僕のヒーローアカデミア【オリジナル夢主】

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1:ぜんざい◆A.:2016/09/03(土) 17:52 ID:MfI


 どうもはじめましての方ははじめまして、アポロを知っている方はこんにちは。
 アポロから改名しました。『ぜんざい』です。



 今回はヒロアカの女主長編原作沿い一本を書いていきます。
 荒らしや中傷はやめてくださいね。メンタル吹き飛びます。

 夢主(女)

伊達 伊織 (15)
Birthday:4/12
Height:178cm
好きなもの:ぜんざい(白玉でも餅でも可)

 個性:発火政宗。自由に好きなとき好きな場所に『政宗』と言う日本刀を出せる。威力大。複合性の個性でもうひとつ発火を持つ。
 瞳は紅色で目付きが鋭く、右目に眼帯をつけている。右目の眼帯は個性発現時に視力がなくなりそれ以来。
 身長が高く、巨乳。体はしなやかに筋肉がついており、政宗を扱うための鍛練で手に入れた。
 彼女の先祖はかの有名な『伊達政宗』らしい。
 運動も勉強も出来、顔も男寄りのイケメン。
 一人称『俺』

 ヒーローコスチュームは和風。いずれイラスト載せます。


 でわでわ

2:ぜんざい◆A.:2016/09/04(日) 09:59 ID:MfI



ヒーローコスチューム画像ですが、お目汚しにならぬよう気を付けてください。

https://ha10.net/up/data/img/1289.jpg


 次投稿はストーリー始まります。



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3:ぜんざい◆A.:2016/09/04(日) 10:00 ID:MfI


 上の画像ですが数字が抜けていたのでもう一度トライ。

https://ha10.net/up/data/img/12891.jpg


二回もすみません。

4:ぜんざい◆A.:2016/09/04(日) 10:43 ID:MfI



 幼い頃から居合いが大好きだった。物心つく前から触っていたと俺は思う。


 だけど俺には才能があると師匠は言った。親はそれはそれは、と喜んだ。

 俺は学校で有名になった。『焔の隻眼剣士』として。みんなざわざわとうざったらしくて、右目の眼帯は厨二病か、とか聞かれるからイライラしてこれは個性の副作用だと教えるとホントに? と疑われ、証拠に右目の眼帯を捲って無くなった右目を見せる。眼球が消えたので瞼をそ閉じて居るが、それでも窪んで居るのが分かる気持ちの悪い目。それを見て回りは引いて俺から離れていく。
 見せろと言ったから見せたのに、見せれば離れていくなんて人間は矛盾している。

 そんなことを小学二年生にして道場で自分の個性の刀を素振りしながら考えた。

 そんな俺ももう中学生だ。

 背中に袋に入れた政宗を携えて白い手袋を手にはめながら新しい制服で歩く。
 ここ、凝山中学の制服はブレザーらしい。下手にセーラーとかじゃなくて良かったと安心する。
 実は数日前にこの近辺に引っ越してきたので知り合いは居ない。ラッキー、だとか内心思いながら無表情を貫く。

 クラス表を見れば、クラスを拝見し、他はすごくどうでもいいのでさっさと教室に移動する。

 教室に移動すればするで女が寄ってくる。どうせ世の中顔だ。自分の顔が男寄りの俗に言うイケメンだと言うことは自負している。俺はそう認識しているだけで、別に自分の事が大好きなナルシスト等ではないので勘違いしないでいただきたい。
 俺の席の周りでキャッキャ言う女の子に普段あまり使わない表情筋を動かして微笑みを向ける。
 途中で眼帯の下を見せてと言う子が居たが、『眼球が無くてえぐいからやめた方が良い』と告げておいた。


 同じ教室でそんな俺を見つめるオッドアイがあったことを俺はまだ知らなかった。



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5:ぜんざい◆A.:2016/09/04(日) 11:25 ID:MfI




 隣の席は髪の毛の色が赤と白の半分で、左顔面の火傷が酷い奴だった。名前は轟焦凍と言うらしい。なんでも親があのNo,2ヒーローのエンデヴァーだと言う。だが俺は正直親などどうでもいい。
 親にいい印象は抱いていない、抱けない。家族でも信頼しているのは爺さんぐらいだ。
 居合いの家柄とかそう言うのを気にしてか、俺は幼い頃から一人称を『俺』、行動、言動をほぼ男へと変革させた、さすがに体の成長は普通どころか出るとこが人より出てしまったが仕方ない。それぐらいやらなきゃ自我を保ってられないほどキツい訓練や修練を父に受けた。別に感謝していないわけでもないが、ただそれが俺の為を思ったものではなく、家柄のためだと言うことに苛々した。

 そんな事を内心思いながら隣に『よろしく』と声を掛ける。轟は目を見開き、驚いたように表情を変化させ、「……よろしく」としばらく間が空いたあとに告げた。


 まあ、それからだ。俺と轟は隣同士であったからか仲良くなった。今や中学三年になっても、だ。
 自分の身の上を話し合えるほどに、気を許しあっていた。轟の火傷の出来事、半冷半燃の左の炎は使わずトップヒーローになってエンデヴァーに「俺はお前の玩具じゃない」と言うと言うこと、お母さんのこと。家庭環境は複雑だが、俺はそれをすんなりと受け入れた。それは彼が俺の右目を受け入れてくれた事が大きいだろう。
 現在では名前で呼び合う程だ。



『焦凍、お前高校どこ行くんだよ』
「俺は雄英、伊織はどうなんだ」
『俺決まってねぇ。から焦凍とおんなじとこ行くわ。その方が気も楽』
「……そうか」



 微かに笑う轟に笑い返して『勉強頑張んねえとな』と頭の後ろで腕を組む。「俺は推薦受ける」と轟が言い『推薦なー』と俺には向いてねえから一般を受けると回答を出す。



『もうちょっとだったか、試験』
「まだ期間はある。……願書出せよ、忘れてねぇよな」
『わかってる、とりあえず実技は置いといて、筆記あるから勉強するかー』
「……図書室か図書館か」
『そうだな、こっから近えし図書室行くか』
「おう」



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6:ぜんざい◆A.:2016/09/04(日) 15:49 ID:MfI




 唐突に、思い出したのだ。先日、ヘドロ事件と言う事件があったと言う。その時の被害者、助けんとした無個性。
 爆豪勝己、緑谷出久。

 彼らが切っ掛けで思い出したのだ。彼らは紙面状の人物で、ここが『僕のヒーローアカデミア』と言う漫画の世界だと言うことを。

 俺は、この世界に転生したのだと。まあ前世のことなんてほぼこの漫画のことしか覚えてないしいつ死んだのか何てわかるわけないしともう放置。



「どうした伊織?」
『あん?』
「何か考え事か」
『あー、そうかも知れねぇな、わっかんね』



**



 本日、雄英の試験当日である!



『マジあっつー間だったな』



 思い出して10ヵ月なんてすぐだったし、勉強するしかなかったし。轟は推薦で先に受かったし。
 現在はホールでプレゼントマイクの話を聞き終わり、会場に移動している。会場にて発見したのは爆豪のみ。やべーやべー爆豪なんか相手にしてる暇ねー。
 確か、スタートと言われりゃすぐ動くんだっけか。



「ハイスタートー!!」



 プレゼントマイクの合図と共に他を置き去りにして走り出す俺、と同時の爆豪。なんかギッと睨み付けられたが知らん顔して目の前に現れた二点の仮想ヴィランを指をならして発火させ空気を調節して焔を起こす。こんなもん政宗使うまでもねえ。



「てめえの個性は爆破かぁ!?」



 隣でばごんばごんと手を爆破させる爆豪に『ちげえ』と遥か高いビルの屋上に一点ヴィランを発見しぱちんぱちんと指を鳴らして破壊する。恐らく同じ個性なら負けねえとか言うんだろうが、焔なんてサブだサブ。



『俺のメインはこっちだぜ!』



 刀を無空間から取り出し足をダンと踏み込みズパッと二点ヴィランを真っ二つに斬り倒して連続で三点ヴィランを斬る。
 振り向いてぽかんと唖然としてる爆豪を放置しただひたすらに仮想ヴィランを斬るか焼くかして点数を稼いだ。時々人を助けながら。



 まあ、爆豪にはすげえ睨まれて敵視されたけど。



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7:ぜんざい◆A.:2016/09/10(土) 07:48 ID:MfI



 まあ、当然俺も雄英に受かった訳で、新しく引っ越した家から学校生活がスタートする。
 実は引っ越す前、伊達家の本家に住んで居たのだが親が「お前はもう中学生になるし、一人暮らしでもしてみるか」と聞いてきたので全力で頷いた……うん、えーっと、それで爺さんが一軒家を買ってくれました。うん、はい、爺さん大好きありがとう……。

 雄英に合格したことを本家に連絡すれば爺さんと婆さんが興奮して高かったと言う壺を数個割ってしまったらしい。なんと……。
 本家筋は爺さんで、爺さんの個性は『政宗』。父さんも『政宗』、俺は母さんの『発火』も引き継いで『発火政宗』となった。
 クラスは1-A、轟等と同じクラスか。


 そんな感じで雄英学校内を歩いて1-Aのでかすぎる扉を開く。人はまばらにしか居らず、がたりと指定された席の椅子に荷物を置いてすでに来ていた轟に声を掛ける。



『おはよう焦凍』
「おう」
『多分、このあと誰かさんと誰かさんの言い合いが見れるぜ』
「? よくわかんねぇけど、俺は別にどうでもいい」
『お前な』



 呆れた顔で腕を組めば轟が俄関せずと言った顔でふいっと顔を逸らした。なんだよもう可愛いなばかやろー。

 俺が席に着いたその後、緑谷が来たとたん、飯田と爆豪の言い合いが起こり、緑谷の後ろから麗日が声を掛け何やら話していたところで相澤先生がやって来て寝袋の中から体操服を出した。

 どうやらこれを着てグラウンドに出ろと言うことらしい。



**


 外に出た結果は『個性把握テスト』。どうやら入学式とガイダンスも無いようだ。まあ入学式とガイダンスなんて眠たくなるから俺は別に良いんですけど。相澤先生曰く「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間無いよ」らしい。
 そのあとは爆豪が個性を使ってソフトボール投げをして、705mと言う記録を叩き出した。それを見てみんな面白そうだなんだと言うが、そんなこと言ってられない。

 俺は轟の隣で腕を組みながら相澤先生の次の言葉を待つ。どうやら相澤先生のスイッチが入ったらしくこの成績最下位は『除籍処分』になるらしい。あーあ、やっちまった。



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8:ぜんざい◆A.:2016/09/10(土) 08:01 ID:MfI



 一種目、50m走。俺は足場を爆発させて風威に乗って走った。記録は4:76。爆豪に負けただと……!
 二種目の握力は89kg、俺は普通の人間を超越した気分になった。俺は女子ですよ神様。
 第三種目、立ち幅跳びは足場の空気を小規模爆発させて浮いてる時間を保った。第四種目の反復横跳びは普通に実力。
 第五種目のソフトボール投げは政宗のみねを使ってかっきーんとホームラン。麗日が∞を出し、みんながうおおおと叫び出す。

 そのあとは緑谷が一回目普通の記録、そのあと相澤先生に何やら言われ、深刻な顔をしたのち大記録を叩き出してくれた。良かった良かった。



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9:ぜんざい◆A.:2016/09/20(火) 14:27 ID:AMg



 雄英高校と言ってもちゃんとした高校なので、午前中はきちんとした授業がある、主に必修科目、英語など! プレゼント・マイクの英語の授業がかなり普通だったのに少し驚いたぐらいだ。
 昼飯は大食堂で済ませたのち、午後の授業はヒーロー基礎学なのでみんなわいわいと熱が入る。確か初めてのヒーロー基礎学の担当はオールマイトだった筈。



「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!!」



 ホントにドアから来た。って言うかオールマイトでっか、いやいやでっか! さすが二メートル……TENIPURIの越知とほぼ同じ。
 今日のヒーロー基礎学は戦闘訓練、ヒーローコスチュームを来て行うらしい。
 俺のヒーローコスチュームは3>>を参照に。

 俺たちは今日からヒーローなのだ、と自覚しろとオールマイトに言われた。ヒーロー、ヒーローか……。轟に合わせて試験受けて合格したけど、漫画じゃ倍率が300とか言ってた気がするな……。

**

 コスに着替え、市街地エリアに移動したのち、授業の説明がなされる。
 今回行うのは屋内対人戦闘訓練で、これからヒーロー組、敵組に分かれて2対2の屋内戦を行うらしい。
 状況設定は敵がアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか核兵器を回収する事、敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえること、コンビ及び対戦相手はクジだ。
 どこか1チームが三人になるらしく、俺はまさしくそうなってしまった。Bチームになり轟、障子とトリオだくそう。



『よろしくな』
「おう」
「よろしく」



 そののち、爆豪・飯田ペア(敵)と緑谷・麗日ペア(ヒーロー)はヒーローチームが勝利したのだが、戦いには負けて試合には勝ったと言う不思議な感じだ。

 場所を移し第二戦、俺達がヒーローチーム。葉隠、尾白が敵チームだ。さて。



「外出てろ危ねえから」
『おう、いくぞ障子』
「……?」
「向こうは防衛戦のつもりだろうが、俺には関係無い」



 一瞬でビルを凍らせた轟が中に入っていくのに俺も続く。いやはや漫画でも読んだがすげーわやっぱ。

 あっさりと核兵器にタッチした轟が右手の熱で氷を溶かしていくのを見て俺も指をぱちんぱちんと鳴らし小規模発火させて氷を溶かす。

 ヒーローチームとして俺達が勝利し、あっさりとしたこのヒーロー基礎学が終了した。



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10:ぜんざい◆A.:2016/11/15(火) 00:39 ID:Feg

超小ネタです。




翌日、轟は俺の姿を見て目を見開いた。



「……な、んで、男子制服なんだ……?」
『……学校側から、イケメンに女子生徒服着せてると違和感あるからって、昨日渡されたんだよ。コスチュームもサラシで胸潰すから、もうほぼ男だよな俺』



 遠くを眺めるような瞳をすれば轟が同情してきた。やめろよ。俺これでも女なんだぜ?



