【正味】自由に書きますわ【新しくスレ作るんもうエエ】

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1:ぜんざい◆A.:2016/10/07(金) 22:41 ID:74A



 どうもこんばんはぜんざいです。

 私、思ったのです。書きたい作品が多すぎて、その分だけスレを作ると数がとんでもないことになるからどうしようと、完全に無駄だぜ? と。そして答えがこうなりました。


 もういっそ全部引っくるめて自由に書いてしまえと(

 終着点がここなのです。

 なので、とにかくひたすらジャンルバラバラの夢小説書きます。
 コメント及び感想待ちます! 小説投稿はやめてほしいんだぜ?(⊂=ω'; )

 まあ簡単に言うと、私の落書きのようなものなので、他の人は感想だけということになりますね。うわあ上から目線だぁ! 恐らくコメントには感涙します、めっちゃなつきます。ビビります。

 ジャンルは大まかに言えば、wt、tnpr、妖はじ、turb、krk、FT、中の人、FA、mhaです。
 これからも増えるだろうと思われる模様。
 2ch的なものも出てくると予想されます。

 これまでの上記で『2chやだ!』「作品がやだ!」「ぜんざいがやだ!」言うからは目がつぶれないうちにご帰宅or gohome(΅΄ω΄→ ハヤク!

 2ch系では顔文字や「wwww」表現が出るかと思われます。嫌な方はブラウザバック!


 それでは、そしてーかーがやーくウルトラソheeeeeeeey((

 文的にうるさくてすいません。



.

2:ティアカルレ◆AY 私もジャンル自由の小説、ここで書きたいなぁとか思ったり思わなかったり:2016/10/07(金) 23:42 ID:hl2

フフフ、面白い方ですね🎵

あ、私、ティアカルレと申します

突然入ってきてダメ出しすみません

8まとまり目(?)の言うからはというところ、言う方はではないでしょうか?

本当に突然ですみません


こんな夜遅くにすみませんでしたm(__)mドゲザチュウ

3:ぜんざい◆A.:2016/10/08(土) 07:47 ID:74A


 あっ。

 ほんとですね、『言うからは』ではなく『言う方は』でした。気付いてくださりありがとうございました。
(なぜ推敲したときに気付かなかったのだ自分!)

 ……め、メモのところのコメントに御返事返した方が良いですかね……!!(嬉震)



.

4:匿名さん:2016/10/08(土) 08:36 ID:zAQ

応援してますよ!自分はスーパージャンル超越大戦というスレタイの全ジャンルごちゃ混ぜ+オリジナル設定ありなスレでSS的なものを書いてます。

5:ぜんざい◆A.:2016/10/08(土) 15:57 ID:74A



 ありがとうございます! 
また今度スレを見物させていただきますね!(*´人`*グフフ)


 それでは、元気よくいきましょう! レッツ夢小説☆! れっつ……何にしよう。
 ……とりあえず刀剣乱舞で2ch!



.

6:ぜんざい◆A.:2016/10/08(土) 16:39 ID:74A

THE、男主。


【俺の本丸は】我が家の癒し【平和過ぎる】


1:名無しのさにわ
 立ったかね?

2:名無しのさにわ
 癒しと聞いて他スレから!(ヒューン)

3:名無しのさにわ
 癒しと聞いて地面から!(ボコッ)

4:名無しのさにわ
 癒しと聞いて大窓から!(ガラッ)

5:名無しのさにわ
 癒しと聞いて本丸から!(シツレイシマース)

6:名無しのさにわ
 癒しと聞いて玄関から!(アッ、コンニチハー)

7:名無しのさにわ
 癒しと聞いてテレビから!(クール、キットクルーキットクルー)

8:名無しのさにわ
 やめろ怖いわ! 貞子か!



 アッ、とりあえずコテハンとスペック頼む

9:癒し本丸主
 はーい(´∀`*ノシ)

主 ←俺

 とりあえず刀剣は全部揃えたぜ! 他の刀剣がひょいひょい拾ってくるから直ぐだぜ! みんな可愛いぜ!(ドャァ)
 歳は25の男! 身長170cmぐらい! 黒髪黒ぶち眼鏡のインテリかと思わせておいてかなり残念な奴だぜ! 

 とりあえず本丸で漫画描いてます連載してます。よろしければ一巻の表紙を……

つ『とある漫画の表紙』

 それくらいかな!

10:名無しのさにわ
 待って俺コイツ知ってる(テンションウザァ……д`; )
 多分演練当たったわ、その時連れてた刀剣たちのステータス上限振りきってたわ。
 でもってなんか刀剣たちぽやんぽやんした雰囲気してたわ。

11:名無しのさにわ
 あれ? 俺いつの間に書き込んだっけ

12:名無しのさにわ
 俺も

13:名無しのさにわ
 ま、まあまあ。とりあえず話聞こうぜ

14:癒し本丸主
 >>13イケメェン

 てなわけで、我が本丸の刀剣達はドロップでも鍛刀でも数名ぽやんぽやんした感じなのだ! だからCCPのオカンスキルがお母さん過ぎる。癒し。

15:名無しのさにわ
 は、早く!

16:名無しのさにわ
 (*◇ω◇*)早く!

17:癒し本丸主
 では、そんなエピソードをご覧ください。
 これはとある夕飯時の三日月と蛍丸と俺と燭台切。



三「……ううむ」(皿に残った人参を前に)
蛍「……むむう」(皿に残ったピーマンを前に)
俺「どうしたお前ら」
三「人参を食いたくない」
蛍「ピーマン食べたくない」

 二人して頭抱えてどうすれば食べずに済むかというすこしばかりお馬鹿な事を考える二人に俺苦笑い。かわいすぐる。かわいすぐるよ。
 そこで二人は顔を見合わせ、ハッとする。

蛍「三日月さん、ピーマンと人参交換しましょう!」
俺「(何てこと考えてんだコイツら、お刀さんに怒られるぞ)←(俺は怒らない)」
三「良きかな良きかな」
燭「二人ともだめでしょ! 好き嫌いせずちゃんと自分で食べなさい!」←お刀さん乱入。
俺「……(´ω`;)」
蛍「えー……」
三「( ´ω`φ)よきかなよきかな」
燭「ちょっと! 三日月さん! 僕の皿に人参移そうとしないで!
 このあとのお八つ無しでも良いの!?」


 これ聞いた二人は目の色変えて(苦い顔しながら)ちゃんと食べた。みたいな事が数分前に怒った。隣の鶴丸が俺の書き込み見て笑ってる。

18:名無しのさにわ
 癒しはここにあった。

19:名無しのさにわ
 あの三日月のお爺ちゃんがぽやんぽやんしてる

20:名無しのさにわ
 蛍丸もぽやんぽやん

21:名無しのさにわ
 俺の三日月と代えてくれ! アイツハーレム作りやがった!

22:名無しのさにわ
 そんなお爺ちゃん早くおいで

23:名無しのさにわ
 お黙り難民

24:癒し本丸主
 こんな感じでちょこちょこ癒しエピソード書いてくな

25:名無しのさにわ
 おー、頼むわー(和み)

26:名無しのさにわ
 期待してるぞー(和み)




*

 おそらくこれから突発的に出てくるであろうシリーズ。


.

7:匿名さん:2016/10/09(日) 00:18 ID:zAQ

あげるぜ

8:ティアカルレ◆AY hoge:2016/10/09(日) 17:25 ID:hl2

面白いですよ
ただ、1つだけ
名無しのさにわは複数いるんですか?
それとも1人ですか?
もし複数いるのなら、区別を付けた方が良いかと思います

9:ぜんざい◆A.:2016/10/09(日) 21:42 ID:74A


 分かりにくくてすみません!

 名無しのさにわは複数居ます。ですが、2ch風なものなので、掲示板的なものに書き込んでいる(という設定)なので、わざとわからないようにしています。
 あ、コイツがコイツっぽいなとか想像していただけたら嬉しいです。
 アドバイスありがとうございます! 事前に設定など書いておけば良かったと後悔しています。混乱させてしまい、すみません。

 多分次はちゃんとした小説だと思われます。(台本書きは2chのみですのでご安心下さい)



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10:ティアカルレ◆AY:2016/10/10(月) 14:56 ID:hl2

>>9
頑張ってくださいね🎵

11:ぜんざい◆A.:2016/10/13(木) 23:09 ID:hyI


 ありがとうございます!
 とりあえず出来るところまで『MHA×FT(逆も然り)』書きます!

 年齢操作が酷く、フェアリーテイルメンバーがヒロアカ世界にトリップしてくれば、記憶はそのまま年は全員16歳となります。
 フェアリーテイルからはナツ、ルーシィ、グレイ、エルザ、ジュビアがトリップします。


**

Noside


 ギルド『フェアリーテイル』の書物室にて、ミラから整理を頼まれた五人はたくさんの本を抱えて右往左往とあちこち行き来していた。こう言うときに役立ちそうな空飛ぶエクシード、ハッピーやシャルル、ウェンディは仲良く三人で依頼へと出発しており不在、時々怒鳴りをあげながらもみんな整理に励んでいた。



「なあルーシィこの本どこ直すんだ?」
「その魔導書はあっちの棚よ」
「おう!」



 ナツとルーシィが本を抱えて会話するのを横目に、エルザは先程手にした感じたことのない魔力を放つ魔導書を怪訝に見つめていた。
 その傍ら、グレイとジュビアがなにやら楽しげな(ジュビアが問題天然発言をグレイが慌てて訂正すると言う)会話をしていたので、小耳に挟みながらこの魔導書をどうするか検討しているところだった。だが、厄介な奴がそれを発見してしまう。ナツだ。



「おー? なんだエルザ、そんな難しい顔してその本見て」
「え、なになに!? 本ですって!?」



 ナツの声にみんなが反応し、先程まで散り散りに本を片付けていた一行はエルザの周りに集まってしまった。
 エルザは諦めたように溜め息を吐いて説明する。



「いや、この魔導書から妙な魔力を感じてな。どうするか検討していたのさ」
「ねえエルザ! それあたしに貸して! 読みたいの!」
「……別に構わないが、何が起こるか分からん。気を付けろ」
「うん、分かったわ!」



 魔導書はエルザの手からルーシィへと渡り、そこかしこにある木製の椅子に腰掛けて意気揚々とルーシィが本を開く。そこで淡い光が溢れだし、一気に目を瞑りたくなるくらいに眩しくなった。



「ええ!!?」
「うおっ、眩……!」
「くっ、」
「え!?」
「なんだァ!!?」



 各々が声を挙げながら、グッと目をつむる。そしてふっと五人は浮遊感に襲われ、だがすぐ重力に沿い皆一様に悲鳴を挙げつつドサドサと地面に落ちた。
 一番下敷きになったナツは書物室とは違う、固くてひんやりと冷たい床に違和感を感じ、上に乗っている者たちのことも考えずガバッと起き上がる。



 彼らの周りには、目を大きく見開いた奇怪な格好の人々が居たのだった。



.

12:ティアカルレ◆AY hoge:2016/10/15(土) 09:14 ID:hl2

どこに飛ばされたのでしょうか?
続きが気になりますわ🎵

13:ぜんざい◆A.:2016/10/15(土) 22:52 ID:hyI


 驚きだぜ! な所ですよ(笑)


**

 次々に起き上がるフェアリーテイルのメンバーにその場にいた他の大人が固まる。そして皆一様に誰だこいつらと必死に思考を回していた。
 ここは雄英高校ヒーロー科職員室中央、つまり周囲は全員ヒーローである。



「えっ、ここどこ!?」
「くそっ、やはりもう少し注意していれば!」
「あんまり気にすんじゃねーぞエルザ」
「グレイ様服!」
「いつの間に!」
「ねえだからここはどこなのよ!?」
「知るか! ギルドじゃねーのは分かる!」
「見りゃ分かるわ!!!」



 目の前で怒鳴り合いを始めたルーシィとナツに教師陣は目を見開く他ない。そこでなぜかいきなり「やんのかコルァ」「上等だテメェ」と取っ組み合いを始めたナツとグレイ。どういう経緯でそうなったのよ、と呆れるルーシィ。



「おめぇは毎回毎回うっとーしいんだよ露出魔野郎!」
「いちいちつっかかって来るんじゃねークソ炎!」



 ついには魔法を発動させて殴り合いをし出す二人はいつぞやのハデス編より激しい戦いを繰り広げている。ルーシィはその力を本線で出してほしかったわと溜め息を吐く。そこで、ぼっさぼさの髪に幾重もの布がマフラーのように連なる小汚ない男がルーシィに声を掛けた。エルザは仲良きことは良いことだと微笑んでいるし、ジュビアはグレイに声援を送っていたので、この中では比較的常識人だと自負するルーシィは声を掛けてきたとこに納得する。ルーシィに声を掛けた彼は相澤消太、日々合理性を追い求める人物であり、ルーシィに声を掛けた理由はあの二人の騒動に入っていくことになんのメリットもないと踏み、近くにいたルーシィに声を掛けただけだった。恐らく近くにいれば誰でもよかったと推測される。



「ねえちょっと」
「はい、なんですか?」
「君達の行動は合理性に欠く、話も聞きたいからアレを止めてくれ」



 ピッ、と指差した相澤の指は現在進行形で職員室を破壊している炎と氷の男に苛立ちを感じていたようだ。悟ったルーシィはこの世の終わりのような顔をして、とぼとぼと二人の近くによる。



「ね、ねえあんたたち、もうそろそろやめにしてくれない?」
「「うるせえ!!!」」
「ぎゃん!!!」



 意を決して二人の仲裁に入ったルーシィだが、二人の拳を顔面に受け、呆気なく悲鳴を挙げながら吹っ飛んだ。ドゴッ、と壁にぶつかったルーシィを見たヒーロー教師たちは唖然と口を開き、その中でやっと動き出したミッドナイトがルーシィに駆け寄る。



「だ、大丈夫貴方!」



 だがしかし、ルーシィは鼻血を隠すことなく垂らしながらむくりと起き上がると、ミッドナイトの声掛けが聞こえていなかったのか「あの男共はあああ!!」と怒鳴り散らしながら腰に下がる鍵を取り出して叫ぶ。そしてミッドナイトはルーシィも彼らと同類かと密かに感じとった。



「開け! 獅子宮の扉、レオ!」



 リンゴーン、と言う音共にいきなり現れた猫耳の生えたサングラスの男に教師たちは再び目を剥くこととなってしまった。



「お呼びかな!」
「あいつら、やっちゃって!」



 その声と共に駆け出すレオ、もうすでに職員室は戦線崩壊、ひどい有り様である。相澤は声を掛ける人物を間違えたと頭を抱えたくなった。



.

14:ぜんざい◆A.:2016/10/22(土) 22:30 ID:jl2


 恐らく上記の小説は度々出てくるであろう物となりました! 言わばシリーズ!

 と言うわけで、一週間悩んだ結果、刀剣乱舞×魔法先生ネギま! の混合夢小説を書きます!

 大まか内容設定は交通事故で亡くなったあと、愛読していたネギまにトリップし、大阪生まれの京都育ちで神鳴流剣術のほぼ最強に位置してネギと女性の事で語り合う、ヒロイン達中学三年生より2つ年上の高校二年生の男装イケメン女主(胸が千鶴さんと一緒より少し大きい※普段サラシ巻き)が、とある雑魚敵の魔法で異世界、というか死んでしまった世界とそっくりな世界へ飛ばされて、そこで神力(魔力・気)があったので時の政府に出陣出来る戦う審神者としてブラック本丸の清掃及びそこの主を任される感じです。

 主人公設定です。

伊達 いおり(18) 高2

 完璧に男なイケメンで関西弁、常に持っている竹刀袋に入っているのは本物の真剣。桜咲刹那の夕凪みたいなタイプではなくがっつり日本刀、太刀。生まれた頃から一緒だったりする、名前は『緋斬(あかぎり)』。魔法は炎系が得意だが、剣士してポジションにいるのであまり使わない、と言うか使えない(だって学園側から固く止められてるんだもん、破壊するなって)。神鳴流ではオリジナル技を少し作ったくらい。
 身長は184cm、頭脳は前世で大学を出ているのでそこそこに良い。一人暮らしなので炊事洗濯出来る。家は居合いの名家。但し規則は緩い。
 ヒロイン達の兄的存在、但し3-Aは全員が女だと知っているしかし! ネギと似たような目に遭う。ネギ・スプリングフィールドの理解者、狗神小太郎とも仲良し。
 学園側から特別に男子制服着用が認められている紳士的人たらし。
 但しお化け屋敷やドッキリ等は全く駄目、ビビると刀が出てくる。鞘で峰打ち!(っごーん☆)
 一ヶ月に一回ネギ達の待つ元の世界に帰れる様に時の政府に頼み込んだ、THE土ぅ下座ぁっ!

 とりあえず後輩が可愛い! な人。


 では!



.

15:ぜんざい◆A.:2016/10/22(土) 23:02 ID:jl2


 コタくんの名字に誤字がありました。『狗神』ではなく『犬上』でした。


**

【伊達side】


 魔法世界と我が学園、麻帆良の空が繋がり、魔法世界を消去すると言う敵方の野望は10歳ながらにハーバード大学を卒業して麻帆良女子中等部の英語教師兼3-A担任兼魔法使いのネギ君が仮契約をした女の子たちと共に阻止された。まあ、仮契約をしたと言う女の子の中に、俺も含まれているのだけれど。

 俺がネギ君と仮契約をして出てきたアーティファクトは『焔の斬剣(イグニアーティスヴェルヴァルト)』。多分焔の斬剣の英語の当て名は適当だと思われる。なにやってんだアーティファクトの精霊さんよ! 最初は焔を纏った西洋の一本の剣だと思っていた。緋斬と二刀流かー、なんて思っていたが、違った。あれだ、刹那の小刀を自在に操れるアーティファクトの、焔を纏った太刀程の大きさのものを自由自在に操れるものだった。威力やべー。フェイトに聞けば俺のアーティファクトのレア度は世界最高を誇るらしい。明日菜達のアーティファクトもレアらしいけど、比べ物にならないと言う。なんてこった。

 とまあ、そんな話は置いといて、俺は今麻帆良の路地裏で不正に魔法を使っていた奴をネギ君、コタ君と共に追い詰めていた。



『さすがに観念したらどうや。人類最強のネギ君がおるんやで? お前勝ち目無いやん』
「う、うるせえ! くそっ、こうなったら!」



 そういうと、ローブを目深に被っているソイツは、俺に向かって何かをぶん投げた。側で「いおりさん!」「いおりねーちゃん!」とネギ、コタの順番で叫ばれる。もう間近だ、避けられない。俺はそれに当たった瞬間、その場から跡形もなく消えた。



「いおりさん!?」
「てめえ!」



 ネギがいおりのいた場所を唖然と見つめ、小太郎が狗神を出しながらローブを被った男に殴りかかる。



「お前! いおりねーちゃんに何したんや! 返答次第で俺の式神がにいちゃんの首噛みきるで!」



 倒れた男の上で馬乗りになりながら胸ぐらを掴む小太郎と、グルルと怒りの表情の狗神達。ネギはハッとし、慌てて男を拘束して学園へ連れていった。

 取り調べ室に入れられた男はグラヒゲ先生の威圧に震えながら、いおりの処遇を話したと言う。



「俺が女最強に投げたのは異世界転移ゲートのタネだ、女は別の世界で生きていると思う……!」
「……場所は?」
「分かるかよ! あれは術者も行き先がわかんねえんだよ! もういいだろ!」



 ネギは小太郎と安心し、同時にこう思った。あの人ならきっと別世界でもしぶとく生きているだろうと。



.

16:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 10:06 ID:jl2



【伊達side】



 俺が何かをぶつけられた次の瞬間、俺はとある一軒屋の中にいた。あれか、楓の天狗の隠れ蓑みたいなやつか。

 中を隅々まで調べるも、人が住んでる様子もない。外に出てみれば麻帆良の町並みはない。手持ちのスマホで麻帆良を調べてみるが反応がなかった。そうか、ここは異世界か。超次元魔法戦闘がない平和な世界か!



『……もうここに住んだらエエんちゃうやろか』



 あ、駄目だ。愛しの後輩達がもとの世界で待ってるわ。うん、これからもとの世界へ帰還の方法を探しながら普通ライフえんじょいだ。表札を見てみると札は有るものの名前がない。よし書こう。



『……伊達……っと』



 達筆で石を削った表札を眺め、感嘆して家に入る。中々に広い家のふわっふわなソファに腰を下ろし、携帯しているアーティファクトカードと竹刀袋をコーヒーテーブルに置く。
 さて、アーティファクトはこの世界でも発動するんですかね? と言う実験ですはい。



『来れ(アデアット)』



 そう言えばズラッと出てくる焔の太刀にハハハと笑った。以前ネギに見せたとき「翼見たいですね」と言われたが、目の前で広げるとあながち間違ってないかもしれない。脳内で動く様を想像すればすいすいと空中を移動する太刀達に愛らしさが沸く。竹刀袋の中の緋斬を取り出し鞘から抜き出して刃を見れば、薄い赤色のそれが天井の光に反射してきらきら輝く。



『……魔法が使えることに変わりはないなぁ』



 少しホッとした。これで俺はこれからも女最強を誇れる。



『……!』



 ピンポーン、と軽やかにチャイムの音が聞こえた。なんだよ、まさか表札が着いてるからあんた何者だとか言われるの? 言い訳めんどくせー。
 俺は自分の赤みが差す、毛先が外に跳ねた肩上までしかないショートカットをがしがしと乱雑に掻く。

 足音もなく玄関に辿り着き、うぃーすと扉を開ければそこには黒服を着た男性達の姿が。神妙にお縄につけー! みたいなやつ?



『なんすか』



 目付きが悪いと自負している目で軽く睨めば動じていないようで、気後れせずはきはきした様子で言葉を口にした。



「あなたは異世界から飛ばされてきたものですね」



 ……なぜ知っているんだ貴様あああ!

17:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 10:40 ID:jl2



 どうやら彼らは『時の政府』所属らしく、ここで時空の歪みを発見したから至急やって来たと言う。なるほどなるほどといっているうちに政府に連れていかれて、話を聞かれた。

 俺がこの世界に来た経緯を話せば魔法? 魔法だと……? とざわつく会議室。



『とりあえず、もとの世界に返してくれはりません? 時空移動的なやつできはるんやろ』



 背中の竹刀袋が不意に揺れ、俺がそう言えばお偉いさんから待ったが掛けられた。



「条件がある」



 そう言われ、提案されたのは審神者になってくれないかと言うことだった。さにわってなんぞ?
 どうやら……さ、審神者? は西暦2205年、歴史改変を目論む「歴史修正主義者」によって過去への攻撃が始まったらしい。なるほど、だから時の政府はそういう時空関係がわかるのか未来ってすごい。まあそれを阻止するために審神者なるものを各時代へ送り出すらしい。審神者は眠っている物の想い、心を目覚めさせ、自ら戦う力を与え、振るわせる技を持つ者。その技によって生み出された付喪神『刀剣男士』と共にため過去へ飛ぶらしい。
 その刀剣男士を出陣させたりとからしい。

 ほう、俺には審神者の力があると。



『あ、エエですよ』



 へらっ、と笑って言えば逆に驚いた顔をされた。え、なんでなんで? 



「君は、なぜそんな簡単に」
『え、いや、やって、出陣ですやろ? 体動かしとかんと鈍りますわ』



.

18:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 11:10 ID:jl2



 月一で帰れると約束してもらい、早速もとの世界へ戻り、月一しか帰れないことを学園長に話せばいいんじゃね? と許可を頂いた。



「いおりさん!」
「ねーちゃん!」
『や、いきなりどっか行ってもてすまんなぁ』



 駆け寄ってくるチビっこの頭を撫で回して事情を説明すると寂しそうな表情をするも、一ヶ月に一回は帰ってくるので帰ったときには手合わせしてねと約束された。なんて、なんって可愛いんだ!



**


 俺は普通の審神者とは違い、審神者ながらに出陣し、何やら自分の欲にまみれて刀剣男士たちに夜伽を強制したり無理な出陣をさせたり暴力を振るったりとそう言うことをする本丸をブラック本丸を更生すると言う仕事を任された。



 そして俺が今ここにいる場所はブラック本丸の門前だ。万が一と言うか確実に戦いになると政府から聞かされたため、緋斬とアーティファクトを持ってきた。服は仕事服である。



「中に入ればこんのすけと言うこの本丸の式神が居ますが政府側ですので安心してください」
『俺はこの本丸の主をどないしたらええんすか』
「倒してこちらに引き渡してください。最悪死体でも構いません」
『物騒やけど俺そんな手加減できひんから、死ぬこと前提で動いてください』
「わかりました」



 さて、本丸を救いに行きましょーか!

19:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 14:28 ID:jl2


 なんでブラック本丸を潰さないのかと政府の役人さんに聞けば、そういうブラックなところに限ってレア刀が多いのだと言う。なんだそりゃ。

 とりあえず、役人さんが帰ったあと、俺は結界が張られている門の前で腕を組んで唸っていた。



『この結界どないしよ、なるべくバレずに中に潜入したいんやけど……』



 この世界で言う神力は俺たちの世界の魔力と一緒だ。ネギ君なら次の瞬間にはバレずにスッと解いて中に入っていただろう。俺は無理だ。なにせ不器用なものでね!
 まあ、正面突破ですよね。



『焔の斬剣(イグニアーティスヴェルヴァルト)』



 一応発動だけさせておいて、腰に下がる緋斬で結界を叩き割る!



『雷鳴剣!!!』



 刀が雷を纏い、刀の腹が結界に当たった瞬間ドドオオン、爆発音、よし。無事破壊。あ、門こなごな……門の請求書は時の政府へ!
 雷鳴剣とは、神鳴流剣術の奥義である。自身の気を使い、雷を刀に纏わせて叩き斬る技である。



『さて、行くか』



 ざかざかと服を翻しながら堂々と中へと侵入する。現在の服は白いワイシャツに黒いネクタイ、同色のベスト、緋と金の装飾が着いた黒色のコート、下は二重のベルトを交差させ、七分丈のズボン。下はロングブーツである。いや、決して俺の趣味じゃない。エヴァちゃんの趣味だ、アーティファクト時の服はほぼこういうタイプなので、本丸に居るときはほぼこれらだろうと思われる。



 ……それより、殺気がどんどん強くなってるな。



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20:ティアカルレ◆AY hoge:2016/10/23(日) 15:01 ID:hl2

ひさしぶりに来てみたら、ものすごく進んでいますわ!

21:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 17:04 ID:jl2



 お久しぶりです(笑) 
 お話は違いますが楽しんでいただけたら嬉しいです。

 とりあえず、今回のとうらぶ×ネギま! の夢主のイラストです。イメージ壊したくない! と言う方はしれっとした顔でスルーしてください(笑)

http://ha10.net/up/data/img/13995.jpg

 小説は後程です。



.

22:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 22:41 ID:jl2


 Noside

 いおりが門を粉々に壊し、結界が破壊されたことに、この本丸の審神者は驚きの声をあげた。



「なっ、なによ!? 何が起こったの!?」



 鏡の様なもので本丸内を見渡し、侵入者の姿を発見した女審神者は政府の寄越した人員ね……! と怒りを露にする。近侍には数々の刀を犠牲にしてやっと顕現させた三日月が。ここの本丸がブラックになったのは大方この三日月を顕現させたいと言う理由だ。彼女は欲にまみれた卑しい性欲を放置した女だった。
 諦めきったような無表情の三日月の腕を引き、刀剣達の集まる大広間へと久しぶりに赴いた、刀剣達の前では『時雨』と名乗っている審神者が主命を下す。



「お前たち! 侵入者を倒しなさい! これは主命よ!」



 高らかにどう? 私は今本丸のために動いてるのよ! と言いたげな雰囲気を晒す時雨に、刀剣男士たちは傷だらけで嫌々ながらも主命と言う言霊に縛られ、自然と体が動いていく。ここの本丸の刀剣男士は三日月以外、ほぼ中傷か重傷しかおらずまともに戦えるわけが無いのに。



**

 一方のいおりは、本丸内の空気の悪さに顔をしかめていた。だが、いおりの様な神力の強い物が歩き回ると空気の清浄は行われるらしいと言うことは聞かされていたので我慢して本丸内を練り歩く。



『それにしたって、酷いわぁ』



 空気は悪く池は干上がり草木は枯れ果てている。こんなところ、よく住めるものだと呆れを通り越して感嘆の息を漏らしたところで、ガギン! と金属同士がぶつかり合う鋭い音が耳に届いた。発生源は本丸縁側に面する左頬すぐそば。振り向いてみれば小学生ぐらいの少年が傷だらけながらもいおりに刀を向けていた。
 ただ、いおりは攻撃を受けていない。アーティファクト『焔の斬剣(イグニアーティスヴェルヴァルト)』は術者の危険時には太刀が自動で動き、主の身を守る設定になっているのだ。流石世界最高レアアーティファクトと言ったところである。
 いおりはネギ君と軽く仮契約(キス)しただけなんに、なんでこんな便利なレアもん出て来たんやろといまだに疑問を持っている。

 日本の赤い太刀が少年の攻撃を受け止め、空中で静止する。だが、少年が飛び退いたことによって太刀はいおりの背に戻ってきた。それを皮切りに空中から魔法陣が現れ、そこから多くの太刀が出現し、宙に浮いたままいおりの背に並ぶ。



『……子供やんけ』



 黒い服を着た少年は、短刀を構え、目を見開きながら態勢を崩さない。なるほど、彼も刀剣男士かといおりは納得するが小学生ぐらいの子も居るとは。短パンから覗く白い太股が眩しい。



『……流石、神様やな。焔の斬剣が攻撃を受けるときに太刀を二振りも使わせるとか、ホンマ舌巻きますわぁ』



 政府から刀剣男士の名と姿の書いてあるノート、刀帳を一度読ませて頂いたので、彼が誰だか分かる。



『薬研藤四郎……』



 そう呟いたあと、彼の後ろからぞろぞろと刀剣男士達が現れた。ううむ、彼らは傷付けたくないなぁ。俺も刀は好きだから折りたくないし……。



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23:ぜんざい◆A.:2016/10/24(月) 15:52 ID:jl2



「主命とあらば、敵などと!」



 そう俺にとびかかってきたのはへし切り長谷部、性格は確か主に尽くす忠犬のようなものだったと思う。だがしかし、表情は苦しげに歪められている。
 現在俺が多対一で戦っているのは前の薬研、長谷部の他に鳴狐、平野藤四郎、鯰尾藤四郎、鶴丸国永、浦島虎鉄、恐らくリーダー格は燭台切光忠だろうな。
 みんな目に生気が全くなくて、どんだけ非道な事をしたのだとここの審神者の思考回路を疑った。マジふざけてる。



「くそっ」
『お前らみたいに傷だらけで弱った刀なんかに俺のイグニアーティスヴェルヴァルトが負けるわけないやろ』



 俺が腕をすいすい動かして後ろの太刀を動かして刀剣達の攻撃を受けたりこちらから攻撃したりしながらあくびをする。
 そこで、燭台切の刀が焔の斬剣を掻い潜り懐に突っ込んできた。



「もらった!」
『残念』



 咄嗟に緋斬を抜いて燭台切を受けて鍔迫り合したのち弾き返す。そのまま振り抜けばギリギリと言ったように苦い顔をしながらギィンと自身の刀で緋斬を弾いた。返す刀で横一線に剣を走らせると燭台切は咄嗟にしゃがんで回避しそこから俺の腹を切り裂く。っぶしゃあっ、とスプラッタな音をたてて激しく流れた血が帰り血として燭台切のその端整な顔に降り注いだ。しかし、俺は今ネギ君と同じく不老不死化(仮)しているらしい。服を切り裂いたまま傷がみるみるうちに塞がり血液が止まる。後ろではまだ俺が指示を出しているのでイグニアーティスヴェルヴァルトは刀剣男士を相手にしている。イグニアーティスヴェルヴァルトは言いにくいのでイグニと縮めて読むときもある、うん関係無かった。



「っ、君の体は」
『話しとる暇無いで!』



 態勢を建て直されないようにすぐ様彼の後ろ首に肘を落とす、うち下ろしと言う技だ。それでもふらつく体で立ち上がるので緋斬の柄の先で燭台切の腹を突く。尻餅を着いた燭台切の首に緋斬の切っ先を向けた。



「……降参だよ、いっそのこと、折れた方が」
『……なに言っとるん?』



 刀剣の折る折らないは元々折らない方向で決定してるし、そもそも自分から折れる、なんて言わないで欲しい。



『そんなこと言うな。ここの審神者は俺が捕まえて政府に差し出せって言われとるから、もう安心しても大丈夫や』



 そういうと、酷く泣きそうな顔をして微笑んだ。燭台切が降参したことを始めとし、次々と刀を鞘に戻して肩の荷が降りたと言うように経たりこんでしまった。



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24:ぜんざい◆A.:2016/10/25(火) 00:30 ID:5iA


「全く、君は、恐ろしいくらい強いね、太刀が何振りも自在に宙を舞うし」
『俺の能力や、気にしな。それと、安心しとるとこ悪い。あんたらの審神者はどこに居るんや?』



 先程までへたりこんで「今の僕、格好っ、悪いなあっ」と安堵の涙をぽろぽろ控え目流すイケメンこと燭台切に審神者はどこにいるんだと少し屈み視線を合わせながら聞けば震える指であそこの離れだよと教えてくれた。



『なぁ鶴丸。ここの本丸の刀は他に居るんか? 初期刀とかは?』
「刀は……一振りを除いてここに居るのが全刃だ。初期刀は、既に折られた。……気ぃつけな。ここに居ねえあいつは練度こそ俺達と同じだが、軽傷のみだ。その軽傷は俺達の手入れを物申したときに……主命で、俺が……」



 その先は言わなくていいと、元々はとても綺麗な白色だったと思われる、今では全身乾いた血でほぼ鶴の面影も見えない赤掛かった白い髪の頭をぐしゃぐしゃに撫でればせきを切ったようにギャン泣きを始めた。恐らく俺に襲い掛かって来たこのメンツの中では一番の年長者だから気を張っていたのだろう。何回か撫でたあと、刀を担いで立ち上がる。



『待ってろよお前ら、審神者捕まえたら手入れしてやるから』



 走り去るときにそう告げれば後ろから一段ぶわっと泣く声が聞こえてきた、声が幼いから短刀か脇差だろうか。それほどまでに疲労がたまっていたのだろう、可哀想に。



**

 俺は怒りに身を任せつつ冷静に離れに突っ込んで行った。もうこの際、この離れ潰してしまうか、なんて考えたが流石にやめた。
 片っ端から襖や障子の戸を開けて審神者と残りの一振りを探す。彼らを見付けたのは一番最後の部屋だった。運が悪いぜ!
 スパンと扉を開いてイグニを完全戦闘態勢で御対面。



『まっさかここの審神者さんが女の人やったとは、思わんかったわぁ』



 みんな傷が酷かったから男の審神者かおもとったわぁ、なんて言えばここの審神者、時雨はそばに居た……なるほど三日月宗近に「行きなさい三日月!」と、瞳のハイライトが消え、全てを諦めた顔をしているのに言霊で縛り付け、俺に攻撃させた。三日月宗近とは、刀剣の中では一番の古参で爺と呼ばれる事も多い見た目がとても言葉では言い表せないほど見目美しい刀剣だ。確か彼は常に朗らかに微笑み、どこか喰えない雰囲気を纏う天下五剣の一人だったはず。そんな彼をどうしたらこんな風に憔悴させられるのか、どうしてそんなことをするのか皆目検討すら付かない。
 とりあえず。



『三日月宗近! お前はもう自由だ!』



 そう言いながら俺は向かってくる三日月の背後に回り、緋斬を持つものしか見えない主従の糸を、三日月を縛る言霊の人をパキィンと斬った。



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25:ぜんざい◆A.:2016/10/25(火) 20:40 ID:5iA



 だが、三日月は止まらない。先程と変わらぬ光を失った瞳のまま何やらぶつぶつと呟きそのまま俺の緋斬と剣を交えてた。耳を澄ませば「コイツを殺せばコイツを殺せばコイツを殺せば」と狂気染みた雰囲気で高速呟き、何やらこれで一気に俺の精神力削られた気がする。
 恐らく俺を倒せば自由にしてもらえると思ったのだろう、酷く暗示を自身に向けている。だんだんと太刀筋が鋭くなってる気がしてきた。鍔競り合いになり、ギシギシと両の刀を軋ませながら俺は怒鳴る。



『聞きや三日月宗近! お前と審神者を繋ぐ主従の鎖は切ったんや! そんな暗示を掛けんでもええねん!』
「うるさいぞ!」



 バンと押しきられブチッ、ゴリッと言う音と共に左肩を貫かれた。奥の審神者がにやにやと「もう終わりね」と言う雰囲気を漂わせるが三日月は焦った顔をして刀を抜いた。正しい判断である。刀を刺したままでは俺の体はそのまま再生しようとし、最終的には折れるだろうから。でも、三日月の表情を見る限り、それだけでは無いようだ。
 服を置いたまま肌だけがみるみるうちにもとに戻っていく。審神者はそれを見て目を見開いた。だがしかし! 俺はそんなの気にしない!



『どないした、来ーへんのか?』
「……っ!」



 俺の一言で慌てて態勢を建て直した三日月に今度はこちらから斬り掛かる。先程のお返しと言うように突きを返せばギリギリ避けられ、そのまま横に腕を引く。三日月はそれを一歩下がって避けたのち縦に刀を振り下ろした。それを緋斬で受け止め、ギャリギャリと二人とも力で押しきろうとする。



『さっきまでの鋭さが無いで三日月宗近!』
「っ、黙れ!」
『お前、俺斬ったときに動揺したんちゃうか!? 怖かったんやろ! 俺が失血死するのが! 人間(ヒト)を斬るのが!』
「刀である俺が! ヒトを斬るのが怖いだと!?」
『ああそうや! お前ヒトが恐ろしいんやろ! そこの愚行をした社会的屑な審神者のせいで!』
「っ、ふざけるな! 恐ろしくなどない! あの審神者に従っているのは契約があるからだ!」
『だから! その鎖を俺が! 今! 斬ったやろうが!』
「……!」
『お前はもう! 自由やねん!』



 ふっ、と緩んだ力の隙を逃さず刀を弾き返し、天下五剣である三日月に尻餅を着かせた。呆然とした三日月にふうと息を着くと手を伸ばした。



「なんだ、この手は」



 震えた声でそう告げた三日月に曖昧に笑い、無理矢理手を掴んで立ち上がらせる。



『謝罪の握手や』
「……」



 一瞬ほけっ、と言う顔をしたが、次の瞬間には三日月は花が咲くような笑顔で「解放してくれて感謝だ」と手を握り返してくれた。その直後だったのだ。



「ふざけんじゃないわよ!」



 女審神者が、懐にしまっておいたらしい小刀で俺の首をザシュッと飛ばした。



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26:ぜんざい◆A.:2016/10/25(火) 21:20 ID:5iA



 視界が反転、上下逆さまに三日月の顔が写る。女審神者の高笑いが聞こえた。うん、笑ってるとこ悪いけど……。



『残念やったな』



 少しばかり離れた頭を腕でピタリとくっつける。そのまま振り向いてドカッと正面蹴りを喰らわせた。ドサッと巫女服のまま尻餅を着いた審神者に冷たい視線を送る。



「きゃっ」
『きゃっ、ちゃうし』



 きゃっ、なんてあの大冒険した仲間やそのクラスメイト位しか似合わないなぁ。
 はぁ、と溜め息をつけば審神者はボッと顔を赤くさせた。大方怒りで顔が真っ赤になったんだろう。お前それ逆ギレって言うんだよ。知ってた?



「ねえあなた、私のお婿さんになってくれないかしら!?」
『ん?』



 ……ん?

 目を見開き審神者を凝視。三日月も凝視。女審神者は顔を赤らめてやだ言っちゃったとくねくねしている。ぁ、このパターン知ってるよいおりさん。何回目だろうね。俺女だよ。



『あんた、さっき首飛ばした男に向かってよおそんなこと言えたな』
「えっ、でもでも! 貴方はまだ生きてるじゃない! なら良いじゃない! 関係無いわ!」
『そういうこと言うとんちゃうねん。お前の行いは人間の倫理を外れてる、現に俺の首を飛ばした。ましてや神様に手を挙げるなんて最悪や。
 生憎やったな、俺は女やし、あんたんこと殺してもええて政府から指示出とんねん!』



 チンッ、と俺が刀を鞘に納めれば、三日月と女はなぜ殺すといった側から刀を納めるのかと疑問に思ったらしいが、次の瞬間には女は縦に二つに割れた。居合い抜きと言う音速技である。

 ドチャリと倒れ込んだ審神者を目に、三日月はなんの感情もないようだ。



『すまん三日月、勢いでお前の主、斬ってもた』
「いや、構わん。あんなもの、主ではない」



 ふいっと一瞥した三日月は此方を見て、「感謝する」ともう一度口にした。『ああ』と言葉を返せば、泣きそうになって、俺はどうしていいか分からず頭をがしゃがしゃと撫でる。そこで通路からバタバタと慌てた様な足音。



「どうしたんだい!?」
「大丈夫か青年!」
「わっ、主が!」
「アンタがやってくれたのか!?」



 わらわらと入ってくる刀剣男士たちに苦笑いしながら頷けばパアッとみんなから誉れ桜が降り注ぎ、やれ解放されたと騒ぎ出した。あの長谷部ですら少し安心した様な表情をしている。
 気を取り直して。



『お前ら、俺を手入れ部屋につれてってんか?』



**



 そのあとはみんなを気合いで手入。みんなには名前を教えていないから、あだ名で恩人さんと呼ばれるようになった。
それからすぐ、政府に事が無事終わったことと死体回収に来てくれと連絡、そして引き取り手の情報。スマホから顔を離し、振り向いて笑顔で言えば、緊張の糸が切れたみたいだ。



『君達は他の本丸に丸々移動になったわ。そこの本丸の審神者さんは刀好きで穏やかな事で有名でな。多分べったべたに甘やかしてくれるで』
「そりゃ本当か恩人さん!?」
『おん』
「驚きを提供しても怒られないか!?」
『当たり前や』



 きゃっきゃと騒ぎ出す刀剣男士たちがいる部屋からそっと出て、すっかりきれいになった本丸を縁側に座りながら眺める。いやあ、ホンマきれいになったなぁ。



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27:ぜんざい◆A.:2016/10/26(水) 21:50 ID:5iA




「ちと良いか恩人殿」



 ふと後ろから声を掛けられ、振り向けばにこにこと笑っている三日月の姿。『どうしたんや?』と聞けば三日月は「頼みがあってな」と横に座った。



『頼み? なんや、ゆーてみ』
「いや、そこまで大した事ではない。俺を連れていって欲しいのだ」
『……ん?』
「なんだ、聞こえなかったか? 仕方がない、もう一度だ。俺をお主の刀として連れていって欲しい」



 三日月はにこにこと穏やか且つぽけぽけした雰囲気を纏わせているが、話の内容はぽけぽけしていることではなかった。大したことないってお前、大したことだぞ。これからの人生に関わるんだぞ。困惑した顔をしていれば「その話、僕も聞きたいな」と柔和な声が反対側から聞こえてきた。振り向けば、にこにことイケメンスマイルを浮かべて、且つ唯一の左目で「なら僕も連れてって」と訴えている燭台切。コイツは雰囲気が柔和じゃない。反対隣の三日月が「燭台切、お前もか」と朗らかに告げる。
 俺はたまらず溜め息を吐いた。



『……理由はなんや?』
「お主の持つその太刀に惚れた」
『ん?』
「僕自身が着いていきたいと思ったんだ。それに、君の体躯(からだ)のこと、なんで傷が塞がったのか、そうなった経緯」
「俺もだ」
『お、おん』



 二人の言葉を聞きながら、正面を向いて、景色を見ながら唸る。っていうか、三日月は緋斬に惚れた? え、なんで?



『俺、一ヶ月に一回、現世に戻んねんけど』
「それでも良いよ」
「俺達は着いていくからな」
『俺、お前らの仲間の刀剣が行く本丸の主みたいにべったべたに甘やかしできへんで』
「適度に甘やかしてくれればそれで良いよ」
「構わぬ」



 俺は一箔置いて告げる。



『訓練するけど、厳しいで』
「!! 全然構わないよ!」
「俺もだ、俺の様な爺がどこまで出来るが分からんがな」
『決まりやな』



 よろしゅーなと二人と両手で握手し、自分が女だと伝えると燭台切がすごくびっくりしていた。「女の子に刀を向けてたなんてかっこ悪いなあ!」と笑う燭台切に苦笑、三日月は俺と元主の会話を聞いてたから知ってたようだ。



『ところで、三日月は緋斬に惚れたゆうとったけど、どない意味なん?』
「なるほど、あかぎり、と言うのか。なんだ主、知らんかったのか? その緋斬と言う刀。付喪神が憑いておる」
『え¨、ホンマ!?』
「ああ、眼鏡を掛けた、短い髪の乳がでかい刀剣女士だ。どことなく主に似ておる。今度顕現したらどうだ、俺が嫁に貰おう」
『よ、嫁!!!?』



 なるほど、コイツ戦闘中俺の左肩突いたとき、緋斬見てあんな顔してたのか。それにしても一目惚れて、どんな美人なん? 緋斬。

 緋斬は当時、平安に打たれた太刀で、伊達家ができてからは伊達家が緋斬を引き取り俺のような気を自由自在に操れる天才の時の為にと倉で厳重保管されていた。まあ三日月とほぼ同い年か。俺に似てるのは生まれた時から一緒だったからだろう。どんな美人だろう、楽しみだ。



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28:ぜんざい◆A.:2016/10/27(木) 23:20 ID:5iA



 それから、とりあえずまあみんなが三日月と燭台切を見て羨ましいだの俺も行きたいだのと行っていたがもう登録的なことが終わってたので残念に思いつつあの子たちとは別れた。
 その後本丸を頂いたのだ、時の政府から。うわー、広いー! とか言いつつエヴァの城の方がでかかったなーとか考えて部屋を散策。



『いやぁ広いわー、なんやお嬢様の家の方がでかかった気ぃするけど』
「? お嬢様って誰なんだい? 主」
『俺の家が代々使える近衛家の一人娘でな、近衛木乃香様言わはるねん。美人やで』
「ほう、主従関係なのか」
『まあそうなるな』



 そんな会話を終えてさて早速初鍛刀と行きますか! とかいいながら鍛刀部屋で可愛い妖精に依頼札を差し出して適当な資源を渡して三人で誰が来るのかな何ていってれば申し訳無さそうな顔をした精霊さんが!



『ど、どないした!?』



 指指した方を見れば失敗した刀剣、まあまあ次があるよともう一度やるも失敗。俺には鍛刀運が無かったようだ、悲しみ。
 ならばと出陣してみるも手応え無し。もう俺出陣運も鍛刀運も皆無みたいだ、もうこれ以上刀剣増えない。
 二人に泣きすがって見れば、これでも構わないからゆっくり行こうと慰めてくれた。うわあああああ!



『あああ、三日月どないしょう』
「あなや、主がこんなに落ち込むとは、俺にとっても予想外だなあ」
『そのほけほけ雰囲気今の俺には薬やねんわ』



 うおおおお、とか言いながらいつもの戦闘服ではない、頭にバンダナを付けた服装の三日月の肩に頭を押し付けてぐりぐり。それでも動じずズズズとお茶を飲む三日月。流石、爺さんなだけあるな。



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29:ぜんざい◆A.:2016/10/28(金) 19:43 ID:5iA



 緋斬を顕現しようと思ったのだが、それより早くもとの世界の彼らから誘われていたウェールズへの旅行の日がやって来た。
 長期になると時の政府に言えばブラック本丸の件のボーナスを全て注ぎ込んで休暇を頂いた。約一ヶ月である。三日月と燭台切の同行許可も取ってある。準備万端だ。



『俺の仲間と初対面やな』
「その人たちと外国に行くんだよねえ僕達」



 外国なんて初めてだ、その人たちと仲良くできるかなと少しの不安とわくわくが混ざった様な顔をしている燭台切。俺はとりあえず大丈夫や、と告げておく。

 今から俺達はネギま部の旅行と言う名目で、ネギ君の故郷イギリスのウェールズから魔法世界にいくのだ。
 そう、魔法先生ネギま!の原作で有名なあの魔法世界編。俺が審神者になる前にネギ君の事を世界最強と告げたのは原作を知っていたからだ。現在のネギ君はまだエヴァの『闇の魔法(マギア・エレベア)』は習得出来ていない。
 俺は一応エヴァとの修業で死にかけになりながらも命からがら炎のマギア・エレベアを習得した。そしてなぜか覚醒し不老不死(仮)化してしまったと言う訳なのだ、本当に不老不死かは数年経たないと分からないが、不老は本丸の審神者になったので確立され、不死もあのくそ女審神者に首を飛ばされても生きていたので立証した。
 俺は今完全に不老不死だ。やったー。



『さて、行くか』
「うむ」
「楽しみだなあ」



 ……とりあえずうちの刀剣男士が癒やし過ぎるな!



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30:ぜんざい◆A.:2016/10/28(金) 21:16 ID:5iA


 とりあえず、二人には魔法で絶対に神隠しをしないと言う契約の元、名前を教えました。
 成田空港にて。三日月と燭台切に洋服を着せてやって来たのだが、如何せんあの子たち目立つなあ。



「主、行かないのかい?」
『いや、あの美人達の中に割り込むてなるとどうもなあ』
「主も退けは取ってないぞ」
『三日月お前』



 うおー、とかやって皆の前に出る。千雨居るしあとは俺達だけやってんな。



『すまん、待たしたなあ』
「いおり先輩来たよー!」
「御勤めごくろー様伊達先輩!」
「いおりちゃん今回もよろしゅーなあ」
「お嬢様共々よろしくお願いしますいおりさん」
「お久しぶりですいおりさん!」
『おー、久しぶりやなあお前ら。ネギ君もお疲れさん』
「おやおやぁ? 後ろの二人はいおり先輩の刀剣男士かなあ?」
「かっ、かっこエエな!」



 わらわらとたかってくる可愛い後輩たちに挨拶し、後ろでみんなのテンションの高さに固まる燭台切とにこやかに微笑む三日月を見やる。っていうか燭台切、助けてどうしよういおりちゃん!と視線で助けを求めている。とりあえず笑って自己紹介を。



「僕は長船が祖、燭台切光忠だよ。これからよろしくね」
「眼帯してイケメンなのに僕+穏やかキャラだとおおおお!?」
「かっこええなあ君!」
「!?」



 早乙女ハルナがアホ毛をびゅんびゅんと稼働し、このかが目をキラキラ。俺は戸惑う燭台切に苦笑いしながらほわわんと微笑む三日月を見やった。



「俺は三条宗近の打った刀、三日月宗近だ。よろしく頼むぞ」
「び、美人だー! 和風だー!」
「あなや、少々喧しいが静かよりマシだな」
「心も広かったー!」
「この爺とも仲良くしてくれよ」
『三日月は約千百年前の刀やから自分の事を爺言うねん』
「僕もそこそこだけどね」



 みんなでキャッキャと仲良くなったところでフライト。三日月と燭台切が身を固くしていたが、まぁ初めての経験だったらしく少しばかりはしゃいでいて可愛いかった。



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31:ぜんざい◆A.:2016/10/29(土) 09:02 ID:5iA



 やって来たイギリスにて、奇跡的にいいんちょ率いる一般人後輩と遭遇。一通りネギ君と熱い抱擁を済ませたいいんちょがこちらを見て目を輝かせた。



「いおり御姉様! いおり御姉様もいらっしゃっていたのですね!」
『久しぶりやなああやかちゃん、学園祭ぶりか』
「そうですわね!」



 そして後ろの燭台切が「妹さん?」と聞いてくるが、そう呼び慕ってくれているだけだと教える。そしてみんなが興味津々に見つめるイケメン__燭台切と三日月に自己紹介をさせる。とりあえず一般人だから刀だと言うことは明かすなと教えて。



「僕は燭台切光忠、変な名前だけどよろしくね」
「三日月宗近だ、爺だが仲良くしてくれ」
『三日月は言動が爺さんやねん、気にせんといて』
「キャー、イケメン!」
「私の知る刀と同じですわね」
『ぐ、偶然やで!』



 雪広あやか、恐るべし。日本刀の名前をちゃんと覚えているとは、さすが金持ち、財閥の次女。
その後ウェールズへみんなで出発。到着時にネギの義姉、ネカネさんとネギ君の感動の再開を見届けた。
 そして翌日、魔法世界に旅立つそこへ、あの事件が有ることを俺は完璧に忘れていた。



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32:ぜんざい◆A.:2016/10/29(土) 09:46 ID:5iA



 ストーンヘッジで光に包まれながら俺たちは魔法世界に到着した。そこから外を見てみれば、それはもうファンタジー! な光景が。



「乗り物と言うものは浮いてるし、すごいね、ここは……」
『せやな……!』
「流石の俺も感嘆だ」



 そして、そのすぐあと。ことは起こった。



「ネギィッ!!! ネギーーーーー!」 



 そんな叫び声にハッとする。しまった、完全に忘れていた! これから起こる事に気を取られて目先の事件が思考から外れていた。今しがた、ネギ君が鋭い石の槍に右胸を貫かれている。



「な、ネギ君が!」
「坊や!?」
『お前ら剣出して抜け! 俺明日菜呼んでくるから、ネギ君守れ!』




 二人はこくりとうなずくと武装してネギ君の所に駆けていった。ふたりがなぜ武装出来たかと言えばほぼ俺特製の術を掛けたお陰である。
 とにかく、俺は今緋斬も焔の斬剣(アーティファクト)もない。ネギ君の傍らには密航したのか偶然か、一般人である大河内アキラ、佐々木まき絵、明石裕奈とローブを被った女の子が突然現れて和風な武装の三日月と燕尾服に防具の燭台切に、刀を持つ二人に驚いていた。

 そこでいきなりの敵からの攻撃、敵は、フェイト・アーウェルンクス。長瀬楓と桜咲刹那がネギくんを庇うように攻撃を防御した。慌てて跡を追うようにその場に降り立つと一般人後輩は目を見開いていたが、他の後輩は「い、いおりさぁん!」「どうしよう、ネギが、ネギが!」「アーティファクトカード等の武器があの箱に!」と泣きそうになりながら懇願してくる。俺は歯噛みしながら明日菜に告げた。



『明日菜、あの箱を壊せるんは君だけや、分かるな?』
「え、ぅ、うん……」
『君は魔法完全無効化能力者や、殴ったら壊せる!』
「!」



 そういうとばたばたとせわしなく箱に駆けていく神楽坂明日菜を見届け、仲間を連れてやって来たフェイトを睨む。そこで小太郎、楓、刹那が飛び出した。

 半ば乱闘になりつつも、楓は敵の術にやられて黒い球体に閉じ込められ、小太郎は敵の神鳴流の睡眠技を喰らわされ、刹那がフェイトに吹っ飛ばされた。
 あの威力、普通の刀剣男士なら即折れている強さだ。二人には俺の術を掛けているし、救ったあとに練度もカンストさせたので大丈夫かも知れないが、それでも心配だ。
 やられてしまった三人に声をあげる二人に『お前ら! いいって言うまで動くなよ』と心配オーラを撒き散らして、牽制。

 その後ぼろぼろなネギ君がフェイトの顔に一発ぶちこみ、そのあと明日菜が箱を叩き割り、武器を解放した。


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33:ぜんざい◆A.:2016/10/29(土) 13:20 ID:5iA



 アーティファクトをアデアットして各々の部具を手にした明日菜と木乃香を見てネギはもう大丈夫だと悟り、明日菜にアーティファクトカードと緋斬を投げるよう指示する。



『明日菜! 緋斬とカード!』
「分かりました!」



 ブォンと飛んでくる二つを無事キャッチして発動させる。両隣で刀を構える、かちゃりと言う音が聞こえた。



「坊やのあの怪我は治るのか?」
『三日月か。木乃香お嬢様の力は治癒や、絶対治る』
「なら話は早いよ。かっこよく行きたいよね!」



 ちょうど明日菜とクーフェイが相手方に飛び出してフェイトが木乃香の目の前に出たところで燭台切がフェイトに豪剣を振るう。ハッとしたフェイトが石の息吹を発動し、それに反応して燭台切が木乃香を抱え込んだ。



『光忠!!』
「コノカ!!」



 だがしかし、石の霧が晴れれば木乃香と燭台切は石化しておらず、ばさりと、刹那の背から生える真っ白い翼が庇ってくれたようだ。



「この人たちには、指一本触れさせん!!」



 鬼気迫る表情でフェイトを睨み付ける刹那を一瞥し、アーティファクト能力、匕首 十六串呂(シーカ・シシクシロ)でフェイトと激しい攻防線を開始する。
 そして斬!! とフェイトの体を二つに斬るが、偽物で刹那を後ろから狙うもクーフェイに阻止される。そこからみんな入り乱れての乱戦。ほとんどが爆発や剣威の猛攻だ。



『はじめましてぇフェイトアーウェルンクス!』
「君は見たこと無いな、でも君……人間じゃないね」
『不老不死体や! 伊達いおり! これからまた会うなあ!』
「くっ」



 刹那に代わり、フェイトの相手をする。緋斬でついて、全方向からの太刀攻撃。太刀は全て石化されたが、緋斬は石化の霧を一閃する。緋斬に斬れないものは何もない!
 途中にネギ君の傷も治り、戦線に出てきたところで、転送ゲートをフェイトが破壊。そのあと、冷たい瞳でフェイトがネギ君を見て言い放った。



「こちら側へ来るには君は少しぬるま湯に浸かりすぎて居たんじゃないかな。ここからの現実は僕から君へのプレゼントだよ。
……またね、焔の剣士」



 最後にこちらを見てフェイトは転移ゲートで去っていった。俺は咄嗟に三日月と燭台切の手を握る。バッと振り向いた二人に真剣な顔で『手ぇ離したあかんで』とぐっと力を込める。二人は困惑したような顔をしたが、ぎゅっと握り返してくれた。腰に差さる緋斬がかしゃんと揺れた気がした。

 そのあと、フェイト達一味により仕掛けられた転移ゲートにて、俺達三人とみんなは散り散りになってしまった。



.

34:ぜんざい◆A.:2016/10/29(土) 19:49 ID:5iA



 それから。無事どこか見知らぬ街へと転送された俺達三人。慌てて刀を構えれば路地裏らしくだれも居ない。幸い刀を抜いて臨戦態勢だった事は見られていなかった。チン、と言う金属音が続けて鳴って刀を鞘に納める。



『……どこやここ』
「町のみたいだね」
「見たら分かるな」
「分かるね」



 二人とも武装は解けて俺が与えた私服へと服装が代わっているが、俺も多分同じだ。今回はシャツにパーカー、短パン、ブーツと動きやすい格好である。
 辺りを見回せば、大きな地図が。そこでここの町の名を確認、のち俺はだんだん頬をひきつらせた。



『オスティア……』
「……“おすてあ”だと?」
「“オスティア”だよ三日月さん」
「はっはっは、異国の言葉は苦手でな!」



 端正な顔に似合わず、少し大きい声を挙げて笑う三日月に微笑んだ。三日月は扇子を持っていると思ったのか、手を口元に持っていった、そして「あなや、扇子が」「扇子は武装の時だよ」と言うやり取りが行われる。なんて可愛いんだうちの刀剣男士は。


**


 それから数日、年齢詐称薬で大人になったネギ君と小太郎君が拳闘士として闘技場で戦い始めた。名前は小太郎君は犬上小次郎、ネギ君はナギ・スプリングフィールドと名乗っているようだ。ネギ君の父、ナギ・スプリングフィールドはこの世界じゃ有名らしく、ネギ君が名乗った瞬間闘技場がざわめいたらしい。元々この旅行はネギ君の父、ナギを探す旅だったので、なんら問題は無い。まあ拳闘士になった理由は奴隷となってしまった大河内アキラ、和泉亜子、村上夏美の100万ドラクマ(お金の単位)の借金の為だろう、今回の拳闘士大会の優勝賞金が100万ドラクマだから。

 今日はその一般人三人組が奴隷として働く店へとやって来た。今まで退治仕事とかで食い繋いできたからかなりお金が余っているから。
 テラス席に腰を下ろし三人で待っていれば注文を聞きに来て目を見開くアキラに笑いかける。



『久しぶりやな、アキラ』
「伊達先輩! 無事だったんですね、良かった。……あの、も、もしかして伊達先輩も、魔法使い、なんですか……?」
『まあ、種類はちゃうけどな』
「……と、とにかく本当に無事でよかったです。……三日月さんや燭台切さんも魔法使いですか……?」
「いや、僕らは違うよ。ね、三日月さん」
「ああ。俺達は伊達いおりを主とし、人型になる力をもらった刀剣の付喪神だ」
「つ、つくもがみ!? え、神様ですか!?」
「まあ僕らは神の中では末席に位置するから、気にしなくていいよ」



 と、会話したところで「伊達先輩はもう知ってますか?」とアキラが俺に声を掛けてきた。



『なにがや?』
「ナギ……いや、ネギ先生が右腕を飛ばした場外乱闘のこと」
『あ、あー』



 しまった、もうやっとんか。と顔をしかめる。向かいに座る燭台切が「え、腕!? いおりちゃんならまだしもネギ君は治るのかい!?」と目に見えて慌て出した。三日月は出されたお冷やを慌てる様子なくずずずとすする。



「まあ、ここは摩訶不思議な事が起こる世界だ、腕くらいくっつくだろうな」
「あ、そっか」
『あっさり過ぎやろ光忠』
「はっはっは」



.

35:ぜんざい◆A.:2016/10/30(日) 15:34 ID:5iA




「よしっ、大丈夫そうだな。亜子さんに心配かけちゃったなあ、多分みんなにも……。でもこの危険は覚悟の上で父さんの名を名乗ったんだし、それに……みんな、どうしてるだろう。元気に……して、るかな……」




朝焼けに包まれながら呟いたネギを、三日月は見つめていた。光忠といおりは近くの宿でまだ宿で睡眠をとっているのだが、なにゆえ自分は爺、早く目が覚めてしまったので昨日来たところへやって来ている。書き置きは残してきた。



「やあ、坊や」
「み、三日月さん!!? 無事だったんですね! よかった……って事は」
「うむ、いおりも光忠も無事だ」
「よ、よかったです! 怪我でもしてたらどうしようかと……」
「はっは、安心しろ。我ら刀剣男士、依代である本体さえ傷つけられなければ怪我はせぬ」
「すごいですね」
「ふむ、俺は驚いたぞ。俺より一回り程小さかったお主が大人になっているのだ。鶴が見れば飛び付くな」
「……鶴、ですか?」
「ああ、鶴丸国永、奴も付喪神でな、常に驚きを追い求める奴だ。確か驚きがなければ俺は死ぬと言っていた俺とそれほど変わらん爺のよ。アイツは驚かすのが好きでな、畳の下から天井から、挙げ句秘密の通り道だといって壁に穴を開けたり落とし穴を作ったり」
「じ、自由奔放な方だったんですね」
「暇はせんかったし、腕は確かだしな」



 そうですかと笑うネギに三日月は微笑みかけ、隣に行こうと一歩を踏み出した時だった。固くてトゲトゲしたものがボコッと頭に直撃した。
 三日月の頭に。



「うっ」
「三日月さーん!!?」
「うわっ、わり三日月さん!」
「大丈夫ですか、三日月さん」



 ぱたりと倒れた三日月に駆け寄るネギと固くてトゲトゲしたもの、パイナップルを投げた長谷川千雨と付き人の様な絡操茶々丸が駆け寄ってきた。三日月は気にするなと笑い飛ばし、むくりと起き上がる。



「いい威力だったぞ、なんといったかな」
「長谷川千雨だよ、大丈夫か三日月さん」
「そうか千雨か、いい名だ。神に名を教えるとは度胸があるな。神隠しされるやも知れんと言うに」
「え」
「まあする気は無いがな。俺の嫁は決まっている」



 かかかと見た目のわりに野太い笑い声をあげた三日月に唖然とする二人と一体のロボットだった。



.

36:ぜんざい◆A.:2016/11/02(水) 00:01 ID:9dc



 その後、ネギは小太郎と共に大会を勝ち上がり、他のメンバーがオスティアに来たところでマギアエレベアを覚えたり、フェイトと交渉決裂したり、ラカンが参戦した大会で引き分け、賞金は半々になったが時の気まぐれかラカンが残りの賞金を渡して来た。俺は基本、空気だったけど。怒濤の展開についていけなかったのだ。
 ネギ達がいる控え室で光忠や三日月も安心、またはよきかなと笑っている。光忠はにやにやと笑うラカンに声を掛けた。


「いやぁ、亜子ちゃんとネギ君のこととか、あの拳闘大会? みたいなののラカン君とネギ君の戦いすごかったね。でも、あの全身から光線を出す、なんだっけ『エターナルネギフィーバー』? 名前がかっこよくないよラカン君!」
「こまけえ事は気にすんなよ光忠! かっけーじゃねーかあれ!」
「全く、君は…」



 全くかっこよく無いよラカン君! と小言を言い出す光忠にみんながざわめく。「あの人にラカン君なんて言える人いたんだ」とか。もちろんみんなは光忠がエヴァより歳上なのを知らないのが理由なんだが。



「はっはっは、なにゆえ凄まじい戦いであったぞラカン。流石の俺も息をするのを忘れたからなあ」
「おいおい三日月さん、あんたほどの奴に褒められると照れるぜ!」
「ちょっと! 三日月さん、褒めちゃダメだよ! 彼はかっこいいとはなにかわかってない!」



 他のみんなは今度はあのジャック・ラカンが三日月にさんをつけたことに驚愕している。確かに、二人とも見た目はラカンより若いけど。

『あー、みんな。光忠と三日月は実はなエヴァちゃんより年上やねん。三日月に関したら1100越えとるねん』
「「「ええ!?」」」
「だから爺だと言ったろう」
「僕もそこそこだけどね」
「光忠はともかく11世紀から歴史を見てる人に敬称は外せねーだろ」



 ネギや小太郎には既に教えていたのでそれ以外のみんながなんだそうなのかと納得しているとき、小太郎が口を開く。



「やっぱ三日月の爺ちゃんの言う通り、俺も旗から見とってビビったわ」
『あー、ほんまなぁ。ネギ君もマギアエレベア覚えたし俺と同じになったなあ』



 すると、みんなが『え?』と一斉に俺を振り向いた。あれ、いってなかったっけ。



『俺、一応マギアエレベア使えんねんで? オリジナルエヴァ直々に叩き込まれたし副作用を自分の一部として飲み込んだから俺既に人間ちゃうし。俺もネギ君みたいにオリジナルスペルとか作ったわー、火力がぶっとんどったけど』



 そう言うとなんでいってくれなかったんだー! とか教えてあげればよかったじゃなーい! とか言われた。



『俺もネギ君みたいにふたつともコンプレクシオーしたわ、エヴァちゃんと対戦して引き分けたでドヤァ』
「な、なんで教えてくれなかったんですかー!? 偽マスターに教わって僕はあんなに血ヘド吐いたのに! いおりさんに教えてもらった方がよかったですー!」
『ん? そんなん言ってエエのネギ君? 俺の特訓は多分……エヴァより血ヘド吐くことになっとったで?』
「!?」



.

37:ぜんざい◆A.:2016/11/02(水) 18:11 ID:9dc



 そしてその後、行方不明だったユエちゃんと合流、記憶喪失でしたが無事だった。その時にメガロメセンブリアの元老院の一員、クルト・ゲーテル総督と衝突して逃げ帰った次第である。

 そして、まあそのクルトゲーテルさんに今夜行われる舞踏会に誘われた所存であります。
 キャイキャイと騒ぐ女の子たちはメガロメセンブリアから支給されたドレスに目移りしてかわいい。俺はタキシードというか、タキシードですがネクタイしてますはい。
 そして、光忠と三日月がゆーなたちに絡まれている。



「三日月さんは絶対和服よね! ほんわか和風美人なんだから!」
「褒められるのに悪い気はせんなあ、ありがとうよハルナ」
「いえいえー!! 次は光忠さんだー!」
「おー!」
「いえー!」
「ぅえっ!? いやいや、いいよ僕は。武装用の燕尾服が有るから! その方が動きやすいんだよね! ね!? 三日月さん!?」
「俺たちはいおりのお陰でいつでも武装出来るではないか。何をそんなに焦ってるんだ光忠?」
「さっすがお爺ちゃん! つー訳で光忠さん覚悟! このか! まき絵! パルナ! 明石ゆーなが命じる! かっかれェェエエ!」
「「「イエッサー!」」」
「うわあああああ!?」



 女の子大勢に掴み掛かられてもみくちゃにされる光忠を見て三日月と笑う。やっと解放された光忠はタキシードを着ていたが、『あんま変わらんなぁ』「変わらぬなあ」と穏やかな会話のネタにさせていただきました。
 そこで突然ハルナが口を開いた。



「んっふふー! 祭りの夜の宮殿での舞踏会かぁ、花火に照らされた二人きりのテラス、星空のしたに花咲き乱れる中庭……これ以上ロマンチックなシチュは、二度とないかもねぇ」



 恐らくパクティオーのキスの事を言っているのだろう、現に数人があらゆる態度を取った。そして、ハルナは俺達三人を見て、びしりと指を指した。



「三日月さんと光忠さんもよ! いおりさんが主ならパクティオーは必須! いおりさんとキスしなさい!」
『おー、分かったわ』
「あーてぃふぁくと? ないと流石の僕らも辛そうだもんね、分かったよ」
「俺も了解したぞ」



 あっさりな俺達三人にゆーなやパルナ、朝倉和美があら? と顔を歪める。



「え、なんですか? 抵抗無いの?」
『んー、抵抗言うても……』
「俺と光忠は刀だからな」
「そんなの気にしないよね、たかがキスだよ?」



 そこで数人の女子がピッシャーーンとショックを受ける。ショックを受けた理由は知らないが、そんなに重視することなんやろか。



『俺がネギ君としたときもそんな気にしてへんかったで』
「えー、女の子としてそれは」
「刀じゃないんだし」
『俺の見た目見てや』



 そして、みんながじろじろと俺を見て「ああ、男顔」と納得した。そこでハルナがとんでもない提案をしでかすのである。



「ならいおりさん、今日はタキシードじゃなくてドレスにしましょ?」
『はぁ!!?』



 似合うわけないやろ!



.

38:ぜんざい◆A.:2016/11/02(水) 18:29 ID:9dc



 結局無理矢理ドレスを着せられた俺。髪はショートカットでいじりようが無いからとカチューシャを付けられました。
 胸元の大きく開いた黒の上ドレスに腰の明るい赤の帯、黒のスリットが入った布のしたにみんなの様な赤の長いスカート、二の腕まである長い暗紅色の手袋。全体的に赤っぽいものを着せられてしまった。ううむ、寒い。せめてもの抵抗としてブーツは履かせていただいた。



「う、わーーーー! いおりさん、そういうかっこするとちゃんと綺麗だね!」
「胸デカッ! 一番でかくない!?」
「に、似合ってますよ10代目!」
『10代目言うんやめてや刹那』
「かっこよく決まってるよいおりちゃん!」
「馬子にも衣装だな」
「ダメでしょ三日月爺ちゃん!」
「似合っとるでいおり姉ちゃん」
「綺麗ですいおりさん!」



 みんなから賛辞を述べられ、気恥ずかしくなる。
 その後、魔法世界が火星だと言うことが判明したが特に驚きはなかった。なんやかんやでやって来た舞踏会、とりあえず。



『広いわあ』




.

