
・・・まぁな。自分でもそう思ってる。
字もきたねーし、読めるかどうか心配だけどな。まあ読めると信じて書いてる。出す気は更々ねえがなっ。
―平助と別れてから、もう二週間か?
平助といると、早く過ぎていくはずの時間が一人で居ると長く感じちまう。
いつも強気な俺が、左之の前で泣いちまったんだぜ?あり得ねーだろ。
でもそれだけ、お前の事を愛してたんだ。分かってくれよな。
ゴールデンウィークで言った言葉は、決して偽りじゃねーかんな。お前の事を本気で愛してるから。
お前がプロポーズを受けてくれた事、真剣で嬉しかった。もしかしたら断られるんじゃねーかって正直不安だったから。それにあのシチュエーションじゃ、ぜってー断られるって思ってたからよ。正直腰抜かしたぞ。


平助っ、今度合う時俺らが笑い会える事を願ってる。

新八より

最後の文字を読み終わると同時に、胸の中にあるどうしようもない物が溢れ出した。

42:なちりん:2015/08/19(水) 19:14 ID:TTc

―それから4年後
「こーら、新八?あまり走り回っちゃ駄目よー」
あれから直ぐに分かったんだけど、私のお腹の中には、子供が宿って居た。
―そう、新八との子供。
名前は新八の名前をそのままとって、藤堂新八。
「ママー」
新八が私の元に駆け寄って来た。その顔は、幼い頃、私と遊んでくれた新八の顔にそっくりで…。新八が、私に子供をあずけてくれたんだよね?
「おいで、新八?」
「ママー」
私は新八を抱き上げて、ギューっと抱き締めると、見守ってくれているだろう、この子の父親が居る空を見上げた。
(新八?見てくれてくかな?新八の子供だよ。あなたの名前を付けたの。顔が、新八にそっくりでしょう?・・・もう三歳になるのよ。多分大きくなったら新八に似て、逞しく恰好いい子になってくれるよ)
「ママー?パパ居るの?」
「居るよ。空からいつも、見守ってくれて居るから」

この子がいなかったら、私は立ち直れないままだったかも知れない。
でもね、新八?
私は世界で一番、新八の事を愛しています。
例えまた病気でも、今度は一緒に痛みや苦しみを分け合えることを願っています。


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