「……確かに、違和感は、ない……が」
『ねーのかよ。なに?』
「……なんでもねぇ」



 なんなんだよ途中で止められると気になるだろ!



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11:ぜんざい◆A.:2016/11/20(日) 16:27 ID:Feg

いおりside(ヴィラン襲撃後)


 USJ襲撃があった。原作通りだったけど、俺がいる時点でイレギュラー多少の差はあったものの無事終了した。

 今朝のホームルームの時には相澤先生が包帯巻き巻きでクラスは震撼してましたが、俺は寝ていたので知りません。隣に叩き起こされたけど知りません。昼休みに轟から話を聞けば、雄英体育祭が迫っているとのこと。



「体育祭は、親父を見返すチャンスだ」
『……俺も、そろそろ本気出す、と思う、恐らく、多分』
「はっきりさせろよお前……」
『じゃあお前らコテンパンにできる程度の実力を出すぜ、全力は疲れるし』
「ぜってー負けねー」
『ほざいてろ』



 ばちばちと目線の火花が飛ぶ。流石に全国放送される雄英体育祭で、ヘマしたらじいさんにどやされるし、恥ずかしい思いをするのは嫌だ。
 後にこの光景を見ていたクラスメイトは「……体育祭は轟と伊達のどっちかかもしれない」と呟いていたらしい。



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12:ぜんざい◆A.:2016/11/20(日) 22:31 ID:Feg



 体育祭当日、俺たち1-Aは相変わらずマイペースにダサい雄英体操服を身に纏って控え室で大人しく控えていたら、轟が緑谷にこう言った。



「緑谷」
「轟くん……なに?」
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」
「へ!? う、うん」
「……お前、オールマイトに目ぇ掛けられてるよな、別にそこ詮索するつもりはねぇが」
「!!」
「おまえには勝つぞ」



 それを聞いた上鳴が「おお、クラス最強が宣戦布告!?」と爆豪の隣でテンションを上げる。そこに切島が「急に喧嘩腰でどうした!? 直前にやめろって……」と肩に手をおいて止めるも、轟は「仲良しごっこじゃねぇんだ、何だって良いだろ」と告げ、そのあと上鳴を指差す。あれ? こんなシーンあったっけ?



「それと上鳴」
「うぇい!? 俺!? なに!?」
「……悔しいがクラス最強は俺じゃねえ、いおりだ」



 びっと指差されて『ん、俺?』と呆ける。クラスも最強だと思っていた轟から出た意外な人物の名前に目を丸くし、沈黙が流れた。

……いや、俺もびっくりなんだけど。

13:ぜんざい◆A.:2016/11/22(火) 15:08 ID:ATI

後付け設定(主はネギまのトリップ。神鳴流トップでエヴァの弟子かつマギアエレベアを完全にものにし保有している)



<雄英体育祭!! ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!! どうせてめーらアレだろ!? コイツらだろ!? 敵の襲撃を受けたにもかかわらず鋼の精神で乗り越えた新星!!! ヒーロー科!!! 一年! A組だろオオォ!?>

そんなプレゼントマイクの紹介に苦笑いしながら会場に入場する。どうせ見てるんだろクソ親父、どうせヒーロー殺しに殺られたクソババアも空から見てんだろ? 俺は家の御飾りじゃねー、ただの一人の不老不死。人間と言うフリップが本来欲しかったが、マギアエレベアが来世に持ち込まれたのだから仕方ない。そして選手宣誓、18禁ヒーローのミッドナイトが一年主審らしい。ムチをピシィ! としならせる様はただのSM嬢だ。選手宣誓の代表は俺か爆豪かで相談されたが、俺はひたすら面倒だったので直ぐ様パスした。そしてたった今壇上に立った爆豪が言った。

「せんせー、俺が一位になる」
「絶対やると思った!」

切島がみんなの気持ちを代弁していった。うーん、他クラスはまだしも飯田からも反論来てるし。すると爆豪は「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ」と言ったあと、俺を指差して告げた。

「俺はお前を倒してトップを取る」
『お前にゃ無理だ、肩の荷が重すぎるぜ』

俺がそう言えば爆豪は眉間のシワを深く寄せたが、それ以上何も言わなかった。そして予選は障害物競争、うむ、虚空瞬動使えばトップ取れるなあ。
そしてスタート! スタート入り口は狭すぎる、そう、これが最初のふるい。轟が一斉に足元を凍らせ、ただ今トップに躍り出る。だがそれで黙っているA組ではない。みんなが抜けていき、第一関門、試験の時に出てきたロボ・インフェルノが出現し、そして直ぐ様轟がロボを氷付けにした。一方の俺は轟の氷攻撃を避け、瞬動で人混みから抜けたあと、そこから虚空瞬動を続けてまるで空でも飛ぶかのように走る。

<1-A轟! 攻略と妨害を一度に! コイツァシヴィー!>
「(これならいおりも簡単には抜けられねぇ)」
<すげえな! 1抜けだ! アレだな、もうなんか、ズリィな! っておっとお!?>
「(なんだ?)」
「雄英きっての超イケメン1-Aの伊達! 空中を瞬間移動!? ズリィな! 障害とかアイツには関係ねーな!  あいつの個性ってあんななのイレイザー!」
「なっ」

轟は目を見開いた。ちょうど頭上に余裕そうないおりがぱっぱっとすごいスピードで前に進んでいく。イレイザーヘッドこと相澤が納得したように呟いた。

<……ありゃあ瞬間移動じゃねえ。瞬動術っつーもんだ。足に『気』っつーもんを込めて地面を蹴ると高速移動出来る。すげえ達人ですら辛い修行してやっとできるようになるもんだ。あいつが今やってんのは空気を蹴る虚空瞬動、瞬動術より難易度はグッと上がる……が、すげえな。本くらいでしか読んだことねぇのに>
<じゃあ伊達は今空気を蹴って移動してるってのか!? なんてこったチートかアイツは!!!>
「(んなこと出来るなんて聞いてねえぞ!)」

轟も慌てて走り出す。一方のいおりはつまらなさを感じて瞬動をやめて地面に降り立った。ここからは個性で行くかとか考えてたら後ろのやつもやって来てやべーのなんの。

<オイオイ第一関門チョロイってよ! んじゃ第二関門はどうさ!? 落ちればアウト! それが嫌なら這いずりな! ザ・フォール!>

轟が追い付いて来ちゃったよもおおおおお!
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14:ぜんざい◆A.:2016/11/22(火) 15:28 ID:ATI



 第一種目が終了し、俺が2位になった。予選通過は上位42名、あれ? 青山いるのに飯田がいない。聞けばザ・フォールで落ちてしまったらしい。あらら。
 轟が3位、爆豪が4位と順にひとつ順位が落ちているがしかたないかな。
 トップは言わずもがな緑谷だ、やってくれたなこのやろう。

 第二種目は騎馬戦、Pは先程の順位にしたがって割り当てられるらしい。しかもトップはいきなり飛んで1000万ポイント、上位ほど狙われる下剋上サバイバルだ。

 俺はもう、組みたい相手は決まっている。



「『いおり!/焦凍!』」



 ……考えることは一緒か。



.

15:ぜんざい◆A.:2016/11/22(火) 19:19 ID:ATI



『っつー訳で、頼むぜー』
「まぁ! いおりさんも居らしたのですね!」
「伊達と轟居りゃあ大丈夫じゃね?」
「……多分」



 轟が選んだのは上鳴と八百万、それと俺。確かここの位置は飯田のものだった気がするが、気にしないことにした。



「お前らを選んだのは、これが最も安定した布陣だと思ったからだ。上鳴は左翼で発電し、敵を近付けさせるな。八百万は右翼、絶縁体やら、防御・移動の補助、いおりは先頭であの刀と炎を生かした防御だ」
「あれ? 伊達って刀使うんだよな? 持ってなきゃダメじゃね?」



 ふと浮かんだ疑問を上鳴が俺にぶつけてきた。俺は轟を見たあと、笑って告げる。



『俺の刀、何だかんだ便利なんだ、空中浮遊機能あり、遠隔脳内操作機能あり。俺の刀に斬れないものはねえし』
「すっげ」



 上鳴が納得し、轟が戦闘においちゃ左は使わないと告げる。それを聞いて俺は少し納得しながらじゃあ俺も刀だけで応戦するかと笑って騎馬を作った。
 俺は小声で三人に最後のところだけ、告げる。



『お前ら、ちょっと良いか。最後の一分まで、1000万取れなかったら俺一人が焦凍をおぶって瞬動術使ってやるから。取れよ、焦凍』
「……わかった」




 前を見ていたから轟の表情は分からない、けど、まあちょっとプライド的に女におぶられるって言うの嫌そうだけど、仕方ないだろ。



<3!>
「狙いは……」
<2!>
「ひとつ」
<1! START!!!>



 一斉に緑谷の騎馬に向けて駆け出す他の騎馬。俺たちは他の騎馬にポイントを取られないよう死守しつつ状況を把握。そして残り時間半分ほどになったとき。俺達が緑谷の騎馬の前に立った。



「そろそろ、獲るぞ」
<B組隆盛の中果たして__1000万ポイントは誰に頭を垂れるのか!>



.

16:ぜんざい◆A.:2016/11/22(火) 20:08 ID:ATI




<残り時間一分弱! 轟、フィールドをサシ仕様にし、そしてあっちゅーまに1000万奪取! とか思ってたよ五分前までは! 緑谷なんとこの狭い空間を五分間逃げ切っている!>



 そんな声を聞きながら俺たちが立ち回るたびに距離をよく見て左側をキープしている。どうせ轟が俺に氷を当てるわけねぇとか思ってんだろうな。



『そこだ焦凍! 俺ごとやっちまえ!』
「おう」
「はぁ!!?」
「どうしたんですのいおりさん!?」



 俺の一声に緑谷チームどころか味方まで驚いている。轟は臆することなく俺もろとも左側の緑谷チームに氷を向けた。だがしかし、避けられてしまい俺は半身氷漬け。


<伊達ええええ! 右腕凍ったぞおおお!>
「だー、くっそ! なウィやってんだ伊達!」
『大丈夫だ』



 そう呟いた瞬間ガラガラと俺の右半身の腕回りにまとわりついていた氷は、俺の服と肉を持ってって崩れていった。


<伊達ええええ!? 腕が! ぼろぼろ崩れてったぜえええ! これはグロイ!>
<……なにやってんだアイツは……>
「グロウェイッ!」
「あぁどうしましょう! いおりさんの腕がコナゴナに!」
「いおり、そのまま前進だ」
『おう』
<伊達! ぼろぼろな腕をそのまま前進ーーー! ってありゃ? 右腕から煙が……>



 俺の右腕は煙をあげながら再生し、服は破けたまま俺の肌には傷ひとつなかった。それに驚く周囲をほっといて『行くぞ!』と怒鳴れば八百万と上鳴は恐らく反射でパッと手を放した。
 素早く足に力を入れて瞬動の入りに入る。



『っ取れ、焦凍!』
「っ!」



 瞬動を使って緑谷の背後に回れば轟のその手には1000万のポイントハチマキがあった。



『ナイス焦凍!』
「……おお」



 焦凍をよっと、といいながらおぶり直し、八百万と上鳴を呼び戻して騎馬を作り直せば唖然としていたプレゼントマイクが<逆転! 轟が1000万! っつーか伊達! 一人で高校生男子おぶるとかすげーな! っていうか腕どーなってんだ!? 大丈夫か!? お前の個性は本当になんなんだよ!>とか聞こえた。そしてつっかかってきた緑谷と対面し、相対した所で轟が個性(左)を使いかけたその後、一番上に巻いてあったハチマキが取られた。くそっ。
 だがしかし、一番上はとられる事を考慮して一番少ないポイントにしておいたから助かった。