39:ぜんざい◆A.:2016/11/03(木) 14:42 ID:9dc


 舞踏会と言えば豪華なものを連想するが、まさにここは絢爛豪華、きらびやかな装飾や超豪華ディナー食べ放題、まるで別世界だ。そこで少しボウッとしているネギ君に声を掛ける。

『どないしたネギ君』
「い、いや、ラカンさんトイレ遅いなーと思いまして」
「(ネギー! それよかちゃんとコイツらの相手してんか、俺には無理や)」

 視線でそう訴えてきた小太郎は帝国拳闘協会や取材の報道人、そこらの貴族に囲まれていた。
 俺は面倒事はゴメンだとばかりに少し離れる。ネギ君たちが囲まれたのを良いことに素早くその場を離れて徘徊し始めれば、ディナーを頬張る刀剣二人を発見。おおー美味しそう。

『お前らこんなとこ居ったんか、向こうでパクティオーすんねんで?』
「分かったよ、というかこのご飯美味しいね」
「よきかなよきかな」

 モグモグと頬張る二人に溜め息を吐き、『ほら、行くでお前ら』とテーブルから二人を引き剥がしてテラスへ連れていく。わざわざそんなところにいかなくてもいいと思うが、人目が憚られるからなあ。

『じゃあするでー』
「う、うん」
「任された」

 二人と無事パクティオーして二人にアデアットしていただいた。
 燭台切が『重層剣燭』、三日月が『月光一閃』、ふむ、姿はいつもの武装なんだな。なら能力か。

「僕のは、本体が炎を纏うみたいだね、能力はよく分かんないけど」
「俺は素早さと機動が月の満ち欠けと共に上昇するようだ。俺も実践で使わんと分からんな」
『まあ大丈夫やろ、剣技なら誰にも負けてへん』

 カモ君に聞けば「その二人のアーティファクトは丁度対になるもんだな、能力はほぼ同じだ、斬れないものは何もないぜ!」と教えていただいた。

**

 そのあと、ネギ君とゲーテル総督が対峙したことを聞き、朝倉のアーティファクトでナギとアリサの昔話を放映していただいた。

「くぁー!! こりゃハッピーエンドだね、いやまいった!」
「はああー、良かった二人が一緒になれて」
「捕まってもうた時はどうなることかと思ったんやけど」
「しっかし亡国の王女と大戦の英雄の恋物語だなんてハマりすぎだよねえ」
「アリカ様の最後の笑顔、良かったなあ」
「こんな壮大なお話にあのネギ先生に繋がっているなんて実感わかないね」
「見てみてココ、アリカ様とナギが話してた場所だよ!」
「げげっ、ホントに歴史的名所じゃん、写真撮らなきゃ!」

 とわいわいきゃいきゃい騒ぐ傍ら、光忠は「ネギくんっ……こんな、おおごとが……」と眉間を押さえている。

「あー、ハルナ? 今の映画が難しくて何が何やらわからなかたアル」

それを皮切に私もー、と手をあげ始めた周囲にまじって扇子で口許を隠しながら優雅に「俺もだ」と手をあげている。

「まずMM元老院ってのが悪者だったわけ! もう超巨悪!ほんでアリカ様は超美女なんだけどコイツらに利用されてズタボロに。そこに現れる我らがヒーロー『サウザンドマスター』ナギ! 即救出! 即結婚の大ハッピーエンド! そんな二人の間に生まれたのがネギ君なんだけど、このネギ君の村を襲った真犯人ってのがMM元老院だってんだからさあ大変!つまり親子二代に渡ってコイツらはネギ君一家の仇だったってことさ!」
「ふむ、爺でも分かりやすい説明だハルナ」
「さっすが三日月さん理解が早い!」
「あのラスボスぽいのとかフェイトの一味がネギパパの敵ではなかたアルかね?」
「両方敵なのよ!」

そう断言したハルナにくーふぇは「ふぅーむ、難しいアルねぇ」と頭を悩ませた。そこからゴチャゴチャして、この場から逃げなければならなくなった、うむ意味不。

「ちょっとパル! こんなとこでグズグズしてていいの!? 早く逃げようよー!」

 すると次には「そこの女ども! 動くな!」と叫ばれた。その言葉に小太郎、光忠、三日月が各々男だと反応する。

「賞金首であるお前たちを拘束する! 全員武器とカードを捨てろ!」
「ほらあああ! 捕まっちゃったじゃん!」
「ふふふ……これも計算道理よ! 来たわ!」
「来るって何がさ!?」

 すると塀のしたからグレートパル様号が姿を表した。俺たちはそれに少し唖然とし、その甲板から固定ガトリングガンを持ったさよちゃんが出現、ハッピートリガーと言わんばかりにぶちまけ始める。そこで黙る訳でもないMM元老院戦闘捕獲部隊も応戦してきた。

40:ぜんざい◆A.:2016/11/05(土) 18:21 ID:9dc



 そこからアーティファクトを交えた乱闘を開始する。



「まず僕からだね!」



 行くよ! と駆けて行った光忠の広い背中を見送り、片手間に襲いかかってくるメガロを切り捨て、アーティファクトを遠目に確認する。



「『炎切燭台』!」



 そう叫びながら、相手からぶちまけられる『紫炎の捕らえ手(カブトゥス・フランメウス)』を切り裂く光忠はそのまま遠距離にまで届く火を巻き込ませた広範囲攻撃を食らわせた。遠くの三日月は重そうな装備をものともせず軽々飛び回り、「次は俺か」と激戦の中穏やかに笑う。一際敵が集まったときに、三日月は呟く。



「『月光・壱式【三日月】』」



 背後に闇夜の三日月が見えた気がしたが、三日月は瞳の中の三日月を闘志に揺らめさせながら次の瞬間トッ……とその大量のメガロ兵の後ろに降り立った。チンッ、と納刀した音が聞こえれば、メガロ兵は撃沈した。



「なるほど、壱式は身体能力が一時的に上がるのか」
「僕のは威力は上がってるし…本体が纏える物質も、炎だけじゃないみたいだ」



 物珍しそうに二人して自身の本体を握ったり緩めたり。後ろでみんなが「うおおお!」とか言ってますが大丈夫ですか?
 そこで、楓と刹那と同じタイミングで俺もアーティファクト『焔の斬剣(イグニ・アーティスヴェルヴァルト)』を出して動きやすいストックの服へ変換し、緋斬を敵に向ける。



『百花炎斬!!』
「百花繚乱!!」
「縛鎖爆炎陣!!」



 三人の技名が重なり、一帯が大爆発。そろそろ頃合いか、と煙が晴れたところで、俺は緋斬を三日月に投げ渡す。



「……いおり!」
『すまん三日月、溶けるかもしれへんから緋斬をお前に預ける!』
「……」
『将来夫婦なんやろ!? 時間ないねん!』
「……任された!」
『光忠!! 三日月頼むで!』
「オーケー、任せてよ」


 緋斬を安置に置いたところでひと安心し、彼のことを思い浮かべながら呪文を唱えた。



『シュヴェルツ・シェルヴィス・ヴァン・シュヴァルツ!! 来れ深淵の闇燃え盛る大剣(アギテー・テネブラエアビュシィ・エンシス・インケンデンス)!! 闇と影と憎悪と破壊(エト・インケンディウム・カリギニス・ウンプラエ)! 復讐の大焔(イニミー・キティアテ・デーストルクティオーニス・ウルティオーニス)! 我を焼け彼を焼け(インケンダント・エト・メー・エト・エウム)!! 其のただ焼き尽くす者(シント・ソールム・インケンデース)! 『奈落の業火(インケンディウム・ゲヘナエ)』!! 
 固定(スタグネット)!!! 掌握(コンプレクシオー)!!』



 炎系威力最大の大魔法を唱え、右手のひらに固定し握り潰す。周りがどよめいたり、味方の中には「やっと来た!」とにやつく者もいた。だが、まだ終わらない。



『シュヴェルツ・シェルヴィス・ヴァン・シュヴァルツ!!! 契約により我に従え奈落の王!』
「「「「!!!?」」」」
「え、ネギ君と違う!?」
「まだやんの!?」
『地割り来れ千丈舐め尽くす灼熱の奔流!! たぎれ! ほとばしれ! 赫灼たる亡びの地神! 『引き裂く大地(テッラ・フィンデーンス)』!!
 固定(スタグネット)!! 掌握(コンプレクシオー)!!』



 左手のひらに固定し握り潰す。これが闇を自分の物とし、取り込んだネギ君より一歩先にいる俺の、俺流マギア・エレベア【術式兵装(プロ・アルマティオーネ)『焔の騎士(イグニスナイトティア)』】である。
 これのお陰で俺は不老不死となったわけだ。エヴァとこれで引き分けたことも有るし、常時炎化で腕が飛ばされても治るから平気。全力ではないが俺の最大威力の戦力だ。



『俺は今からネギ君たちの所へ行く! ここは任したで!』
「あい、分かった」
「了解しました師匠!!」




 俺はそれを聞いたあと、塀から飛び降りて目的の場所を探しに宙を飛んだ。



.

41:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 11:03 ID:9dc

Noside



 総督の部屋を無事脱出したネギ、朝倉、千雨、古罪(クー・フェイ)、のどかは大きな揺れの中足元おぼつかず走っていた。ネギはマギアエレベアの副産物をまだ受け入れられておらず、半分化け物になって古罪に肩を貸してもらっている。



「ちっ、なんだこの揺れは」
「連絡ついた? 千雨ちゃん」
「ダメだ、念話が妨害されてる」
「大丈夫アルかネギ坊主」
「は、はい」



 ネギは古罪にそう返事をして、不思議な紋様が浮かび上がった自身の腕を見つめてヤバいかもと内心焦る。そこでいきなり千雨が叫んだ。



「やっぱり上で何かあったらしい! 集合地点変更プランBだ!」
「プランB? 総督の手下に追われてるの!?」
「いや、なにか事故が起こったらしい」
「もしかして新たな敵!?」




 そこでのどかは先程総督から聞き出した世界の秘密の最後の一ピースを知り、顔を青くさせ知らそうとしたところで、のどかとネギ達他を隔てるように通路が割れた。そこで朝倉が地面に手が届かず浮遊し落ちかけたところで、何者かが朝倉を腕に抱え、朝倉へと手を伸ばしたのどかもついでとばかりにネギ達の反対側に下ろした。



「え、い……いおりさんアルか!?」
「伊達先輩だとぉ!?」
「……術式兵装『獄炎煉我』!? いや、服も髪も薄いカーマイン『炎化』!?……僕のとは違うんですか!?」
『おいおい、俺より先に女の子の安否や、大丈夫か?』
「は、はいー……!」
「いやぁ助かったよ、ありがとういおり先輩」



 いおりはふうと一息吐いたところで向こう岸のネギにこの術式兵装の名前を教えてやる。



『これは術式兵装(プロ・アルマティオーネ)【焔の騎士(イグニスナイトティア)】や』



 そこまで教えたところで「オーイ!」「大丈夫かー!??」と走ってくる男女の影、のどかがお世話になった冒険者(トレジャーハンター)の女性がアイシャさん、男性がクレイグさんだ。いおりたちを見た二人はネギに叫ぶ。



「おーい坊主! 今嬢ちゃんから話は聞いたぜー! ここは任せろ! 嬢ちゃんたちは俺たちが合流地点まで届けてやる!」
「し、しかし!」
「のどか嬢ちゃんはもう俺達の仲間でもある! トレジャーハンターはこれでも仲間意識は強ぇんだ! 勝手ながらこの子たちの面倒見させてもらうぜ!」
「え、」
「な?」



一通りネギに宣言したクレイグはのどかを見て同意を求める。その時のわずかばかりのリア充雰囲気を見ていおりは『中学生乙女はエエなあ』とほのぼのした。かわゆす。そこでいつの間にか出現していた外の化け物の攻撃が襲ってきた。そこでネギたちとは別れ、みんなで走り出す。



「はははは! まさか嬢ちゃんとまた一緒に走ることになるとは思わなかったな」
「は、はい! そうですね!」
「俺そっちの坊主の名前知らねえや、名前は!?」
『俺? 俺は伊達いおりや! こう見えてれっきとした女やで!』
「「!!?」」



 そんなことを話ながら走っていれば、黒い長身の男が立ちはだかるように立っていた。いおりはバッとアーティファクト焔の斬剣の指令刀を構える。



「ミヤザキノドカ……危険だと聞いている」
「嬢ちゃん!!!!」



 次の瞬間、のどかを庇ったクレイグの上半身が男の「リライト」と言う言葉と共に塵となって消えた。



.

42:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 11:30 ID:9dc



 それから、色々あって放心するのどかを庇いアイシャも姿を消す。そして立ち直ったのどかはいどのえにっきを駆使し、二人を消したときに使用した鍵のような杖のようなものを奪い「リロケート」と言う転送魔法で俺達はその場を離脱した。


**


 その後、パル様号へ戻って来たネギ達は今共にいる明日菜が偽物と言うことを知り、情報を聞き出したのち、ネギのマギアエレベアの暴走を止めるためにネギが習得に使った巻物のなかにいる偽エヴァに教えてもらうことにした。いおりは今爆睡中である。



「マギアエレベアは元々私固有の魔法技だ、ただの人間が使うことは想定していない。闇の眷属でもない貴様が使い続ければ闇と魔に侵食されることは予測できていた。ただ、フフ、ここまでぼーやと相性が良いとは思わんかったがな。
 このまま行けば__恐らく精神も肉体も完全に魔に支配されて人外の化け物になる。二度と人間には戻れないだろう、私の様にな」
「ま、待てよ! なら伊達先輩は!? 伊達先輩は普通に使ってたぞ!?」



 千雨が慌てて焦るようにエヴァに問い掛ける。少しでも良いからネギが化け物にならない可能性が欲しいんだろう。だが、エヴァはそれを切り捨てた。



「アイツは化け物に……不老不死に自ら進んでなったよ、「これでエヴァも寂しく無いなぁ」とな。アイツは「これからの守りたいもの」の為に副作用と真正面からぶつかり、私でも驚くほどの圧倒的な “力” “技術” “剣技”を用いて副作用を服従させ平伏させ飼い慣らし、あまつさえ自らの一部として受け入れたのさ、まあ本体直々に教えられたんだからそれくらいしてもらわんと困るがな。だからアイツも私と同じ不老不死。見た目も身長も中学から変わっとらん。まったく、度胸と実力のある女だ。ましてや、2つの炎系大魔法を片方ずつの腕でコンプレクシオーするなど、私も考えたことがなかったことをやってのけた女だからな。見ていて面白い。
 ……話を戻すがその過程で耐えきれなければ死ぬかもしれんがな。しかしこれは言ってみれば生物種としてより上位の存在への転生だ、悪いことでもないかもしれんぞ。
 むしろ父の偉業を継ごうと決めた貴様ならそういった存在となった方が有利ではないかな? くっくっく……」




 エヴァの言葉に真剣に悩んだネギは、それでも良いと決意してエヴァに授業を頼んだのだった。



**
いおりside



『お前ら! 無事やったか!』
「逆に聞くが、俺たちがやられるとでも思ったのかな?」
「大丈夫だよいおりちゃん、僕らはいおりちゃんの神力……こちらで言えば魔力で姿を保っているからいおりちゃんの不老不死の性質も受け持っている。傷なんて受けてもすぐなおるよ」
『……俺の魔力便利やな』



.

43:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 12:06 ID:9dc


 残りのネギま! をスッ飛ばします。私の文章力では……(泣)

**


 あの魔法大戦と体育祭、明日菜の旅立ちと帰還を終え、それから七年後。
 俺達は昨日の同窓会を終えて本丸でのんびりしていた。七年の月日は長く、三日月、光忠と共に出陣演練遠征を三人で繰り返し、俺は「戦闘系審神者」「焔の騎士」と名を馳せて俺の本丸は超少数ながら数ある本丸の中で最強の座に君臨した。それでもちょくちょく現世に行ってエヴァとマギアエレベアが鈍らないように訓練したりネギ君と修行したり、あれ? 戦いしかしてなくね?



『あー、あの魔法大戦からもう七年経ってんねんなぁ』
「いおりや、早く緋斬を顕現してくれ」
『急かしなや三日月』



 俺は今、鍛刀部屋に来ていた。別に鍛刀するわけではない。だって出来ないもん。あ、ひとつお知らせが。昨日、たったつい昨日! やっとドロップの刀を手に入れました! 七年間ずっと三人で寂しかったんだよ! まあそのあと「また見つかるかも」と進んでみたら収穫なし。どうやら奇跡だったらしい。その刀は大太刀で、『蛍丸』と言う。大太刀なのにちっちゃくて可愛い。相棒の愛染国俊を早く見つけてあげたいが、鍛刀運もドロップ運もない俺には無理だ。そう言えば蛍丸は「気にしないでいいよ、直に来るって」と励ましてくれた。蛍丸天使ぃ。名前は神隠ししないと言う契約で教えました。緋斬とは刀に契約させました。
 三日月と光忠と蛍丸が見守る中、俺が緋斬を顕現させてみれば、そこには格好いい系のクールな雰囲気と色気を振り撒く眼鏡の、赤髪にバンダナを巻いた長身かつ巨乳の女性が。なるほど、三日月の言っていた刀剣女士とはこういう……。



「緋斬や、よろしゅう、こっち(私)の主」



 一人称は『こっち』らしい。まあなんてきれい。



「他の刀も、よろしゅう」
「うん、よろしくー」
「よろしくね」
「ふむ、賭けは俺の勝ちだ緋斬、お前を貰う」
「……」
『賭けってなん? 三日月』
「いおりと戦って俺が尻餅を着いたときに緋斬と賭けをしてな。
 俺がいおりと一緒に行きたいと言い……了承されたら俺の勝ち、拒否なら緋斬の勝ちというものをな」
「……賭けや、しゃーない」



 そのハイライトの入っていない瞳を遠い目にして後ろから飛び付く三日月にされるがままの緋斬に蛍丸、光忠と苦笑いする。



「それよりいおりちゃん、蛍丸くんにいおりちゃんの説明したほうが良いんじゃない?」
「説明?」
『せやな。蛍丸、俺は人間ちゃうねん』
「……ん?」



 俺がそう言えば蛍丸は意味不明と言わんばかりに首をかしげる。光忠から「言葉が足りない!」と叱られた。



『俺な、魔法使い言う存在やねん。その魔法の中でも命を落とすかも知れん魔法を習得してな? いやーそれの副作用が体を蝕んで化け物になりかけたり死にかけたりしてん。やけどそれを自分のものにしたら、不老不死になってん。正確には吸血鬼よりの不老不死やな。やから俺人外やねん』
「……光忠。これほんと?」
「副作用、とかは初耳だけど、不老不死とか化け物とかは事実だよ。首飛ばされてもくっつけた人だから」
『まあそんな俺の神力を体に取り込んだお前は俺と同じ不老不死になってもうた訳や、いややったら言いな』
「いや、別に良いよ。傷つかないなんて最高じゃん」



 へにゃっと笑う蛍丸に光忠と癒されていれば、三日月の腕に抱え込まれる緋斬が「いおり様」と口を開く。



「本部からの手紙来たらしいで、こんのすけが」



 縁側のところでこんのすけがちょこんと座り、口に手紙をくわえているのを見て、手紙を渡され見てみれば。



『……なんやこれ』
「え、何が?」
「どうしたの?」
「ふむ?」
「どないされました?」



.

44:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 12:57 ID:9dc



 その指令にはこう書いてあった。



『……【家庭教師ヒットマンREBRN!】の世界に時間溯行軍が出現。討伐を指令する。尚、原作は曲げても構わない』
「家庭教師ヒットマンREBRN! って何? いおり」
『すごい有名な漫画や。時間溯行軍が原作を潰しに世界を渡って行くらしい。それの討伐指令や、しばらく滞在になるやろから本丸もその世界にこのまま写すらしいわ』
「どういう意味だ光忠?」
「ちょっと違うけど、ネギ君たちの時みたいなものかな」
「なるほど」
「いおり様、付け足しておきますがあたしはいおり様が『焔の騎士(イグニスナイトティア)』を発動させたときも溶けませんので使ってくださいや」
『……マギアエレベア使う機会あったらそのときも使うから安心し』



 さて。出発しましょうか。



**



 いろいろ手続きをして、本丸ごと『並盛町』へと引っ越してきた。そう、馬鹿広い本丸ごと。庭に中庭、塀に手合わせ棟、離れに本丸。わーどこの伊達本家?
広い日本家屋風本丸の表札が必要だと言うことで名字は『伊達』とした。俺はもう社会人設定だが金は時の政府から振り込まれるので自由にしてていいらしい。さて、主人公たちと接触を図りますか。



『オーイ! ちょっと外散歩してくるなー!』
「あ、待っていおり俺もいく!」



 俺がそう言えば他からははーいと聞こえてきたが蛍丸がとててとついてきた。戦闘時の制服のジャケットを脱ぎ、代わりにと内番の時のジャージに袖を通し、チャックは閉めずに。
 俺はワイシャツの袖を肘下まで折り曲げ黒ベストと赤ネクタイ、七分丈の仕事時の黒ズボンだ。



「この世界は……平和だね」
『せやなあ。ここに時間溯行軍来る言うねん、阻止するで蛍』
「光忠も宗近も緋斬も居るし」
『おん』



 そこで曲がり角に差し掛かれば、何者かと衝突した。待て待て、この流れでいくと……。



「いてて……あっ、ごめんなさい!!」
『おー、大丈夫か少年』



 うわー、沢田綱吉やー。隣の蛍丸が「ねえいおり、この人誰?」と今にもアーティファクトを取り出して斬り掛かりそうだ。ちなみに蛍丸とは既にパクティオーしました。
 俺は沢田に手をさしのべながら「しまっとき」とポケットに手を突っ込む蛍丸の腕を制す。「ありがとうございます」『いやいや』とか会話していると沢田綱吉の番犬、獄寺隼人が吠えた。



「大丈夫ですか!? 10代目!」
「うん、だ、大丈夫だよ獄寺くん」
「てめー10代目にぶつかるたぁいい度胸だな!」
『いやぁすまんすまん、ケガ無いか少年』
「10代目に馴れ馴れしくすんじゃねー!」
「ご、獄寺くん!」



 ガルルと警戒してくる獄寺に苦笑いしていると、沢田のそばのもう一人が口を開いた。



「落ち着けよ獄寺。ぶつかったのはツナだし、あいこなのな」
「うるせえ野球馬鹿! 10代目にぶつかったんだぞ!?」



 俺を指差しながら怒鳴る獄寺を宥める沢田と野球馬鹿と言われた少年、山本。すると、そこに子供らしい声が響く。



「ねえ、謝ったんだから事を大きくしないでよ。うるさいな」



 俺のそばでベストに握るように寄り添い、微かに殺気を滲ませて獄寺を睨む蛍丸。俺は慌てて『落ち着きや蛍!』と頭をポムと叩いて殺気をしまわせるが、依然睨んだままだ。もうポケットから手を出してよカード握ってんじゃないよ!



「あぁ? んだガキ」
「ガキ? ガキはそっちじゃないの? どうせ14辺りでしょ」
「はぁ!? どっからどー見たってお前は小学生じゃねーか」
『ストップや、蛍……危ないからカード出して』
「……ん」



 すっとジャージのポケットから出てきたアーティファクトカードを受け取り、『蛍がすまんなあ』と苦笑いする。後ろの沢田が「あ、いえ、こちらこそ」と頭を下げた。だが、再び蛍は「良かったね」と獄寺を煽る。



「はぁ?」
「命拾いしたね」
『蛍! もうやめとけ! 煽るな!』
「あのねえ、俺はこれでも我慢してるんだよ? 光忠が居たらあいつの首は飛んでたからね」
『ストォォォォォップ!!!』



.

45:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 13:53 ID:9dc



『ふう。俺は伊達 いおりや』
「さ、沢田綱吉です! こっちが獄寺くん、こっちが山本」
『このちっさいのが蛍な。こんな小学生みたいな見掛けしとるけど俺より年上やねんで』
「「「はぁ!!!?」」」
「ふん」



 そうして彼らに大きな驚きをもたらし、じゃ、と颯爽と俺は散歩の続きを再開した。



『あかんやろ蛍丸』
「ごめん、でもいおり悪くなかったよね」
『世の中にはそんなこともあるねん。……せや、こっちの世界でのお前らの名前決めなあかんな』
「俺『蛍丸』だけだもんね」
『ならはよ家帰ろなぁ』



 蛍丸を肩車して屋根を駆けながら家へと帰った。とりあえず、名前の事を三人に伝えれば口を揃えて「名字は伊達が良い!」と伝えられ、ちょうどいいのでみんなで姓は伊達になった。



『あとは名前やけど……』
「僕は『光忠』だね。この世界にいる間だけだし」
「俺は『三日月』か『宗近』かどちらでも良いんだが……緋斬はどちらが良いか?」
「……三日月のほうで。あたしは……緋斬以外にないんで『緋斬』で御願いしますわ」
「俺は『蛍』でいーよ」
『決定やな』



.

46:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 14:47 ID:9dc



 数日後、手紙入れに半分に欠けた指輪と手紙が入っていた。……ん?



『うわあああああ!』
「どうしたの主!?」
「どうなさりはりました主様!?」
「む? どうした主」
「なにかあったのー?」



 指輪をちらりとみんなに見せると「?」と揃いも揃って首をかしげる。訳がわからなそうなので、説明。ちなみに主様呼びに戻ってるのはネギまの様に一般人の混じった世界じゃないからだ。この世界はあのときほど人口密度多くないし主様呼びに戻した。



『あのな? REBORNの世界ではな、最初の方に指輪編があるねん。それがな、みんなこんな形しとるんや』
「……あ、それに巻き込まれたって訳?」
『せや』



 うわあああ、とか遠い目をしていたら、緋斬が三日月の隣で「主様なら全てを蹴散らせます。ご安心くださいや、あたしも刀としてついていきます」といい顔して言われた。


 手紙を読むにこれは『夕焼のリング』、どうやら指輪編から結構経っている様で、雲戦手前で……今日の夜に並盛中学校で決戦らしい。……夕焼なんてなかったはず……原作早速崩壊かよ。夕焼の守護者はボスは直接関係無く、俺は沢田側だがもし俺が夕焼で勝ち、ヴァリアーが勝てばそのままそちらの守護者になるらしい。特別扱いなのか!「夕焼はリボーンでも知らない。沢田家光より」と書いてあった。俺はトップシークレット扱いか!



『今日、夜に俺は出ていくけど見物人居る? 緋斬は使うから行くときなったら顕現解いてな』
「了解しました主様」
「僕は見物人としていくけど、アデアットして行くからね」
「俺もだ」
「俺もー」
『みんな行くねんな……』

**
Noside

 一方その頃、綱吉はめちゃくちゃにリボーンに聞き立てる。



「ねえ! 夕焼の守護者って誰なの!!? 俺夕焼だけ聞いたこと無いんだけど!! 大丈夫なの!?」
「聞けツナ、俺も夕焼の守護者だけは知らねぇんだ。家庭教師も付いてねえから不安だな」
「それってヤバイじゃん!!」
「夕焼の守護者は『他の追随を許さない圧倒的な力を使う切り札になる』と言う使命を担ってんだ」
「……大丈夫かな?」



.

47:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 16:21 ID:9dc

Noside
その夜、綱吉たちは中庭に居た。大きなリングで囲われた中庭の外から夕焼の守護者を待っているのだ。

「……おっそいなあ」
「時間まであと五分ですね」

相手方、ヴァリアーの方の夕焼の守護者はリアナ・メルリア、女である。彼女はショッキングピンクの長い髪を高いところでツインテールにし、瞳には細かい星が飛び交っているやけに口紅が紅く、猫撫で声をあげている。その様子を見て綱吉側の守護者は顔をしかめた。その時、複数の足音とやけに間延びした声が聞こえてきた。

『遅れましたわ』

現れたのは赤と白の装飾品の付いた黒いコートに昼間の服装、それにスニーカーを履いている長身の人物、いおりである。他に三人、それぞれが燕尾服、着物等の戦闘装備のない服を着ていた。光忠、三日月、蛍丸だ。いおりの姿を見た綱吉たちは「ええ!? 伊達さん!??」と各々に反応する。

「てめー守護者だったのかよ!」
「歓迎なのな!」
「極限に誰かわからんぞー!」

極限と叫んだのは笹川了平、晴の守護者だ。

『伊達 いおりや。夕焼の守護者として呼ばれました、そこそこになあ』

へらっと笑った彼女の指には夕焼のボンゴレリングが填まっていた。そもそも守護者とは、ボンゴレファミリーと言うマフィアの幹部のことを指す。

「……チッ」

相手が来たことに関して柄の悪い舌打ちをしたリアナが視線を逸らす。光忠は鋭い目付きのままリアナを睨むが、チェルベッロ機関の女性の声で意識がそちらへ向いた。とりあえずリングに上がれば、ブーツの底がジュッと音をたてる。なるほど高温か、だが不老不死である俺は関係無い。

「では、夕焼のリング、リアナ・メルリアVS伊達 いおり。バトル開始!」

 その声と共に銃がいおりを襲った。

「あはははっ! 夕焼は圧倒的力で敵を圧しきる! それが使命なのよ、私が体現してるわ!」

白煙にまみれても打ち続けるリアナに綱吉達は顔を青くさせた。

「わ、わあああ! あの人一般人だよ!? 死んでない!?」
「お、落ち着いてください10代目! き、きと大丈夫ですよ!」
「獄寺、ちっせえ『つ』が抜けてるのな」
「うるせえ!」

リアナは下婢た笑みで白煙を見つめるが、晴れた煙からはケロリとした顔のいおりが見えたことにみんなが驚く。

「くっ」
『悪いなあ』

もう一発パンといおりに打ち込むリアナだが、いおりは手に持っていた緋斬でそれをビッと切り落とす。

『京都 神鳴流剣士に飛び道具は効かへん』
「「「な、なんだそりゃー!」」」
「おいリボーン、何者だあの女。コラ」
「俺も知らねえが、神鳴流なんて聞いたことねえな」

外がそんなことを話しているとも知らず、いおりはリアナに斬り掛かった。

『行くで! 神鳴流奥義、百花乱れ桜!』
「いやあぁっ!!」

ざぁっと斬撃を食らわせればわざとらしく一歩下がった。どうやら下がって銃撃しようとしたらしいが、いおりがそれを許すはずもなく絶え間なく剣撃は続く。ガギギギギと鋭い攻撃を拳銃で受けながら見てリアナは頬を緩め、短刀を懐から取り出した。それを見ていおりは一歩下がる。

「っ、国俊!!!」
『蛍!!! ……ちっ、お前……それは愛染国俊か?』
「あら、よく知ってるわね。お父様から頂いたのよ」
『ふうん』

リングに上がろうとした蛍丸を他二人が取り押さえる。そうだ、今リングに上がれば俺は失格になるし、何より危険だ。地面の鉄板が熱を持ちすぎて赤く変色してきている。高温なのだ。ブーツの底が溶けきり、ブーツを投げ捨てた。足の裏から煙が出てきたことにみんなはうわっと声をあげ、リアナはにやりと笑う。もう一度言う、いおりは、不死者。

『そろそろ本気で行くかなあ』
「な、今のは本気じゃなかったって訳!?」
『当たり前やろ、あんな温い攻撃』
「は……」

あの高密度の斬撃が、本気じゃない?
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48:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 17:33 ID:9dc




 いおりは足の裏をじゅうじゅうと焼きながら、涼しい顔で駆け回る。それを見て外の連中はあんぐりとした顔で、またはびっくりしたような表情でそれを眺めた。

 まだまだ余裕のある笑みのいおりに対し、リアナはだんだんと表情が焦りに変わって来る。

(やだ! 体力もたない! はやく!)



 そこで、いおりが大振りの縦斬りを食らわせる。それをギリギリで交わしたリアナはカカッと溶けかけのハイヒールを鳴らし、愛染国俊でいおりの鎖骨辺りから腰まで大きく切り裂いた。ザクッ、ぶちぶちと醜い音をたて、いおりの血しぶきが彼女に振り掛かる。ぐらりと、ふらふらになったいおりはたたらを踏んだ。



「あははははっ! どう!? 見た!? 傑作よ! ぶちぶちって! ザクッて! ああ楽しい! ふっふふ! あははは!」



 血しぶきで右腕を濡れそぼらせ、べろりと血液を舐めあげるリアナに綱吉たちが震え上がる。彼女は元々、殺人鬼だ、人の体を切り裂く音が大好きな、イカれた殺人鬼。

 綱吉たちが「うわ!」「あの出血量……」「ひ、人が!?」と騒ぐが、いおりはダン、と地面を踏みしめて『あー、』と唸る。それを見たリアナは驚愕で目を見開いた。手応えはあった、なのになぜ立てる声を出せる? 切り裂かれたところからバラバラと地面に落ちるサラシ、この場にいるものたちはここではじめて彼が彼女だと言うことを知った。それよりも、目の前のリアナが驚いたのは別の理由だった。



「き、傷が……ない…!?」



 普通、怪我をすれば次の瞬間なくなっているなんてあり得ない。それを知っているからこそ、リングの外の刀剣以外はそれに驚いた。



『うわー、ボロボロや……』



 自身の有り様を見てうげー、と顔をしかめるいおり。その顔はすぐに笑みに変わり、上の千切れた、もう不必要な衣類を脱ぎ去った。



「「「「「!!?(なんで脱いだ!? 丸見え……)」」」」」
『光忠ぁ! 任した!』
「え、ええ!??」



 ばっと投げられた衣類に困惑した顔でみんなが見るなか、いおりは『久しぶりやわー、怪我したん。俺の体に傷つけた奴、片手で数えるほどしか居らんのに!』と豪快に笑い、アデアットと唱えれば、先程とほぼ変わらない服へと変身する。やはりそんなもの見たことがなかった彼らは目を見開いた。



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49:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 17:50 ID:9dc



 そこから『奈落の業火』と『引き裂く大地』の呪文を長々しく唱え、その間も攻撃してくるリアナを避けながらいおりは叫んだ。



『両固定(スタグネット)!! 両掌握(コンプレクシオー)!!』



 そう叫んだのを見て、光忠、三日月が「出た!」と興奮気に声をあげる。それに小さな赤ん坊二人、ボルサリーノを被った赤ん坊と鷹に頭をつかんでもらって飛んでいる赤ん坊が声を掛けた。



「おいお前ら、出た! って何がだ?」
「ん? えー……と」
「ちゃお、俺はリボーン」
「俺はコロネロだ、コラ!」
「僕は燭だ……伊達 光忠。で、出た! って言うのはあるj……いおりちゃんの全力だよ」
「あなや、小さな赤ん坊だな。俺は伊達 三日月だ」
「おう、よろしくな光忠、三日月」



 煙が晴れ、現れたいおりの姿は肌以外が薄いカーマインに輝き、宙に浮いている。



「なんかすげえぞ光忠、コラ」
「あれはね、『術式兵装(プロ・アルマティオーネ)【焔の騎士(イグニスナイトティア)】』だよ。焔の騎士の時は常に炎化してて、攻撃しても効かないし移動はほぼ瞬間移動ってやつ」
「いおりの傷が治っていたのはどうなんだ?」
「我らがある……いおりは不老不死者だ。何せ俺の元ある……、いや、俺が首を飛ばしても掴んで引っ付けるくらいだ。最初は俺もあなや、と呟いたものだな」
「なにそれええええ!」



 遠くから聞いていた綱吉達が近くに来て光忠たちの話を聞いていた。



「あの服が新しく出てきた原理は?」
「んー、俺もよく知んないんだけど、【魔法】って言うらしいよ。俺は世界を救うための魔法世界大魔法大戦には参加してないから。詳しいことはあの二人に聞いたら? 参加してたみたいだし」
「へえ」



 後ろで綱吉達が「魔法世界大魔法大戦ってなにー!!?」とパニックになっていたが、いおりの戦いが終わるまで放置された。



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50:ぜんざい◆A.:2016/11/07(月) 23:15 ID:T0I

結果はいおりの圧勝に終わった。いおりは完成した指輪を填め、リングを出れば綱吉側の守護者に囲まれ、変身したのはどんな魔法だとか傷が治ってたのは本当に不死だからなのかと問い詰められる。いおりはそれに丁寧に答えながら、呆れた様に光忠達を見た。

『お前らなぁ、ホイホイ人に話したらあかんことやねんで? 魔法の事。今やからエエけど、あの死ぬかと思った冒険の前やったら俺一般人にバレたらおこじょにされるとこやねんから』
「ごめんねいおりちゃん」
「あなや、それは知らんかったな。はっはっは」
『三日月お前今ここで緋斬呼んだろか』
「三日月ってば緋斬に頭上がんないもんね」
「愛ゆえだな、はっはっは!」
『お前マジ首ったけな』

そこまで会話したところで、リボーンがいおりに質問する。

「途中で叫んだ『アデアット』ってラテン語で“来れ”って意味だよな、あれはいったいなんなんだ? 俺も見たことがねえ」
『ああ、あれはアーティファクトを呼ぶ言葉や。主とする人と仮契約(パクティオー)すれば出てくんねん』

ピッと長方形のカードを手に持ち、自分の武器を持っている絵が乗るオモテを見せれば、おお……と声が上がる。すれば、コロネロが主とする相手は誰だと聞いてきた。

『んー、ざっくり言うと、魔法世界大魔法大戦トンデモ冒険の中心人物やな。世界滅亡を阻止した世界の英雄我らが味方、そんで女子中学校英語専攻で担任クラスを持つイギリスのウェールズから来たネギ先生や』
「す、スペックがやばいですね……」
『せやろ? そう思うやろ綱吉くん! ところがどっこい、その先生なあ、その時まだ10歳やねん、フルネームはネギ・スプリングフィールド。お父さんはネギ君が生まれる二十年前に一回世界救ってる』
「「「「「はぁ!!!?」」」」」
『せやろ? 驚くやろ!? 最初はな? すぐに泣いて頼りなくて周りに流される典型的な気弱な少年やってん、でもそっから自分の生徒を守りたくて、300億ドルの賞金首で悪の大魔法使いがその生徒やったから、その人に弟子入りして、地獄のような訓練して強なってん。あの修業はネギくん来る前に一通り受けたことあんねんけど、覚悟なかったら即死やで。雪山に全裸で放り出されたり、砂漠に着の身着のまま放り出されて一週間自給自足、死ぬ。まあそっから魔法世界に行って、俺と同じ『闇の魔法(マギアエレベア)』を覚えて、世界の英雄になったんや。なにぶん常に紳士的態度でモテる子やったからなあ、自分のクラスの生徒ほぼ全員からアプローチ受けて、とパクティオーしとったな。生徒に裸で迫られるとか、ラッキースケベがやけに多かった和。あれからもう七年たってるから今17歳やな、いやぁつい先日同窓会してんよなぁ』
「若い! 若すぎるよ英雄になるのが! ラッキースケベって何!? 迫られるって何!?」
「才能と運のあるやつがそういう大物になるんだぜ沢田、コラ!」
「いおりが仮契約したのはいつなんだ?」
『今からちょうど七年やな、俺が17の時や。光忠や三日月は俺とやけど七年前。蛍とはつい先日や』

その言葉に一斉に三人を見る他の人。三人はパクティオーカードを手に苦笑、または穏やかに笑う。そして、リボーンが核心を突いてきた。

「それで、パクティオーってのはどうやりゃ出来るんだ?」
『パクティオー用魔法陣書いて、キス』
「……キス?」
「キスってあれか? コラ」
『そのキスや』
「……えええええ!!!?」
「お、驚きなのな……」
「はあっ!? 待てよこの女、合計四人と……!?」
『いや、もう一人悪の大魔法使いとした』
「五人ーーーー!!?」
「き、極限に……うおおおおおお!? 訳が分からん!」
『……待ちや、俺がそんな風に言われるんは心外や。ネギ君は10歳ながらに自分のクラスの15歳の女子中学生30人(幽霊含むロボット含む(全員は31人))プラス魔法世界の皇女と世界の敵としてるから計32人とやぞ!? 親友の小太郎君も10歳でネギの生徒の一人としてるけど、その後結婚しとるからまだマシや! ネギ君はその32人の女の子ほっぽってお父さんの跡を継ぐとか言うてしばらく両全世界各国飛び回っとってんからな!? 最終的には一人に決めたけど!』
「なにそれ女の敵!」

びっくりして振り向けば、ボロボロのリアナが鬼気迫る表情でプンプン怒っていた。バックには話を聞きに来ていたヴァリアーの皆さんが。すると、光忠にいおりは呼び止められた。

51:ぜんざい◆A.:2016/11/08(火) 22:05 ID:T0I




「いおりちゃん! 本命がここから東に現れたみたいだよ!」



 本命とは、恐らく時間遡行軍のことだろう、大方脳内にこんのすけの声が届いたか、刀剣としての能力で気づいたに違いない。



『なら行くかぁ、ここら辺はまだ現代やから敵もそんな強くないはずや』
「池田屋は強いからなあ」
「“けびいし”来たらどーすんの?」
『俺の緋斬で奥義を出すか、“焔の斬剣”で猛攻撃や。行くで!』
「相変わらずかっこよく決まってるね」
「どれ、この老いぼれも敵を斬ろう」
「俺の大太刀で一発だし!」



 偵察と言う形で光忠が様子を見に行った。光忠を含めた三人はアデアットしていつもの戦闘服へとなり変わっている。すると、蛍丸がいおりに口を開いた。



「ねえいおり。あそこの女の子の持ってる国俊。来派として、俺の相棒は返して欲しい」
『や、そうやでリアナちゃん』
「名残惜しいわ」
『せやろな。無理にとる気は無いし、気にせんといて』
「でもでも主! それで良いの!? 鍛刀は失敗しかしたことない、どろっぷって事もしないんでしょ、チャンスだよ! 新しい仲間が増えるよ! もう無いかも知れないよ!」
『愛染国俊さん下さい』



 バッと頭を下げたいおり。先程までと言っていたことがまるで違う。びっくりするほど綺麗な手のひら返しだった。リアナは渋々それを承諾し、いおりへ愛染を引き渡すと無言のプレッシャーを掛けてくる蛍丸へと横流しにすれば、「国俊ー!」と嬉しそうに笑っている。大太刀と言えど蛍丸の見た目は子供、やはり身内が居なくて心細かったのだろう、このときばかりは自分のドロップと鍛刀運の無さを呪った。光忠と三日月もこんな思いならなおさら申し訳なかった。
 そこで、リボーンが疑問を叩きつけた。



「さっきから聞いてたら鍛刀やドロップ、主と聞こえたな、そこの蛍も愛染国俊で喜んでるみてえだし……」
「全部答えてもらうぜ、コラ!」
『うぃっす』



 二人の赤ん坊の威圧感にやられ、洗いざらい吐いてしまった。隣で蛍丸が俺の服の裾を握りしめてるのが唯一の救いだった、ありがとうメシアよ我が天使よ。ところでそこの三日月のお爺さんはなに呑気に茶をすすっているのかな? 湯呑みはどっから出したんや……。



**

 その後、何事もなく時間遡行軍を倒し、本陣までたどり着いて帰ってきた。とりあえず指令は果たしたので元の本丸へと帰ることに。
 もちろん、俺は夕焼の守護者になってしまったので一ヶ月に一回この世界に来なければならない。なので計二回、現世へ戻るのだ。
 沢田達に別れを告げて帰ってきた元の時代の本丸で、愛染を顕現してみれば「俺は__」と愛染が自己紹介をし始めたところへ蛍丸が飛び付きその場は一気に和んだ、可愛すぎか。それから数日、今日も本丸は人数が少ないながら元気です。



【完】


 長編終了しました! いやぁ長かった長かった。とりあえず楽しくかけたのでよかったです。ちょくちょく番外編は書きます。これからは多分短編メインで。
 とりあえず次の小説内容はこれの番外編です。



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52:ぜんざい◆A.:2016/11/08(火) 22:48 ID:T0I

番外編【燭台切と主が恋人になるまで】

 今日も今日とて人数の少ない本丸だが、とても平和だ。REBORN界へ行ったあとは大変だった。雲雀恭弥は戦え戦えと煩いし、10年後に行って疲れたし、継承式とかアルコバレーノ編とか大変だったんだからな! なんだよネオ・ボンゴレの初代って! ボンゴレ新しくしたのかよ面白いことしてくれるよ! とは言え、それももう20年以上前になるのだが。あれからかなり時間が経っているのだ、久しぶりに会ったみんなからは「本当に不老不死なんだな」と実感された。信じてなかったんかい。
 とまぁ、何だかんだ充実した毎日を送っています。少し変わった事と言えば、緋斬が三日月に惹かれ始めていると言うことだけだ。と言うか、20年と7年掛けてやっと惹かれ始めるてどんなスローペース恋愛や、じれったいわ! なんや? とある時期から三日月が盛大に緋斬に甘え始めたからか? そうなのか?
 どんなわけかは知らないが、そんな訳で縁側に居ます。ただいま光忠と庭を駆け回る愛染と蛍丸と鶴丸を眺めている、光忠といるのは近侍だからだ、この本丸に来てから一度も変えたことはない。まあ、20年も経てば刀剣も増えると言うわけで、仲間が一人増えました。20年で一人かよとか言うな、血眼で誰でもいいからと探し回ったんだぞ。
 やって来たのはそう、さっき言った鶴丸国永さ! あの驚き大好き真っ白爺さんだ! 生憎短刀は来なかった。だが、驚きを提供してくれているので暇しない! 楽しい! うおぉぉお!

「最近楽しそうだね、主」
『せやな、ちょっとずつやけど仲間も増えてきたしな』
「鶴さんが来て一気に賑やかになったよねえ、壁に穴を開けたのには驚いたよ」
『ホンマな』

 二人でその時を思い浮かべれば、自然と遠い目になってしまう。大変だったんだよ、色々と。

『最初はお前と三日月だけやったんよなあ』
「僕は主に着いていけてすごく嬉しかったのを覚えてるよ」
『やめや、照れるやろ』

 ふいっと視線を逸らし後ろ髪を掻く、本当に照れてしまったのだ、情けない。光忠が穏やかに笑って居るのが視界に入ってやけに気恥ずかしくなってしまい、顔ごと光忠から背ける。これだからイケメンは……。

「いおりちゃん」

 久しぶりに呼ばれた真名に反応して前を向いた。もう10年ほど彼らの口から俺の真名を聞いたことがなかったのでびっくりだ。光忠の顔を見れば、少し口をもごもごしたあと、くしゃりとはにかんだ。

「僕はね、君にすごく感謝してるんだ。僕をあの地獄から救ってくれた……頭を撫でてくれたっていうことに、こんな気持ちにさせてくれることに」
『……?』
「僕は今、君と居れて幸せだよ」

 満足気に笑った光忠につられてこちらも笑う。光忠は俺に向かい合う様に腰を置き直し、俺の目を見てまっすぐ言葉を紡ぐ。

「君の近侍で僕は今、君の隣にいるけど、近侍の時じゃなくても、ずっと一緒に居たい、隣に居たい側に居たい生涯寄り添っていきたい。……僕は君が好きだよ」

 笑って俺の手を握る光忠の言葉に一気に顔に熱が集まるのが分かった。女の子の「好きです、付き合ってください!」と言う淡白な告白には慣れている。だが、俺は異性から好意を寄せられたことが一度もないのだ、ましてこんなにはっきりと想っていた事を真っ直ぐに。無理もない。わたわたしてる俺を前に、光忠は言葉を放った。

「僕と、結婚を前提としたお付き合いをしてください」

 微笑みながら告げられた心のこもったコレに、俺はふっと冷静になり、笑ってコクリと頷いた。

『……はい』



.

53:ぜんざい◆A.:2016/11/09(水) 23:37 ID:T0I

番外編【緋斬が三日月に少し気を許した時】上記の番外編と完結時から5年前の話。
緋斬side

刀として1000年、人の身を主様から受けて……鬱陶しい夫(不本意)ができて25年。こっち、緋斬は今日も今日とて三日月の爺の相手や。確かに、歳で言えばこっちも婆やけど。生まれたときから今の主様に渡るまでずっと京都に居たからか、特有の訛りが抜けないが仕方ない。容姿は主様に遠く及ばないが、そこそこだと自負している。なにせこっちを初めて顕現したのが主様なので、似てしまったのだ。割愛申す。
最近主様は男装をお止めになった。いや、お止めになったと言うか、本丸の時はサラシを巻かず……相変わらずかっこよくてクールな服を着るが、ズボンが短くなったのだ。それと、眼鏡を掛け始めている。とても女らしくなった、勇ましく男勝りな性格は変わって居ないが。(これを切っ掛けに5年後、燭台切と主様が婚約するとは思わなかった)不老不死になる前、元々主様は目が悪くて今までコンタクトだったらしい。眼鏡を掛けてどちらがどうなのか似すぎていて分からないと鶴丸に言われたのでこっちが眼鏡を外した、元々伊達眼鏡だ。
問題は、最近やけに甘えたになったコイツ、三日月宗近だ。主様の最初の任務、ブラック本丸潰しに言ったときのそこの審神者が近侍にしていたのがコイツで、その時は本当に人の形を取った意味が見いだせない、と言う顔をしていた。
主様も気付かなかったこっちに気付き、口には出さず脳内会話をしていればなぜか主様に三日月が着いていきたいと願い、了承されれば三日月の勝ち、拒否ならこっちの勝ちと言う無謀にも程がある賭けをしてしまったのだ。主様が助けを求める者を断ると言う気持ちをまだ持って居なかったばっかりに。アイツが勝てばこっちがコイツの妻になり、こっちが勝てば二度と姿を表さないと言う賭けに負けてしまったばっかりに。
とりあえず、話を戻そう。そう、憎くも賭けに勝った三日月はすごく甘えたになっている。現に今も縁側に腰を掛けて団子を食していた座っていたこっちの太ももに頭を乗っけて寝始めたのだ。コイツ……。内番服の都合上、こっちは今『みにすかーと』なるものだ、生足晒してるのである。皮肉にもコイツの柔らかな髪が当たってくすぐったい。

「どけ三日月」
「あなや? 俺は眠いぞ?」
「眠いんやったら布団行けや……」
「緋斬のももが良いのだ、柔い」
「色惚け爺め……」
「俺は来るもの拒まず去るもの追わずだ。いや、緋斬は当てはまらんな。緋斬のみ来るのは拒まんが去るのは絶対許さん」

へらっと笑う三日月に呆れた顔しか出来ない。天下五剣で最も美しいと言われる刀が、こっちの様なちんちくりんにここまで執着しベタ惚れなのか全く理解できない。まったく、天下五剣がそんな気の抜けた顔を見せるなよ。

「そんなへらっと笑うなや、天下五剣」
「天下五剣、そんなもの肩書きでしかないな、緋斬が居ればそれでいい」

こっちはそれを鼻で軽く笑い飛ばし、三日月の頭に巻き付けてあるバンダナを緩く引っ張って外した。その際でも慈愛に満ちたと言うかのほほんとした笑顔で居るものだから腹が立って三日月の目元をバンダナで押さえつける。

「ふむ、お前の顔が見えないぞ」
「見んでエエわボケ、寝とけ」
「なんだ、優しいな。なら、遠慮なく寝させて貰うとするか」
「口角が上がっとる……気に入らん」

ふとそんな事を呟き、バンダナは彼の目に押し付けたまま、自身の唇を迷いなく三日月の唇に押し付けた。そこで我に変える。しまった、完全に無意識だった。素早くそれを離して黙るが、それを許さないのが三日月と言う刀だ。

「なんだ、口元に柔い物が当たったぞ、妙に甘かった。覚えのある甘さだ」
「っ……」
「はて、なんだったか」
「ん……?」
「……思い出したぞ! 団子だ! どうりで柔く甘い訳だな」

相変わらずふにゃっと笑う三日月に、本当にバンダナで目を押さえつけていて良かったと溜め息を吐く。きっと今のこっちの顔は見るに耐えないぐらい、きっと赤い。口を開けて団子を待つ三日月にとりあえず団子をひとつ突っ込み、様子を見る。もごもご動く頬の様子を見るに完全に団子と勘違いしてくれたらしい。

「旨いんか」
「あぁ旨いな」
「ふっ……」
「緋斬、次だ。もうひとつ寄越せ」

そういう口にもう一回やってやった。

54:ぜんざい◆A.:2016/11/11(金) 02:03 ID:T0I

番外編【鶴丸と仮契約したときの話】


 鶴丸がやって来て数日、もう人の身にも慣れただろうと言うことで、新入り刀剣が来る度やる恒例行事をするべく、三日月が鶴丸を呼び出した。仮契約陣はこの本丸敷地を覆うように常に大きく描いてあるのでいつでも自由なのだが、なぜか毎回大広間でやることになっている。



「なんだなんだ? 三日月、お前が面白いものを見せてやるから、なんて珍しいじゃないか」
「そうか? それより驚き好きのお前もきっと驚くものを期待してみてはどうだ?」
「期待しておくぜ!」



 ハードル上げんな。とここで恒例行事を聞き付けてきた来派二人と光忠が参戦し、鶴丸は首をかしげた。



『鶴丸、今から仮契約や。ちょい、蛍丸と国俊来てや。お前のカード見せたって』
「おう!」
「ほら、鶴さん。これが俺の仮契約カードだよ」
「なんだ、綺麗な絵だな。これが三日月の言ってた驚くものか? そこまでじゃないか?」



 そう首をかしげる鶴丸にこういうのは実物を見せた方が良いだろうと国俊に目線を送り、国俊が「アデアット」と口にする。するとそのカードは国俊本体になり代わり、もといた場所に鎮座する。もちろん国俊は内番服だったので、服装も戦闘服へ変化していた。それに目を輝かせたのが鶴丸。



「なんだ!? 一体何が起こった!? このカードがあれば出来るのか!? みんな持ってるのか!?」
『おん、せや。今から鶴丸のカード作るから、大人しくしとって』



 きょとん、とする鶴丸にそのカードを出す条件がキスだと伝えればなんだそんなことかと軽く流した。



『ほんじゃ、やるで』
「いつでもこい!」



**


 結果、鶴丸とパクティオーは成功した。鶴丸はひゃっほーとカードを作ったあと、子供の様に蛍丸と国俊と鬼ごっこを始めて去ってしまっている。



「一段落だな」
「無事終わって良かったっすわ」
『せや、緋斬。お前三日月と仮契約しとくか?』
「主様の命令でも断らせてもらいますわ」
「俺は良いと思うがな」



 そう言った三日月はたった今拒否した緋斬の腕を引き、強引に仮契約を済ませてしまった。緋斬のみカードを出していなかったので安心っちゃ安心してますが。だって光忠が女の子同士は駄目だって言うんだもん。なめないで!(ガジガジ)



『……あ仮契約が強すぎるからなかなか新しい刀剣が来ーへんのやろか』
「……可能性は無いとは言い切れないよね!」
『むっちゃエエ笑顔や……』
「お前ふざけんなマジでぶっつぶす三日月ィ!!!」
「おお怖い、たかが口づけ、たかが仮契約だろう」
「こっちはお前とするぐらいなら主様が良かったわ!」
『え、なんで俺引き合いに出されとん?』



.

55:ぜんざい◆A.:2016/11/11(金) 22:06 ID:T0I

if【とうらぶ×ネギま! 主が飛ばされた世界がとうらぶではなくre!だったら】

ネギ君たちの世界から別世界に飛ばされて数日。飛ばされた家にて生活しているが、俺は若返りトリップなるものをしてしまったらしい。俺の戸籍がなぜか作ってあって、見てみれば年齢が中学三年生なのだ、見た目は少し身長が小さくなって180ぴったり(2cmしか縮んでねーよ!)。なぜ? とか思ったけど中学生ライフをもう一度エンジョイしようかと転校生として近くの中学へ編入した。ここは並盛町、言わずもがな家庭教師ヒットマンREBONの世界だ。並盛中学三年生て……雲雀と同じ学年やん、アイツ今何歳か知らんけど。

ちゅーわけで。

『伊達いおりですわぁ、よろしゅう』

背中に緋斬の入った竹刀袋を背負い、クラスを前にへらっと笑って見ると「きゃあああああ」「いけめええええん」と女子が騒ぎ始めた。なぜかこの世界でも校長先生から特例で男子制服を着ても良いことになったから男子制服ですけど、とりあえず訂正するか。

『えーと、学校側から特例で男子制服着さしてもらってんねんけど、こう見えて女やで』

そう言えばそこかしこから上がる驚きの声。3-Aと同じぐらい喧しいなここ。

**

色々あって昼休み、顔が男やけど性別が女やからか声が掛けやすかったらしくクラスのみんなとも仲良くなって昼食に誘われた。今日はとりあえず一人で食べたかったので今日だけ血眼で断り、屋上の給水タンクの上で昼食を取っていた。

『(流石俺。うまかった)』

褒めてくれる子がこの世界には居ないので自画自賛して、虚しくなる。あーだのうーだの唸りをあげながらタンクの上に寝そべりゴロゴロと寝返りを打つ。ちょうど仰向けになったのでぴたりと動きを止めて、タンクにおいていた緋斬が入った竹刀袋をたぐり寄せ、中からパクティオーカードを取り出す。空に掲げてしばらくカードに乗った自分の絵を眺めた。あれから、念話(テレパティア)をしてみたが応答なし、物理的倫理的距離が離れすぎているせいだろうか。

『一人になるとあの子等の騒がしいのレベルの酷さが身に染みるわ……うるさかったんやな』

あの喧しさになれてしまえば、一人になると寂しくなるなあ。とか内心思いながら、先程扉が開いた様な気配がしたので下を見ると、雲雀さんが鋭い目付きで睨んでるじゃないですかやだー。

「君、僕に気付いてたのに一人言続けてたね? なんで?」
『第一声それなん?』

タンクから身を乗り出してそう言えば彼の眉間に皺が寄る。『シワなるでー』と自分の眉間を押さえながら告げれば、「降りてきなよ、噛み殺してあげる」と雲雀君が言うので、すとんと竹刀袋を持って着地した。その瞬間仕込みトンファーで襲ってきたので袋に入ったままの緋斬でそれを受け流した。

『お前身長ちっちゃいなー、中三か?』
「僕は今っ、中二だよっ」
『俺より一個したなんかー。腕につけとるのは……風紀委員の? ああ、噂の委員長さんか』
「わお、僕のことっ、知らないやつなんていたんだね……!!」
『俺今日転校してきたからなぁ』

どかどかと激しい攻撃をしてくる雲雀君のトンファーを受けるか捌くか避けるかして雲雀を眺める。すると、雲雀はいきなり攻撃をやめてトンファーを下ろした。

「僕が攻撃してるのに、そんなに余裕そうに避けるやつは初めてだよ」
『実際余裕やしな』
「……君、ムカつく」
『本音や』

そうして俺はどかりと地面に座り込んだ雲雀の隣に腰掛けて、『俺伊達いおりなー』と告げれば彼はああ、と声を出し、資料で読んだと返してくる。写真まで見てなかったようだ。

「でも伊達いおりは女だと書いてあったよ」
『俺は女や女』
「……ふぅん。僕は雲雀恭弥、知っての通り風紀委員だよ」
『……風紀委員なー、面白そうやなぁ』

ふあ、とあくびしながら言えば「君くらい強ければ歓迎してあげるよ。これでいつでも戦える」と雲雀は言った。あれ? 俺、雲雀君に気に入られた系のやつ?

『せやな、じゃあ俺今日から風紀委員っちゅーことで』
「なら卒業するのは僕と同じ時期だよ」
『俺お前が卒業するて言わな卒業できへんのか』
「嫌なのかい?」
『別に。他にやることないし。よろしゅーひばりん』
「それやめて」
『きょうやん』
「やっぱり噛み殺す!」

.

56:ぜんざい◆A.:2016/11/11(金) 22:29 ID:T0I


 翌日、クラスに風紀委員になったからと伝えて応接室に向かう。昨日あのあと一戦してケータイの番組を交換させられた。そして今朝、応接室に来いと連絡があったので現在向かっている。



『うぇーい』



 応接室にて、扉をそんな掛け声と共にすぱーんと開けばトンファーが眼前に迫っていた。俺は焦る様子もなくトンファーを掴んで「よいしょー」と上に持ち上げ、誰だよとか思いながら顔を見れば雲雀君だった。おはようと声を掛ける暇もなく雲雀からの第二撃目。俺は古罪に教えてもらった太極拳か八極拳、八卦掌を用いてトンファーをシャツの裾を肘ほどまで捲った腕に絡めとり、掌詆で弾き飛ばし、桜華崩拳の様に雲雀に一発入れた。最後の攻撃をぎりぎり避けた雲雀はむうと膨れてキャスター付きの椅子にどっかり腰を下ろした。俺ははっはっはと笑ってずれた竹刀袋を背負い直し、中を見回した。あらまあ、学ラン着たリーゼンが大勢。みんながみんな目を見開いている。



「委員長、そちらは」
「草壁か。彼女は僕の任意で風紀委員に入れた伊達いおりだよ」
『どぉもー、こんな見た目しとるけど女な伊達いおりですわー』



 へらっと笑えば女と言うワードにざわめく室内。雲雀は気にしてないように俺に学ランとそのズボンを渡してきた。着ろって事かな。一旦廊下に出て、素早くブレザーを脱ぎ、学ランを腰に巻いたあと、ズボンは瞬時に脱ぎ代えた。これぞ伊達家に代々伝わる秘技、早着替え!

 10秒もたたずに『うぇーい』とか言いながら中に入ればそれはそれで早すぎると驚かれた。



.

57:ぜんざい◆A.:2016/11/11(金) 22:45 ID:T0I

とりあえず捲っているシャツの左の二の腕辺りに風紀と書かれた布を取り付け、改めてよろしくと言うことになった。



「副委員長は今まで通り草壁ね」
「わかりました」
「いおりは補佐」
『ひばりんマジで?』
「噛み殺す!」
『きょうやん』
「僕は一度やめろって言ったよ」



 俺が雲雀をひばりん、きょうやんと呼んだのに委員の人達が皆一斉に目を剥いた。目の前で委員長がトンファーで先程委員に入った奴に攻撃を仕掛けてそれを余裕の笑みでひょいひょい避ける新参者が信じられないんだろう。


「今日はもう解散」



 そう言った雲雀に風紀委員は散っていった。俺もそろそろ屋上に、って言ったら「君は僕と戦うの」と睨まれた。まあなんだかんだ言って雲雀は掠り傷も俺に負わせてないし、俺は避けるばかりで攻撃してないし悔しいんだろうな。



「さっき攻撃してこないの? つまらないんだけど」
『骨折れてもエエ言うんやったら』
「ムカつく!」
「ふはは」
「〜〜!」



 ひゅんひゅんと的確に顔ばかり狙ってくる雲雀。俺が避けるために一歩下がれば先程まで俺が居たところに正確にトンファーが走ってるから実力は悪くない。ただ、俺の動体視力が良すぎるのだ。



『そんなん掠りもせんなあ』
「……」



 余裕の笑みでそう言えば、トンファーからカチッと音がして長い方の後ろから鎖がじゃらりと姿を表した。俺はあ、これやべえとか思って『しゃーないなー』と髪を掻く。雲雀はにやりと笑った。雲雀の思い通りになるのは癪だが仕方ない。



『俺もゆるーく攻撃しますかね』
「ゆるくなんだ」
『怪我さしても困るねん』
「なめてんの?」



.

58:ぜんざい◆A.:2016/11/12(土) 17:04 ID:T0I



 あれから一年、わーい卒業だー。とか言ってたのに学校側から卒業はするなと取り消された。あのときの絶望した俺の顔を教師たちは忘れないだろう。それもこれも雲雀が卒業せずもう一回三年やれなんて言うからだ。



**



「プリントにあるように、これが二学期の委員会の部屋割りです」



 委員会会議にて。今年の部屋割りをを生徒会長が発表する。それに一人の女子生徒が「えーっ何これ!? 応接室使う委員会ある! ずるい! どこよ!」と声をあげた。隣の男子が「風紀委員だぞ!」と耳打ちする。



「なにか問題でもある?」



 そう聞いた雲雀に先程の女子生徒は「いえ! ありません! すっ、すいません雲雀さん!」と勢いよく頭を下げた。雲雀は「じゃー続けてよ」告げる雲雀にと俺は隣で苦笑いしながら『ほら、頭上げ』と女子生徒に告げて雲雀の足をぎゅり、と踏んだ。雲雀は無言で睨み付けてきたが俺はへらっと笑ってやった。そこで緑化委員会なるものが口を出す。



「でもおかしくね? 応接室を委員会で使うってのは」
「のっちもそー思う?」
「インボー感じちゃうよ」



 俺は苦笑いしながら雲雀を見やる。雲雀は「それはいおりに言って」と放り投げられた。それを聞いて緑化委員会が「!? 伊達さん!?」と驚きに目を見開いた。俺は笑顔のまま視線と顔を背け、雲雀は溜め息を吐いてこう続ける。



「君達は仲良し委員会? 代表は各委員会二人のはずだけど……」



 それから。中庭には先程の緑化委員会の三人がぼこぼこにされて倒れていた。傍らには学ランを着た風紀委員が二人ほど居る。



「ヒバリと伊達さんに楯突いたのが悪いんじゃない、二人の前で群れたからこうなったんだ」



 風紀委員の二人はそう言い残し、三人を放置して言ってしまった。それを三階の応接室の窓辺で眺めていた俺は特に何も言わず、雲雀は「ふあ〜ぁ」とあくびをした。どうせ見てるんだろ? と言う意味を込め、ここから見える歯科の大きな看板に目をやり、へらっと笑って手を振った。返ってくる様子は無かったが、雲雀から「なにしてんの」と可哀想なものを見る目でトンファーを投げてきた。それをひょいと避け、『まだまだやな』とトンファーを拾い、雲雀の定位置になっている席の机に置いた。



**



 昼休み、雲雀が持たれかかる黒革のソファに寝転がって顔に漫画を開いて乗せ、頭の後ろで足を組みながらぐうすか寝ていれば、がらりと言う扉の開かれる音で目が覚めた。雲雀の「君、誰?」と言う発言を聞いてツナ達が来たのかと観戦するべく寝たフリだ。生憎俺は呼吸しかしておらず、動いてないので気付いてないだろう。「なんだ、コイツ」と声が聞こえ、獄寺も参戦か。とか思いながら会話を聞く。



「風紀委員長の前では煙草消してくれる? ま、どちらにしろただでは返さないけど」
「んだとてめー!!」
「消せ」
「なんだコイツ」
「僕は弱くて群れる草食動物が嫌いだ。視界に入ると、咬み殺したくなる」
「へ〜、初めて入るよ応接室なんて」
「待てツナ!!」
「一匹」
「のやろぉ、ぶっ殺す!!」



 少々不穏になってきたのでむくりと起き上がり、『うるさいでー、寝れへんやんけー』と間延びした声を出して止めに入るけど聞く耳を持っていない彼らはやめてくれない。むむう。



「二匹」



 直ぐ様獄寺を沈める雲雀に半ば呆れながら、その後山本と乱戦、右手を庇ってるだの言い速攻沈めた。雲雀に武器なしって無理だろ。

59:ぜんざい◆A.:2016/11/14(月) 23:28 ID:Feg

ifはちょこちょこ出てきます。ここからは【とうらぶ×ネギま!】の続編です! 良いネタを思い付きました、そこそこに押さえるつもりですが「あ、これだめだわ」と読んでいくなかで思った方はストップしてください。最終的にはきっとハッピーエンド。捏造てんこ盛りです。
 それでも許せる方向けです!


**

 あれから五十年が経った。俺、伊達いおりはすでに92歳になりましたが、見た目17歳で頑張っています。かつての仲間も粗方居なくなってしまった様で、最近は向こうの世界じゃエヴァぐらいしか話し相手が居ないから少し寂しいと思っている。

 今日も今日とて実年齢がもうじき100になる俺は、少数精鋭ながら最強の本丸の名を好き勝手している。まあ性格は全然変わってなくて、いつも通りの俺だけど。
 あれから五十年経つ今でも、新しい刀剣が全く来ない、なにこれどういうこと。
 最近の俺達の本丸の仕事はブラック本丸の調査や壊滅といったものが多い。古参だから頼られているのか、それとも使い勝手の良い駒として見られているのか、ううむ。
 審神者と政府も今、俺に対して三つに派閥が割れていると言う。
 ひとつ目は『俺はよく頑張ったから審神者退職して俺の刀剣を別本丸に移そう!』と言う穏便に見えて過激派。俺の刀剣が強いから欲しいと言う欲が丸見えだ。アーティファクトの事もいつバレるか分からないので最近は使用禁止にしている。まあ鈍っちゃ困るから時々道場で使わせたりしてるけど。
 二つ目はひとつ目に対抗して『俺の意思を尊重しよう』と言う俺の味方といって良い身内派閥。俺の本丸担当の人もそこの派閥なので、もう味方の人達だ。この派閥は人数が多く、優しいけれど政府に付いて古参な方々が多い、政府のトップもこの派閥所属だ。時々会合として仲良くさせてもらっているいい人たちだ。
 三つ目が『どっちでも構わないですよ』派閥の方々。言わば中立、どちらにも味方はしない人々だ。理由は単に面倒と言う人が一番多いだろう。

 俺としては俺の刀剣たちと離れたくないし、出来ればずっと一緒にやっていきたい。隣の緋斬にそう言えば、「こっちはどんな状況でも主様と一緒に居ります」と凛とした視線を頂きながら言われてしまった。おい旦那どうした旦那。



「主ー! 嫌な驚きだ! またブラック本丸の退治らしいぜー!」



 庭の方から駆けてきたのは真っ白い人物、鶴丸国永だ。コイツマジ細い。鶴丸が言うに、今回は夜伽が酷い本丸らしい。……ちょっと殺しにいきますか。大事な刀剣になにさらしとんじゃ、って言うのが本音や。
 そこの本丸の詳細は、まあこれはブラック本丸になる確率高いわ、となる本丸でして。審神者は男、顕現する刀剣の付喪神は全員刀剣女士として現れるらしい。なるほど。亜種か、そこの審神者の霊力のせいか。
 どちらともつかないが、これを聞いてちんたらしていられない。最近は夜伽の無いブラック本丸ばかりで気が抜けていた。そう、減らないのだ、ブラック本丸が。俺があれほど厳重に監視してくれと頼んだのに。



「……これは行かなくちゃ、こんな本丸から救ってあげないと」
『さすが蛍丸、気持ちはみんな一緒や』



 大広間に俺の刀剣六振りを集め、事情を説明すれば怒りに瞳を染める蛍丸がそう呟いた。
 みんな元は同じ刀剣なのだ、苦しいに決まっているだろう。



『出発は五分後や! もう行けるんやったら行くで!』
「準備はそれほど要りませんわ、すぐ行きましょ主様」
「俺も行けるぜ! な、蛍丸!」
「国俊の言う通り、いつでも行けるよ」
「助けに来たと告げて、あっと驚かせてやろう!」
「この爺も同胞を救いに行こうか」
「みんな準備は要らないみたいだよ。行こうか、主」



 俺達は早速その本丸へ赴くために腰をあげた。



.

60:ぜんざい◆A.:2016/11/16(水) 23:33 ID:Feg


 簡易ゲートで扉を開き、自身の本丸から外に出ればそこは例の仕事の本丸へと繋がっていた。仕事の件なら繋げてくれるらしい、どこでもドアかよ。
 すれば目の前に広がるのは荒れ果てた土地! 埃を被った本丸! 池の水は渇れて木々も枯れてとにかく全て枯れている庭! 空気も悪い! 何と言うことだ!

 隣の光忠が、ぎゅうと聞こえるほどの力で握り拳をつくる。反対の隣を見れば三日月も唇を微かに噛んで顔を歪めていた。手は緋斬の手をキツく握っている、緋斬は何も言わなかった。光忠と三日月の二振りは自分のもといたところ以外のブラック本丸も、この中で一番多く見てきた。実際自分もされたことがあるからこそ、相手を想えば尚のこと心苦しいのだろう。それに、毎回あの時の、二振りが俺に着いていきたいと言う前の本丸を嫌と言う程に思い出しているに違いない。

 歪められた顔を見ていれば刹那、光忠の背中がばしん、続いて三日月の背からもばしんと大きな音がした。光忠が驚いて振り返れば彼の後ろにはふんっと自慢気にふんぞり返る小さい影が二つとその背後に頭が飛び出た影が一つ、国俊と蛍丸、鶴丸だ。三日月は涙目で緋斬を見つめている。恐らく叩いたのは彼らだろう。



「……お前に、そんな顔似合わへん。三日月はいっつもめぽけぽけした奴やろ」
「……あぁ。……さて、どうしようか主、我が君が格好いいんだ」
『知らん、幸せに悶えてろ』



 何このリア充、何この夫婦。なにしれっとしてんの緋斬。ごめんなさいそんなのどうでもいいわ……あかぎり超かっこいいいいいいいい!
 隣の光忠を見てみれば、ふにゃりと笑う。後ろの蛍丸と国俊を両腕で抱え込む鶴丸に同じようにされたのだろう、どこか安堵したように笑っていた。



『いざ出陣!』
「「「「「「おう!」」」」」」



 そんな掛け声と共に三手に別れて散る。俺は今回鶴丸と一緒だ。毎回俺がいる組とは別のもう二組はその本丸の刀剣の保護に向かう、もちろん俺ともう一人は審神者を捕らえるか、抵抗するなら殺すか。どちらにせよこの本丸の門の前ではブラック本丸取締部署の車が止まっているので逃げられはしない。



『鶴とパートナーになるんは久しぶりやな』
「ああ! 不謹慎だが、こういう緊張感も悪くねえな!」
『同意や、やけど気ぃ抜きなや』



 審神者のいる部屋の前で先程まで疾風ように駆け抜けてきた足を停止し、二人で顔を見合わせて不適で不敵な笑みを同時に浮かべて俺と鶴丸は襖を蹴り飛ばした。



.

61:ぜんざい◆A.:2016/11/17(木) 23:27 ID:Feg

光忠side

 同時刻、僕と緋斬ちゃんは縁側を駆け抜けていた。走る途中、襖を開けても開けても誰もいない。大広間に居るのだろうか、緋斬ちゃんに視線を送れば彼女も同じことを考えていたのかコクリとうなずく。
 そのまま大広間へと到着すれば、そこには横たわる子、壁に寄り掛かる子、膝を抱え込む子など様々だった。それも全て女の子で、少々服が乱れている子が圧倒的に多い。練度はそこそこ、まあ顕現されたばかりと言う子がたくさんな。
 そして、一人が僕ら二人に気づき、よろめく体を壁で支えながら刀をつきつけてきた。左腕に龍の刺青、右の髪が一部赤くグラデーションになっている、そう、大倶利伽羅、伽羅ちゃんだ。男性の時より数トーン高い声が僕と緋斬に向けられる。



「……光忠、なぜお前がここに居る」
「僕は君達を助けに来たんだよ、多分僕らの主がもう君たちの審神者を捕らえるか殺すかしてると思う」
「……そうか。……っ」
「伽羅ちゃん!」



 ふらついて前のめりに転けそうになる相棒を慌てて支えれば「……俺たちは、救われるのか」と震えた声で呟いた。懸命にこくこくと頷けばふっと彼女の体が重くなる。意識を飛ばしたのだろう、重傷のまま手入れもされなかったと見える。いおりちゃんから渡された簡易手入れ札を伽羅ちゃんに向ければ、傷は塞がった。
 周りを見渡せば既に他の刀剣女士は緋斬ちゃんに話を聞かされ、簡易で手入れをしてもらっている。それを待っている彼女たちは「はぁぁ……やっと地獄が終わるよー」「僕たち、救われたんだよね、一兄」と言う呟きや嗚咽も聞こえてきて唇をぐっと噛んだ。
 すると、ばっと顔をあげたボロボロの不動君が焦ったように僕に告げる。彼女も普段は甘酒で顔を赤くさせているのに、酒も飲めていないのか酔いが回っていなかった。



「燭台切! 刀剣女士はここに居るが、この本丸には二人だけ刀剣男士が居る!」
「……彼らはどこに!? それは誰だい!?」
「太鼓鐘貞宗と浦島虎徹だ! 浦島はアイツの近侍、太鼓鐘は……」
「貞ちゃんは……?」
「……手入れ部屋で、杭を打ち付けられて天井に張りつけにされてる」
「なっ……」



 どうやら手入れ部屋では微弱に手入れされる術が施してあるらしく、折れないと言う。折れれもしない杭が取れもしない、まさに地獄じゃないか!



「緋斬ちゃん! 今すぐ、早く! て、手入れ部屋に!」
「落ち着けやアホ」



 泣きそうな顔で振り返れば緋斬ちゃんに拳骨をもらった。ハテナマークを頭上に飛ばしながら涙目で緋斬ちゃんを見つめれば彼女はこう言う。



「こっちらはこの子らの手入れをせなあかん。どうせ太鼓鐘は三日月達が見つけとる、今は我慢や」



 ぎりりと歯を食い縛る緋斬ちゃんも今すぐに飛び出したいのだろう。でも、彼女の信条は常にクールにクレバーに。冷静でなきゃ的確な判断は下せない。確かに、その通りだ。



「……手入れをしようか」
「当たり前やろ、こっちらは救うためにここに来たんや」



.

62:ぜんざい◆A.:2016/11/19(土) 14:30 ID:Feg

ifの方です。


 そしたらなんかツナが額から炎を出して雲雀に一撃入れたあと、どこからか出てきたトイレのスリッパで彼の頭をパカンと叩いた。それに耐えきれずぶっと少し吹き出したあと、爆笑してやる。



『っはははははは! 雲雀! 頭! ふはははっあかんっ腹死ぬ! 腹吊る! うはははは! 大丈夫か恭弥! はははっ!』



 ツナはこちらを気にせず雲雀を見ていたが、多分雲雀はそうはいかない。



「ねぇ……殺していい?」



 ぁ、キレた。まあそのあと色々あって乱入してきたリボーンが部屋で爆弾を爆発させて見事に逃げられてしまったわけだが。
 ソファに膝を抱えながら座って「あの赤ん坊また会いたいな」と言っている隙に部屋から逃げ出そうとそろりそろりと扉へ近付く。が、そううまく行くわけもなく。



「どこ行く気?」



 ゴっと言う鈍い音と共に、トンファーが後頭部に直撃しました。



『待て待て話したら分かる、絶対分かる。分かるから! 笑われて怒っとるんやろ!? いやすまんかったって、っちゅーても綺麗に決まっとったな、パカンて……ぶっふぉ!』
「咬み殺す」
『結局鬼ごっこになるんかー』



.