17:ぜんざい◆A.:2016/11/22(火) 21:46 ID:ATI



 <タイムアップ! 早速上位を見てみようか! 一位轟チーム! 二位爆豪チーム! 三位鉄て……アレェ!? オイ!!! 心操チーム!? 四位緑谷チーム!!>



 どうやら轟の頭の方を取られたようだ。しまった、原作で読んでいたのに逃してしまったなあ。
 ふと轟を見れば自身の左手を見つめている。そこへ隣に立って俺は『……行きてえって思ったなら、着いていってやる』と告げる。轟は静かにコクリと頷いた。



**


 終わった直後に轟が緑谷を呼び出した。ドームの入場入り口から少しズレた、使用禁止の出入り口の壁に持たれかかる轟と隣の伊達。そして対面するのは、緑谷。



「話って……なに? 早くしないと食堂すごく混みそうだし……えと」
『(話より先に飯の心配なのかー……)』



 若干遠い目をして腕を組んで壁に持たれていれば轟がギロッと緑谷を睨み付けた。



「……気圧された。自分(てめえ)の誓約を破っちまう程によ。
 上鳴も八百万も常闇も麗日も、感じてなかった。最後の場面、あの場で俺といおりだけが気圧された。本気のオールマイトを身近で経験した俺達だけ」
「それ……つまりどういう……」
「お前に同様の何かを感じたってことだ。なァ……

 オールマイトの隠し子か何かか?」

『ぶっふぉ!』



 轟のその言葉を聞いた瞬間笑ってしまったのは放っておいてくれ……! 俺がプルプル震えながら腹を抱えるのを見て轟は眉間に皺を寄せて右手を振った。パッキィンと凍らされた俺を見て緑谷が「ええええ!?」と首をぶんまわしていたのは見えた。
 少し力を入れればビシビシと氷に亀裂が入り、やがて割れる。溜め息を吐けば話は大分進んでしまっていた。



「ざっと話したが、俺がお前につっかかんのは見返すためだ。
クソ親父の個性なんざ無くたって……いや……使わず一番になることで、奴を完全否定する。

……言わねぇならそれでいい。お前がオールマイトのなんであろうと、俺は右だけでお前の上へいく。時間取らせたな」



 轟はそうやって数歩歩いて、ふと立ち止まった。そして振り返り、「いおり」とだけ名前を呼ぶ、ようは早く来いとのことだろう、しかし。俺は轟を見てこう告げた。



『悪ぃ焦凍、少し緑谷と話がしてえ。すぐ行くから先行っててくれ』
「わかった」



 コクリと頷いた轟を見送り、呆然とする緑谷に『緑谷』と声を掛けて意識をこちらに持ってこさせたあと、轟が出ていった方向と逆の曲がり角に居るであろう人物にも声を掛けた。



『出てこいよ、爆豪』



.

18:ぜんざい◆A.:2016/11/22(火) 22:28 ID:ATI

※捏造アリ

そうしてゆっくりと姿を表した爆豪に緑谷は驚く。人一倍じゃすまない程の自尊心を持つ彼が、こうもあっさりと出てきてしまったのである。
 爆豪は俺をぎりぎりと睨み付け、「何でわかった」と地を這う様な声で聞いてきた。

『何でってそりゃあ、衣類の擦れる音とか、足音とか。まあ、確信を持ったのは焦凍が「母は俺の右側が醜いと煮え湯を浴びせた」ってところで安定していた呼吸のリズムが崩れたからだな』
「なにもんだお前……」
『ただのしがない不死者だ。俺の個性は発火政宗……とばかり思っていたが、まったく別のものだったんだ』
「え……どういうこと?」

俺の個性がまったく別のものだったと言うことを聞いて緑谷が疑問をぶつけてきた。ぶっちゃけ難しいからあまり前世のことボロを出さないようにしないと。

『俺の個性は、複合性だが発火政宗じゃねえ。……つってもこれ知ったのは昨日だけどな。どうも体に違和感があって、腕に力を込めりゃ、コレだ』

グッと力を込めれば肌に浮かび上がるマギアエレベア特有の紋様。それを見て二人は息を飲んだ。個性を再び見に行くために病院に行って個性検査を受ければ発火政宗ではないとはっきりと告げられたのだ。
 俺の個性はバリバリに前世から引き継いだ『マギアエレベア』『アーティファクト』のふたつ。マギアエレベアは魔法を使える。副作用は不老が抜けて不死のみのようだ。アーティファクトはこれまで記憶に残っているアーティファクトを自在に使えると言うもの。いつも使っていた刀、政宗は前世の俺のアーティファクト、『“発火政宗”』だったのだ。発火政宗は世界最高レアを誇り、機能性はほぼ桜咲刹那のシーカ・シシクシロと変わらないが、ひとつ違うところは刀種は太刀、炎を纏えて、術者自動防衛機能があるところ。前世や不老、桜咲刹那の名前を伏せて轟にはすでに誰よりも早く教えてある、俺の個性は不死の個性かつ超攻撃型のものだと説明すれば爆豪がにやりと笑って俺を指差した。

「やっぱり、てめえは俺が倒す」
『やってみな、無理だから。
まあ、本題は焦凍同様、俺の過去の話だ。知っておいてほしい』
「うん」
『まず、俺の先祖は伊達政宗だ』
「「!?」」
『今代の伊達家の次期当主として俺は幼い頃から真剣を握ってひたすら実践訓練をさせられていたんだ。焦凍のケースも酷いが、俺を厳しく、それこそ死にそうになるまで鍛えたのは父と母の二人。家に俺の味方は……まあ、爺さんしかいなかった。爺さんも忙しい人だから、あまり家にいなくてなぁ。
両親から「なぜこれが出来ない、当主は男しかなれないから男として生きろ、これを一日で終わらせろ」そんなことを言われ続けて、ナイフや包丁、爺さんが居ない事を良いことに爺さんの刀で俺を斬り付けてきた。あれは虐待だ』
「虐、待……」
『まあ待て、同情するなよ。それは、俺の家に支えている侍女から見た光景だ。実際問題、俺は訓練とか虐待なんて俺はへっちゃらだったのさ。この個性の不死は何をしても死なないし、どうやら痛みも空腹感も感じないらしくてな、だからって自分を無下にするわけにもいかない。
だってまだ10も行かない5歳の子供が勘当されて着の身着のまま外に放り出されて一人で生きろなんて俺には無理だ。だから俺は衣食住をもらう代わりに仕方なく訓練して適当に手を抜いて、怒鳴られれば返すのも面倒なバカしかいなかったから何も言わなかっただけだ。俺は別に血縁なんて爺さんだけでいいのさ。そう思ってたからなんだろうな、ヒーローだった母は俺が中学の時にヒーロー殺しに殺された』
「っ」
『復讐なんて考えてねえ。逆にヒーロー殺しに感謝してる。母がいなくなったお陰で父にも強く出れるようになったし、今じゃ俺を鍛えあげすぎて父は俺に実力で手も足も出ない。だから通用している、ここでな。別に後悔なんてしてねえし。でも。焦凍にゃ俺が必要だ、俺にもアイツが必要なんだ。だから、俺も焦凍にはまあ半分の力を出すつもりだ、お前らは俺に全力で来いよって忠告な』

そう言えば爆豪はチッと舌打ちして緑谷はグッと唇を噛み締めた。

『ふんじゃま、焦凍と多分外でまってっから、じゃな!』

俺は二人を置いて逃げるように瞬動で素早くその場を離れた。

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19:ぜんざい◆A.:2016/11/23(水) 11:53 ID:ATI


<あくまで体育祭! ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ! 本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん? ありゃ? どーしたA組!!?>

プレゼントマイクが驚くのも無理はない。A組の可愛らしい女の子達が全員チアの格好をチアァ!! って感じで着こなしておられるのだから。目が死んでる。ちなみに俺はその場に居なかったので着ずに男子に混じっている。

「峰田さん! 上鳴さん! 騙しましたわね!?」

八百万がこの原因の上鳴と峰田に怒鳴った。なんか八百万は峰田の策略に悉くハマってるな、可哀想に。だがしかし、葉隠がいいんじゃない!!? やったろ! とノリ気なのに感化されてまあいいか的な雰囲気になった。うん、よしよ「女子全員ならいおりもじゃね?」……し? バッと振り向けば耳郎が女子相手に俺もやるのが妥当だろうと提案していた。……ん? 女子が笑いながら俺に迫ってきたぞ。

「いおりさん! 耳郎さんの言う通りですわ! いおりさんもさあ!」
「やれよいおり! ウチらだけじゃ不公平だし!」
「耳郎ちゃんもこう言ってるしいおりちゃんもやろうよ!」
「やるよ伊達!」
「伊達くんやろうや!」
「そうね、妥当だわ」
『!!!!』
<おおっと伊達! A組女子から追われてるぞー!>

実況してんじゃねーよ! っていうかもしかしてプレゼントマイク俺が男だって思い込んでる!? 嘘だろ!? イレイザー……いや、相澤先生訂正してよ!ばたばたと走り回って轟に視線で助けを求めれば珍しく期待に満ちた目でこちらを見ていた。やれってか、やれってのか!? とか思ったらパキッと足が凍る。

『焦凍てんめえええええ!』
「確保ですわー!」

その後ガシッと八百万に腕を掴まれ、ずりずりと通路まで引き摺り込まれたのち、素早くサラシを外され、チア服に早着替え。あっと言う暇もなく表に引き出された。

<A組伊達ええええええ! なんと! チア姿で出てきたああああ! ってなんでチア姿あああ!?>
<アイツ女だしな>
<はああああ!? 俺アイツが男子制服着てるの見たぞ!?>
<特例で着用が認められている>
<シヴィー!>

シヴィー! じゃねーよ馬鹿野郎。泣く泣く着せられたチア服に遠い目をしていれば「久しぶりのメロンだな上鳴!」「そうだな峰田」と聞こえてきた。瞬間俺は指を鳴らして魔法特有に服を着替えた。もちろん体操服とサラシも巻いて。ブーイングが聞こえたが知らんわ。

レクリエーションのあとは最終種目、進出4チーム、総勢16名からなるトーナメント形式、一対一のガチバトルらしい。へー、ガチバトルか……マギアエレベアは死人が出そうだからアーティファクトで行くか。もちろんメインで使うアーティファクトは発火政宗だ。あとは天狗之隠蓑(忍者の隠れ身の術のなんでもver的な)とか、神珍鉄自在棍(孫悟空の如意棒的な)とか。
組み合わせはくじ引きで決めるらしい。そこで同じクラスの尾白猿夫とB組の庄田二連撃が騎馬戦中の記憶がまったく無いため棄権したいとミッドナイトに告げる。ミッドナイトは好み! と叫びながら棄権を許可した。おい。好みで決めるなよ。最初の対戦相手は発目……うーん、機械とかの売り込みされるよな……受けるか受けまいか。

「伊達ってあなたですよね?」
『ああ、俺が伊達だ』
「ひょーー! よかった実はですね……」
『わりーなぁ、今回俺は個性だけで行くつもりだから、君の発明品はつけらんねえよ』
「なんと! 思考を先回りされました! まあ良いでしょう、貴方はそういうと思いました、そう言うことなら適当に時間見て負けましょう!」
『あっはい(……そういうことじゃないんだよなぁ)』

そして始まった第一戦は緑谷VS心操。心操の個性は洗脳、自分の質問に答えればそれは発動する、が、結果勝ったのはそれを耐えた緑谷。見事な一本背負いだった。一方の俺はと言うと。

「んなっ! 離してください! 私のドッ可愛いベイビーを大企業にー!」
『15分も待ってらんねーなー』
<なんと伊達ー! バトルを避けて場外に連れていっているー! っていうか横抱きだああああ!>

開始早々にそのドッ可愛いベイビー(発明品)を使わせる前にひょいと横抱きにして場外に向かう。ばたばたと腕の中で暴れる発目だが諦めたのか大人しく場外になってくれた。
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20:ぜんざい◆A.:2016/11/23(水) 12:54 ID:ATI



<今回の体育祭両者トップクラスの成績!! まさしく両雄並び立ち今! 緑谷VS轟!! START!!!>



 始まった緑谷VS轟の試合。俺はこの試合展開を知っているからこそ、しっかり見ないといけないと直感で感じ取った。
 開始早々轟が右の氷結で緑谷に攻撃を仕掛ける、一方の緑谷は諸刃の剣と呼ばれる個性を使って右の中指を犠牲に氷を振り払った。そのお陰で爆風が巻き起こり、会場が一気に冷える。それと同じことを三回繰り返したのち、緑谷の右手は全滅。そこで轟が緑谷に向かって走り出した。



<轟、緑谷のパワーに怯むことなく近接へ!>


 轟は氷で上り坂の足場を作ったその瞬間緑谷が新たに左手で氷を吹き飛ばし、砕く。轟は砕かれた氷と煙幕の上から飛び上がり緑谷に向かって右手を降り下ろした。



「っぶな!」



 それを緑谷が飛んで避けたお陰で轟の右手は地面とこんにちはあらどうもする。轟はそのままぶあっと右手を上に振り上げた。パキパキとそこから延びる氷は横に飛んで回避した体勢のまま空中に居る緑谷へまっすぐに向かう。近距離だったので緑谷が捕まったかと思ったその時、再び大きな爆風が巻き起こった。轟はその爆風で飛ばされないよう背後に氷の壁を作ったのち、緑谷に言葉を投げる。



「……さっきよりずいぶん高威力だな、近付くなってか」
「ううう」



 さっきの爆風は緑谷の左腕から。指ではなく腕だ。見ていてとても痛々しいのだが、彼は降参する気は無いようで、もどかしくて唇を噛む。
 本当は俺がお前の炎はお前の物だって言いたかった。お前はエンデヴァーじゃないって言いたかった。でも俺にはレッテルが足りない、オールマイトに目をかけられると言うレッテルが。



<圧倒的に攻め続けた轟!!! トドメの氷結を……>
「どこ見てるんだ」



 轟がトドメをさす為に氷を出して彼に向かうとき、緑谷がようやくまともに口を開いた。彼は壊れた右手で再び個性を撃ってきたのだ。



「てめえ……なんでそこまで」
「……震えてるよ、轟くん」



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21:ぜんざい◆A.:2016/11/23(水) 13:07 ID:ATI



「個性だって身体能力の一部だ、君自身冷気に耐えられる限度があるはずなんだ。で、それって、左側の熱を使えば解決出来るもんじゃないのか……?
皆、本気でやってる! 勝って……目標に近付くために、一番になるために!! 半分の力で勝つ!? まだ僕は君に傷ひとつつけられちゃいないぞ! 【全力】で、かかってこい!!!!」
「なんのつもりだ……!!」



 そう叫んだ緑谷に俺は震撼した。確かに、半分の力で勝つ……これは相手を見下しているようなものだ。誰だって見下されるのは嫌だ、俺も嫌だ。なら、俺は轟すら今まで見下していたのか? ずっと?