63:ぜんざい◆A.:2016/11/19(土) 15:47 ID:Feg

if。

 あれから数日、久々に休みを貰った俺は放課後の道を一人で歩いていた。背中の緋斬ががちゃがちゃなるけどそんなん知らん。それにしても、最近手応えのない奴ばかり絞めてるから腕が鈍りそうだ。

 すると前方にて「学校終わった終わったー、家帰ったらなにしよっかなー」と呟く沢田綱吉を発見。『うぇーい、沢田ー』と声を掛ければふっと彼は振り向いた。



「……あれ?」



 だがそこには誰もいない。気のせいか、と再び歩み出す沢田にもう一度『こっちや沢田ー』と声を張り上げた。「もう、誰だよ!?」と辺りをきょろきょろ見渡す沢田に『上や上ー』と言えば沢田は俺の方を向き叫ぶ。



「な、なんで屋根の上ーーー!?」



 そう、今俺は民家の屋根の上にて胡座を掻いていたのだ。沢田が俺に気が付いたので屋根から飛び降りてスタッと彼のとなりに立つ。



「あ、あなたは応接室の……」
『お、覚えとったん? 俺一応風紀委員所属で委員長補佐の伊達いおり、よろしゅうな』
「あ、はい」
『俺別に人畜無害やから。雲雀みたいになんでもかんでも殴り掛からへんで、安心し』
「よ、よかった……」
『はっはっは。……あそこ君の家やんな、黒服着た人めっちゃおんで』



 指を指した先は彼の家。ああ、あれか。原作で言えばキャバッローネの跳ね馬ディーノの話か。隣の沢田は果敢に黒服に「あの、すいません。通っても良いですか?」と聞いている。即答でダメだと返ってきてましたけど。



「今は沢田家の人間しか通れないんだ」
「俺……沢田綱吉……です」
『俺は護衛』



 すると俺共々家に通してくれた。「な、なんで伊達さんまでーーー!!」と家に入ってから怒鳴られたが『ちょっと興味あってん、君の家』と案内されたリビングのソファに座った。沢田は「絶対! 絶対ここから動かないでくださいね!」と俺にキツく念を押してから二階へ上がっていった。「リボーン!! お前の仕業だな!?」と言う怒鳴りは聞かないことにした。しばらくして、家の外から、いや、空から爆発音が聞こえてくる。ん、あれじゃね? ランボが間違って投げたんじゃね? まあこれも気にしてたらキリ無いし。そうして俺は瞼を閉じて、人様の家ながら寝入ってしまった。


**


 眠りについていたら、どこからか俺を呼ぶ声が聞こえた。



「伊達さん……? 伊達さん」



 その声がやけに、聞きなれていた気がして、薄目を開ければそこには。



『……ネ、ギく』



 そこまで言って飛び上がる。よく見ればちゃんと沢田だ。



『すまん、暇すぎて寝とった』
「……あ、すいません! 伊達さんもよかったら晩飯食ってきます?」
『よし食う』



 俺がそう言えば沢田は母に向かって「伊達さんも食べるって」と告げていた。『世話なりますー』とだけ言ってソファから立ち上がろうとすれば、何か踏んで前に転けた。



『いでっ』



 俺が机に顔をぶつけ、ゴっという音が響く。『なんや踏んだ』とか言いながら足元を見れば、そこに転がる竹刀袋。流石に悲鳴をあげた。



『あっ、あかぎりいいいいいいい!』
「あかぎりって何!? 大丈夫ですか伊達さん!」
『あかぎりいいいいい! 折れてへんやろな!? 折れとったら俺の首が飛ぶうううう! 物理的に飛んでまううううう! 』



 なんだなんだと二階から降りてくる金髪イケメンとボルサリーノ被った赤ん坊が降りてきて見られるとかそんなの考えてる暇はない!
 竹刀袋の紐をほどき、バッと袋から刀を抜き出し、さらに鞘も抜き去り刃を見ればまあ傷ひとつついていませんでしたよ。チンッと刀を鞘に直して素早く再び竹刀袋の中に手を突っ込んでアーティファクトを探ればこちらも無傷。ほっと一息ついてハッとすれば、刀をバッチリ見られていた。



「……こ、これ本物!?」
「みてぇだな」
「あの少年のみてぇだけど、なんでこんなもんもってんだ?」



 三人がじっとこちらを見るもので、流石に隠し通せないだろうと観念し、覚悟を決めた。



.

64:ぜんざい◆A.:2016/11/19(土) 20:16 ID:Feg

if(今更ながらこのifはUQホルダーの時間軸に突入させています)


**

 俺は一息ついて「ここはあかんわ」と沢田母に目を向ける。他の三人は気まずそうにこくりと頷き、沢田の部屋に上がろうと促してきたので部屋にて。彼のベッドに腰を掛けて溜め息をついた。



『まあ、最初にあれや。俺の身の上を教えとかな話進まんな』
「おう。改めてだな、俺はイタリアンマフィア、キャバッローネファミリーのボス、ディーノ」
「俺はツナの家庭教師リボーン、ヒットマンだ」
「ちょっと! リボーン! ディーノさん!」



 慌ててリボーンたちを止めに入る沢田だが、それを片手で制して俺は口を開いた。



『俺の名前は伊達いおり。信じなくて結構だが、単刀直入に言えば俺はこの世界の人間とちゃうねん』
「……どー言う意味だ?」
『俺はお前らにとっちゃ異世界……パラレルワールド的な所から敵に飛ばされてきた』
「敵? 飛ばされてきた? どういうことですか?」
『まあ待てや、俺の世界には『魔法』なるものが存在する。その世界は地球人と火星人が存在していて、見るからに人間じゃないのもいる。現在日本は一部が発展しすぎていて、今や半分は田舎やスラムになってもた。
 俺はその世界の居合い斬りの名門、伊達家の当主。俺が在籍していた女子中の一年の時に、まあ同じクラスに登校地獄の呪いをかけられた600億の賞金首の不老不死吸血鬼の真祖が居って……その子の我流の魔法を文字通り命懸けで覚えて、俺自身吸血鬼の不老不死になった、実年齢は87歳のババアや。もとの世界の不老不死が集まるヤクザ的なところで支部長補佐しとったわ。活動内容は、様々やな。月行ったり……まあ火星に行ったりな。
 我らUQホルダー、人の世に弾き出されたものたちの味方。不死身の化け物の集団や。
 俺一回実年齢17の時に世界救ったわ。ちなみに首飛ばされても死なへん。一応世界最強』



 ぐっとサムズアップしたら「は?」って言われた。うん、傷付いたぞー。



「不老不死!? マジで!?」
「火星って……」




 沢田とディーノが困惑するなか、リボーンはにやっと笑って俺に拳銃を突きつけてきた。



「わりーな。本当にお前がそうだって言う証拠を見せてもらうぜ、伊達」
『エエけど、こめかみのがよぉない? 自殺とかそんなんで、銃口こめかみに当てて撃ったら火傷もするし貫通もする』
「そうさせてもらう」



 ひょい、と俺の肩に乗って拳銃を向けてくるリボーンにヘラっと笑えばばぁんと響く銃声。目の前の二人が目を見開いた。



『終わったか?』
「……事実だな、信じてやる」
『はーよかった』



 だがしかし、疑り深い二人はまだ俺を疑っているよう。貫通はしなかったのでリボーンが空砲を撃ったとでも思っているんだろう、苦笑いして俺は刀を手に取った。



『決定的証拠はこれやな』



 ずぱっと自分の刀で首を飛ばした。ぶしゃあ、と血を撒き散らしながら転がる首にツナは悲鳴をあげている。が、俺はもう新しい頭が出来ているので自分の首を見ながら二人に言う。



『信じてくれんか?』
「これは決定的だな」
「信じます! 信じますからこれ以上部屋を汚さないで!」



.

65:ぜんざい◆A.:2016/11/19(土) 20:30 ID:Feg



『あ、すまん』



 俺は沢田にそう言ってから指を鳴らしてそれを消し去った。それを見てディーノが「それ見せた方が早かったんじゃ」と呟く。



『改めて、団員NO'00の伊達いおり。これからは沢田らの手助けしたるわ、俺一応女やけど世界最強を味方につけとると心強いやろ?』
「まて! お前女なのか!?」
『うっさ、ディーノうっさ! せやでうっさ!』



 そうすれば沢田母に呼ばれて一階のリビングに降りた。ちなみに雲雀には絶好バラすなと念を押しておいた。


**



「いただきます」
「はいどーぞ」



 そんな声と共に夕食が始まる。



「さー何でも聞いてくれかわいい弟分よ」
『あれやろ、沢田、ファミリー着々と増やしとるんやろ』
「お、マジで?」
「ああ、いまんとこ獄寺と山本、あと候補が雲雀と笹川了平」
「友達と先輩だから!!!」
『ひばりん候補なんや……』



 そしてそのあとボンゴレがいかにすごいのかを聞いて、ディーノは部下がいないとへなちょこだと言うことを教えてもらった。一応原作読んでたからおぼとるけど、ここまでて。



.

66:ぜんざい◆A.:2016/11/23(水) 23:34 ID:ATI


 どうもこんばんはぜんざいです。

 現在書いている小説がこんがらがりそうなので久々に小説以外で顔を出しました!

 メイン連載は『とうらぶ×ネギま!』、そしてそれのifが『re!×ネギま!』です。ちょこちょこ短編が出ますね。

 そしてこの度、またまた私の唐突な思い付きによりメインが増えます!(断言)
 簡単に内容を話すと、私今SS投稿掲示板のオリジナル板で『フレデリトリガー』なるものを連載しているわけですよ。
 そこに出てくる不死の人間不信少年が今回の新たなメインの主人公。一応とうらぶとの混合になります。

 そこで、「は?」「身内を混合?」「ふ ざ け ん な(°∀°ノシ バイバーイ)」な方が居れば即Uターンを。


 とりあえず、今回の主人公なる少年の設定を入れておきます。(別に今書いてるテケテケ事件編がシリアスになりすぎて息抜きしたいとかそんなんじゃ、ななな無いんだよ!?(ゼンゼンチガウヨ!?°∀°;ノシ))
 今書いてるテケテケ事件編よりちょっとあとのif的な話だと思ってください! 分からない人は『フレデリトリガー』で検索検索ぅ!


 【時前 透(ときまえ とおる)】:男
栂敷学園中等部所属一年(テケテケ事件後に復讐に囚われてなくてイキイキした目で柔道部に所属した)
 トリガー属性【黒雷】
 黒雷属性副作用<不死>

 性格は基本寡黙でお人好しかつ超好戦的。常に一緒に居る柿沢 葵(かきさわ あおい)とは両共に依存関係であり、心の支えでもある。彼は彼女の家でもあるカフェは半入り浸っている。(彼女とは交際関係ではない)
 フレデリトリガー主人公である【鉄我 凪(てつが なぎ)】と仲良くなってからは彼の一卵性の双子の姉である【鉄我 星奈(てつが せいな】)とも仲良くなりその関係で【火神 息吹(ひがみ いぶき)】【菊榁 宗二(きくむろ しゅうじ)】【欄栂 憐哉(らんとが れんや)】【堺堂 円(かいどう まどか)】【白石 雅臣(しらいし まさおみ)】などなど友好の輪をだんだんと広げていった。
 彼には同年の弟の【青山 光(あおやま ひかる)】いる。名字が違うのは両親が離婚したからで、透は父に、光は母に引き取られた。なお、透は光から自身の記憶を全て消しているので光自身透の事を覚えていない。それを知っているのは両親と幼馴染みの【日向 伊澄(ひなた いずみ)】のみ。伊澄は現在、光の幼馴染みとして行動し、日常を透に伝えている。透自身ブラコン。
 透自身結構な人見知りであり、他人からは悪い方に勘違いされやすいが、慣れれば強くてかっこよくて優しくて頭も良いちょっと天然なところもあるただのイケメン。
 容姿はトリガー使い特有の赤い瞳(上記の人物も同じく)。金髪に前髪の左側に黒メッシュが入っている。寝癖が酷い。
 つり目かつとても整った顔付きをしているが、右額右頬に切り傷の痕がある。同様の傷痕が首の左側面にひとつ、両腕に複数(左に縫い傷)、右手の甲にひとつ左手の甲に貫通した様な刺し傷、鎖骨から腹辺りまでびっしり切り傷(他大きな火傷に縫い傷と刺し傷と裂傷痕)。他にも下半身に多数(左太ももに切断したような傷)がある。だから不良と勘違いされ、【怪我の帝王】というレッテルがつけられた。透はトリガーの戦闘は好きだが殴り合い(ましてや一般人との喧嘩)は好まない。
 過去がとても酷い。五歳の時に父から黒雷の不死の副作用があるからと人体実験をされてきた。身体中の傷はそのせい。不死と言っても傷痕は残る、が、首が飛んでも心臓がつぶれても毒を飲んでも電気を流されてもウィルスで体を犯されても死なない。両親の離婚は父親の人体実験のせい(母はとても優しくて良い人、風の便りで亡くなっていることを知った)。
 天使殺し組織(エンジェルキラー)所属。悪魔の八代王の一人、【雷の女王シルヴィア】と【光の王アヴァタール】を使役している。二人とも好奇心旺盛かつお転婆なので手を焼いているようだ。
 武器は『シルヴィア』の大鎌、『アヴァタール』の日本刀。


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67:ぜんざい◆A.:2016/11/23(水) 23:58 ID:ATI

【フレトリ×とうらぶ】

透side

 現在日曜日の朝8時。今日、唐突に俺が所属しているエンジェルキラーの本部司令、火神伊奈(息吹の母)から直接呼び出しを受けた。
 一時期トリガーとフレデリを世間に発表してメディアが騒がしかったが、人の噂も75日、いや、実際75日も経っていないものの沈静化している。
 エンジェルキラーは政府とも繋がる大きな組織だ。度々天界から進行してくる天使を倒す組織なんてざらに居るが、エンジェルキラーは一際大きい。他で大きいところと言えば俺達の通う栂敷学園、あとは京都にある菊榁宗二の実家、宗家の菊榁一門(菊榁は次男だが【氷の王サタン】を使役しているので時期当主らしい。他にも長男が女ったらしだからという噂もある)。
 そのフレデリキラーの最高権力を持つ火神さんがただの傷だらけの化け物の俺なんかになんのようなんだろう。
 俺は化け物だ。トリガー自体の副作用が【不老】、だいたい二十歳ごろにトリガー使いは成長が止まる。まあ死なない訳じゃないんだが、俺には不死が加わって、完全なる不老不死体。なんだよもう最悪かよもう。
 相変わらずのネガティブ思考が抜けない俺はいつの間にか本部内の廊下を歩いており、前方に見知った顔を見つけた。



『……凪』
「あっ、透だ、おはよう。どうしたの? こんな朝っぱらから。目の隈酷くなった?」
『俺はちゃんと寝てる。……火神さんから呼び出し喰らった』



 俺がここに居る訳を話せば凪が一瞬にして顔を真っ青にし、「なにしたんだよお前!?」と絶叫した。流石IQが軽く200を越えている男、頭の回転が速い、多分雷速100kmぐらい……いや、言い過ぎか、いやでも……。



「とにかく伊奈さんから呼び出し食らうって相当だよ!? さっさと言った方が良いんじゃない? 僕もついてくし」
『悪い助かる』



 正直本当に、あの生ける武神(美人)の火神さんのところに一人で行くなんて怖かったので本当に助かった。



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68:ぜんざい◆A.:2016/11/24(木) 00:24 ID:ATI


『……失礼、します』



 コンコンとノックをしてそう告げれば「入れ」とテノールが聞こえてきてギィィと扉を開けながら自然と背筋が伸びる。結局凪は天使が出たので出動と言うことで姉の星奈と共にすたこらさっさと行ってしまった。裏切り者め。どうせ化け物の俺なんかと居たくなかったからなんだろ……とか今度凪の前で呟いてやる。俺は傷付いたぞ。
 つかつかと火神さんが腰を置く椅子と机の前に立ち、告げる。



『時前 透、来ました』
「……ああ」



 すると火神さんはおもむろに机に手をおいて椅子から立ち上がるといきなり俺に頭を下げた。ん?


「来てくれてありがとう、そしてすまん!」
『……え、訳わかんねぇ、ので説明頼みます。あと頭をあげてくれよ、あんた程の人に頭を下げられるような人間じゃねぇ俺』
「いいや、そんなことはない。君はあの薙斗でさえ認める優秀な実力者だ」



 薙斗とは。フルネームは【鉄我 薙斗(てつが なぎと)】、言わずもがなさっきの凪と星奈の父親である。世間にはあまり知られていないが双子の両親とか、火神さんとか夫の愁弥さんとか欄栂の両親など、彼らは一度世界を救ったことのある英雄である。その筆頭である薙斗さんが俺を認めるとかそれどんな幸せな夢。
 認める云々はとりあえず放っておくとして、頭を下げている用件を聞いた。



「ああ、すまないそっちが先だった。申し訳無さで行動が先走ってしまった。
 実は、政府とはまた少し違い、時の政府と言うのが存在するんだ。時の政府は、歴史を改ざんしようとする『時間遡行軍』なるものに対抗するために時間遡行……いわゆるタイムマシンを開発して審神者を過去に送り出している。タイムマシン設計にはうちの機械馬鹿も関わっていてな。いや、そんなことはどうでもいい。
 審神者とは、刀の記憶を甦らせ、想いを形にし、刀の付喪神に人の身を与えて時間遡行軍と戦う刀剣男士を生み出す能力を持つ。
 審神者の数は多くてな、そのなかで主従関係の主であることをいいことに付喪神である刀剣男士に無礼を働く者も出てきた。無理な出陣をさせたり傷ついても手入れで治してやらなかったり、夜伽……まあセックスを命じたりな」
『はい、質問っす。無礼を働く者が居ることは分かりました。セックスってなんすか』
「君は知らなくていいことだ」



 基本今までの人生は父親からの人体実験と今は既に死んでしまったあのカス親父に復讐することで頭がいっぱいいっぱいだったので勉強以外のことはまったくわからない。多分さっきの言葉も保健体育とかで習うんだろうけど俺保健体育だけ極端に物覚えが悪くなるから。火神さんが眩しいものを見る目でこちらを見てきたので一応すんません勉強しますと謝罪すれば「君は今のままで居てくれ」と強く言われた。



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69:ぜんざい◆A.:2016/11/24(木) 00:47 ID:ATI



「続けるぞ。
 その無礼を働く本丸をブラック本丸と言う。そのブラック本丸の原因は大抵『三日月 宗近』と言う滅多に姿を見せない美しい刀が中心なんだ。
 そしてそのブラック本丸の審神者はいずれ自身の刀剣に殺される。そして審神者の居ない本丸が出来上がるんだ。そんな本丸がいくつもある。普通の審神者を送り込めば人間不信の刀剣男士たちはその審神者すら殺す。
 そこで時の政府は不死の副作用を持つ君を派遣しろと要求してきた」
『なるほど……。どちらにしろ俺でよかった。葵の黒風……副作用の不死はバレてませんよね』
「そこら辺は大丈夫だ。君の場合政府に不老不死だとバレたのは雀佐が原因だからな。アイツ、実験データを政府に送っていたらしい」
『……あいつは死んでも俺に干渉してきますね』



 なるほど、政府が俺を派遣しろと。要するに寄越せと言うことだろう。死なない人間なんて貴重だ。そばにおいておきたいに決まっている。



『俺、政府の飼い犬になるんすか』
「いや、そこはちゃんと契約してある。本丸解決に協力するのは年に一件のみとな。破れば私が首を落とすから」
『物騒』
「そういうな。悪いが君に拒否権は無いようだ、決定事項にしたらしい。私は最後まで反対したんだが、すまない」
『気にしないでくれ、俺は元々あんたたちからの頼みを断る気は無い』
「……助かる」



 そう言った火神さんは悔しそうに唇を噛み締めた。なんかごめんなさい。
 その後俺は葵に知らせるために連絡を入れ、事を話せば「頑張ってね! ちょくちょく電話入れるからね! 一日一回!」と鼻声で返答された。

 家に帰って好き勝手していたシルヴィアとアヴァタールにもうまを伝えれば「面白そうだしいいじゃん! 私たちも一応神の席に腰置いてるし刀剣男士殴る! ボコボコよ!」「俺もやる! 切り裂くぜ!」とかノリ気だった。頼むから暴力行為はやめろ二人とも。悪魔か! あ、悪魔だった。

**

 数日後、一ヶ月二ヶ月現世を離れる的なことを言われたので盛大にお別れ会をして、俺は仕事場へと旅立った。
 大きな日本家屋の木製の門の前で案内係を待っていれば、ポゥンと何やら可愛らしい音をたてて面を被った小さな狐が現れた。



「あなた様が派遣されてきた刀剣男士更正員の時前透様ですね!! わたしはこんのすけともうします!」
『待て!! おいやめろ!!! やめろバカ野郎!!! ああ俺が時前 透! マジやめろってお前らああああ!』



 こんのすけの挨拶に適当に返して俺はシルヴィアとアヴァタールを取り押さえていた。だってコイツら塀を乗り越えて本丸に入ろうとしてんだよ! 止める気にもなるだろ!



.

70:ぜんざい◆A.:2016/11/24(木) 01:14 ID:ATI



 お転婆どもを取り押さえて地面に重ねて放り、その上から座ってこんのすけに改めてよろしくと告げる。



<はいよろしくお願いします。それにしても、時前様は神気が中々に高いでございますねぇ……>
「ったりめーだろ! なんたって俺達が透の僕(しもべ)なんだからな!」
「嫌よしもべなんて言い方! 透が私たちの主って言えよ! そっちのが楽でしょ!」
『悪ぃこんのすけ、コイツらほっといていいから』
「「見捨てないで!」」



 こんのすけを腕に抱いてそそくさとその場を離れようとしたら素早く体にすがり付いてきた神を冷たい目で眺めて一応混乱しているようなので説明しておく。



『もし俺の神気とやらが高いなら確実にコイツらのせいだ。一応神の席に腰おいてるらしいからな。
 薄い桃色髪で高いところに二つ団子くくりにしてる女が【雷の王シルヴィア】金髪のハチマキ巻いてるシャツのボタン全開野郎が【光の王アヴァタール】』
<このような高位の神を御二人も!?>
『お前ら一応すごかったんだな』
「透が興味無さすぎんのよ!」
「もっと知ろうとしろよ!」
『馬鹿を知って俺にも馬鹿になれってのかばか野郎。本丸はここであってんだよなこんのすけ』
<あっはい>



 扉をギィと開けばそこには綺麗な日本庭園があるわけなかった。枯れ果てた池と木々、淀んだ空気に明らかに不衛生な本丸。これが前任の障気かよひっでえ。



『ひでえな。お前ら呼吸大丈夫か』
「本当にお前は俺たちをなんだと思ってんだ」
「これでも上位の神なんだからね! 実害ねーよ!」
『うるせーよカス共』
「「カス!!?」」
<(容赦無しですね…)>



 そんな事をしていれば二人を指差していた右腕が飛んだ。ぽーんって。ぶしゃあああ! とスプラッタな感じに吹き出た血液は地面にボタボタと滴り落ちて、宙に浮いていた腕はアヴァタールがキャッチしてムシャムシャ食べている。絵面やべえなおい。まあ俺も不死とはいえ、再生しない場所はある。目だ。目はやられたことないけど直感で。
 警戒態勢に入ったシルヴィアは「刀剣男士、見ーっけ」と笑顔で鎌をぶんぶんと振り回して手元に抑える。アヴァタールを見れば既に俺の腕を食い尽くしたのか骨しかなくてぶんっと縁側側の障子に投げた。和紙を貫通して飛んでったその部屋から「うわあ!」とかそんな悲鳴聞こえたけど知らん。
 シルヴィアの見る方向を見つめれば、そこにいたのはぼろっぼろながら全身真っ白の儚げな印象のある男、だがしかし。浮かぶ笑みがアヴァタールとシルヴィアくさい、ちょっとうざそうな奴。儚げな見た目が台無しだ。
 腕を再生してぶんぶんと上下に振れば機能する。新しい傷が出来たが仕方ない。


『こんのすけ、あの白い塊はなんだ』
「名刀、鶴丸国永様にございます。彼の性格は人を驚かすのが好きなお転婆さんです」
『お前らじゃねぇかよ』
「私もっと可愛いもん!」
「俺もっとかっけーもん!」
『もんとか使うんじゃねえキモい』
「「だから酷い!!」」



 しくしくと嘘泣きをし始めた兄妹にガチめに顔をしかめれば相手の鶴丸がけらけらと笑い出した。



『……なんだ』
「いやあ、腕を飛ばされたのに案外冷静だなとな。再生したし、なにもんだあんた。俺達は人間が嫌いだ、出ていけ」
『俺は自称高位の神を二人従えてる不死の化け物だ』
「……自称、なのか」
『自称だ』
「「違うわ!」」



.

71:ぜんざい◆A.:2016/11/24(木) 23:51 ID:ATI

『鶴丸国永、一度引け』
「脳みそから内蔵まで食い尽くすぜ」
『……逃げろマジ逃げろ。俺が押さえてる間に逃げろ! マジで!』

じゅる、と涎をすすってギラギラした目で鶴丸を睨むアヴァタールを後ろから羽交い締めにして動きを止める。俺の必死な形相に危険を察知したのか鶴丸は苦虫を噛み潰したような顔をして本丸内へと姿を消した。興奮気味のアヴァタールに左腕を切り捨ててくれてやればそれはもう俺の腕をばくばくと食べ始めるのを確認してから、こんのすけは口を開いた。

<あのように攻撃的なやからも存在します、充分にお気をつけください>
『わかった』

そのあとは大広間にて挨拶。刃こぼれの酷い刀を幾つかつきつけられもしたが、俺は基本家の掃除をするから関わる気はないと告げておいた。折られてしまった仲間を取り戻すことは教えていない、だって恩着せがましいから。ここの本丸の刀数は多くなく、元は明石国行、御手杵、小狐丸、小烏丸、三日月宗近、太鼓鐘貞宗以外の刀剣は居たらしい。が、その大半が過度の戦と審神者の犠牲になったようだ。

「透、今から掃除?」
「えー、めんどくせ」
『いや、どれだけの部屋があるか見て回る。手入れ部屋と鍛刀部屋も見たい』
「ならいいや、りょーかいりょーかい。んじゃまぁ……行くかー」

ふらふらと本丸内を徘徊し、とりあえず全ての部屋を見て回った。
 大広間では見なかった水色髪のイケメンは傷だらけの小さい子供が四、五人寝かされている部屋で血みどろになって倒れていた。驚いたもののシルヴィアの「まずアヴァタールに見付からないように手入れ!」と言う言葉で慌てて手入れ部屋に押し込む。あんな血塗れの肉体を見たらアヴァタールがとびかかってしまう。危ない危ない。手入れ部屋はあと三つ。その部屋の子供の重傷者を順に手入れ部屋に運ぶ。とりあえず手伝い札を使ったので水色髪のイケメンは手入れは終わったがまだ目を覚まさないので布団で寝かせておいた。

『うわ、今更だけど、ひでえな』
「気付かなかった私も悪いけど、精液臭い」

よくよく布団を見てみれば涙と汗、他には粘着質は液体が。精液が何かは知らないが、これは衛生的に悪いものだとわかる。慌てて隣の大部屋にあった真新しい布団をその部屋に敷き詰めて水色髪のイケメンを寝かせる。規則正しい寝息が一番の救いだ。

『末席とは言え、神も怪我はすぐ治らないんだな……』
「コイツらは付喪神、本体が治らなきゃ傷は治らない。私達は日がたてば人と同じ様に治る」
『……俺が異常なのか、やっぱり俺は化け物なんだな……』
「ネガティブはやめてよ! それじゃあ私達上位の神が化け物に従ってることになるじゃん!」
『てめえはそればっかかカス!』
「相変わらず酷い!」

そんな会話をしながらよいせよいせと手伝い札を酷使しまくり、あの部屋にいた子供たち……刀剣男士は今、怪我も治って穏やかに眠っている。

『腹減ったな。どうせコイツら目ぇ覚めたら腹空かしてるだろうし、飯作りに行くか』
「ヤッター!」
『うるせえチビ』
「黙れ金髪」
『生まれつきだ馬鹿』

そんなことをうだうだ言いながらここでは厨と言うらしい厨房に来てみれば、見た目はあれだ、となりのト○ロの台所の広い版みてえだった。そのくせIHとかの最先端器具完備だから腹立つ。そして俺はそこで中華鍋をバリボリ食ってるアヴァタールを発見。

『お前なんてもん食ってんだ!?』
「意外とイケる」
『イケねーよアウトだ阿保』

一発キツめの肩パンを入れて、なに作ろうかと冷蔵庫を覗けば食品完備。なんだここ。今回は無難にカレーと言うことで深底の鍋に大量に作りましたカレー。うん、バーモ○ドカレー美味いよな。そんなことを考えて無心で飯食って、とりあえずさっきの大部屋に再び足を向けた。

72:ぜんざい◆A.:2016/11/25(金) 17:34 ID:ATI



 先程の大部屋を覗き見すればすやすやと心地よく寝ている刀剣男士を確認。ゆっくりと扉を閉めて、ふと火神さんからの言伝を思い出した。そう、なんでもいいから二本は刀を鍛刀、またはドロップを持ち帰らなければならない。こんのすけに残っている資材の量を聞けば残りは最低値もないと言う。なんだってー!? とアヴァタールとシルヴィアが悲鳴をあげるなか、俺はじゃあ出陣するかと声を掛けた。



「そーねー、足んないし」
「斬っていいんだよな?」
『おう』
「お、お待ちください! あなた方三人だけで行かれるなど……!」
『あっ、大丈夫です』
「拒否ですか!?」



 そうやって喚くこんのすけを放って俺たちは時間指定も面倒だったのでタイムマシンの向かい所は設定してあった『厚樫山』で過去に飛んだ。



**



「これこれこれぇ! これぞ戦! これぞ戦闘!」
『……待てよアヴァタール、行き先はサイコロで決めんだとよ。12面体とか珍しいな……』
「なんでも良いからちゃっと敵の本丸まで行ってちゃっと倒そ!」
『……手っ取り早いしな……』



 ほーい、とか言いながら賽の目の方向に進む。途中時間遡行軍と交戦したけどほぼアヴァタールが暴れたので俺とシルヴィアは出番無し。進んでいけば運良く敵の本丸にたどり着いたようで、流石にこの人数はアヴァタール一人ではキツいだろうと俺達も参戦した。
 右手に刀、左手に大鎌、今の俺はどこの殺人鬼だよ。まぁ化け物にはそれがお似合いってことか……。

 敵陣を倒しきれば、ここに来る以前で大量に発見した資材の他に一際輝くとても綺麗な太刀を見付けた。俺はそれに近寄って『太刀? なんでこんなところに。ウチのアヴァタールに折られなくてよかったな』とか一人言を呟いて一応戦利品として持ち帰ることにした。解刀すればきっと資材になるしな。

 かたり、とその太刀が少し動いたような気がした。



.

73:ぜんざい◆A.:2016/11/26(土) 18:54 ID:ATI



 俺は今、先程の太刀を顕現させようとしていた。聞けばこの太刀は滅多に御目にかかれない珍しい刀らしく、解刀しようとしていた俺はこんのすけに怒鳴られて渋々顕現することになった。俺はエンジェルキラーに属している以上、審神者にはなれないので顕現したらこの太刀はこの本丸に引き継がれるらしい。

 顕現してやって来たのは、なんとも見目麗しい姿をした青年だった。



「俺は『三日月宗近』、天下五剣の中で最も美しいと言われている刀だ。11世紀の末に生まれた、要するに爺さ。いやはや、俺を解刀などしようとしたのはお前が初めてだぞ。いやぁ、焦った焦った」



 はっはっは、そう笑う自称爺の三日月宗近。なんだろう、どこか喰えない雰囲気がとても……凪に似ていた。彼の瞳の中の三日月が俺をまっすぐ、力強く見つめてくる。何を言えば良いのやら、シルヴィアとアヴァタールに目を向ければ、シルヴィアは「光と違う種類の綺麗……」アヴァタールは「うまそう」と呟きグウゥ……と腹を鳴らした。アヴァタールの発言と腹の音はこの際聞かなかったことにする。



「お、俺は食われるのか……?」
『いや、食わさねえから安心しろ。俺は時前 透、ちょっとの間よろしくな』



 俺が彼を少しばかり見上げてそう名乗れば、そのとたん三日月はふにゃりと微笑んだ。



「そうか、透と言うのか。名乗ってくれるのは嬉しいが良かったのか? 俺達は付喪神とは言え神の端くれ、名を教えれば隠される危険もあると言うに」
『え』



 そう聞いてばっと二人を振り返る。忠告してくれた三日月には悪いが、危険度はあいつらの方が上なのだ。サッと血が引くのが分かる。



『……したら、解雇……だな。それか、サタンに引き渡「「しないから解雇もサタンに引き渡すのもやめてぇええ!」」



 ぶちのめされる! と半泣きになりながらひしっ、と俺(の足)に物理的にすがり寄ってきた二人を蹴散らし『したらの話だ』と一つ言い放ち、三日月を見上げて『……忠告、ありがとう』と呟いた。



「なんだ? そこの二人も神か」
『……それもかなり上位のらしい。基本的に悪魔は気まぐれだけど、コイツらは人間臭い。そもそも神かどうかも怪しい』
「そこは神だって断言するもん!」
「こんのすけだって俺達の事神だって言ってたもん!」
『うるせえ失せろ愚神』
「愚神!? ぐしんて何アヴァタール!?」
「知らねえ!」
『……(´ω`;ゝ)(コイツら頭悪いな)』



 困り果てた俺は髪の毛を掻き、鬱陶しい兄妹を再び蹴散らして三日月に『基本的に無視してくれ』と教えれば上品に口もとを袖で隠してくつくつと笑う。そこら辺わきまえてて古臭いのはコイツが爺だからなのか、平安生まれだからかは知らん。



「どうやらずいぶんと猛々しいところに来てしまった様だな」
『……俺みたいな化け物が呼び出して悪かった』
「化け物……?」



 あっ、はい何でもないです。



.

74:ぜんざい◆A.:2016/12/02(金) 01:21 ID:DwQ


re! のあのifの続き。原作逸れ、関係無い短編。ディーノと雲雀が修行して顔見知りになったあと。(リング争奪戦後)


『いやー、お前争奪戦の時ヤバかったなあ! モスカドゴーンて!』
「あれくらいいおりも出来るでしょ、『斬岩剣!』とか叫びながら」
『流派やし! 由緒正しい京都神鳴流やし!』



 応接室にて、そんな言い争いをする俺たち。するといきなりガラッと扉が開いて、部下を連れていないディーノが応接室に笑顔で入ってきた。
 向かい合う様に配置してある上質なソファに腰を掛けて顔を突き合わせていた俺たちは『ディーノくんや』「あれ? 何でいおりがここにいんだ?」「なに、知り合いなの」と各々反応を見せる。



「いやあ、いおりが恭弥と知り合いだったとはな!」
「ねえいおりなんでこんなうるさいのと知り合いなの?」
『成り行きでな』
「理由」
『成り行き』
「……理由」
『成り行き』
「……咬み殺す!」
『やれるもんならやってみい!』



 恭弥を煽るだけ煽り、トンファーで鋭い攻撃を繰り出してくる恭弥をへらへら笑いながら何でもないように避ける。はっはっはなんて笑って居れば、「え、いおりつええ」とディーノが唖然としている。いやまあ俺恭弥に攻撃されて当たったことないんで。はっははー!
 だがしかし、そこで問題が発生する。



「よし! なら俺も混ざるか!」



 と鞭を持って立ち上がったディーノ。恭弥はふぅんと鼻で笑い、俺は顔を青くさせる。



『えっ、ディーノくん参戦なん? え、嫌な予感しかせ「行くぜ!」待って話を』




 俺が鞭を振るおうとするディーノに近付き、後ろからトンファーで頭を狙ってくる恭弥に純粋に恐怖した。ディーノはソファから立ち上がると自分の足を踏み、すってんころりんと前屈みに倒れかけ、目の前に居た俺はぴしりと固まる。え。



「ちょっと」
『うおっ、がふっ、いでっ』



 あ、これディーノくんとぶつかるみたいな事を考えて悟った目をしていれば背後から恭弥に抱き抱えられるように引っ張られ、どさりと二人して尻餅をつく。そして支えなどないディーノの俺の腹に綺麗な頭突きを咬ましてくれましたよええはい。



『……いてえ』
「ちょっと、重いんだけど」
「いや待って! 見えない! 暗い!」
『おいディーノくんフードフード!』
「この人こんなんだったっけ……」
『部下が居ないと極端にいろいろダメになるんやこの人。君はいつまで俺をかかえているつもりなんやろな?』
「跳ね馬が退くまで」
『ディーノくんはよのいてえええ!』
「よしっ、フードは取れたぜ! すぐたつから待っうおお!」
『ガッハァ!』
「うっ」



 慌てて立ち上がろうとしたディーノは足を滑らせ俺のサラシでまっ平らに潰した胸へとダイブしてきた。その衝撃で後ろの恭弥も少し唸る。



「……重い」
『痛い……』
「すまんお前ら!」



.

75:ぜんざい◆A.:2016/12/04(日) 08:41 ID:Viw

(とうらぶの)

三日月side


 俺と蛍丸、愛染で部屋を散策していく。ここの刀剣は刀剣女士として出現する厄介な本丸で、審神者はそれで調子に乗り、夜伽を押し付けられていたと言う。
 まったく憤慨を覚えざるをえないが、そちらは主が行ってくれるだろう。



「っ!」



 ふと蛍丸が顔をしかめた。同時に強く薫ってくる鉄臭い香り、ああ、これは……。
 愛染が「血の臭いだ」と呟く。



「酷いね、誰だろ」
「ここの部屋からだな」



 俺が刀を構えつつパンっと襖を開けば酷い血液の臭いと、血がべたべたに張り付いた手入れ部屋。



「誰もいない……?」



 蛍丸が呟いたとき、俺は上を見上げてハッとする。滴ってくる血液が愛染の頭にぴちょんと落ち、「ん?」と愛染が上を見上げて「ぎゃあああ」と悲鳴をあげた。つられて蛍丸も見上げ、悲鳴をあげる。
 そこには肩と腕、太股に大きな杭を打たれて血見泥の太鼓鐘貞宗。



「た、太鼓鐘!!」
「三日月さん、どうしよう!」
「やむを得んな」



 俺はアデアットと呟き、アーティファクトを発動させる。ぱっと自身が輝き、ふっと消える。



「『複刀、月刻み』」



 ふひゅっ、と素早く刀を抜けばサラリとその杭へ吸い込まれていく本体、俺自身。そして目にも止まらぬ素早さで全ての杭を太鼓鐘に当たらずに破壊した。

 だらんと落ちてくる太鼓鐘ををなんなくキャッチして、血だらけのコイツに簡易手入れ札をのせる。
 淡い光を帯びながらだんだんと傷が塞がってきている事実に安堵して、「戻るぞ」と二人に声を掛ける。



「え。主のところに助太刀しなくていいのか?」
「コイツに無茶をさせるわけにはいかないだろう?」
「ああ、そうだよね。集合地点へ戻ろ」
「あーあ、審神者切れると思ったのにー!」
「これこれ、不謹慎なことを言うでない」
「えー、三日月さんも思ってるくせに!」
「……緋斬が怒るだろうなあ」
「「ごめんなさい」」



.

76:ぜんざい◆A.:2016/12/10(土) 23:56 ID:k..



**いおりside



 襖をすぱんと開けば、途端俺の左肩が一気に熱を帯びた。ぼたぼたと垂れるそれに、目の前で泣き出しそうな顔をする浦島に、顔をしかめる。
 隣の鶴丸が「主!」と叫ぶのが聞こえた。ちらりとアイコンタクトで鶴丸を見やれば鶴丸は呆れたように笑って審神者へと向かっていった。
 目の前で薄く涙を溢す浦島の頭をぐしゃぐしゃに撫で回してゆっくりと自分で刀を抜く。深く刺さった脇差は血に濡れ一層浦島虎徹が顔を歪める。刀帳にて、元来浦島虎徹と言う刀剣男士は常に笑顔で活発な男、こんなに泣きそうな顔をするやつじゃない。
 俺は今、手元に緋斬が無いから言霊の鎖は切れないものの、恐らく命令でやらされたであろう浦島に微笑み掛ける。彼の体には、傷ひとつなかった。



「や、俺、ごめん、なさい! あんたたちが助けに来てくれたの知ってたのに……」



 縋るように服を掴んできた浦島は懇願し、頼むから折らないでと泣き付いてきた。俺はそんな浦島の頭を優しく撫でて、口を開く。



『大丈夫、折らへん』



 本当に? そう言いたげな浦島に鼻で笑って見せて、少し説明してやろう。視界から外れている前方の鶴丸と審神者は知らない。



『俺んとこの本丸な、俺が鍛刀した刀、一人もおらへんねん。元々俺【黒本丸更生部隊】に配属されとってん。俺の一番最初の刀は二振り、三日月と燭台切。この二人は俺が初めて行った黒本丸に居ったんや』
「え……今、最強の本丸なのに?」
『せやねん』
「待て待て。俺も初耳だぞそれ」



 おいおい、そう言いながら寄ってきたのは既に頼んだ仕事を終えた鶴丸。彼の白い装束にたっぷりと付いている返り血はもう知らん。
 そうか、鶴丸は数十年後に来たんやったな。



『そこで、審神者の命令で戦ったんや。やからなあ、浦島の左肩刺したくらいやったらなんともないんや』
「……何で?」
『俺、そんときに戦った三日月に首飛ばされたから。それに比べたら全然。光忠は俺の腹をかっさばいた程度や』
「はぁ!!? そんなこと俺は知らないぞ!?」
『言ってへんもん』
「首!? 首!? え、首!? 飛ばされたの!? 何で生きてんの!?」
『俺、不老不死やねん』
「すっげえ!」
『それがもう……75年前やな』
「75年!? あんた今、何歳なの!?」
『92歳や』
「若いよ! 人間ってみんなこう!?」
「いや、待て浦島。ウチの主は13の時に人間を卒業している」
「すげえ!」
『やから浦島も気にしな。よかったらウチに来ませんか!!?』



 バッと両手で浦島の手を握れば、え? と呆然とされた。今度はこちらが懇願する目で浦島を見つめる。浦島は困ったように鶴丸を見上げた。



「鶴丸さん、」
「悪いな、ウチの主はとてつもなく運が無いんだ。鍛刀しても失敗しかしないし、ドロップも極稀にしかしない。もう、ここ50年ほど新しい刀剣男士は来ていないしな」
「そういうことかー。何振り居んの?」
「えーっとだな、ウチには一応主の刀に付いてる刀剣女士も居るんだ。そいつと俺も合わせて……6振りしかいないな。ウチには初期刀も居らんし」
「すっくないなぁ!? 分かった行くよ! 流石に寂しいよ!」
「その代わり練度超高いぞ。何せ俺達六振りしかいないからな。実際に刀剣男士は五振りしかいない、だから部隊にすぐ入れるぞ! どうだ驚いたか!」
「マジ!? めっちゃ驚いた!」



 途端目を爛々と輝かせる浦島には悪いけど、俺のライフはもうゼロよ……鍛刀とドロップの事は言わないでほしかった……。
 すると、不意に浦島の顔が青くなる。



「そうだ! 太鼓鐘! 太鼓鐘が! アイツ、審神者に『もうやめてやってくれ』って頼んだら、手入れ部屋で……。アイツ助けたら、太鼓鐘も一緒に」
『落ち着け浦島、太鼓鐘は保護したで、もちろんウチで引き取るから』
「よかった……」


 安心したのか浦島は心底安堵した顔で、ふっと俺に持たれかかってきた。緊張が解けたのだろう、ぐっすりと眠っていた。



.

77:ぜんざい◆A.:2016/12/12(月) 23:59 ID:ELI



 門のところへと無傷の浦島と返り血まみれの鶴丸を連れて戻ってくれば、そこにはいつものメンバーがにこやかに談笑していた。
 ふと気が付けば燭台切がちらっ、ちらっ、と俺を見ては、ちらっ、ちらっ、と三日月の背を見ている。
 安心して腰が抜けた浦島をおぶっている俺は三日月の背を覗き込み、ああ、と納得した。そこにはすっかり傷も治り、すやすやと寝ている太鼓鐘貞宗の姿が。


『光忠、この子が噂の貞ちゃんか』
「そうだよ!! ねえ主! 貞ちゃんウチで引き取って貰えないかなぁ!?」
『浦島にも頼まれたし、うちの本丸そんなに数居らへんし、そのつもりやで』
「〜〜〜! 愛してる主! やっぱり僕の主は最高カッコいいよ!」



 がばっ、と飛び付いてきた燭台切にからからと笑って浦島がびっくりしてるから退いてくれと告げる。浦島に首に回された腕がきゅ、と力が入ったのでやっぱり驚いたのだろう。ばっと慌てて離れて驚かせてごめんね浦島君! と謝罪する光忠。そんな光忠は返り血にまみれた鶴丸を見て飛んでいったので俺達は三日月たちに寄っていった。



『おつかれ、太鼓鐘貞宗救出御苦労さん』
「おや、主は救出のことを知っておったのか」
『光忠からパクティオーカード機能のテレパティアで連絡があってな』
「なんと。俺は初耳だぞ!」
「おま、三日月!! こっちは一回教えましたで主!」
「主〜、疲れたー」
「俺もー」
『おんおん、無事任務終了したし久しぶりに新しい子、しかも二人も来てくれたし、大成功やな』
「俺も早く新しい主の本丸行ってみてぇなー」



.

78:ぜんざい◆A.:2016/12/16(金) 19:00 ID:ELI

 とうらぶ一旦完結しました。いや。長かったです。
 次からはre! の原作沿いの混合無しです。下は設定です。名前は引き継ぎ。

『伊達 いおり』
 並盛中学生の風紀委員長の同級生。他クラス。
 成績普通、運動神経は少林寺拳法をしているので良いだろうと思われる。
 肩上しかない暗紅色の髪は外に緩く跳ねていて前髪が長い。顔は別に整っている訳でもなく男寄りのちょっとかっこいいかな、気のせいかぐらいの容姿。目が悪いので黒縁眼鏡着用。外したら美少女! って訳でもない。もっと男寄りに進化する(夢主は結構気に入っている)。関西弁で見た目を裏切らない低い声。口数はそんなに多くない。並ch(2chみたいなもの)やニヤニヤ動画(ニコニコ動画みたいなもの)ではかなり有名なオタク。絵師もしている。

 リアリスト。赤ん坊がヒットマンとかダメツナと呼ばれているらしい少年がマフィアのボスだとか同級生の風紀委員長が並盛町を牛耳っているとか未だ信じられない。ナニソレ美味しいの状態ないろいろ理不尽に可哀想な子。

 美術部所属、少林寺拳法に似ているから空手部を兼部している。学校ではオタクであることを必死で隠しているため美術部では絵画しか書かない。(コンクールで入賞したときの賞金や賞品の図書カードは全て漫画等に注ぎ込まれる)しかし隠れて学校でも書いたりしている。(小説の挿し絵とかアニメのキャラとか)

 少林寺拳法は棒術を使える(教えられる)レベル。高校に入ったら道場の師範だとかなんとか噂がたっているとかいないとか。並盛なんだから平和に生きたいと思っている一般家庭(両親世界一周旅行中)出身。

79:ぜんざい◆A.:2016/12/16(金) 20:27 ID:ELI


追記。一人称は『こっち』です。内心がテニプリの財前君みたい。


 今日からこっち、伊達いおりは並盛中学三年生。重度のオタクですが今年もバレず、静かに過ごせたらエエな。

 とか思とったのが結構前。もう数日経った新学期は波乱の幕開けのようです。
 新入生の沢田綱吉が三年の持田さんと喧嘩になって笹川涼子を景品に剣道勝負して沢田が持田の髪を全部ひっこぬいたり、校庭がいきなり爆発して40年前のタイムカプセルから高学歴の根津の赤点のテストが出てきて学歴詐称で解任されたり野球部エースになった一年生自殺未遂事件。
 なんやねん、去年まで平凡やったやろ。おいおいどないなっとんねん。平和で平凡な平均な町、並盛町の面影はいずこへや!? 



『そんなわけで白玉さんが疲れとるんはちょお学校で今いろいろあってや、余計にめんどくさがりになったゆうわけやねん。平凡は一体どこに散歩いってもーたんやろな……』

【散歩www】
【やwwwけwにwしwみwwじwみww】
【ファイトです!頑張って生きて!】
【生きるんだ白玉さん】

『うぇっす、まあぼちぼち頑張りますわー』

【これまたやる気のないww】
【次の生放送いつー?】
【早く早く】
【寒いだろ早く(バッ】

『変態はさっさとこの俺にひざまずけよ。悲鳴をあげても許さねえ』

【ぎゃーーー! ごめんなさーい!】
【な、なにをする気かしらー!?(ハアハア】
【出たーーーー!】
【キ(\°∀°/)ターーーー!】
【白玉様のドSがーーーー!?】
【キ(\°∀/°)ターーーー!!!】
【これで女の子らしいから怖い】
【ドSモード時は一人称が俺になる!】
【そこに痺れるぅ】
【憧れなぁい!】
【www】

『憧れへんのかい。なんやお前らこういうとき息ぴったりでテンションクソ高なるなぁ……。そろそろ時間やからさよならやな。次回も気まぐれや、見つけたらラッキーやな、よかったなうんうん。そんじゃ、お疲れさん』

【ラッキーな人にどうでも良ささが滲み出る!】
【次回は最初から!】
【ラッキーな人になるぞー!】
【おー!】



 ニヤ動の生放送を終えて、ギシッと椅子に背を預ける。あー、楽しいニヤ動ホンマ楽しい。
 非日常とか認めへん。こっちは。絶対に。絶対にや!


.

80:ぜんざい◆A.:2016/12/16(金) 22:10 ID:ELI



 とある休日。本日はニヤ動をせずに絵を描いている工程を動画にアップしているヨーチューブコメント欄にてリクエストされた絵をデジタルでまったりしながら描くと予定しているので、午前中は外に出た。
 三年になる数日前、両親は書き置きを残して世界一周旅行へと出掛けてしまったのだ。こっちを一人で残して。まああの人たちのことだ、すぐ旅行に飽きて帰ってくるだろう。
 今日は古くなったパソコンをノートの方に買い換え様とPCを購入して行き着けの甘味屋で白玉ぜんざいでも食べようかと赴いた訳だ。

 正直に言おう。ぜんざいめっちゃうまい。ここのぜんざいクソうまい。今まで食ってきたぜんざいより全然うまい。こっちが並盛に来たとき珍しく関西のぜんざいを発見したので食べてみてからここのぜんざいに捕まった。虜にされた。表面上、こっちは表情筋があまり動かないのでよくわからないらしいが内心はめちゃくちゃ笑顔である。
 もぐもぐと店の表で、日傘で影になっていて赤い布の掛けられた長椅子に座って口をひたすら働かせていたら、向こうから並盛の旧服である学ランを羽織って制服姿の我らが風紀委員長がお見えになった。正直に言えば関わりたくない。いきなり殴られたらたまったもんじゃない。でもぜんざいが、ここのぜんざいがこっちを離してくれなへんのや。くそっ、ぜんざいェ。
 風紀委員長である雲雀が居るが仕方ない。ゆっくり味わって食おう。ところがどっこい。雲雀くんはあろうことかこの店へと入っていった。どうやら雲雀くんも御用達らしい。なんてこった。
 暖簾を潜って出てきた雲雀はこっちを一瞥してから此方が座って居る椅子とは違うもうひとつの方へすとんと腰を下ろして足を組んで待っている。その動作のなんと優雅なことか。

 気付いたときにはもう遅く、鞄からノートブックと鉛筆を取り出して雲雀に声を掛けていた。



『……ちょっとエエか』
「……なに」
『悪いんやけど、被写体してもらってかまわん?』
「……」
『嫌やったら別にエエんやけど』



 この雰囲気は断られそうや。心なしか少し落ち込みつつノートブックと鉛筆を鞄に戻そうとすると、がしりと腕を掴まれた。紛れもない、雲雀である。



「……別に構わないけど、理由を教えて」



 理由。まさかの理由。内心きょとんとしつつ『……綺麗やったから』と告げる。背景には散りつつあるけど綺麗な桜、雲雀のその端正な顔立ち、優雅な雰囲気。これをそのまま絵にしたいと思った。もちろんそのままずっとそうして貰うわけにもいかないから写真を撮らせてもらうけど。



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81:ぜんざい◆A.:2016/12/16(金) 22:26 ID:ELI



 一眼レフを構えてそう言えば雲雀は少し間を空けて「ふぅん」と鼻をならす。続けて「ここのぜんざい、もうひとつ奢ってくれるならね」と告げた。
 こっちはなんやそんなことでエエのかとかぼうっとしつつこくりと頷く。こっちは早速自分の時間に入った雲雀を写真に納めた。
 すると不意に雲雀がこちらを向いて「ねえ」と声を掛けてきた。



『なん……?』
「……やっぱりなんでもないよ。また今度応接室においで。茶ぐらい出してあげるよ。伊達いおり」
『……名前言うたっけ』
「風紀委員長だからね」



 そう言った雲雀に頷いて今までの雲雀のイメージを書き換える。雲雀は持って来られたぜんざいを心なしか微笑んで口に入れていた。ふっとその瞬間を写真で切り取る。やべ、そう思って雲雀を見れば彼は怒ってトンファーを持ち出すでもなくただこちらを一瞥するだけだった。その目は怒りをともしていなくて、一息つく。
 意外やけど、今日わかったこと。



『……雲雀は、優しい』



 自分のぜんざいを味わいながら不意に外に出た言葉に別に動揺するでもなく、ほっといた。雲雀は優しい。最強なんて恐れられているけど、甘味がけっこう好きで、綺麗な顔立ちをしていて彼の瞳の黒燿石は艶やかに煌めく。

 さっきの言葉を拾っていた雲雀が目を少しばかり見開いていることに気が付かなかった。


 それは、彼の心にどう影響したのか、気づいてすらいなかったこっちが知るわけがない。



.

82:ぜんざい◆A.:2016/12/16(金) 22:46 ID:ELI

捏造注意


 その日は一応出来上がったら応接室に持っていくと雲雀と約束を取り付けて雲雀とは別れた。少し話をしていただけだったけど、個人的には雲雀は好きな部類だ、無理に話さなくて済む。
 ノートパソコンの入った段ボールを覆うビニール袋を引っ提げ帰路を歩いていたのだが、不意に「すみません」と大人のようなそうでないような男の声がこっちを引き留めた。振り返るも姿は見えない。気のせいかと向き直ろうとしたとき、「こっちですよ」と下から声を掛けられ目線を下げればそこにはあら不思議、雲雀そっくり……いや、雲雀を幼くしたような顔立ちの赤ん坊が二足歩行で居た。赤い中国を連想させる服に、赤いおしゃぶり。ん?
 明らかにこの子があの結構低い声出してたよね。
 しゃがみこんでその子を凝視すれば苦笑いされて「驚かせてしまいましたね」と驚くほど丁寧な口調で流暢に喋り出した。



『……いや、別に驚いた訳やなくて……なんでこんなとこに赤ん坊が一人でおるんやろなって』
「そこは別に気にしないでくださいね」
『あっはい』



 改めてどうしたのかと聞けば、しばらく並盛に泊まる宿を探していたらしい。探し人が見つかったけど今はまだ出ていくときではないから、と教えてくれた赤ん坊。どうやら精神年齢は成熟している様だ。



『……赤ん坊一人で? 泊まれるん?』
「……どうでしょうね。とりあえず、道をお聞きしただけなので。失礼します」



 雲雀そっくりな顔で微笑まれて複雑になる。……雲雀も笑ったらこうなるんじゃね? むしろちっちゃい頃こんなんだったんじゃね?
 とか考えているうちにすたすたと萌え袖をずるずる引きずって去っていく赤ん坊を呼び止める。振り向いた時に彼のひとつに纏めたおさげが揺れた。



『行くとこないんやったらウチ来ぃか? 今親旅行でおらんし、居候言うことで。親帰ってきてもエエって言うやろ』



 赤ん坊は大きな目をぱちぱちと数回瞬きして「良いのですか?」と首をかしげた。あざとい。非常にあざとい。かわいいなもー。



『かまへんかまへん、来るか?』
「……よろしくお願いしますね」



 赤ん坊は微笑んで「風(フォン)と言います」と自己紹介をした。赤ん坊で一人旅とかすげーななんて思いながら『伊達いおりや』と自己紹介で返したのだった。



.

83:ぜんざい◆A.:2016/12/18(日) 23:59 ID:ELI

捏造有り


 風(フォン)君と家への道のりをのんびり歩く。彼の頭の上に乗る白い小さな猿はリーチと言うらしい。

 現在風くんはこっちの頭の上で正座して町の風景をキョロキョロと見回していた。



「……なんと言うか、平和ですね」
『……知っとる? 平和が一番普通やねんで……?』
「私は全国武道大会で何回か優勝していたりするので、周りはこんなに静かではありませんでしたよ」
『風くん。君、いったいどないな人生歩いてきたん』
「ふふふ」



 袖余りでくすくす笑う風くんが見えないけどきっとかわいいんだと思います。家に着いて風くんをひょいと地面に下ろし、部屋をひとつ与えた。家は一般家庭ですが部屋がちょうどひとつ余っているので困らなかったが。もちろんこっちの部屋は二つ。ニヤ動・実況部屋と普通に私室。私室ではパソコンで絵を描いたりするけどそんなにヤバいものは描かない主義だから。



「……広いですね」
『……まあ、赤ん坊にしては広いな……。基本的にここは風くんの私室にしてエエけど、寝るときはこっちの部屋来ぃか』
「良いのですか?」
『さすがに赤ん坊一人で寝かせるわけにはいかんし』



 足元の風くんを見れば綻ぶ様な笑顔が浮かんでいた。やはりなぜ赤ん坊の風くんが一人で日本に来たのかわからないが、まあ詮索はしないでおこう。やって面倒臭い。



「お風呂はどうするのですか?」
『……一緒に入るんはさすがにやめとこか』
「なぜです?」
『なんか、こう、風くん赤ん坊らしさがない言うか、大人らしいみたいな? 主にこっちが思春期やからや思うねん』
「そうですね(なかなか鋭い……)」
『悪いなぁ』



 とりあえず居候の風くんが我が家にやって来ました。
 ご飯食べて別々に風呂入ってこっちの部屋に来た。膝に風くん乗っけて髪の毛鋤いています。なにこの子髪の毛さらっさらやん。はい終わり、とポンと頭に手を乗せてそう言えば、風くんはこちらを振り向いてそのままこちらと向き合いながら真剣な表情で口を開いた。



「図々しいとは分かっているのですが、ひとつたのみごとがありまして……」
『かまへんよ、言うてみ』
「……あなたのご両親は構わないのですが、私を他の人とあまり会わせないようにしてください、私の探し人に勘づかれる恐れがあります」
『ん。りょーかいや。こっち基本的に昼間学校居るし、あんま人こーへんし』



 あっ、でも明後日遠い親戚が一人泊まりに来るわ。
 そう告げれば風くんは「明後日とその翌日でしたら私は外出しますので安心してください」とぱっちりつり気味のおめめが細められた。
 カワエエ!! ……けど、どうにも赤ん坊らしさがないねんなぁ。
 すると風くんが不意に「いおりさんは何か武術をやっていますか?」と聞いてきた。



『んー、一応な。少林寺拳法やっとる。棍棒が好きやねん。少林寺ではあんまやらんけど』
「ふむ、それなら日に一度私と組手をしませんか? 私が素手で君が棍棒です」
『……風くん大会優勝者なんやろ……?』
「大丈夫です! 組手と言っても一緒に鍛えるだけです! 居候させていただいているのですから!」
『お、おん……分かった……(いきなり目ぇキラキラしだしたな)』



.

84:ぜんざい◆A.:2016/12/19(月) 00:19 ID:ELI



 その日の夜は風くんが寝たのを好機とし、早速今日購入したPCを設定していった。データ写してー、今日の雲雀くんの写真のデータ入れてー、普通の固定型でソフト起動してー。



『いざ!』
「……なにしてるんですか」
『っ!?』



 布団から起き上がって目を擦る風くんが不審そうな目でこっちを見てきた。まあ、確かに今日初めてあった人間はすぐには信用できないだろう。くそ、やってしまった。
 ノートパソコンの雲雀くんの写真のページをスッ、と閉じて目を逸らしながら『なんも』と返せば彼はこちらにとてとてと歩いて机の上に飛び乗りパソコンの画面を見てこちらを見て小首をかしげる。



「どうやら絵を書く機械のようですが、……さっきの写真はなんですか?」
『……今回の被写体っす』
「……無断で……盗撮ですか?」
『いやさすがにそれはせんよ!? ちゃんと許可もろてんで!?』
「それならいいんですけどね。絵をかくにせよ、電気を付けなさい。目が悪くなりますよ」



 風くんに促されて渋々電気を付けにいった。なんかこう、風くんって雰囲気あるやんね。
 そして絵を書くことに取り掛かると風くんが興味を持ったのか机の邪魔にならない位置に正座して「ほう」だの「わ」だの呟きながら興味津々に絵を書いている様を見ておられた。なんや気恥ずかしい。
 結局出来上がったのはそれから四時間後。書き始めたのが10時やから……深夜2時か、今回速かったな、背景もちゃんと書いたんやけど。
 うーん。机の上の風くんの眠そうなおめめがキラキラしてます。……眠いんやったら寝てええんやで?



「すごいです! 綺麗ですね! こんなこと出来るんですか!」
『なんやテンション高いな……どやぁすごいやろ(深夜テンションやろか?)』
「すごいです! またかいているところをみせてくださいね……!」
『おんおん、眠いんやったらはよ寝よな』



.

85:ぜんざい◆A.:2016/12/19(月) 17:18 ID:Lr2


 本日、雲雀君に「出来たら見せて」と言われたので応接室にやって来ました。
 『小原や、失礼すんで』と告げれば「入ってきなよ」と返され、扉を開ける。そこには椅子に座って書類整理をする雲雀くんがいた。顔をあげた雲雀くんはソファに目線をやり、お湯のポットを見、こちらを見た。あっはい茶を入れろということですねわかります。
 無言の雲雀くんに若干溜め息を吐きつつ茶を入れてソファに座る。正面に座る雲雀くんはこっちが入れた茶を飲んで「見せてくれない?」と手を伸ばしてきた。どないしょう風くんの大きくなったバージョンにしかみえへん。



『ほら。デジタルで書いたから、綺麗やと思うで、画力は抜いて』



 厚紙にプリントアウトしたものを雲雀くんに渡せば彼は頬を緩めて「へぇ」と呟いた。



「なかなかだね、すごい」
『そらどーも』
「ねえ、前写真撮ってたよね」
『ん……ああ、あれか。せやな、撮る。今日も一応……昨日のは無いけどデジカメならあんで』
「見せて」



 デジカメを手渡してカチカチとリズムよくフォルダを見ていく雲雀くんの指がふとぴたりと止まった。
 「これ、データくれない?」と見せてきたのは桜が満開の並中。



『かまへんよ、もう描いた』
「へぇ、ありがとう。また好きなときにここへおいで。話し相手が欲しかったんだ」
『りょーかい』



 翌日お言葉に甘えて応接室に行けば昨日あげたデータの並中の写真が額縁にでかでかと飾られていた。



『……(雲雀くん……君ってなんやところどころ残念やな……)』



.

86:ぜんざい◆A.:2016/12/19(月) 23:00 ID:Lr2



 家に帰宅すれば玄関の鍵は空いていた。風くんやろか、と思うもサイズの大きな革靴があったのであぁ来たんやなと悟る。奥で「うわわわわっ!」ゴチッ「でっ!」と言う声が聞こえてきた。慌てて靴を脱ぎ、リビングに行けばソファのところでガラスのコーヒーテーブルに顎をぶつけたと思われる親戚が倒れている。はあ、とひとつ溜め息を吐いて手を伸ばして引き起こせば「サンキューいおり」と彼は髪を掻いた。



『君な……勝手に家入るんはエエねんけど、転けるんやめてんか』
「おおっ、心配してくれてんのか!?」
『いや、物壊されたら困るねん』
「物の心配!?」



 涙目の彼をソファに座らせて、こっちは再び口を開いた。



『で、さっきはなんで転けたん……ディーノくん』
「いやー、いおりが帰ってきた! って思ってな、出迎えようと思ったら自分の足を踏んで転けちまった」



 たはー、と笑うディーノくんに苦笑いして『どーにか治らんのそのドジっ子属性』と小さく呟いた。そう言えば。



『ディーノくんって仕事なにしとん?』
「えっ、いや……はははっ、普通にな!」
『ん?』
「え、いや」



 慌て出すディーノくんに眉を細めるとぐっと言葉に詰まる様子に疑心を抱く。まあ、言いたくないのなら仕方ないか。



『こっちと君とじゃそこまで繋がりの血ぃ濃ぉないし……』
「へっ?」
『無関係……まあ関係無いっちゃ関係無いな……』
「んっ?」
『よお考えたらこっちに言う必要なかったな、すまん』
「えっ、えっ?」



 ぱっと顔をあげたディーノくんは戸惑ってるような焦ってるような顔してこちらを泣きそうな顔で見てくる。おいおい。ちょっと。イケメンがそんなんしんといてくれへんかな。
 ソファに再び深く腰を掛けたこっちを見て慌ててディーノくんが声を掛けた。



「いやっ、別にいおりが無関係だから言いたくなかったんじゃないんだぞ!!? いおりは平凡が好きだろ!? 俺の仕事平凡じゃねーから! だから言いにくかったの! 別に言いたくない訳じゃねーって!」
『あ、そうなん? ……平凡ちゃう仕事ってなん?』



 こっちがそう聞くと、ディーノくんは神妙な顔をして「イタリアンマフィアのボス……」と小さく呟いた。



.

 

87:ぜんざい◆A.:2016/12/19(月) 23:13 ID:Lr2



 へー、マフィアのボスかー、すげー……。



『!? マフィアのボス!!!?』



 がたっ、と立ち上がってディーノくんに詰め寄れば、ディーノくんは視線をそらしてこくこくとうなずく。っはー。



『……へなちょこディーノて呼ばれとったディーノくんが、ボスかー』
「いやいや、もう俺はへなちょこディーノなんて呼ばれてねー、跳ね馬ディーノだ」
『ならディーノくんドジするんなおった?』
「……まったくドジしない日の方が多いぜ! 一人の時はなんでかミスるんだよなー」
『……あ、はい(なんでなんやろ)』



 それから二人で他愛ない話をしつつディーノくんが唐突にリビングを出ていって戻ってきたときには大きな箱を抱えてやって来た。ん? なにそれ。



「いおりの誕生日プレゼントだ!」
『おっそ! え、おっそ! 今七月やで!? もうちょっとで夏休み入るで!? こっちの誕生日四月やで!?』
「仕事の都合で遅くなっちまった!」



 からからと笑うディーノくんは「開けて見ろー!」と箱をつき出してきたので受け取って開けて見ればそこには!



『……は? セグウェイ!?』
「おう! セグウェイだ!」
『……セグウェイ?』
「セグウェイ!」



 とりあえずディーノくんに飛び付いておいた。するとディーノくんのドジが発生、ディーノくんだけ後ろに倒れた。こっちは立ったままディーノくん見下ろして唖然。ディーノくんも唖然。え、ディーノくん……。



『……むっちゃ嬉しいわ……! やっぱディーノくん金持ちやな、流石マフィアのボス』
「どーいたしまして! 壊すなよ?」
『ディーノくんはそれを自分に言いや』
「え?」



 きょとんとするディーノくんに呆れつつ手を差し出して引き起こす。いやあ、ディーノくん万歳。夏休みはセグウェイ乗り回すわ。



.

88:ぜんざい◆A.:2016/12/20(火) 00:31 ID:Lr2

上記では『今七月やで!?』といってしましたが誤りです。現在五月設定です。

 さて、やって来た体育大会。こっちの出場競技は借り物競争だ! なに引くんやろめっちゃ怖い!

 よーいドンで駆け出して紙に書かれた借り物を見れば、そこには「委員長」と書いてあった。……委員長? 委員長って借りれるもんやっけ? まあどこの、とは書かれてへんし誰でもエエんやと思うけど……。



<3年B組伊達いおりーー! 借り物を見て固まったがどうしたー!?>
『……委員長って書いてあるんやけど』
<まさかの委員長ーーー! 他人にあまり興味を持たない伊達は誰が委員長だか分かっているのかーー!?>
『おーい実況者ー、失礼やろー』



 そういってめんどくさいけど頑張る。一目散に駆け出したのはそう、唯一知ってる委員長、雲雀くんのところである。



『雲雀くん、ちょっと来てくれん?』
「やだ」
『(他の委員長知らんし)雲雀くんしかおらへんねん、また埋め合わせ持ってくから』
「……僕しか?」
『せや』
「……埋め合わせ、考えといてよ」
『りょーかい、抱えてエエ?』
「もう勝手にしなよ」



 了承をとったあと、彼の膝辺りを右腕で抱えて雲雀くんの上体はなんの支えもない状態で持ち上げて走る。雲雀くんは目を見開いた「うわっ……!」とか言ってたけど了承したんきみやから。異論は聞かへんで。



「ちょ、不安定……」
『おんぶか横抱きの方がエエか』
「……」



 以降雲雀くんは体勢に関して何も言わなくなった。



<3年C組伊達いおりの連れてきた委員長は……ひっ、ヒバリさんんんんん!? え、ヒバリさん!? 風紀委員長の雲雀恭弥さんだーーーー!>
「うるさいよ」
<あっはい>



 結果、1位。下ろした瞬間トンファーで頭をどつかれそうになりましたが避けました。いたいのいや。



「……咬み殺す」
『すまんて。謝罪と埋め合わせもしたるから』
「……」



 何も言わずスッ、とトンファーを下ろした雲雀くんかわエエわ……。

 学校中の人間が今日思ったこと。

(伊達いおりって、一体なにもの……!?)



.

89:ぜんざい◆A.:2016/12/20(火) 00:33 ID:Lr2


 誤字発見。

<3年C組伊達いおりー!>

 と実況者は言っていましたが実際にはB組です。ややこしくてごめんなさい。

90:ぜんざい◆A.:2016/12/20(火) 17:46 ID:Lr2




 体育大会から数日、最近こっちは風くんにべったりです。いや、なぜかと言うと可愛いし可愛いし可愛いし可愛いし。今日も今日とて風くん超可愛い。



『おはよう風くん』
「おはようございます」



 朝、ほぼ一人暮らし状態なこっちは自分で朝飯を作っとるから朝早くにおきなあかんのが面倒。だがしかし、目をごしごしして階段を降りてくる風くんの為、休むわけにはいかない。朝の破壊力が半端ないぞ風くん!


 家を出てから気が付いた。やべえ弁当鞄に入れてねえ。えぇ……嘘やん。



『……昼時雲雀くんとこ行くか……』



 一人でそんなことを呟きながら歩いて数分、頭にとすっと言う音と重力を覚え、びっくりしていたら「忘れ物ですよ」と声が聞こえ、風くんだ。と納得する。彼の手には弁当箱が。



『……ふぉんっくんんんんんんん……! ありがとおおおおお……!』



 ちょっと、うちのアルコバレーノが可愛すぎて鼻血噴出直前やねんけど。照れてる様に笑う風くんマジえんじぇー。



**

 帰宅途中、ある一軒家に黒服の男たちが大勢居た。……何やこれ。
 ぎょっとしつつ通れそうにないので別の道を探そうとした瞬間、その家の二階からとある人物が飛び出した。え、あれって……。



『ディーノくん……!?』



 ディーノくんは鞭を振るって二つの何かを上に放り投げつつスタッと着地。直ぐ様その背後の空中でその二つの何かが爆発した。……!? 爆発した!?



「またボスのやんちゃだな!」
「一日一回はドッキリさせやがる」
「今のはちげーよ!」



 スクッと立ち上がるディーノくんは笑顔で、ああ、昔のへなちょこディーノから成長しとるんやなってしみじみ感じた。すげー、昔なら絶対飛び降りるとかしなかった子なのに。
 二回の少年が「あの人カッコイイ……」と呟いていたのが微かに聞こえて、憧れの的にまでなるとは……顔だけは昔から良かったけど……すげーな、頑張ってボスやっとんねんな。あー、頬が笑顔でひきつるわー、ひくひくひきつってまうわー。

 すると不意にディーノくんがこちらを見た。こっちを視界に捉えたのか、それとも頬をひくひくさせている表情に気が付いたのか、視線に気付いたのか、目を見開いて唖然とした、そして部下と思われる黒服の方々もこちらを見て唖然。こっちもある意味唖然。
 ハッとしたディーノくんが焦ったように駆けてきた瞬間、こっちは顔を蒼白にさせてダッシュした。
 二人してその家の回りをドキャッと激走しながら話し合う。



『うん、ディーノくんマフィアのボスやもんな……! 正直あんま信じとらんかったけどこっちは信じた……! 安心しぃや信じたから!』
「待ていおり!!! 違うぞ!? いつもはこんなことしねーからな!? 今日が特にってだけだ!」
『希にあるんやろ!? あんねんやろ!? 頼む来んといてマジ来んといてホンマ勘弁して巻き込まんといてマジ頼む追っかけてこんといて家帰らしてホンマ君とおるといっつもトラブル巻き込まれとんねんとばっちりもれなく受けとんねんいやや来んな!』
「最近はそうでもねえ!」
『知らん!』



 しばらく二人して体力が無くなるまで走り回った。



.

91:ぜんざい◆A.:2016/12/20(火) 18:11 ID:Lr2



 どうやらあの家から少しだけ離れてしまった様。座り込んで足が痙攣してしまっているディーノくんを肩に背負っててくてくと歩いていく。重い。家の方に付くと黒服の方々に囲まれた。え、なになに怖い怖い怖い。



「あれ、ボス!」
「女の子に担がれてんぞ……!」
「ボス…」
「うっせうっせ! 足がさっきまで痙攣して動かなかったんだよ! もう呼吸も痙攣も治ったけどな!」
『それをはよ言えや、降ろすで』



.

92:ぜんざい◆A.:2016/12/20(火) 18:25 ID:Lr2



 ディーノくんはこっちの事を部下の人たちに説明すると、みんな一様に「あぁボスがセグウェイあげた親戚」と納得していった。納得するんかい。



「リボーン! 説明聞いてたな!」
「おう、ばっちりびっちりな」
『……黄色のおしゃぶりの赤ん坊なん……?』
「リボーンだ。よろしくな」



 一応よろしく、と返して「んじゃ」と踵を返す。するとがしっと腕を掴まれた。



「いおり、リボーンが飯食ってけってさ」
『……いや、エエわ。今回は遠慮しとく、もう朝に作り置きしてあんねん』
「ならしゃーねーな」
『リボーンくんも誘ってくれて感謝な』
「またこいよ」



 そして帰宅。朝に作り置きしてあると言うのは真っ赤な嘘である。だって晩御飯は愛しの風くんが作ってくれとんねんもん。風くんの炒飯旨いし。



『ただいまー』
「おかえりなさい」
『ん¨ん¨ん¨っ!』



 玄関先で身をのけぞらせ、顔に手のひらを乗せてとりあえず余り袖を引きずってとてとて駆けてきた風くんかわええ。



.

93:ぜんざい◆A.:2016/12/21(水) 18:51 ID:Lr2


 時は流れて2月、雲雀くんとも良好な仲は続いており、風くんは相変わらず愛らしい。風くんと手合わせしたりするけど、未だ勝てたことはないですはい。風くんも既に見つけた探し人に発見されて無いらしい。努力の賜物である。
 そして今日は2/14、男女問わず聖なる日のバレンタインデーだ。
 教室にて、少し仲の良い女子数人に挨拶を交わして席につく。そのままイヤホンを装着しつつ机に突っ伏して昼休み雲雀くんとこ行こうと睡眠を取った。


**

 いおりが寝たあとの教室にて。数人の女子がいおりの名前を数回呼び、聞こえてないと確認して教卓に立ち、告げる。



「伊達さんは完全に寝た! さあクラスメイトよ! ミステリアスで紳士的でいろいろ謎な伊達さんは誰にチョコレートを渡すのか予想するわよーー!」
「「「「おおおおおおおおお!」」」」



 いおりのクラス、B組がいおりを起こさないよう小さな声で怒鳴りをあげる。いおりはB組がおとなしいクラスだと認識しているがいおりがいるときだけ静かなだけで存外……と言うか学校一騒がしい、問題児の集まるクラスである。もちろん集まったのは偶然だが。



「雲雀さんと親密な関係っぽいからやっぱり雲雀さんにあげるんじゃないかな!?」
「あの風紀委員長と美術部兼空手部少女が! ってか!? 今度ネットのあの人に設定とかちょっと変えて教えてあげよー!」
「でも前に友達がさ、伊達さんが金髪イケメンの外国人と歩いてたの見たって言ってたんだけど!」
「なにそれ初耳! 伊達さんってやっぱり何者!?」



 きゃいきゃいとはしゃぐ女子に男子が割り込んで「いやいや、案外このクラスかもしれないぜ!」と笑う。



「ええー、他人に興味のない伊達さんがこのクラスの男子にー?」
「女子かもしれねーぜ?」
「百合!? っきゃー!」



 ギャーギャーと騒ぐB組の男女はもう性別を越えた仲の様な雰囲気を纏っていて、チョコレートが女子の方から男子の方から飛び交いない混ぜになりつつもみんなで交換し出す。
 すると一人の女子が「写真部の『写真販売館』、みんな知ってるよね?」とどこかから飛んできたチョコレートを食べながら言う。
 写真部の写真販売館とは、写真部が隠し撮りや許可撮りした人物の写真を販売する不定期写真販売店である。日程が不定期と言うことでこれを知っている人々はこぞって写真部に日にちを聞きに行き、そして噂として広まるアレだ。男女別で販売してあり、開催期間は各月一の様だ。
 これを知っているのは学校でもごくわずかなのだが、B組は全員情報を共有している。



「次の写真販売館さ、伊達さんのが出るって噂だよ! 他クラスの伊達秘密ファンクラブから情報が回ってきた!」
「なんだって隊長!?」
「隊長ホントに!? 伊達さんの写真!?」
「ちょ、私お小遣い使いきる!」



 クラスのみんながわっ、とその隊長と呼ばれる女子に駆け寄る。
 伊達秘密ファンクラブとは、ミステリアスな伊達や周りにあまり気付かれないように活動するファンクラブのことである。170cmとわりと高身長ないおりの顔は至って男寄りの普通の顔だが、原因はそのめんどくさがりかつ周りに興味のない性格だ。周りから見ると庇護欲が湧くらしい。そして時々見せる男前なシーン(代表的なのが体育大会で雲雀を持ち上げて走ったときのこと)にみんな惹かれるらしい。
 気付かないいおりもいおりだが気付かせないこのクラスもすごい。



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94:ぜんざい◆A.:2016/12/21(水) 19:30 ID:Lr2



 昼休み、ガタリと鞄を持って席を立ちながら教室を出た。いろいろと視線を感じるが鞄を持って立つのが珍しいに違いない。
 すたすたとそのまま廊下を突っ切りながら応接室の扉を五回ノックした。奥から「入っていいよ」と声が飛んできてがらりと扉を開いて中に入る。
 ノック五回、これはこっちが来たと知らせるためであり、こっちしか五回ノックしない。そのため雲雀くんは声を聞かなくてもこっちやと分かるわけだ。便利。
 後ろ手に扉をぴしゃんと閉めてソファに一直線、腰を下ろして溜め息を吐いた。



「なに? 伊達、疲れてるの?」
『……なんやちょっと、視線が多い気がしてな……』
「へえ」



 ソファにだらけつつ背もたれに体重を預けて雲雀くんに鞄から取り出したものを放り投げる。がさっ、と片手でキャッチした雲雀くんは相変わらずのむくれっつらでそれを見て、口角を上げる。



「へえ、チョコレート? 僕にかい?」
『……ん、日頃世話になっとる雲雀くんにな……市販のやけど』
「ふーん……」
『風紀委員、おつかれさん』
「……ん」



 そのままそこで弁当箱を広げれば雲雀くんは書類に目を通し始めた。雲雀くんは不意に「君、今年卒業させないからね」とこちらに告げた。突然の事で喉を通ろうとしていたものが変なところに入ってゲホゲホと蒸せる。若干涙目ながらも「は……?」と言えば雲雀くんは満足したように笑って「君は僕のお気に入りだからね」と卒業はさせない発言をした。つまり、こっちは雲雀くんが卒業すると言うまで卒業できないと言うわけですねはい。



『な、なんでやねん……そもそも高校、高校は……』
「そこら辺は安心しなよ、僕が口添えすれば高校は途中から転入可能さ、高校に通う年を越えても君が卒業出来なかったら高卒ってことにしてあげる」
『あっはい拒否権無いんやね』
「当たり前でしょ」



 まるで、何言ってるの? と言いたげな雲雀くんに溜め息しかでなかった。



**



『ただいま風くん……』
「おかえりなさいいおりさん」



 いつもより精気の無い目をして家に帰ると風くんに満面の笑みで出迎えられてちょっと悶えそうになった。



『風くんいつもありがとーな、晩御飯作ってくれて。チョコレート食える?』
「大丈夫ですよ、ありがとうございますいおりさん」
『ちょっと風くん腕に抱えてエエかな』



 困ったような天使の笑みの風くんを腕に抱えてずっと唸ってたこっちは端から見ればただの変人だと思われる。



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95:ぜんざい◆A.:2016/12/23(金) 09:36 ID:Lr2


 春休み中、雲雀くんから花見の誘いをいただいた。私服で並盛中学の校門前で手ぶらでやって来た。私服? ナイキのジャージ、その下に黒い半袖シャツに短パンにニーソ、スニーカー、特別なことはなにもありません。すると雲雀くんがバイク乗ってきた。え、道路交通法違反じゃね? あれ? 違う? こっちが間違えとる? いやカッコいいんですがね?



「……なに、手ぶらで来たの」
『いや、特に作ることもないやろなーって』



 そう告げれば雲雀くんはムッ、としながら「早く乗って」とこっちに告げた。後ろに、ってことやろか。まあこっち今短パンやし大丈夫やろ。こっちは『ん、』と頷いて彼の後ろに跨がった。これさ、アニメとか漫画とかやったら横向きに座ったりしてるやんか、それ無理やわ、絶対落ちるやろ。え? こっち? 落ちるん嫌やから雲雀くんに抱き着く形でしがみついとるけどなにかおかしいところが?



「……」
『なあ、行かへんの』
「っ……分かってるよ」



 バイクが一回ドルンと大きな音を立てて走り出した。あ、ヤバい速いテンション上がるわヤバい。
 グッと雲雀くんに掴まる力を強めれば彼の肩が僅かに揺れる。もちろんこっちがそれなことに気が付くわけもなく『おー、はえー』なんて言っている。



『なぁ雲雀くん、君まだ中学生やろ、運転して大丈夫なん』
「大丈夫だよ」
『すげー(棒読み)』
「流石僕の町だよね」



 そんなこんなでとある公園に着きました。おおお、いい眺めだなー。



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96:ぜんざい◆A.:2016/12/23(金) 10:01 ID:Lr2



 案内されつつ奥へと進めば学ランの不良……風紀委員が三人組と言い合いしていた。雲雀くんはへぇとか言いながらそこら辺の木にもたれかかった。そして次の瞬間彼はその場に出ていって負けた風紀委員をトンファーで殴り倒した。
 そして次の瞬間には自校の保健医と以前見たリボーンくんがやって来た。そして花見の場所を巡って勝負するらしい。先に膝をついた方が負けというシンプルな決着の付け方、エエな、嫌いとちゃう。まあ真っ先に女好きの保健医はやられましたが。



**



 結果、三人目の沢田綱吉と対戦中、いきなり雲雀くんが膝をついた。どうやら保健医が殴られた時に蚊を放って雲雀くんにそういう病を撃ち込んだんだと。桜クラ病と言う、桜に囲まれたら立っていられないおかしな病らしい。



「約束は約束だ、せいぜい桜を楽しむがいいさ」



 結局こっちは影で見ていたから彼らに気付かれず、流石に悲しいので雲雀くんのあとを追うため影から出ていく。雲雀くん、それ負け惜しみにしか聞こえないよ。
 影から出てきて驚く三人組、沢田綱吉、獄寺隼人、山本武に、こっちの胸を見て鼻の下を伸ばす保健医、ドクターシャマル、そしてニヤリと笑う花咲爺のコスプレしたリボーンくん。



『……や、リボーンくん、久しぶりやな』
「おう、久しぶりだな伊達」
『沢田くんやっけ、久しぶりやな』
「あ、はい!」



 ねえねえ俺とあそばなーい? と鬱陶しく寄ってくるシャマルをガチスルー、空気と認識しながら放置する。
 獄寺と山本が沢田に「この女は誰っすか」と聞いていたので一応『伊達いおりや』と告げた。



「伊達はディーノの遠い親戚だゾ」
「っ! 跳ね馬の!?」
「ディーノさんの親戚なのなー」
『余計なこと言いな』



 そろそろ雲雀くんキレそうやから行くわ、とは言わずに『じゃ』と雲雀くんの行った方に駆け出した。



「あれ、伊達さんなんで走り出したんだろ」
「あっちって……ヒバリが行った方なのな?」
「伊達は雲雀と来てたんだぞ」
「「「えええええ!?」」」



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97:ぜんざい◆A.:2016/12/24(土) 00:05 ID:Lr2

ボカロ曲『東京テディベア』一部歌詞を使っています


 雲雀くんの強行のせいで二回目の三年生を繰り返すことになった哀れな女子中学生(年齢的には高校生)のいおりですはい。
 新学期が始まって沢田とか雲雀くんとかはドタバタな日々を送っているようですが基本的にモブ的位置に鎮座しているいおりさんは今日も今日とて平和に暮らしております。
 現在家にて風くんとぜんざいを食べ終わり、部屋に籠ってニヤニヤ動画の生放送を開始しようとしています。
 こっちがオタクということは学校ではバレておらず、風くん含む身内のみ。おもきしエンジョイ! 風くんも時々面白そうだからとちょくちょく乱入してきます。その時の風くんの名前はリーチらしいです、ペットの白猿のお名前ですねわかります。ちなみにこっちも風くんも顔出しNGや。

 今日はボカロの歌を歌うべく、開始早々「皆さん昨日ぶりですわー、挨拶したところで早速歌いまーす」と告げた。コメントを見れば「本当に早速ww」だの「キター!」「白玉のー!」「歌ってみたー!」だの。やんや、やんや、ブーラボー! 状態。



『そんじゃー『東京テディベア』歌ってみた』



 そう言えば「東京テディベア!」「キタコレ」「見れなかったやつドンマイ」と一斉にコメントが流れ出した。そこからリズムよく歌っていってサビに差し掛かる。この曲結構好きやねんなー……。



『全知全能の言葉をホラ聞かせてよ脳みそいが(ガチャ「白玉さん?」……リーチくん』



 突然ガチャリと扉が開いて部屋に入ってきたのは紛れもない風くん。コメント欄が「タwイwwミンwwwグ」「リーチちゃんキターーー」「ナイスタイミング」「88888888」「白玉の不服そうな声」「リーチたんかわ」とか再び一斉に流れ出す。
 歌うのは中止して「リーチくん膝おいでー」と座っているこっちの膝を叩けばヒョイと乗っかってくる、なんなんもうカワエエエエエエエエエ。



『こっからはリーチくんも乱入や、野郎共、かまへんなー』
「よろしくお願いします」



 コメント欄が「カワエエエエエエエエエ」等の類いで荒れたことは言うまでもない。



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98:ぜんざい◆A.:2016/12/24(土) 13:49 ID:Lr2



 しばらく経って夏休み、本当に時間が過ぎるのは速いです。いや、マジで。もう夏休み最終日だよ、風くんはクーラーガンガンに効いた部屋でいつもの余り袖は傷にタンクトップ的inチャイナな服を着てソファで座ってテレビを見ています。いつもこっちが学校に行っとる時にこの子はどこにいってるか分からんけど、今日は流石に暑かったらしく、外には出ないようです。
 だが、今日は最終日かつ夏祭りのある日、風くんは「彼と出会っては大変ですから」と行かないので、『じゃあなんや買ってくるな』と言付けた。
 さて家を出るかと黒いタンクトップの上に半袖パーカーを羽織って短パンにスニーカーで肩掛け鞄を持って玄関を出るぞと言うところでスマホが着信を告げる。メールのようで覗いてみれば「雲雀恭弥」と表示されていた。内容は「夏祭りにショバ代取りに行くから君も来て」と言うものだった。なんやそれ面白そう。早速こっちは待ち合わせ場所に指定された並中校門前に足を動かした。

**


 雲雀くんや風紀委員の人等と共にやって来ました並盛神社。みんな手分けしてショバ代を取りに行くらしくなぜかこっちは雲雀くんと一緒になりました。
 風紀委員じゃ副委員長の草壁と仲がよくなにやら話をしたりする気の合う仲間である。
 雲雀はショバ代を取りつつこっちは屋台でたこ焼きやらお好み焼きやらを頬張りつつ奥へ進む。
 途中、小さな赤ちゃんが射的でとんでもない数の景品をゲットしとってすげーななんて思いながらあ、リボーンくんやと認識する。そして今更ながらに彼の胸元で光る黄色のおしゃぶりを発見した。あれ、風くんも色違いのんつけてたやんな……もしや風くんの探し人たちと見つかりたくない人とは……もしや(二回目)。
 フランクフルト片手に固まるこっちに痺れを切らした雲雀くんはトンファーをぶんまわしてきた。



「なにボーッとしてるの」
『っぶな、あっづ!』



 目の前に迫るトンファーを避けるべく身を引けばフランクフルトの温度が移ったケチャップがタンクトップのせいで大きく開いた鎖骨にべちゃりと大粒に落ちる。あついあついあついあついあついあつい! 直ぐ様ティッシュで拭き取れば雲雀くんは雲雀くんで唖然としていた。え、なに。



『え、なになに、まだどっか付いとん?』
「……いや、なんでもないよ」



 少し首を掲げつつ次に食べたかったものがチョコバナナなんですが雲雀くんもチョコバナナの屋台のショバ代を取りに行くらしいので同行することにした。
 そして雲雀くんはついて早々口を開く。



「5万」
「ヒバリさんーーーー!!?」



 あ、沢田や。他にも獄寺、山本が居た。なんや、屋台やっとんか。



「てめー何しに来やがった!」
「まさか」
「ショバ代って風紀委員にーーー!?」



 払えないなら屋台を潰す。と告げた雲雀くんを放り山本に「一本くれ」と告げる。たしかに、と言って5万を受け取って去っていく雲雀くんのあとを「そんじゃ」と沢田たちに言って追う。
 しばらくして並盛神社に行けば今噂の引ったくり犯に囲まれる沢田を発見した。え、なにこれ。



.

99:ぜんざい◆A.:2016/12/24(土) 14:19 ID:Lr2



 率先して(笑顔で)駆けていく雲雀くんを見ながらりんご飴をガリガリかじる。あ、食い終わった。
 あれ、いつの間にか獄寺と山本が乱入してる。
 手持ち無沙汰に割り箸をいじっていると誰かが怒鳴る。



「コイツら本当に中坊か!?」
「見ろ! 境内に女が座ってんぞ!」
「ふはっ、巨乳かよ! メガネとかどんなオプションだっつーの!」
「アイツ人質にとっちまえ!」



 あれ、こっち? こっちに向かって駆けてくる男共に溜め息を吐いて立ち上がる。明らか一人オタク的発言したやつおったやんなオプションて、オプションて。そして武術なんてやってなさそうなこっちに男共は口角を上げ、雲雀くんたちの顔もあせる。えー、そんなに弱そうに見えるんこっち。心外やねんけど。
 こっちは駆けてくる男の一人の顔面向かって軽く飛び上がり、顔を足で挟んで後ろへ体を捻る。男は顔を引っ張られ身体を浮かし宙に浮く。こっちはそのまま顔を石畳に叩きつけた。ゴキャッ、ちゅーたから鼻の骨とか前歯とか折れたんちゃう?
 このままではこっちが頭を撃ってしまうので後ろ手に地面に手をついて丁度後ろにいた男の鳩尾に勢い付いた爪先を入れる。風くんと日々手合わせしてきたからこれくらいできひんと……なぁ(汗)? 殺されるっちゅーねん。

 その勢いのままくるりと一回転してスタッと地面に足をつける。タンクトップが腹まで捲れてしまっていたのでそれを整えながら唖然とする彼らを見た。



「……伊達、僕は君がそんなに強いなんて聞いてないよ」
『いや君と戦っても絶対負けるって分かっとるし、めんどいし』



 雲雀くんはふうんと背後に迫っていた男をトンファーで薙ぎ倒した。まさに鬼神やなコイツ。

 結局こっち等が勝利してリボーンに目をつけられる前に帰宅しました。



『風くん、たこ焼きとかりんご飴とか烏賊焼きとか買ってきたで』
「いい匂いですね! ありがとうございますいおりさん!」
『ん¨ん¨ん¨ん¨ん¨っ!』



.

100:ぜんざい◆A.:2016/12/24(土) 17:12 ID:Lr2



 最近並中生が襲われる事件が多発している。この土日で並中の風紀委員8人が重傷で発見され、やられたやつは歯を抜かれているらしい。え、こわっ。
 今日は時間に余裕があったので風くんとゆったり朝御飯を食べながらそんな会話をした。



「物騒ですね……」
『ん……せやな』
「気を付けてくださいね」
『ん。今日からもうちょっと手合わせしよか』
「そうですね! そうしましょう!」



 朝から風くんは天使です。


**


 前方をリボーンと共に歩いていく沢田を発見。子供を連れていって良いのかとか思うけど気にしないことにした。



『おはよう沢田』
「っ!? だ、伊達さん!」
「おはようダゾ伊達」
『ん』



 やはり不良同士の喧嘩なのだろうか、こっちが思っていたことを沢田が口にした。そのとたん「違うよ」と声が掛かる。目の前に居たのは不機嫌そうな顔の雲雀くんが。



『おはよお雲雀くん』
「ちゃおッス」
「おはよう伊達。……今回のことは、身に覚えのないイタズラだよ……」



 雲雀くんは「もちろん、ふりかかる火の粉は元から絶つけどね」と身の毛がよだつ殺気を放ちながら言い切った。んー、物騒。
 不意にどこからか並盛中学の校歌が流れ出す。……雲雀くんのケータイの着うたでした。ホンマ君並中好きやな。一途っちゅーの?
 まあ、その連絡は沢田の知り合いのボクシング部主将がやられたと言うものだったが。沢田は血相変えて走っていきました。ばいばーい。



「僕はもう敵の尻尾を掴んだからね、咬み殺しにいく」
『アッハイいてら』



 今からトンファー振り回しながら機嫌よく歩いていった。元気がよろしくてけっこう!



**
ツナside


 今回の並中生が無差別に襲われている事件が俺が喧嘩を売られていることが判明した。歯が抜かれている数が順番だと言うところでリボーンが教えてくれた。歯でカウントダウンしてるとかなにそれ怖い。
 そこでリボーンがとあるランキングを取り出した。



「並中の喧嘩の強さランキング? え……これがどうかしたの?」
「おめーは鈍いな、襲われたメンツと順番がぴったり一致してんだ」
「えー!!? マジかよ! 本当だ! つーかこのランキングって」
「ああ。フゥ太のランキングだぞ」
「ええ!? あっ! 5位の草壁さんが襲われたってことは、次は四位の人が狙われるってことじゃん! 四位四位……!! 嘘だろ!?」



 獄寺くん!?



.

101:ぜんざい◆A.:2016/12/24(土) 18:07 ID:Lr2



 翌日、結局雲雀くんはそのあと見掛けなかった。負けるなんてあり得ないと思うけど、万が一もあるかもしれん。



『……大丈夫やろか』


 そんなことを考えながら帰る帰路。


 Noside

 沢田たちが黒曜に突入に突入して、ツインズから笹川京子、三浦ハルを無事解放させ、沢田が敵方のバーズを殴ったあとの事だった。



「ふふふ……今回は特別にもう一人ゲストがいるのですよ……!」
「なっ」



 沢田たちに衝撃が走る。もう一人など心当たりがまったくない。流石のリボーンにも焦りの表情が伺えた。
 いったい誰なんだとみんながスクリーンを食い入る様に見つめる。パッ、とスクリーンに現れた人物に、全員が目を見開いた。



「なっ! 伊達さん!」
「……なんで伊達が、ディーノがキレるぞ」
「ほっほっほ! 彼女はどうやら雲雀恭弥の……いえ、これは野暮ですねェ。とりあえず、彼女も六道さんの指名でしてね」



 そこに映っていたのは呑気にふらふら歩くいおりの後ろに硫酸を持ちながら少しずつ近づいていくツインズそっくりの男だった。



「伊達先輩じゃねぇか!」
「きたねぇぞ!」



 リボーンもこれを予想しておらず、誰も助けにいかせていないのだと言う。あからさまにヤバい状況に沢田の顔に冷や汗が浮かんだ。

 だが。運悪くいおりは買い物の用事を思いだし、踵を返した。と言うよりなにかに気づいて振り向いた。
 そこには自分に硫酸をかけようとしている一人の大きな男が。



<っうおおおおおおぅ!?>



 女子とは思えない雄叫びをあげたいおりはそのあと、殴って、蹴って、突いて、足で薙いだ。そしてズドンと鳩尾に思いきり拳を突き入れる。吹き飛んで気を失った男に『やっべ、やってもた』といおりは相変わらずハイライトの無い死んだ目のまま口はそう言い足は男を転がす。



「足で転がしたーーーー!?」
「か、彼はツインズより凶悪なのに……!?」
「あっ! 伊達さんは並中強さランキング第2位だったーー!」



 いおりは男の持っていた硫酸の入った瓶を見て『物騒やな』と瓶を踏み潰した。
 そのあと制服を見て、風紀委員の言うとった黒曜生……やっぱ黒曜ヘルシーセンターか。と呟いて早足に家へと向かったことは、誰も知らない。



.

102:ぜんざい◆A.:2016/12/24(土) 18:39 ID:Lr2



 こっちはディーノくん……いや、前々から兄貴って呼べとか言われてたから兄貴でいっか。兄貴にもらったセグウェイをかっ飛ばして黒曜ヘルシーセンターへやって来た。風くんに「怪我しないでくださいね!? 無茶は禁物ですよ! 絶対ですよ!」とめちゃくちゃ心配されながら来た。
 いやぁビビったビビった、夏休みもセグウェイ乗り回してたけど、エンジン着いとるとは。通りで重いわけだ。ちなみに時速30キロで飛ばしてきた。流石に60キロも70キロも飛ばしたらヘルメットいるやん? 30キロもたいして変わらんようにメットつけなあかん気ぃするけど。兄貴特有の手の入れ方である。
 背中に棍棒がちゃんと有ることを確認してセグウェイを見つからない、そして壊されないところへ隠すように置き、ぼろぼろの黒曜センターへと駆け出した。

 黒曜センターに足を踏み入れ、爆発音が鼓膜を震わせる。やはり誰かが戦っていたか。爆発音のするところへ向かった。
 見えた光景は壁に寄り掛かる獄寺が壁から出てきた手に心臓部を突かれているもの。……めんどくさっ、来んかったらよかった。
 とりあえずそれはヤバいだろうと白い帽子を被る眼鏡のバーコード少年の頭を棍で叩き付け、獄寺スレスレに手を突き刺している男の顔を思いっきり突く。



「っぐ」
「ぎゃっ!?」
「うおお!?」



 驚いて倒れかける獄寺をガシッと支えて『大丈夫か』と声をかければ、「伊達かよ……」と傷口を押さえながら息もたえだえにこっちを見た。



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103:ぜんざい◆A.:2016/12/24(土) 19:12 ID:Lr2



「ってえ! なんだこの女!」
「……援軍みたいだね」



 相手の黒曜生二人が棒を構えるこっちを睨む。獄寺は後ろのカーテンに持たれ、階段で足を滑らせて落ちてった。え、ちょま。



『うおっ』
「ぐっ」



 獄寺を支えていたこっちも巻き込まれて落下する。相手が「ぶっざまー」とか言ってるけど知らん。『大丈夫か獄寺くん』と獄寺に声を掛けてみるも返事はない。体が動かん見たいや。えー、これ二人もこっち相手すんの? えー。
 どこからともなくやって来た黄色い小鳥が「ヤラレタヤラレタ」と蔑笑する。そして校歌を歌い出した。これにはこっちもびっくりして鳥を振り返った。その奥にはもう一部屋ありそうで、誰か居そうで。気づいたときには獄寺がそこへボムを投げていた。待ってボム? ボム? 法律違反じゃね? あ、マフィアでした(遠い目)
 ガラガラと崩れた壁の奥から出てきたのは、雲雀くん。……雲雀くん、つかまっとったんか……。



「元気そうじゃねーか」
「ヒャハハハ! もしかしてそこの死に損ないが助っ人かー!?」



 雲雀くんはヨロ、としながら立ち上がり、「自分で出れたけど、まあいいや」と呟き、こっちを見て目を見開き、微かに微笑む。なんで微笑んだん、微笑むとこちゃうここ。



「……じゃあ、そこのザコ二匹はいただくよ」
「好きにしやがれ」



 すると相手が「死に損ないがなにいってんの?」といきなり身形を変えた。ライオンチャンネル! とか怒鳴っておりますが厨二ですかそうなんですねわかります。いや、やっぱ分からん。
 そしてその男子をトンファーで瞬殺した雲雀くんすごい。そのあと直ぐに白い帽子の彼を薙ぎ倒した。やぱすご。



「……う」
『重っ』



 その後ふらふらと此方に寄ってきてこっちの背中にばたりと倒れた。「背負って」え、何? 背負って? しゃーないな。背負ってあげるよしゃーないな!



『よっ』



 雲雀くんを背負って獄寺を脇に抱えて歩き出す。うん、重い。つか雲雀くんの腕の巻き付く力が強すぎて首絞まる絞まる。死ぬ死ぬ。



『ひ、雲雀くん絞まっとる絞まっとる首首』
「……」



 無視かばかやろー!



.

104:ぜんざい◆A.:2016/12/25(日) 10:53 ID:Lr2



 雲雀くんに言われるがまま奥に進めば大量の毒蛇に絡まれる沢田が「ひいい! やめて! 助けて!」と喚いていた。雲雀くんはそれに同情するでもなくこっちの肩から身を乗り出してトンファーをぶん投げた。うおお、ば、バランスが……!
 直後脇に抱えている獄寺が「伏せてください10代目!」と怒鳴って爆発物をぶん投げた。だから! バランスが! 崩れる!



「ヒバリさん! 獄寺くん! ……え、伊達さん!?」



 沢田が雲雀くんをおぶり獄寺を脇に抱えて平然としているこっちを見て「どうなってんのおおお!?」と驚愕の声をあげる。そして沢田は途端に泣きそうになり「さ、三人とも……!」と呟いた。なぜか居るリボーンをちらりと見れば少し驚いているようだったが「俺はツナだけを育ててる訳じゃねーんだぞ」とドヤ顔した。待て、お前に育てられた覚えはない。風くんにはある。
 雲雀くんはこっちから飛び降りて脇に抱えている獄寺を後ろから蹴り飛ばした。「いてっ」て獄寺くんが声をあげた。え、え。



「……借りは返したよ」
『……(……雲雀くん酷い)』



 なんとも言えない顔をして獄寺を見ていたからか、目は口ほどにものを言うと言うからか「うるさい」と一蹴されてしまった。ん、ごめんなさい。



「これはこれは、外野がぞろぞろと。千種は何をして居るんですかね」
「へへ。メガネヤローならアニマルヤローと下の階で仲良く伸びてるぜ」



 突き飛ばされた獄寺くんが得意気に言った。いやいやそれやったん雲雀くんやで。



**


 まあそのあとなんやかんやあって雲雀くんが敵、六道骸と戦って勝ったかと思えば六道が自殺して、自殺したかと思えば生き返ってみんなを襲ってキレた沢田くんが六道骸を殴り飛ばして、勝って、六道骸たちが復讐者なるものに連れていかれて、医療班来て、解決。その一部始終を傍観していました伊達です。医療班には『あ、こっちは大丈夫なんで』と断った。セグウェイほったらかしにはできへんやろ。



『ただいまー』
「おかえりなさいいおりさん! !? ボロボロじゃないですか!」
『大丈夫、服だけや』
「……まったく、何をして来たのやら」



 とりあえず風くんに『リボーンが、』とだけ発してみれば笑いたくなるぐらい肩を跳ねさせた。あ、やっぱり。



「ど、どこでそれを?」
『今日の戦いで、味方として居ったよ。まあ、夏祭りの時とか、去年ぐらいに一回交流があっただけや』
「ば、バラさないでくださいね……!」
『ん。風くんがそういうんやったら。いやあ、風くんに見つかりたくなくて尚且つ探し終えた人がリボーンやったとは』
「……すみません」
『怒ってへんよおおおお!』



 がばっと抱き上げれば「わっ、わっ」と照れた声が耳元から聞こえてくる。



『ん¨ん¨ん¨ん¨ん¨っ! 風くんかわえぇぇぇ……』
「……(照汗)」



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105:ぜんざい◆A.:2016/12/25(日) 11:31 ID:Lr2



 それからしばらく。昨日の日曜日の商店街の爆発事故、原因不明とか怖すぎる。とりあえず今日は学校があるので朝刊を取りにポストを覗くと……手紙と共になんかゴツい変な形した半分の指輪が入ってました。……なにこれ。あわてて家に戻って風くんに指輪を見せる。



『……風くん、これなんやと思う?』
「……これは」



 真剣な顔して指輪を見つめた風くんは「……ボンゴレリング、ですね」と呟いた。手紙を見てみれば確かにこれはボンゴレリングと書いており、『夕焼のリング』と言うらしい。……夕焼ってあれ? 夕方の赤い空?
 手紙には『10日後にこれを取り合う戦いをするから鍛練しといてほしい』と書かれている。え、なにこれ勝手。でも風くん知ってるっぽいし、聞いてみるか。



『風くん、ボンゴレリングってなに?』
「……ボンゴレリングとは、イタリアンマフィア、ボンゴレファミリーに伝わる伝統的な証です。初代ボンゴレファミリーの中核だった七人がボンゴレファミリーである証として後世に残したもの。そしてファミリーは代々必ず八人の中心メンバーが八つのリングを受け継ぐ掟なのです。……後継者の証ですね」
『え』
「初代ボンゴレメンバーは個性豊かなメンバーで、その特徴がリングにも刻まれています。
初代ボスは全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する大空だったと言われている、故にボスとなる人物のリングは『大空のリング』
そして守護者となる部下たちは大空を染め上げる天候になぞらえられました。雨のリング、嵐のリング、雲のリング、霧のリング、晴のリング、雷のリング……そして、夕焼のリング」
『……もしかしなくても、それの一人に選ばれてもーたかもしれん系?』
「……そうですね」
『……非現実的や……』



 まあ、任されたからにはやらんとな。



『風くん、指導頼むわ』
「はい。怪我をしないよう力をつけていただきますからね」
『ん』



 いやあ。リングがいわくつきとか相手と殺し合いするかもとか書いてある手紙は燃やしちゃえ!
 ライターで手紙を燃やしながらこっちはまず学校に行くべく、棍を持って『いてきまーす』とおどけて告げる。風くんは笑って「いってらっしゃい」と送り出してくれた。本当に赤ちゃんなのかあいつは。
 久々に持っていく棍にテンションが上がりつつ風くんの包容力に負けそうになった今日の朝でした。



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106:ぜんざい◆A.:2016/12/25(日) 11:51 ID:Lr2



 学校にて。雲雀くんに呼ばれて応接室でお茶飲みながらカップのアイス食べてたら雲雀くんが日誌見ながらこっちの指輪にそっくりなものを指先でいじり出した。



『……雲雀くんもそれ貰ったんやな』
「そう。伊達、君もかい」
『ん』



 食べ終わったアイスのカップをゴミ箱に放り投げ、冷えた口に茶を流し込む。そこでいきなり応接室の扉が開いた。入ってきたのは部下のロマーリオさんを連れた兄貴でした。よぉーし、無視無視ー。



「お前が雲雀恭弥……だ、な……?」
「……誰……」
「いやわりいちょっと待ってくれなんでいおりがここに居るんだ」



 ディーノから全力で顔を背けながら俄関せずと言ったように茶をすする。
 もおおお、無視してたのになんで声掛けるかなもおおお! 雲雀くん待たされるのめっちゃ嫌なんだよほら超不機嫌顔じゃんもおおおおおおお!



「なに、伊達の知り合いなの」
『……や、まったく知らん人や』
「……へえ。向こうはそうでもないみたいだけど」
『(消えろクソ兄貴)』



 苛々しながら片足だけ貧乏揺すりをし出す。ディーノくんは涙目になりながら意図を察し口を開く。後ろのロマーリオさんが苦笑いしてますが大丈夫ですか。



「俺はツナの兄貴分でリボーンの知人、でもってそこの伊達いおりの親戚だ」
『おい余計なこと言わんでエエッちゅーの。へなちょこディーノ。クソ兄貴。ヘタレ』
「……ひでえ。まあ、今日ここに来たのは、雲の刻印のついた指輪の話がしたい」
「……ふーん、赤ん坊の。で、伊達の親戚か。伊達は後でなんで嘘ついたのか咬み殺すからね。
なら強いんでしょ、……ヘタレさん?」
「っ!?」
「僕は指輪の話なんてどーでもいいよ。あなたを咬み殺せれば……」



 ディーノくんは甚大な精神への攻撃を受けてしょぼくれながらも「なるほど問題児か」とにやりと笑う。



「いいだろう、その方が話が早い」



 その言葉と共に両者エモノを構えた。こっちはそそくさと家に帰って風くんと修業した。



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107:ぜんざい◆A.:2016/12/25(日) 15:48 ID:Lr2


 そして数日、最近雲雀くんと兄貴見ーひんなー、なんて思い今日学校行ったらいたので何してたんだろうとか思いながら家で寛いでたら、なんかいきなり家にピンクの髪をした覆面の女の人が二人来て「今日は夕焼のリング戦です。今晩11時に並盛中学中庭にお越しください」と告げられた。もちろんこっちはそれを断るでもなく『うぇっす』と敬礼で返した。なんか変なものを見る目で見られた気が……。
 奥に隠れていた風くんが曲がり角からひょこりと顔を覗かせ、「行きましたか?」と聞いてきた。



『おん、行った』
「ふう」



 今の時期本当に会いたくないらしく彼はマフィア間と関わることを頑なに拒む。まあそれも理由が有るからなんだろうけどさ。



『……一時間前に言いに来んでもええやん……』
「開始まであと一時間ですね……」
『ちょっと着替えてくるな。……風くんは見に来るん?』
「……そうですね、見つからないように、遠目から」
『見てくれるだけ有難いわ』



 ちなみに言うと、こっちは雲雀くん以外の守護者を知らない。風くんも知らないから知ってないのは当然である。
 玄関を出て、セグウェイに乗りながら玄関で見送ってくれる風くんに告げた。


『いってきます』
「……いってらっしゃいです」



 こっちは肩に棍の入った袋を引っ提げ、セグウェイのエンジンをつけて動き出した。


**


 一方、既に学校で待機していた沢田綱吉たちが夕焼の守護者に対して口々に言葉を垂れていた。



「リボーン! 夕焼の守護者、なんやかんやでまだ教えてもらって無いんだけど!!」
「まあ待て。驚きそうな奴が来るぞ」
「だから誰なんだよおおおお!」



 頭を抱える沢田を気にしつつ獄寺は「夕焼の奴に家庭教師はついてるんですか?」とリボーンに問うた。リボーンは若干眉をしかめる。相変わらず相棒である鷹のファルコに掴んでもらって浮いている青色のおしゃぶりを持つアルコバレーノ、コロネロは「俺も夕焼の守護者の家庭教師は知らねぇぞ、コラ」と口を開いた。コロネロはどうやら夕焼の守護者を知っているようである。
 リボーンは珍しく難しい顔をしながら「家庭教師は付けられてねぇ」と呟く。それには山本や笹川ですら目を見開き、沢田が叫ぶ。



「家庭教師が付けられてねぇってどういうことだよ!?」
「……単純に人手不足だ。それに、ソイツに教えられるだけの実力を持ったやつを見つけられなかったんだ。こればっかりはしゃーねえ、文句は家光に言え。アイツでもいりゃ安心だったんだがな」
「んなーーーー!?」



 沢田はリボーンの最後の言葉を聞き取る余裕はなく再び頭を抱えた。それを宥める山本、獄寺。笹川は極限に意味がわからんぞー! と叫んでいる。
 この時リボーンの脳裏に浮かんでいたのは出会ってから揉め事をしたことのない気の合う赤色のおしゃぶりを守護するアルコバレーノ、風の姿だった。コロネロも彼がこの場に居ないことを惜しむ。風は無敵の格闘家だ、大きな大会でも連続優勝している。この場にいれば大変頼りになったであろう。

 その時、校門の方からゴーと言う地面をなにかで滑る音が聞こえてきた。そして校門から顔を覗かせたのは。



『……あれ、沢田くんやん』



 相変わらず死んだ魚の様な目に眼鏡を掛ける無表情な伊達いおりだった。



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108:ぜんざい◆A.:2016/12/25(日) 23:15 ID:Lr2

「伊達さん!? ま、まさかヒバリさんに言われて巡回とかーー!?」
『え、え』
「あの女、ヒバリと一緒にいることが多いからきっとそうっすよ!」
「待てってツナ、獄寺。決めつけはあんま良くないのな」

怯える沢田、威嚇してくる獄寺をまあまあと穏やかに宥める山本。現在進行形で笹川は「極限に伊達だなーーー!」とか叫んでるけど知らない見えない聞こえない。こちらの喧しさに相手の黒ずくめの方々も若干引いているような雰囲気をかもし出している。違うこっちはまだなにもしとらん。呆れるようにリボーンを見やればそのとなりに鷹につかんでもらって浮いてるバンダナの赤ん坊発見。おしゃぶりは水色である。え、誰。

『リボーン、これはどない言うことなん、なんで沢田らが居るん』
「そこのダメツナが大空のリング所持者だからだ」
『エッマジデ』

戸惑いぎみにこっちはきょどる沢田綱吉を見つめる。学校では噂のみ聞いていたのだが、勉強もダメ運動もダメ何をしてもダメダメを貫き通してついたあだ名が【ダメツナ】の沢田綱吉。ちょっとした有名人だが、こっちはあまり興味が無かったから度々会う程度で学校では見たことなかってんけど。まあ彼の家の前で会ったり花見の時に会ったりしてますが。そんな冴えない彼が大空のリングを所持する将来ボンゴレファミリー10代目ボスだとは……やはり風くん同様人は見かけによらないな。風くんあんな幼いのに超強い。沢田はこちらを見て「もしかして、夕焼の守護者って」と勘づき始める。それをリボーンがにやりと笑って遮った。

「コイツが夕焼のリングの守護者、伊達いおりだ」
「えええーーーー!?」

小声で沢田が「伊達さん巻き込んだなんて、ヒバリさんに咬み殺される」と呟いたのは当然こっちには聞こえず、リボーンに誰がどのリングの守護者か教えてもらう。沢田の自称右腕を名乗る獄寺隼人が『嵐の守護者』。沢田の親友で野球少年な山本武が『雨の守護者』。学校のマドンナ、笹川京子の兄でありボクシング部主将の笹川了平が『晴の守護者』。雲雀恭弥は言わずもがな『雲の守護者』。そして五歳児でリボーン曰くうざくてバカな子供のランボと言う子が『雷の守護者』。うざくてバカとかはよく知らない。最後にあの黒曜での事件の主犯、六道骸が『霧の守護者』。彼捕まったんじゃ無かったっけ。そう問えば代理で女の子、クローム髑髏と言う子が存在するらしい。
残る争奪戦は今日の夕焼と雲、そして大空だけだと言う。マジかもう終わってんのか見たかった。

「そろそろ時間ですね」

チェルベッロ機関を名乗る…そう、家に知らせに来てくれた方々がそう呟いた。彼女たちは今回審判らしく公平にジャッジするとのこと。そして争奪戦ごとにその守護者にあったステージを用意してくれるらしくその説明へと入った。

「今回は夕焼のリング争奪戦、ファミリーを叱咤し時にはピンチに切り札となる赤色、と言う使命になぞらえて地面と柵が百度の熱を持つ灼熱のステージとなっています。相手を戦闘不能にする、リングから叩き出す、降参させるかすれば勝利となります」

どうぞ、と言われ、それぞれの方向の扉が開いたので背中の袋から棍棒を取り出し、袋をリボーンに預けてセグウェイのままそのリングにあがる。すると直ぐ様「お待ちください」とチェルベッロ機関の女性に止められた。

「セグウェイに乗車ですか?」
『あかんの?』

ふむ、困ったな。このセグウェイ、どうやら兄貴の特注らしく1000度の熱にも耐え、刃物も弾き飛ばすと言うから大丈夫だと思ったんですが。

「壊れる可能性もあります、良いですか?」
『大丈夫、使わして』
「……承諾しましょう」

うぃーんとか鳴るセグウェイに乗ったまま相手と対面した。相手の女の子はどうやら俗に言うミーハーでよく相手はコイツを守護者にしたなって感じの子だ。まあ選ばれる位だし強いんだろ。男には笑いを振り巻き此方はぎりと親の仇の様に睨まれる。美少女に睨まれるとなかなか心に来るものがありますな。

「それでは。伊達いおりVSリアス・セキセスの勝負を開始します。始め!」

109:ぜんざい◆A.:2016/12/26(月) 13:02 ID:hYw

開始の合図と共に相手の女の子が興奮した顔で「あはっ!」と大笑いしながらレイピア構えて走ってきた。

「私と当たったからには生きて帰れないわよ!」

セグウェイを動かしてぐるんと避ける。ちょ、彼女のブーツのそこがじゅうじゅうと音を立てておりますが大丈夫でしょうか。さわったら絶対火傷する嫌やー。痛いの嫌やー。死んだ目をしつつ避け際に棍を横に持つ。案の定前に進むと彼女の腹にダメージを追わせた。

「ぐっ」
『……(効いた、やと?)』

言っちゃなんだが拍子抜けする弱さだ。よく独立暗殺部隊幹部として動けたもんだ。そこから棍で彼女の横腹を突けばレイピアを納める鞘で防がれた。そしてそのまま勢いよくレイピアを放ってきた。え、ちょ、これはしゃがむべき? いや違う。

『っらあ!』

セグウェイに乗りつつ背後に回り背中から掌抵を喰らわせる。

「いやあ!」

その衝撃で彼女は地面に手をつく。じゅうううと焼ける音共に彼女の手から焦げた匂いと煙が立ち上る。だが、彼女は再び立ち上がり、こちらに鋭い蹴りを入れた。

『ってぇ』
「よくも、よくも私の体に醜い火傷を!」
『え』

そのまま凄い速さで突かれるレイピアを捌いては避ける。だが、たったひとつ読み違えて腹を右側寄りにレイピアが貫通する。リングの外から「伊達さん!」と沢田の叫び声がした。黙れ。

『っ』
「あは、あはは!!」

狂ったように笑う彼女にこちらは歯を食い縛り、棍で彼女を突き飛ばした。たたらを踏んで尻餅をつく彼女から再び煙が上がる。此方は刺されたところが熱を持って痛い。

「痛いわよね? あはっ! どお? 刺された痛みは!」
『ホンマ頭イタイ子やな』
「は!?」

激昴した彼女は此方に向かってきた。完全に彼女は周りが見えなくなっている。どこでそうなったかは知らないが、君の好きなイケメンたちが君が引いてるのを気付けば良いのに。ちょうど背後は柵、彼女はびゅんと言わせつつレイピアを振っている。見つけた、傷を塞ぐ方法。

『来いよキチガイ』
「ふざけんじゃないわ!誰が! 誰がキチガイよ!」

ニヤ、と笑って嘲笑してやれば簡単にノってくる彼女。外からの制止も聞こえていない。味方の外野が「伊達さんなに挑発してんの!?」と言う絶叫が響くも知らんわそんなん。平平凡凡に暮らしたかったこっちの日常を訳わからん連中に壊されて意外と気が立ってるんだ。期待を裏切らず迫る彼女は高速でその細長いレイピアを振り回す。それを寸でのところで避け、彼女はそのまま後ろの柵をズパっと刻んだ。小さくなって飛んでいく柵の一つをハンカチで受け止め、そのままシャツを捲って患部に押し当てた。

『…!』
「な、なにしてんの伊達さん!」
「!?」
「伊達先輩!?」
「極限になにを!」

なにって、止血やけど。横に細長い火傷痕にならぬようぐりぐりと柵だった棒を動かす。そう、こっちはソレのせいで気付かなかった。迫る足に。

『っだ!』
「あっはははっ!」

右から蹴りを喰らい、バランスを崩して地面に倒れる。その際セグウェイが勢い付けて跳ね飛ぶ。左腕の皮膚を焼く痛みに、歯を食い縛って起き上がろうとすればガッとその左腕を踏みつけられた。途端皮膚を焼く音が大きくなる。

「私に無礼な口を聞くから左腕が使い物にならなくなるのよ!」
『それはどうやろ』
「はあ?」

まだ気付かないのか。まだ、ソレが地面に落ちていないのを。にや、と笑って踏まれてる左腕を軸に足を持ち上げ彼女の腹を蹴り飛ばす。

「いった!」

ぼきっと音がしたから肋の一つや二つ折れてるんじゃね? 飛ばされて柵に衝突した彼女はキレて睨み付けてきた。だが、残念でした。

『わり』

起き上がったこっちは棍を槍投げのように投摘して彼女の腹にぶつかる。カランと落ちる棍。腹を抑える彼女。もうすぐ、終わる。

『チェックメイト』

そう呟いたとき、彼女の上にソレが落ちた。

110:ぜんざい◆A.:2016/12/26(月) 23:02 ID:hYw



 落ちてきたのはそう、セグウェイである。見事彼女の頭に落下して彼女は戦闘不能になりました。



「そこまで! 夕焼のリング戦勝者、伊達いおり!」
『っしゃー』



 酷い火傷を負った左腕を右手で庇いながらセグウェイに乗り、リングを降りる。渡された指輪は夕焼けを象っており、ゴツかった。



『……勝ったー』



 リボーンに指輪を投げ渡せば「よくやったな」と返ってきた。いやいやそれほどでもないぜよー。



『……痛い』



 腹の傷も痛いし塞いだ火傷も痛いし左腕の火傷も痛い。もう左腕の火傷は消えないんじゃないかってぐらい酷い。これからは包帯巻かないとダメなやつ? 「毒手やー」とかいわなあかんやつ?



「伊達、シャマルに手当てを頼んだぞ」
『あっ別にええ。家帰ってやるから』



 リボーンの気遣いを見事にぶち壊し、セグウェイに乗って家へと帰宅しようとする。隠れて影から見ていたと思われる雲雀くんも見えたので手を振っておいた。みんな雲雀くんに気付いてないんじゃね?
 ふと思い出し、チェルベッロ機関に声を掛ける。



『ちょお、チェルベッロのお姉さん』
「? なんでしょう」
『もうこのあとこのリング戦に呼び出さんといてな』
「っ……それは」
『やないとこっちリング叩き潰すから』
「!? わ、分かりました」



 よしよし。と満足げに頷き今度こそ家に帰る。これでもう、このあとにもしも『もう一回』があればこちらはリングを潰すから彼女たちは手が出せないだろう。
 学校はしばらく休もう、腕のことで休養を取りたい。家に帰ったら風くんで癒されよう。



**



『……ただいまー』
「いおりさんっ!」



 家に帰って玄関を閉めたと同時に風くんが物理的に飛んできて頭をぺちっと叩かれた。え、何事何事。
 え、と風くんを右腕で受け止めて抱えるとそのままポカポカと胸の辺りを叩かれた。いやっちょ、君力強いからドスドスいってるんですが。痛い。

 彼の大きな目を覗き込めば「あなたはバカですか!」と叱咤された。ごめん可愛いからそんな怖くない。



「あれほど怪我をするなと言ったでしょう! なのにあなたは……! 刺し傷はまだ仕方ないです……けど! 火傷で傷を塞いだり左腕を地面につけて火傷して蹴り飛ばすなど!」



 前言撤回、やっぱりとても威圧感があって怖いです風くん。恐怖から風くんを力一杯抱き締めると怒声が止んだ。「だ、大丈夫ですか!?」と心配そうに聞こえてくるその声に頬を緩める。



『……風くん、癒して』
「その前に手当てしましょうね」



 風くんは結局癒してくれなかった。冷たい。



.

111:ぜんざい◆A.:2016/12/28(水) 01:14 ID:hYw



 それからしばらくの間腹と左腕に包帯をぐるぐる巻きにしました。んんー! エクスタシー! なんて言わない。毒手なんて言わない。包帯はあまり見られたくないなあとしみじみ思っています。だって厨二ゲフンゲフン。なので左腕の包帯を隠すため、とうらぶ切国さんをリスペクトしてぼろ布を被ることにしました。これなら顔も見られなくて便利。風くんには家にいる間は羽織るだけにしなさいと注意されました。はーい。
 数日の間に再びチェルベッロ機関の女性が来て「大空の指輪戦をやるので出場願います」と言われた。が、忘れたとは言わせない。此方は指輪を地面に置き、奥から大振りのハンマーを取り出して振り下ろす準備をする。



『……これでも、やるん』



 布の間から視線を飛ばせば顔を青くしながら「い、いえ」と去っていかれました。ウィナー、こっち! 奥から風くんが可哀想なものを見る目で見ていたが知らん。
 そして今夜は久々のニヤ動だ。今までこっちは顔出しNGだったけど今はボロ布被ってるからね、姿を映してやりましょう。



『っちゅーわけで、顔は隠れてるけどこっちがホンマに女か判明すんでー』


<ひゃーはー!>
<男性を望むわよ!>
<女子中学生だっけ?>
<声が男性だからそんな風には思えなかったが>



『その真意は今からや。どーん』



<む、胸がある!>
<ボロ布被ってるけど大きいとわかる!>
<めろん!>
<お前みたいな中学生がいてたまるかww>
<メガネだと若干分かる!>
<女の子だった!>
<おや? 左腕に包帯が巻かれているぞ?>
<んんー?>



『エクスタシー! ってちゃうわ、ただの大きな火傷や、気にせんといてな。ちなみに胸に関してなんや言うとったやつ、前に出てこい、潰したるから跪け』



<こわっ!>
<何ヲ潰スノォ……>
<出た女傑!>
<出た女帝!>
<騎士さま!>
<白玉さま!>
<そこに痺れるぅ!>
<憧れなぁい!>



『憧れへんのかい……そろそろ時間やな、ほなまた見たってな』



<ばいちゃ!>
<恒例になりつつある『<そこに痺れる><憧れない>「憧れへんのかい」』ww>
<今度は最初から!>



 生放送後、明日の準備をする。なぜなんて答えは聞かない。だって明日から学校だから。長い間休んでたな……腹はまだ痛むけどそこまでじゃないし、大丈夫だろう。久々に家を出るか。



『じゃあ風くん、こっち明日から学校やから』
「はい、わかりました。……いおりさん、学校にもボロ布を被っていくのですか?」
『ん。流石に包帯巻いとるとこ見せられへん。多分これからもずっと被る』
「……気に入ったのですね」
『ん』



 ちょっと不機嫌そうにぶすくれる風くんを抱き上げて『……風くんは、かわええままやな』とそのまま抱えてリビングへとご飯を食べに向かった。その間風くんが腕のなかで抱えられてご満悦気味だった笑顔は可愛かった。



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112:ぜんざい◆A.:2016/12/28(水) 14:11 ID:hYw

 学校に登校すれば朝一番に応接室に呼び出された。あ、怒ってますね分かります。雲雀くん激おこプンプン丸ですねいやキレてるなこれは。


『……おはよう』
「伊達」


 応接室の扉をノックして勝手に開ければ椅子に座ってこちらを睨み付けてくる雲雀くん。見ての通りご立腹でした。


「伊達」
『……おん』
「火傷を二ヶ所刺傷一ヶ所、どういう考えなの」
『……傷を塞ぐために、一ヶ所火傷した。左腕の火傷は、普通にやられてもた』
「頭から被ってるそのボロ布は?」
『……見られたくないねん、察してや』
「うるさい」


 むっすー、と頬を膨らませる雲雀くんに苦笑いしながらいつものようにソファに腰掛けた。布が顔の上半分をフードのように隠してしまっているからよく見えないがきっと不機嫌な顔をしてるだろう。
 そう思いながら鞄を置いて寛ぐと、雲雀くんがわざわざ隣に腰を降ろした。え、向こう向こう。もいっこあるやん。


「伊達。これから僕と二人の時は被るのやめて、鬱陶しいから。羽織るのはいいけど」
『……しゃーない』


 こっちの指差す抗議は無視かい。
溜め息を吐いてぱさっとフード状態になっていたそれをやめる。そして顔を晒せば隣で満足そうに笑む雲雀くんに悶えそう、可愛すぐる。だがしかし。可愛いが少し不満だ、被っちゃ駄目とか。内心むくれていると雲雀くんがいつもの顔に戻って口を開く。


「そうだ……沢田綱吉と、その群れ」
『……どないしたん』
「今行方不明になってるんだ。笹川京子やその他勢も含めてね」
『……へえ』


 本当にそうなんだと言う意識ぐらいしかないが。雲雀くんはそれすらも満足そうに、凶悪に微笑み「その人物がボンゴレに関係する奴ばかりなのさ」と呟いた。咄嗟に右の中指で存在をこれでもかと主張するボンゴレリングに視線を移す。
 雲雀くんはそろそろ僕らもかなと言葉を出した瞬間こっちは血の気が引いたようだった。そんなトンデモ超次元バトルに巻き込まれたらこっちはひとたまりもない。


『えー……嫌や、めんどい……』
「僕も嫌に決まってるでしょ」


 むすっと再びむくれた彼はそう悪態をついたあと、嫌そうに顔を歪めた。


「……僕、最近指輪の炎がどうとかって、連日跳ね馬が学校に不法侵入してきてるんだけど」
『……兄貴が?』
「親戚なんじゃないの? どうにかして」


 そう雲雀くんがぼやく。こっちはそれに首を振るしか出来なかった。やってめんどくさい。くあ、と欠伸をかます雲雀は大きなニャンコの様だ。また風紀委員の仕事を貫徹でもしたのだろうか。まったく、日本人働きすぎ。働きすぎ反対やー。


「……寝る」
『え』



 そのまま雲雀くんは横に倒れてこっちの太ももを枕に寝てしまった。髪が当たってくすぐったい。何こいつめっちゃかわええ。というか今日の雲雀くんはちょっとおかしい。相当疲れているのだろうかいやそうに違いない。
 そのまま一時間こっちは雲雀くんの頭をももに乗っけたまま漫画読んでました。雲雀くんが起きたときにボッシュートされました。悲しみ。



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113:ぜんざい◆A.:2016/12/30(金) 10:05 ID:hYw



「漫画は、不要物だよね」
『……うぃっす』



 結局取り返せなかったこっちはわざわざ応接室で正座してます。雲雀君はソファに座って動いてません、こっちが雲雀くんの前で床に正座してるだけです。これなんてイジメ?



「なんで読んでたの」
『暇やったんや……』
「ばか」



 唐突にばか呼ばわりされました。だからこれなんてイジメ!? って言うか平仮名みたいに聞こえた気がしてとても可愛いです。はいごめんなさい。
 目を下に向けて逸らしつつ『……すまん』と謝れば「許すわけないでしょ」と持っていた漫画でかなり強く叩かれた。……痛いっす。



『……痛い』
「ばか」
『すまん』
「ばか」
『すまんて』
「ばか」



 雲雀くんが迷いなくばかばか連呼してるんですがこれなんて萌え? 平仮名? むくれっつら? 美味しいだけですあざます。いただきます。
 脳内は顔の表情とは裏腹に真っピンクかつドピンクですが、雲雀くんはそんなことを知る由も無い。脳内だけはこっちの秘密のお花畑である。どやぁ。……あっ、はいさーせん。
 雲雀くんは溜め息を吐いてから、しばらく考えるような素振りを見せてからにやりと凶悪な笑みを顔に浮かべた。背筋がぞわりと粟立って、なんかヤバイ予感がする。
 ヤバイ雰囲気を撒き散らし始めた彼から離れるべく、バッと立ち上がって雲雀くんから距離を取ろうとすれば、後ろのコーヒーテーブルで下がれない。なんやねんもう、コレ邪魔。
 なんかピンチっぽい。直ぐ次の逃げ道へ視線を向ければ腰が引き寄せられいきなり勢いよく横に流れた景色。
 これは本格的にヤバイぞと反射でダンッ、とソファの縁に両の手を付いた。ソファとこっちの間に居るのは言わずもがな腰を引き寄せてきた雲雀くんである。



『っぶな、』



 いやほんとに危なかった。雲雀くんに衝突するとこだった。いや、なんこれ。なんなんこの状況。雲雀くんはなんかちょっと不機嫌ですけどなにコレこんなイベントはゲームでしか知らんし要らん。
 機嫌が悪いようで早急に退こうと腕に力を込めて中腰から起き上がろうとすれば腰に回されている腕がグッと押さえつけてきた。がくっ、と膝が曲がって態勢を崩したものの耐えた、耐えたよ、雲雀くんの上になんて乗ってしまえば一貫の終わりである。
 とか考えて雲雀くんの顔を見ればジッとその黒曜石の瞳がこちらを見つめて姿を映していた。



『……雲雀くん、今すぐ退くから、腕退けてんか』
「やだ」



 君は子供か。



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114:ぜんざい◆A.:2016/12/30(金) 10:41 ID:hYw

 雲雀くんはそこから普通に口を動かして話始めた。
 とりあえず態勢をどうにかさせて腰がツラい。そう口を挟めば「力を抜けばいいよ」と遠回しに離すことを断られた。


「……漫画を読んでたのは、仕方ないから許してあげる」
『……マジでか、ありがとう雲雀くん』
「その代わり、一つ頂戴」
『……は?』


 こっちの下で笑みこそ携えているものの空気は威圧感が溢れてどうにも断れない雰囲気だ。なにこの子怖い。ひく、と頬がひきつった気がする。
 雲雀くんは右手の人差し指で一つ、と示すのに合わせて『……ひとつ、』とこっちはその言葉を反復する。ひとつか、まあどうせあれだろう、一戦やろうぜみたいなものだろう。少し考え込み、そのあとに渋々頷いた。
 こっちを見上げてくる雲雀くんを見下ろして内容を聞く。あっやばい腰がもたない早く離して。


『で、その一つって何なん?』
「……これがいいね」


 雲雀くんは右の人差し指を折り曲げ、親指のこっちの唇をなぞる。ぴしりと完全に石化するこっちににや、と凶悪な笑みを微かに浮かべる雲雀くん。
 え、なに、唇を切って渡せと? 痛いから嫌だよ。こんな冗談いってる場合じゃないのは分かってますよえぇ分かってますとも。


『ま、待て雲雀くん、こう言うのはそんな風にやったらあかんやろ』
「そんな風ってなに」
『とりあえず待とうや、な? いやホンマ待って』
「君は良いって頷いたよね」
『いやせやけど、せやけどな? 戦いでもするんかとな……』
「うるさいよ」
『ぅえっ』


 グッと腰を引かれて体的にいろいろ限界だったこっちはがくっと膝を崩して雲雀くんの上に落ちた。うん痛くない。いやぁ胸がクッションになって助かった。
 意地になって身を起こそうとすればがっと抱き締められて困惑する。え、待って待っていおりさんのブレインオーバーヒートおおおお!!
 脳内はこんなに口が回るのに現実の口は一本線を引いたまま固く閉じていて開かない。


『……雲雀くん、離してくれへんか、苦しい』
「黙って」
『うぃっす』



 忘れたとは言わさないとばかりに漫画のような物体で頭を叩かれた。君ホンマ頭叩くん好きやな! 離してんか!
 こういうことを初めてされればまあそんな耐性もないと言うことで顔が赤くなる訳ですよ。動く右手で顔を触れば少しだけ熱い、少しだけかよ。
 もう少し抵抗すればよかったのに、と後悔するもどうしても出来なかった自分がいるのですなんでやろ、答えは聞いてない! ……それより聞きたくない! 無茶言うてすんまそん!
 頭の中で某電車仮面ライダーの紫の魔人的な人が暴れまわるなか、ぐいっと体が離された。また引っ張られても困るので咄嗟にソファの縁から離してしまった手を再び設置する。


「……ねえ伊達、もらっていい?」
『もらってエエか、て……』
「遅い。もう聞かない」
『……っ』


 強引にかっさらわれた。



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115:ぜんざい◆A.:2016/12/30(金) 13:49 ID:hYw



 雲雀くんはふっと唇を離し視線を逸らして、上目遣いにこちらを見たあと「見廻り行ってくるよ、いおり」と言葉を残しこっちを押し退けて応接室を出ていった。しばらく唖然としていたこっちはソファにぼすんと座り込み、片膝を抱える。自然と溜め息が出てきた。


『……えぇ……』


 僅かに赤くなってるであろう顔を隠すように片手で額を押さえてもう一度溜め息を吐く。
 こっちもここまでされて雲雀くんの気持ちに気付かへんほど馬鹿と違う。どうにもならんもどかしさを抱えながら今までのことを振り返る。今までで彼はそんな素振りを見せたことがあったんか? もしかしたらこっちが鈍すぎただけなんか? そうなんか? バレンタインの時も花見に誘ってくれたときも夏祭りに誘ってくれたときも彼はこうやったんか? ……あ、決定的なんは、さっきの……俗に言う膝枕やん……。
 思い返せば返すほど見つかるソレに頬が熱を持つ。めっちゃアピールされとるやん。で、耐えられんなって強行手段に出たと。え、これこっちが悪いん? 


『……なんやよう分からんなってきたわ……』


 とりあえず上目遣いでちょっとだけ顔が赤かった雲雀くんは可愛かった。
 どないしよう、脳内がいかがわしい方向に真っピンクになってく。待て待て、そんな思考は振り払え変態になりなくなければ。


『……明日また、来るか』


 そうして訳のわからなくなったこっちは応接室を鞄を持って出ていった。

 そしてそのあと、雲雀くんが行方不明になったと草壁くんから教えられた。



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116:ぜんざい◆A.:2016/12/30(金) 14:14 ID:hYw


 雲雀くんが行方不明になったと聞いて数日、こっちはまんばリスペクトのぼろ布を頭から被ってセグウェイで登校しようとしていた。



『そんじゃ、行ってくるわ』
「はい、いってらっしゃいです」
『(ガッハァ!!)』



 内心吐血ものの笑顔を風くんからいただき、頭を撫でくり回して『じゃ』と家を出た。ゴー、とセグウェイが走る。
 正直雲雀くんが行方不明だと聞いたときは血の気が引いた。その日一日はぼろ布被ってずっと屋上でボケッとしながらショックで空を眺めていました。
 通学路を進みながら思う。前までは沢田達が何かやらかしたー、だの校庭で爆発がー、だのリング争奪戦だー、だのと騒がしかったくせに、彼らが居ないだけでとても静かだ。聞けば2-Aの沢田綱吉の他に獄寺隼人、山本武、笹川京子も行方不明。3-Aの笹川了平もだと聞く。本当にリング争奪戦に出ていた人達が居ない。恐らくランボとか言う子供も、クローム髑髏と言う女の子もだと言う。そう、あの赤ん坊、リボーンですら。
 自分の右手の中指に填まる夕焼のリングを見つめ、思わず呟く。



『……一体何が起こっとるねん』



 途端、ひゅるると聞き慣れない音が聞こえた。振り向くと同時にそれは直撃して、煙に包まれる。
 ……なんやこれ。
 煙が微かに晴れ奥に見えたのは森。森の中にいるようだ。……はあ、なるほど。さっきの音がこうやって彼らをどこかに飛ばしたのか。なるほど。なるほど。納得……



『するか出来るかやるわけないやろクソが!』
「うぇっ!?」
「へ!?」
「わっ!」
「はひ!?」
「来たか」
「いおり姉!」



 あまりの衝動に怒鳴ってしまえば驚きの声をあげて見つめてくる声の主たち。そう、行方不明になっていた彼らである。
 沢田綱吉、笹川京子、リボーン。他にははひ! と呟いたポニーテールの女の子。見るからに大人な青年と、大きな白い帽子を被った女の子も居た。



「伊達お前、そんなキャラだったか?」
『……うっさいリボーンくん。びっくりしてん』



 直ぐ様ぴょんと肩に乗ってきたリボーンくんに頭を抱えながら呟くと沢田くんが泣きそうな顔をしながら「伊達さんんんん!」と叫んだ。うおっと、びっくり。
 そんな沢田くんをスルーしてポニーテールの女の子と白い帽子の女の子と青年を見た。その視線に気付いたのか三人はこちらに自己紹介してくれた。



「ハルは三浦ハルです! よろしくお願いします伊達さん!」
「私は大空のアルコバレーノのユニです、はじめまして伊達さん」
「僕はランキングフゥ太、こっちじゃはじめましてだよねいおり姉!」



 一応『よろしく』と返して困惑した顔をしながらリボーンくんを見る。リボーンくんはああそうだ、知らないんだったなと事情を説明してくれた。



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117:ぜんざい◆A.:2016/12/30(金) 14:50 ID:hYw



 どうやらこっちが当たったあれは10年バズーカと言う5分間だけ10年後の自分と入れ替わる超不思議武器の弾らしい。現在ここは10年後で、本来なら5分でもとに戻るらしいのだが今は軸が狂って元の世界に帰れないらしい。しかも、現在ボンゴレファミリーの守護者たちはこの森で軸を崩した敵対マフィアのミルフィオーレファミリーと交戦中だと言う。イコールその真っ只中と言うわけだ。
 そしてもうひとつ。この世界には匣兵器と言う小さなサイコロ型の匣に死ぬ気の炎を指輪に灯して戦うと言うスタイルになっているらしい。ボンゴレにはボンゴレリングとボンゴレ匣と言うものがあり、守護者はそれで応戦中のこと。10年後の沢田たちはリングが重要になって争奪戦が始まる予感を感じたから全員リングを壊したらしい。なるほど、過去のこっちらなら持ってるから代わりに戦ってくれと。
 リボーンに赤色とは違う、濃い紅色のボンゴレの紋章が入った小さな匣を渡された。


『……これが匣なん?』
「ああ、頼む伊達。戦ってやってくれ。これで勝てなければ俺たちは全滅、過去にも帰れない」
『……めんど。いけど、しゃーないなぁ』



 火よ灯れー、と心の中でやる気なさげに唱えていたらボオォォと大きな音をたてて紅色の炎がボンゴレリングから出てきた。それを匣にはめ込めと言われたのでかちっと炎を注入する。中から出てきたのは、羽部分が紅色の炎に燃える小さい小鳥。



『……これ?』
「実際には匣アニマルだ。実を言うと、夕焼の炎の波動は、この世界じゃお前だけらしい。夕焼の匣の実態は、大空より謎なんだ」
『……っちゅーことは、夕焼の匣は全部こっちじゃないと開けられへん言うことか』
「そう言うことだ、形態変化(カンビオ・フォルマ)と唱えてみろ、小鳥が初代夕焼の守護者の武器になるぞ」
『……へえ。トリ、形態変化』
「(……な、名前つけないのかな?)」



 沢田がそんな視線をくれていたが、構っている暇はない。ばささと羽を広げた小鳥はピカッと目眩しく輝き、ずしりとこちらの右手に重みを与えた。



『……斧』
「それが初代夕焼の守護者、大空を赤く染め浮き雲と共に流れる切り札と謡われた、アイザックの斧だ」
『デカッ』
「お前も身長以上の棒ぶんまわすだろ」
『うっさいわ』



 赤いラインの入った真っ黒の斧。刃先は鈍く光り、刃渡りはおよそリボーン三人分の大きさだ。持ち手の長さはこちらと同じ大きさで、とても大きいのに、軽い。試しにと沢田に持ってもらった。瞬間彼の腕はがくんとさがって斧はズズゥンと音をたてて落ちた。



『……もしかしたら、こっちが持ったら軽くなるん?』
「夕焼属性の炎の特徴は軽化だからな」
『……へえ。じゃあこっちちょっと爆発音やらでかい音しとるとこ行ってくるな』
「気ぃつけろよ」



 リボーンや沢田君たちに見送られ、こっちはセグウェイを加速させて森を駆けた。



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118:ぜんざい◆A.:2016/12/30(金) 17:49 ID:hYw



 邪魔な木々は切り倒して進んでいけば広いところに出る。そこではリボーンくんに教えてもらった真六弔花と戦うボンゴレ’s。
 ヴァリアーの方々に黒曜、そして、笹川や獄寺等の守護者たち。
 林の影でおおー、壮観壮観と呟いていれば、ヴァリアー側の一人の背後から大技を喰らわせようとする名も知らぬ真六弔花の一人。
 さあ今放たれるぞ! と言うところにセグウェイで突っ込んでいった。



『そーい』



 そのまま飛び上がってあのでかくて綺麗な斧を振り下ろせば気付かれた相手にサッと避けられ、斧は止まることなく地を割いた。
 ドガアアン、と言う大きな音にみんなの動きが止まり、こちらを見てくる。煙が晴れたとき、みんなが「あ!」「アイツ……」「ちっ」「来たな」「なっ!」とこっちを凝視してくる。少しむず痒かったので頬を掻きながらひとつ斧をぶぉんと薙ぎ、口を開いた。



『混ざらしてや』



 ざわめくそこから、獄寺が「伊達じゃねぇか!」と怒鳴る。そこから、こっちが助けた一人が後ろで「ゔお゙お゙お゙お゙い! 余計なことすんじゃねえ!!!」と刀で背中を切りつけてきたので斧の持ち手で受け止め、『黙れやカス』と睨んで蹴り飛ばす。周りから歓声が聞こえたが知らない。



『……え、なに。こっち来んかった方がよかったん?』
「いやー、そんなことはないですねー。相手する人数減って大助かりですー」
『ちょお君黙っといて』



 蛙のドデカイ帽子を被った緑髪の少年を黙らせたらいきなり乱闘になった。



『せぇい!』



 みんなの返答も聞かずこっちも乱闘に混ざった。軽々と斧を振り回し、敵を薙ぎ払う。
 すたん、と隣に着地音が聞こえたかと思ったら、手錠とトンファーを構えた雲雀くんがいつもの学ランで此方を見ていた。……え。手錠?



「……君も来たの」
『おん、さっきな。ビックリしたわ』



 あのときの事などなかったかのように話し掛けてきた雲雀くんに対応していつも通りに返せば「へえ」と満足げな声が飛んでくる。



『……改めて思うわぁ……』
「なに」
『斧くそ軽い』
「……あっそ」



 期待外れとでも言いたげな雲雀くんは武器を構えて駆け出す態勢に変わった。彼が駆け出す寸前に、思ったことを伝える。



『君が居ると、安心する』



 彼が肩を震わせたが、見て見ぬふり。機嫌が良さそうに相手に殴りかかっていた雲雀くんを見て、相手の人が可哀想になった。

 さーせん。



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119:ぜんざい◆A.:2016/12/31(土) 09:48 ID:hYw



 それでもその告げ目はやって来る。背後がいきなり輝きだし、ばしん、と白蘭に似た男が姿を表した。ソレは、終わりを告げるようにのしのしとゆっくり歩き出す。
 その様に敵味方関係無く目を見開いた。敵もどうやら知らなかったらしい。真六弔花最後の一人、GHOSTと言うようだ。
 相手の真六弔花の一人、桔梗が「白蘭様……早すぎる!」と呟いていたので相当な代物だろう。全裸やし白いしキモい。



「だが奴は敵! ミルフィオーレに間違い無い! 指を見ろ! マーレリングだ!」

 ヴァリアーのレヴィとか言うおっさんが怒鳴る。確かにマーレリングを付けているから真六弔花で間違いはないだろうと思うけど、うっさいなあ。
 呆れた目をして彼を見ていれば、途端に隣の前髪で目が見えないティアラの男、ヴァリアーのベルフェゴールが「先手必勝♪」と嵐の炎を纏ったナイフをビュオッとGHOSTに投げ付ける。避ける気配はない、よし、当たる。
 そう思ったのだが。彼のナイフはGHOSTを通り抜けた。死ぬ気の炎は纏っていない。そんなナイフは地面にさくさくさくっと刺さるだけ。



「!!」
「通り抜けた!」
「!!」
「幻覚か!?」



 敵味方関係無く驚き、六道骸とその弟子、ヴァリアーのフランが「幻覚ではなく実在している」と告げる。実在しとんのに透けるん? え? マジで?



「ならば撃つべし!」



 レヴィが叫びながら雷エイで攻撃する。だが、炎だけ吸いとられ、GHOSTは円形のバリアの中から無数の触手の様なものを放出させ、ミルフィオーレ、ボンゴレめがけて飛んでくる。
 一人、真六弔花の女の子、ブルーベルに触手がベトンと張り付いた。次の瞬間にはブルーベルは骨と皮だけになり地に伏せる。



「なにっ」
「味方を!」



 六道骸とバジルが声をあげた。まるで生命力を吸いとられたかのように萎んだ彼女。雷エイやXANXUSの憤怒の炎のこもった銃撃も炎を吸いとられて力を無くす。どうやら炎だけを吸収するらしい、なんと怖い。すると雲雀くんが自身のボンゴレリングを見て「リングの炎が……」と呟いた。見てみれば、確かにリングから炎が漏れだしている。ここまでするのか馬鹿野郎。
 早いとこ、結論はGHOSTには炎の攻撃が効かないのだ。無敵か!? 無敵なのか!?