 ……それは勘弁願いたいな。

 となると、マギアエレベア……解禁か? ……死ぬ可能性、を考慮して、出来るだけ死なないように出力を調整して、それで……。そこまで考えていたら、会場から爆発が起こった。
 大方散々冷やされた空気が熱によって膨張したんだろう。今ちょうど相澤先生もそういったし。
 結果、緑谷は場外、会場で立っていたのは左上半身の服が破れている轟だった。



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22:ぜんざい◆A.:2016/11/23(水) 17:44 ID:ATI



 次の試合は爆豪VS切島だ。次のVS轟戦まで時間がある。少し外の空気が吸いたかったから外へ出ていたので、今は中に戻る通路を歩いていた。



『……【雷天】の大壮か双壮か【氷の女王】か【炎の帝王】か……どれかだな、使うなら』



 俺の個性はひとえに『魔法』と言うことで病院にも学校にも届けを既に出してある。アーティファクトは使うとして、上記のマギアエレベアを使えば、会場が消し飛ぶ事は確実、冷静に選ばねば。でも、この世に生を受けて全力なんて出したことがないから、どの程度が全力なのか分かんないな。
 曲がり角を曲がればばったりと出会ったエンデヴァーさんに「おい」と肩を掴まれた。ん? ビックリした。



『っくりしたぁ……どうしたんですか、エンデヴァーさん』
「お前、焦凍の言っていた伊達だな」
『うぃっす』



 身長たけーなーなんて思いながら彼を見上げれば「伊達」と名前を呼ばれる。



『なんですか』
「……焦凍を、頼むぞ」



 そういって去っていくエンデヴァーさんに俺キョトーン。その背に向かって『言われんでもやるつもりですよ』と告げて試合会場に足を踏み入れた。



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23:ぜんざい◆A.:2016/11/23(水) 18:28 ID:ATI


<準決! さくさくいくぜ! お互いヒーロー家出身のエリート対決だ! コイツの実力はまだ計れない! 伊達いおりVS今まで圧倒的強さで勝ってきた轟焦凍!!>
『今回は、やる気出す』
「っ!」
<START!>



 その瞬間俺に向かって氷が向かってくる。俺は素早く刀を抜いて氷を切り裂いた。



『攻撃が単調だな焦凍』
「っ、うるせえ」
『こえーこえー』
<なんと伊達ーー! 轟の氷を二つに切り裂いたああああ! マジあいつの個性何!?>
<アイツの個性は『魔法』だ>
<なんだってーーー!? なら伊達ってば魔法使い!? すげー!>



 攻撃を避け、時に切り裂きつつ口を動かしていく。



『我に従え氷の女王! 来れ!ーとしこえのやみ!』
「やべっ」
<伊達!? なんだそりゃ呪文か!?>
『えいえんのひょうが!!!』



 パキィンと凍るフィールド。轟は感じとったのか上へ飛び上がった。回避されたのか、恐ろしく勘の鋭いやつめ。だが、右腕を解放(エーミッタム)してスタグネット、コンプレクシオーすれば、俺は淡く水色に光りながら腕を組んだ。



『今のこの氷のフィールドは俺の手足だ。上級魔法以下は呪文なしにぶっぱ』
「そんなことしたら体力がもたねえ」
『わりーな、俺は常時マギアエレベア化してる、その特典の体力増幅のお陰で気にせず出来る』
「チートかよてめえ……」
<伊達ってばチートだったーーー!>
<高性能だな……>



 だが、轟は左を使う気が無いようで、俺は指を鳴らして氷を全て消した。



「なっ」
『今回はやっぱり剣でいくわ』



 キィンと音を立てて突き刺さる発火政宗を掴み瞬動で接近戦に持ち込む。轟は氷を繊細に使うも発火政宗がバターの様に切り進めていく。発火政宗は何でも出来る。そう思っていたからかグッと刀が動かなくなる。見れば刀身が氷と共に地面に縫い付けられていた。
 そこでガッと顔面を殴られた。



『ってえ』
「そんなもん思ってねーだろ」
『ピンポーン、そんじゃ行け!』



 シーカ・シシクシロ発動。小刀が轟へひゅんひゅんと飛んでいき、彼の肩の服に突き刺さって場外の壁にぶち当たった。



「っぐ」
『切れてねえかー?』
<息つく暇もねえ攻防戦を制したのは伊達! 伊達チートかよ! 伊達が決勝戦進出だーーー!>



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24:ぜんざい◆A.:2016/11/27(日) 22:59 ID:ATI



 通路にて。轟は俺に「手加減したのか」と聞いてきた。氷のことを言っているのだろう、俺は苦笑いして轟の頭を撫でた。



『ちげーよ。俺の個性が魔法だって分かったのはつい昨日だ。つい昨日分かったソレと、今まで積み重ね鍛練してきた刀と、どっちが強いと思ってんだ。俺なりの全力は刀だよ。だってお前つえーもん』



 そう言えば轟は微笑みながら「そうか」と呟いた。ちょっとうちの焦凍が天使過ぎて鼻血出そうなんですけど。それを堪えて手をおろして思う。轟は笑ってる方が良い。緑谷との戦いで左の炎を使った、その時その一瞬、お父さんの事を忘れて使った事を悩んでいる。いろんな悩みを、漠然と母の事をおいて自分だけ解決して良いとは思っていないから先程まで暗い顔をしていた。コイツには、そんな顔似合わないんだ。



『焦凍に暗い顔は似合わねー。俺は焦凍が笑ってくれたら、それでいい』
「……お前、よくそんな恥ずかしいこと軽々と言えるな」
『俺そんなこと軽々と言わねーよ。焦凍以外には言わない。それだけお前は俺の“大切”なんだ』
「……俺も、お前は大切だ」



 そういって少し照れ臭そうに笑う轟に本日二度目、鼻血が出そうになった。それすらも耐えて、『次の爆豪との決勝、俺はアーティファクトを使う』と轟に告げた。



「……アーティ、ファクト?」
『そう、アーティファクト。俺は、個性を自覚したお陰で個性の特性か何かか、前世を思い出したんだ。そして記憶にあるアーティファクトを全て使用できる。別に頭がアイタタな訳じゃないぞ』
「そう信じとく」
『おう。俺の発火政宗もそれに属してる。アーティファクトにはアーティファクトカードっつーもんがあってな。簡単に言えば主従契約で、自分が主とするものと仮契約をすればアーティファクトカードが手に入る。これをパクティオーと言うんだ』



 俺はピッ、とカードを轟に見せる。轟は「おお」と燕尾服を身に纏い、俺がにやりと笑って発火政宗をつき出している絵を見て嘆息する。確かに、絵は綺麗だ。ありがとう契約の精霊さん。



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25:ぜんざい◆A.:2016/11/27(日) 23:15 ID:ATI


 轟が「お前が仮契約したのはいつで、相手は誰なんだ」と聞いてきた。



『俺が仮契約したのは前世が17歳の時で、当時の主は10歳の男の子だな』
「七歳下!?」
『そう。でもその子、10歳でハーバード大学出て、女子中学校の英語教師やってた。しかもイギリス人でイケメン。そんでもって天才魔法使い』
「すげえな」
『そうだろ? なにぶんモテる子だったよ……自分のクラスのほとんどの生徒から告白されたりな。とりあえずその子たち31人、居て一人を除いて全員とパクティオーしてた』



 轟が「30人と契約か……いや、いおりも入れるから31人? 話を聞いてりゃもっとしてそう」とか呟いている。とりあえず、その子全員後輩で仲良しだと言うことは伝えた。



『クラスの中には火星の亡国のお姫様、金星のお姫様、重工の娘、財閥の次女、名家の一人娘、半魔族、ロボット、未来人なんてのもいた。あと俺が一番仲が良かったのは15年間中学三年生を続けないといけない呪いをその10歳の少年のお父さんに掛けられた300年を生きる吸血鬼の巨悪の大魔法使いちゃん』
「お前の友人ビックリ人間ばっかだな。なんだよ未来人って……」
『未来人が天才でねー、その未来人は子供先生の子孫で未来でタイムマシン作って先祖のいる時間に遡ってきたらしい』
「吸血鬼……」
『中世ヨーロッパ生まれで、始まりの魔法使いなるものに不老不死にされたんだよ、10歳の誕生日の時に』
「むごいな……」
『いや、そうでもない。あの子は子供先生に『師匠(マスター)』って慕われて満更でも無さそうだったから。俺も一応弟子の部類』
「コイツ……」



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26:ぜんざい◆A.:2016/11/27(日) 23:38 ID:ATI



 轟は呆れた顔で溜め息を吐くと、「仮契約のやり方は?」と聞いてきた。それにたいして俺は言いにくそうに言い淀む。



「……そんなに難しいことなのか……?」



 心配そうに顔を覗き込んでくる轟に「違う……違うんだ……」と首を振る。



『仮契約自体すごく簡単なんだ……! 仮契約用の陣の上で特定の行為をすればいいだけ……!』



 轟は「なんだそんなに簡単なのか」とふっと微笑む。が、これ結構大事……!



「その特定の行為ってなんだ?」
『……聞くの? それ聞いちゃう?』
「嫌なのか……?」
『違う! 言う前にひとつ誤解しないでくれよ!? 別に、俺はそんなこと軽々しくする奴じゃないから! 人生かかってたからしたんだ! そこ分かって!』
「お、おう」



 俺は轟の肩をガッと掴むとそう言い切った。別に俺は自分から望んでそんなことしたんじゃないよ!? 学園祭でオコジョにされないためにしたんだよ! 俺は轟から手を退けて口を開く。



『その特定の行為とは……その、あれだ……』
「さっさと言え」
『ういっす……キスです』



 それを言った瞬間轟の顔がきょとんとした。そのあと、眉間に皺を寄せて、今度は俺の肩を掴んでくる。



「わりぃ。もう一度言ってくれ」
『キス、口付け、口吸い、接吻、ディーp「も、もういい分かった」俺はしたくてした訳じゃない! 緊急自体だったんだ!』
「そこは理解してる。その少年は……生徒とそう言うことをしてたのか……?」
『どれもこれも命懸かってたからなあ』
「どんな戦いしてきたんだ……」
『あの巨悪吸血鬼と戦ったり、京都救ったり、学園都市救ったり……仕舞いには世界を救ったり』
「……英雄か」
『主にネギ君が』
「ネギ……?」
『先生のことさ。まあ、キスはまだマシな方だな』
「まだ何かあるのか!?」
『主に被害者はネギ君だけどな。過激なクラスメイトがネギ君とキスしようと襲ったり女専用の大浴場にネギ君がクラスメイトに引きずり込まれて体を隅々まで洗われたり、服を剥かれたり女装させられたりぶん殴られたり』
「……聞いてると、ネギってやつの方が可哀想だな」
『だろ? 世界救った戦いじゃ胸を貫かれたり右腕が飛んだり一回死にかけたり首が飛んだり腹を貫かれたりマグマに沈んだり。結局師匠と同じ魔法を覚えて不死身の吸血鬼になって敵を倒したけどな。俺もそれを覚えたから、不死なんだ。覚えるときに死にかけた……起きたら体ぼろぼろだったんだ』
「……頑張ったんだな…」
『いおりさん頑張ったよ……』



 遠い目をして轟を見つめる。轟は口をもごもごしたあと、「お前はそのパクティオーの陣が書けるのか」と聞かれ、是と答えた。轟はそれに少しほんの少し、もしかしたら気のせいかもしれない嬉々とした表情を見せ、その後こう言った。