『っ』



 向かってくる触手を飛んで避けて宙で一息着けば再びこっちめがけて飛んでくる触手。何も言わなくても狙われている。ふざけんな狙うな。死ぬ気の炎を吸われてこっちは疲弊してんだよ!



『ちっ』



 被っていたボロ布を触手の前にバサッと投げ付けだんっと地面に降りる。こっちの愛しのボロ布が!
 なんやねん、なんでこっち狙われとん!? 悪どく舌打ちしてひらひらと落ちてくる触手が既に離れたボロ布を既に諦め、逃げる。だってこっちだけ向かってくる触手の量が明らかに違う。なんなん、なんなんこれ!
 投げ捨てていたセグウェイに飛び乗りエンジンをドルルと掛ける。そこでも迫ってくる触手を必死に避ける。



「GHOSTは極限に伊達を狙ってるぞ!!」
「伊達って誰だよ! うししっ」
「白いボロ布を極限に被った……うおお!? 伊達! ボロ布はどうした!?」
『捨てた言うて! 回避につこたわボケ!』
「!?」



 なんこれ! なんこれ! なんでこっちばっかり狙われとん!?



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120:ぜんざい◆A.:2016/12/31(土) 10:26 ID:hYw



 結局そのあとハイパーモードとかした沢田がやって来てGHOSTを倒してくれた、と言うか死ぬ気の零地点突破改なるものでGHOSTを逆にズボッと吸い込んだ。GHOSTは死ぬ気の炎の塊だったらしい。……確かに実態ですね分かります。
 そのあと白蘭登場。此方の大将沢田と敵の大将白蘭の衝突。そのあとユニが不思議な球体に包まれながら飛んできた。聞くに、マーレとボンゴレの二つの大空に大空のおしゃぶりを持つユニが共鳴して引っ張られてきたらしい。
 そのあとボンゴレリングが真の姿に変わって宝石のようなもののついたまた一風変わったゴツい指輪になった。そのあとユニが命を掛けておしゃぶり状態だったアルコバレーノを復活させ、死んでしまったユニとγに悲しみ、ユニを道具扱いする白蘭を沢田がXバーナーなるもので消し飛ばし、戦いは終結した。
 まあ、言いたいのは要するに、こっちらが勝ったと言うことだ。
 って言うか、風くん死んどったん!? 風くんが!? あの風くんが!? 待っとって風くん復活したら抱き上げたる!



「か、勝ったぜ!」
「うおお!」
「沢田殿! やりましたね!」
「勝ったぞーー!」
「ツナくん!」
「ツナさん!」



 獄寺と山本、笹川兄妹に三浦、バジルが沢田に向かって駆け出す。ふらりと倒れそうになった沢田を獄寺と山本が受け止めて、いつの間にか彼の近くにいたリボーンが「よくやったなツナ」と珍しく沢田を褒める。
 だが、沢田は「γと……ユニが……」と悲しそうに呟く。おしゃぶりの散らばるそこでγの弟である太猿と野猿が「姫……アニキ!」「こんなのってありかよー!」と泣いている。沢田はそれを見て顔をしかめ、告げる。



「γとユニだけじゃない……この戦いは多くの人が傷付きすぎたよ……」



 多くの人。こっちは今日未来に来たからそれに当てはまる人がどうなのかは知らん。けど、早めに来た沢田や山本たちはそれをひしひしと感じているに違いない。だが、そこに不穏な音が響く。ガスッと何かを蹴る音だ。見てみればヴァリアーの方々が残った真六弔花の桔梗を殺そうとしていた。



「ちょっ、何してるの!? もうこれ以上の犠牲者は要らないよ!」



 ぼろぼろの沢田が蹴り飛ばした本人、レヴィが「こんなカスを庇ってどうする気だ、コイツらは殺ししかできぬ怪物だぞ!」と渇を入れる。ここら辺は興味が無いので先程から鋭い視線を送ってくる雲雀くんにうぃーんとセグウェイに乗車しながら駆け寄った。



『雲雀くん、久しぶりやな』
「……ホントにね」



 腕を組んでぷいっとそっぽを向く雲雀くんの可愛さに鼻血が出そうになりながらも必死に耐えて苦笑いすれば彼は溜め息を吐いて「おぶって。数日戦いっぱなしなの。疲れた」とひょいと背中に回って飛び乗ってきた。許可を取れ許可を。



『……お前な』
「なに」
『なんも』
「僕は疲れてるんだよ」
『はいはい』



 呆れて乾いた笑いしか出なかったが、「大アリに決まってんだろ! コラ!」と言う怒鳴り声で意識がそちらへ向いた。



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121:ぜんざい◆A.:2016/12/31(土) 10:51 ID:hYw




 雲雀くんをおぶるためセグウェイからおりて彼を背負い直し、声の方を見る。そこには光輝く球体が。光を失い、そこから姿を表した赤ん坊にこっちは絶句する。……風くんとリボーンくんとコロネロくんの他にまだおったんかい。



「よくやったな沢田! コラ!」



 コロネロくんが大空のおしゃぶりを片手に沢田を労う。やはりコロネロの首にもその青いおしゃぶりが下がっていた。



「コロネロがいる! ……てことは!」
「アルコバレーノが……」
「ついに復活したのか!」
「赤ちゃんがいっぱい!」
「どこのベイビーちゃんですか!?」
「あれがトゥリニセッテの一角のおしゃぶりを持ちトゥリニセッテを監視する役目を持つ、最強の赤ん坊、『アルコバレーノ』
リボーンの旧くからの知り合いでもあるわ」



 アルコバレーノを知らない笹川京子と三浦ハルに獄寺の姉、ビアンキがアルコバレーノについて説明する。
 アルコバレーノなんて知らなかったこっちはそれを聞いてふんふんなるほどとうなずく。背後から呆れた視線を頂いた。雲雀くん酷い。
 不意に風くんの姿を見つけたこっちは『風くーん』と彼の名前を呼んでみる。背中の雲雀くんが「え」と呟いて驚いていたのは聞き逃さない。



「いおりさんっ! 無事でしたか!」
『おん、無事無事ー。さっき来たばっかやから』



 そう告げれば風くんからエンジェルスマイルを送られて鼻血が今度こそ出そうになった、君はこっちに亡くなれと言うのか。だがしかし、今は背中に雲雀くんがいるのである。鼻血なんか出したら殴られてしまうに決まってる。
 リボーンがこっちに向かって「知り合いか?」と聞いてきた。



『……まあ、』



 ここに来て過去の風くんから口止めされていたのを思いだし、煮えきらない態度でリボーンくんに返せば怪訝な顔をされたが、気にしてないように彼は前を向いて「てめーらおせーぞ」と呟いていた。
 アルコバレーノに聞けば事情は全て分かっているらしい。風くんが長々と教えてくれる。



「ユニは白蘭が倒された場合、世界にどの様な影響が起きるのかも我々に教えてくれました。白蘭が倒された今、持ち主を失ったマーレリングは無効化されました。それにより白蘭がマーレリングによって引き起こした出来事は全て……全パラレルワールドのあらゆる過去に遡り抹消されるのです」
「つまり白蘭のやった悪事は昔のこともきれいさっぱり跡形もなくなくなるんだぜコラ!!」
「え!? それって、ミルフィオーレに殺された人たちや山本のお父さんも!?」
「恐らく死んだこと自体がなかったことになるだろうな」



 わあああ! と喜びを全身で表す彼らにこっちは絶句する。え、山本くんのお父さん殺されとったん? え、そんな精神状態で戦ってたん!? 最近の子怖い。
 よっと雲雀くんを背負い直せば、みんなが「過去に帰ろう!」と騒ぎ出す。ようやく過去に帰れるらしい。あぁ安心安心。



『……雲雀くん、聞いとった?』
「過去に帰るんでしょ」
『せやな。……あー、疲れた』
「僕の方が疲れてる」
『はいはい』



.

122:ぜんざい◆A.:2017/01/02(月) 08:56 ID:cek


 今、雲雀くんのアジトに来ています。いやあ、和室って落ち着くなあ。
 なぜここに来ているかと言うと、雲雀くんが最後に見に来たかったらしい。10年後の雲雀くんが並盛風紀委員を中心とした風紀財団に作らせたらしい。スペックがやばい。広い畳の和室では雲雀くんの帰りを待っていた草壁くんが正座して鎮座していた。……10年後やのにリーゼンとくわえ草は変わらんのか……。
 去り際、草壁くんが「恭さん! いおりさん! お気をつけて!」と言っていたので、後ろ手に手を振って雲雀くんのアジトから出た。出てからやっとなぜ雲雀くんはここに来たのか、その心理に気が付き笑いが漏れる。彼の背中を見ながらやっぱり人の子なんやなぁ、っておもった。



「……何笑ってるの」
『いや、なんもない』
「……ふん」



 ふい、と拗ねた様にそっぽを向く雲雀くんが可愛くて仕方無い。表面では苦笑いして彼の隣を歩く。
 彼が行方不明になってから、なにか足りないと思っていた。それが埋まった様に思える。……寂しかったのか、こっちは。燻っていた違和感の答えを見つけて、満足そうに少しだけ微笑んだ。ねえ見た? 今ちょっと、普段仕事しない表情筋が働いてくれたよわーい。



『……過去に戻ったら、きみはどないする?』
「……いつも通りに動くだけだよ……ねえ、いおり」
『なんや、恭弥くん』



 名前を呼んでくる雲雀くんに逆に名前を呼び返せば不満そうな顔が見えた。……不満なん?
 身長ま1cmだけこっちの方が高いだけで彼の顔の位置はあまりこっちと変わらない。それにしてもなんでそんな不満そうな顔すんねん。



「くんは要らないよ」
『恭弥』
「ん」



 くん付けが不満だったのかホントかわええなきみ。
 サッと顔を伏せた彼は何を思ったのか背中に飛び乗ってきた。あっ、はい背負えと言うことですねわかります。
 よっ、と言う声と共に彼を背負えば首に巻き付く腕。なに、また首絞めるの? とか思ってたけど杞憂でした。どうやら雲雀くんは眠かったようで、ぐるりと腕を首に巻き付け抱き込むようにして腕を枕に顔を伏せてしまった。



『……いてっ』



 ぐりぐりと頭をこっちの頭に擦り付けた彼は、そのあと首筋にちくりとした痛みをくれてくれました。彼は満足げに「ん」と呟き今度こそ寝るぞ、と先程の態勢に戻った。こいつキスマーク残しよった。



『……降ろすで恭弥』
「……や、」
『よし許そう』



 くぐもった声と台詞が可愛すぎて許した。恭弥の頭で首筋は見えなくなるし、まあ大丈夫でしょう。恭弥くん可愛いよ恭弥くん。


.

123:ぜんざい◆A.:2017/01/02(月) 09:19 ID:cek



「よーしみんな揃ったね! そろそろ出発だが、ボンゴレ匣は未来に置いていってもらう、取り外してくれ!」



 取り外した匣を地面に置き、みんながみんな匣兵器の中の動物と別れを惜しんでいたのでこっちも匣兵器からあの小鳥を呼び出し頭をひと撫でして恭弥の所に戻る。彼の匣兵器は雲のハリネズミのようだ。かわいかった。
 入江正一がアルコバレーノのヴェルデとにや、と笑っていたので何かしら企んでいるに違いない。
 足元辺りで頭のてっぺんでおさげにした中国少女の弟子と「達者でね、イーピン」とぺこりと二人で頭を下げ合う風くんを見てあ、二人和むとか思ってればぱっと風くんがこちらを見上げた。のでバチッと目が合う。彼はひとつ控えめかつ満面の笑みを見せ、「いおりさん」と呟いた。待って、いおりのライフはもうゼロよ。HPとMPが一気に吹き飛ばされたよ。
 それを悟られまいと頭を軽く振り、しゃがみ込む。



『なんや、風くん』
「……今、10年前の私があなたの家にいるのは、今は内密に」
『おん』



 質問を問えばちょいちょいとちっちゃなお手手で手招きする。だが、自分が来た方が早いと気付いたのか、とてとて駆けてきてこっちの耳に手を添えてから彼は小声でそういった。動作可愛かった。
 これは流石に小声になるわ、と思いつつサムズアップしながら頷き、頭を撫で回して立ち上がった。この時風くんが恭弥に対して勝ち誇った柔らかい笑みを向けていた事など、その時彼を見てなかったこっちはわからなかった。
 振り向いて恭弥を見ればとても不機嫌そうな顔をする彼に唐突過ぎて驚く。え、なんでそんな不機嫌なん?



「……そこの赤ん坊と、なに話してたの」
『……いや、ちょっとな……。多分過去に戻って、しばらく経ったら分かるで』
「……ふぅん」



 ハイパー不機嫌な彼に苦笑いし、「じゃあタイムワープをはじめるよ! 別れを惜しんでたらキリがないからね! アルコバレーノは過去のマーレリングを封印してすぐにここへ戻ってくる予定だ!」と言う声で前を向く。
 入江は沢田に「本当に……ありがとう」と泣きそうな顔で笑って告げた。沢田は困ったように微笑み、「さよなら」と別れを告げ、それは入江が「タイムワープスタート!」とボタンを押すまで浮かべられていた。



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124:ぜんざい◆A.:2017/01/02(月) 15:32 ID:cek

過去に戻ればこっちは恭弥と二人、応接室のソファにぼふんと落ちた。

『……戻ってきたん?』
「……そうなんじゃない?」

こっちがいつも座っとるソファの向かいにあるもうひとつのソファに落ちた恭弥はくあ、と久々にあくびを見せた。ああ、帰ってきたんや。訳のわからん世界から。「チチッ」と鳥の鳴く声が指から聞こえ、不思議に思って指を見てみれば、右の中指にはボンゴレリングと、あの小鳥があしらわれたアニマルリングがあった。……匣よりずっとコンパクトになったな、きみ……。アニマルリングをさらりと横目で流し、むすっと外を眺める恭弥に苦笑いしてソファを立つ。横目でこっちをちらりと見て再び外に視線を向けた彼を無視して隣に座った。

『……雲雀くん』
「……」
『恭弥』
「なに」

名前を呼べば直ぐ様返事が返されて、ゆっくりとこちらを向く恭弥に向き合い、『なあ』と呟く。

『前回のアレはどう受け取ったらエエんや、分からん』
「……君は僕をどう思うの」
『お前な……』

答えになってないソレに眉を寄せてから、彼の胸ぐらを掴んで引き寄せ、唇に噛み付く。痛くはない、筈だ。ぱっと離せば間近で少し赤くなって目を見開く恭弥に、にや、と笑ってついばむ様なキスを様々な角度から落とした。普通立場逆じゃね? なんて思いながらがっくがくの彼の膝を見て目を細める。震えた指で態勢が崩れまいと必死に服に掴まるから可愛い。死ぬ。相手が酸欠になり始めたので残っていた理性をかき集めて最後に舌で恭弥の唇を舐めて離れた。はぁ、と息を吐き出せば、がくがくとうつ向いて震える彼がぜぇはぁと息をきらして体内に酸素を取り込んでいるのが見える。

『……』
「はっ、はぁ、君……」
『すまん』
「ばか」

こっちを掴んでいる両手の力をぎゅっと強めてギッと水の膜の張った瞳で睨み付けてくる恭弥から目を逸らす。……いや、分かっている。今こんなことを考えるべきではないことぐらいは。分かっているが思考は回る、回ってしまった。可愛い。恭弥くん可愛いよ恭弥くん可愛い可愛い可愛い。照れ顔可愛いよ超可愛い。そんなことを脳内で繰り広げていることなどいざ知らず、彼は不機嫌そうにこちらを睨んで「こういうのって僕からするんじゃないの」と口を開いた。

『確かに、しとる時に思ったな……』
「……」

ほら見ろ、とばかりにこちらを見てぶすくれる恭弥に苦笑いした。

**

「おかえり!」
「少し地殻に影響を与えたがすべてうまくいったぜ!」
「よかった! お疲れさま!」
「お。子供のあいつらが過去へ帰った代わりに、この時代のこいつらが装置から目覚めたんだな」

10年後の世界にて。過去から帰ってきたこの時代のアルコバレーノたちと入江らが少しそんな会話をして、目覚めた彼らを見つめた。黒いスーツ姿の10年後の獄寺が「ところで」と久々に口を開く。

「ツナはどこいったんだ?」

ボンゴレファミリー10代目がいない、という山本の素朴な疑問に入江が「ああ、一足先に上にいってるよ」と答える。その端で、雲雀は伊達を睨めつけていた。実はこの時代の伊達は、ミルフィオーレのスパイとして潜み、情報をボンゴレに渡していたのだ。みんなと同じ黒いスーツを身に纏いながら頬をぽりぽりと掻く彼女は、この10年で自分より高くなった雲雀から目を逸らす。彼女もこの10年で今より少し身長は伸びたようだ、胸の方は言わずもがな。そんな彼女は、スパイ活動を雲雀に教えていなかった、絶対拒否される、それかついていくと言うに決まっていたから。

「……いおり」
『……』
「こっち向いて」

明らか不機嫌な雲雀に渋い顔をしながら向き直る伊達。雲雀はそれを見て少し満足そうに笑い、「説明して」と怒るのだった。


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125:ぜんざい◆A.:2017/01/02(月) 16:06 ID:cek



 先日の未来から過去に戻ってきたときの反動で起こった地震。それのおかげか所為なのか、今日、至門中学から七人の集団転校生がやって来るようだ。
 どうやら風くんは未来から記憶を受け取ったらしく、過去から帰ってきたあの日、こっぴどく叱られた。風くん怖かった。っていうかこっちに非はないやろ、いきなり10年後つれてかれてんから。
 あの日のことを思い出して少しぶすくれながら今日、以前から仲良くさせてもらっている『アーデ』さんとコラボでニヤ動生放送をするのだ! わーはっはっは!
 まだお姿を拝見したことはなく、どこに住んでいらっしゃるのかも分からないのでネットでアーデさんがこちらを見つけたら参加ということになっている。どうやらアーデさんはとんでもない美貌とスタイルの持ち主らしい。閲覧者談。



『うぇーいどもどもこんばんはー、白玉さんやでー。今日はコラボでアーデさん来はる予定でわりかしテンション上がりまくりな白玉さんやでー』

<アーデ姉様とコラボだとぅ!?>
<めろん同士コラボだとぅ!?>

『ちぎったるからはよ降伏しろや』

<こわっ!>
<hshs>
<久々千切る発言が来た! ……ふぅ>
<上のコメント万死だ!>
<億死だ!>

『アホ、京死やっちゅーねん。残念やなぁ』
「そんなの甘いわ、もっとよ」
『お、アーデさんおでましや。こんばんはー』
「白玉さん、こんばんは、今日は誘っていただけて嬉しいわ」
『いやいやー、受けてもらえたんが奇跡やわ』
「んなっ」

<白玉の男前さマジうらやまギルティ>
<白玉大御所っていうか超有名なんだからどこに誘い入れても受けてくれるだろ>
<アーデさんも最近注目上がりまくり>
<驚きアーデかわ>

『あれっ、こっち結構有名なっとったん?』
「気付いてなかったのね……」

<ニヤ動で知らぬ者が居ないぐらい>
<むしろそこまで行ってなんで顔出ししてないのか謎>
<むしろなんでライブ会場で歌ってないのが謎>
<白玉様もアーデさんも顔出しきゃもん!>
<アーデさん派の奴手ぇあげろー!>
<俺白玉派!>
<アーデ派>
<アーデ派>
<アーデ派>
<白玉派すくなっ!>

『おい心に今なにか刺さったんやけど、なぁ、鋼のハート貫かれてんけど、なあ。白玉さんの人気の無さよ……』
「き、気を落とす必要はないですよ!」
『アーデちゃんもう白玉さんと結婚して』
「!?」

<鋼のハート!>
<ガチィン!>
<貫かれた!>
<バキバキ!>

『いらんとこで効果音いれんな!』
「ふふっ」
『アーデちゃんかわ』

<し、白玉はかっこいい枠で人気!>
<そーもう!>
<お、俺も?>
<白玉レズ説>
<百合キタコレ>

『おらそこなんで疑問系やねん。レズでも百合でも無いわボケ! フォローするんやったら最後までしいや! 可哀想やろ!? この白玉さんが!』
「そうよ! 粛として清まりなさい!」

<はい! 粛として清まります!>
<白玉様が久々に楽しそう!>

『はあ? 楽しそうやと? 楽しいに決まっとるやろアホ!』
「ふふ」

<こう見えて白玉はリスナー大好き>
<うれぴい>
<おいやめろ照れるだろ白玉ぁ>
<アーデが微笑んだぞ! 聞いたか!?>
<聞いた!>

「心優しいわね、ってそんなとこまで聞いてなくて良いのよ!」
『』
「大変! 白玉さんが息してないわ!」
『』

<恥ずか死したか>
<したな>
<ギャップ>

『ギャップ言うた奴捻り潰す……っと、残念なことに捻り潰す前に時間来たな』
「あら、ホントだわ」
『そんじゃまた、やるかもしれんしやらんかも知れんけど、よろしゅう』

<やれよ!?>
<やってくれよ!?>
<さっきはいろいろ言ってすみませんでしたあああ!>

『よし許そう。またやるでー』
「そうね」

<やたー>
<キタ>
<コレ>
<ふううう!>



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126:ぜんざい◆A.:2017/01/03(火) 11:51 ID:cek



こっちは久々に絵を書くべくスケッチブックとシャーペンを手に机に向き合って仕事をする恭弥をばりばりとすごい勢いで機嫌よく描いていた。恭弥も気にしていないのか、いつもと変わらず日誌に鉛筆を滑らせている。

「ねえきみ、僕を被写体にしてなにか楽しいの?」
『恭弥は絵になる。姿勢は、まあ世辞でもエエとは言えへんけど、綺麗やねん』
「……ふぅん」

お互い顔をあげずにそれぞれいましていることに集中しているので顔は見てないが、なんとなく満足げな声が恭弥から飛んでくる。なにこの子超可愛い。
応接室が柔らかい雰囲気に包まれるなか、それを切り裂くような「失礼!」と言う聞き覚えのある女の子の声が扉を開ける音と共に響いた。即座にばさっと復活したボロ布のフード部分を被る。左腕の包帯も腹の包帯も取れていない、腹は別にいいとして腕の方を見せるわけにはいかない。毒手とか言われたらたまったもんちゃうわ。

「あなたが並盛中風紀委員長、雲雀恭弥」

どうしてか聞き覚えのある声が恭弥に飛んでいき、若干不機嫌そうな恭弥が「誰? 君?」と顔をあげる。どうやらその女の子は至門中学三年の鈴木アーデルハイトと言うらしく、応接室を粛清委員会に明け渡せと要求しているようだ。彼女を見ればこっちとそれほど変わらない胸を携え黒い至門中学の制服を纏っている。左の腕には粛清と書いてある腕章が。これで粛として清まりなさい! とか言ったらアーデさんやん。ちなみにこっちの第一印象は「なんやこのクソ美人とりあえず描きてぇ」である。

「粛清……委員会?」
「断るのならそれなりに」

要するに、これからは粛清委員会が風紀委員会の代わりにこの学校の治安を守るから出てけっちゅーことやな。やってることは風紀委員会と一緒か。

「……ふぅん、面白いけど……それには全委員会の許可が必要になるな」
「もう許可は取りました」

いつの間にか恭弥の頭に居座るヒバードには目もくれず、アーデルハイトは「力ずくで」と各委員会の委員長を縛り上げた写真と拇印をひらりと見せた。

「ワオ。僕がその申し出を断っても、君は諦めそうにないね」
「当然です。力ずくで納得してもらいます」

アーデルハイトさんや、それはちょっと無理ちゃうやろか。恭弥相手に力ずくって絶対骨折れる仕事やで。遠い目をしてアーデルハイトを見つめる。
胸はこちらとそんな変わらんくせになんやねん腰ほっそ。あれか? これを俗に言うスタイル抜群と言うのか? 身長はこちらより高いしなにこれ君将来スーパーモデルにでもなるん?
布の隙間から視線を送っていたが、やがてなんか面倒なことになりそうだったので絵の方に集中する。こんなもん巻き込まれたら冗談にならん。

「ところで、そこにいる白い布の物体はなんですか」
「……なんで君にそんなこと教えないといけないの」

いや、ホンマ頼むから巻き込まんといて。こっちはただのしがない美術部部員です。っていうかこっちのことをそんなことで終わらそうとする恭弥も酷い。
ホンマに関わるなオーラを撒き散らせば相手も興味が無くなったのか「……それでは」と応接室を出ていった 恭弥ははぁと溜め息をついてぼすんと椅子に腰を下ろす。「……なにあれ」と呟いてから彼はこちらを訴えかけるように見た。

『……なんや』
「布」

布被るのやめろと。渋々ぱさりと被るのをやめれば変わらずじっとこちらを見てくる恭弥、なにがご不満ですか何様僕様恭弥様。『次はなんやねん』と問えば「……布、羽織るのやめて」と更なる要求をかましてきた。他でもない恭弥の頼みだが、……ううむ、悩む。短い間だがアイデンティティぞ? これ。
どうやら痺れを切らしたらしい彼は溜め息をひとつ吐き、椅子から立ち上がってこっちに向かって来る。そして布が落ちないようにボタンで止めていたボロ布を引っ掴み、ぶちっと引き契ってばさっと遠くへ投げ捨てた。流石にこれには目を見開く。え、あ、アイデンティティが!
 彼は布を剥がしたこっちを見つめて、不意に微笑む。え、なにがしたかったんきみ。

「うん」
『は?』
「君の体の方が好きだよ、僕は」
『変態か』

.

127:ぜんざい◆A.:2017/01/03(火) 12:24 ID:cek



 翌日、今日は昨日の絵に色を塗るぞ! とセグウェイをうぃーんとか言わせながら朝早くに学校に来たのだが、校舎にはでかでかと粛清と書かれた垂れ幕が下ろしてあった。



『……なんっやこれ。絶句もんやねんけど。記念に写真撮っとこ』
「きみ、ふざけてるの?」



 スマホでぱしゃっと一枚校舎の写真を取れば、後ろから呆れたような声が返ってきた。セグウェイの上で態勢を変えればそれはそれはご立腹な恭弥くんが。あまりの怖さにヒバードがこっちの頭に乗っかってくる程度には怒ってる。
 アーデルハイトさんやっちゃったなー、とか不意に屋上を見てみれば、屋上の縁に立っている黒い制服姿の女の子。あれはまさしくアーデルハイト! あ、やべ。



「……風紀を大きく乱してくれたね……」
『あっはいそすね』



 ばっと駆け出す恭弥のあとをストッパーとして在るべくこっちもボロ布はためかせてセグウェイを動かした。

**

 屋上にて。時間が経ったのかグラウンドに生徒が大勢集まる。そのなかで、屋上で睨み合う恭弥とアーデルハイト。……これなんてバトルマンガ? って言いたい。
 屋上には沢田の守護者とアーデルハイトの他の七人の転入生が集まっていた。集団転入の時に手違いで七人と知らされていたものの、八人だったことが発覚し、恭弥はきちんと先生を咬み殺している。ちなみに沢田のクラスのかわいい女の子である。どうしてか恭弥に熱い視線を送っている様に思えるが気のせい気のせい。こっちに不思議そうな視線を送ってくれているが気のせい気のせい。



「やっと勝負する気になったのね」
「当然だよ、きみの行動は目にあまる。ここで終わらせよう」




 ちゃ、とトンファーを構えた恭弥からとんでもない殺気が放たれる。まあ常日頃一緒にいるこっちは慣れてなんとも思えていませんが。相手であるアーデルハイトがびくりと震える。そこで「ヒバリさん!」と沢田が入ってくるが無視無視。
 とりあえず、殺気にやられたと思われる倒れかけのさっきから恭弥を見てこっちを見手を繰り返していた女の子をがしっと支える。



『……大丈夫か』
「あ、は、はい!」



 布で顔は見えて無いように思えるが、多分それが不思議だったのだろう。「こ、声がかっこいいですねっ……!」と言われた。……おん、いつか言われるとおもっとってん、ニヤ動ではなく現実で声が男やなって。とりあえず遠い目をしながら「はははありがとさん」と伝えて彼女を立たせる。
 そしてこちらの制服を真正面から見た彼女は「女の方ですか!」と驚いたように呟いた。



「私、雨宮 桜です、よろしくお願いします」
『伊達いおり、よろしゅう』



 自己紹介を終え、恭弥の方に集中する。アーデルハイトは鉄扇を使うのか。ふむ、優美なり。



「また校則違反だよ、武器の携帯が認められているのは基本的に僕といおりだけだ」



 聞き捨てならない言葉が聞こえてきた気がするが、知らん見とらん聞いとらん。
 すると不意に微かにアーデルハイトから死ぬ気の炎が見えた気がした。その瞬間彼女は靴の踵のヒールで恭弥の顔めがけて蹴りあげた。オーイ、さっきから思ってましたがパンチラ多くないですかー?
 ぶちっと飛んでいく恭弥の第一ボタンがこちらに飛んできて、雨宮さんがキャッチする。



『すまん、それ貸して』
「えっ」



 恭弥のものだしさっさと返さないとうるさいし。手を伸ばせば彼女は渋々と言ったようにこちらにボタンを渡した。そして再び二人がトンファーと鉄扇をぶつけ合おうとしたとき、間に沢田が入ってきた。



「うっ、あ…が…う…げ……」



 倒れ込んだ沢田にさすがに同情した。



.

128:ぜんざい◆A.:2017/01/03(火) 12:45 ID:cek


「なにしてんの? 君」



 間に割り込んで訳のわからぬまま倒れた沢田を見下ろして恭弥が呟く。アーデルハイトは「今のをくらって平気なのか!?」と驚いていた。いや、ゴキャッつってたから痛かったんじゃね? 沢田はただ慣れただけで。嫌な慣れやな。
 そこでリボーン登場。沢田がリボーンくんにたいして「リ、リボーン! なにすんだよ!」と怒鳴るが、リボーンくんは聞き入れるつもりはないようで、「無意味な抗争を防ぐのはボスとして当然だぞ」と当たり前のように言い放った。……無意味な抗争? ボスとして? ……嫌な予感するわぁ。
 どうやら転入生sはシモンファミリーと言う、ボンゴレのボス継承式に招待されたマフィアらしい。……ボンゴレボス継承式? ……ますます嫌な予感が。
 シモンファミリーはボンゴレと深い交流があり、その時代はl世(プリーモ)の時代まで遡るようだ。今では目立たない超弱小ファミリーだとか。……リボーンくん、そんなはっきり言ってやるなよ。

 ……それよりも。継承式のことだ。そっちの方が大事だ重要だ大問題やろが。
 リボーンはそんな心理を裏切って淡々と告げていく。



「七日後にここ日本で行われるボンゴレ継承式は、ツナが正式な10代目ボスになる、空前絶後の式典だ」



 そのとたん他の守護者から歓声が上がった。もちろん笹川山本獄寺である。だがふと笹川が疑問を口にした。



「だが同じ10代目候補のヴァリアーのXANXUSを倒した時点で沢田は10代目決定したのではないのか?」



 それをリボーンは「極限にわかってねーな了平は」と返す。え、リボーンくん今笹川のことめっちゃバカにせんかった?



「ボス候補であることと正式にボスになることでは天と地ほどの差があるぞ。
ボンゴレのボスの座につくということは、全世界の強大なボンゴレマフィアの指揮権を手に入れることだ。それはつまり、裏社会の支配者になることを意味する」
「ひいいっ、裏社会ー!?」



 ボス決定の沢田本人がビビっとるけどどうなんリボーンくん。こんなのに任して世界大丈夫なん?



「恐ろしく大いなる力を継承される式典なんだ。マフィア界全体が興味を示し注目している。この式典にはボンゴレの重鎮たちはもちろん次期ボンゴレボスの顔を見ようと招待された全世界の強豪マフィアが海を渡りこの日本へやって来るぞ」
「なんか怖いことになってんじゃん!! じょ、冗談じゃないよーー!」



 さすがに沢田に同意やわ。そんなめんどくさい世界に幹部として放り出されるとか絶対嫌やわ。



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129:ぜんざい◆A.:2017/01/03(火) 14:55 ID:cek



 そこで屋上に「オイコラー! お前たち何をやっとるか!」と空気を読まないキチガイな先生の声が響きわたる。リボーンは静止も聞かず「んじゃあとでな」と飛び去り、みんなが教室へ戻り始めた。
 もう屋上に残っているのは恭弥とこっちとアーデルハイトと雨宮さんだけやし。
 いまだ睨み合いを続ける委員長二人に『ほら、そろそろ戻んで』と声を掛ける。やって置いてくと恭弥うっさいもん。
 屋上に居るからかばさばさとボロ布がはためいた。今日風強いな。
 だがしかし、聞き入れるつもりの無いような二人は「咬み殺す」「粛として清まりなさい!」と声を発してどつき合いを執行した。お前ら戦うん好きやな。……それにしてもアーデルハイトの粛として清まりなさい、アーデさんと似とるわ……。

 すると低い位置からボロ布が引っ張られて視線を向ければキラキラした目でこちらを見てくる雨宮さん。ん? かわええな、何? 襲ってくれって? え、かまへんよ?
 脳内がゆりっゆりに輝くのを知らず、雨宮さんは声を張り上げた。



「ファンです! サインください!!」
『……ん?』
「白玉様ですよね!? あのニヤ動の! ニヤ動リスナーで知らない人はいないです! さっきのめんどくさそうな声でわかりました! 握手してください!」
『!?』



 ぴしりと固まる。そして委員長二人の方を見ると片方は不思議そうに、片方は震えている。目の前の美少女は上目遣いに目をきらきら。……堪忍して……。



『……いや、こっちは白玉「え、白玉さん?」違う……う?』



 名前の聞こえた方を見るといかにも感動でうち震えてますって感じのアーデルハイト。若干目がうるんでるのは気のせいか?



「アーデよ、昨日ぶりね」
『……ワオ……』



 ……恭弥くん、今こっち超泣きたいすわ。思わず彼の口癖が飛び出た。
 遠い目をしながら恭弥に助けを求めれば、なぜか知らないがむすっと顔を歪めて腕組んで睨んで来ました。はやく済ませて僕のところに来いと告げてるようですはいはやく済ませます。
 雨宮さんと有り難く握手して、どこから出したかわからないサイン色紙にサインペンでサイン書く。アーデと分かったからとてもアーデルハイトと話しやすい。



『昨日ぶりやな。声似とったけどまさか本人やとは』
「ホントね、応接室にいたとは思わなかったわ。ボロ布被ってたからまさかとは思っていたけど」
『またコラボしょーな、昨日ホンマ楽しかったわ』
「ええ」
『またな』



 彼女らに手を気持ち軽く振って恭弥のもとにいくと早速昨日と同じようにボロ布引き剥がされた。なんなん恭弥、きみ引き剥がすん大好きやん。



「背負って。疲れた」
『はいはい。そのボロ布もっとってや』
「被る」



 よいしょ、と恭弥を背負って歩き出す。後ろでぱさ、と聞こえてから恭弥が頭からボロ布を被ったのだろう。
 驚く粛清委員長と雨宮さんに去り際手を振ればぎゅっと恭弥に首を絞められた。はいはい関わるなってことか。苦しいちゅーねん。



「きみ、有名なの?」
『……ちょっとだけな。小学生の頃から歌ってみたり生放送してみたりしとって。知らん間に有名なっとってん……』
「……白玉で?」
『ん』
「へえ」



.

130:ぜんざい◆A.:2017/01/03(火) 15:37 ID:cek



 あれから数日。すでに連休に突入したのだが、誰かからからスマホに連絡が入った。



『……もしもし』
<伊達か!?>
『……せやけど、獄寺か? なんでこっちの番号知っと<うるせえ黙って聞け。……山本が何者かにやられた、今緊急手術を受けてる。現場は野球部の部室だ。……雲雀にも伝えろ!!>ブチッ……一方的ぃ』



 なんで彼がこちらの番号を知ってんねんリボーンくんか? リボーンくんなんか!? いやそもそも。応接室でなんでスマホなんか持ってるんだって話ですよね。クラフィおもろいです。そもそもなんで休日も応接室おるんこっち。あ。ほら恭弥がこっちに来てます。キレてます。



「なにスマホ持ってきてるの? 不要物だよね。まあ許してあげるからくちび『ま、待て待て恭弥』……なに」
『一大事や。山本がやられたらしい。しかも野球部の部室でや。血の海らしいで。はよ行こ』



 がっとこちらの顔を覗き込む恭弥に慌てて用件を伝えれば「……へえ、僕の見てないところでなにしてくれてんの」とご立腹だ。よかった。いやよくないけど。
 さあさっさと行こうそして恭弥よ忘れるのださっさと忘れろふぐっ。



「…っは……。今回も貰ったし、行こうか、その部室」
『……おまえな、理由付けてソレはあかんやろ。……受けか? 受けなんかお前は……』
「うるさい口は塞ぐよ」
『もうええわぼけ』



**

 その晩、家の固定電話に連絡が入った。誰だよ。



『もしもし』
<俺だ、リボーンだ>
『え、リボーンくん?』



 リボーンくんの名前が出た瞬間風くんの肩かびくりと震え、飲んでいた茶を吹いた。あーあ、後で掃除せんと。



『で、なん?』
<伊達、明日ボンゴレの継承式を開く。犯人の狙いはボンゴレの至宝らしいからな。犯人は明日絶対現れる、伊達も守護者として来てくれ>
『え』
<雲雀が迎えにいくから準備してろよ>
『は』



 出なあかんのかい……。


__

 クラフィ様のタイトルを出させていただきました。最近ランクが100越えし、織田信長やゼウスなど超ウィザードクリア出来てホクホクです。
 クラフィ最高。



.

131:ぜんざい◆A.:2017/01/03(火) 16:05 ID:cek



 翌日、朝起きたらスーツが届いていました。とりあえずそれにさささっと着替えて朝食を取る。



「今日は継承式ですね」
『せやな』
「私は招待されてないので行けませんが、犯人を逃がしては行けませんよ」
『おん。……もしかしたら怪我するかもな』
「なら修行が足りなかったと言うことで時間を増やしましょう」
『決定やな』



**



 恭弥と共に継承式会場へとやって来ました。やはり二人とも黒のスーツです。え、下はスカートかって? 馬鹿野郎ズボンに決まってんだろ。
 会場ってさ、城をひとつ貸し切りにするもんなの? え、しちゃうもんなの?
 失礼ながら今日もボロ布を被っております。あ、シモンと一緒にいるボンゴレsを発見。



「珍しく自分達から来たぞ」
「ヒバリさん! 伊達さん!」
「……並盛中学(うち)の校内で並盛中学(うち)の生徒が傷つけられたんだ、犯人は咬み殺す」
『こっちは超不本意な』



 笹川の「これでボンゴレの守護者が全員揃ったな! 奴等は極限に頼りになる二人だ!」という声にたいして沢田がはいっ! と返していた。……君らこっちのことそんな強いと思ってへんくせに。



「さあ継承式に乗り込むぞ」



**



 継承はボンゴレI世の血の入った『罪』と言う小瓶が渡されれば完了する。血とかえげつい。
 さあボスの座が沢田綱吉へと継承されるぞ、と言うところで至るところから爆発が起きた。これは、煙幕か。
 目と耳が効かない。不利な状態でヴァリアーのこっちが未来で蹴り飛ばしてしまった銀髪ロング__スクアーロが「9代目は守護者に任せて大丈夫そうだなぁ!!」と怒鳴り、またあるところではキャバッローネのボスとして来ていた兄貴(ディーノ)が「来賓を守るぞ! ロマーリオ!」と動き出す。

 9代目の守護者が「金庫が破られている!」とひとつ叫んだ。どうやらみんなの前で継承しようとしていた『罪』は偽物で、本物は金庫に保管していたようだ。……盗られたか。
 すると、奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「七属性の炎で守るなど『罪』の場所を教えているようなもの」



 そうして姿を表したのは、シモンファミリーの面々だった。



.

132:ぜんざい◆A.:2017/01/03(火) 16:26 ID:cek



 どうやら『罪』の中の血は、初代シモンファミリーのボスのものらしい。彼らがボンゴレに復讐するには『罪』が必要だったようだ。なぜそんなものがボンゴレの家宝なのか知らないが、こっちは話を聞かずに恭弥を背中に隠した。……何かがざわめいて仕方がない。気持ち悪い目が回る。
 雨宮さんの視線は、相変わらず恭弥に対しては熱くて、甘く蕩けるようなものだが、こっちに対しては先日の尊敬の念は無く、突き刺さるように鋭い。いみわからん。



「! ……いおり」
『……なんか、嫌な予感がすんねん』



 後ろ手に彼の手を握った。


 不意に体の奥のざわめきが強くなってシモンを見れば爆風がこちらを襲った。だがそれは獄寺の瓜の能力SISTEMA・C・A・Iで防御。彼らは己の填めるシモンリングを語る。
 大空の七属性に対をなす、大地の七属性だと。

 彼らはシモンの誇りを取り戻すためにボンゴレに復讐を望むらしい。……少し捻れているようにも思えるが。
 額に炎を灯した沢田が静かにシモンのボス、古里炎真に告げる。



「お前たちは、間違ってる。お前たちの辛い過去も、怒りの訳もわかった」



 シモンファミリーは訳あってマフィア界からさげすまれていたらしい。ひどい迫害を受け、みんな家族を失ったと聞く。そりゃそれがボンゴレのせいならキレるわな。



「だが、人を傷付けることは、誇りを取り戻すことじゃない!」



 衝撃で沢田を後ろから見つめた。彼はハイパー死ぬ気モードになると、性格が強気に変わる。話し方だってそうだ、普段はおどおどしてはっきり物事を告げられないのに。この状態になると核心をつく言葉を放つ。
 だが古里は聞き入れる気もないらしく、「アーデルハイト、さがっていて。僕一人で充分だ、ツナ君と守護者を潰すのは」と冷たく告げた。
 それにたいしてこちらは武器を構える。今日は斧ではなく棍棒だ。
 古里が手を不意にかざす。すると笹川と獄寺が左右に引っ張られるように壁に激突し、次は恭弥とクローム髑髏が天井に叩きつけられた。……彼は、重力を操るのか。
 不意に体が後ろに引っ張られる。やべ。



『……っぶね』



 自分から後ろへ飛び、壁に足を着地させて怪我は防いだ。びりびりと押さえつけられるような感覚だ。



「……彼女は、強いの? アーデルハイト」
「実力はボンゴレも見れていない。未知数よ」
『っ(誰が未知数やねん)』



.

133:ぜんざい◆A.:2017/01/03(火) 17:05 ID:cek


「ツナくん、信じかけてたんだよ」

 古里が沢田にそういった瞬間、体は再び注を浮いて、「やめろ!」という沢田の怒鳴りと共に他の四人とぶつけられる。
 ゴッと大きな音がしてこっちも含めて五人が地面に倒れ込んだ。

「みんな!」
「なぜ君にだけ攻撃してないかわかる? ツナくんには初代シモンがプリーモに受けた苦しみをしっかり味わって欲しいんだ」
「……! エンマ!」

 その声と共に素早くみんなが立ち上がる。それはこっちも例外じゃなくて、恭弥の隣ですくっと立ち上がった。だが、直ぐ様重力で叩き付けられてしまう。ぶちっと何かが切れる音がして、暑いものが右の額から流れる。くそ、血ぃ出た。
 そのままもっと強い重力で地面に押さえつけられる。骨が軋む、頭いたい。指でバキッと音が響く。9代目の守護者の人が「ボンゴレリングが!」と叫んでいたのでリングが割れたのか。すんませんアイザックさん指輪割れました。
 それは沢田が古里に攻撃を仕掛けるまで続き、目を閉じる。頭痛い。気が付けば古里たちシモンファミリーは立ち去ろうとしていた。

「クロームちゃんも連れてくよ、デートする約束してるからねーん♪」

 シモンの一人が意識を失ったクロームを横抱きにしながらそう呟く。すると、雨宮さんが「じゃあ私雲雀さん連れてく!」とこちらに駆け寄ってきた。……は? 恭弥連れてく? ……ふざけてんの? 今の発言で雨宮さんが恭弥に恋情を抱いているのが確信出来た。……無理。こっちはゆらりと立ち上がって、彼女を見据える。もっとボロ布になったそれをばさりと脱ぎ去って、睨む。

「へぇ、まだ立てるの?」
『……あー……それより君のが不快や。っざいし鬱陶しい。恭弥連れてく? は? ざけとん? 調子乗っとん? なあ? なあ? なあ!? なんとか言えやそこのカスが。なあおい』
「重傷負ってる癖に? よき私にそんなことが……キャッ!」

 あくどい笑みを浮かべてこちらに近寄ってきた彼女の足首に足払いを仕掛け、倒す。そこから彼女の胸辺りを左足でダンッと踏みつける。そのまま前のめりに左肘を太ももに起き、彼女の苦しむ様を見た。

「かはっ、あっ」
『黙れやクソみてぇな雌豚、あばら貫くぞ』
「あ゙っ、ひぐっ」

 足に力を入れればミシミシと軋む彼女のあばら。目に涙を浮かべ始めた彼女に額に青筋が浮かんだ気がした。

「やっ、かふっ、」
『なんや、お涙頂戴か? ざっけんなや雌豚ぁ。許しいほしいんやったら喉笛でも腹でも斬って死んで詫びるか、この場で全裸になって泣いて土下座して謝罪せえや。泣くくらいやったら靴でも何でも舐めて許しを請えよ。それかひたすら骨を折られた後に惨めに息絶えろ、なぁ、さっさと泣き喚く様を見せぇよ、泣けよ、おい聞いとんのかほらなんとか言えやおい!』

 再び足をあげて、高いところからふりおろすと、小さくバキッと音が聞こえる、それがこちらに刺激を与えたのか、自然と口角が釣り上がる。それと同時に「桜っ!」と言う古里の焦った声。途端こちらは地面に叩き付けられた。あまりの恐怖で意識を飛ばした彼女を古里が重力で引き寄せ、こちらを睨んで去っていく。押さえつけのなくなった体を起こして周りを見渡す。
 ディーノが、やって来た。

「キレたな」
『黙れや』

 その後すぐに人が部屋に入ってくる。

「おいしっかりしろ!」
「タンカを急げ!」
「怪我人多数だ!」

 そんな中、ディーノはこちらを連れて恭弥に駆け寄った。

「恭弥! 大丈夫か!?」
「寄らないで」

 恭弥はそのまま立ち上がり、「平気だよ」と血が流れる顔を見せてそういった。続けて憎々しげに微かに歯を食い縛りながら告げる。

「プライド以外はね」

.

134:ぜんざい◆A.:2017/01/04(水) 10:07 ID:cek


 他の守護者も次々と来賓の方に助けてもらって起こされていた。その中で沢田が「……エンマ……手も足も出なかった」と呟く。
 それは他の守護者の脳内に響き、例外でもなくこっちも歯を食い縛った。
 それより、クロームが拐われてしまった。というかこっちがキレてしまった。もう何年もキレてなかったのに、なんてことだ。
 クロームが拐われたその時、意識を失っていたらしい獄寺と笹川は「マジスか!?」「何処へ行った!」と声をあげる。
 そんな彼らを放り、こっちは恭弥向かって一直線に歩き出した。



『恭弥』
「……いおり、肩貸して」
『ほら』



 がしっと恭弥の腕を掴んで肩を貸せば割れた額からぱたぱたと血が垂れてくる。そんなものに興味がないかのように前を向いて、怒鳴り合いをしていた9代目とスクアーロを眺めた。
 それに割り込んでリボーンが告げる。



「悪いニュースはそれだけじゃねえ。
エンマによって大空の七属性では最高位を持つボンゴレの至宝、ボンゴレリングがぶっ壊された」



 9代目の守護者の抱える台には壊されたボンゴレリングが綺麗に並べられていた。ばらばらになってしまったそれを見て目を逸らす。無惨な姿に初代に土下座でもしたい気持ちだった。

 もうリングはないのか……と残骸と化したそれを眺めていれば、「まだ光は消えとらんぞ」としわがれた爺の声が辺りに響く。奥から姿を現したのは、目隠しをしたお爺さんだった。……モヒカン?
 9代目がじじ様と言っていたので相当歳を召した方だろう。リボーン曰く彼は彫金師タルボと言い、ボンゴレにつかえる最古の人らしい。何でも初代の時代からつかえているとか。彫金師とは金属を加工しアクセサリーを作る職人のことで、彼は相当な腕を持つようだ。すげー。

 彼はボンゴレリングの前にたつと耳を傾け「おーイタタ」とリングに話し掛けた。彫金師タルボ曰く、優れたリングには魂が宿り、魂があれば感じることもあるとのこと。彼はその声を聞いてリングを作るのを生業としていると告げた。
 実際リングは生まれ変わりたがっていると言っているしそうなのだろう。ボンゴレリングはまだ、死んでいない。彼が言うにガワが壊れただけのようだ。



「ボンゴレリングは次の可能性を示しておるぞ」
「次の可能性……?」
「つまりまだボンゴレリングには、修復できる見込みがあると言うことですな!!」
「そうなるのう」



 修復できる、それを聞いて心がホッとして気付く。感じていた胸のざわめきは、リングが壊れる事だったのかと。彼は言う、修復と共にVer.アップをすると。



「お前たちは獣のリングを持っているようじゃの、わしに見せてくれんか」
「ケモノ……? アニマルリングのことですか?」
「そうじゃ、見せてみい」



 こっちたちは各々のアニマルリングを彼に渡した。タルボは「こやつらの魂も必要じゃ」とVer.アップに必須だと告げる。彼は「もちろん奴のアレも必須じゃがな」と自分の羽織っていたローブを広げ、現れた材料の多さに目を向く。そして彼がその中から取り出したのは赤い液体の入った瓶。そして、とんでもない言葉を放った。



「ボンゴレI世の血、“罰”じゃ」



 何で彼がそんなものを持っているのか知らないが、リングを作り直して貰えるらしい。罪と罰、本で読んだことのある気がしたが、内容は忘れてしまった。
 彼は告げる。リングの製造に成功すればボンゴレリングは今までにない力を手に入れる。ただ、失敗すればボンゴレリングの魂を失い、もう二度と輝くことはないだろうと聞かされた。確率は五分五分。こっちたちは全員それを肯定した。恭弥も無言ではあるもののリングには愛着を持っていたから修復できるのならそれがいい。
 どうするかは沢田に委ねられた。



「Ver.アップを、お願いします!!」



.

135:ぜんざい◆A.:2017/01/04(水) 17:09 ID:cek



 こっちらは体を休めるため、9代目に用意してもらった部屋で休息を取っていた。
 恭弥があいつらとは別の部屋がいいと沢田たちのいる部屋の隣を陣取った。それについていくように部屋へ入る。怪我は手当てしてもらった。額には包帯が巻かれている。ちなみに腕と腹の火傷も見られ、「これはひどい! もっとちゃんと包帯を巻かねば!」と巻き直された。緩んでたしいっか。それと、ボロ布はもう再起不能、家に帰ったら予備を被ろう。

 無言でソファに座って天井を眺める。恭弥も好きなところ(と言うか窓際の椅子)に腰をかけ、無表情で外を眺めていた。不意に、恭弥が口を開く。こっちの肩が揺れた気がした。



「……ねえ」
『なん』
「きみ、跳ね馬が言ってたように、キレたの、あれ」
『雨宮踏みつけた時んことか』
「そう」
『キレたな、数年ぶりに』
「……なんで」
『恭弥を連れてくとか言うたから』
「……」
『思ってるより、こっち君のこと好きやわ』



 ぼー、と天井を眺めながらそう告げれば、照れ臭そうな声で「あっそ」と短く彼の声が飛んでくる。そしてふと気づいた。



『……まだちゃんと言うとらんな』
「…そうだね」
『……恭弥、好きやで』
「…僕も、好きだよ、いおり」



 本格的に照れ臭くなって天井から恭弥とは反対方向へ顔を向けた。恭弥も恭弥で顔を背けたまま、指先で肘おきをタン、タン、とついている。そして恭弥はおもむろに口を開いた。



「僕は、もっと強くなるよ。君に守られる側は、もう飽きた。今度は守られる側じゃなくて、守る側に立ちたい」
『……ん』
「ところで、沢田たちは君たちの実力を知らないよね」
『……絶対弱い思われとるやんな』
「見返せばいいよ」
『ん』



 そこで扉が開かれ、台の上に二つの手に収まる程度の小振りな岩が乗せられ、台車で姿を見せた。これが、新しいリング?



『……失敗したん?』



 持ってきた付き人にそれを聞けば彼は首を左右に振って、これに死ぬ気の炎を込めてくださいと恭弥とはこっちに告げる。……なるほど、失敗するかしないかはこっちらの炎の大きさに懸かっとるわけか。
 付き人がリングの岩を置いていったあと、それぞれが自分のものだと思われるソレを手に持ち、炎を灯す。
 炎の大きさとは、覚悟の大きさだ。
 ……こっちの覚悟は、せやな……死なへんことやな。死んでしまうと覚悟どころか全てを失うし、やりたいこともできない。
 そんな想いで岩を片手に炎を灯せば、一面が同時に、紅(ルージュ)と紫(バイオレット)の二つの色で覆われる。恭弥のタイミングと被ったようだ。ぴしぴしと岩に亀裂が入って、次の瞬間に岩はとある体の一部位めがけて飛んだ。
 首に巻き付いたソレは、堅い金属質の細長い物体になった。
 【夕焼のチョーカー Ver.X(イクス)】である。



『……チョーカー……』



 首もとをこの部屋の鏡で覗けば首の右に丸いガラスのような宝石のようなものにボンゴレ10代目を指すXが象られたボンゴレの紋様、その回りには小さな羽が羽ばたき、小鳥が端に止まっていた。小さな鎖がちゃらりと音を鳴らす。恭弥は雲のブレスレットのようで、ハリネズミが象られていた。突き出た刺が痛そうだが、綺麗なものだ。
 名前はVG(ボンゴレギア)と言うらしい。リングではなくなったが、これが今あるべき姿と気に止めない。



「行くよ」
『なんで』
「彼らが部屋に来る前に」
『……せやな』



 沢田たちが部屋へ突入してきた直前に、こっちと恭弥は窓から外へ出た。庭を徘徊して、声が聞こえる部屋を外から盗聴する。



「シモンファミリーの討伐は、ボンゴレX世(デーチモ)とその守護者とする。ただし、リボーンも同行すること。直に船の用意だ!」



 9代目の声が窓の外まで聞こえてくる。なるほど、島か。と納得してその場を二人で離れる。草壁にヘリで送ってもらおうと恭弥を見れば、既に携帯で連絡していた。



『はやっ』



.

136:ぜんざい◆A.:2017/01/04(水) 17:42 ID:cek



 翌日、朝起きて風くんに事情を話す。昨日は家に帰って笑顔で寄ってきた風くんはこっちの額に巻かれた包帯と着替えてある服、そして腕に抱える再起不能になったボロ布を見てとびかかって来ましたから。どう? 天才的? 暴力的? ……どっちでもエエな、うん。昨日は気絶して話せなかったことを自白した。……別になんも悪いことしとらんねんけど。

 風くんはふむふむと頷き、長考してぱっと顔をあげた。



「……今回は、私もついていきます」
『!? リボーンくん居るで!?』
「もう大丈夫です。なので今回は行きます」
『でも9代目から指示』
「私には関係ありません。あなたは最近怪我ばかりです! 一体どれだけ心配させれば済むのですか!」
『うぃっす』
「意地でも行きます」
『なら一緒にいこか』



 そんなこんなで風くんを頭にのせて家を出た。もちろんおニューのボロ布被ってます。その上で上機嫌に鎮座している風くん。可愛すぎか。玄関横の鏡を見て鼻血を噴出したのは言うまでもない。……あーあ、新しいボロ布が、早速赤く汚れた。



「なんでいるの!」



 学校の屋上にて。なんで屋上にヘリポートが出来上がってんねんとか唖然としていたら、びっとこっちの頭の上を指差しながら声をあげる恭弥。視線的に風くんのことを言っている様子。
 こっちは彼に向かって『やから言うたやろ、近い未来会うて』と告げる。風くんは風くんで恭弥を見てにこにこ。そのまま彼の頭の上にすたんと移動し居座る。身軽やなー。



「……なんでいるの」
『風くんか?』
「それ以外に何があるの」
『なんや最近怪我多いって怒られてな。今回は意地でも行く言うて』
「……今回?」
『風くんな、こっt「私はいおりさんの家に居候させて頂いていますからね、毎回毎回大切な人が怪我だらけじゃ心配でしょう?」』
「……もう知らない」



 少し疲れたような顔をした彼は風くんを頭に乗っけたままヘリに乗り込んだ。恭弥も疲れる時は疲れんねんな……なんて意外に思った瞬間である。草壁くんが微笑んでいた。……きみホンマにこっちらより一個年下なん? お父さんみたいな雰囲気ばら蒔いとるけど。



.

137:ぜんざい◆A.:2017/01/04(水) 18:30 ID:cek




 翌日、朝起きて風くんに事情を話す。昨日は家に帰って笑顔で寄ってきた風くんはこっちの額に巻かれた包帯と着替えてある服、そして腕に抱える再起不能になったボロ布を見てとびかかって来ましたから。どう? 天才的? 暴力的? ……どっちでもエエな、うん。昨日は気絶して話せなかったことを自白した。……別になんも悪いことしとらんねんけど。

 風くんはふむふむと頷き、長考してぱっと顔をあげた。



「……今回は、私もついていきます」
『!? リボーンくん居るで!?』
「もう大丈夫です。なので今回は行きます」
『でも9代目から指示』
「私には関係ありません。あなたは最近怪我ばかりです! 一体どれだけ心配させれば済むのですか!」
『うぃっす』
「意地でも行きます」
『なら一緒にいこか』



 そんなこんなで風くんを頭にのせて家を出た。もちろんおニューのボロ布被ってます。その上で上機嫌に鎮座している風くん。可愛すぎか。玄関横の鏡を見て鼻血を噴出したのは言うまでもない。……あーあ、新しいボロ布が、早速赤く汚れた。



「なんでいるの!」



 学校の屋上にて。なんで屋上にヘリポートが出来上がってんねんとか唖然としていたら、びっとこっちの頭の上を指差しながら声をあげる恭弥。視線的に風くんのことを言っている様子。
 こっちは彼に向かって『やから言うたやろ、近い未来会うて』と告げる。風くんは風くんで恭弥を見てにこにこ。そのまま彼の頭の上にすたんと移動し居座る。身軽やなー。



「……なんでいるの」
『風くんか?』
「それ以外に何があるの」
『なんや最近怪我多いって怒られてな。今回は意地でも行く言うて』
「……今回?」
『風くんな、こっt「私はいおりさんの家に居候させて頂いていますからね、毎回毎回大切な人が怪我だらけじゃ心配でしょう?」』
「……もう知らない」



 少し疲れたような顔をした彼は風くんを頭に乗っけたままヘリに乗り込んだ。恭弥も疲れる時は疲れんねんな……なんて意外に思った瞬間である。草壁くんが微笑んでいた。……きみホンマにこっちらより一個年下なん? お父さんみたいな雰囲気ばら蒔いとるけど。



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138:ぜんざい◆A.:2017/01/04(水) 18:30 ID:cek

同じものを2つ投稿してしまいました。気にしないでください。

139:ぜんざい◆A.:2017/01/04(水) 22:19 ID:cek



 現在、風くんを抱えてヘリに乗ってます。運転は草壁、ほんまに君中学生なん?
 しばらくヘリに揺られれば、島が見えてきた。そこの山に沢田たちを発見する。気付いたこっちが恭弥を見れば、彼は既に草壁に指示を出していて、こちらを一度見てから扉を開ける。



「ご武運を祈ります」



 草壁のそんな言葉に「うん」『おん』と返して、風くんを抱え直す。恭弥はヘリの引っ掻けに足をカン、と音を鳴らしながら乗せ、下を若干笑顔で見下ろす。こっちはその横で片手で風くんを抱えながら恭弥と同じような態勢で驚く沢田たちを眺めた。ヒバードはこっちと恭弥を交互に見ていたので『恭弥に付いたって』と笑えば了解と言うように恭弥の横でぱたぱたと羽を羽ばたかせる。飛び降りた恭弥についていくヒバードをほほえましく見てから「風くん、リーチちゃんと抱えときや」と忠告し「はい」と返事が返ってきたのに頷き、遅れてこっちも飛び降りた。スカートの中が見えるとかそんなんいっそ関係無い。
 すたん、と地面に着地してヘリが去っていくのを背中で感じながら始まっていたアーデルハイトの言葉に耳を傾けた。後ろのリボーンがなぜ風が居るのかと言いたげな視線を送ってくれていますが。
 ……ありゃ、アーデルハイトの背中にしがみつくように立っているのは雨宮やないか。怯えたようにびくりと大袈裟に肩を揺らし、助けを求めるかのように敵である恭弥に視線を送る。どこの嫌われ系夢小説の悪女やねん。まあ案の定雨宮は恭弥に絶対零度の視線を浴びせられていましたが。



「勝負しろ雲雀恭弥」
「いい」



 アーデルハイトからの挑戦を一蹴したように思えた恭弥はその最中でも雨宮に鬱陶しいからこちらを見るなオーラを撒き散らしながら言い放つ。



「以前の屋上での戦いで君と言う獣の牙の大きさは見切った。君じゃ僕を咬み殺せない」
「何!!」



 あーあ。何を相手の神経を逆撫でするようなこと言うてんねん。呆れた顔して改めてアーデルハイトを眺める。……あの、そのですね、制服の前を開けるのは構わんのですけど、惜しげもなく胸を晒すんはやめてくれへんかな、心のカメラのシャッター音が鳴り止まんのですわ。そんなことを考えていれば腕に抱えていた風くんから呆れた視線をいただいた。なんやねん。



「まあだけど」



 そう呟いてジッとアーデルハイトを観察する恭弥。……思うんやけど恭弥って変態なん? 時々そんなオーラ発するんやけど。あれか? 恭弥も年頃なんか? やっぱし健全な(年齢的には高校生やけど)中学生やったん? まあ別にどんな恭弥でも愛でることには変わらへんねんけどな。



「僕の欲求不満のはけ口には丁度いい肉の塊だ」
「貴様……!! 未だシモンの恐ろしさをわかっていないようだな。勝負だ、ルールは互いの誇りによって決定する」



 そう告げてちゃっと大振りな刃物を構えたアーデルハイトは己の誇りを言い放つ。



「私の誇りは__【炎真率いるシモンファミリー】と、【粛清の志】!!」



 言うと思った。恭弥はそれをなんでもないようにスルーして「誇りでルールを決めるのかい? 変わってるね」と茶化す。
 途端、向かい風が勢いよく吹いて、髪の毛が舞い上がった。



「誇りなんて考えたことないけど……答えるのは難しくない。
【並盛中学の風紀】と【それを乱す者への鉄槌】」



 言うと思った。フード部分のボロ布を被ってその言葉を聞いてしみじみ実感する。だが彼はちらりとこちらを見て口角をあげて続けた。……なんでこっち見たん……。



「それと【伊達いおり】」



.

140:ぜんざい◆A.:2017/01/05(木) 14:33 ID:cek



 その言葉に一同が固まる。唯一真っ先に動けたのは風くんで、こっちの腕の中で「何を言ってるんですか!!?」と某魔法先生主人公の様に眉間に皺を寄せ笑いながらツッコミを入れた。対する雨宮は絶句。



「雲雀は伊達にベタ惚れか」
「リボーン! なにを縁起でもないことを!」
『風くん今日ちょっとテンションおかしいな』
「あ、あの群れるのが嫌いなヒバリさんが……!」
「恐ろしいっすね……」
『沢田くんらにとっての恭弥ってなんなん』



 釈然としない様子でこっちは前に向き直り、「やはりな……ならばルールは簡単だ」と告げるアーデルハイトに何がやはりやねんと内心ツッコミを入れた。
 どうやら腕章没収戦をするらしく、文字通りお互いの腕章を先に奪った方が勝ちだ。アーデルハイトは付いてこいと崖から飛び降りスタンと着地する。どうやらそこが決戦の場らしい。
 恭弥は崖の方に近づいていき、その道中何やら顔が憔悴した沢田に声を掛ける。



「小動物、今の君の顔、つまらないな。
見てて、僕の戦い」



 沢田が「それって」と聞く前に恭弥はタン、と壁から飛び降りた。そこからロールを呼び出し、球針態でタンタンタンと足場を作り着地し、そして初めてVGを装着した。



「ロール、形態変化(カンビオ・フォルマ)」



 辺り一面が光輝き、恭弥の姿はいつもの学ランから改造長ランへと変化していた。背中には風紀と縫い付けてあり、やはり彼には風紀に対する並々ならぬ気迫があると改めて実感できる。いや、ヒバードの毛もリーゼンになるとは思わんかったわ、流石に。
 恭弥がVGを装着したあと、アーデルハイトが自ら滝に飛び込み、外部からの攻撃を一切遮断する氷の城、ダイヤモンドキャッスルを発動させヒッキーさせる。
 そこからでは腕章が取れないと思ったが、彼女は水を氷として操り、自分と同等の実力を持つ氷の人形を五百体出現させた。……五百体てしゃれになっとらんがな。名をブリザードロイドと言うらしい。厨二か。
 恭弥は襲いかかってきたブリザードロイドの攻撃をトンファーでいなし、そのあとVGによって頑丈になったトンファーの後ろから鋭利な鎖をじゃらりと垂らし、五体ほどを綺麗な切り口で切り刻む。鎖をトンファーに納めた恭弥はその綺麗な顔に凶悪な笑みを浮かべ、もう七体倒した。



「ブリザードロイドはあと493体、たとえ貴様と言えど体力と兵器が底をつく。私に辿り着くことなど絶対に不可能だ」



 こっちも恭弥も不可能? とぴくりと眉を寄せる。アーデルハイトはアホなんやろか。彼女は相手にしてしまった者の大きさを分かっていない。



「君は相手にしてしまった者の大きさをまだ気付いていないね。
僕の腕章を賭けてしまったことに、もっと覚悟を持った方がいい」



 恭弥の言葉にアーデルハイトが氷の中からなに? と眉を寄せた。



.