「今度お母さんのとこにいく。……着いてきてくれ」



 と。それに俺は素早くこくこく頷き、爆豪との決勝の時間になったので、俺はその場を去った。

 俺が完全に去ったあと。轟が「いつかお前とパクティオー出来ればな」と少しばかり微笑み、呟いていたことを俺は知らない。



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27:ぜんざい◆A.:2016/11/28(月) 18:05 ID:DwQ


「さあいよいよラスト! 雄英一年の頂点がいよいよ決まる! 決勝戦、伊達VS爆豪!!! 今、スタート!」



 スタート! 共に出現させた発火政宗の能力、複数の太刀が炎を纏いながら爆豪に襲わせた。プレゼントマイクが優勝者決定か!? とか叫んでるけどそんなわけがない。爆豪はこんな攻撃で終わるわけないのだ。
 白煙の中、爆豪は右手を爆破させて空気を吹き飛ばし、姿を表す。そのまま勢いに乗って飛び込んでくる爆豪に先程攻撃させた刀を爆豪に向けようとしたのだが、やってこない。どうやら熱で溶かされたようだ。
 爆豪はそのまま爆破で空を飛び、俺の髪と腕を掴んで「ナメッてんのかバァアアカ!」と怒鳴りながら俺を投げ飛ばした。宙に放り出された俺は少しばかり焦る。すぐ後ろは場外。俺は顔をしかめながらハマノツルギを一瞬で取り出し、地面につきたてて回避する。
 そのまま飛び掛かってきた爆豪を足で蹴り上げ、桜華崩拳を食らわせる。



<だぁてぇえええええ! なんださっきの! 中国拳法か!?>
<そうだろうな……>
<爆豪は場外アウトかあああ!?>



 吹き飛ぶ爆豪はげほ、と席を繰り返し、爆破で場外アウトを防ぐ。すると爆豪はいきなり俺に怒鳴り出した。



「てめえ男女! 虚仮にすんのも大概にしろよ! ぶっ殺すぞ! 俺がとんのは完膚無きまでの一位なんだよ! 舐めプのクソカスに勝っても取れねんだよ! デクより上行かねぇと意味ねぇんだよ! 使ってこいよあの一面氷にした魔法ってぇの! 本気出せ!」
『はあ!? バッカかてめー付け焼き刃の魔法よかこっちのほうがつえーからこれが俺の本気だボケ! クソボケ!』
<爆豪の怒鳴りに言い返した伊達! 暴言が吹き荒れてるぜ!>
「なら使えやあのマギアエレベアってやつを! 俺はあれを倒す!」
『るっせえ! アーティファクトも強いんだぞ! マギアエレベアは危険なの! わかる!?』
「使えや!」




 爆豪の叫びに俺は顔をしかめ、観客席を見れば轟がぐっと親指を立てていた。あーもう、しゃーねーな!



『両腕解放(エーミッタム)! 固定(スタグネット)! 掌握(コンプレクシオー)!』



 俺が爆豪の攻撃を避けながら両手のひらの渦を握り潰す。バチン! と言う音と共に俺の体は白銀に光り、髪が後ろ伸びる。



『術式兵装(プロ・アルマティオーネ)【雷天双壮】!』
「それだそれぇ……! 最初っからそれ出しとけ!」




 不意を取られて俺は爆豪に目の前で爆発されてしまう。爆豪は「ふぅー……」と爆煙を睨み付けるもなかなか俺が出てこないからか首をかしげたところをバシンと現れた俺は『チェックメイトな』と小さく呟き、巨神ころしを発動させて爆豪に振りかぶった。だが爆豪は恐るべき反応速度で上に飛び上がり、ぐるぐる宙で回転して榴弾砲着弾(ハウザー・インパクト)を食らわせてきた。



<麗日戦で見せた特大火力に勢いと回転を加えまさに人間手榴弾! 伊達はどうなってる!?>



 俺は爆豪の背後に回っていた。そのまま肘を落とし、打たずじまいだった巨神ころしを放った。瞬間、どごおおおん! と地面は大破。そう、地面は。直撃は、イコールで死に直結する。俺は苦い顔をしながらこちらを睨んでくる爆豪を睨んだ。その途端、俺は先程の榴弾砲着弾(ハウザー・インパクト)を食らい、防御する暇もなく吹き飛ばされた。背中がガンっと壁にぶつかり、ゴキキッ、と両肩が外れ、背骨が幾つかやられた。流石にこれはもう駄目だ、ダメージがでかすぎる。下がってくる瞼にあらがわず、俺は目を伏せて気絶した。


**


「……は? は? オイッ、ふ……ふざけんなよ!! こんなの!! こんっ……」



 爆豪がいおりに掴みかかり、ミッドナイトの眠り香により眠らされ、いおりは場外、爆豪の優勝となった。



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28:ぜんざい◆A.:2016/12/04(日) 10:45 ID:Viw


 入賞式にて。爆豪が拘束されて俺と轟に怒鳴り散らしていたこと以外、特に問題も起きず無事終わった。
 飯田のお兄さんはステインに既にやられたようで、時が早まったのか知らないが飯田は障害物レースの時に向かっていたらしい。
 そして、帰宅。



『……』



 ……どういうことだ。革靴が一足、下駄ひとつ。……勝手に入ったのか、あいつら。
 薄々わかっていた。伊達家は『政宗』の個性があるからこそ伊達で、それが無くなれば後世に政宗が残ることはない。伊達家は俺の代で終わりと言うことだ。そして、父さんと爺さんが今日俺の家に来たのは、それを防ぐため。



『……俺が帰ってくるまで待てなかったのか』
「待つ必要は無い」



 俺が鞄をどさっとソファの横におき、即答した父を見下ろす。爺さんは、相変わらず個性のお陰でとても若々しく、どっからどう見ても美しいただの青年だ。ただ、着ている服は着物と古くさい。顔に合わないなあ。
 二人で並んで机を挟んで向かいのソファに腰を掛けて俺を見ていることから、正面の椅子に座れと言うことだろう。爺さんのにこにことした笑顔が、とても場違いな気がした。
 父が口を開く。



「俺たちがここにいる理由はわかっているな?」
『まあ、薄々……』
「察しがついてるなら良い。今日にて、『伊達 いおり』、勘当だ。今後二度と家の敷居を跨ぐな」
『構わねえ、でも理由を聞かせろ』
「決まっているだろ、お前の個性は『魔法』、『発火政宗』及び『政宗』ではなかったからだ」



 発火政宗は今でも使えるが、魔法を不純物と見られているらしい。俺はため息を吐いて、「わかった」と告げる。
 だが、そこで爺さんが口を開いた。のんびりとした口調で、でも威圧感は普段よりキツい。



「……はて政光。今日しに来た話はそんなものだったかな?」
「何をいきなり。元々いおりに勘当を告げに来たんだろう」
「……そうだったかな? 勘当?」
「いおりの個性が政宗ではなかったからだ」
「ふむ……」



 綺麗な美しい笑顔でほけほけと首をかしげる爺さんに、俺は目を微かに見開く。爺さんは「そうか、なら」と形の良い唇から、次は飛んでもねえ言葉が出てきた。



「なら俺も勘当だな」



 は?
 父さん……ともう呼べない、伊達政光も俺と同じような顔をしている。
 なんで爺さんまで勘当なんだ。なぜ、爺さんまで。



『爺さん……?』
「はっはっは。まあ、理由はあれだ。俺の個性も『政宗』ではないからな。いや、それもあるが、もっと別物だ」



 鋭い瞳の奥の三日月が怪しく揺らめき、「俺の個性は『三日月宗近』だからな」と平然と言ってのけられた。三日月宗近……それは、爺さんの刀の名前じゃなかったか。それは天下五剣の一振りで、もっとも美しいと称される刀。それが、爺さんの、伊達 三日月個性。



「俺には、前世の記憶があるのだ。刀として人に握られ、人を斬っていた記憶が。もちろん俺を握る人間はコロコロ変わるから、いちいち覚えとらんがな」
『……俺も、前世の記憶ある』
「なら俺の前世を見る個性が残っておったのだな、はっはっは」



 そう豪快に笑う爺さんに、政光は唖然。爺さんが再び「勘当でよいのだな」と聞けば父は気を取り直して「例え父さんでも政宗でないのなら」と爺さんにも勘当を告げる。普通立場逆じゃね? とも思わなんだが、まあ良いか。

 爺さんは結局荷物を持って俺が住んでいる家に引っ越してきた。



「こうしてみると広いんだなあ」
『爺さん、俺が学校にいってる間一人で大丈夫か?』
「……気にするな、大丈夫だ!」
『不安だな……』
「とりあえず、太刀掛けはどこかな? 俺を掛けたい」
『とりあえず刀部屋行こう。そっちだから』
「そう言えばお前にいろいろと俺は刀をやっていたな」
『太刀ばっかな』
「なんだったか、鶴丸と、燭台切と」
『あとは明石国行と獅子王』
「そうだったな、はっはっは」




 大丈夫かな、この爺さん。一時期ヒーローやってたとか聞いたことあるけど。爺さんは「学校を楽しみにしていれば良い」と微笑んでいた。



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29:ぜんざい◆A.:2016/12/04(日) 11:50 ID:Viw

「超声かけられたよ来る途中!」
「私もジロジロ見られてなんか恥ずかしかった!」
「俺も!」
「俺なんかいきなりドンマイコールされたぜ」
「ドンマイ」
「たった一日で一気に注目の的になっちまったよ」
「すげえな雄英」

教室のそんなざわめきは、相澤先生が「おはよう」と言いながら教室に入ってきたことにより止まる。相澤先生のUSJの時の怪我の包帯が取れていたことにみんなで安堵し、このあとはヒーローネームを決めるんだったなと既に出来上がっているそれを頭に浮かべた。だがしかし、それはとある言葉によりぶち壊される。

「ヒーロー情報学は、って行きてぇところだが、このクラスは無茶をするっつって校長がこのクラスにだけ副担任をつけてくれた。……入ってきてください」

……副担任? そんなの原作にはなくて……って体育祭で俺が轟負かして二位になってるときから原作とちってるよな。まあ、何が来ても驚きませんよええはい。がらりと開いた扉から入ってきたのは、平安の着物に腰に刀を差している、なんとも美しい男。瞳には三日月が輝いており、端正な顔立ちをしている。濃い紺色の髪は柔らかそうで、とても爺さんに___

「伊達 三日月、ヒーローネームは『三日月宗近』。11世紀の末に刀として生まれ、今世にて前世の記憶を持ちながらそういう個性を授かった。よろしく頼む」

朗らかにぽけぽけと笑う爺さんに俺はがたりと席をたち、『爺さん!?』と目をかっぴらいた。一応面識のある轟も呆然だ。みんなが「え、爺さん?」「若いよね?」などと話し合っているのを爺さんは聞き逃さず、後付けを説明する。

「精神的に歳はもう1000を越えている。個性の影響でずっと昔から成長が止まり、見目は若いがそこに居る『伊達 いおり』の祖父だ。要するに、じじいさ」

見た目に似合わずはっはっはと笑う爺さんに、教室は驚愕の悲鳴で満杯だ。相澤先生は気にする風もなく、「今日のヒーロー情報学はちょっと特別だぞ」と告げる。みんなはシーン! としながら小テストか? やめてくれよー等頭を内心で抱えている。が、「コードネーム、ヒーロー名の考案だ」と言う言葉にいっせいに「胸膨らむやつ来たああああ!」と席を立ち腕を振り上げた。プロからのドラフト指名があるらしくそれを集計して発表される。

「例年はもっとバラけるんだが、三人に注目が偏った」

俺は4589とトップ。二位は轟、三位は爆豪。

「二位と三位逆転してんじゃん」
「表彰台で拘束された奴とかビビるもんな」
「ビビッてんじゃねーよプロが!!!」

相澤先生はこれを踏まえて指名の有無関係無く所謂職場体験ってのに行くらしい。俺たちは先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練しようぜ! ってことらしい。なるほどそれでヒーロー名か。

「まあ仮ではあるが適当なもんは」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!!! このときの名が!! 世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!!」

そういってやって来たのは18禁ヒーローのミッドナイト。どうやら彼女がネームを査定するらしい。へえ。

「将来自分がどうなるのか、名をつけることでイメージが固まりそこに近づいていく。それが名は体を表すって事だ。オールマイトとかな」

それから15分後、出来たら発表してね! と発表形式だと教えられて率先して青山が告げた。

「輝きヒーロー“I can not stop twinlink”(キラキラが止められないよ☆)」
「短文!!!」

その後に芦戸がエイリアンクイーンとか持ってきたから大喜利っぽい空気になってしまった。その後に娃吹がフロッピーとまともなものを出してくれたので空気は和んだ。そのあとも切島が『剛健ヒーロー 烈怒頼雄斗(レッドライオット)』、耳郎が『ヒアヒーロー イヤホン=ジャック』、障子が『触手ヒーロー テンタコル』、瀬呂が『テーピンヒーロー セロファン』、尾白が『武闘ヒーロー テイルマン』砂藤が『甘味ヒーロー シュガーマン』、芦戸が『pinky』、上鳴が『スタンガンヒーロー チャージズマ』、葉隠が『ステルスヒーロー インビジブルガール』とか。八百万が『万物ヒーロー クリエティ』、轟が『ショート』、常闇が『漆黒ヒーロー ツクヨミ』、峰田が『グレープジュース』、口田が『アニマ』、爆豪『爆殺王』。爆豪に関しては「それはやめた方が良いわね」と止められていた。麗日が『ウラビティ』としゃれてる。