141:ぜんざい◆A.:2017/01/05(木) 15:06 ID:cek



「風紀の二文字は何があっても譲らないよ。
……でも、誇りだから譲らないんじゃない。“譲れないから、誇り”なのさ」



 恭弥のその言葉はアーデルハイトに、ではなくて、沢田に告げられたように思える。実際、沢田の顔色が少し変わった。恭弥はトンファーを構えてアーデルハイトに言葉を投げる。



「待ってなよ、すぐに咬み殺してあげる」



 その言葉にアーデルハイトが「出来るものならやってみろ!」と怒鳴り、いっせいにブリザードロイドが恭弥に飛びかかった。三体の攻撃を右のトンファーで受け止め、ヒバードをこちらに寄越してからトンファーで凪ぎ払った。ぽすんとこちらのぼろ布の上に座ったヒバード。
 恭弥は再びトンファーから伸びるチェーンでブリザードロイドを切り裂き、靴のそこから出てきた鋭利な針で一体の顔面に蹴りを入れて突き刺す。そのまま体を回転させ、顔を砕いてから他のブリザードロイドと衝突させる。その際空中に躍り出た彼はロールに球針態で一方向に針を伸ばさせて10体ほど一気に倒す。球針態をそのまま元のサイズに戻した恭弥は小さくなった球針態をプクプクと増殖させ、トンファーで撃ち込む。宙から放ったそれは外れることなく多くのブリザードロイドへ命中した。そのままダンッと着地する恭弥にアーデルハイトは目を見開いて息を飲み、雨宮はぽかんと口を開け、沢田は唖然、獄寺は「つ、強ぇ」と呟きリボーンくんが「加減しなくていい分伸び伸び戦っているようにすら見えるな」と観察する。
 その横で驚いて目を真ん丸にする風くんを抱きながら、こっちは布の奥から微かに口角をあげて恭弥を見つめていた。その最中でもブリザードロイドの数は減っていく。恭弥容赦なし。
 恐れを知らず背後からとびかかってくるブリザードロイドたちに手錠を投げ付け各部位を引きちぎった。



「ちっ、ひるむな!」
「ひーふーみー……ふあ〜ぁ、そろそろ頃合いかな」



 大きなあくびをかました恭弥は再びトンファーからチェーンを伸ばし、近くの三体を刻む。そこから雲の炎の増殖でチェーンを伸ばしていき、恭弥は周りの敵を自身が回転しながら倒していき、そして__



「……!」
「嘘ぉ……」
「ぜ」
「全滅!!」



 恭弥はそのあとダイアモンドキャッスルに攻撃を仕掛け始めた。だが、アーデルハイトも黙ってはいない。再びブリザードロイドを出現させた。



「いいよ別に。戦力にカウントしてないから」
「……なぜだ? 何故貴様ほどの男が、沢田綱吉などにつく」
「ついてなんかいないさ。もしもついていると言うのならば、一番の理由はいおりがいるからだろうね。
君こそもう一匹の小動物につく意味あるの?」
「……炎真は軟弱な小動物などではない、シモンの悲しみを背負う強い男だ」
「いいや小動物さ。背負うなんて不釣り合いなことしてるから悲鳴をあげている」
「!」
「くっ、確かに炎真は戦いを好みはしない! 炎真にとって仲間を失うことは何よりも辛いことだ!」



 アーデルハイトの言い分を聞くと、要するに炎真の為に戦ってると言いたいのか、彼女は、彼女たちは。ただ、それは古里炎真に責任を押し付けとる言うことを気付けたらエエのに。



「君はひとつ勘違いをしているよ」



 そんな彼女に恭弥は不敵に笑って見せた。



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142:ぜんざい◆A.:2017/01/05(木) 15:40 ID:cek



「小動物は時として弱いばかりの生き物ではない。でなくちゃ地球上の小動物はとっくに絶滅してるよ」



 そう告げて恭弥は球針態をトンファーでダイヤモンドキャッスル向けて撃ち込み、言葉を続ける。



「小動物には小動物の生き延び方があるのさ」



 その場の全員がはっとして動きを止めた。……そろそろこっちの出番やろか。風くんに目配せして腕から頭の上に移動してもらう。屈伸して伸びをして、ぱんっとボロ布を伸ばした。布の端は所々ほつれ、まんま切国のそれだ。
 何が言いたいと言葉を投げるアーデルハイトに恭弥は「たとえば」と手のひらに乗るロールを見せた。



「君の氷の城を破壊するのは僕のトンファーではなく、この小動物のロールなのさ」
「なに?」



 ……やから球針態ぶちこんどってんな。納得。ホンマに、恭弥は頭がよお回るわ。



「君の自慢のこの城は、外からのどんな炎攻撃でも弾くようだけど、内側からの攻撃に耐えられるのかな」



 そうしてぴしぴしとダイヤモンドキャッスルにひびが走る。氷の城のなかで球針態が大きくなっているのだ。ぼんっとなかで大きくなった球針態はダイヤモンドキャッスルを砕いてアーデルハイトを外に出させる。地に足をつけたアーデルハイトの頭に恭弥はトンファーを構え、「終わりだよ」と死刑宣告を告げた。


「だが炎真は必ずやシモンを復興させる。ボンゴレについたことを後悔することになるだろう」
「僕はどちらにもついていない。僕のやりたいようにやるだけだ」
「……まさに何者にもとらわれることのない浮き雲だな。結局ボンゴレ大空の雲の守護者というわけか…」
「その言われ方嫌いだな……」



 そう会話をした恭弥は「まあ…確かに」とヒバードが羽ばたく空を見上げた。



「空があると、雲は自由に浮いていられるけどね。
……でもいずれ、大空でさえ、咬み殺す」



 そう言葉を放った恭弥は、アーデルハイトの【粛清】とかかれた腕章を引きちぎって「とったよ」と呟き「いらない」とぽいと捨てた。かわいそうやろ、やめたりや。
 そこで、雨宮が「次は私ね!」とこっちを睨んだ。だが、獄寺が「まだヴィンディチェが来てねえ!」と反論する。だが。



「ヴィンディチェにはもう言ってあるわ、私とアーデルハイトはペアバトルなのよ」
『……意地かよ』
「来なさい伊達いおり、案内してあげる」



 そう言ってひゅっと観戦していた岩場から飛び降り、恭弥たちが戦っていたところから走って遠ざかり始めた。こっちもしぶしぶと言ったように崖から飛び降りようとした……でもその前に。



『……沢田』
「え、伊達先輩……?」
『見てろ』



 布の奥からそれだけ告げてぱっと後ろ向きに、背中から飛び降りた。ばさばさとボロ布がはためく。奥で風くんが「ぶちかましてきてください」と口パクで言っているような気がした。
 くるんと回転し、すたんと着地。そして雨宮のあとを追いかけた。辿りついたのは、海岸だった。不思議なことに地面が砂浜ではなく岩場で多少不安定。……ここか。



「ここよ」
『……』
「よくも私にあんな真似してくれたわね」
『黙れ』



 布の奥からギラついた視線を送れば少し震えた雨宮。だが、それも一瞬、「黙る筋合いは無いわ」と双剣を手にした。



「言っておくけど、私はアーデルハイトより強いの」
『うざいなこのキチガイ。とっとと誇り言えや、始まらんやろ』
「キチガイじゃないわよっ。……答えてあげる、私の誇りは【シモンファミリー】と、この【双剣】と、【この世界にいること】よ!」
『……』



 絶句してドン引きした目で一歩下がる。雨宮は「なんでドン引きなのよ!」とわめいた。るさいわボケ。ざざんと波が彼女とこっちの足を濡らす。



『いや、【この世界にいること】て……トリップでもしてきたんかい、アホらし』
「っ! どうせあなたもトリップでしょ!」
『いやトリップってなんやねん。どこの夢小説やっちゅー話やねん』
「……(この子、本当にトリップしてないの? ならなんで夕焼の守護者なんて原作になかった指輪を持って雲雀さんの彼女なんかしてんの!? 本来私が雲雀さんの彼女になるはずだったのに!)」



 訳もわからずこっちをぎりぎりと睨んでくる彼女に溜め息を吐いてにや、と不敵に笑って見せた。



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143:ぜんざい◆A.:2017/01/05(木) 23:52 ID:cek


『……こっちの誇り、言うてへんな』
「そうね、さっさと言いなさいよ。早くしたいんでしょ?」
『……こっちの誇りは【絵の才能に恵まれたこと】と【雲雀恭弥の隣におること】や』



 棍棒をびゅびゅんと手で回し、カンッと岩場に立てる。彼女はこっちの誇りを聞いたとき、いや、正確には恭弥の名前が出たときに目を吊り上げた。まあ吊り上げるだけで何もしてきて無いんやけど。



「伊達も雲雀にべた惚れか」
「当たり前でしょ、なんだと思ってたの赤ん坊」
「(他人のことでこんな自信満々なヒバリさん見たことないや……)」
「初耳ですよ雲雀恭弥! 私は認めませんからね!」
「風、お前どうしたんだ? さっきから伊達の親父みてえだぞ。それと、後でなんで伊達と来たのか、知り合いだったのか聞くからな」
「構いません、その代わりさっきの私がいおりさんの親父等と言う発言を取り消しなさい。まったく、何を言い出すのやら」
「……伊達のやつ、絵の才能に恵まれたとか言ってたけど……どうなんスかねぇ、10代目」
「いおりは絵が上手いよ、応接室に飾ってある校舎の絵、アレ、いおりが描いたやつだからね」
「えっ!? あの額縁に飾ってあるやつですか!? しゃ、写真じゃなかったんだ……」
「……マジかよ」
「確かにいおりさんびっくりするぐらい絵がお上手ですよね」
「(さっきから風のやつ、伊達のことになると喋り出すな……一体どうしちまったんだ?)」
『おまえらうるさいわ、黙れ』



 喧しい、むしろ女は三人も集まって無いのになぜか姦しい外野を一喝し、睨み付けてくる雨宮を蔑んだ目で流す。嘲りを込めて彼女を見据えれば「なによその目!」とキレられた。ヒステリックは嫌いやねんけど。うるさいし。



「ルールはさっきみたいな没収戦じゃない。ただのガチンコバトルよ。相手に降参と言わせるか、戦闘不能にした方が勝ち。どう? 分かりやすいでしょ?」
『小学生の考えそうな対決やな』
「いちいちうるさいのよあんたは!!」
『お前もな。ほら、誇りを懸けて戦うんやろ』
「……私は、絶対負けないわ、炎真の為にも、シモンの為にも__」



 彼女はそのあと、小声でこちらに聞こえる様にだけ呟いた。「あんたから雲雀さんを取る為にも」と。
 その瞬間、戦いは開始され、彼女は「私はVGを発動させる余裕なんてあげないわよ!」と双剣を両手にこちらへやって来た。ぞっと背筋に悪寒が走って咄嗟に「形態変化(カンビオ・フォルマ)!」と叫んだ。小鳥の名前はまだ決めてない。



「でぇりゃ!」
『いっ! がっ、は……』



 それと同時に彼女は双剣の柄の尾でこちらの喉を潰した。間に合った。あと一秒ほど叫ぶのが遅かったらVGを発動させられなかった。背後から彼女にたいしての殺気を感じるもこっちに向けられている訳じゃないので雨宮ご愁傷様とか思いながら彼女の腹を蹴り飛ばした。みしりと嫌な音が聞こえた気がする。



「かふっ、」



 そのまま雨宮は蹴りの威力により吹っ飛び、背後の海にばしゃんと膝をついた。



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144:ぜんざい◆A.:2017/01/06(金) 00:59 ID:cek

こっちのVGは発動していた。さっきまで並中の制服を来ていたのにネギ○!の主人公が後半着ていた様なノースリーブの物を着ていた。下は短パンにニーソ。二の腕まである黒い手袋。ズボン以外まんまやん、でも背中にボンゴレの紋章入っとるんやろな。変わらずボロ布は頭から被っとるけど。
腰にはベルトポーチが巻かれた軽装。ポーチの中を見れば一本のペン。そしてそこからぶら下がるのは邪魔にならない程度の申し訳サイズなスケッチブック。このVGはあれか、ネ○ま!リスペクトなんか?スケッチブックとペンの使い方が分かってしまった。

「私のリングの属性は【大海】、海は私にぴったりなのよ!」

そう叫びながら彼女は双剣に海のような深い青色の炎を……実際海も混じっているのだろうそれを纏わせてこちらを一閃した。こっちはそれを飛び上がりつつ避けて、スケッチブックとペンを手にする。

「なっ! あいつ!?」
「…VGの機能か」


驚く声が聞こえた。そんなの関係なしにばりばりとペンを滑らせ、次の瞬間には出来上がった絵。考えが正しければ。予想通りその紙はぼんと白い煙をあげ手に収まる。
こっちが書いたもの、それは未来に行ったときに振るった斧。そのあとにまだ必要だと思うものをストックページにさらさらと絵を書いていく。こっちのVGの能力はこのスケッチブックに書いた絵は実体化すると言うものだ。もちろん幻覚ではなく本物。

『っ!』

こっちはそのまま彼女めがけて斧を振り下ろした。寸での所で避けた彼女は海を転がる。獲物を失った斧は海を縦に裂き、地面の岩場を削った。そのまま斧を引き抜き近くの彼女めがけて横一閃に薙ぎ払う。それもしゃがんで回避した彼女に舌打ちして連撃を浴びせていった。彼女も実力はそこそこあるようで、逆手に持った双剣でガンギンと必死にガードしていく。これやったらスケブのページを開き、持ち手の長いハンマーを出して叩き付けた。

「嘘っ!」

彼女は双剣でハンマーを受け止める、だがそれがダメだった様だ。左手に持つ双剣にひびが入ってしまったらしい。こっちはそのまま双剣を足場に宙を翻りダンと岩場に足をついた。

「予想外だ、彼女があそこまで出来るなんて…」

アーデルハイトがこちらの背中を見ながらそう呟いたのが分かる。リボーンも「正直俺もここまでやるとは思ってなかったぞ」と口にした。

「俺たちはまだなんだかんだで伊達の実力を知らなかったのか」
「甘いですねリボーン。彼女はまだ本気を出していませんよ」

その風くんの言葉で雨宮は顔をしかめた。まるでまだ本気じゃないの?悔しい!って感じの顔がイラつく。苛々する。
後ろを呆れたように睨んで雨宮に再び向き直り、斧とハンマーのふたつを構えながら『まだやろ』とでも言いたげな顔をして挑発した。気ぃつけなあかん。やって彼女はまだリングの能力を使っとらんから。
彼女を鼻で笑ってから攻撃を仕掛ける。夕焼の炎の特徴。それは、軽化……だけではない。正式には『重軽』、10年後のこっちめ、面白がって軽化としか教えとらんかったなアホめ。彼女にハンマーを振り下ろしてから重さを100倍にする。これが当たればひとたまりもないだろう。
命の危険を察したのか彼女は左のひびの入った方でそれをいなした。行き場を失ったハンマーはそのまま海へどぼん。しかし、それだけでは収まらなかった。どっぽぉんと半径100メートルほどミルククラウン状に海は裂けて、したの剥き出しになった岩場はとんでもない轟音を轟かせながら円形に砕かれる。ぽっかりと空いた穴がさっきのハンマーの威力をこっちらに思い知らさせた。

「夕焼の守護者はファミリーの絶対的切り札となる…それどころの話じゃねーな」

外野のそんな声を聞きながらハンマーに炎を纏わせて軽化して担ぐ。下敷きになっていたのは、可哀想なことに粉々な雨宮の双剣であった。

「大海の炎の特徴は吸収よ…? 言わばクッションみたいな役割を果たせる。なのに、粉々なんて!」

こっちは顔面蒼白な雨宮を無言で嘲笑い、ハンマーと斧を消した。…意外に脳内で消えろとか思たら消えたから驚きや。

145:ぜんざい◆A.:2017/01/06(金) 14:35 ID:cek




「なんで武器を消したの? ハンデのつもり?」



 雨宮が短く息を切らしながらこちらを睨む。見る人によっては確かにハンデの様に見えるのだろう。こっちの本当の戦闘スタイルを見てない人からしたら。基本的にこっちは素手か棍棒を扱う。これはまだまだ序の口なのだ。



『……』



 不機嫌そうな顔で背中の竹刀袋から棍棒を取り出した。こっちはスケッチブックにしゃかしゃかと文字を書き、立体化させる。

<アホか。準備運動済んだから本気でいくねん>

 ひゅひゅんと振り回せばやはりこれが一番しっくり来る。



「……準備運動だと?」
「そうです、彼女の本領は__」



 遠くでそんな会話をしているとも気付かずこっちは不機嫌を露にした無表情で棍棒を振り下ろした。きんっと双剣で重みの掛かった棍棒を受け止め、こっちはそれを支えに回し蹴りを一発彼女の腹にぶちこんだ。吹き飛ぶ彼女に追い打ちを掛けるようにして、逃がすわけもなく吹っ飛ぶ方向とは逆に勢いをつけるようにもう一度蹴りを入れる。
 かはっと胃の中のものを吐き出した彼女は更に浅瀬ではない、奥の方の海にばしゃんと転がった。ざざぁと波をうつ海は靴の中を水浸しにして、ボロ布の端を色濃く染める。
 勝敗は戦闘不能にするか相手に降参と言わせること。彼女はどうやらこっちの喉を潰したあと、参ったと言わせるつもりもなくなぶる気だったのだろう。いいだろう、そうしてやる。
 彼女の髪を引っ付かんで喉を思いきり拳で突いた。恐らくこれで喉は潰れてくれただろう。参ったとは言わせない。
 座り込んでげほげほと咳き込む彼女を冷えた目で見下ろし、ハッと嘲笑する。ざまあみろ。表面では睨みつけられているものの怯えたような色がその瞳の奥に伺えた。彼女はムキになって海の水を自在に操り、手の形を作って襲ってくる。そんな大振り、誰が喰らうと……ん?
 足が動かない。足元をよく見れば手の形をした海がまとわりついていて、回避の態勢が取れないようになっていた。せやった、ここ海やん。まあ出遅れである。
 こっちがそれに気づいて舌打ちしたときには海の手のなかにいて、がぼっと口から空気が漏れた。
 鼻に水が入って痛い、塩水が目に染みる、息が出来ない。
 ぶんっとそのまま投げられて背面の崖にぶつかった。



『かはっ……』



 ようやく肺に酸素を送り込めると大きく息を吸って吐く。……ちょっといおりさん、ぶちギレそうやわ。
 かひゅ、と息をしている雨宮はこちらを見て、こっちの炎で潰れた喉を軽化する。そもそも、最初の喉潰しの攻撃は軽化で軽くしていたので大ダメージではない。試しに声をあ、あ、と出してみると掠れはしているものの、ちゃんと出る。
 こっちは早速ダメになってしまったボロ布を脱ぎ去った。



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146:ぜんざい◆A.:2017/01/06(金) 15:22 ID:cek



「__格闘技ですから」



 遠くで風くんが先程の言葉を続けた気がする。こっちは素早く彼女の元へ走り、足払いを仕掛ける。そして重力を失った彼女の右腕と右足をひっつかみ、ぐるんと回転させた。「っ!!!」と宙でぎゅんぎゅんきれいな円を描いて回転する彼女の鳩尾に『っぇやぁ!!』正拳突きをして吹き飛ばす。わーめっちゃ飛んだー。
 ざばば、と水切りの様に跳ねる彼女へ、聞いているかどうか分からないが言葉を投げ付けてやった。



『げほっ……譲りたくないものがあるんやったら、それが誇りやアホ。【この世界におること】とか当たり前すぎることバカみたいにかっこつけて言いよってからに……。そんなしょーもないもんとこっちの誇りを賭けろ言うんやったら加減せんからな。侮辱でもしてみぃ、悲鳴を上げてもどつき回すぞ』



 彼女のところまで言って腕組みしてそう告げた。彼女はとうとう怯えきった目をして両手をあげる。……何がしたいねん。



「こ、降参した!」
「伊達の勝ちっすね!」



 騒ぐ外野、それを聞いて命の安全を確保した雨宮。……はっ、何が。



『アホ、まだ終わっとらんわ』
「……え?」



 こっちは凶悪な笑みを浮かべて後ろを振り返る。沢田が顔を青くさせていたが、これはまだ勝敗が決していない。



『やって勝敗……【戦闘不能にする】か……【相手に降参と“言わせる”】か、やろ? 降参の身振りだけしても言うてへんから、まだや』



 沢田に向かってそう告げれば、リボーンは「アイツは俺以上の鬼だな」とにやりと笑う。すっかり怯えきって身を震わせる彼女の前にしゃがみこみ、『よおあんな偉そうな口聞いてくれたな』と嘲笑った。
 スケブにしゃかしゃかと手錠を掻いて実体化させて彼女の両手にかしゃんと掛ける。そのまま腕を持ち上げて岩場まで引き摺って行った。



「き、貴様! 桜になにをする気だ!」
『黙れカス』



 怒鳴ってきたアーデルハイトに冷酷になっているであろう視線をぶつけてスケブにさらさらととある絵を描く。フェアリー○イルの楽園の塔編でジェ○ールが懲罰房へ入れられたときに吊るされていたあの拘束台。それを実体化させて彼女の手錠に吊るす部分を取り付けた。攻撃されたらたまったもんじゃないからシモンリングと片方になってしまった双剣を預かっておく。
 一旦いろいろ書かねば、と手頃な椅子を実体化させてぼすんと腰をおろしてバリバリ、とリズムよく描いていく。描けたものは次々と実体化させて並べていく。鉄の処女(アイアンメイデン)、電気椅子、三角木馬、ファラリスの雄牛、昔の時代劇とかでよく見るギザギザの石の上に正座して太ももにレンガをのせる拷問具。あとは電○教師の柊有栖が持っていたような、ディーノのものとは違う鞭。
 きっとこっちの顔は凶悪かつ満足げだろう。ぱしーんぱしーんと鞭を手で弾いて彼女に微笑む。



『……ほら、どうにか言うてみ、害虫』
「っ!!!……かふっ、げほっ……」
『必死に声を出して喋ろうとする様が無様やな。どれからやってほしい? あ、アイアンメイデンは気にせんでも最後やから。電気椅子の電気もクソ強い静電気がずっと流れる感じやから死にはせんで』
「伊達さんなんかスイッチ入っちゃったー!」



 笑みを携えて椅子で足組んで彼女を見れば、彼女の背後の崖の上から沢田の突っ込む声が聞こえる。いやスイッチなんか入っとらんで。



『キレとるだけや』
「尚怖い!!!」
『……って、あ。……気ぃ失のうとる。……人って恐怖がキャパ振り切ると気絶するってホンマやねんな』
「気絶させちゃったよ!!!!」
『沢田うっさい』



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147:ぜんざい◆A.:2017/01/06(金) 21:42 ID:cek



「勝敗は決した」



 そんな不気味な声が辺りに響いた。姿を表したのはシルクハットに包帯ぐるぐる巻きの黒いローブの男たち。恐らくあれが話に聞くヴィンディチェなのだろう。ヴィンディチェは一戦ごとに過去の記憶を見せるようだ。
 彼らはインクの瓶を手に、過去の記憶へとシモンとボンゴレの守護者を誘った。



**



「南イタリアの戦局の方は……あれからどうなっている?」



 イギリスの豪華な城の広間で、ボンゴレI世を中心にI世ファミリーが深刻な顔で会議をしていた。
 Gと呼ばれる獄寺に似た、I世の右腕かつ初代嵐の守護者が「敵の大部分が集結している……厄介な長期戦になりそうだぜ」と意見を発した。それに山本にそっくりの雨の守護者、浅利雨月が「しかしこれ以上ここに戦力を割くことはできまい」と苦々しい顔で反論した。六道そっくりの霧の守護者D・スペードが「他に三つの抗争をしているのですからね」とI世の横でそう呟いた。
 不意に、恭弥にそっくりだが口を開かない初代雲の守護者、アラウディの隣に居た頭からボロ布を被った女がI世に意見する。



「……こっちが出る」
「アイザック!?」



 がたんと椅子から立ち上がった、沢田の面影のある落ち着いたイケメン、I世__ジョットが驚いたように目を見開いた。隣のアラウディが腕を組んだままアイザックと呼ばれるボロ布を被った女を凝視する。初代夕焼の守護者であるアイザックはジョットに了承を得ようとするが、ジョット、アラウディ共に止められた。



「アイザックは仮にも女だ、最前線にだすわけにはいかない」
「……元軍のトップを女扱いをするな。舐めているのか、ジョット」
「舐めてない!」
「僕も反対だよ」
「……なんでだ」
「アイザックには目に見えるとこに居てもらわないと困るし調子出ないし監禁したい」
「」
「」
「ジョットもアイザックも息して。……怪我したらと僕泣くからね、部屋から出さないからね」
「……お前の泣き顔か、それもアリだな……。よしジョット、こっち前線行って大怪我してくる。待ってろアラウディ帰ってきたら声も出ないくらい抱き潰してやる、腰を痛める覚悟をしてろ」
「……今も、腰は痛いよ」
「下品だぞお前たち。頼むぞやめてくれ。アイザック、お前は大事な戦力なんだ今前線に出るのはやめてくれ、困る。頼むホントやめて」



 どうやら初代夕焼の守護者と雲の守護者は今のこっちと恭弥の関係より深いようだ。やっぱり受けと攻め逆じゃねなんて思いながらI世(プリーモ)さん苦労してんだなとかしみじみ思う。ちょっとアラウディさんがヤンデレちっくですが恭弥くんはそんなことにはならないと断言できる。多分。
 そこで敵の大部分に、孤立しているファミリーがいると言う。シモンファミリーである。驚いて助けにいこうとしたI世を引き留めて代わりに自分が行くと告げたD・スペードは口に不気味な笑みを携えその部屋をあとにした。結果的に、I世はシモン・コザァートを見捨ててなど居なかったのである。



「……I世は、シモン・コザァートを見捨ててなんか、なかったんだ……」



 過去を見終わった沢田が、ぽつりと呟いた。



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148:ぜんざい◆A.:2017/01/07(土) 19:09 ID:cek


 がしゃんと鈴木アーデルハイトと雨宮桜の首にヴィンディチェの首輪がはめられた。
 そこから流れで何者かがコザァートを罠にハメたことになるとリボーンが予測した。とたん、何かの気配を感じ、こっちは呆れたように溜め息をつき、恭弥が「そこにいる君は……誰だい?」と背後に向かってビュッ、と手錠を投げる。運良くその手前の枝に手錠がかかり、投げられた本人は「おっと、あぶねー!」とおちゃらけた声をあげた。
 姿を表したのはシモンファミリーの一人、加藤ジュリーだった。なぜか拐ったクロームをくっつけて。クロームの目は生気がなく、何かの術を掛けられたように見受けられた。
 アーデルハイトがジュリーを見て「炎真のことは……頼めるわね」と呟く。それに「あぁ、まかせとけ。お前はよくやったさアーデル」とジュリーが労りの言葉を投げた。それに「ジュリー……」と微かに涙ぐみ、恋情を込めた瞳でアーデルは名を呼ぶ。だが、そんな空気はジュリーの一言でぶち壊された。



「ぬふふっ、これでオレちんもきれいさっぱり、シモンに見切りをつけられる」



 加藤ジュリーのそんな言葉に沢田と獄寺は「!?」と驚愕し、獄寺の肩に乗っていたリボーンはジッとジュリーを見据える。こっちは地面にほったらかしにしていた風くんを抱えて「……!? ジュリー!?」と驚きを隠さず目に涙を溜めて見開くアーデルハイトを見た。気絶している雨宮など知らん。
 加藤ジュリーの正体……いや、加藤ジュリーで合っているのだろうけどその体を乗っ取っていたのは、初代霧の守護者、D・スペード。彼はもう数百年昔の人だ、なんでそんな人が現代に存在するのか謎だがシモン・コザァートを罠にハメたのは信じたくないが彼だった。ボンゴレの為だとかほざいていたが知らん。
 怒りに震えて「おのれ!」とD・スペードのもとへ動こうとしたアーデルハイトはヴィンディチェの鎖を全身に巻かれて身動きが出来なくなってしまった。D・スペードは「御苦労でした、アーデルハイト」と彼女に嘲笑をかました。途端、アーデルハイトは「ジュリーを! ジュリーをどこへやった!!」と激昴してしまう。彼女も恋する女の子だったようだ。
 途端、D・スペードの背後から「許さねえ!」と聞き覚えのない声が響き、D・スペードの背後から、シモンファミリーの一員である山本をやった犯人とも言う水野薫が鳩尾を貫いた。
 とか思ったら今度は水野薫がD・スペードの槍に貫かれて倒れる。なんなんこの刺したり刺されたりな状況。そしてそれを見た恭弥がD・スペードへつっかかる始末。途中で山本武が乱入してきて過去を再び見た。I世はD・スペードの企みに気付いており、シモン・コザァートは殺されていなかったことがわかった。まあそこからVGを解いて芝生のある辺りで座り、ひたすら風くんを愛でt……撫でていた。風くん髪さらっさらやわ。恭弥とやっぱ似とる。リーチもかわええよな。そうして一人と二匹を愛ていたら、ぱたぱたとヒバードがこちらに飛んできて撫でていた風くんの頭に遮るようにぽすんと乗った。お前もかわええなヒバード。
 気が付けばアーデルハイトたちと沢田は和解していた。沢田が古里炎真を救うと言う話になっていたようで、アーデルハイト、雨宮、水野はヴィンディチェに連れていかれた。なんまんだぶ。なんまんだぶ。
 そしてことが済んでこっち来た恭弥は横で寝転がって寝た。ヒバードが恭弥の腹の上に乗って同じように睡眠を取り出す。なにこのかわええ集団、なにこのかわええ集団。大事なことだから二回言いました。風くんを寝た恭弥の腕にもたれるようにおいて、予め持ってきていA4サイズのスケッチブックにバリバリしゃかしゃかとえんぴつを滑らす。



「どいつもヘコたれてるから一度しっかり休んだ方が良さそうだな、すでに寝てる奴もいるけどな」
「あっ!!!」
「ヒバリさん……いつから!? っていうか! 伊達さん!?」
『あっ……』
「伊達先輩なのなー」
「すげえ勢いで模写してやがる……」
『いや、ちょっと……鼻血出そうで気ぃまぎらわそうと……』
「「「鼻血!?」」」



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149:ぜんざい◆A.:2017/01/07(土) 20:05 ID:cek

台本書きすいません…。
番外編【ハルのハルハルインタビュー】

 今日、リボーンに呼び出しを受けた風は沢田宅へとやって来ていた。

ハル「第二十八回、今回はリボーンちゃんのお友達の赤ちゃん、風ちゃんが来てくれました!」
風「こんにちは」ペコリ
ハ「こんにちは! おめめがクリクリでキュートです! 今回はイーピンちゃんにバレないようにお忍びで来ているということですが」
風「はい、今回、リボーンが家庭教師をすると聞き、それにともないイーピンの様子を見るため日本に来たのですが、イーピンには一人で修行をするよう言っているので師匠の私としては会うわけにはいかないのです」
ハ「はひ〜、赤ちゃんなのに礼儀正しくて敬語が上手ですー!」
ツナ「礼儀正しい所はイーピンそっくりだよ! でもまさかイーピンの師匠がアルコバレーノだとは……。リボーンやコロネロみたいに普通の赤ん坊じゃないってことだよな…」
リボーン「風は最強の拳法家だぞ。でっかい大会で何度も優勝してるんだ。素手での戦闘ならアルコバレーノでもトップだぞ」
ツ「やっぱただ者じゃない〜!」
風「リボーン、まだあなたと真剣に手合わせしたことがないから分かりませんね」
リ「まーな」ニッ
ツ「なんか全然赤ん坊同士の会話じゃないし! ブゥーとかバブーとかだろ? 普通!?」
ハ「確かに内容は難解でよくわかりませんでしたが…仲が良いのはわかりました!」
風「そう言われればリボーンとは不思議と、出会った最初の頃から争い事は有りませんね」
リ「別に争う理由がねーからな。ちなみに、どれくらい風の拳が超人的かツナの消ゴムで見せてやるぞ、ここに軽く撃ってこい風」
ツ「え? 俺の消しゴム?」
風「……しかし」
リ「いいから打て」
風「……では、軽く」
シュッ!! トンッ!!!
ツ「!! んなー! 消しゴムにくっきり小さな拳の跡がー!」
リボ「拳圧だけでこんなことができちまうんだぞ」
ハ「キャー! ちっちゃいお手々のマークがキュートです! この消しゴム欲しいです!」
ツ「そ……そういうもんか?」
リ「ところでハル、風に質問はねーのか?」
ハ「はひ! あります! 風ちゃんのお顔はヒバリさんによく似ていますが兄弟でしょうか?」
ツ「きょっ、兄弟!?」
風「フフッ、兄弟ではありませんよ」
ツ「でも確かに、よく似てる! ヒバリさんの小さい時ってこんなかも……」
風「……心当たりが無いわけではないのですが、彼が嫌がります、次の質問に行きましょう」
ツ「ん……?」
ハ「はひ……?」
リ「じゃあ俺から質問だ、風と伊達はいつから知り合いになったんだ?」
風「ああそのことですか。一年ほど前に私は既に日本に来ていたのですが、泊まる宿が見つからず手頃な所はないかと質問をした方が偶然いおりさんだったのです」
ツ「知り合ったのって偶然だったんだ……」
ハ「あの布を被ったかっこいい女性ですね!」
風「でしょう? かっこいいでしょう? そうでしょうそうでしょう」
リ「お前伊達が絡むと可笑しくなるな」
風「失礼ですよリボーン。そのままいおりさんに家に住んでも構わないと言われたので、現在はいおりさんの家に居候で二人で暮らしてます」
ハル「いおりさん、親はどうしたんでしょうか?」
風「世界一周旅行だと仰っていましたよ」

 すると下の道路から『待て待て待て誤解や誤解』と言う悲痛な叫び声がツナの部屋に聞こえてきた。何かがぶつかり合う音が辺りに響く。沢田たちが窓から身を乗り出せばそこには素手の白い物体とトンファーを持った雲雀。白い物体とは伊達である。

ツ「伊達さん!?」
いおり『あ、沢田やん。恭弥ちょお待って』
雲雀「やだ」ヒュカッ
い『聞き分け悪いで』
雲「……ちっ」
つ「(ヒバリさんが大人しくなったー!)」



 そうしてハルのハルハルインタビューに雲雀、伊達乱入。



.

150:ぜんざい◆A.:2017/01/07(土) 20:47 ID:cek

い『はー、インタビューな』
雲「僕も一回やったね」
ハ「と言うわけで風ちゃんとまとめて一緒にやっちゃいましょう!」
リ「そうだな」
ツ「大人数になったな」
ハ「伊達さんのプロフィールを教えてください!」
い『誕生日4/12、星座おひつじ座、血液型A型、身長175cm、体重56kgや』
ツ「体重まで言っちゃったよ!」
リ「こう聞くとお前身長たけぇな」
い『兄貴んとこの血ぃ引いとんちゃう? 身長だけ』
ハ「兄貴……?」
い『遠縁のディーノや』
ツ「そうだ、ディーノさんと親戚だった!」
風「彼、いおりさんにとても甘いですよね」
い『せやな、去年の誕生日セグウェイもろたし』
雲「ああ、あれ跳ね馬にもらったやつだったの」
ツ「誕生日プレゼントにセグウェイー!?」
リ「ディーノがマフィアのボスだってのもその時聞いたんだろ?」
い『せやな。いや、あいつ家豪邸やしボンボンやとはおもっとったけどマフィアのボスやったとは。あのへなちょこが』
ツ「ナチュラルに悪口だー!」
い『アイツ、こっちにマフィアやとか隠しとった理由分かるか?』
風「いえ……」
い『こっち非現実的なこと好きちゃうやん、アイツマフィアのボスとか非現実的って自覚しとったからだまっとった言う訳や』
リ「なるほどな」
ハ「難しいことは分かりませんが質問です! 伊達さんとヒバリさんはいつも一緒に居るようですが、お付き合いしているのですか?」
い『ノーコメンt』
雲「そうだよ」
ツ「伊達さんを遮ってヒバリさん即答だよ!!!!」
風「私は認めませんからね」
リ「お前は伊達の親か」
風「やめてくださいよリボーン」
ハ「ヒバリさんのスピーディな返答に驚きましたが、いつからお付き合いなされてるんですか?」
い『……』
雲「……」
ツ「顔見合わせて悩み始めた!」
リ「謎だな」
い『……いや、いつやろ』
雲「……10年後から帰ってきてから……いや、継承式のVGに炎を注入する直前かな」
ツ「(今日はヒバリさんよく喋るなぁ)」
雲「それより僕はなんであの風とか言う赤ん坊と二人で住んでたのか聞いてるんだけど。いつからなのか知らないんだけど」
い『いや、やから……おいおい頼むってトンファー構えんなて。せやな、恭弥と初めて会うたその帰りやな』
風・雲「えっ」
リ「偶然だな」
ツ「心なしか風とヒバリさんの間で火花が散ってるような気がするんだけど」
ハ「その……よ、汚れた布はどうしてですか?」
リ「華麗なスルーだな」
い『ボロつ布は左腕の包帯のカモフラージュや』
ハ「ではいおりさん、風さん、好きな食べ物はなんですか? 順番にどうぞ!」
い『ぜんざいやな』
風「麻婆豆腐です」
ツ「へー、やっぱり中華料理なんだね!」
風「ただし、昔と味覚が変わってしまい、甘口じゃないと食べれなくなってしまいました」
ハ「昔? まだスーパーヤングなのに?」
風「今の私は辛口の麻婆豆腐を食べると涙が止まらなくなるのです」
い『ちょっと風くん今から辛口の麻婆豆腐食いに行こ、早く』
リ「伊達が一眼レフとスケッチブックとえんぴつ持って食い付いたな」
雲「泣き顔が見たいなんていおり変態」
ツ「(ヒバリさんが風を超睨んでるー!)」
リ「ママンの麻婆豆腐は辛口でも美味いから食べてみろ、克服できるかもしんねーぞ。さっき頼んでおいたからな」
風「なんと……!」
ハ「大丈夫ですか風ちゃん? 汗が吹き出てますけど……っと言うことで今回はここでシーユーです!」

**

一階のテーブルにて。

風「うぅ、涙が止まりません……」
い『風くんかわええよ風くん風くん風くん風くん』カシャカシャカシャカシャカシャ
雲「……」
ツ「超連写してるー!!!」
リ「伊達のドツボにはまったみたいだな」
い『ちょっと風くんこっちおいで撫で回さして抱き上げさしてお持ち帰りさして』
リ「それは流石にキモいぞ」
い『キモないわ』キリッ☆)タラァ
雲「鼻血垂らしながら言われてもね」
ツ「いつものクールな伊達さんどこー!?」
ハ「はひ!? ツ、ツナさーん!」



.

151:ぜんざい◆A.:2017/01/09(月) 18:55 ID:Ldk

そのあと、まあいろいろあり脳内で今喉潰れとるからしばらく生放送無理やな、治ったらなに歌おうとか考えているうちに全てが収束していた。
気がつけば家にいて、腕に抱えていた風くんに「なんで家居るん」とか聞けば「終わったのですよ」とか呆れたようにぐちぐち言われた。可愛いから許す。聞くところによるとD・スペードを倒したからそのお礼で六道骸の体とこの戦いで捕まったみんなを釈放してもらえたと聞いた。驚くぐらい無関心だったこっちはへぇとだけ呟いた。それからもう一週間が経つ。
朝登校して応接室に行けば恭弥は居らず、草壁が「委員長なら遠征で黒曜に行きました」と教えられた。あー、六道か。なら今日の持ち物検査は無くなるんか、いや、アーデルハイトが気合い入れてやるか。

『ほな』
「はい」

草壁に短く声を掛け応接室から出た。もちろんボロ布はまた新しいのを新調しました。すっかり必須アイテムとなったボロ布は目立つものの体を隠してくれるから有難いわ。以前倒した雨宮の姿はあれから見ていない。どないしたんやろか。そんなことを考えながら歩き出した。



廊下にいつもの白い人物が現れた。ボロ布を頭に被った長身の少女、伊達いおりである。彼女は知るよしも無いが、校内ではかなりの有名人となっていた。唯一雲雀恭弥と対等な関係を結び、咬み殺されることのないと知られている。普段彼女に人が寄らないのはそれも有るが、一番の理由はそれではない。
 涼やかかつ鋭いつり目の赤と黒の入り混じった瞳はメガネのレンズを通しても褪せることなく輝いている。布がまともに隠している艶やかな黒髪は肩上ほどに短く切られて毛先が外に跳ねていた。
布に隠されているものの人よりかなり豊満かつ綺麗な丸みを帯びた柔らかげな胸は歩くたびゆさゆさと大きく揺れていく。アーデルハイトほどとは言わないが細い腰に曲線を描くヒップ、ミニスカートから見える太ももはニーハイソックスで締め付けられて絶対領域を発動させ、それらは頭から被るボロ布に隠され微かなチラリズムのおかげでとても艶めかしく見えていた。あまり開かない桜色の唇等の顔のパーツは普通より男寄りなものの色気を晒し出して、おまけに声もかなり低く、男どころか女までもに人気が高い。教員もそれには類に入れられる。
それゆえ、高嶺の花として声を掛けられることは少ないのだ。そしてもちろん、そんな彼女は誰のものにもならないことは周知の事実だった。そう思われていた。
 そんな彼女は廊下を歩くだけで男子生徒から視線を集めるのは必須で、もちろん視線は感じているもののそういう風に捉えられているなど知らぬいおりは煩わしそうに眉を潜め、尚前を歩く。だが、そんな彼女の前に二、三人ほどの少女がコッとローファーを鳴らしながら立ち塞がった。いおりはちらちらと三人の少女から注がれる視線に答える。

『なんや』

そう呟けば三人は顔を赤く染めてひそひそ会話をする。あまりに長いのでいおりはいらいら、周りは三人の少女を羨ましげにハラハラと見つめている。

「サインください!!!」

彼女らが背に持っていたサイン色紙とペンを頭を下げながらバッと差し出した。それに困惑して硬直するいおり。なんのことか分かっていないらしい。廊下の角から身を隠していた雨宮は「屋上で声を出しすぎたか」と憎々しげに舌打ちする。

「白玉様ですよね、伊達先輩は!」
「私達、大ファンなんです!」
「サイン下さい!」
『…雨宮ェ』

しゃーない、と微かに口を動かして三人分のサイン色紙に自分の白玉と言う名をさらさらと滑らせ、ニヤ動上の自分の絵を書いてその少女らに渡して素早く去っていった。彼女の姿が見えなくなったらその場に居た生徒は少女たちにどういうことだと詰め寄る。少女の彼女に関する説明する声を聞いてみんなが各々の声をあげていた。

152:ぜんざい◆A.:2017/01/11(水) 19:41 ID:Ldk



 今日はあの少女たち以来声をかけられへんかったな、なんや雨宮が後ろから物陰に身を隠して視線をくれよったなとか考えながら帰宅すれば、いつもは聞こえる「おかえりなさい」が聞こえないことに気が付いた。
 『風くん?』と声にしながら探していると、リビングのコーヒーテーブルに書き置きが残してあるのに気が付く。



『なんや……?
【いおりさんへ。
すみません、急用が出来てしまいました。とりあえず、フランスへ行ってきますね。しばらくしたらまた帰ります。お土産楽しみにしててくださいね。
風より】
……フランスか。やっぱ行動力凄いわ。せやんな、風くん本来の姿は大人やもんな。……アルコバレーノすげぇ。』



 その手紙を折り畳んで机に戻し、一旦アルコバレーノについて風くんから以前聞いたものを纏めてみよう。
 アルコバレーノ[虹の赤ん坊]、選ばれし七人(イ・プレシェルティ・セッテ)の七人が随分前に集められ、とある光を浴び呪いを受けて赤ん坊の姿にされてしまった、そして自身を見れば体の変化の他に、首には見たこともないそれぞれのおしゃぶりが下げられていたというもの。みんな、アルコバレーノになることなんて、誰一人望んでいなかったようで。マフィア最強の七人の赤ん坊なんか言われてるけど、彼らは何らかの被害者だったのだ。

 さて、今日は絵を書こう。風くんが縁側でほんのりしながらリーチを膝にのせてお茶をすする感じの、ほのぼのしたものを。

 なぜか若干の頭痛を覚えながら数時間かけて書き上げて、眠りについたのは深夜二時だったことから目を逸らした。


**


 数日後、けろりとした顔で帰宅してきた風くん。彼は少し困ったような顔をしてソファに姿勢正しく腰を下ろした。リーチは相変わらずほのぼのとして、風くんの頭の上でさくらんぼを食している。
 そして困ったような笑顔をしたので風くんが座る反対側に腰掛けた。本当に困っているような風くんはこちらに一瞥して、口を開く。雰囲気は重かった。



「……本当は恩人の貴女に、こんなことを頼みたくなど無いのですが……」
『……恩人とか、気にしなや』
「……それでは。すみませんいおりさん。私の代理になっていただけませんか?」
『……代理、ってなんなん?』



 最強の“選ばれし七人”(イ・プレシェルティ・セッテ)。

 運命の日の呪いにより、赤子の姿となる。

 彼らは七色のおしゃぶりを持ち、
 「虹」を意味する「アルコバレーノ」と呼ばれた。

 そして今____“虹の呪い”を巡り、新たなる物語の幕が開く。



.

153:ぜんざい◆A.:2017/01/11(水) 20:33 ID:Ldk


 風くんは帰りの飛行機で夢を見たと言う。自分がアルコバレーノになるキッカケを作った人物、鉄の帽子の男が夢の中に現れ、他にも自分以外のアルコバレーノが出てきた。鉄の帽子の男が告げる、「虹の呪いを解きたいか」。当然それにみんながYesと答えたが、リボーンは「信用できねえ奴と話したくねぇ。勝手に呪っといて呪いを解きたいかじゃねーぞ」と反論したらしい。鉄の帽子の男はそれに対して「アルコバレーノを一人減らすつもりだ」と言葉を発した。
 その一人は虹の呪いを解かれ一般人に戻る。そして今の任からも解放され晴れてもとの姿、もとの生活に戻れると言うわけだ。呪いを解かれるのは七人の中で最も強いアルコバレーノ。アルコバレーノ同士で殴り合いでもするのかと風くんは聞いたらしい。返ってきたのはYesの肯定。
 だが、風くんのような拳士やリボーンのような殺し屋等の武闘派は置いといて科学者やスタントマンもアルコバレーノには存在するのだ。戦うのに不利すぎる。鉄の帽子の男はそれにも頷き、万が一二つのおしゃぶりが同時に破壊されると大問題だと言うことも教えた。そこで、彼はあるルールを提案したようだ。

 各々が自分の代理を立てて戦う。

 確かにこれなら科学者でも出来るだろうと言うことだ。
 開催は【一週間後】。場所はアルコバレーノ全員に縁のある【日本】。詳細は追って伝えられる模様。プレゼントもあるようだ。

 これが風くんに聞いた全て。リボーンやコロネロと言うアルコバレーノにも聞いたようなのでまちがいないと風くんは断言する。



『……それで、ホンマに風くんの呪い解けるん?』
「……恐らく。あまり信用はしてませんが」
『……嫌な予感はするわ。でも、それがホンマやったら風くんの呪いは解けるんやな』
「……はい」



 そこまで会話をして深く考え込む。まだ声は本調子ではないが、全然大丈夫。一週間後、日本。国外じゃないなら問題はないな。なら、もう、答えは最初から一拓しかなかったそれに完全に決定した。



『……おん、やるわ、風くん』
「……いおりさんっ! 断っても構わないと言うのに! あなたは、なぜ、そうまでして!」



 自分で頼んだくせに。顔を苦渋に歪ませる風くんを身を乗り出して抱き上げ、再びソファに座りながらくしゃくしゃと頭を撫でる。風くんあったか。やっぱ子供体温やな。風くんがもとの姿に戻ったら、彼の体温はどうなっているのだろう。知りたい。



『……こっちと風くんの仲や。やる言うたらやるねん。断ったら追い出すで』
「……すみません、ありがとうございます、いおりさん」



 ギュッと風くんを抱き締めながら、『……もとに戻った君を見たいっちゅーのもある』と小さく呟けば、風くんは小さく微笑んで、「貴女らしい」と呟いた。



「いおりさん」
『なん』
「……ぐっ」
『え、どないしたん』
「苦しっ……」
『うおおおおお!!!!』



 慌てて体を離せば風くんが目を回していた。うおおおおお!!!! すまん風くんカワエエよ! うわ待ってこれカワエエて、恭弥がこっちに「いおりの変態」とあのVSシモン戦で言っていた言葉は間違いでは無くなってしまう。耐えろ、耐えるのだいおり!
 気を取り直した風くんはひょいと大窓へ移動し、こちらを振り返って告げた。



「私は少し他のアルコバレーノを偵察してきますね」
『おん、わかった』



 そのままがらりと窓を開いた風くんはトンッと塀に飛び乗り、屋根に飛び乗り走っていった。身軽ぅー。



.

154:ぜんざい◆A.:2017/01/13(金) 00:04 ID:Ldk

翌日。応接室にいけば、そこには恭弥をリボーンの代理に誘う兄貴の姿があった。

『…兄貴なにしとん』
「いおり! 良いところに! 恭弥をリボーンの代理に誘ってるんだ、手伝ってくれ! いおりも入るだろ!?」
『めんどくさそうやから断るわ』
「うそだろ!」

泣きそうになっている兄貴に蔑笑してソファに座る。ちらりと追い払えと恭弥に視線を送ると、恭弥ディーノに「一日目に答えを出してあげる」と告げて部屋から追い出した。やっぱ恭弥、こっちのことよお分かっとるわ。

「…追い払ったけど、これでいいの?」
『おん』

先程まで座っていた革張りの椅子から立ち上がり、こっちが座るソファの反対側にとさっと恭弥は座る。こくりと頷けば彼はずいっとこちらに身を乗り出し、何も言わずに深めのキスをしてから「、は…」と吐息を吐いて再び元の場所に腰を下ろした。恭弥くんホンマえろかわええ。自分からしたくせに顔赤いんがえろかわええ。めっちゃえろかわええ。大事なことなので三回言うた。ホンマえろかわええ。

『恭弥ホンマえろかわええな』
「っ、やめてくれない?」

ぱっと更に顔を赤くしてプイッと顔を背けた恭弥に苦笑いしながらフードを外す。はぁ…っと溜め息を吐けば恭弥に溜め息を吐き返された。なんやねんもう。

『…なんや』
「自覚が無いなら伝える気はないよ」
『…なんやねんお前』

腕を組み足を組みふんぞり返る恭弥に悪戦苦闘しつつソファから立ち上がって最後と言うようにキスをして舌を滑り込ませる。驚きはしているものの拒否する気は無いのか恭弥は驚くくらい無抵抗で応接室にはくちゅ、と小さく水音が響き、とりあえずここまでにするかと顔をあげて彼の口の端から垂れる唾液を舐めとった。再びばふ、と元のソファに座ると恭弥は垂れた唾液を腕で脱ぐって口の中に残ったそれをごくり飲み込む。

「…唾液多い」
『恭弥お前ホンマえろかわええなかわええよ恭弥エロいかわええ恭弥かわええ』
「かわいいだのエロいだのうるっさいよ。ほんと、立場逆なんじゃないの?」
『ほんまな』

それには度々目を遠くする。いや、恭弥が天性の受け体質なだけやねんホンマ。いおりさん悪ないもん。

『そろそろやな』
「何が?」
『兄貴が言うとったやろ。アルコバレーノの代理戦争んこと』
「ああ、なるほど」

理解したと言うように恭弥は途端に顔を微かに歪ませたが、まあ大丈夫だろう。そして次の瞬間には校庭側の窓ががらりと開いて、ぴょんと風くんが舞い込んできた。

「おや、いおりさんも居ましたか」
『ん』
「やっぱり君か」

恭弥はソファから立ち上がり、風くんが着地した執務をする方の机に向かっていった。風くんはにこにこしながら「私の頼みを聞いてくださいませんか?」と告げる。

「風か。頼みなんて話を聞かないと受けられないよ」
「そうでしたね。では、単刀直入に。雲雀恭弥、貴方には私の代理になってもらいたいのです。今回の代理戦争、優勝した暁には一人のアルコバレーノの呪いが解かれ、元の姿に戻れるとのことで」
「他にも代理は誰かいるのかい?」
「お察しの通り、いおりさんのみです」
『ん』
「へぇ、いおりも代理なんだ、だからさっき、跳ね馬の代理の誘いを断ったんだね」
『ん』
「お願いします、雲雀恭弥」
「…そうだね、構わないよ」

少し考え込むような仕草をした恭弥はすぐに了承の答えを出した。理由は簡単、強いやつと戦える。リボーンチームに入らなかったのは、そのチームに咬み殺したい人間がたくさん居るからだ。ただ、こっちがホッと息を着いたのも束の間、恭弥は「ただし」と言葉を続けた。

「君は強いの?」
「…自分で言うことでは無いのですが、いおりさんと組み手をして負けたことは一度たりともありませんね、完勝快勝です」
『おい風くん』
「なら、優勝したら僕と戦ってよ。それなら代理になってあげる。交換条件さ」
「はい、構いませんよ」
『決定やな』

チーム風が結成した瞬間だった。

155:ぜんざい◆A.:2017/01/14(土) 18:48 ID:Ldk



 そして風くんから渡されたのが、なにやらゴツい腕時計だった。一応かちゃりと腕に時計を装着しながらこれは何かと聞く。



「いおりさんの時計が『バトラーウォッチ』、雲雀恭弥のものが『ボスウォッチ』なるものです。その時計をつけていれば代理となれるようなので。
昨日の夜、尾道と言う鉄の帽子の遣いだと言う方に虹の代理戦争の具体的ルールを教えていただきました。
各アルコバレーノとその代理の方を合わせた集団を“チーム”と呼び、各チームにその時計が配られたようです。各チームごとにアルコバレーノウォッチが一本、ボスウォッチが一本、バトラーウォッチが六本の計八本。アルコバレーノウォッチはアルコバレーノが。ボスウォッチは代理の中のリーダーとなる方が。バトラーウォッチはそれ以外の代理の方が。
聞けば、ルールはとても簡単なようです。ボスウォッチとバトラーウォッチを装着した各チームの代理の方々で戦闘を行い、ボスウォッチを破壊されたチームが敗ける。時計であるのは戦闘許可時間を知らせる為。戦闘は一日一回一定時間、いつ始まるか分かりません。この時計は開始一分前と開始と終了を伝えてくれる。アルコバレーノは基本戦いには参加できませんが、戦闘許可時間中ならプレゼントプリーズと時計に向かって呟けば全ての戦闘許可時間を通して3分のみ元の姿に戻れます。まあ、言うところのバトルロワイヤルらしいのですよ。他チームと同盟も組めるようです」



 風くんの説明を受けて彼の左腕に巻き付くアルコバレーノウォッチを見つめる。やっぱ小さいなあ。風くんをそのまま腕に抱えて「どうしますか? 同盟は、組みますか?」とこっちと恭弥に聞いてくる風くんに二人同時に『組まへん』「組まない」と返事をした。やっぱりか、と言うように苦笑した風くんはこっちの腕を抜け出してスタッと恭弥の頭の上に移動する。思わず素早くデジカメでその二人を撮ったこっちは悪ない。



「私はこれ以上代理を増やすつもりはありませんが、よろしいですか?」
「構わないよ、味方はいおりだけでいい。いおりだけしかいらないよ、いおり以外必要ない」
「ふふ、ただの確認ですよ雲雀恭弥。もとよりそのつもりです。代理はあなたたちだけでいい」
「気が合うね、きみ」
「そうですね」
『……』
「おや、いおりさん。そんな微妙な顔をして、どうしたのですか?」
「どうしたの、いおり」



 一瞬君たちの目の色がほの暗くなったのはとても気のせいだと思いたい。特に恭弥! アラウディさんみたいなヤンデレにはならんとってや!

 ちなみに今は放課後なので、もうすでに代理戦争一日目は始まっている。朝からよく戦闘が始まらんかったなと感心やわ。
 そう一息ついた瞬間<ティリリ>とけたたましく時計が音を鳴らす。思わず肩をびくりと跳ねさせて時計を凝視すると<バトル開始一分前です>と機械的な音が流れた。
 そのまま時計のカウントダウンが始まってしまい、少しばかり硬直する。



「さて」
「行くよ、いおり」
『え』



 風くんにさっと頭にフードを被せられ、恭弥にそのまま肩を引き寄せられて応接室の窓から飛び降りた。直ぐ様校舎のどこかで爆発音。ここ二階やけど!? っちゅーか、……なるほどな。パッと棍棒を背中の袋から取り出した。



「さっきのすげえ爆発は」
「まさか沢田では!?」
「10代目んとこに急ぐぞ!」



 下にいたのは野球のユニホームを着た山本、ジャージ姿の笹川、制服着崩しまくりの獄寺。彼らの行く手にすたっと着地し、「させないよ」と恭弥が呟く。



「君たちは僕たちが、咬み殺すから」



 トンファーを既に構えていた恭弥を横目に布の奥から彼ら三人を緩く睨む。恭弥の頭の上にはちゃっかり風くんが正座していた。なんやお前らかわええな。



.

156:ぜんざい◆A.:2017/01/14(土) 19:48 ID:Ldk



 今思ったことを正直に口にしよう。ヒバードの上に乗ったリーチのコンビの存在感半端ないわ。とりあえずBLネタとして……ディーノ早よ来いや!!!!
 こっちらの現れた時の山本、笹川、獄寺の驚愕の表情が気持ちいい。なんちゅーか、こう、被虐心を煽られると言うか、とっても虐めたい。



「伊達にヒバリ!」
「ヒバリの頭に乗ってるのは…!」



 彼らが恭弥の頭に乗る風くんを見つめる。左手にトンファーを構えたままの恭弥は風くんを見てはいないものの「あの島に行ったときに自己紹介してなかったのか」と頬をむすりと微かに膨らませた。



「虹の赤ん坊(アルコバレーノ)の風(フォン)と申します。雲雀恭弥と伊達いおりには私の代理になって頂きました」
「なんだって!?」
「風の代理がヒバリと伊達!?」



 なぜボンゴレの守護者が沢田のチームではないのか!? とでも言いたげな彼らの顔に少しむかっ腹が立つ。無条件であまり関わりのない人にハイわかりましたとホイホイ仲間になりにいくわけがない。顔見知り程度の仲間と深い関係の仲間、どちらをとるかなんて一目瞭然だ。
 それに、恭弥も恐らくいろいろな条件が重なり、こっちが風くんのチームに居たことが決定打となりこちらのチームに入っただけのことやし。



「あなたたちが着けているのはリボーンチームのバトラーウォッチですね」
「ああ。俺たちはリボーンさんの代理だぜ」



 相変わらず獄寺は不良の癖に沢田とリボーンには敬称と敬語で話してるのがギャップを誘ってくる。
 恭弥は獄寺の言葉を聞き、「ってことは」と微かに上擦った声を出した。



「敵同士だね」



 好戦的な笑顔でビュッと右のトンファーをぶんまわす。尾から出たチェーンが彼らを襲った。間一髪と言うようにそれをしゃがんで避けた三人は今までの経験からか素早く立ち上がり、獄寺と笹川が恭弥に吠えた。



「てめーら!! リボーンさんの代理を断って風の代理になるとは!!!」
「裏切る気か!! 仲間(ファミリー)だと思っていたのに!」



 その言葉にぴくりと肩が動く。仲間と書いてファミリー、か。マフィアなんてどこの非現実だよ、と最近まで思っていた。最近はそれを受け入れ始めている自分がいる。……だが、マフィアを受け入れ始めただけで、ボンゴレファミリーの夕焼の守護者と認めた訳ではない。嫌と言うわけでも無いが、コミュニケーション能力のないこっちは人に囲まれるのが苦手だ。
 恭弥は根本的なものはこっちとは少し違うけど、大々的な部分は似ている。



『アホか』
「誰がファミリーだって? 僕は群れるのが嫌いなんだ」



 そう恭弥が告げた瞬間獄寺が「よく言うぜ」と微かに頬に汗を滲ませながら笑った。「風のチームだって他の代理と群れることになるだろうが」と続けた獄寺を恭弥は鼻を鳴らして嘲笑う。



「それは違うな。彼の代理はいおりと僕二人だからね。最大の理由はいおりが居たから」
「な!!」
「二人だと!?」
「君たちのチームに入らなかった理由は他にもあるけど、僕は話をしに来たんじゃない」



 トンファーを好戦的に構えた恭弥に「ふざけたことを言いおって!! ならば俺が分からせてやる!」と意気揚々と眉間に皺を寄せた笹川了平がVGを発動させて黄色い炎を纏いつつ戦闘態勢に変わった。



.

157:ぜんざい◆A.:2017/01/14(土) 20:55 ID:Ldk



「闘る気スかセンパイ!」



 山本が焦ったように笹川に問い掛けた。彼はあまり成績は良くないものの、バカではない。笹川がとあることを忘れているに気がついていた。アホか。笹川に静止なんか聞かへんっちゅーて。



「俺がヒバリの曲がった根性を叩き直してやる!」
『……無理やろ』



 小さい声で呟いたのだが「ちょっと」と恭弥に頭を小突かれた。今気がついたのだが、恭弥の背がこっちを少し抜かしていた。やはり成長期なんやろか。少し悔しい気もするがそれはそれで恭弥の色気が増すので良しとしよう。すると獄寺が叫んだ。



「待てっ! 守護者同士の真剣勝負なんて10代目は望んでねぇ!!!」
「……真剣勝負? こんなのゲームだよ」
『……ゲームならこれクソゲーやな』
「まあまあいおりさん。そう言わずに」



 布の奥で頬をむすりと膨らませていると恭弥の頭の上にいた風くんが苦笑いを溢した。
 恭弥の言葉に「何を!」と怒った笹川が「ならば真剣にさせてやる! 覚悟しろヒバリ!」と叫んだ。なんとも熱血漢のボクシングに集中する超スポーツマンである笹川らしい言葉だ。「では」とタンッと軽快な音を立てて恭弥の頭から飛び退いた風くんはこちらの腕に収まった。
 恭弥のゲームと言う言葉は意外に的を射ている。だって__



「ゆくぞ!」
「その様子じゃ忘れてる」



 ぶんと彼めがけて繰り出された笹川の拳。恭弥はそれを身を屈めて回避し、そのままトンファーを回転させて、笹川の腕からパキャ、と軽い音が響く。



「パキャ?」
「おしまい」
「あ」
「バカっ、バトラーウォッチを壊されちまったら代理じゃなくなるんだぞ!」



 __時計が壊されれば終わりのバトルロワイヤルなのだから。
 獄寺の言葉に同じ意を唱えつつ冷めた目で彼らを見つめた。



『恭弥がお前らのチームに入らんかったもうひとつの理由は』
「君達のチームには咬み殺したい相手がたくさんいるからさ」
「……!」
「ちっ」



 腕の中で風くんが「やはり代理を雲雀恭弥に代理を頼んで正解でしたね。戦いに対するモチベーションと技術、現時点で彼は私が求めるものをかなり満たしている」と呟く。その言葉に少しムッとする。どうにもこっちが恭弥と同等ではなく劣っているように思えて仕方がない。まあこんなもの思うだけ無駄だとそのムッとした表情を取り払った。だが、風くんは続けざま「いおりさんももちろん負けていませんよ。実力は私と拮抗していますし、あなたのある種の威圧感は私が見てきた中でトップです。威圧感があのXANXUSよりも凄まじい方を、見たことがかったのですがね。パワーもそこら辺の男では比べ物にはならないでしょうし」と嬉しいことを言ってくれた。片手で風くんを胸の前で抱えながらもう一方の片手で布を下にグイと下げる。なかなか嬉しいことを言ってくれるな。
 そのとたん、真逆の方向から荒々しい炎を感じて風くんとそちらを見る。



「炎は四つ……いや五つ……」
『……工場跡地の方向やな』



.

158:ぜんざい◆A.:2017/01/14(土) 23:15 ID:Ldk

Noside



「んじゃ、代理戦争一日目の報告会を始めるぞ。みんながどんな戦いをしたのか、ワクワクだな♪」



 並盛町にあるファーストフード店「NAMIMORIDINER」の一席にて。重苦しい雰囲気のリボーンチームのメンバーにとても面白そうだと言う感情を隠しもしないリボーンの声が響いた。
 ワクワクじゃないよ! といつもならツッコミを入れるはずの沢田綱吉_ツナも見るからにテンションが低い。
 そんな中口を開いたのは笹川だった。



「では俺から報告しよう。開始してまもなく、俺と獄寺と山本は落ち合い、沢田の下へ向かったのだ……。だがそこにアルコバレーノ風の代理となった雲雀と伊達が現れ、俺は応戦したのだが、敗けてしまった!!」
「え!? ヒバリさんと伊達さんが風の代理なの!?」



 笹川の報告に驚いて声をあげたツナに「ん……あ……」とバツの悪そうな顔をして言葉を濁すディーノ。ディーノは二人の勧誘を任されていたのだが、あえなく撃沈してしまったと言うわけだ。
 獄寺の「ちっ」と言う舌打ちに、困惑した顔のツナに、笹川が「極限にすまん!」と机に頭を打ち付けた。その反動で机が揺れて、笹川のコップが倒れて水が溢れる。



「ヒバリとダテの二人が相手じゃこっちの被害がそれだけで済むはずじゃねーな」
「あ、あぁ……」



 リボーンの呟きに山本が苦笑いしながら続きを話す。伊達は風を抱えて眺めているだけで全て雲雀が自分達の相手をしていたこと。少し雲雀と戦闘になったが獄寺のVGのダイナマイト_ゼロ着火で煙幕を張り、山本の雨燕の鎮静の雨を降らせ、雲雀の動きを鈍らせて戦略的撤退に成功したこと。



「ってな訳で、逃げ切って俺達のバトラーウォッチは無事だったが、ツナを探しているうちに時間切れ、タイムオーバーだ」



 しまり悪く告げてその短い黒髪をがしがしと掻く山本。獄寺は続けて「つかどーなってんだ跳ね馬ぁ! ヒバリとダテはお前がうちのチームに連れてくるんじゃなかったのかよ!」と机を思いきり叩いてディーノに怒鳴った。
 ディーノは顔の前で両手をパンとあわせて「わりい!」と苦難の顔で告げる。



「恭弥が今日うちの代理になるか答えを出すっつーから期待してたんだが!」



 そのままきれいな金髪を無造作に掻くディーノは「まさかその前に風チームに入って襲ってくるとは……いくらアイツでもそこまではしねーと……。想像を越えてたぜ。恭弥の説得中に入ってきたいおりに関しては即座に却下されちまった……」と失敗したなと顔を歪める。直ぐ様飛んでくる「甘ぇんだよ!」と言う獄寺の罵声を素直に飲み込んだ。



「こればっかりはヒバリ本人が決めたことだからしゃーねーな。恐らく勧誘されたのはダテが入ってきたあとだろ。ヒバリはダテにベタ惚れだからな。アイツが入るチームに着いていくに決まってる、ディーノが行った時点ではダテがどこに入るかはっきりしてなかったから答えを出すなんて言ったんだろ」
「えっ、ヒバリのやつ伊達先輩が好きなのか!?」
「伊達もヒバリが好きだしな。伊達に関しては最初から望み薄だったからな……期待はしてなかった」
「え、伊達さんに期待はしてなかったって……」
「やっぱ伊達の奴、弱ぇんスよ10代目」



 苦笑いでツナに声を掛けた獄寺にリボーンは素早く「そういう意味じゃねえ」と否定した。ディーノもそこは「違うぜ獄寺」とリボーンに同意する。



「ツナもだ。俺はそういう意味で言ったんじゃねえ」
「え…?」
「でも、シモン戦の時はアイツが一番傷だらけでしたよ?」
「あれは相手が女の子だったからだろうな。ダテは行き過ぎたフェミニストだ、女に本気を出すわけがねえ。言っちまえば、ダテは恐らくボンゴレじゃヒバリと同等、いやそれ以上の実力を隠してる」
「ひっ、ヒバリさん以上!?」



 リボーンの言葉にツナが飛び上がる。同じボンゴレファミリーと言えど、ツナたちに取ってあまり接点のない伊達。未来での戦いでだって最終局面でしか現在の彼女は出てこなかった。10年後の彼女でもあまり言葉を交わすことはなかった。まあ驚くほどのナイスバディだったが、声が低すぎて最初はみんな気付かなかった程。
 頭からボロ布を被って姿をあまり晒さない彼女に実力を図りかねている。



「それに」



 リボーンは神妙な面持ちで続けた。



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159:ぜんざい◆A.:2017/01/14(土) 23:43 ID:Ldk




「俺が望み薄だと言ったのは、90%の確率でダテが風のチームに入ることが予想されたからだ」
「え!?」
「きゅ、90%の確率!?」
「それはほとんど伊達が風のとこに入るってことじゃないスか!」
「ああ」



 ボルサリーノの縁を指で弾いたリボーンは「なんでだか分かるか?」とディーノ含めツナに聞く。ツナは「わっ、わかるわけ無いだろ!? 俺伊達さんと会話したのシモンの島に行って伊達さんに「見とけや」って言われたぐらいだし!」と声をあげる。これに限ってはディーノも頭をもたげた。



「アイツほんっと自分のこと喋んねぇからな。ネットと違って現在じゃすげえ無口だし」
「……ネット?」
「んあ? リボーン、知らなかったのか? リボーン、ニヤニヤ動画って動画投稿サイト知らね?」
「……ああ、ツナが前に青鬼ってゲームの実況見てたな」
「いおり、あそこの一位を争う人気の大御所でさ、ハンドルネームなんだったかな……確か『白玉』だっけか?」
「え!?」
「マジスかディーノさん!」



 ディーノの呟きにツナと山本が反応する。獄寺は元々そういうサイトは見ないようだし、笹川は到底知っているとは思えない。



「お、俺が見てた青鬼の実況……白玉さんのだけど……」
「俺は歌ってみた聞いてたのな!」
「お前らファンだったのかー! アイツ生放送じゃ、すげー喋るよな!」
「声すごく格好いいから男の人かと思ってたよ……」



 ディーノ、ツナ、山本で盛り上がるその三人にリボーンは一人ずつ蹴りを入れて内容の軌道修正をした。



「話を戻すぞ。風がダテと知り合ったのは、俺がツナの家に来た日だ」
「っ、えぇ!?」
「つまり、ダテと風の二人は俺とツナみてえな関係ってことだな。そんなんじゃ、どっちの代理になるか、分かるだろ?」
「あ……そりゃ、風の代理になる、よね」
「しかもリング争奪戦の時、俺はダテに家庭教師をつけてなかった。だが、裏で風がダテ組手をして鍛えてたんだ、ある種のかてきょーとしてな。これらは全部風から聞いた話だが、実力は奴と拮抗し、無敵の拳法家の風を唸らせられてもまだそこが見えないらしい、それからXANXUSよりも威圧感が半端ないと来れば、もうアイツを弱いなんて言ってられねぇぞ。ダテは男相手の戦闘じゃ酷く冷酷で手加減しねえ、男の急所容赦なく狙ってくるからとりあえず気ぃつけろよ」
「ひいい!」
「ちなみにディーノは10分間俺と一緒にいて戦闘に間に合わなかったんだ」



 そしてそのままツナに報告を促す。ツナは一言「父さんに負けた」と告げた。ツナの父、沢田家光はチェデフと言うボンゴレの独立諜報機関のボスだ、バジルもそこに所属している。彼らチェデフはコロネロチームについたのである。それでもツナのボスウォッチが壊されなかったのは、リボーンがコロネロチームと同盟を組んだから。
 ツナは腕を枕がわりに顔を埋めて「うう……」と唸る。その様子に心配する獄寺、なんとなく分かってしまった山本、自分の気持ちに名前がいまいちつけられないツナ。



(なんなんだよ……なんなんだよこの気持ち!)



 歯を噛み締めるツナに、リボーンは口もとを緩めた。



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160:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 00:19 ID:Ldk



 夜、恭弥はこっちの家に居た。しばらくは共にいた方が良いとこっちが告げたのだ。家に入るとき、背後で少し空気の温度が下がったんを感じたこっちが振り返ってみれば、恭弥ににこにこと笑みを向ける風くんと今にもトンファーを持ち出しそうなほど不機嫌になった恭弥の姿が。
 とりあえずボロ布を玄関先のクローゼットに放り込み、『お前らはよ入れや』と風くんを抱えて恭弥の背を押す。



「……」



 むすっとした顔の恭弥は何も言わずソファに座ってテレビを見る。そんな恭弥に苦笑いしながらキッチンに向かって今日は何を作るかと悩んでいたら風くんが「無難に炒飯でも作りましょう」とやって来た。恭弥にもそれで良いのかと聞こうとしたら、彼は一階に設置していた本棚から抜き出してきたのかHUNTER×HUNTERをソファに仰向けに寝転がって読み始めていた。お前は猫か。うーわ! くっそ! んんん! かわええなぁもう! 死ぬ!
 しばらくして炒飯とスープが出来上がったので料理をダイニングテーブルに運び、恭弥に声を掛けるとすんなりやって来てくれた。



「……美味しい」
「ふふ、私が作ったんですよ」
「へえ、料理上手いんだね」



 お前ら親子か。顔そっくりやし。
 とりあえずそんなくだらないことを内心ぼやきながら食べるスピードの変わらない恭弥に微かに微笑む。風くんも満更では無さそうだ。とりあえず三人で完食してからリビングでのんびり過ごす。



「いおり、親は?」
『世界一周旅行中や。兄貴がマフィアやったし、自分で言うんもあれやけど、家かなりデカい名家やからそれもホンマか分からんけど』
「へえ」



 恭弥はそのままうつ伏せにソファに寝転がってHUNTER×HUNTERの続きを読破しだす。『気に入ったんか』とを漫画から逸らさず告げる。まあ面白いのだろう。だってHUNTER×HUNTERのアニメも映画も見たけど面白いやん。ずずず、とソファの上で烏龍茶をすする風くんも既に二周ほど読み返す程だ。
 しばらく穏やかな時間が流れたが、一巻読み終わったのか恭弥がこちらに向かって言葉を投げた。



「今日僕泊まるんでしょ?」
『おん』
「場所どうするの? 僕ソファとか嫌なんだけど」
『……せやなぁ。恭弥今夜こっちの部屋で寝たらええわ。こっちソファで寝る……多分こっち今夜寝ぇへんから、ベッドは恭弥が使ってエエよ』
「……は?」
「え?」



 恭弥と風くん、二人がぽかんと目を開く。やって今日は夜通しレコーディングして歌ってみたをやって、実況の編集して、その部屋の椅子で寝ると思うし。



「……いや、レコーディングとかそういうのあとで聞くけど、僕男なんだけど」
『大丈夫や、こっちの部屋着替えとかないし。あるのは機械だけや』
「確かに、女性らしさはないですよね……」
「……いおり」
『二人してそんな可哀想な目で見るんやめてくれや頼むから』



 とりあえず恭弥にこっちの部屋を案内したら「……気は進まないけど」と妥協してくれた。
 こっちの部屋にはベッドにデスク、その上に三つのパネルのパソコン、タブレット、音響機器にDVDレコーダー。地面にはコンポにコピックが敷き詰められた大きなペン立てが20個程。天井に届きそうな壁を隠すような大きな本棚には全て漫画がぎっしり敷き詰められ、全体的に白と黒のシックな感じにまとめあげている。地面に散らばるヘッドフォンは手に持っておく。



「……ホントに、機械多いね」
『……まあな。隣が風くんが過ごしとる部屋や』
「へえ」



 そんじゃ。と恭弥を部屋に押し込んで、風くんの部屋とは反対隣の防音室の扉を開けた。


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161:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 00:50 ID:Ldk

まふまふさんの立ち入り禁止と逃走本能の歌詞を使わせていただきました。歌詞が間違っていたらすみません。



 部屋に入って後ろ手に扉を閉めようとしたらガッと扉が開けられて驚いて振り向くと、いつもの無表情でこの室内をきょろきょろ視線を巡らせる恭弥と、恭弥の頭の上に乗って微笑む風くんがいた。



『……な、んや? え、どないしたん?』



 驚いて最初に声が裏返ってしまった。風くんは「久々に歌を聞こうかと」と悪びれる様子もなく微笑みながら呟き、恭弥は「何してるのか見に来た」とだけ。……要するに、この部屋に入りたいと。……うーん。



『……しゃーないな。頼むから静かにな』
「ん」
「はい!」



 微かに満足げに笑った恭弥と満面の笑みの風くんに全てを許した。いや、甘々過ぎやこっち……。
 とりあえず、以前リクエストを頂いていた逃走本能と尊敬するべきまふさんの立ち入り禁止を歌わせて頂こう。
 既に椅子に座った恭弥と、恭弥の膝の上にいる風くんに内心サムズアップしながらも、逃走本能を歌い出す。



『過去を<青春>と呼んで美化したって、消せやしねえな劣等感反吐が出るぜ』



 今日は少し調子が良いみたいで、下がよく回る。気分がいい。



『自己投影したモニターの中の
僕は唐突なサービス終了告知で
廃棄処分 死刑執行 殺されちゃってさ 生憎と面会謝絶だ
なけなしの感情は捨てちまえよ
半端に居座るなよ 吐き気がする

反逆の狼煙だ 今こそ覚醒前夜 抗え抗え 逃走本能
神様なんていない って神に誓ったりして 叫べrockyou』



 そこからはもう叫ぶようにストレス発散するように歌った。楽しくて仕方がない。棍棒振り回しているときも楽しくないと言えば嘘になるが、歌っているときも生放送するときも楽しいのだ。



『簡単に終わらせはしないぜ』



 と一通り歌いきり、逃走本能はこれでよし、と一発撮りして次の曲を流す。こっちがかなり好きな曲だ。というかまふさんの病み系の曲好きやわ。



「立ち入り禁止どこまでも 出来損ないのこの僕にただひとつ 一言だけ下さい 生きていいよってさ
教えて何一つ 捨て去ってしまったこの僕に 生を受け 虐げられ 尚も命を止めたくないのだ?
 痛い痛い痛い ココロが 未だ心臓なんて役割を果たすの 故に立ち入り禁止する」



 歌い終えて即パソコンをイジって編集、元々の動画に合わせて二つとも投稿完了。今回は早かったなとか思ってたら椅子に座っていた恭弥が「すごかった」とだけぽつりと先程までこっちが歌っていた場所を見つめながら呟く。



『ん』
「上手かった、人気とか言われるの分かった気がする」
『ん、どーも』
「……なんかむかつく」



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162:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 11:39 ID:Ldk

翌日、代理戦争は二日目を迎えた。朝、学校に止まってると見たことのあるフェラーリが止まっていて、嫌な予感を感じた。慌てるように廊下を走って応接室に行けば、とある書類片手に顔をしかめた恭弥が革張りの椅子で寛いでいた。

『朝、駐車場ん所に、兄貴のフェラーリあってんけど』
「その予想、間違ってないよ。跳ね馬ディーノは今日から臨時の英語教師だ」
『…まちがいなく、代理戦争やろな』

二人して面倒だと気分を落としていれば、窓からひょいと入ってきていた風くんが「まあまあ」と微笑む。確かに、恭弥にとって兄貴は初めて自分に対して師匠面してきた兄貴肌。恭弥的には鬱陶しいのだろう。こっちは貰えるもんはもらっとく主義やし、ちっさいころから仲は良かったからなぁ……。あ、一時間目が始まった。

**
Noside

キーンコーンカーンコーン、無機質な鐘の音が教室と言わず学校中に谺する。もー授業かー、とツナは席に座った。炎真に聞けばシモンファミリーがスカルの代理になってくれたと言う。良かったなぁなんて思う反面ツナはまた強敵が増えたー! と焦っていた。空席に休みだとわかるクロームに少し心配の視線を残して、がしゃーんと言う耳障りな音と共に聞こえてきた「いでっ! 滑るなーこの学校の廊下は……」と昨日聞いたばかりの声が聞こえてきた。がらりと扉が開かれ、「おーいて…初日から決まらねーぜ」と呟きながら教室に入ってくる様子に、ツナ、獄寺、山本、笹川京子は目を見開く。

「チャオ! じゃねーな、英語はハローか」

入ってきたのは伊達眼鏡を掛け、左腕の刺青をバレないようにする包帯を巻いたディーノだった。

「(ディーノさん!?)」
「新任英語教師のディーノだ! ヨロシクな!」
「ははっ! すっげ!」
「ゲッうぜー!」

守護者はそんな反応を見せるもクラスの女子は「ちょっ、何!? 超かっこいい!」「金髪……キラキラ!」と色めき立つ。男子は今朝の様子を見たのか「フェラーリ乗ってた人だ!」と声を出した。
放課後にて。ディーノに屋上に連れてこられたツナ、獄寺、山本の三人はフェンスにもたれかかるディーノに開口一番「いいアイデアだろ」と聞かされた。

「教員なら学校で代理戦争が始まってもすぐに参加できるぜ」

そのとき、屋上の影から様子をうかがう女子生徒が「獄寺くんたちは良いけどなぜダメツナごときがディーノ先生と話せるのよ!!」「不釣り合いすぎる!」「どういうコネかしら」とツナに嫉妬の視線を送っていた。それに気づいた獄寺が「テメーは目立ち過ぎんだよ! ギャラリーがいたら戦えねーだろ!」と怒鳴り付ける。それを「そりゃそーだな」と笑い飛ばしたディーノ。だが、そのとたん屋上の扉が乱暴に蹴破かれ、怒気を滲ませた雰囲気を纏いながら歩いてくる白くてボロい人影、言わずもがないおりであった。

「いっ、いおり!」

 その姿に途端に焦ったような声をあげるディーノに、突然現れた色気たっぷりの女子の憧れの的の姿に女子生徒はどういう関係なのかと息を飲む。そのままディーノの前にたち、彼の頭を怒鳴りと共に拳骨で殴った。

『なんっでこんなとこにおるんやクソ兄貴!』
「いでえっ! 待ていおり話を聞け! 俺は代理戦争の」
『分かっとるわへなちょこが!』
「キャメルクラッチいたい!」

ぎしぎしとディーノの骨を軋ませる彼女に会話は分からないが怒鳴りだけ聞こえた女子生徒は「兄貴?」「って言うか伊達先輩関西弁であんなに声かっこいいんだね!」「それこそダメツナの分際でなんであそこに!」と言う声が上がる。

「仮にも俺遠縁で血つながってんの! 痛いだろ!」
『黙れや、朝から気分が最下層や』
「えぇ」

落ち込むディーノを一瞥して去ろうとしたとき、山本に不意に呼び止められた。

「先輩って白玉さんスか? ディーノさんが言ってたんすけど」
『…せやで、白玉や』
「お、俺たちファンです! 応援してます!」
「握手してください!」

すっと山本と握手して目を爛々と輝かせるツナの頭をわしわしと撫で回し、いおりは本当にディーノを殴り付ける為だけに来たらしく、屋上から去っていった。女子生徒から「ダメツナが伊達先輩に頭を!?」「知り合いだったの!?」「山本くんとも握手してたよね!」と騒いでいた。

163:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 11:59 ID:Ldk


 下校時刻、恭弥はディーノと接触して戦うことを取り付けたようだ。ホテルに泊まってるからそこにこいと言われたと恭弥に教えられ、風くんを腕に抱えて夜、そのホテルへと赴く。



「ずいぶん豪華なところへ来ましたね」
『兄貴の部下が間違えて取ったんやと』
「跳ね馬は夜、ここに来ると言っていたからね」



 そんな会話をしていて気付く。恭弥がなぜかディーノに執着していることに。何でだろうと疑問に思っていれば風くんはこっちの腕を抜け出して恭弥の頭の上に移り、「なぜです? ディーノにそこまでこだわるのは」とこっちの疑問を恭弥に聞いてくれた。



「あの人は初めて僕の師になったつもりの人だ、でもそんな存在、僕は要らない」



 そう冷たく言い放った恭弥に布の奥で苦笑いしてチンとちょうどよくやって来たエレベーターに乗り込んだ。
 最上階まで目指すエレベーター内はあまり会話がなくて、それでも少し落ち着く。だが、その階の手前でいきなり<ティリリ>と時計から音が鳴り、バトル開始一分前を告げた。……なんや、オチが読めてきた言うか……嫌な予感がする。



「始まりますね」
『ん』
「代理戦争で優勝したらって約束覚えてるかい?」
「もちろんです」



 そうして最上階に到着。ぷしゅっと扉が開かれたそこを見れば、自分たちよりも体のでかい黒ずくめの男たちと一人の女が立っていた。……ヴァリアーである。



「ゔぉ゙ぉい、これから出向こうって時に……」
「ししっ! ボロ布連れたカモがネギ背負って来やがった」
「伊達を連れたヒバリが風背負ってだろ」
「まんまじゃない…」
「久しぶりね、イケボ女」
『おまえ誰やねん美人ちゃん』
「ムムッ、風」
「やあマーモン」
「これはこれで嬉しいな、ここはまるでサバンナだ」



 見覚えのある子だが、適当に誰やねんと返しておいた。いや名前はちゃんと覚えてます。
 とりあえず向こう側のアルコバレーノのマーモンに親近感を抱き、とても可愛らしいフォルムを抱き締めたい。もうこの際変態と呼ばれてもかまわん。



.

164:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 12:16 ID:Ldk



「あれ? ボス猿がいないね」
『奥で寝とんやろ』
「ゔお゙ぉい伊達にヒバリぃ」
「笑わせるじゃん」
パシャッ
「俺達じゃ相手にならないって言うのかぁ?」
パシャシャッ
「君たちだって役には立つさ。僕の牙の手入れ程度にはね」
バシャバシャバシャバシャ
「……いおり」
『うぇっす』



 とりあえず向こうの方にも変な目で見られたのでデジカメを片付ける。壊されたらたまらんし。
 とたん、風くんが恭弥の頭から飛び降りて「プレゼントプリーズ」と呟く。姿が戻った瞬間彼はヴァリアー側のでっかいおっさんを壁に蹴り飛ばし、オカマはふらふらとしてついには倒れる。前髪の長いティアラの少年のナイフをそのまま足で蹴り返した風くんはその少年の時計を破壊してふぅと息をはいた。



「っひょー、とことん規格外っ!」
「無事だろうなぁ、ベルフェゴール、リアス」
「ったりめーじゃん! アホのレヴィやカマのルッスとは出来と育ちが違うし。だって俺王子だもん」
「私も簡単にやられるたまじゃないわよスク」



 だが、ベルフェゴールと呼ばれた少年は「時計は壊されちったけど」と悪びれる様子もなくスクアーロと呼ばれる銀髪ロングの声のでかいイケメンに笑った。



「終わってんじゃねーか! リアスを見習えカス王子が! だからいつまでもぺーぺーなんだ!!」
「そー言うけど相手はあの化け物だししょーがなくね?」
『リアスちゃん言うんやかわええ』パシャッ
「……ボロ布女は黙ってろぉ゙!!!」
『うぃっす』



 その隣で恭弥が自分そっくりの顔を持つ青年を睨む。



「ねえ、ちょっと君。なに余計なことしてんの?」
「あなた方二人では危なっかしくて、見てられません」
『おい風くん』



 呪解した風くんは恭弥そっくりのとてもイケメンさんでした。これが本来の姿なのかと思うと次から抱き上げるのに抵抗があるがもうこの際気にしない。恭弥と風くんからの色気に当てられそうないおりさんがいます。



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165:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 15:05 ID:Ldk

Noside

「どいてくれる? 一人で出来るよ」
「おい待てヒバリぃ!」

 押し退けようとする雲雀にスクアーロが声をあげた。

「ヒバリを先に倒しちまったら激レア必至のアルコバレーノとの対戦ができなくなっちまうだろうが!」
「誰が倒されるって?」
「ふくれないで。レア度の問題ですよ」
「二人で掛かってくる分にはかまわないぜぇ! 三枚ずつ六枚におろしてやる! そこのボロ布女はリアスになぶられてろ!」

 スクアーロがリアスの方を見たときだった。泣きそうな彼女は拘束台に縄で腕を吊るされ、ボロ布の塊だった伊達が頭のフード部分をぱさりと落として芯のある短い鞭片手にリアスを眺めていた。

「んなっ」
「……いおりの目が輝いてたのはこういうことか」
「サディストモードのスイッチが入りましたね」

 いおりが彼女にスクアーロを指差しながら『こっちのことなぶれってさ。なぶってみ、できるんやったら』といやらしい笑みを浮かべて彼女の顔を覗き込んでいた。
 そこで「黙れカスザメ」と言う声と共に小さくて白い塊がスクアーロめがけて飛んでいき、オリジナルらしいナイフがリアスの腕を吊るしていた縄を切る。やっと来たな、XANXUS。とかその隣にいるマーモンを見つめながら思ういおり。そこでマーモンが風と会話をしていたのか「とにかくお前なんか大っ嫌いだ! 代理戦争に勝って呪いを解いてもとの姿に戻るのは僕さ!」と叫ぶ。

『さて。リアスの腕時計、壊しにいくか』

 いおりは瞳の奥に鋭利を宿らせながら睨んでくるリアスを睨み返した。

「それは本当なのか? 白蘭がコロネロの弾にやられツナが単独で家光さんを倒しに飛んでいった? ソイツはマズイぞ……今のツナじゃ家光さんに勝てない!」

 ヴァリアーVS風チームの戦いを物陰から伺う男が電話越しに呟く。相手にそっちの状況を教えてくれと伝えられ、彼は口を開いた。

「今来たところだが、すでに風チームとマーモンチームが……。! 始まった!
 XANXUS・スクアーロ・リアス対風・雲雀恭弥・伊達いおりの超高速バトル!」

**

 リアスに棍棒をブン回し、彼女のレイピアの攻撃を宙返りで避ける。そこで視界の端にXANXUSが銃を放ったことに気付き回避体制を取った。途端にドォン! とこの階のガラス窓が破壊され、みんながばっと距離をとる。
 マーモンが「なんてハイレベルな戦いなんだ、まだ様子見だろうに目が追い付かない」と呟いていたのを聞いて冷めた目で折れた左腕を右手で押さえるリアスを見つめた。折った。彼女はリング戦から強くなっているものの、到底及ばない。弱いままだった。ちらりと見回せばこちらのチームは風くんが少しダメージを受けていて恭弥に「君口ほどじゃないね、大丈夫なの?」と皮肉を告げた。

「はい。今の攻防で、この体のサイズの勘を取り戻しました」
「?」
「?」
「んだぁ? 負け惜しみかぁ?」
『アルコバレーノがそない弱いわけないやろアホ、まだこっちも勝ったことないのに』
「なっ」
「次はミクロン単位で動けそうです」

 服の裾に手を掛けながら放った風くんの言葉にスクアーロが「み、ミクロンだとぉ!?」と動揺する。リアスは歯を食い縛っていたので少し嘲笑った。バッと上着を脱ぎ去った風くんの肉体美に鼻血を出しそうになるも耐えてばっとVGを発動させて斧を構える。

「ヤロォ」
「カスが」
「面白くなってきたね」
『……』

 ボロ布を再び頭から被って、風くんの行きましょうの言葉を合図にこっちはリアスの背後に移動して裏拳を繰り出す。ぱきゃ、と言う軽快な音が響いて彼女の背を蹴り飛ばし、風くんが放つであろう技から回避させる。次の瞬間には風くんの奥義である爆龍炎舞が火を吹き、スクアーロの腕時計を破壊した。
 上空からXANXUSに止めをさそうとしていた風くんは急にぴたりと動きを止めて、それと同時に頭からコキンと音が聞こえた気がする。天井で退避した風くんはなぜかいきなり全身からぶしゃっと血を吹き出した。それから身を守るように布をグイと下げて目に入らないように防御する。ダンッと地面に着地した風くんは「危ないところでした」と呟いた。いきなりどうしたのか、訳がわからん。

「これで分かったろ? 武術より幻術の方が優れてる」

 凛とした涼やかな声が、フロアに響きわたった。

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166:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 15:38 ID:Ldk



「今放った奥義は、脳に特定の縛り(ルール)を作り、その縛りが破られたら肉体にダメージとなって返ってくる……バイパー・ミラージュ・R」
「ああそうさ。特別に今回は脳への縛りを教えてやるよ……。
 “勝利を疑ったものは、自爆する”」



 風くんの視線の先に居たのは、地面に藍色のおしゃぶりを転がさせて、自身をローブで隠した少女とも少年ともとれる子だった。XANXUSが「マーモン」と呟いたのであの赤ん坊なのだろう。顔はした半分しか見えていないが相当なクールビューティちゃんだろう。ショートカットの薄紫色の髪がフードから見えていた。



『……幻術?』
「そうだよ。バイパー・ミラージュ・Rを掛けられた者は、勝利を疑った瞬間に肉体にダメージを受けるようになるのさ。風のようにね」
『……へえ』



 こちらが布の奥から尊敬の眼差しを向けてマーモンを見つめれば、マーモンはふいと照れ臭そうに顔を背けて但しと続ける。
 どうやらバイパー・ミラージュ・Rは強力なぶん、対象者を絞れないようだ。だからこのフロアにいる人間全員に掛かっただろうし、味方それに自分にだって掛かってしまっていると言う。



「勝利を疑うと言う縛りは成功だったと思うよ。ボスの勝利への自信が揺らぐはず無いからね。ね、ボス」



 マーモンがXANXUSの横でそう言い放てば、風くんが「勝利への自信なら雲雀恭弥といおりさんも負けていませんよ」と言い返した。まあ、負けるとか有り得んとか思っとるけど。



「(ヒバリがどこまでボスに食らいついていけるかのかが見所だな。だが、この戦い勝敗の鍵を握るのは間違いなく__アルコバレーノ同士の戦いと、伊達の働きか)」
「マーモン、たしかあなたは先程幻術の方が武術より上だと言いましたね」
「ム。不服なのかい? 風」
「いえ、面白い比べ方をすると思い感心しました。そして興味が湧きました。
『私の武術があなたの幻術より上なのか下なのか』」
「その前向きなところが嫌いさ」
「そう言わずに」



 アルコバレーノの二人がざあっと砂のように消えたことに恭弥が目を見開く。スクアーロは二人が邪魔されないようにマーモンの幻術で姿を消し、一対一の勝負をする気だと言う。
 とりあえず腰のベルトポーチからスケッチブックを取り出し、バイパー・ミラージュ・R対策を作った。



『恭弥』
「なに」
『飲んどけ』



 出てきた丸薬を恭弥に渡してこっちも口に放り込む。これが、対策。幻術が効かないようにする薬だ。本当にこのスケッチブックは便利に思えて仕方がない。ノーリスクで思い通りの物が作れる。こくりと飲み込んだ恭弥は不思議そうにこちらを見た。



「なにこれ」
『幻術が、効かなくなる薬』
「はぁっ!?」
「幻術が効かなくなるだとぉ゙!?」



 スクアーロが「お前今日初めてマーモンが幻術を使うって知ったんじゃねーのか!」と叫ぶのに対し『おん、初耳やった』と呟いてXANXUSを睨む。



『んじゃ』
「僕らもやろう、ボス猿」
「散れ、ドカス」



 XANXUSと恭弥が駆け出すのと同時にこちらは距離を取って椅子に座り、スケッチブックにペンを滑らす。ストック付箋はいくらでもある。今は戦力を溜めようか。



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167:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 16:05 ID:Ldk



 こちらに三つの不思議そうな視線が突き刺さる。ちょ、なになにやめて。集中できひん。するとベルフェゴール、スクアーロ、リアナが興味深そうにとうとうやって来てしまった。



「ししっ、戦いほっぽりだしてなにお絵描きしてんだよボロ布サディスト女」
『……ひっどい言い草や、お絵描きちゃうし』
「どっからどう見ても遊んでんじゃねーか」
『VGのひとつやボケ』



 試しに札束の山の絵を書いて実体化させてみれば三人から「はあ!?」と言う声が上がった。天井にまで届きそうな札束の山。これはもう必要無いなと思わず破り捨ててしまえば、それは現実の物体として実在する。ドヤッ、と顔を三人に見せればムカつくと声を揃えて告げられた。解せぬ。



『とりあえずこの金は君たちにプレゼント(気まぐれ)』
「うわ。そのスケブありゃ何でもできんじゃん!」
『但し画力に限る』



 そう言い放ってフロアにボロボロの風くんと現在進行形で血を吐き出しているマーモンが再び姿を表した。


「考えることをやめなさいマーモン! 考えるほど多く血を流します!」
「あ゙っ!」



 マーモンめがけて駆け出した風くんは彼女に飛び蹴りを食らわそうとしながら「今気を失わせて楽にしてあげます!」ととびかかる。それと同時に風くんの首もとにひゅんっと赤いおしゃぶりが飛んできた。それにつられるように風の体は少年のものに変化し、ひゅんひゅんともとの姿に戻っていった。
 ……タイムオーバー、時間切れ。風くんは解呪の時間を使いきってしまった。コロコロ、と地面を転がった風くんは膝をついたマーモンの足にぶつかり動きが止まる。



「しまった! 私としたことが!」



<風の呪解、タイムオーバー>そんな無機質な音声が、聞こえた。



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168:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 16:23 ID:Ldk



「や…やった……。
ざまみろ風!! 勝負に負けても代理戦争で勝つのは僕だ!!」



 足元に転がる風に叫ぶマーモン。そのまま彼女は「風は戦闘資格を失った! あとはお前だけだ雲雀恭弥!」と恭弥に怒鳴った。恭弥はその様子をXANXUSの攻撃を受けながら見ている。



「ボスウォッチはもらった! えい!」
『効かへんで』



 マーモンが恭弥に幻術を発動させても何も起こらないことを見る前にこっちが彼女の前にたちはだって斧を構える。どうやらマーモンはこっちのことを忘れていたようだ。びくりと肩を揺らしてこちらを睨んだ。



「っ! さあボス! ボスウォッチを壊して!」
「あぁ飽きた。しねカス」



 マーモンがこちらを目の前にXANXUSに叫ぶ。芯の強い人だ、マーモンと言うこの子は。
 XANXUSの二挺拳銃の口径が大きく広がり、恭弥めがけてとてつもない威力のそれが放たれた。咄嗟に先程描き溜めていた絶対に貫かれない盾を恭弥の前に飛ばし、その攻撃を防がせる。XANXUSの攻撃はそのまま何も破壊することなく跳ね返り、XANXUSの頭上の天井を貫いた。



「お前! なにしたんだ!」



 マーモンがこちらに怒鳴り声をあげる。それにこちらはスケッチブックのページを素早く開き、マーモンを檻に閉じ込めた。



「いらいらするなもう! さっきからなんであんなチート級の物が飛び出てくるんだよ!」
『……それがこっちのVGやからや。こっちのVGは創造力と画力がものを言うねん。それを使いこなしてやれば__』



 一枚の紙をスケッチブックから千切り取ってビッと床に投げる。途端その場に現れたのは軍でも扱われる、戦車。



『__こんなことだって出来る』



 カチッと戦車のとあるボタンを押して『耳塞げ!』と怒鳴ってからXANXUSめがけて大砲を撃った。これで仕留められているとは到底思えない。とりあえずスケッチブックからこっちの身の丈二倍程の大剣を取り出し炎で軽化してから、槍投げの様にぶんと投げつける。50万倍、手が離れた瞬間そう叫べば轟音と共に床が盛大に崩れた。そこで、なぜか困り顔のディーノが頬を掻きつつ登場した。



「……いおりぃ、こりゃあやり過ぎだぜ」
『XANXUSがあれぐらいでやられるとはおもってへん』



 ディーノの登場にみんなが驚愕した。とりあえずこっちはさっきまで座っていた椅子に腰を掛けて疲れたので休ませていただくことにした。



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169:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 16:56 ID:Ldk



 少し寝てしまっていたらしい。大爆発でぱちりと目が覚めた。
 ここより上のフロアは消し飛び、ぼろぼろなXANXUSと恭弥の二人。その時戦闘終了の合図が鳴り響く。とりあえず、引き分けやな。だが恭弥は納得できておらず、決着をつけたいとトンファーを構えた。だが、すぐに時計から代理同士の戦闘許可時間外での戦いは固く禁じられていると聞き、恭弥はひゅっと回転させたトンファーで、ボスウォッチをばきっと壊した。
 みんなで一斉に口を開けて目を見開きながら恭弥を見つめる。恭弥は何でもないように壊れたボスウォッチを見せつけ、「いちぬけた」と呟いた。



「ぼ、ボスウォッチを……!! お前何したのかわかってるのか?」
「あり…え…ない…! 今までの戦いは一体なんだったんだ…」



 ディーノとマーモンがそう口を動かす。風くんが鼻をすすってから控えめに「優勝したら私と戦うと言う約束はよかったのですか?」と疑問を投げたら。



「僕は戦いたいときに戦う」
『……唯我独尊やな』
「……何か言ったかい?」
『なんも言うてへん』



 さっと目を逸らせばXANXUSが「だはっ! 同感!」と笑い出してこんなもの!と叫びながら憤怒の炎を時計に集める。それを見た瞬間マーモンは飛び上がり、他の幹部はXANXUSにのしかかった。



「ボォス! それはダメ!!!」
「はなせカス共!」
「嫌よXANXUS! 流石に全財産使い果たしたマーモンが可哀想!」
「時計は壊さないで! マーモンの一生のお願いなのよ!!!」
「ゔぉ゙ぉい跳ね馬ぁ! 早くヒバリをつまみ出せぇ!」



 ドタバタ喜劇を巻き起こしているヴァリアーを横目に檻の方へ赴き檻を消した。プレゼントストップさせて赤ん坊の姿に戻ったマーモンの前にしゃがみこんで頭を撫でる。なんってかわええんやこの子。甘んじて受け入れてあげてますってところがまた。



「……なにさ」
『いや、全財産使い果たしたってほんま? いくらほど?』
「そうだよ、兆はあった。僕は元の姿に戻るために金を集めていたんだ……ヴァリアーリングに使ったよ」
『ん。いおりさんの気まぐれな』



 スケブにさらさらと先程描いた札束の山を五、六個ほど書いて出現させ、現実のものとするために破り捨てる。ぱっと現れた金の山にマーモンは唖然とした。



「……これ、本物?」
『ん、本物。京の額の金や。やる』
「……くれるの」
『嘘は言わん』



 ふよふよと浮遊して金の山を見上げるマーモンはこちらを向いて「感謝の言葉なんて言わないよ」と幻術でそれを消して少し嬉しげだった。こっちは最後にマーモンの頭を撫でてからディーノと戦うと言って聞かない恭弥の元へ行く。



『恭弥、こっち疲れてもた。風くんも、帰ろや』
「うん」
「はぁ!!!?」



 ディーノが背後で大口開いて驚いているのを一瞥し、蔑笑して背負えと無言の圧力を掛けてくる恭弥をおぶった。恭弥の頭の上に風くんが飛び乗った気配がする。



『……そんじゃ、お先失礼するで』



 そのまま床からタンッと飛び降りる。スケブから浮遊機を呼び出し取り付けてそのまま家へと直行した。



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170:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 22:26 ID:Ldk


 空中散歩をして、しばらくしてから風くんは報告が入った第八のアルコバレーノについてアルコバレーノ全員で話し合うために今夜は一晩空けると途中で別れた。いってらっしゃいと一言送り出してもう遅いからとっとと家に帰って寝ようということになった。面倒なので今日も恭弥は家に泊まる。途中コンビニに寄りたいと言い出したので恭弥をコンビニで下ろして天体観測。栄養ドリンク等を購入して出てきた恭弥を再び連れて帰宅する。
 もう今日はいろいろあって疲れたわ。とソファに座り込んだ。電気をつける気力も無い。
 新任英語教師として現れたディーノ、ヴァリアーとの代理戦争の引き分け、恭弥の自爆。本当に、いろいろとありすぎた。ヴァリアーのみんなが規格外過ぎる。マーモンかわいかったよ。



『もう、はよ寝よ』
「……」



 はあと溜め息をついて立ち上がれば隣に座ってテレビを見ていた恭弥がすかさずグッとこっちの服の袖を親指と人差し指で摘まんで引っ張った。なんやこのいじらしくも可愛ええ小動物は。
 とか考えてる場合じゃない。素早く脳内整理を終えて、それでも唖然として恭弥を見つめる。とりあえず中腰のこの状態も腰にクるのでもう一度座らせてもらった。



「……」
『……』



 隣でむすっとこちらを見てくる恭弥の鋭い目を見つめ返して数十秒、恭弥はおもむろに全体重を乗せてぐいっと唇を寄せてくる。その表紙に自然と押し倒される形になって、珍しく今日はこちらが下だ。軽やかなリップ音を立てて離れる恭弥は目を見開いた。



『……ん?』
「ん、じゃないよ。もうちょっと警戒心を持ったらどうだい? 無防備過ぎる」
『……はぁ、風紀委員がこんなことしてええんか』
「僕も男なんだよ。……もう、僕がコンビニに寄った理由も分かってるんじゃないかい?」



 がさりと栄養ドリンクの中から取り出した、恭弥の手に収まって彼が揺らす度からからと中から音を出す箱を唖然と見つめる。
 僕は男、こっちは無防備過ぎる。つまり、そう言うことで。コンビニに寄ったんも、ソレ買うためで。今こっちに覆い被さっている恭弥は薄ら笑いを浮かべた。



『……あー』



 言葉にならない呻き声をあげながら右腕で目を覆えばすかさずそれは外されて頭の上で固定された。こっちの上にいながらもやっぱりどこか可愛らしい顔をする恭弥の唇に吸い付いて舌を差し入れて歯列をなぞり、上顎を擽って流れてくる唾液を飲み込む。



「……っは、ぁ」
『……あー、こっち初めてやけど』
「安心しなよ、僕もだから」



 再びもう一度唸って、まあエエか。もうどうにでもなれと不敵な笑みを浮かべてから恭弥の腰を片腕で引き寄せた。



**



 情事後、体力の限界の所為か、ソファの上でぐっすりと眠る恭弥に服を着せてから換気扇を回す。ついでに窓を開けて網戸にした。声は最小限押さえたので大丈夫な筈……って信じたいわぁ。とりあえず恭弥からは「僕の下に居るクセに言葉で攻めてこないでくれないか」と後々言われそうだ。やって、やられっぱなしはしょうに合わへんし。



『……途中で戦闘許可時間になったな』



 一応盗聴される危険性もあるので時計は外していた。もう既に終わっているであろうそれに沢田たちはどうなったやろうかと黒のTシャツと短パンを着ながら考える。スカルと言うアルコバレーノがやられてバミューダと言うヴィンディチェ引き連れた透明のおしゃぶりの赤ん坊。謎やな、とか思いながらなんの会議をしとるんやろうと今ここにいない赤色のアルコバレーノの姿を浮かべた。
 黒猫のような恭弥に毛布を掛けてとりあえずこっちはタブレットからユーチューブで活動しているポッキーさんの実況動画を見ることにした。



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171:ぜんざい◆A.:2017/01/17(火) 23:34 ID:Few

それからしばらくして、目覚めた恭弥と朝食を取る。風くんはまだ帰ってきていない。朝食を腹に納めてから昨日一睡もしてないのに気が付き、自覚した途端激しい眠気が襲ってきた。

『すまん恭弥。眠いから寝るわ』
「…僕もまだ眠い」

クッションを枕代わりにしてソファに寝転ぶと、恭弥がもうひとつのソファに腰を掛けて目を閉じた。腰は痛いし体はダルいしと調子は悪いものの、気分は悪くない。なんやろ、なんちゅーかすっきりしとる言うか。そんなことを考えながら、瞼は自然に降りてきて、抗わずに睡眠を欲した。
しばらくしてからがちゃりと玄関の鍵が開けられた気がして、目を覚ます。リビングを見渡せば既に恭弥は起きていて、FAIRYTAILを手に読書をしていた。ぼうっとしたまま空を見つめていたらリビングの扉が開けられて、気の抜けた声が響く。それを聞いた途端恭弥が漫画から顔をあげて嫌そうに顔をしかめた。ディーノである。

『…兄貴か、おはよう』
「おうおはよう! もう昼前だけどな…ってうお!? なんで恭弥がここに居るんだ!?」
「貴方には関係ない」
『昨日遅かったし、こっち体力限界やったから送る暇無くてな。泊まらせた』

少し微妙な顔をしたディーノだが、彼はこっちが本当に、体力が無いことを知っている。

「ほら、家でゴロゴロしてっと不健康だぜ。飯食い行こう!」
『嫌や』
「嫌だ」
「二人揃って即答かよ!」

ショックを受けたような振る舞いをするディーノをとりあえずソファに座らせて、テレビを付ける。キッチンの昇降機からポテトチップスのLサイズの袋を持ってコーヒーテーブルの上で広げた。コの時型のソファの一角をうつ伏せに寝転がって漫画を静かに読んでいる恭弥に占拠されているが、まあ許してやろう。
庭に繋がる大窓の方からゴオと言う音が聞こえ、首をかしげる。恭弥はめんどくさそうに身を起こした。そしてディーノが「ツナか!」と笑みを浮かべて名を呼んだ。上から降りてきたのは沢田。降りてきた沢田に合わせて窓の鍵をがちゃりと開けて中に入れる。

『よお分かったな、ここが家て』
「ツナは初代ボンゴレの直列の血筋だからな。ボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)のおかげで超直感ってのがあるんだ」
『そら便利やな』

わしゃと沢田の頭を撫でてから家に改めて招いた。

「で。どうしたんだ? ツナ」
「あの、実は、三人に話があって来たんです!」
「話? 急ぐのか?」
「はい! とても!」

沢田に説明を受ければ、復讐者とはアルコバレーノの成れの果てらしい。この代理戦争は次期アルコバレーノを探すための戦争で、現アルコバレーノたちに掛けられた呪いは解けるどころか、勝敗がどうであれクビになり殺されてしまう、これは名が残らぬよう二世代間に分けられ、選ばれし七人がアルコバレーノになってしまう“運命の日”もまた然りらしい。仮にアルコバレーノは生き残っても廃人になるか、ヴィン復讐者になるかのどちらか。そして復讐者かつ透明のおしゃぶりを持つバミューダはこのアルコバレーノ交替システムを無くすため代理戦争に参戦し、唯一接触の可能な優勝のタイミングで、鉄の帽子の男、チェッカーフェイスを倒そうとしている。だが、チェッカーフェイスとシステムを葬り去ると現アルコバレーノの存在も消えてしまう。アルコバレーノに残されたのは生きるか死ぬかではなく、何をして死ぬかに限られている。だが沢田は現アルコバレーノを見殺しにせず7зを維持する方法を見つけた。それはおしゃぶりの死ぬ気の炎がなくなる前に、新しい炎を注入すると言うこと。その七つの炎が今後消えぬよう第8の炎『夜の炎』の持つワープの特性を使い延々と炎をともしていられる。イコール現アルコバレーノは死なないし、今後アルコバレーノと言う被害も合わないと言う事だ。

「バミューダチームそこまで強いのか!」
『それ、エエ案やけど、先にそのバミューダ倒さんとソレは無理ちゃうか』
「その事で話があります。俺の家に行きましょう」
「おう」
『ん』
「…」

そうしてこっちらは沢田家へ移動したのだった。

172:ぜんざい◆A.:2017/01/18(水) 22:32 ID:Few


 沢田家に来ると、既にヴァリアーや古里達、ミルフィオーレやキャバッローネの人々が彼の家の中や収まりきらなかった人は家の外にいた。とりあえず恭弥が中に入って群れるのを嫌がったのでお隣の屋根の上で待機。まもなくして恭弥くんは寝転がって寝ましたがなにか?
 こう見ると、ボンゴレの守護者のくせしてやはりボスである沢田と関わり合いがあまりなかったからか見知らぬ顔は多い。あのシモンの所に居るメガネとかリーゼンとか誰やねん。いやそれより。
 沢田家の庭の塀にほと近いところにてフワフワと背中の羽で宙に浮くあのぼさぼさヘアーの方は誰かな? もしかして白蘭サンなん?



『……とりあえず、書こう』



 全体的に白い風貌にまっさらな汚れを知らなさそうな白銀ともとれる綺麗な翼。これを絵に書かないで誰が美術部やっちゅーねん。持参の百均とかで売ってるスケブ片手に凄まじい速度でシャーペンを滑らせる。バリバリと音がうるさかったからか恭弥が眉を潜めながら起き上がってきた。



「……何書いてるの」
『あっこの白い人。後で許可とる。あかんかったら捨てる』
「いおりは僕だけを描けば良い」
『え、いや、そういう訳にもいかん』
「……書き上がったら見せてよね」
『ん』



 再び上体を倒して睡眠を取り始める恭弥を微かに一瞥してもう一度白蘭らしき人物を観察しようとすると、彼はこっちの目の前でにこにことこちらを見ていた。



『……ビビった……』
「ホントに? そのわりに普通の顔だけど?」
『いや、驚きましたて』
「関西弁だし、やっぱり伊達サンだね。君にとっては“はじめまして”かな、知っての通り僕は白蘭だよ」
『……ども』



 やはり白蘭だったのかと嘆息し、被写体として絵を描いても良いかと聞けば「もっちろん! 全然おーけーだよっ!」と後で見せてねと許可をいただいた。彼は満足したのか先程の場所に戻り、やはりにこにこしながら空中浮遊。
 沢田にお守りを渡しに来たらしい笹川京子(今後は京子と呼ぼうそうしよう)やハルがクロームを連れて沢田家に訪れた。彼女たちはヴァリアーを見「はひっ、何か恐い人たちがいます!」家の中を見「バジルくんや古里くんが居る!」白蘭を見「あの人飛んでます!」こっちらを見「お隣の屋根でヒバリさんが寝てて伊達先輩が絵を書いてる!」と声をあげた。静かに見守るクロームはとても麗しゅうございます。



「だから。お願いです。一緒に戦ってください」



 彼の家のリビングから、沢田綱吉の力強い言葉が聞こえた気がした。



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173:ぜんざい◆A.:2017/01/21(土) 11:12 ID:Few



 前回、復讐者(ヴィンディチェ)に闇討ちを掛けられたらしい沢田はリボーンくん達アルコバレーノ達を救うための道具をあの彫金師、タルボさんに頼んでいると言う。



「ここにみんなに来てもらってることも、リボーンが知ったらきっと反対すると思う。もちろん無理にとは言いません、この戦いは危険すぎるんだ……」



 そうこっちらに告げた沢田の顔は勝ち目が無いなんて思っている顔じゃなかった。自然と布に隠れた顔が微かに緩むのを感じる。隣の恭弥も少しむず痒い顔をしていた。他のみんなも口に笑みを浮かべたり、曖昧な顔をする。



「フフッ。でもツナ君は勝ち目が無いなんて顔してないよ」



 そう笑みながら呟いたのは古里炎真だった。この言葉を皮切りに骸は「そのようですね、負けるつもりなど毛頭ない、そういう顔だ」と呆れた笑みを見せて一言放つ。「こーゆーときの綱吉くんて怖いんだ♪」「何を企んでやがる、ドカス」と白蘭、XANXUSも続けた。



「まだ細かく詰めてはいないけど、ひとつだけ決めてます……。
今度はこちらから仕掛けるんだ!!!!!!」



**

虹の代理戦争四日目。午後3時。「ティリリ」と『リ』ゲシュタルト崩壊を巻き起こしそうなけたたましい音で戦闘開始時間は始まった。今回の制限時間は90分。ずいぶんと長いものだなと嘆息すれば隣の恭弥がちらりとこちらを見てから視線を前に戻す。
 ディーノは立ちはだかる復讐者のイェーガーと透明のおしゃぶりを持つバミューダを前に彼らのなぜ沢田がいないのかと言う質問に答えてやった。
 沢田を中心に復讐者を倒す作戦を考えたのだが、やはり個性豊かすぎるメンバー故か、白蘭とXANXUS、六道骸が復讐者で一番強いイェーガーと戦いたいと物申した。沢田がそれだとバランスが悪くなるんじゃ、と横槍を入れると「断るのならやめだ、てめえとは組まん」「交渉決裂ですね」「多分僕も作戦作っても破ってイェーガークンのとこ行っちゃうな」と協調性皆無だ。沢田がディーノに助けを求めれば「お前がイェーガーと戦ったりそれ以外の復讐者に人員を均等に割く必要はない」と教えられる。
 イェーガー以外の復讐者を分断出来れば勝機はあるのだ。白蘭、XANXUS、六道骸がイェーガーにつっかかってる間、年が近くて機動力もあり実力も兼ね備えた沢田、古里、バジルの遊撃隊で各個撃破でも良い。こうして作戦は決まり、相手が自分達になったのだと教える。
 戦闘になった途端白蘭はイェーガーに白龍を繰り出して襲わせるも、イェーガー達復讐者が持つ第8の炎、夜の炎の特性『ワープ』でその白龍は首を斬られて倒された。
 そのままワープしたイェーガーは白蘭のところにいくと思われたが、XANXUSの背後に移動する。気付いたXANXUSが舌打ちを咬まして右腕の銃を振り上げたと同時にイェーガーの腕がXANXUSの右腕を吹き飛ばした。宙を舞うXANXUSの右腕を見てスクアーロは顔を驚愕に歪ませて左手の拳銃でイェーガーが居たところを撃つも避けられる。そのまま斬り掛かったスクアーロは左腕に装着された剣を振るうもワープで避けられ背後を取られた。そのまま剣でイェーガーの拳を受け止めるも剣がやられてしまい、スクアーロは心臓を貫かれてしまう。
 倒れたスクアーロに「起きろカスザメ」と短く言葉を吐いたXANXUSは飛ばされた右腕の断面を自身の怒りの炎で焼き止めて「ボス! 隊長!」駆け寄ってくるマーモンを「るせえ! 俺の事はほっとけ!」と怒鳴って一喝した。彼の皮膚には本気でキレると浮かび上がると言う9代目につけられた傷が見えており、怒り狂っている。怖きかな。



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174:ぜんざい◆A.:2017/01/21(土) 11:43 ID:Few



 骸が「問題は死角となる背後へのショートワープ」と告げて、ヴェルデの幻術を本物にする機械で背後に鋼鉄のカバーを作った。白蘭の背後からぶつけられたイェーガーの攻撃はその鋼鉄のカバーに阻まれる。だが、次の瞬間イェーガーは腕だけワープさせ、白蘭の体を貫いた。ワープは全体だけではなかったらしい。盛大に血を吹き出す白蘭は「ほらXANXUSクン、今だよ」とXANXUSに指示した。



「でかしたドカス!」



 そう叫んだXANXUSは左の拳銃で経口がひどくでかいそれをぶっぱした。しかし、ぶっぱするもイェーガーはそれをワープで避けてXANXUSの両足の腱を切った。倒れ込むXANXUSと白蘭に、ヴェルデが呪解してスパナたちとの合作であるG(グリーン)・モスカで応戦するも効果なし。速攻でやられてしまった。
 そのまま六道の背後に飛んだイェーガーは彼の槍を折って腹へと腕を突き刺す。「浅いか」と引き抜いてもう一度刺そうとするその腕はディーノの鞭に巻かれて阻止された。なんてハイレベルな攻防だろうか。
 だがしかし、腕を残してワープしたイェーガーがディーノを肩から腰に掛けて大きく切り裂く。もう一撃食らわそうとするイェーガーの腕はディーノが骸にたいして攻撃を防いだように、鎖に腕を浚われ再び阻止された。そのチェーンの先に居たのは、トンファーを握る恭弥だった。



「借りは返したよ」



 ディーノに何か借りがあったらしい。未来でのことかと納得する。そのまま恭弥はイェーガーに鎖を投げ付けて仕掛ければ、イェーガーはワープするでもなくて受け止めてダメージをいなす。彼は今避けなかった。ということは、VGでの攻撃はワープで避けられないと言うこと。チャンスやな、とこちらはスケブで描いた転送機器を使い音もなくイェーガーの背後に現れ、斧で背を切り裂いた。



「ぐあっ!」
「なんだって!?」
「!!! ナイスだぞダテ!」



 痛みに声をあげるイェーガーに構いもせずスケブから槍を放つ。結局は避けられたが逃がすわけにもいかない。



「! ……彼女は」
「風の代理だった、ボンゴレの二人目の最強だぞ、バミューダ」
「……雲雀恭弥はまあ対処できる……彼女のあの瞬間移動はなんだったんだ」
「あいつのボンゴレギアだ。あのボンゴレギアは想像力と画力がものを言う。絵描きのダテにはぴったりだ」



 そんな会話をしているとは知らず、距離をとろうとするイェーガーに噛み付くように斧をぐるぐる目まぐるしく振り回した。刃物並みに鋭い腕をついてきたので宙返りして避けて、距離を取ったイェーガーにスケブから刀を取り出す。



『100万倍の10tや!!』



 宙返りのまま刀をぶおんと投げ飛ばしながらそう叫ぶ。勢いよくかつ素早く飛んでいく刀はイェーガーめがけて飛んでいき、次の瞬間にはドオオォンと地を大きく揺らして大きく砂煙を発生させた。
 ぶわ、と巻き起こる風はこちらの体を吹き飛ばしてくれる。ばさばさと激しくはためくボロ布を視界に入れながら地面まであとどれくらいだ。と呑気に考えながら宙を飛んでいればがっと体を支えられる。顔を見れば六道骸だった。



『お前か、六道』
「凄まじい攻撃でしたね、伊達いおり。こんな実力者がボンゴレにまだ居たとは」
『とりあえず離して』



 支えられていた骸の腕を退けてイェーガーの方を見る。砂煙が晴れればそこには地面を大きく陥没させて刺さっている刀と、その横で膝をついているイェーガー。……攻撃の刃は届いた筈。



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175:ぜんざい◆A.:2017/01/21(土) 15:35 ID:Few


 ふわっとイェーガーの肩に乗り上げたバミューダ。



「次から次へと雑魚共か」
「いいさ、今のでディーノ君は戦えなくなった」

 グッと血を吹き出しながら膝をつくディーノはとても体調が悪そうだ。慌ててディーノに駆け寄り背中に背負ってXANXUSの元へ運ぶ。「あと三人だな」と呟いたイェーガーはちらりとこちらを見て、ふいと目をそらした。
 スケブから某魔法先生漫画で読んだ近衛ちゃんの治癒扇を取り出して回復に当たる。漫画同様完全回復治癒は一日一回、怪我をしてから3分間。右腕と足の腱が斬られてしまったXANXUSにそれを使用する。もとに戻る右腕と足を見てマーモンが「な、治った!?」と声をあげる。彼女の頭を撫でながら「治っても体力がない、見といたって」と頼んでからディーノの方に取り掛かる。ある程度回復させてふぅと額の脂汗を拭った。
 背中から聞こえるのは骸と恭弥の不一致な協力でイェーガーを追い詰めている音、途中から沢田が到着した。なぜこっちと恭弥のVGの攻撃をワープで避けなかったのか、今はなぜ避けていられているのか、疑問に思うもディーノに専念せねば。背後をちらりと一瞥して完全にディーノを治す。「ありがとな」と返ってくるディーノの言葉にどっと疲れが襲ってきた。



「驚いたぞ、お前のVGはこんなこともできるのか」
『これはこっちの知識から引っ張り出してきたやつや。テキストと絵を一緒に描けば、実現化する』
「有能だな」



 話し掛けてきたリボーンくんにそうやって答えを返す。
 その直後、近くからずぶりと言う肉が裂ける音が響いた。何事かと背後を見れば、何も居なくて疑問に思うも直ぐにこれは他人のものではないと感じた。一同がこちらを見て目を見開いていたのを見て自覚する。



『あ゙ぁっ!?』



 そのとたんじくじくどころではなく焼けるような痛みが襲ってきて思わずガクリと膝を付いた。ボロ布さえ貫いてこっちの肩を怪我させたのはあの部分ワープで、出てきた腕を無理矢理ひっこぬく。



『っで、』
「ダテ!!! お前なに無理矢理ひっこぬいてんだ!」
「っ、いおり!」



 リボーンが駆け寄ってきて、同じように左肩に刺し傷のような傷で血を垂れ流して倒れている恭弥が叫ぶ。
 どうやら復讐者はバミューダに与えられた炎エネルギーを蓄えて戦っていたらしい、バミューダが肩に頻繁に乗っかるのは補給するため。気付かなかったこちらも悪いが、よく気づいてくれた沢田。そうしてイェーガーを倒したようなのだが、イェーガーは最後の力を振り絞り、無傷のこっちに傷を負わせてくれたようだ。
 貫通した痛みは尋常ではなく、空いた風穴を押さえてうずくまる。



『ふぐっゔぅ』
「ダテ!」
「伊達さん!」



 はあはあと荒く息を乱すこっちにリボーンは(ここまで伊達が表情を露にするのは珍しいな、それだけやべえってことか)と顔をしかめる。
 恭弥も恭弥で自分だって痛いくせしてこっち見よってからに。最後の力を振り絞ってスケブに手を伸ばす。ひゅん、と出てきたのは先程と同じ治癒扇。これ、本当は一日一回やねんけど、明日の分を前借りして使うこともできる。
 光出すそれに身を任せればばきばきぼきぼきと肩から聞きたくない音が聞こえてきて口を固く引き結ぶ。布をめくればそこに傷はもうなく、いつも通りの肩だ。
 ダルい、体の中でなにかがぐるぐる回っているような気がしてならない。これは大きすぎる治癒扇子の力が体の中で渦巻いていると言うことか。後でどうにかせねばと落ちてくる瞼に好きにさせて、意識の糸はプツンと切れた。



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176:ぜんざい◆A.:2017/01/21(土) 16:11 ID:Few


 目が覚めたらそこは病院で、一番に視界に飛び込んできたのは真っ白な天井だった。
 むくりと起き上がって部屋を見渡せばいつも通りに優しく微笑む風くんを見て、『終わったん?』と聞けば「はい」と返された。彼の胸元におしゃぶりはないので大方成功したのだろう。
 こっちはなぜか普通の病服ではなく、黒いパジャマだ。……恭弥のものと同じだが、下は短パンだった。
 ……ともかくここは病室の、個室だ。とりあえずボロ布は無かったのでシーツで代用すれば「相変わらずですね」と曖昧に笑われた。
 そのまま風くんを抱き上げて腕に抱えながらぽけーっとしてると隣の病室が騒がしくなって、次の瞬間にはどごおーん、と派手な音を立てながら炎がこの部屋の壁を貫き、そのまま反対側の壁すらをも破壊した。
 目の前をきょとんと眺めていると炎が飛んできた反対側からビュッと鎖が飛ぶ。飛んでいった方向から「なっ、今の武器は!」と言う聞き覚えのある声が聞こえてきた。あの鎖は確か、恭弥のVG。隣は恭弥の部屋やったんか……。
 ぎゅ、と風くんを抱いてシーツの奥からぼう、とそちらを風くんと一緒になって見ていればヒバードの群れを連れた黒いパジャマ姿の恭弥が「僕の眠りを妨げるものは、何人たりとも咬み殺す」と告げる。
 恭弥とは反対側の部屋はヴァリアーが使っていたらしくて、沢田が「ヒバリさんもこの病院に!?」と叫びをあげる。ここは多分並盛病院やろな。っていうか恭弥、奥の壁壊してもーとるやん。



「ん、あれ、いおり」
『お、おはよう恭弥』
「ヴァリアーの隣の病室伊達さんだった! 伊達さんもこの病院にいたんだ……」
『ん。お疲れ沢田』



 布の奥からひらひらと手を振れば「白玉さんから手をふってもらった!」とハイテンションになる沢田。
 こちらにちょこんとやって来た数匹のヒバードの頭を撫でながら彼らのやり取りを傍観する。あ、ミルフィオーレも居る。
 恭弥が貫いた反対側の壁はどうやら六道たち黒曜一味がいたようで、ヴァリアー、恭弥、ミルフィオーレ、黒曜一味でドンパチ始めよった。やめろや。
 早々に傍観をやめて自身の個室にVGで作った絶対空域を張り付けて再びベッドに背を下ろす。



『……おしゃぶり無いと違和感あるなぁ風くん』
「そうですか? 私にはよく分かりませんね」
『風くんこれからどないするん?』
「……そうですね、呪いも解けましたし。私たちはこのまま年を重ねて成長するようなので、また旅に出ようかと」
『寂しなるなぁ……。よかったらでエエからこっちの家拠点にしたら?』
「良いのですか」
『かまんかまん、今更や』



 わしゃわしゃと髪をなでくり回す。多分中学を卒業したらボンゴレ本部があるイタリアに飛ぶ予感もするし、穏やかな残りの日々を楽しもうではないか。
 よきかなよきかな、と雲ひとつない晴天の空を窓から見上げた。



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177:ぜんざい◆A.:2017/01/21(土) 16:42 ID:Few


 あれから一週間、こっちは以前とは少し違った生活を送っていた。……親が、帰ってきたのだ。



「いおりー、ボンゴレの守護者になったんですって? 名誉なことよねー」
「俺らが世界一周旅行と言う名のキャバッローネの任務に当たっとるときにそないでかいところの幹部になっとるとはな……!」
『……うっざ』



 どうやら両親はキャバッローネファミリー所属だったらしい。なんだってんだよ! とか某ポケモンダイパのキャラクターみたいに言ってみてももう遅いし、はぁと溜め息を吐いた。
 親は火傷とか傷とか初日はめちゃくちゃうるさかったので思いきりスルーして学校にやって来た。
 そう言えば、変わったところと言えば、みっつ。ひとつは恭弥がオープンに近付いてくるようになった。



「おはよういおり」
『おはよう恭弥、お疲れ』



 校門を通って下駄箱付近で恭弥と出会った。まだ関係性は明かしてはいないものの勘が超直感並みに鋭ければ気づいているやつも居るだろう。男子生徒の無躾な視線を受けながら溜め息を吐く。
 二つ目はもう学校中にこっちが白玉だと言うことがバレてファンだと言う子がサインをねだりに来るようになった。そう言うのは苦手なので最近は全力で逃げている。
 三つ目、それは沢田たちが見掛けたら挨拶しに来てくれることだ。



「おはようダテ」
「お、おはようございます伊達さん!」
「おはようなのな、伊達先輩!」
「っち」
『おんおはよう。っちゅーか最後の舌打ち気に入らんねんけど。なぁ、めっちゃ気に入らんねんけど。気に入らんねんけどおい獄寺』
「うるっせーよ! うぜーな!」



 う、うざないわ!
 内心動揺しながらもスルーして『じゃ』と先行く恭弥のあとを追う。



『……恭弥、今日見回りか?』
「そうだね、午後から」



 隣を歩く恭弥に聞けば午後からだと聞く。そのまま応接室に入れば恭弥はばふ、とソファに腰を下ろした。こっちもつられて反対側のソファに座る。
 そのまま無言で見つめ合うと少し笑えてきて、布の奥で口が緩んだ。



「いおり」
『なん』
「好きだよ」
『こっちも好きやで恭弥』



 満足したようにふわりと微笑む恭弥に鼻血が出そうだ。慌てて鼻を手で覆ってからティッシュで押さえた。



「……なにしてるの」
『……鼻血出そう。ちょお、さっきの顔に興奮した』
「変態」



 結局鼻血が出なかったのが一番の救いで、いじらしくも子供らしく可愛らしいキスをかましてきた恭弥に無理矢理攻守させて舌を滑り込ませてから口内を犯す。ぷは、と口を離せばそこから伸びる唾液はぷつりと切れた。



「……いおり、」
『ホンマかわええなぁ、恭弥』
「放せ馬鹿!」



 恭弥くんは相変わらず可愛らしいです。



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178:ぜんざい◆A.:2017/01/21(土) 17:34 ID:Few


 一応上記のもので完結です。ここから番外編やifが増えます。きっと。

番外編【知られる】

 一人のボロ布を頭から被った少女が学校の廊下を歩けば、周りの生徒たちは割れるように道を開ける。
 少女_伊達は普通より男らしい顔をしている平凡な少女だ。特段美少女と言うわけでも無いし、勉強は彼女の取ったテストの点数は平均点として扱われるし、運動も飛び抜けて言い訳でもない。彼女としては女子持久走の1000mを走りきれるような体力すら持ち合わせていなかった。所謂体力無しだ。それでも生徒は彼女を目で追う。
 ただ、人柄は女子から憧れの的になるような気品と優しさを持ち合わせて心がかなり広い。以前一人の女子生徒が文化祭の時に伊達にペンキをぶちまけてしまっても「気にしなや」と怒りすらしなかった。行動が男らしいからなのだろうか。彼女に恋愛的な好意を抱く少女は多い。
 顔は平凡と言えどパーツは一つ一つが綺麗なもので、布から覗くショートカットで毛先が外に跳ねた艶やかかつ綺麗な黒髪、眼鏡の奥からでも色褪せない黒に赤が混じったような切れ長な目、化粧などしていない頬は薄い小麦色で、横一線に固く結ばれた唇はリップなど塗っていないだろうに綺麗な薄い桃色。彼女は可愛いものはあまり好きではなく、制服はリボンではなくネクタイだった。可愛いものも似合うだろうにと思った生徒は数知れず。
 身長は170cm程と高く、腕はすらりと長い。ミニスカートから伸びる太ももはちょうどいい具合に柔らかそうで、布からちらりと見えるふくらはぎは流石空手部だと思える程引き締まっている。腰は贅肉など知らぬようにアーデルハイト程ではないにしろ細く、
 ただ、男子が目で追うのは制服のベストに収まるネクタイと揺れる伊達の制服をはち切れんばかりに圧迫しているその豊満な胸だった。
 人よりかなり大きなサイズの胸は歩くたびに制服ごとたゆん、と魅惑的に揺れて視線が釘付けになってしまう。全体的にバランスの取れた肉体に恐らく形のいい美乳だろうと思われるそれは、思春期の男子生徒には目の毒だった。それがボロ布で隠され余計に妖艶に思えて、見てはいけないものを見てしまっているような感覚に陥る。幾人もの男子生徒が彼女を脳内で犯しただろうか。既に彼女が並盛最強の風紀委員長に全てを晒して繋がったことなど知るよしもない。
 そんな彼女に告白などと言う無謀なことをするようなバカはいない。彼女は校内のクールイケメンかつ高嶺の花は誰も手が出せないのだ。
 今、彼女に最も近いと言われている男が一人いる。だが、雲雀との関係などまだ知られていないので、それは違う。
 彼女に好意を抱くことを顕著に表す少年がいるのだ。



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179:ぜんざい◆A.:2017/01/21(土) 22:52 ID:Few

ただ、その少年はいおりのことが好きでも、いおり自身名前なんて覚えていないので話すのは決まって少年から。おはよう等の会話なのだが、マフィア関連人物以外で自分から話し掛けに行かないいおりはもちろん自分からその少年に声をかけることなどない。ただ、少年が話し掛けると短い挨拶程度はするので「伊達さんが喋ってる!」と噂になっていた。

「おっ、おはよう伊達!」
『おはよう』

 その日も少年はいおりに声を掛けた。友人からは彼氏確定じゃね等とつい先程言われたからか少し嬉しそうだ。それもそのはず、彼はサッカー部のエースのイケメン、例に漏れず女の子にモテていた部類だった。対するいおりは元々自身に声を掛けてくれる人が少ないので少し感激しつつ表には出さない。
 そのまま少し立ち話をして、二人は別れる。もちろんその少年が彼氏確定かもしれないと言う噂はいおりの耳には一切入っていないのだ。だが、雲雀は違う。自分が居ないときに特定も出来ない男子がそんなことを噂されていることに若干の腹を立てつつも応接室以外では風紀委員長の威厳を失うわけにもいかないのでやきもきしていた。

「淵樫(フチカシ)。伊達さんもお前に気があるんじゃね?」
「やめろって! まあ、昼休みに伊達さんに告白しようとは思ってるけど」

 まあ、呼び出すんじゃなくて俺が自分から伊達さんのとこ行くんだ。と照れ臭そうに告げた少年_淵樫の思考回路はこうだった。自分から伊達のクラスへ赴き、そこで告白する。そしてオーケーを貰えばそこで彼女を自分のものとして知らしめることが出来ると言う訳で。そして淵樫は、いおりの口から出る言葉がもうオーケー以外出ることはないと思っていた。
 昼休み、淵樫がいおりのクラスに行くといおりは居なかった。クラスメイトに聞くと、大抵昼休みは授業が終わるとすぐに教室を出ていると言う。今回も例に漏れず。そう聞いた途端淵樫は駆け出した。早くいおりのところで告白せねば、と言う謎の使命感に駈られながら。いおりの背中を見付けたのは応接室の近くだった。ここには誰も寄り付かないのに。危ないだろう、と淵樫が「伊達!」と声を掛ける前にいおりは五回ほどノックしたあと、がらりと扉を開いて何でもないように中に入っていった。ここで少年は目を見開く。伊達が慣れた手付きで風紀委員長の居る応接室に入っていったのだ。何をしにいったのかとても気になる為、聞き耳を立てた。奥から聞こえてきた言葉に淵樫はさらに目を見開くこととなる。

『ありがと恭弥、…このぜんざいどこで買ってきたん?』
「いおりが初めて僕の絵を描いたあそこだよ、僕が買いに行った訳じゃないけど」
『ああ、やっぱりか。あそこのぜんざいうまいやんな』
「そうだね」

なんと、あの雲雀と伊達が仲良さげに下の名前を呼びながら会話をしていたのだ。しかもいおりから声を掛けている。安らいだアルトトーンの声は耳にはご褒美だが、この展開は自分にとって良いものではない。伊達は俺が好きなんじゃなかったのか!? と言う疑問を抱えてはじめて気付く。いつも伊達に声を掛けていたのは自分だったこと、伊達は自分を横切っても何も言わないこと、そして名字すら呼んでいないことに。自分など最初から眼中に無かったのだと言う決定的な答えに辿り着いた。彼女の眼中にあるのは_

「そう言えばいおり、校内でとある男子生徒が君の彼氏確定だとかふざけた噂があるんだけど」
『…そんなんあったん? 知らんかったわ……』
「どうするつもりだったの?」
『嘲笑して断るわ。「こっちは恭弥一筋や」って』
「ワオ」

_雲雀恭弥のみ。しかももう彼女の純白は雲雀に捧げたようだ。そんな深い仲の関係に、勝てるわけもない。朝自分が考えていた作戦なんてあったもんじゃない。逆にこちらがとんでもない恥を掻くところだった。淵樫は呆然自失、ふらふらした足取りで自身の教室へと戻っていった。そして数日後、伊達いおりは雲雀恭弥のものであると言う事実が並盛で騒ぎになった。

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180:ぜんざい◆A.:2017/01/22(日) 08:38 ID:Few


 また新しいものを書きます。三日月宗近転生沢田綱吉成り代わり。雲雀さんは女の子で幼馴染みの並盛最強の最凶。

沢田 宗近
 三条大橋にて、時間遡行軍と交戦中、一緒に出陣していた薬研を庇って折れる。そして目が覚めたら赤ん坊として生まれていて、沢田宗近と名付けられる。顔は三日月宗近と変わらない。
 前世の記憶はあるものの戦闘技術しか使わない。幼い頃から聡明であまり親に手をかけなかった。その代わりめちゃくちゃ甘える。
 五歳の時に父の家光が連れてきた9代目に速攻懐き、夜、自分がマフィアの10代目候補だと知る。「それならば仕方がないなぁ、俺が立派なボンゴレ10代目になろう」とおじいちゃん気満載で9代目と約束して代わりにと三日月宗近と言う日本刀の写しをねだる。許可された。
 雲雀恭弥(♀)と幼馴染みで、超仲良し。ヒバリの年は一つ上。
 自分は美しいと自覚がある。運動は出来る。国語と歴史だけ教師も舌を巻くレベル。その他の教科がずたぼろ。
 リボーンを「坊や」と呼ぶおじいちゃん。部活無所属。死ぬ気弾に当たっても意識はあるしパンイチにならない。性格は穏やかかつのほほんかつおっとりしていてどこか抜けている。
 湯飲みで茶をすする姿が校内でもたびたび目撃されていて相性は「おじいちゃん」や「チカ」など。その綺麗な顔からか女子や女教諭からの支持率も高い。人当たりがよく原作のようなツナくんじゃない。朝はびっくりするほど早起き。縁側でのんびり茶をすすりすぎて遅刻することもしばしばなのでお隣さんの雲雀のバイクに乗せてもらったり。刀の勘は落ちていない。「グローブ」と「刀」を使用。グローブはめて刀を持つとか。雲雀大好き。
 紺色の髪に内番の時のようなバンダナを巻く。私服はあるものの家に居るときはほとんどじんべえ着てる。身長は165cm程度。多分伸びる。

雲雀恭夜(女版雲雀恭弥)
 並中最強最凶の風紀委員長に君臨する不良の頂点。宗近のお隣に住むひとつ上の幼馴染み。性格は原作通りだが、宗近には優しい。宗近が好きすぎて最近少しおかしい少女。
 笹川京子を敵視している面がある。
 宗近に「ボンゴレ10代目候補になった」と報告を受け、「じゃあ僕も入る。宗近の右腕になる」と渋ることなくファミリーに。
 容姿は原作とあまり変わりないが身長が156cmになった巨乳。服装はシャツに学ランを羽織るもののしたは膝より少し上気味のスカート。
 時々仕事を草壁に任せて宗近の部屋に入り浸ることもある。宗近の右腕にくっついていることが多い。宗近が好きすぎてちょっと怖い。
 一人称僕。獄寺や山本には左腕すらもったいないと思ってるちょいヤンデレ。


 上記を読んでこういうものが嫌い、苦手だと言う方はUターンです。

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181:ぜんざい◆A.:2017/01/22(日) 09:00 ID:Few


 俺、三日月宗近は薬研藤四郎を庇って折れた。意識が朦朧とする暗闇の中でその出来事を思い返す。いやはや、薬研はまだまだだなあ、折れてしまった俺も情けない。
 そうして無意識に目を見開けばそこには明るい世界があった。
 待て待て、俺は折れた筈だ、なのになぜ目が開いてあーだのうーだの声が出て小さな手足が動く? ああ、あれか、主の言っていた「転生」と言うものなのか。主が「転生して漫画の世界に行きたい」と常日頃耳が痛くなるほど叫んでいたことを思い出す。すまんなぁ主、俺が転生とやらをしてしまった。
 俺を生んだ両親は沢田奈々と沢田家光。俺は前世とやらでは刀の付喪神だったから親と言うものを感じたことがなかった。そうか、この温もりが親なのかと納得しながらこの人生を謳歌してやろうと微笑み、「あなたの名前は宗近よ、沢田宗近」と聞こえてきた声になんと言う偶然なのだろうなと眠気故に降りてくる瞼をそっと閉じた。

 あれから五年。五歳になった俺、沢田宗近はこの始まったばかりの人生を謳歌していた。お隣さんの雲雀恭夜と言う女の子は所謂幼馴染みと言うもので、家族ぐるみで仲が良かった。それは俺たちも例外ではない。



「宗近、なにする?」
『そうだなぁ、なにをしよう?』
「僕はなんでもいいよ」



 ひょいと唐突にやって来た恭夜に笑みを浮かべて一緒に縁側に座って何をするか考える。
 甚平の裾が引っ張られたかと思ったらこのままのんびりしようと恭夜が笑う。可愛らしい恭夜にそうだなぁと頷いて縁側でのんびりしていればいつもにこにこと笑顔を絶やさない母がお菓子を持ってきてくれた。
 甘くて美味しい饅頭を頬張ったあとにぽけぽけしながら二人して外を見ていれば、父がおじいさんを連れてきた。



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182:ぜんざい◆A.:2017/01/22(日) 09:14 ID:Few


「こんにちは宗近くん。私の名はティモッテオ、よろしくね」
『よろしくなぁ』



 微笑むおじいさん_ティモッテオに笑むとバンダナを巻いた頭を優しく撫でられた。

**

 その夜のことだった。喉の渇きで目が覚めて階段を音も無く降りていればこんな深夜にリビングに明かりがついていた。
 少し聞き耳を立てれば「やはりボンゴレの10代目は宗近くんには向いていないかもしれんな」「そうですか……」とティモッテオさんと父の会話が聞こえてきた。
 そのままドアを開けて『ボンゴレ10代目とはなにかな?』と言いながら姿を表せば「宗近!? 今は夜の一時だぞ!?」と父に怒られはしたものの『喉が乾いた』と言えばすぐなくなった。



『それで、ボンゴレ10代目とはなにかな?』
「……ボンゴレとは、イタリア最大のマフィアのことだ。このティモッテオはその9代目で、今、チカにボンゴレ10代目は出来るかどうか、話し合いをしていただけだ、つってもお前には難しいか」
「君にはまだ早い話だと思うし、難しいだろう、宗近くん」
『そうか……あいわかった。俺が立派な10代目になろう!』



 そう言いながら笑えば彼らは目を見開き「正気かね!?」と口を揃える。



『ああ、正気だぞ。本気の本気、大真面目だ。ボンゴレの歴史に興味が沸いた』
「この年で歴史に興味を持つとは……」
「やっぱりお前は俺の子だ!!!」
『はっはっは、俺はものじゃないぞ父さん』



 ははは、と笑いながら俺が晴れて10代目候補となった夜だった。不意には、と気が付き、『その代わりに』と笑って告げる。



『写しでも贋作でも何でも良い、太刀【三日月 宗近】がほしいなぁ、きっと手に馴染む』
「お前何でそんなもん知ってんだ!?」
「ああ、構わんよ」
「9代目!?」



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183:ぜんざい◆A.:2017/01/22(日) 09:46 ID:Few



「チカ! パス行ったぞ!」
『あいわかった』



 あれから数年の月日が経ち、俺は中学一年生になった。長い時を重ねようとも恭夜との仲は変わらず良くて、よく俺が帰ってきたら部屋にいることもしばしば。ただひとつ変わったと言えばトンファーと言う武器を持って不良を倒して不良の頂点となり、並盛の最強の風紀委員長として君臨していることだ。可愛らしいのは相変わらずだが。
 そんな俺は現在、体育の時間にバレーボールをしていた。回されたトスを飛び上がってスパイクでうち落とせばぱぁんとボールは向こうのコートに当たって大きな音を立てながら跳ね返り、得点として加算される。



「きゃああああっ!」
「チカくーん!」
「かっこいー!」



 騒ぐ外野にも微笑んでチームメイトとハイタッチする。



「やっぱお前が居ると勝てるな!」
「勝利の雄神だ!」
『はっはっは! 褒めろ褒めろ、褒められると俺は喜ぶ』
「じじいかお前は!」
「沢田らしーぜ」



 そんなこんなで試合は終了、体操着のままのんびりコートの外にいくとみんなからおつかれーと声を掛けられる。



「おつかれさんチカ。お前運動できるんだから野球部来いよ!」
『嬉しいことを言ってくれるなぁ山本』
「ちぇ、またかわされた」
『はっはっは!』



**

 そこから放課後、俺がのんびりと帰路を辿ろうと下駄箱に居たとき、後ろから「えっ、チカくん!?」と鈴を転がしたような可愛い声が聞こえてきた。
 不思議に思って振り向けば、そこには剣道部主将で三年の持田と一緒にいる笹川京子の姿が。



『おや笹川。持田さんも一緒か』
「おう沢田」
「ち、違うのチカくん、これは持田先輩に一緒に帰らないかって誘われて……」
『おぉ! そーかそーか。よきかなよきかな。仲が良いのは良いことだ』
「(き、気付いて無いのかな……? よかった……)」



 にこにこと笑みを浮かべながら『またな』と手を振って玄関から出れば「おー、また明日なー」「ま、またね!」と元気よく返ってくる。それに気分を良くして家に帰れば、母さんが「今日からね! 家庭教師の方が来るのよ!」と教えていただいた。



『家庭教師か、俺は国語と歴史以外からっきしだからなぁ』
「成績が上がるまで住み込みなのよ!」
『父さんが仕事に出ているからなぁ、晩飯の時は一人増えるのか』



 そんな会話をリビングでしていた時だった。突如「ちゃおっす」と幼い声が足元から聞こえてきて視線を下ろせばそこには黒いスーツとボルサリーノを被った赤ん坊がいた。
 「3時間早く来ちまったが特別に見てやるぞ」と呟く赤ん坊に母が「ボク、どこの子」と聞けば。



「ん? 俺は家庭教師のリボーン」



 そう答えが帰ってきた。母が「まあ!」と少し大きな声を出す。俺はしゃがみこんで『よろしくなぁ坊や』と数学のテキストを見せながら笑いかければ「わかってんじゃねーか」とリボーンはにやりと笑った。



『母さん、俺は今から勉強するぞ。後で縁側に行くからな』
「分かったわ宗近!」



 元気よく階段を降りていく母さんを見送り、椅子に座って『さて』とリボーンに微笑む。



『本題はどうだ? ティモッテオさんから聞いているのではないかな?』
「その通りだぞ、宗近。俺はお前を立派なボンゴレ10代目にするためにやって来たんだ」
『おお! それでは本格的に頑張ろうか』
「お前は物分かりが良いな」
『そうだろうそうだろう』



 腕を組んで制服のままにこにこと頷けば「じじくさいな」と言われた。いきなりのその言葉はなかなか心に来るな。



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184:ぜんざい◆A.:2017/01/22(日) 10:00 ID:Few


「そうと決まればファミリーを探さねーとな」



 リボーンのその言葉を聞いて直ぐ様恭夜のことが頭に浮かんだ。



『一人ぴったりな人物が居るぞ、坊や』
「お、本当か」
『ああ』



 リボーンを肩に乗せて玄関まで行き、母さんに少し出ると伝えて外に出た。そのまま隣の家のチャイムを鳴らすと、「なに」と短く返ってきた。



『俺だ、宗近だ』
<!? ちょ、ちょっと待ってて!>



 そうして待つ暇もなく玄関が開き、そこから驚いたような顔をしている恭夜が出てきた。



『やあ恭夜』
「珍しいね宗近、滅多に自分からこの家には来ないのに」
『あぁ』
「コイツかチカ」
「……なにその赤ん坊」
『俺の家庭教師だ』



 そうして再び恭夜を連れて自室へと戻ってきた。


「で、なんだい宗近、わざわざ呼びに来て」
『はっはっは、いやぁ。俺がイタリアンマフィアのボンゴレファミリー10代目候補だと伝えておこうとな』
「えっ」



 ぽかんとしてこちらを見つめる恭夜に笑って、『このリボーンと言う坊やは俺を立派な10代目に育て上げてくれるそうだ』と教えれば「なにそれ僕も入る」と、即答される。
 リボーンも「即決だな」と恭夜に聞けば「宗近のいるところに居たいからね。だから宗近の右腕になる」と俺の右腕に引っ付いてきた。柔らかくてういやつめ。



「ファミリー一人目ゲットだな」
『ああ、恭夜が入ってくれて助かった』
「ありがとう宗近」



 ぎゅむっとその大きな胸に抱き込むように恭夜に腕に巻き付かれてもはっはっはと笑う俺を見てリボーンが「鋼の理性だな」とにやりと笑ったのが見えた。



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185:ぜんざい◆A.:2017/01/27(金) 20:00 ID:gtA

眼鏡ボロ布の夢主(完結済み)+10年の復活のif(×ケロロ)

 代理戦争が終わって慌ただしい中学生活を送ってそれから10年。
 沢田綱吉は立派なボンゴレ10代目になって、こっちらはマフィア界でも沢田の守護者として名を轟かしていた。現在はイタリアを拠点として活動している。
 そんなとき、風紀財団の一人からにわかには信じられない情報が舞い込んだと恭弥が渋々ながらに沢田に報告し、ボスを交えた守護者会議となった。
 相変わらずこっちはボロ布を頭から被っとるで。黒のスーツも着とるけど、下は短パンである。



「えっと……ヒバリさんが財団の方からとある情報が入ったとのことで、集まってもらったんですけど……」
『……内容は? 恭弥』
「……日本の武蔵市と言うところで蛙のような見た目をした二足歩行の謎の生物を財団の極一部……数人が確認したみたいなんだよ、一応と思って報告したんだ。……武蔵市っていったら黒曜の反対に位置する並盛の隣だからね」
「っ、ユーマか!? 宇宙人か!?」
「今回ばっかはそーかもしんねーのな!!」



 未知の生物か、とテンション高く椅子からガタリと立ち上がった獄寺の隣で椅子の背もたれに持たれながら頭の後ろで手を組んでいる山本がヘラッと笑った。……非現実的やわぁ、非現実許せるキャパオーバーやって。宇宙人とかユーマとか信じひん。
 六道は別件で動いているためこの場におらず、騒ぐ獄寺と山本に沢田は苦笑いしてからすっと真剣な面持ちに変化した。この10年で彼は根本はそのままなのだろうが、少しだけ変わった。こう、やるときはきっちりやると言うか、ボスって感じの貫禄がある。恭弥は下につくなんて嫌なのだろうけど、それほど対立はなくなっている。



「で。今回のこの件、やっぱり財団の人が見つけたらしいから、ヒバリさんに行ってもらおうと思ってます……大丈夫ですか、ヒバリさん」
「僕は別に構わないよ。その代わり、いおりは連れていく」
『ん?』
「えっ、伊達さんって明日から休暇じゃなかったかな……」



 困ったように髪を掻く沢田はばさばさとそこら辺に散らばる書類を漁り出した。そんな彼を横目に恭弥を見つめて肯定する。



『……おん』
「なら休暇中に確認するだけでも良いんじゃない?」
『……しゃーないな、構わんで。っちゅーわけやから、沢田』
「分かりました……」



 若干遠い目をしながら頷く沢田は苦労人だ。獄寺と山本はからからと苦笑いだ。



「……リボーンにお兄さん貸して貰わないと……」
「えっ、あの芝生頭まだ修行してんすか10代目!?」
「……そうなんだよね」
「ホント物好きなのな!」
「お前は気楽そうで羨ましいよ山本ぉ!」



 ファイト、ボス。

 そんなこんなで、こっちと恭弥は日本に戻ってきた。



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186:ぜんざい◆A.:2017/01/27(金) 20:50 ID:gtA



 並盛から恭弥のバイクに股がってしばらく。情報が確かならここ、『日向』と書かれた一軒家に居るはずなので、わざわざやって来た。



「……ここだね」
『ん』



 恭弥がインターホンに手を掛けたときだった。中から「い・い・い・痛(いっ)てエエエエエエーー!」とその家から叫び声が聞こえてきた。恭弥と顔を見合わせて、一度インターホンを素早く押してから悪いと思いながらも玄関を蹴り破って「軍曹!!」「ど、どうしたの一体!」と声のするリビングに突入した。



「お水いる!? うわっ、すっごい変な汗かいて……ぎゃあああああ! どちら様ーーーー!?」



 黒髪の少年がこちらを見てコップを放り投げながら悲鳴をあげる。彼の足元に居るのは緑色の二足歩行の謎の生物。……情報は確かだったのか。
 緑色の蛙のような生物はぐわんぐわんと頭を回し、ぎゅりっぎゅりっと地面に顔を擦り付け、そしていきなりガバァッ! と顔をあげて何かに耐えるように声にならない悲鳴をあげた。傍らの赤髪の女の子が「やだ! 怖い〜!」と声をあげてから「どちら様!?」と叫ぶ。



「と、とうとうブラックメンが来ちゃったよおぉ〜〜!」
「えっ、嘘ぉ!」
「……そのブラックメンが何を指すのか知らないけど、そこの謎の小動物、ヤバいんじゃないの」
「そっ、そうだ! 軍曹〜!」



 なんとも慌ただしいものだ。そのあとすぐに後ろから「通した通した!」と赤いの黄色いの黒いのがやって来た……なんなんここ。



「ここから先は我々の管轄、余計な手出しは無用だ! ……ん? んなあぁ!?」
「ハイハイ危ないですから下がって〜……ですぅ!? 地求(ポコペン)人がなぜ!?」



 こっちらのことはいったんほっといてと告げれば本当に興味をなくしやがった。クソガエルども……。
 聞くと、緑色の蛙のような生物は『虫歯』らしい。彼らはやはり宇宙人で、彼らの星では虫歯を『C・W(カリエス・ウォー)』と呼ぶらしい。……世界は、広いな。要するに、ミクロ単位の宇宙人も居るらしく、それが歯に巣くっているらしい。それを退治するために自身もミクロになるようだ。へえ。



「そ、そそ……そちらのスーツのお二方は、ど、どういったご用件で……?」



 こっちらはソファに座らされ、その向かいに座ってがくがくぶるぶる震えながらこちらを見てくる一同。布の奥から恭弥を見れば、彼は肘おきに肘をついてはぁとため息を吐いた。



「……君たちは何か勘違いしているようだけど、僕らは別に宇宙人が居たからと言ってどうこうしようという為に来た訳じゃないよ」
「え……?」
「確認さ。僕の財団の一部がそこの緑色の蛙を見たと報告が入ってね。武蔵市の隣は並盛だから、凶悪な奴だったら跡形もなく咬み殺してるけど。見たところそこまで危険そうな奴じゃないから」
「じゃ、じゃあ」
「何もしないよ。まあ、隣は僕の町だから、風紀を乱せば咬み殺す。肝にでも命じておけば?」
「命じておくであります!」



 聞くところによると、彼らは地球を侵略しにケロン星から来た宇宙人らしい。獄寺が見たらテンション上げてそう。
 ケロロと言うらしい緑色の彼はケロロ小隊の隊長のようだ。階級は軍曹らしい。



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187:ぜんざい◆A.:2017/01/28(土) 12:38 ID:JRA


 ちょこちょこ話を変えてスミマセン。ですがしかし。書きたいものを見つけましたのでやっていこうと思います。楓ちゃんが中学の卒業式終了すぐあとにトリップ。年齢は若返って中学一年生。見た目は身長が170cmぐらいまで小さくなったかなぐらい。
【長瀬楓 ネギま!→復活】


 卒業式を終えて、寮に帰宅して、拙者は床についたはずでござる。なのになぜ一軒家の寝室で一人寝ているのだろうか。
 外を見れば麻帆良の都市の面影すらなくて、いろいろと身を持って体験してきたからかここが自分のいた世界ではないと言うことはわかった。まあ確かに自分のいた世界じゃなくて寂しい気持ちも有るが、それを嘆いても仕方がない。そう考えてから拙者はもとの世界に戻れるまでこの世界を満喫しようと決めたのだった。
 驚くことに拙者は中学一年生のようだ。ほうほう、これはまた面白そうな。アーティファクトも有るし、拙者が使っていた忍装束もある。恐らく瞬動も出来るだろう。前と変わらないなと思いながら始業式を控えて今日から始まるらしい学校生活を送るべく並盛中学の制服を身に纏った。