30:マメツキ◆A.:2017/07/29(土) 18:36 ID:kco

新しい連載。フレデリ・トリガーの時前透転生。みんなと過ごした記憶持ち。環境は幼少期から。みんなは居ない。居るのは葵ちゃんとシルヴィア、アヴァタールだけ。

**

 物心つけば俺は人体実験の実験体だった。個性は『雷光の王様』。前世のみんなといた世界のトリガーとシルヴィア、アヴァタールを混ぜたようなものだった、もちろん、不死の副作用も含めて。父親の顔は見たこともない顔だった、弟も居なかった、その世界の母は既に実験体の用済みと化していた。でもやってることは雀佐のクローンである俺の父と同じ。
 でも今回は違った。シルヴィア、アヴァタールが俺のそばにいた。前世と同じ、子供の頃は孤独じゃない。
 この世界にはヒーローなるものがいるらしい。シルヴィア、アヴァタールが通報して俺は保護された。少しだけ憧れた。もう少し早く助けに来いとか、そんなことは思わない。前世に比べ、こんなにも早く助けてくれただけ大金星だ。
 既に額と頬と首に一つずつ切り傷のあと、左肘のでかい縫い痕、腹に穴の空いた痕、左肩の消えない火傷。背中の大きな傷痕。もう絶対に消えない傷だ。俺の副作用の不死は傷は治るが傷痕だけは絶対に残る。例え髪の毛一本血液一滴になっても、再生する俺の体。それが不気味で相変わらず気持ち悪くて、あいつらはいなくて。それが怖くて俺は孤児院でもシルヴィア、アヴァタールの部具を抱えていた。塞ぎ込んだ俺の前に、小学校で再びあいつに会ったのだ。
 傷だらけで目付きも悪かった俺を遠巻きにしていると言う噂を聞いた、あいつが。



「……透くん?」



 木陰でシルヴィアとアヴァタールを呼び出して涼んでいたところで、緑の髪に、バンダナに、幼い顔をした、前の世界でずっと一緒に居た『柿沢 葵』が。



「は……葵……?」



 ポカンとする俺に、葵は泣きそうな顔で「そうだよ」と呟き、俺に飛び付く。前世と変わらないその香りに涙が滲む。シルヴィアはもうだーだーと目から涙を流し、アヴァタールは震えながら顔を背けた。



「とお、透、透くん……っ!」
「……あおい、」



 涙が溢れてきて、誤魔化すように抱き締める。

 そのあと俺は前世と変わらない葵の父親に引き取られるも、戸籍は時前のまま。俺と葵が駄々を捏ねた。兄弟になると、一緒になれないから。



.

31:マメツキ◆A.:2017/07/29(土) 19:15 ID:kco


 それから月日が経って中学三年、進路を決める時が来た。



「葵、お前どうする?」
「透くんと同じ一般校の普通科だよ」
「そうか……」



 行きてこの方、ヒーローに憧れはしたが、なりたいとは思わなかった。この体を見て遠巻きにしていた奴等も、俺の事情を知って仲良くしてくれたし、これといって不満もない。
 それに、この体じゃ嫌われるだろ。ヒーローらしさの欠片もねぇ。葵も、自分の行きたいところに行けばいいのに。そういうと「行きたいところは特にないよ。それに、透くんが居ないと、私はもうダメだから」と笑う。相変わらずこの依存関係は今世でも続いている。
 そんなときだった、俺たち二人が先生に呼び出されたのは。



「時前、柿沢! 雄英高校の先生がおいでだ」



 席から立ち上がるとシルヴィアが俺の肩に体重を預け、俺と葵はそのままざわめく教室を横断し、先生に連れられ来客室へと通された。
 訳がわからん。どうして俺たちが。



「今年から、雄英にスカウト制度が出来たのさ。そして僕たち雄英は、君たちの能力を見込んでスカウトしたい」



 ネズミの雄英高校の校長がそういった。合点が行った。幼い時の俺の個性、葵の個性の威力。これが敵に回ると厄介だからヒーローとして育ててしまおうと言うものだろうか。
 俺と葵は顔を見合わせ、再び校長先生と、相澤先生、管先生を見る。



「私は別に構いません。この能力が役に立つのなら」
「俺も。俺なんかが人を助けられるのなら。あと、コイツらの躾もしたいです」
「躾ってなぁにィ!? 俺たちゃあ犬か何かァ!?」
「違うでしょ!? 透違うよね!? 世界一可愛くて可憐で美形で美しい私が犬!? 違うでしょ! 私たちは!」
「「透の召し使いか奴隷!」」
「ちげぇだろ。お前らちょっと黙ってような、時間の無駄だから」



 ぺいっと来客室から放り出し、再び席につく。扉をどんどん叩いてぎゃーぎゃー騒ぐのを先生方に「いつものことなので気にしないでください」と告げ、話を続ける。



「俺たちの、絶対に死なない体を有効活用できるみたいなので。俺たちはスカウトを受けます」



 そうして雄英への入学が決まった10月だった。



.

32:マメツキ◆A.:2017/07/29(土) 19:54 ID:kco



 雄英入学当日。俺達二人は入試を受ける必要がなくなったので後半はとても楽に過ごせた。重圧みたいなのが無くなったからかな。
 クラスは葵と別れ、俺はA組、葵はB組。俺は腰に太刀となったアヴァタールを連れて、バリアフリーなのか、なんなのか。やけにでかい扉を押し開けて中に入った。中には大半の人数が揃っていて、俺は人目を避けるように、みんなの列からひとつ飛び抜けたところにある一番後ろの席に座る。
 見えるような傷、例えば額、頬、首、手の甲等、あと目元の酷い隈はファンデーションを塗って隠した。目立つことはそんなにないだろう。
 俺はがたりと席についたあと、机に突っ伏して寝る体制へと入ったのだった。


**

 現在、グラウンドにて。あれから。やって来た担任の相澤先生に体操服を渡された。どうやら個性把握テストを行うらしい。入学式もガイダンスもしないとは。そうとう無駄が嫌いらしい。

 最初のハンドボール投げはデモンストレーションとして爆破の個性を持つ爆豪ってやつが705,2mを叩き出した。それを見た周りの奴等が「面白そう」とか言い出すから。どうやら相澤先生の琴線に触れたらしい。トータル成績最下位の生徒は除籍処分にするそうだ。お前もな、とアイコンタクトを送られたのでスカウトの俺もらしい。こくりとうなずいた。

 彼いわく、雄英はこのような試練をたくさんぶつけてくるらしい。それをPlus Ultra精神で乗り越えろとのこと。

 第一種目、50m走。個性がエンジンの奴が3秒代を叩きだし、俺も流石に目を剥いた。宗二や星奈、暁でもギリギリ4秒代だ、すげえ。俺は普通に七秒と八秒をふらふら。まぁ今回はトリガーというか個性が使えるから、もっと行くだろう。

 俺の番になったとき、俺は腰に差していた刀を雑に地面に放り投げ、多分これでは飛んでくるだろうと予測し、相澤先生に借りたロープで木にくくりつける。周囲の目など気にしていられない。
 いざスタート位置についたとたん、刀がアヴァタールに変化し、「縛られてる俺もしかして縛られてる!? くそ口が届かねえ!」と騒いでいた。対策よし。
 スタートの合図で筋肉に電気信号を送り、スピードを速めた。結果は4秒後半。もっと実験が必要か。
 第二種目、握力。平均67kg。まあまあ。
 第三種目、立ち幅跳び。空を飛べるアヴァタールに乗って記録更新。
 第四種目、反復横跳び。記録普通。
 第五種目、ボール投げ、電気信号以下略。指おれてたやついたけど記録すごかった。隣の金髪がすげえ顔して驚いてソイツにつかみかかってたけど相澤先生に止められてた。相澤先生見てる間だけ個性を消せる個性なのにドライアイとかもったいない。

 結果は俺は中位。まぁ除籍が嘘だっただけマシか。



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33:マメツキ◆A.:2017/07/30(日) 00:50 ID:kco



 個性把握テストも終了。解散と言うことで制服姿のまま校門で葵を待つ。
 しばらくしてからたたたと見た目より俊敏な動きでこちらに来たのであまり待たなかった。



「遅くなってごめんね、帰ろっか」
「ん」
「透くんとこのクラス、入学式いなかったけど、どうしたの?」
「……個性把握テストしてた」
「A組は授業進度速度が早いね」
「……そうだな。葵、今日の昼飯、なに?」
「スープパイじゃないかな? お父さん、今朝は張り切ってたからね」



 スープパイと聞いて、あまり動かない表情筋が綻ぶのを感じる。前世と同じくカフェを営む葵の家の二階に日常的な私生活の部屋が並んでいる、俺はそこの空き部屋の一室を頂いている訳だが、葵の父の作る料理は絶品だ。それこそ前世の愁弥さんに勝るとも劣らない。俺は特にスープパイが好きだ。前世で食べた味と、全く変わらない。



「透くん、お父さんの作るスープパイ好きだよね」
「……葵の父さんの作る料理はうまいけど、あれは群を抜いてうまい。……俺は好きだ、あれ」
「ふふふ、アヴァくんに取られないようにしないとね」
「……別に。盗ったら殺すだけだ」



 くすくす笑ったあとに物騒だねぇ。と呟く葵からふいと目を逸らし、B組はどうだったとか、友達は出来たのかとか、そんな他愛のない会話をして俺たちは下校した。

**

 翌日。今日から通常授業が開始される。午前は必修科目、英語等の普通の授業。プレゼント・マイクが英語の授業をやるのだからもっとやかましいのかと思っていたが、声がでかいだけで普通だった。シルヴィアがつまんなーいとか言ってたが知らない。
 昼は葵と共に、大食堂へと行ったのだが、いい匂いがするだけあって、人がとても混雑していた。どうやらクックヒーロー“ランチラッシュ”の一流の料理を安価で食べられるらしい。そりゃあ人も来るだろう。



「どうしよっか、透くん」
「……葵は大食堂行きたいか?」
「……どうだろう? よくわからないんだけどね、お父さんのと食べ比べはしてみたいとは思うなぁ」
「……行くか」
「うん!」



 ランチラッシュ、腕は最高だった。しかし、どうしても葵の父さんの料理の方がいいと考えてしまう。葵は俺を見て少し満足げだった。

 午後はヒーロー基礎学。どうしてもみんながそわそわしてしまうのはオールマイトが間近で見れるからか。俺はそこまでオールマイトに憧れは抱いていない。こんなの聞いたらファン怒るかもしれないけど、ただのおっさんだろあれ。
 オールマイトは「わーたーしーがー普通にドアから来た!」と怒鳴りながら教室に入ってくるもんだからシルヴィアが「デ、デタアアアアア」と叫んだ。直ぐ様殴って鎮圧したけど。
 最初のヒーロー基礎学、内容は戦闘訓練らしい。思わずうずっと体が揺れたのは前世からの病気だ。治していかないと。そしてそれに伴って支給されるのが、入学前に渡された要望を取り入れた、戦闘コスチューム。

 俺の場合、ほとんどをシルヴィアとアヴァタールに決められたが。オレンジのスカーフ、シルヴィアのようなノースリーブのワイシャツ、そしてカーゴパンツに膝丈ブーツ。白い手袋。アヴァタールを提げる用の刀の紐に、キーホルダー大にまで小さくなったシルヴィアの鎌を所持するためのピアス。
 ちなみに、二人の服装は出会った時から七王のものではなかった。アヴァタールは“七つの大罪”部隊に居たときの軍服、シルヴィアはノースリーブのシャツにロンググローブ、短パン、白と黒の縞模様のニーハイソックスにヒールの高い靴。このロリ巨乳め。

 俺がそれを着て外に出ようとしたら、シルヴィアから雷の王の証のあるあのコートをばさりと渡された、シルヴィアのようなノースリーブのコートではなく、普通に袖のある、雷の王の証のあるソレ。この時渡すように画策していたようだ。光の王の称号は葵に渡すようだ。気ままな個性兼トリガーだなおい。確かに、このまま出ると古傷丸見えだけど。ばっと腕を通して俺はグラウンドβに向かった。


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34:マメツキ◆A.:2017/07/30(日) 01:32 ID:kco

今回の練習は屋内の対人先頭訓練。ヒーローチーム、敵チームに別れて戦うらしい。ルールは簡単。くじの二人組。そしてビルに敵チームが先に入り、核するハリボテを設置して守る、ヒーローに手錠のようなものを掛ければ勝ち、ヒーローは核を保護するか敵チームに手錠のようなものを掛ければ勝ちだ。単純なゲームだ。まぁ頑張ろう。そう意気込んでいたところだったのに。

「時前少年が一人余っちゃうね!A-Fのうちのどれかが三人組になるけどいい?」
「…っす」
「んんー!テンション低い!スカウト入学者はクールだな!」
「…オールマイト、くじ」

俺に睨まれて指摘され、くじを引くオールマイト。後ろでスカウト? すげえ。とか言ってるが俺は知らない。見せられたくじの結果はBチームだった。

回ってきた俺たち三人の番。二番目とかなり速かった。一番目の二つのペアが混戦だったのが残念だ。全然星奈と凪の双子喧嘩の方がすさまじいし見応えある。そんなことを考えて位置につくと、赤と白のツートンカラーの髪の顔の左半分火傷してる轟ってやつが俺を見ていた。いや。轟に限らず、腕が多い障子ってやつも。

「お前、スカウト入学なんだってな」
「…まぁ」
「スカウト入学は今年から出来た制度だろう?何か目に留まるようなきっかけでもあったのか?」
「障子だっけか…? …まあ、きっかけってのは多分ガキの時の事件が原因だろうな…あまり話したい過去じゃねぇから」

ふい、と目を背けると突如現れたシルヴィアがハンカチ用意して話出す。

「そう!透にはその身に背負いきれないほどの暗い過去があるの…! あれは忘れもしない個性が発言した翌日のこと…」
「その舌焼くぞ喋んな」
「やん!マジトーン怖い!このスーパーミラクル美しく可憐で可愛い美少女に対してぶっ殺すぞなんて、透だから言えることよね!もっと言って透!透が言うなら国だって世界だって破壊してあげる!ぞくぞくしちゃうわ超楽しみ!ドS性は多分冷原よりないけど!アイツただのサディストよね!でも私たちはいつでも透の奴隷!いくらでも罵って! いくらでも私は透の性よkいった!」
「ちょっと黙らせてくるな」

どかっとシルヴィアの背を蹴り飛ばし、どごしゃっと地面にダイブするシルヴィアの首根っこを掴んで引きずり、近くの木にくくりつける。ぎゃーぎゃーそこで喚くシルヴィアを放置し轟らの元に戻ればぽかんとされた。

「…なにぽかんとしてんだ?」
「…なかなか強烈な個性だな」
「…まだアイツだけじゃねぇけど「呼んだか?」呼んでねぇよ帰れ」

現れたアヴァタールに再び二人ともぽかん。俺のイライラゲージはそろそろヤバイ。

「いやァそーかそーか俺は呼ばれてないのか、まぁ腹減ったから出てきたってのもあるけどさ、いきなり帰れは酷くナァイ?まあ俺も透の召し使いっつーか奴隷だしィ?好きにしてくれちゃっても俺はぜぇんぜん構わないんだよォ?犯すなりなんなりさァ」
「…おかす?」
「ごめん透知らないんだったホントごめん真っ白でいてね透。でもさー、俺だってさー、めんどくせェなか遥々透にくっついて楽して来たわけだからさァ、透なんかちょーだい」
「帰れ殺すぞ」
「俺が殺すぞ青二才。殺して骨の髄まで食ってやろうか悪喰なめんじゃねーぞコラ。それに今から戦闘訓練だろ?今更戻れねーよ、匂うんだよォ興奮すんだろォ!?獲物の臭いだ!俺ァもう腹ペコなんだよ!早く食わせろ透!」
「お前もう家放置な」
「ごめん透マジごめんだから家放置やめて?何でもするからそれだけは!ぐはァ!」
「鬱陶しい」

アヴァタールの顔面を問答無用で殴り倒し、引きずってシルヴィアの隣の木にくくりつける。轟らの元に戻って「とっととやろう。ほっとくとアイツら自力で脱出するから早く」と言えば、轟は頷いて「お前ら外出てろ」と言われた。
言われた通り外に出て待ってたらビルが氷付けになる。宗二か。そのあと湯気を発しながら溶けたから個性を二つ持ってるらしい。すげえ。とりあえず俺たちの勝ち。
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35:マメツキ:2017/07/30(日) 13:51 ID:kco

https://ha10.net/up/data/img/20430.jpg
透くんのコスチュームです。

36:マメツキ◆A.:2017/07/30(日) 15:22 ID:kco


 終わったあと、俺たちはコスチュームを着替え、教室に集まっていた。いや、集まっていたのは他の大半で、俺は黙々と黙って鞄に荷物を詰め込んでいた。反省会を行うようだが、俺は葵を待たせているし、とっとと帰ろう。アヴァタールとシルヴィアは反省しておとなしく刀とキーホルダーになっている。よろしい。
 緑谷とやらが保健室から帰ってきて集まっていたからこの隙に帰ろう。じゃあな。



「ヒーロー基礎学、どうだった?」
「……腕壊した奴がいた。あと、宗二みたいにビルを凍らせた奴とか」
「え、ホント? 槍とか飛ばしちゃう?」
「見た感じ、大雑把なことしかできないみたいだった。あと、炎も兼ねてた」
「ハイスペックだなあ」



 和気あいあいとそんなことを話しながら帰路を歩く。今日の晩飯はなんだろうか。葵はほくほくと今日の成果を語ってくれた。


**


 先日、飯田と八百万が学級委員に決定し、今日のヒーロー基礎学は災害水難なんでもござれの『レスキュー訓練』らしい。
 バスに乗るとき、飯田が席順を決めるから並べとはりきっていたが、思っていたものではなかったから無駄だったようだ。各々が自由に席につくなか、俺は一人はぶれたので麗日と八百万の後ろの二人席に一人で席についた。今日は俺の側にはシルヴィアのみ、とても澄まして静かだ。アヴァタールは現在葵につきっきり、相変わらず葵にだけはちゃんと接する従順さはどうなってんだろう。
 そのあと、派手で強い個性と言えば轟と爆豪と言う話になったのだが、隣で澄ましてたシルヴィアが「何をぅ!?」とがたりと立ち上がる。



「派手で強い個性と言えばうちの透だし! ほとんど無敵だし! うちの透が一番かっこいぐふっ」
「お前さっきまで大人しかっただろ」



 後ろからチョークスリーパーを決めながら再び席につかせる。やはり唖然とするクラス一同に「……悪い」と告げてから気を失ったシルヴィアをキーホルダーにしてピアスに繋げる。すると、個性が蛙の蛙吹が声を掛けてきた。



「時前ちゃんってスカウト入学なのよね」
「……そうだけど。どうした蛙吹」
「梅雨ちゃんと呼んで。今更なのだけれど、時前ちゃんの個性ってなんなのかしら? シルヴィアちゃんと言い、アヴァタールちゃんと言い、全くわからないの」



 それを聞いて俺はあぁ、と小さく納得してぽつりぽつりと説明を開始する。



「……俺の個性は『雷光の王様』、大仰な名前がついてるけど、ただ雷と光源を操るだけの個性」
「シルヴィアちゃんとアヴァタールちゃんは?」
「……あのアホどもも、俺の個性だよ。見ての通り、コイツらは武器になるんだ。完全に俺とは別個体の意思を持った奴等だ」
「すごいわね」
「……やかましいだけだ。シルヴィアは余計なことしか言わねぇし、アヴァタールはなんでもかんでも食べるし……まあ、こんな個性」



 無理矢理纏めると、みんなの視線が集中していたのでびくりと肩が揺れる。みんなからの苦労してんだなって視線が辛かった。葵がとても恋しい。



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37:マメツキ◆A.:2017/07/30(日) 16:14 ID:kco


 ついた訓練場はまさにUSJのようで、名前も嘘の災害と事故ルームでUSJらしい。パクリか、パクリなのか。

 そして13号先生の増えていくお小言。彼はこの中でも人を簡単に殺せてしまう個性もあるだろう、その個性は人を助ける為にあるのだと、13号先生は厳かに告げる。すごくかっこよかった。

 途端、背中に伝う嫌な汗。ゾゾゾと這い上がって来る悪寒に、俺は広場をバッと見た。
 渦になる黒のもや。出てくる、敵。



「全員ひとかたまりになって動くな! 13号!! 生徒を守れ!」



 相澤先生の言葉と共に、シルヴィアが戦闘態勢で現れる。みんなが演習かとかそんな呑気なことを言うのを横目に、あれは敵だと確信する。



「敵ンン!? バカだろ! ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」
「先生、侵入者用センサーは!?」
「もちろんありますが……」



 狼狽えるみんなの中で、轟が勤めて冷静に状況判断を述べた。



「現れたのはここだけか学校全体か……なんにせよセンサーが反応しねぇのなら、向こうにそう言うことができる個性がいるってことだ。校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間帯……バカだがアホじゃねぇ、これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」



 全くその通り。相澤先生は上鳴に個性で連絡できないか試せと指示し、捕縛武器を片手に歩き出す。



「先生!? 一人で戦うんですか!? あの数じゃいくら個性を消すといっても!! イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ、正面戦闘は……」



 そう言う緑谷に相澤先生は「一芸だけじゃヒーローは勤まらん」と一蹴する。飛び出した先生に連れられるようにシルヴィアも飛び出す。みんな唖然とするが、先生からは何も言われてないからよしとする。いやはや全く、これしきのことで狼狽えてどうすんだよ……。
 先生の戦闘やシルヴィアの戦いぶりを見てみんなが騒ぐも、避難優先。ずっと視線を釘付けにしている緑谷の腕を掴んだ。



「あっ、と、ととと時前くん!?」
「……とっとと行くぞ、死にてぇのか」
「時前くんの言う通り! 避難が最優先だ!」



 その瞬間「させませんよ」と現れた黒いもやに、咄嗟に雷を落としそうになって、堪える。死なれたら堪ったものじゃない。



「せんえつながら、この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。
本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはず、ですが何か変更があったのでしょうか? まぁ……それとは関係無く、私の役目はこれ」



 俺たちが何かする前に爆豪と切島が飛び出るもかわされ、俺たちは黒いもやに包まれて姿を消した。
 次に目にしたのは一面氷の世界。雪山遭難に対する避難訓練をするための場所だ。すたっと降りるとそこには俺一人、敵が大勢。俺は首をこきりと回す。



「ガキ一人か!! この寒さの中じゃろくに動けねぇはず! 俺たちの個性は絶対有利! かかれ!」
「っしゃ!」



 そういきっているとこ、悪いけど。俺は指で天を指差し、くっと下に向ける。そして落ちてくる黒雷の嵐。敵はいっそう、俺の相手じゃなかった。



「……雑魚かよ」



 だから油断していたんだ。ぴくぴくと撃沈する敵の中から飛び出してきた最後の一人に気が付かなかった。



「消えろおおおおおおお!」



 ぶすりと背中から貫通したとっつきは俺の血をボタボタと腹から出た尖端から垂れ流し、敵は勝ったと思い、引き抜いて満足げだ。
 まあ、関係、ないけどさ。



「……死なねぇようにな」
「は?」



 途端、轟く轟音。落ちた黒雷。蒸発する雪山、飛び散る一角の山分の水飛沫に俺の血と気絶した敵ども。
 制圧は完了した。



.

38:マメツキ◆A.:2017/07/30(日) 21:31 ID:kco


 そのあと俺が広場に戻ればほとんど制圧されていた。オールマイトや他の先生たちもいて、敵の親玉はもういない。みんなのもとには記憶形状機能を持つコートで怪我を隠させていただいた。再生する体なんて化け物以外の何者でもないだろう。知ったらみんなドン引きだ。
 怪我を隠し通して俺は教室に荷物を取りに行って帰った。


**

 そして近づく雄英体育祭。帰宅時に教室の入り口に敵情視察としてやって来た人が大勢居たが、その間をするりするりと抜けていき、その人だかりの一番外にいた葵と合流した。



「……二週間後だな、体育祭」
「そうだね。……もし、知り合いもこの世界にいるのなら、見て、気付いてくれるかな。……星奈ちゃん、居るかなぁ」
「……どうだろうな」



 葵が親友の星奈を思い浮かべたように、俺も凪を思い浮かべた。あの珍しい異性の双子は妙に人の心に機敏だった。いや、周りのやつらのほとんどが、そうで。そのせいか、すごく居心地がよかった。
 そうして話題を代えた葵に乗っかるように晩飯はなんだろうなと話を続けた。
 そしてやって来た体育祭当日。俺は控え室でパイプ椅子に腰を下ろして精神統一に勤しんでいた。隣のシルヴィアも同様だ。敵の襲来以来、すごく大人しくなった。助かるっちゃ助かるんだが、葵がめっちゃ心配してるからやめてほしい。



「皆準備はできてるか!? もうじき入場だ!」
「コスチューム着たかったなー」
「公正を期すために着用不可なんだよ」



 まあ、有利になっちまうからな。持っていたペットボトルをシルヴィアに奪われて、それもとりあえず放置して再び精神統一に勤しんでいたら、コンコンと扉がノックされ、みんなの注目が扉に向く。
 扉を開けて顔をひょこりと覗かせたのは、少し困った顔の、葵。扉を遠慮げに開くとそのダイナマイトボディが晒され、上鳴と峰田がひょおおおおと声をあげる。その二人をギッと睨む俺、気づいてはいなかった。対してキョトンとした葵は、俺を見つけるとふにゃりと顔を緩めた。



「いきなりごめんなさい、A組の皆さん。ちょっと、透くんに用が合って」
「えー! 何々!? 時前、彼女いたの!? めっちゃ可愛い!」
「てめえ! 俺たちを騙したな!」
「だ、騙してない……」
「あんなにスタイルのいい女の子なんて! 謝れ!」
「え……ごめん」
『素直か!!!!』



 クラス全員に『意外だ』って視線と素直かと言う突っ込みを頂いたところで、用はなんだと葵に目を向ける。が、葵はいい、その葵に引っ付いている俺の個性が問題だ。間髪入れずに飛び蹴りをアヴァタールに喰らわせた。



「がふぉっ!」
「……」
「いでっ! 死ぬっ! 折れるっ! あ゙っ! ボキッつった! 折れた!」
「……」
「いっ、いきなりの無言は心に来ますぅ!」



 倒れたアヴァタールを無言で何回も踏みつけてドゴバキグシャと聞こえても続けていれば「と、透くん、もういいよ」と葵に言われてぴたりとやめた。パッと葵の方を向いて「大丈夫か何もされてないか千切られなかったか」と聞くと、特に何もされてないよと帰ってきて安心するも。



「朝起きて目の前に居たのは驚いたけど……」
「シルヴィア、殺れ」
「あいあいさー」



 嬉々としてとびかかったシルヴィアを横目に、用はそれだけかと聞くとうんと言われたのでまたなとB組の控え室に行かせた。



「時前ーーー! あんたあんなに過保護なの!?」
「アヴァタールさん踏んでる時めっちゃ怖かった……」
「彼女思いだな!」



 切島の言葉に「彼女じゃないぞ」とだけ呟くとその場は騒然とした。

39:マメツキ◆A.:2017/07/30(日) 23:24 ID:kco



 俺たちA組が入場すると沸き立つ観客、テンションの高い実況のプレゼント・マイク。審判はミッドナイト。いまいち18禁の意味が分からなかったが放置。選手宣誓の爆豪は「俺が一位になる」と大衆の前でそう告げ、騒ぐ他クラスに「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ」的な言葉をうんたらかんたら。
 そして意気込みながら第一種目の障害物レースへ望もうとしたのだが。



「今年から一年生にスカウト枠が出来たのは御存知よね!? A組の時前 透くん、B組の柿沢 葵ちゃん! 今回、どうしてレクリエーションがないのか、どうしてか分かるかしら!? なぜならこの二人にはその空いた時間でエキシビジョンマッチを行ってもらうことにしたからね!」
「え」
「は」



 ぱぱーんとどこからか出てきたスポットライトに俺と葵が照らされ、顔を見合わせる。A組は「マジかよ」「辛そう」とか言ってるが、そんなことはない。



「良いわね!?」
「……まぁ、最近手合わせしてねぇからな」
「そういえばそうだね」
「俺たちは構わねぇ」
『嘘だろ!?』



 A組やかましいなおい。
 と言うわけで、基本的な種目には参加しないこととなった。だからほとんどが見学だ。暇。



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40:マメツキ◆A.:2017/07/31(月) 00:00 ID:kco


 正直に言おう。俺は第一種目と第二種目。見てなかった。中庭で精神統一のために会場を出ていたのだ。葵は知らん。なんか第二種目は騎馬戦だったらしい。轟のとこの四人がトップ、そこに心操ってやつとこと爆豪んとこ、緑谷んとこ。最後にB組の二人誰かだった。

 そして始まるエキシビジョンマッチ。聞こえは良いが、これは所謂ハンデである。だって、俺たちにはここでしか他のヒーローに見てもらう場面が無いからな。先生たちも鬼畜か。
 整った舞台に上がるとバックからA組一同の声援。葵のところはB組。シルヴィア、アヴァタールが武器参加なのはガチめの一対一だから。毎回あいつらは邪魔をしないから助かる。



『さぁさぁ始まるまで秒読み! 大注目のスカウト入学者のエキシビジョンマッチ!! 
イケメンかつクールかつ紳士かつ強いとかお前すげぇな! A組、時前 透!
対するは! なんだそのグラマラスボディ! ポニーテールの緑の髪にオレンジのバンダナがよく映える! 屈指の美少女! B組、柿沢 葵!』
『なげぇ』
「葵は美女でしょー! 美少女は私の為の言葉なんですけどー!」
『時前の個性の一部のかわいこちゃんが叫んでいるが始まるぞ! レディ、ゴー!』



 その合図と共に俺達は各々の武器を持って駆け出した。右手に刀、左手に鎌。葵は右手にでかい斧。
 駆ける中、葵が左手で指先の標準を俺に合わせた。咄嗟に鎌を軸にバク転すると地面にボゴンとクレーターを作った。空気砲、とても厄介である。
 俺はバク転の勢いに乗せて抜き身の刀を葵めがけてぶん投げる。走りながらそれを避けた葵は避け様に柄を掴み、飛び上がって回転し推進力をつけて俺に斬りかかる。それを鎌の柄で受け、指先をぴっと下に下ろす。途端に轟音を伴った黒雷が葵に落ちたが、横に回避した葵は体勢を崩した。



『目にも止まらぬ攻防にお前マジで前まで中学生だったのかよとしか言えないぞ! 体勢を崩した柿沢に時前は妥協をしなぁい!』
『これくらいしないと、スカウトは取れないぞ』
『スカウト入学レベルたけええええ!』



 そんなことを言ってる間に葵は体勢を低い姿勢で立て直し、地面に手をついて足を振り上げた。バキッと顎にクリーンヒットした足の勢いを殺さず、下から斧を振り上げてくる。さすがに斧で切られるのは不味いと鎌の柄で斧の刃をすんでで受け止め、刃に沿ってギャギャギャと火花を散らしながら腕を下げる。葵の首を押さえつける形で固定した鎌の柄を片手で押さえ、葵の手からアヴァタールを奪い取り、刺す体勢で振りかぶると、彼女は固定されたまま素早く足を振り上げ、その太ももで俺の顔を挟むといきおいよく起き上がり体を捻って俺を地面に叩き付けた。だが、俺もやられてばかりではない。叩き付けられないよう伸ばした手を地面につけて体を支え、体から激しくスパークし、麻痺ったところを蹴り飛ばし、一旦距離を置く。



『もうなにやってるかわかんねえ! そんな激しい攻防で分かりやすくスパークした時前は……って頼む実況させて!』
『あいつらマジだな』



 喋ってる途中にぶっ飛ばして立ち上がって体制をとる麻痺をもろともしてない葵に刀で斬りつけ、腕でガードしたのを確認してから雷を落とした。確実に蹴りを入れようとしたのだが、その前に黒い風で吹き飛ばされ、ごろごろと受け身を取りながら転がる。立ち上がって状況を確認すると、すぐ目の前まで葵の『かまいたち』が迫っていた。



『時前ー! 風の刃を卓越した反射と身のこなしで華麗に避ける避ける!』
『柿沢は刀を拾ったな。この戦い、刀争奪戦かよ』



 そのまま刀の尖端を俺に向けて飛び込んでくる葵の腕を蹴りあげ、刀を手放すのを確認してから、その勢いを利用し回し蹴りでもう片手に持っていた斧を地面に叩きつける。対する俺はというと腕にピンポイントでかまいたちを食らい、びちゃびちゃといきおいよく滴る血と共にからんと地面に手放していた。

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41:マメツキ◆A.:2017/07/31(月) 00:21 ID:kco


 俺は『神速』を使いパシンと葵の後ろに立ち、そのまま斬られた腕で殴ろうとするも、振り向いた葵に軌道をずらされ不発。だが、運の良いことにその時勢いよく出ていた血液が飛び散り彼女の目の中に入ったらしい。ばっと目を閉じて飛び退く葵は目を必死に擦っている。
 そんなチャンスを逃すわけもなく、俺は葵の腹を勢いつけて蹴り飛ばした。



『こいつらの戦いでは飛び散る血でも強力な武器! ほとんど相手を殺す気でする試合はもう試合とは言わず、死合と呼ぶ!』
『ヤバイ有効活用だな』



 どごんと会場の壁を大破しながら場外になった葵はしばらくしてからいまだに目を擦りながら「負けちゃった……」と煙の中からぼろぼろでゆっくり歩いてきた。上半身の服は破けたのか、小脇に抱えながら、下には何も着ていなかったのか胸に先程まで頭につけていたバンダナを巻いている。しばらく出てこなかったのはこのせいか。会場内がひょおおおと歓喜に沸く中、俺の服を渡そうかとも思ったが、すでに見る影はなく。と言うか多分かまいたちの時に引っ掛けられて破れたな。とそこまで考えてから、俺は今、上に何も着ていない、訳、で。



『勝ったのは! A組の! 時前とお、る……はああああ!? なんだあの全身の大量の古傷は!? 今までなかったデコ、頬、首、腕や手にまで傷痕を見受けられる!? ファンデーションでも塗ってたのか!? どうした時前! 大丈夫か!?』



 見 ら れ た。その事実だけが俺を絶望の縁においやる要素だった。バレた。見られた。全国放送で。醜い俺の体が、晒された。晒されて、しまった。
 ぶわりとあふれでてくる冷や汗と、悪寒と、過去の、時前雀佐のクローンの実験を受けていたフラッシュバックと、会場のざわめきに、目眩が起こって、立っていられなくなって、どさりと尻餅をつく。葵が何か叫んでる気がした。俺のとこまで駆け寄って、完全に血の気の引いた俺を見て、鎌に何かを叫んでる。ぱさりと掛けられたコートは、前の、シルヴィアのものだった。
 白む視界に最後に見たのは葵の泣きそうな顔だった。



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42:マメツキ◆A.:2017/08/08(火) 01:16 ID:B5.

いつも通りの唐突な連載凍結。
次は『正味』の方でネタと言うか設定的なものを乗せつつやらなかった主人公にょた化ハーレムinヒロアカやりたいなって。オムニバス方式。原作に沿ったり沿わなかったり。
 主人公は眼鏡の黒髪黒目関西弁。鋼の理性を持つツッコミ系イケメン。クッソ鈍感。ただの常識人。『最原いおり』。
 にょた化はレッド、グリーン、ゴールド、シルバー、デンジ、ダイゴ、ゲン、マツバです。レッド、グリーンはピクシブ。GSはスペ。同い年設定。誰得?私得。名前は勝手につけた。ごめんなさい。

**

 雄英高校ヒーロー科。ヒーローを目指す卵が集う場所である。例年ならヒーロー科はA組B組、そして普通科やサポート科等がC以降の組なのだが、今年は特例が出た。とあるひとつの噂がある、一年『S』組。計9人の少人数で形成された戦闘などに特化した特殊なクラスだ。何が特殊かって言うと、個性である。この八人。全員が『ポケモントレーナー』と言う個性を持っており、しかも性格にも癖が有りまくりな人物ばかり。
 そしてこのクラス。男子はたったの一人だ。噂、そう、上記で出てきた噂とは。

【女子八人は全く気が付かない最原を狙っている】

 と言うものである。

**

 一年A組の昼休み。各々食堂に行っている人物も多いせいか、人はまばらだが、賑やかな人間が多いからかだいぶ騒がしかった。
 そんなとき、がらっと激しく音を立てながら転がり込んでくる人影が。と思ったらプロヒーロー顔負けの素早さで入ってきた扉を閉めた。ぎょっとした数人が声をかける前にその転がり込んできた人影、最原いおりに鬼気迫る表情で「しっ!」と言われ、口を閉じる。以前彼の顔は蒼いままだ。
 妙な緊張感が教室を包む中、だんだんと廊下を走る複数人の足音が聞こえてきた。



「どこ居んのいおりー! 出てこーい! なんもしないからー! 探す私たちの身にもなってー!」
「嘘をつくなグリーン! その手に持っている手錠はなんだ! 明らか何かする気だろーが! どこだいおり! 俺とポケモンバトルしろ!」
「うるせえシルバー! いおりー! 今日こそビリヤードで勝負しろよー! いおりが負けたら言うこと聞くっつーことで! あたしが勝ったら何でもしろよー!」
「ゴールドうるせー……おらいおりー、探すのも走んのも私的に既にめんどくさいからはやく出てきてー、放電すんぞー」
「放電は僕らも困るからやめてもらっていいかな……? 最原くーん、そろそろ出てくれないかなー! 波導で見つけてはどうだんルカリオに撃たせちゃうよー」
「いおりくーん、今日の昼は私と石を探しにいく約束してただろー! どこにいるんだーい!」
「いや、千里眼で見てたけどしてないでしょ。いおりくーん、そろそろうちのゲンガーが痺れを切らす頃だよあとがひどいよー、出ておいでー」



 それな声がA組の教室を通りすぎ、いおりはほっと息を吐く。教室の人間にすまんなと頭を抱えて謝罪すれば、若干引き気味のみんなに気にすんなよ、そうだよ大変だねと励まされる。
 そんななか、芦戸が口を開いた。



「にしてもホント過激だねー、大木戸さんたち」
『やろ、せやろ。日々加速していくねんあいつらの嫌がらせは……』
((嫌がらせ違う))



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