**

 あれから二ヶ月ほど経って、友人が出来た。笹川京子と黒川花だ。最初は拙者の喋り方を不思議に思っていたらしいクラスも馴染んできている。
 そこで少々不穏な噂を耳にした。クラスメイトに聞けば京子が沢田綱吉にパンツ一丁で告白されたらしい。それで朝から元気がなかったのかと納得するも、その噂がどうも沢田をからかうようにできていてキナ臭い。事実は事実なのだろうが、少しやり過ぎな気もする。
 沢田綱吉とは、同じクラスのある意味有名な生徒である。入学以来テストは赤点、体育で沢田のいるチームはいつも負け。何をしてもダメダメで友達もいない。そんな冴えない沢田を周囲はダメツナともてはやしている。いやいや、拙者も入学以来テストは全部赤点でござるよ。



「やっぱダメツナねー、しかも変態だったなんて」
『んー……? そうでござるかな? 拙者、その心意気は良しと思うでござる』
「えー、長瀬さんったら冗談キツいわよー」
『あいあい』



 周りの女の子にからからと笑われてしまう。教室に入ってきた沢田を一斉にもてはやす……と言うかからかっている男子たち。女子もそんな沢田を見て笑っている。
 なんと言うか、こう、釈然としないでござるなぁ。京子の顔も少し影ってきているし、花なんて呆れてしまっていた。
 慌てて出ていこうとする沢田は後ろを向くが、そこには剣道部の部員が待ち構えていた。……それはやりすぎではないかな。
 そう思いながらも友人たちが引き留めにかかってきて動けない。そのまま沢田は剣道部に体育館へと連れていかれた。



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188:ぜんざい◆A.:2017/01/31(火) 20:38 ID:JRA


 剣道大会の結果は沢田が持田の髪の毛を全て抜いて完全勝利。やはり彼にはネギ坊主に似て非なるものを感じるでござる。いやはや、持田先輩、禿げて可哀想に。



「ツナくんってスゴいね! ただ者じゃないって感じ!」



 京子が沢田にそう告げたのを聞き届けて『では拙者は日直だから、そろそろおいとまするでござるよ』と告げてその場を離脱した。黒いスーツの赤ん坊の視線に気付いたからである。鼻唄を歌いながら教室に戻った。
 沢田綱吉、これまた面白そうな子でござる。少し、傍観でもしてみるでござるか。


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 しばらく観察して、一年が過ぎ、拙者は二年生になった。クラスは京子と同じ、まあ沢田たちとも同じだ。挨拶して少し雑談を交わすぐらいの仲でござる。
 どうやら沢田は裏の世界のボスと言っていいイタリアンマフィア、ボンゴレファミリーの10代目ボス候補らしい。帰国子女の獄寺隼人、野球部のエースの山本武を仲間に加えてワイワイ楽しげだ。並盛最強の不良兼風紀委員長の雲雀恭弥や京子の兄の笹川了平とも接触し、つい先刻ほど前に黒曜での六道骸一味との戦いが終わった所である。
 黒曜の体育館の外。沢田が筋肉痛で気を失った。やれやれ、本当に……こういうところはネギ坊主とは違うでござるな。ふっと呆れた息を吐いた時だった。パン、と銃撃の音が一発鳴り、それをすかさずクナイで弾き飛ばす。……気付かれたな。次からは札を使うでござるか。



「そこに居るのは誰だ」



 その問いには答えずに、拙者は天狗ノ隠簑でその場から姿を消した。今、正体がバレる訳にはいかないでござる。それにしても、あの赤ん坊……拙者の気配に気付くとはただ者ではないでござるな。


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リボーンside

 不意に感じた気配に素早く銃を撃てば何かで弾かれた。なんつー反応速度だ、ただもんじゃねーな。誰だ、と質問すればそれは答えられることなく、その相手は存在が消えたように気配を消す。手練だな、それも普通じゃねぇ。俺に気配を気付かせないとはなかなかやる。
 敵意は感じなかったからツナの命を狙って居るとかではないだろう。出来れば味方に引きずり込みてーな。



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189:ぜんざい◆A.:2017/01/31(火) 20:53 ID:JRA



 先日、商店街の方で大規模な爆発が起こったとニュースに出ていた。実際はボンゴレ所属の最強の暗殺部隊の「ヴァリアー」の幹部の一人、スペルビ・スクアーロがバジルと言う少年を追って事故を起こしたからなのだが。その際ボンゴレリングがどうのこうの。ああ、全て尾行で得た知識でござるよ。途中からキャバッローネファミリーのボス、跳ね馬ディーノが乱入してきて一時撤退となった。
 現在、山中外科医院と言う病院で怪我だらけのバジルを寝かせて、ディーノの話に耳を傾ける。どうやらスペルビ・スクアーロに取られたと思われたハーフボンゴレリングは偽物で、本物はディーノが持っていたと言う。



「ある人物からお前に渡すように頼まれてな」
「えー!? また俺に!? なんで俺なのー!?」
「そりゃーお前がボンゴレの……」
「す……すとっぷ! 家にかえって補習の勉強しなきゃ! ガンバロ!」



 そういって家に逃げ帰った沢田に溜め息をつき、拙者も音もなくそのあとを追った。



短い

190:ぜんざい◆A.:2017/02/04(土) 13:52 ID:EdQ



 流石に家の中まで尾行するとぷらいばしーとやらの侵害なので、そそくさと帰宅した。何やらお父上が帰ってきたらしい。二年ぶりだとか。いや別に叫んでいたのが聞こえただけでござるよ。



**

 翌日、家のポストに半分に割れた指輪が入っていた。はて、こんなものを送られることでも拙者はしたろうか?
 疑問もそこそこに沢田は再び昨日の医院へと寄っていった。
 そこには山本と獄寺がいて、沢田が半分の指輪を首から下げているように、デザインは違うものの半分のきれいな装飾のついた指輪を持っていた。リボーンとディーノに聞くところによると、沢田以外の六つの指輪は、次期ボンゴレボス沢田綱吉を守護するに相応しい六名に配られたようだ。



「俺以外にも指輪配られたのー!?」
「そうだぞ、ボンゴレの伝統だからな。
ボンゴレリングは初代ボンゴレファミリーの中核だった七人がボンゴレファミリーである証として後世に残したものなんだ。そしてファミリーは代々必ず七人の中心メンバーが七つのリングを受け継ぐ掟なんだ」
「それで後継者の証とかってー!?」
「10代目! ありがたき幸せっす! 身の引き締まる思いっす!」
「(めっさ喜んでるよ!)」



 まあ、そういう訳らしい。とても面白そうでござる。獄寺が「嵐のリング」、山本が「雨のリング」らしい。



「なんだ……? 雨とか嵐とか……天気予報?」
「初代ボンゴレメンバーは個性豊かなメンバーでな、その特徴がリングにも刻まれているんだ。
初代ボスは全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する大空のようだったと言われている。故にリングは大空のリングだ。そして守護者となる部下たちは、大空を染め上げる天候になぞらえられたんだ。荒々しく吹き荒れる疾風、『嵐のリング』、全てを洗い流す恵みの村雨、『雨のリング』、明るく大空を照らす日輪、『晴のリング』、何者にもとらわれず我が道を行く浮雲、『雲のリング』、激しい一撃を秘めた雷電、『雷のリング』、実体の掴めぬ幻影、『霧のリング』……そして最後に、闇に包まれし隠密、『影のリング』」
「……あれ? 八つ? ……数がおかしくないか? リボーン」
「ああ。つい先日、ボンゴレ地下室から偶然発見されたもんだ。今年から守護者に入る。つってもお前たちの持ってるリングじゃまだ……」
「ちょ! すとーっぷ! とにかく俺は要らないから!」



 次の会話が始まる前に、拙者は天井裏から姿を消した。
 あのスペルビ・スクアーロが狙ったのはリング、なら近々争奪戦が始まってもおかしくはない。
 ……瞬動、虚空瞬動、その他もろもろ、さらに鍛練しなければ。
 学校に行かず家に直帰して裏の森に入る。
 忍装束に着替えた拙者はぐっと背伸びをしたあとバサッと天狗ノ隠簑を羽織った。
 そのままトントンとジャンプして、虚空瞬動。ビュッと朝の心地いい風がほほを撫でてはすり抜けて、隠簑の布がバサバサとはためく。
 そのまま木の枝に着地してフヒュッと瞬動、再び前方の木に足を掛けては瞬動を繰り返した。



『鈍ってはいないでござるな』



 おもむろに背後へ振り返りその勢いで手裏剣を投げれば、ザクッと大きく太い木の幹の丁度中心に突き刺さる。
 それを満足げに見て頷き、懐から心眼と書かれた目隠し用の布を目に巻き付けた。幸いここには自然のアスレチックがある。以前にも魔法世界で似たようなことをした。



『樹龍が居ないのが残念でござるが、あのときほど辛い戦いでもなかろう。気楽にやるでござるよ。半日耐久森林マラソン。瞬動、虚空瞬動は禁止。いやあ、懐かしいでござるなぁ』



 そんなことをぼやきながら、ちらりと背後に視線を飛ばして「気配を消すのが下手でござるな」と呟き駆け出した。



**

家光side



「流石だな、甲賀中忍、長瀬 楓。気配を消した俺に気付くとは……。あれほどの実力でなんで中忍に収まってるんだ……? それにしても、下手と来たか……」



 本当にさすがとしか言いようがない。僅か中学二年にしてきっちり完成させられている。技術しかり、それぞれしかり。現在の地点でボンゴレ最強かもしれない影のリングを持つ女。
 ……心眼とか、やべーな。ただ者じゃねえ、どこでそんな戦闘術を覚えたのか。胸に煌めく白い翼のバッチも謎だ。



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191:ぜんざい◆A.:2017/02/05(日) 17:40 ID:EdQ


 数日後、夕暮れ時。修業もそこそこに、空腹感に襲われて帰宅するつもりなのだ。夢中になって鍛えていたからか数日何も口にしていなかってのでござるよ。
 電柱の上を瞬動で掛けていれば、以前拙者の修業を覗きに来ていた男。その傍らで走る少年。
 いいタイミングだ、とばっと彼らの前に飛び降りた。隠簑がバサバサとはためく。



『数日ぶりでござるな』
「!!……お前」
「何奴ですか親方様!」



 彼の前に飛び出た少年に苦笑いしながら『拙者、影の守護者でござる』と告げれは「おっ、お主が!」とパアッと顔を明るくさせた。



『長瀬 楓でござる』
「バジルです!」
『で。お主と親方様とやらは、今どこに向かおうとしているのでござるか?』



 親方様と呼ばれた人物は沢田の父らしく、現在ヴァリアーが雷の守護者を襲撃に来ているとの情報を得たらしい。飛び出していった沢田や雷の守護者ランボを探しているようだ。



『では、拙者も同行させてもらうでござる』
「すまん、助かる」



**


 拙者達が到着した時にはすでに沢田側のファミリー数人とヴァリアーが対立していた。
 その中でXANXUSと呼ばれる男が沢田を睨んで手に力を集め始めている。それを見て周囲が焦った。拙者は家光殿と視線を合わせてから糸付きの巨大な手裏剣をぶんっと投げる。
 ザクッと大きな音を立てながら地面に突き刺さるそれを糸で引き戻してやれば、XANXUSの気は削げた。よし。



「待てXANXUS、そこまでだ」



 家光殿が声を掛ければ一斉に視線がこちらへ向いた。



「ここからはオレが取り仕切らせてもらう」
「と、父さん!!?」
「なっ、10代目のお父様!?」
「家光……!」
「て、てめー、何しに」



 そんな会話が続くなか、家光殿はひとつ、死炎印とやらが刻まれた勅命がどうのこうの。まあ言いたいのは、同じ種類のリングを持つもの同士の一対一のガチンコバトルをやろうと言うことだ。会場は並中、審判はチェルベッロ機関らしい。ヴァリアーも去り、みんなも去ろうとした。
 ……その前に。



『拙者はいつまで無視を食らっていればよいでござるか?』
「わあっ! な、長瀬さん!?」
「長瀬!?」
『……夕暮れだからでござるかな? 拙者の影が薄く見えるでござるよ』



 ふっと自嘲気味た笑みを浮かべて羽織っている隠簑に顎を埋める。あまりにもでこざるよ……。



「ご、ごごご、ごめん! で、でもなんで長瀬さんが……!? まさか!」
「そのまさかだぞ」
『予想は当たっているでござる』
「な、長瀬さんも守護者ーー!? 長瀬さん普通の一般人でしょ!? なんでそんな服着てるのー!?」
『ござござ』



 詳しい話は翌日でござる。


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192:ぜんざい◆A.:2017/02/08(水) 00:00 ID:EdQ



 結局あのあとは何も話さず「詳しいことは明日、拙者に家に来るでござるよ」とだけ告げて『にん!』とその場を離脱した。もちろん瞬動で。
 風呂上がり、拙者の世界を全て話すか、自身だけを話すか迷っていたのだが、いきなり天狗ノ隠簑が実体化し、淡く光出す。これは、以前の“最後の鍵”(グレートグランドマスターキー)の能力だった『アーティファクト強制発動』にそっくりだった。……誰かが、来るでござるか。



『……?』



 若干、旧知の友人に会えるとなると、わくわくする。そしてどさりと落ちてきたのは、三人の人影。全員、クラスメイトの……



「……楓?」
「楓さん!?」
「長瀬じゃん!」
『真名、のどか殿、朝倉殿……!』



 現れたのは同じ3-Aの龍宮真名(タツミヤ マナ)、宮崎のどか(ミヤザキ ノドカ)朝倉和美(アサクラ カズミ)だった。予想はやはり当たっていたか。



「楓、お前……今までどこに行っていたんだ……? フェイトがカンカンだったぞ」
『……そっちはまだ数ヵ月も経っていないでござるか、真名』
「ああ、フェイトが来てまだ二週間だ。お前は一週間前に行方不明になっている、ネギ先生にも連絡が行っていたからな、あの子も心配しているだろう」
『そうでござるか……実は拙者がこの世界に来てから既に一年半が経過しているのでござるよ』
「い、一年半ですかー……!?」
「え、じゃあこっちの世界と私たちの世界じゃ時間の流れが違うっていうの? 長瀬」
『そうみたいでこざるな』
「一応聞くがここはどこだ?」



 真名の問いに答えてやり、自分が今どんな境遇に居るかも話せば三人とも興味津々で頷いた。



「……守護者か。まあ、お前程の実力なら大丈夫だろうよ」
『やれやれ、真名。油断は禁物でござるよ』
「うるさい、わかっている」



 結果としては真名たちもこの家に住むことになり、明日の話は拙者達のいた世界のことも話すことに決定したでござる。にんにん。



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193:ぜんざい◆A.:2017/02/08(水) 21:37 ID:EdQ


 今日も学校に行かず、修行をするでもなく、友人たちとのんびり過ごす。
 今日、沢田たちは学校に行っているらしく、来るのは夕方になるだろう。



『暇でござるなぁ』
「じゃあ魔法世界行ったときの最終決戦の映像見る? あのあと編集して映画風に仕立てたんだよねー、全9時間! 舞踏会から夏休み最終日のイベントと決着まで! 見る? 暇潰しには持ってこいだって! 私のアーティファクトが全てを記録してたのよ!」
「……ほう」
「い、いいいいいや、で、でも……それには、私が調子に乗ってデュナミスさんに偉そうな口を聞いたところも……?」
「当たり前よ! それに、もう一回ネギくんの勇姿見れるんだけど、宮崎どうする?」
「! み、見ますー……!」
『決定でござるな』



 備え付きだったDVDプレーヤーに朝倉自作のDVDをセットして上映でござる。


**

 ツナside

 学校も終わって、山本や獄寺くん、リボーンと長瀬さん家にやって来た。でも、いくらチャイムを鳴らしても返事がない。どうしたんだろ……。



「長瀬のやつ、居ねーのな?」
「ったく、せっかく10代目が来たっつーのに」
「いや、長瀬はいるはずだ、見ろ、開いてるぞ」



 リボーンが玄関に手をかければ易々と開くドア。悪いとは思いながらも『オ邪魔シマース』と呟きながら入れば、靴が三足多いことに気が付く。誰か来てるのかななんて思いながら足を進めていった。



「なんて言うか……普通の家だね」
「そっすね……」



 獄寺くんに同意を貰いながら進めば、奥から「ほう、私がザジの姉と戦っていたときは丁度お前が風のアーウェルンクスと戦う時か」『そうでござるな』「宮崎は雷で気絶しちゃってたもんね、あんたフェイトに石化の針十本以上で狙われてたでしょ、何したの」「わ、私じゃなくて、多分いどのえにっきの方だと……」「それを引き出したのも、ある種の才能さ」「へぅ」と会話が聞こえてきて、その部屋の扉を開ければ、大きなテレビに外国人の顔立ちをした少年と長瀬さんが向き合う映像。それを見てるのは長瀬さんと肌の黒い美人と骸と似たようなパイナッポーヘアの女の子、ショートカットの気弱そうな女の子だった。



『おや、来たでござるか』
「わりーな、チャイム鳴らしても出てこねぇから入っちまった」
『全然かまわんでござる』



 そうして事情を話してもらった。あの三人は昨日突然やって来たらしい。



『拙者は長瀬楓、甲賀中忍でござる。実は拙者は一年半ほど前にいきなりこの見知らぬ大地に立っていてでござるな……つまり、拙者はこの世界の人間ではないのでござる』
「……多分ホントだな、疑うなよお前ら」
「分かってるよ、リボーン」
『助かるでござる。拙者、自分の世界では中学三年なのでござるが、若返ってしまったようでなぁ。
 拙者の世界は魔法が存在するのでござる』



 そこから一気に話してもらった。珍しく獄寺くんも大人しく、真剣に聞き入っている。そして全てを聞き終えて、自己紹介をすることになった。と言っても長瀬さんが他の人たちに俺たちのことを教えたみたいだけど。



「話は楓から聞いている、龍宮真名だ。楓とは死合いをした友人だ。向こうではスナイパーをしていた。もし頼みたいと言うならば、金さえ払ってくれれば何でもしてやることも出来るぞ? 半魔族だ、よろしくな」
「私は朝倉和美。麻帆良じゃ有名な実況者で新聞記者だよ。私たちの詳しい出来事が知りたいなら言ってね、私編集のDVD貸したげる、ちなみに新聞部ね」
「み、宮崎のどかですー……。えっと……と、図書館探検部所属です……あと、トレジャーハンターもしてます……よろしくお願いします……」



 肌の黒い美人が龍宮真名、パイナッポーヘアが朝倉和美、ショートカットの気弱そうな女の子が宮崎のどか。……女の子ばっかりだ。



「あ、ねーねー聞いて聞いてー! 長瀬ってばさー、魔法世界行ったとき、私達守るためにラスボス級の敵に一人で勝負しにいったんだよ、かっこよくない!?」
「え!? あ、朝倉さん!?」
「丁度今からなんだよねー! まあ見てなって!」



 朝倉さん強引だなぁ……。



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194:ぜんざい◆A.:2017/02/09(木) 23:25 ID:EdQ

三日月宗近転生沢田綱吉成り代わり番外編。※パラレルワールド注意※時間軸は虹の代理戦争終了直後。

**

 自宅にて。いつも通り甚平を着て、縁側で恭夜と茶をすする。思い返せばいろいろあったなぁと俺が呟けば、隣に引っ付いて離れない恭夜が「じじくさいよ」と俺の右腕に抱きつく力をギュッと強めた。
 その直後、どこかからランボの泣き声が聞こえてきて、ひゅるると風を切る間抜けな音が聞こえて、俺が刀を抜く前にそれは俺たち二人に着弾する。最後に聞こえたのは、獄寺の「10代目!」と叫ぶ声だった。

 その刹那、ボフンと音が響き、目の前を白い煙が覆う。大方10年バズーカだろうな。
 きょろきょろと見回せば、そこは俺の部屋で、でも太刀掛けが無い。はて……と首をかしげながら恭夜を見れば「……宗近の部屋なのかい……?」と怪訝そうに首をかしげている。

 煙が晴れて一番に見えた人影は、俺もよく知っている……この物語の主人公、沢田綱吉。恐らく恭夜と二人、人数のせいでなにかしらの不都合が起きて白蘭の言うパラレルワールドにでも来てしまったのだろう。目を見開き、口をはくはくさせてから、「りっ、りぼおぉぉぉぉおおん!」と隣のリボーンへと叫びをあげた。うるさいと一蹴してイタタと呟く彼を横目に、リボーンは「お前は誰だ」と呟く。部屋に居たらしい獄寺や山本もこちらを一瞥した。



『ん……? 俺か? 俺はなぁ、……はて? 恭夜、俺はなんでここにいるんだ?』
「はぁ!? ふざけてんのかてめえ!」
「まあまあ、落ち着けって獄寺」
「……あの子牛の10年バズーカとやらに当たったの、わかる? 大丈夫かい? 本当に脳までおじいちゃんになったの? 僕結構困るんだけど」
『はっはっは! それもそうだなぁ、俺も困る』
「おい」
『おっと。すまん、自己紹介だったなぁ。俺は沢田 宗近、好きに爺でも何でも呼べ呼べ。そして、恐らくパラレルワールドの『沢田綱吉』だ』
「ぱっ、パラレルワールドの俺!? お前が!?」
「パラレルワールドの10代目!?」
「すげーのな!」
『あなや、そこまで驚かれるとは』



 綱吉は「こんなイケメンがパラレルワールドの俺!? 明らかに何でも出来そうじゃん!」とうわあああ! と頭を抱える。だが、恭夜は綱吉に「そうでもないよ」と言い放った。



「へ?」
「宗近、朝は4時頃に自然と目が覚めて勝手に家から出て散歩みたいにほっつき歩いてるんだ。最悪三日も戻らないことも多いんだよ」
「は!? 三日!?」
「それに朝に縁側で呑気にお茶すすってるから遅刻はするわ、一日そこに居て夕方頃になって「あぁっ! 学校だ!」とか呟いてるし。なにもないところで転ぶわ授業中お茶を湯飲みで飲んでるわ僕が言わなきゃ学校まで甚平のままで行こうとするわ、国語と社会と体育以外ホントダメダメだし笑顔で刀を振り回すわ……前なんて宿題のプリントが嫌だからって庭先で細切れにしてたんだよ。無駄に顔も良いから変な女が寄ってくるし性格おじいちゃんだし言動おじいちゃんだし授業はサボって校内徘徊してるし昼時には中庭のベンチで野良猫たちと戯れながら寝てるしホントダメダメなんだよ」
『あなや、ずいぶんとボロクソに言われてしまった』



 へらりと笑えば恭夜に腹をどつかれた。



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195:ぜんざい◆A.:2017/02/10(金) 00:00 ID:EdQ



「さっきから、パラレルの10代目のことぼろくそに行ってるけど、てめぇは誰だよ」



 獄寺が不機嫌そうに恭夜を睨む。恭夜はああ、と呟いてから口を開いた。



「僕は雲雀恭夜。宗近の幼馴染みでその世界の並盛の風紀委員長をしてるよ」
「ヒッ、ヒバリさんーーー!? そっちの俺の世界じゃ女の子なの!?」
『おや、じゃあこの世界では恭夜は男か』
「なんかやだ」
『見てみたい気もするがなぁあいたたたた、いだっだだだっ! や、やめろやめろっ、痛いっ』
「なんかいらっとした」



 右横腹をトンファーでぐりぐりと圧迫されて痛みに悶えていれば、獄寺が俺に問い掛けてきた。



「パラレル10代目! そっちの世界の俺はちゃんと右腕として機能してますか!?」
『ん? ……ああ、お前はよくやってくれている。山本と日々俺の左腕の座を取りあっているぞ』
「ひっ、左腕ぇ!? 右腕じゃないんですか!?」
「バカ言わないでチンピラ。宗近の右腕は僕だよ。譲らない、絶対に、チンピラにも、山本にも、絶対、誰にも、僕だけ、僕だけの、あげない、僕だけが、宗近の、ダメだよ、宗近は、僕のもがっ」
『恭夜が俺の一番最初のファミリーで右腕だ』



 若干仄暗い雰囲気を出し始めて俺を見上げて腕をギリギリと抱き締めながら呟き出した恭夜の口を左手で塞いで彼らに微笑みかける。彼らは恭夜を見て若干顔を青くしていたが、分からんでもない。



「そっちのヒバリはお前に相当執心してんだな……」
『はっはっは! リボーンや、言うてくれるな。まあ俺は美しいからなぁ』
「うわあ! 言い切ったぞ俺!?」
「宗近は誰が見ても美しいからね、女性教員でさえ惚れるんだから」
「ヒバリさんがそんなこと言うなんて!?」



 騒ぐ綱吉に苦笑していれば、彼ははっとして俺を見た。



「そ、そっちじゃ、京子ちゃんどうなってる宗近!」
『ん〜……よくわからんなぁ』
「笹川京子、まあ、宗近にベタ惚れだよ」
『あなや、そうなのか』
「えっ、マジかよやべーな」
「嘘ぉ!」
「この世界の彼らならともかく、なんで宗近気付かないの……。いっつも宗近挟んで僕と言い争いしてるでしょ」
『あなや』
「ほんとムカつくね。なんなの、あれ。笹川京子の奴、僕の見てる前で宗近にべたべたべたべたべたべたべたべたと鬱陶しい、いずれ宗近の見てないとこで咬み殺す」



 目が完全に暗くなった恭夜を放置して『そうだ、三浦だ、そっちじゃどうなんだ?』と逆に問いかけてみた。



「ハル!? ハルは……えーっと、その……」
「ツナにベタ惚れだぞ」
『ほほう、仲良きことは美しきかな、羨ましい』
「そっちのハルは?」
『くうると言うものだな。毒舌家とでも言うか。子供が嫌い。動物が苦手。同性愛者。……俺に嫌悪感を抱いているようでな……いつもごみを見ているような目で見てくるんだ。「消えればいいのに」と言う言葉は口癖だな……流石に金的蹴りは効いた』
「そっちのハルなんか怖い! 無邪気なハルでよかった!」
「羨ましいぞ綱吉」



 っと、もうそろそろ五分か……。



『そうだ、記念に写真でも撮ろうか。今後きっとないぞこんなこと』
「そうするか」
「ええ……、僕別に宗近以外どうでもいいんだけど」
「ヒバリさん!?」



 最終的には記念写真を二つのカメラで撮って片方ずつ持った。



『じゃあな、頑張れよデーチモ』
「宗近もデーチモでしょ」
「宗近は宗近だよ」
『少し黙ろうな恭夜』
「宗近が言うなら、うん、わかったよ」
「(ヒバリさんめっちゃ素直ー!)じゃ、また会えたら良いな、宗近」
『ああ、またな、綱吉』



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196:ぜんざい◆A.:2017/02/11(土) 00:22 ID:EdQ


 自分の世界に戻ってから数日、俺と恭夜とリボーンが今後ボンゴレをどう引っ張るか思案していたときだった。
 ボゥンと音が鳴り響き、煙が部屋に蔓延する。奥からげほげほと咳き込む声がする。隣の恭夜は俺の腕をギュッと抱いた。
 煙が晴れて見えた姿は、先日見たあの沢田綱吉。リボーンにも一度事情を話しているので「ああ、アイツが」と目をしばたかせる。
 そして驚くことに綱吉の隣に居たのは、そちらの世界の雲雀恭弥。



「げほっ、げほっ、うぅ…あれっ!? 宗近!?」
『ああ、俺だ。数日ぶりだなぁ、綱吉や』
「……ちょっと。草食動物、ここどこ、なにこれ」



 雲雀恭弥が不機嫌そうに綱吉を見下ろした。ヒィッ! と情けない声をあげて怯える綱吉を指差して「アレがパラレルワールドのお前なんだな」と聞いてきた。コクリと頷けば「全く似てねぇな」と呟く。
 何やら綱吉が刺激したのか、雲雀恭弥がトンファーを取り出して今にも殴りかかりそうになってきた。



『これこれ、ここで暴れるのはやめろ、刀が折れる』
「その前に部屋が壊れるよ!? そっちの心配しろよ!!!」
「そっちのチカはツッコミ気質か」
「なに冷静に思案してんだよリボーン!」
「うるさい」



 雲雀恭弥のトンファーが風をきる。素早くて、避ける暇もない。ああこれは直撃だなとにこにこ微笑んでいれば、いきなり黒い何かが飛び込んできて雲雀恭弥のトンファーをガィンと派手な音を立てながら弾き飛ばした。ガン、と壁にぶつかりカランカランと地面を転がるトンファー。
 目の前に居たのは戦場でもあまり見れないガチギレの恭夜。彼女からは濃密な殺気が惜しげもなく晒されていて、常人なら気を失っているだろう。まあここにいる人間は全員常人じゃないが。
 恭夜はストンと俺の右横に腰を降ろして、パラレルの自分を見据える。彼も「ワオ」と呟いてから軽やかに地面に腰を降ろした。胡座。



「草食動物から聞いてたけど、パラレルワールドの僕って本当に女なんだね。まさかトンファー弾き飛ばすなんて」
「宗近に手を出したら、右腕の僕が許さない。地の果てまで追って無惨な死体に仕立てて宗近の前に転がすからね」
「へぇ、僕がそんなこと言うなんてね、群れてるのかい?」
「僕だって群れるのは好きじゃない、嫌いだよ、宗近以外にはこんなことしない。まあ他校生に並中生がやられたら、まあ多分怒るんじゃないの?」
「ずいぶんそこの沢田宗近を贔屓してるね、風紀の存在も曖昧だ」
「さっきも言わなかったかい? 僕は宗近の右腕だよ。僕の全ては宗近の為にあるといっていいし、宗近がいない世界なんて生きてる価値すらないんだ。宗近は僕の中で揺るぎない絶対、そう、僕は宗近のもので宗近は僕のものだ、宗近は僕の呼吸に等しい存在だ、僕の全てだ。宗近以外どうでもいい、誰にも僕の宗近には触らせない、宗近が、誰にも、絶対に、僕は、僕の、宗近だけ、あげない、渡さない、ダメだ、そうだ、なら僕が監きnむぐっ」
『とまあこんな風に頑張ってるみたいなんだ』



 完全に目からハイライトが消えたので慌てているのを動きには出さず悟られないよう恭夜の口を左手で塞いで雲雀恭弥に告げれば「……犯罪ワードが聞こえた気がしたんだけど」と表情変えずに俺に告げた。隣の綱吉は雲雀恭弥の影で完全に怯えている。
 いまだギリギリと力強く恭夜のその大きなめ胸に沈むように抱き締めるられている右腕はみ指先から感覚が無くなってきた。待て待て、血が止まっている。
 恭夜をガッ、と拳で少しだけ手加減して小突(?)けばハッとしたように力を緩めた。腕は離さないらしい。



「……宗近、今そっちのヒバリさん、結構力入れて殴ったの……?」
『ああ。前にもこんなことが数百回あるんだ、やさしめに小突いても戻ってこなくてなぁ』



 はっはっは! 困ったものだろう? と同意を求めれば目の前の雲雀が笑い事じゃないでしょと言う顔をして綱吉が「笑い事じゃないだろ!?」と気持ちよくツッコミをしてくれた。



「……とにかく、宗近に危害を加えたら咬み殺す」
「わかったよ」



 呆れたように自分を見つめる雲雀に苦笑いが浮かんだ。



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197:ぜんざい◆A.:2017/02/12(日) 02:24 ID:PaI

ぼろ布主+4が銀魂にトリップして絵描き屋として食い繋いで頑張ってもとの世界に戻ろうとする話。雲雀さんと婚約。


 それは唐突。自宅で相も変わらずぼろ布を被って椅子で綱吉に渡されたボンゴレの資料を片していた時だった。

 つい先日に成人した。今度ディーノと飲むかとか考えて頭を横に振る。恭弥がキレるからやめておこう。
 中学の時と変わらず左腕に巻き付く包帯の上から蛍光灯に反射してキラリと光るシンプルで控えめな指輪を一撫でした。あと、ちょっと。あと二週間ほど経てば、名字が伊達から雲雀になる。……まあ、そういうことになるわけだ。
 ふぅと書類をバサッと乱雑に机に投げ捨てて椅子の背もたれに体重を預ける。ちなみに白玉の本名が伊達 いおりと言うことはとっくの昔に知れ渡っていた。多分あれだ、文化祭でこっちが白玉だと知っていた綱吉と山本の本願に負けておこなってしまった体育館での白玉初ライブ。あれで顔と名前が拡散したんだ。うわ改めると泣きたい。以前恭弥にプロポーズ的なものをされてしばらく経ったあと、ネットで報告したら「あぁ、ヒバヒバか、よく頑張ったね(柔笑)」「やっとか、よく頑張ったなヒバヒバ(フッ☆キラッ」「おっそ!! とりあえず私からは心からおめ! ヒバヒバよく頑張った!」「ヒバヒバめ、俺らを焦らしたな、よく頑張った!」「俺たちシララーはヒバヒバと白玉をくっつくの応援し隊だからな、素直に嬉しい。ヒバヒバよく頑張った」「今思う、ヒバヒバの顔よく知らん。ヒバヒバよく頑張った」「どうせイケメン。ヒバヒバよく頑張った」「白玉さん裏山。ヒバヒバよく頑張った」「ヒバヒバのプロポーズの現場誰か撮ってないの? というかよく頑張ったねヒバヒバ」と暖かいコメントが返ってきた。なんかヒバヒバよく頑張ったの意味のコメントがよく語尾についていた気がする。恭弥は数度こっちの雑談生放送やホラゲ枠の生放送に乱入してくることがあり本人からの希望で「ヒバリ」と言う名でやっているのだが、リスナーさんからの愛称はヒバヒバだ。なんと可愛らしいことか。
 改めて指輪を眺める。どうやら恭弥特注らしくて、リングの裏にはこっちと恭弥の名前が刻まれていた。



『……ホンマ、』



 あんま実感沸かない。一緒になるのが嫌なわけではない。中学時代から(それはもう、学校で露見されたときからべったりぴったり)片時も離れずに一緒に居るので、あまりもとの生活でも変わらないような気がするのだ。もちろん嬉しいことですが。
 その時、パサリと自分の羽織っていたぼろ布が風もないのに揺れた。

198:ぜんざい◆A.:2017/02/12(日) 09:14 ID:PaI

『アンクル』にVGを変更。右足首。


 次の瞬間にはもうこっちは自室には居なかった。周りを見渡せば和風な人が行き交う大通り。あれ、なにこれタイムスリップ? とか考えるも普通にバイク走ってるしホンマなんなんここ。


**

 あれから数日。この世界の歴史の雑誌を図書館で借りて読んだ。ここは江戸のかぶき町、この世界には天人と言う宇宙人が存在し、天人に甘く侍に厳しく、と言う政治が回っている。官僚には天人も。以前天人を地球から追い出そうと、侍が攘夷戦争を起こしたらしい。まあ負けたが。政治が寝返ったのだ。以来攘夷志士は悪者として言われるようだ。その中でもテロとか起こすバカもいるらしいけど。……あれ、おかしいな。一回漫画で読んだこと有るような……。いや違うここはそこに似た別の何かだ。

 こっちはと言うと金をスケブで作り出し、家を購入した。大通りにある一軒家だ。とりあえずなにもしないわけにはいかないので、一階で絵描きでもしようか。と言うことになり、いろいろVGを駆使して一階を改造し、まああまり人は来ないものの頑張っている。
 それと、恭弥が居ない。恭弥が居ないだけでこんなに寂しいとは思わなかった。頭から被るぼろ布がこっちの震えを伝えて揺れる。
 ああ、もう時間だ。と店の席を立ち、今日は終わるとするかと立ち上がった時だった。



「ここ、まだやってっか」



 鼓膜を震わすなんちゅーか、恭弥とはちょっと違うとんでもないイケヴォ。恭弥もイケヴォですけど、コイツはなんかエロい。
 振り向いて『まだやっとります』と告げてから相手の姿を見て微かに一時停止するも、『なんか描きましょか?』と通常通りに告げた。
 そこには夕焼けをbackに背負ってキセルを手にこちらを見つめる紫が強い色の女物の着物を男結びでかなり着崩した色男がいました。いや問題はそこじゃない。そこじゃないんだ。



「あァ、この写真描いてくれ。A4で頼むぜ」
『わかりました。期限は何時ぐらいがエエですか』
「そうだなァ、三日後くれぇにまた来るぜ」
『了解っす』



 写真を受け取り奥へと引っ込もうとすればグイッと布を引っ張られて「おい、名前聞き忘れてんじゃねェか」と呆れた声で言われた。確かに忘れていた。いや問題はそこじゃない。



『すんません、忘れとりました。名前伺いますけど大丈夫ですか』
「構わねえ。俺ァ、“高杉 晋助”だ」
『(たっ!?)高杉 晋助さんですね、依頼承りました』
「おう」



 た か す ぎ  し ん す け
 そう、問題はここだった。ここだったのだ。いやそうですよね、上記の風貌に左目包帯眼帯とか高杉さんしかありえへんですよね。
 ちょっと、新撰組(おまわり)さーん。ここに過激派攘夷志士が居まーす。鬼兵隊の総督がここに居まーす。すごく関わりたくないでーす。俺は全てを壊したい病に掛かったいい年した厨二がここに居まーす。
 布を目深に被り直して背を向けてシャッターを閉めようとした時だった。



「客が来たのに顔も見せねぇとは、お前どんな頭してんだ」
『……こっちコミュ障なんで、目ェ見ると話せへんのですわ、勘弁したってください』
「へェ……まぁそう言うことにしといてやるよ。……ずいぶんとゴツいアンクルしてんな」
『友人から渡されたもんなんで。これらのために多くの人が血の海に沈んだとか沈まなかったとか』
「そんなに高価なもんか」
『まあ、とある、人間の命を大事にするマフィアに代々伝わる幹部の継承の証なんで、そこそこには高価やと。今代で10代目です』
「お前マフィアか」
『今はちゃいます。ただの戦闘は弱い一般人です』



 いぶかしげな視線を投げられたものの納得して高杉さんは帰っていった。なんか緊張した。とりあえず銀魂の世界とかなんなんこれ、なんなんこれなんなんこれなんなんこれ!?
 恭弥と風くんがとても懐かしいです帰りたい。



.

199:ぜんざい◆A.:2017/02/12(日) 16:31 ID:PaI



 三日後、高杉さんは律儀に店にやって来た。やって来た高杉さんに絵を渡せば固まって「これ本当に絵か? 写真プリントアウトしたんじゃねぇのか」と疑われた。失敬な。



『うちにプリンターないです』
「実力かよ」
『うぃす』



 高杉さんはけらけらと笑ってから「また来るぜ」と行ってしまった。……うっ、嬉しい申し出ですけどぉ、もう来ないでくださぁいっ、怖いですぅっ。ダンロンの蜜柑ちゃんのように言ってみたがキモくて吐きそうだ。蜜柑ちゃんだから出来るのだあれは。しまった、長い間黙ってしまった。



『……また』



 慌ててそう告げれば高杉さんは振り返らずに片手をあげて手を振ってから行ってしまった。なんやあのエロイケメン。
 それを見送ってからぱたんと戸を閉める。どかりと椅子に座ってからあああああと大きく息を吐いた。



『……恭弥』



 ここにいない恭弥の名前を呼んだ。普通の紙に鉛筆を滑らせて恭弥のいつも通りのムスッとした顔を描いた。いつの間にか出てきていた夕焼小鳥がぽすりと頭の上に乗ったのが分かる。この小鳥もヒバードに似ているから不思議だ。



『せや、買い出し』



 慌てて立ち上がり、扉をガラリと開けて鍵を閉めて、ついでとばかりに周囲にばれないように三重に鍵を掛けてピッキング対策を施した。
 匣兵器からバイクを出していたのでそれに股がりヘルメットを被って出発した。バサバサとはためくぼろ布に隠れて、背後をつけてくる影には気づかなかった。


 必要だったものを購入し終えて帰宅。異変に気付いたのはその時だった。



『なんっや、これ』



.

200:ぜんざい◆A.:2017/02/12(日) 23:16 ID:PaI

厳重に掛けておいた鍵はぶっ壊され、入られた形跡があった。嘘やろ。あるものないもの見てみれば金品は全て残っていたものの、下着が一枚無かった。嘘やろ。あれか、今ちまたで騒がれている下着ドロか。若い女の下着を盗んでは夜な夜なモテない男に振り撒いているあの鼠小僧の変態バージョンか。まあ捕まるやろ。そう思いVGで扉を修復して五重掛けの鍵を設置して家に入った。
そして数日後、高杉さんが再び店へと姿を見せた。隣にピンクのへそ出しセクシーな服を着た金髪美人をつれて。あれ来島また子よな。うーわめっちゃ美人や、実物めっちゃ美人や。高杉さんは頭に被っていた笠を小脇に抱えて煙管を加えながら「よう」とこちらに声をかけた。

『どうも高杉さん。隣の美人、高杉さんの彼女すか』
「なっ、なななっ、びっ、美人!?」
『はい、久々こんな美人見ましたわ』
「あ、ありがとうっす!」
「女店主、依頼だ」
『はい』

高杉さんの雰囲気がちょっと怖いものになったのでちゃんと話を聞くことにした。

「今ここで絵ぇ書くのは可能か?」
『全然』
「コイツ描いてやってくれ、前の絵をプリントアウトだっつって聞かねぇ」
「だってあんなの絶対プリントアウトっすよ! 金取り泥棒っすよ!」
『(ひどい言い草や)鉛筆でエエですか』
「頼むわ」

のんびりと一枚の白紙とバインダー、鉛筆を取りに奥へ引っ込みまた出てくれば二人してこちらを見つめてくるお二人の姿が。

『どないしました』
「てめェ左腕の包帯どうした。昔絡みで喧嘩か」
『いやこれこっちが16の時につけてもた大火傷です。見せれる様なもんやないんで包帯巻いとりますけど』
「そんでその包帯すら隠す為にボロ布頭から株ってんのか」
『こっちコミュ障なんで』
「嘘だな。いくら目を見ねえっつってもコミュ障がここまで喋れる筈ァねえ」
『あー、恥ずかしながら、コレないと不安になる言いますか、調子出んのですわ』
「ヘェ」

くすくすと鋭く目を細めて笑う高杉さんを不思議に思いながら来島さんに椅子に座ってもらい、こちらも正面に腰を掛ける。

『高杉さん、名前なんちゅーんですか』
「来島また子だ」
『来島さんすね、すんませんけどしばらく動かんといてください』
「了解っす」

また子のその合図を聞き、こちらはバリバリと鉛筆を滑らせ始めた。途中で力を込めすぎて鉛筆が折れたので『役立たんな』と一瞥もせずに勢いよく後ろに放り投げ、手元に呼びとして置いていた鉛筆を手に取りずしゃしゃとここ数年VGで鍛えた筆速でまた子を描き進めていった。

「(はえェな、手元が見えねぇ)」
「(なんかずしゃしゃとか聞こえてくるんすけど!?)」

二人が脳内でそんなことを考えているなんていざ知らず、ものの五分も経たずにまた子ちゃんを描き終えてしまう。

『とりあえず待たせるんアレなんで速攻仕上げました。雑になりましたけどそこら辺は堪忍してください。て、顔色悪いですけど、気分でも悪いんですか』
「い、いや、大丈夫っす。これ、今描いたんすよね!?」
『あっはい』
「晋助様! 見てくださいこのとんでもクオリティ! 五分っすよ五分!?」
「…女店主よォ、あんたあの絵もこんなスピードで終わらしたのか?」
『まあ』

そう頭を掻けば、唐突にヒタリと高杉さんから首もとに刀を置かれた。咄嗟に両手を上げて『高杉さん』と声を掛ける。

「おい、女店主よ。やっぱアンタ唯者じゃねーな」
『……タダの善良な一般市民です言うて』
「いや違ェな。本当にタダの善良な一般市民なら首に刀置かれて震えて泣き出すだろーよ、それに」
『それに?』
「さっきから俺は一般市民なら気絶するくれェの殺気を出してたんだ。そこの来島でさえ顔を青ざめる様な、な」
『!』

なるほど高杉さんたちは元々目的がコレだったのか。口実として絵の事を出したと。悲しいような賢い様な。いろいろと脱帽ものだ。

『ホンマ、脱帽もんやで高杉さん』
「あの殺気の中で平然と絵ぇ描いてたアンタにも脱帽だぜ俺ァ」
『いや、まぁ慣れとるんで、殺気とかには。集中し過ぎると分からんだけっちゅーか』
「慣れてるだと?」
『婚約者がそんくらいの殺気を常日頃から出しとるんですわ。多分本人無意識ですけど自然と言うか、アイツの雰囲気が殺気っちゅーか』
「んだそりゃぁ」

さて、高杉さんたちはこっちを一体どうするつもりなんやろか。

201:ぜんざい◆A.:2017/02/13(月) 23:36 ID:PaI




「てめェ、実力者だろ」
『自分で言うのもなんやけど、多分そうやないですか』
「鬼兵隊に入る気はねェか」
『無いな』



 即答すれば理由を聞かれた。そんなの単純に新撰組に追っかけられるのは困るからだ。そう返せば「ちげぇねぇ」と高杉さんはカラカラと笑って刀を納めた。



「ダメもとでまた何回か勧誘に来てやるよ。贔屓にしてやるから、まァ考えててくれや」
「っす。そういうことなんで」
「また来るぜ、女店主」
『来島さんまた来てな』
「てめえ」



 若干ムッとした高杉さんにフッと笑みを溢して『また』と返せば彼は返すことなく歩いていこうとする。が、ピタリと足を止めてこっちの姿を目に止めた。



「女店主……お前、名前なんだ」
『……伊達 いおりや』
「伊達か」



 今度こそ彼ら二人は網笠を頭に被って行ってしまった。なんか、悪人には見えんかったけどなぁ。
 そして翌日、差出人が高杉晋助の宅配便が届いて、すごく美味しそうかつ高級そうな水羊羹が送られてきたことには流石に驚いた。贔屓にってこういうことか。これは、無下には出来ひんぞ……どないしてくれるんや高杉さん。



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202:ぜんざい◆A.:2017/02/13(月) 23:50 ID:PaI


 ワイシャツを着てそれをそのまま腕捲り。腰にジャージを結んで下はワークパンツ。まぁダボッとしたディーノが穿いてる様なズボンだ。
 その上からボロ布を羽織って準備オーケー。そのままVGのスケブから恭弥の乗っていたバイク(スズキ・カタナ)を呼び出し、バイクを描いた紙を破って実体化。よし、甘味屋行ってきます。

 唐突に今日はぜんざいが食べたくなった。元々この世界に来て好物であるぜんざいを食べていないのだ。江戸やねん、食わな損々。でも主人公とのエンカウント率が上がりそうやわ。既に高杉さんに会うてるし。

 そんなことを考えながらバイクを走らせて甘味屋到着。店員さん(女性、顔も制服も可愛い)にぜんざいをひとつ頼んで大通りに面した外の長椅子に腰掛けた。
 運ばれてきたぜんざいを満足げに食す。ここの美味い。恭弥に食わしたい。
 さて帰るかと勘定をしていたときだった。
 遠くからパトカーのサイレンが響いてきて、そのままパトカーから茶髪の黒制服の青年がこっちのバイクに目を付けて「借りるぜぇ!!」とさしっぱなしだった鍵を回してエンジン掛けて行ってしまった。
 余程急いでたのか……新撰組大変やなぁ。……茶髪の彼が沖田だとは思いたくないな。

 遠くで「見つけやしたぜェ土方しねコノヤロー!!」と聞こえてきたのは知らんぷりだ。こっちは関係無いもん。



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203:ぜんざい◆A.:2017/02/15(水) 00:35 ID:PaI


 結局返ってきたバイクはボロボロで目が死ぬ。恐らく死んだ魚の様な目をしているであろうこっちに、沖田総悟らしい人物が(見た目だけ)申し訳なさそうにやって来た。



「すいやせーん、借りたつもりだったんですけどー、土方のヤローが避けやがったからぶっ壊れましたァ」
『(まぁまた出したらエエか……)ん、まあ新撰組やし、しゃーない』
「!? あァ、まぁ、はい」



 驚いたように目を見開いて見上げてくる沖田くんにあっ、これヤバイかも。と危機を察知してグイッと頭に被った布を引っ張り、苦し紛れに沖田くんの頭を一度ぽんと叩いてから足早にその場を去った。
 エンカウントして目ェつけられたら結構困るんですよね、いおりさんは傍観しとりたいんや、許せや、つか許してください頼みますマジで。

 帰宅して中に入ると何やら高級そうな包みが。……どないして入ったんや高杉サァン。開けてみれば高そうな和菓子詰め合わせ。甘味屋に行く前に届けてほしかった。正味行く前に届けてほしかった。二回目やんこれ言うん。


**


 そして翌日、ポストにとある茶封筒が入っていた。中身を見ればこっちの隠し撮りの写真の数々それと手紙。なに、これはあれか? 高杉さんの新手の嫌がらせですか?
 いやいやー、とか内心思いながら導入(笑)されていた手紙をぺらりと開く。そしてそこには!



「貴女をいつも見ている。そう、いつもいつも見ているんだ。左腕の包帯の下が見たいな、貴女の全てが知りたいよ、口調はどんな感じだい? 土佐弁? 関西弁? 標準語? 右足首のバンクルが高級そうで、足枷みたいに見えてとても綺麗だね。ところで左手の薬指の綺麗な指輪は誰から? でも俺はまだあげてないよ? ああ、安心して。大丈夫だから。分かってるよ? 無理矢理押し付けられたんでしょ? そして僕に嫉妬して欲しいんでしょ? だって君は他人を寄せ付けたくないみたいだからね。俺以外とは触れ合いたくないって事でしょ?」



 ……うぇぇえええぇぇえええぇぇい!
 なんだこの勘違い男! なんだこの勘違い男! 大事な事だから二回言うたよ! なんだこの勘違い男! 大事な事だから三回言うたよ! こっちは恭弥一筋やっちゅーねんボケ! 誰がお前なんかに嫉妬してもらいたいねん! キッモ! キッモ!!!



『勘違い馬鹿乙(笑)ダッセキッモ』



 手紙を書いた人物に嘲笑して、歩き出す。手紙をライターで燃やして炭になったからそのまま捨てた。とりあえず写真持って新撰組に行こうそうしよう超怖い。



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204:ぜんざい◆A.:2017/02/16(木) 23:46 ID:PaI




 新たなバイクに飛び乗りブォンブォンドルルルルと音を立てながら爆走して到着した新撰組屯所前。とりあえず、『すんまっせーん』とか軽ーく言う勇気もないので『ごめんください』と控え目に扉を開けた。こっち多分めっちゃ怪しい人やと思うねん。やってボロ布頭から被っとるんやで。
 は、と自嘲気味た笑みを微かに浮かべて一歩足を踏み入れれば、こっちに向かってスッ飛んでくる黒い影。人影のようにも見えるので避けるわけにもいかず、一緒になって吹き飛ばされないようにガシッとその人を片腕で支えた。左肩ゴキって言うた! ゴキ言うた!!
 どうやら目を回しているようで、顔を見てみればジミーと有名な山崎退だった。え。
 彼が飛んできた方向を見ればそこには今にも山崎さんぶん投げましたと言ったポーズの土方十四郎さん。



「……な、にか用か」
『今、投げはりました……?』
「いーぇぇえ!? 投げてませんけどぉ!?」
『あっはい』



 土方さんは声をあげながらこちらを脅すように見てきた。とりあえずそれをスルーして『被害届出しに来ましてん』と布の奥から彼を見据える。とりあえず山崎さんは地面に捨てた。



「被害届だと?」
『……まぁ。……ストーカーにおうてまして』
「近藤さんんんんんんん!? 志村の次はボロ布さんか!! 節操ねーな!?」
『多分その人ちゃいます』
「え」



 その後、土方さんの薦めで少し事情聴取されるらしく、取り調べ室へと連れていかれた。途中で沖田くんも合流しました。一度もこちらを見てくれませんなぜでしょう嫌われとるん? こっち。



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205:ぜんざい◆A.:2017/02/27(月) 23:56 ID:gAY

新連載的な。(銀魂沼にどっぷりハマったなんて言えへn((⊂三´ω`セイヤッ)
 #3年Z組銀八先生 #普通に #ギャグを目指す #始まるのは2Zから

 夢主設定。

 小原 いおり(こはら いおり):女
 見た目はこれまでの連載の女夢主と一緒。違いと言えば少し髪が伸びて肩につくかつかないぐらいのショートカット(毛先外ハネ)ぐらい。コミュ障。身長が172cm。極度のめんどくさがり。アニメは少年漫画系とラノベ系(両共グロ含むものもいける)、映画はグロテスクなものを好む(バイオハザードとか)、他はアニメのみ。よくスケブに鉛筆走らせてる。ゲーマー。二次元に嫁が居て三次元で歌い手さん追っかけしてるなんでもこいこい系全方位オタク。ドラマは見ない。両生類で、普段の声が男寄り。意識すればエロボ出る。オツムの出来はあまり良いとは言えないし悪いとも言えないとても平均的な人間。バイク通学。とある仕事で学校を休みすぎて二年からZ組に落とされた(実は学校側の配慮だったりする)。セーラーの上から赤と黒のナイキジャージ(上着)を着用。前のチャックは閉めない。顔も普通。ゲームと漫画の読みすぎで視力低下した眼鏡女子(生まれつき目が弱かったので進行が早い)。関西弁。あんま自分から話し掛けないし喋らない。多分ツッコミ要員になると思われる。桂や高杉とか女子に絡まれているのをクラスメイトはよく見かける、本人は受け答え。癒しは神楽と妙。一人称こっち。少しだけ太め、あんま誰も気付かない程度に太め。

**

 一年の時は、まぁ仕事が忙しくてあんまり学校来れなくて、それでも理事長の配慮で進級出来た。……けどなぁ。



「その代わり、Z組だよ」
『……マジすか』



 Z組とかホンマ無いわ。
 この春休みを終えればこっちは2-Z組になる。噂ではZ組はとんでもない問題児どもの集まりやとか。不良とか不良とか不良とか。もうこっちなんか取って食われるてまうわボケェ。クラス替えもこの銀魂高校は無いし、最近運動してへんし、護身術になりそうなのは3歳から中学に入るまでやってた少林寺拳法ぐらい。それでもやめてしまってブランクは4年程、出た大会でぽんぽん優勝取れたあの黄金期にはもう戻れない。初段取ってもやめんかったらよかったんやろか……。
 死んだ魚のような気力の無い目でボヤッと遠くを見る。ああ、学校行きたくない。成績も下がったから仕事一旦やめさせられたし、散々や……中学からやっとったもんやのに。エエもん、別のとこで同じ仕事するもん、こっちを手放したこと後悔しろ。
 そんなイライラをぶちまけるようにバイオハザードシリーズを一気見。いやあ、もうほんとなんてスプラッター。爽快感がパないわ。とガラスのコップに注いでいたコーラを飲み干す。



『……あー、めんどくさっ』



 さて、今日は浦島坂田船のCDの発売日やから、バイク飛ばすか。



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206:ぜんざい◆A.:2017/02/28(火) 00:25 ID:gAY

歌い手さんの名前が出てきます。関係者様だったり嫌や! 言う人はNGです!


 昼間、バイクを飛ばしてCD買って、そのままマックででも腹を満たそうかと言うとき、ビルにある大きな液晶から「今や国民的有名漫画、週刊少年マガ○ンで連載していた『セイクリッド・ソードワールド』が突然の打ちきり! 終了を祝うかのようにアニメ映画化が決定しました! 打ちきりと引き換えのファン待望の映画化! 才能に満ち溢れた高校生作家「三日月 恭夜」のアニメ映画! アニメは視聴率が朝ドラ並みと言う異例の快挙だったソレが、映画化です! あっ、二回も言っちゃった」と大きく宣伝されていた。へえ、あれアニメ映画化するんや。DVD出たら見よかなぁ。
 それぐらいの気持ちで手から下がる袋を握り直してマックへと入店した。
 このあとアニメイトでも行くか。そう、とうらぶ! 待っとってや、みっちゃあああん! 伊達組ばんざあああああい!



**



 そして始業式。出るのかめんどいとか思っていれば理事長に「アンタはこっちね」と引きずられ、始業式ほったらかしでZ組の教室前まで連れてこられた。「そこで待ってりゃ呼ばれるから」とだけ理事長は告げて行ってしまった。……Z組始業式出んでエエとかなにこれ夢のようやねんけどすっげー。

 そしてしばらく。いつまでたっても名前が呼ばれない。中からは何かを殴る音とオマケのようについてくる野太い悲鳴、そして笑い声と怒鳴り声。なんやこれカオス。このまま帰ってエエかなエエやんな。なんて考えながら暇だったので先程からイヤホンで先日買った浦島坂田船聞いてます。埋ーまってーいくー、泣きーむーしーなノォートがー! 流石志麻さん、そのエロボに一生着いていきますまーしぃかっこエエよまーしぃ。いや、他のメンバーも好きやで? でも志麻さんが一番好き。声がダイレクトアタックしてくれました。
 するといつの間にやら静かになっていて少し首をかしげると勢いよく目の前の引き戸が開いた。鬼の形相の銀髪の先生が居たので教室やっぱ間違えたかな、と無言で引き戸を閉める。だが直ぐ様再び戸が開けられイヤホン剥ぎとられた。あれ、若干涙目やんこの先生……あれ、よぉ見たら銀八先生やったわ。すんません。



「あのねぇ、さっきから数十回呼んでんの、反応してよ! 入ってこいよ!」
『……聞こえませんでしたわ』
「そりゃイヤホンつけてりゃね!? おとなしく待ってろよ!」
『……かれこれ30分待ってから着けたんやけどな……』
「すいませんでしたあああああ!」



 困ったようにそう言えばスライディング土下座して来たのでそれを少しだけ鼻で笑ってからふと気付き『スカートの中覗いても短パンやで』と告げれば「ごめんなさい」と立ち上がって90度に腰を折られた。覗く気やったんやな。
 ようやく教室に案内されて教卓の隣に立つ。このクラスの方々から様々な視線が突き刺さって痛いです。誰だ今こっちの顔見て鼻で笑ったやつ。あそこのアイマスク君ですね分かります。誰だこっちの胸に視線を寄越してる変態は隣の銀八先生ですね分かります。ふっつーの大きさの胸見てもおもんないやろ。
 あっ、あそこの泣きボクロの眼鏡の紫髪の女の子めっちゃ美人。髪の毛可愛くポニテにしたあの子も綺麗や、前列の渦巻き眼鏡掛けたチャイナ娘も眼鏡を外せばきっと可愛い。何ここ宝庫?



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207:ぜんざい◆A.:2017/02/28(火) 00:40 ID:gAY


「ほら、自己紹介しろ」
『小原いおりです、よろしく』
「もうちょっとなんかないの!? 好きなことは何々ですだとかなんでこのクラスに移籍してきたのかとか」
『……このセンセめっちゃめんどい、鬱陶(うっと)い』
「お前さっきから酷くね!?」



 あーうんはいはい的な感じて『じゃあ質問ある人手ぇあげて聞いてくださいー』とか適当に言ったらいっせいに手が上がった。ノリエエな。なんやこのクラス。



「小原さんは彼氏いますか!?」
『二次元嫁なら居ります、彼氏は居ません』
「あら、小原さん、あなた好きな食べ物は?」
『甘いものとインスタント』
「得意教科はなんなの?」
『国語と美術』
「なんでこのクラスに来たんだ? 問題でも起こしたのか?」
『出席日数足りんかった』
「小原さんゴリラはケツ毛ごと愛せますか!?」
『すまんなに言うとるか分からへん。あえて言うなら絶対無理』
「おい小原ァ、SMプレイか放置プレイどっちが好きでさぁ」
『やる方なら何でもエエ……ってなに言わすねんドアホ』
「マヨネーズは好きか」
『何でそのチョイスやねん、普通やわ』
「喧嘩は好きか?」
『好きか嫌いか以前にそもそもせぇへんわ喧嘩』
「第二の眼鏡アルか?」
『強いて言うなら紳士やな、チャイナの可愛子ちゃん。っていうか第二の眼鏡てなんやねん』
「小原お前スリーサイズいくつ?」
『なんでそれやねん!』



 銀八先生の頭を肩に掛けていたスクバでぶん殴り『とりあえずよろしく』と死んだ目で手を振れば「ひゃふー!」「祝えー!」「ケーキアルか!」とか騒ぎ出す始末。何やこのクラス。



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208:ぜんざい◆A.:2017/02/28(火) 22:08 ID:gAY

※小説沿いじゃないです。……小説沿いではありませんよ!


 席に着けばHRほったらかしで集まってくる2-Zに困惑する。お前ら流石に先生可哀想やで。とか思ってたら先生普通にジャンプ読んどるし。



「私神楽アル、よろしくネいおり」
『よろしく神楽』
「私志村 妙、よろしくお願いねいおりちゃん」
『よろしく妙』
「ぼ、僕は柳生九兵衛、よろしく……」
『よろしく九ちゃん、いおりでエエよ』



 可愛らしい(一人美少年みたいな)子たちと早速名前呼びをして仲良くなった。ここのクラスエエ人ばっかや。

 それから数日。

 授業中、隣の席の沖田に「あそこのV字前髪は土方さんでぃ。カッコつけたがりだから気ぃつけな」とかいろいろ土方に仕掛ける悪戯を二人で考案したりとなかなかに楽しい。案の定沖田と一緒に土方に怒鳴られた。こっち悪ないやん、こっち悪ないやん!

 昼休み、神楽と飯を食べていて神楽の飯の量の多さに驚きながら『よぉ食うんやな』と心の中で感心する。このほっそい体になんでそんな入るんや。

 休み時間騒がしい周りをスルーしてなかなかにインパクトのあるエリザベスにイラストデッサンしてもエエか頼めば[可愛く描けよ]とプラカードで返事が返ってきた。エエな、そういうキャラ。乱入してきた桂もエリザベスの隣に書いてやったわ、はーっはっはっは!

 帰りのSTにて、銀八先生からあーだこーだとまったく自分のためにならない話を手短に話され、解散。



「あ、いおりちゃん、今日一緒に帰らないかしら?」
「駅前のサーティツーに寄り道するアルよ! 冷たくて甘いアイス食うネ!」
『……ん、行く』



 バイクやしどないするかと悩んだものの楽しげだから誘いに乗っておこう。バイクは手で押しながらいけばいい。見ればうしろで近藤が「お妙さんが行くなら俺も!」とか挙手しているがお前付いてきたら轢くぞ、いおりさん本気だぞ。このあと風紀委員の土方と沖田が近藤と共にサーティツーにやって来ました。近藤めェ。そしてなぜか土方と沖田に奢らされました。なんでやねん。

**

 翌日、あまり寝れなかったが、ようやく仕事を無事終えて登校するぞ! ってところで外を見れば夜に雨でも降ったのか所々大きな水溜まりが伺える。

 そんなの気にせずブォンブォンとバイクにエンジンを掛けて住宅街を走る。こっちは風になった! うぇーい。なんて若干テンションハイになりながら住宅街を走る。
 そして、事件は怒ったのである。



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209:ぜんざい◆A.:2017/02/28(火) 22:38 ID:gAY

高杉くん性格が少し丸くなってます。


 ばしゃりと嫌な音が聞こえた。続いて「うおっ」何て言う男たちの声も。



『え……』



 急ブレーキを掛けて振り返れば学ランでたむろしていた不良たちがこちらを見て「学ランがぁぁあ!」「ズボンのケツが!」と怒鳴りこちらへやって来て叫ぶ。



「どーしてくれんだ! 一張羅がずちゃ濡れじゃねーか!」
『……すんませんした』
「すんませんで済むわけねーだろーが!」
「クリーニング代寄越せ!」
『ホンマすんませんした』
「こっち見て言えコルァ!」
「慰謝料払えよ!」
「それが無理なら体で払え!」
『さーせんっしたー』
「雑!」
「目がつめてぇ!」
『黙っとれや』
「んだとコルァ!」
『二回目やん』
「うるせーよ!?」
「女だろーと関係ねぇ! やっちまえ!」



 やっべ、とアクセルを握って走り出す。相手さんもバイクだったのか後ろでブオンブオンと激しいエンジン音が響く。夜よく走っとるやつやんうるさっ。とりあえず曲がり角を存分に使ってドリフト決めて華麗に撒いた。スマホの時計を見る。今何時や九時や遅刻や。ここまで来たらどーでもエエわとゆっくりとバイクを走らせていると。



「高杉ィ! 今日こそテメェをブッ倒してやるぜ!」
「……ハッ、クズが。そこら辺でくたばってろよ」
「鼻で笑ってんじゃねえ!」
「この人数じゃ流石のテメェも負けるだろーよ!」



 塀の上で三十人位に囲まれてジリジリと後退している同じクラスの高杉を発見した。そこ空き地やってんな。
 アイツも遅刻か、いや絡まれて学校行けなかったパターンの奴かこっちと一緒やな。可哀想に。
 どうやら高杉は武器も何も持っておらず、所持しているのは通学鞄のみのようだ。いつも登下校は河上と後輩のパツキン美人ちゃんとしとった気ィするけど……。
 あっ、高杉がとうとう塀ギリギリまでやって来てしまった。しゃーないな、助けてやろう。



『高杉』
「! 小原……!? なんでお前こんな時間に」
『言うとる場合か。こっち来い。飛び降りろ』



 そう告げれば高杉は少し顔をしかめて躊躇ったあと、目の前の三十人を越える大勢を見てから舌打ちしてバッと塀を飛び降りてこっちのそばに来た。ここまで言えばさすがに分かっているようでバイクの後ろに跨がる。



「飛ばせ小原!」
『ん、掴まっときや』



 言われなくても、とアクセルを握りびゅん、と飛ばす。咄嗟に高杉は片腕でこっちの腹を抱える様に抱き、速度に耐えた。後ろでも見てるんちゃう? そして現在時速100km越えたところ。あの不良連中の姿はみるみるうちに遠ざかる。やったね、もう大丈夫。ってところで減速してそのまま進む。このまま学校行こう。
 ふうと溜め息を吐いた高杉に『お前あんなに囲まれて、前に何したんや……』と小さく呟けば「うるせェ」と返ってきた。なんや、聞こえてたんか。



「わりぃ、助かった」
『大丈夫や、こっちも逃げとったところやから』
「……は?」
『ちょうどあそこの集団みたいな不良どもに……ってあれやん。いおりさん追われてたんあの集団やん』
「馬鹿野郎なに呑気に減速してんだ飛ばせ!」
『すまん飛ばす』



 そうして再びアクセルを握って、なんとか撒いて二人してぐったりしながら教室へ入ればちょうど国語だったらしく銀八先生に「お前ら二人大遅刻なってなんでそんなに疲れきってんの」とタルそうな目で告げられた。



「なになに二人で仲良くしっぽりでもしてたの」
『そんなわけ有るかボケェ!』
「黙ってろ銀八テメェ!」



 二人でドカバキと銀八を蹴り踏み抜いた。ちょっとすっきり。あれから高杉とは気が合うようで今や一緒にいる時間はクラスメイトの中では一番多くなった。恐らく銀八への怒りで波長が合わさった。



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210:ぜんざい◆A.:2017/03/01(水) 23:40 ID:/VU



 それは昼休み、課題を提出し終えた職員室の帰りだった。とりあえずついでに被写体探しでもするかとノートを小脇に抱えている。
 するとそれはまぁベタなことに、曲がり角でドォンと女子生徒とぶつかった。なんちゅうベタ、漫画で黒く塗り潰すのもベタ、関係無かった。



『っ、う』
「あいたっ!」



 どさりと尻餅をつく彼女にやらかしてもためっちゃテンプレやんとか考えながら『すまん』手をさしのべる。そうすると彼女は「ありがとうっす」と可愛らしい声でその可愛らしいお顔を見せてくれた。あれ、この子あれちゃう? 高杉とよくつるんどる後輩の子。



「ぶつかって申し訳ないっす! あ、あたし来島また子って言います! 一年っすよ!」
『あ……二年の小原や。ぶつかってすまん』



 ずいぶんと無愛想な返しをしてしまった。が、彼女は「小原先輩ッスね……小原ァ!?」とそのつり目かつ大きな目をひんむいてこちらを凝視した。美人に見つめられると照れる。とりあえずわなわなと震える来島に小さく『……どした』と聞けばビクッと肩が震えた。……え、こっちなんかしたっけな……。
 そして彼女はいきなり顔をあげてこちらに詰め寄る。



「最近晋助先輩と仲が良い女子生徒っすよね!? 一番気が合うとかで!」
『すまん知らんアイツがそれ言うたん? なぁ言うたん?』
「不良に囲まれてたところを颯爽とバイクに乗せて助けたとか!」
『いやそれ偶然居合わせただけやねんけど』
「恋人って噂もあr『すまん高杉とか正直考えられへん』即答っすか!? ぱねえっす!」
『何がぱないねんこっち高杉にかなり失礼なこと言うたぞ。確かに高杉見てくれはエエけどいおりさんはそこまでやな』



 お前はどこぞのベルバブ漫画のパー子かよとか思いながら手元のノートがないことに気づく。あのノートは中学から使っているものだ、中身が知れたら……うぉう黒歴史確定なり。いやなり。ってなんやねんバカヤロー!
 するとふと来島が「あ、ノート落ちてるっすよ」とサッと拾ってくれた。『お。ありが』とまで言えたが、とう、まで続かなかった。彼女が「勉強熱心っすねー」とぱらぱらとページをめくりだしたのだ。いやいやなにしてんのぉぉお!?
 そして不意にピタリと停止する彼女にあちゃーと頭を抱え込む。そして彼女はこっちを見、ノートを見、そしてまたこっちを見、再びノートに目を落として「はあああああ!!?」と絶叫した。ちょ、しーっ! しーっ!



「えっ、こっ、これっ、嘘っ、えぇええぇ!? まさか御本人っすかああああ!!!??」
『ちょ、しっ、しっ。声でかいっ、御本人やからっ。静かにっ。バレるっ』
「す、すいませんっす!」



 彼女は声を小さくしたが興奮は収まらないようで悶絶したように震えている。心なしかこちらを見る目がキラキラしているようにも見えた。



「すごいっす! 素直に尊敬っす!」
『……あー、おん』



 予想できたであろう展開。知られればそういう目的で近付いてくるのは当然の事だった。……もうしまいや、いおりさんは死んでくる。
 そして来島の発言は、きれいにこちらの予想を裏切ってくれた。



「あっ、でも色眼鏡で先輩を見るつもりはないっすから、安心してください! 仲良しな先輩後輩の仲になりたいっす」
『君は天使か』



 心優しい後輩兼親友が出来ました。ちなみに内容は他言無用、今は二人だけの秘密だ。



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211:ぜんざい◆A.:2017/03/03(金) 00:25 ID:/VU



 それから。また子とはよく遊ぶ仲になった。クラスの愚痴を聞いてもらったり聞いてあげたりいかに高杉がイケメンか聞かされたり。いおりさん男の子興味ない。

 そして気がつけばやって来ていた体育祭。体操服ブルマとかマジ有り得んってことでこっちは普通にスポーツショップのア○ペンでジャージのハーパンを履いている。

 基本的にいおりさんは体育祭、屋上でサボりである。だってなんだかー、だってだって何だもーん。あかん意味不明や。フェンスにもたれかかりすっかりその中毒性にやられたフリィダムロリィタを口ずさむ。フリィダームロリィーターマセた町でー。
 すると屋上の扉がバァンと豪快に開けられびくりと肩を震わせる。そちらへ視線を向ければ銀八センセがくわえ煙草でこちらを見ていた。



「歌ってたとこわりーなぁ、お前今から100m走だぞ出ろよ」
『高杉か土方か桂か山崎辺りにやらしたらええやんアホやなーこっちが出るわけないやろ。あ、さっちゃんでもエエで。あの子あんたの言うこと聞くやん』
「ひでぇなお前は」
『うっせぇよ黙れよ』
「無駄にイケボで言わないでくんない?」



 そういった銀八の横を通り抜けて『しゃーないな』と階段を降りる。もちろん向かう先は応接室だ。誰が体育祭なんか出るか。
 ざまあ銀八。ざまあ先程名前を挙げた男子生徒。



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212:ぜんざい◆A.:2017/03/09(木) 23:53 ID:m9E

トリップもの。浦島坂田船→銀魂

 歌い手様なのでご本人様や関係者様はスルーしてください。こう言うのが嫌な方もスルーおねしゃす。批判等は受け付けません。だってこれはぜんざいの自己満足だもの。


**
うらたぬきside

 気が付けばそこにいた。隣には坂田が居て、周囲を見渡し呆然。
 見慣れぬ古風な大通り、着物や袴姿の人々、空に浮く宇宙船、そして化け物のような恐らく天人と呼ばれる生き物。
 明らかにここは銀魂の世界だった。



「えもがっ!?」
「しっ!」



 大通りのど真ん中で叫べば目立つだろうが。と声にはせず坂田の口を片手で塞いでずるずると端へ寄せる。
 ぷはっと息を吐いた坂田は小声で「ここどこ!? やっぱ銀魂か!?」とおろおろと慌てる。お前が慌てるせいで俺慌てらんねぇだろ落ち着け餅つけ。



「さかたんの言う通りここは銀魂だろーな」
「銀さん居るかな」
「ちっげーだろ! ……俺らはここに来る前何してた? 誰といた?」
「え、浦島坂田船の四人でレコーディング……ああっ!」
「そーだよきっと志麻さんとセンラさんも居るんだよここに!」



 他の二人も居ることを願ってから自分達の身なりを見れば、あれだ、千本桜の時にフユカさんにイラストで書いてもらった時の服装だ。確かにぴったりだもんなぁ。と言うか。



「顔もイラストのままじゃん!」
「やっべーすっげー!」
「財布も有るし……あ、通帳もあるから多分金もこっちに来てるな」
「便利だな」



 やまだぬき、スマホ、財布。俺の所持品はこの三つだ。やまだぬきは肩に居た。かんわいいなおい! 俺は人間とたぬきのハーフだー! ふははははー!
 そうなると、残りの二人がどこにいるのか謎だ。二人で顔を見合わせれば坂田がハッとしてから「俺ら今金あるじゃん」とポツリと呟く。おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいまさかまさかまさかええーマジかええーっ。



「まさか、坂田っ、お前……!!」
「ふっ、そう、そのまさかだ!!!!」
「そうか、なるほど分かったぞ! それなら!! レッツゴー」
「万事屋!」



 二人で厨二なノリで茶番を起こしてから、バタバタと動きにくい着物で俺たちは勘を頼りに万事屋へと向かった。



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213:ぜんざい◆A.:2017/03/10(金) 00:21 ID:m9E

『wwww』表現あり。

 俺達が万事屋に着いたのは出発してから三時間後だった。動き始めたのは良いものの、あれだ、やっぱり勘を頼りにしてはいけなかったらしい。結論から言おうめっちゃ迷った。それもこれも……全部さかたんのせいだ!!!
 美味しいものや珍しいものを見つけてはあっちへふらふらそっちへふらふら。どこいくんだよお前!!! 万事屋行くんじゃねーのかよ!!! とかそういうやり取りをしてようやくたどり着きました『万事屋銀ちゃん』。
 俺たちは今玄関の前で立ち止まってます。なぜかと言うと。



「すー、はー、すー、はー、すー、はー、すー、はー、すー、はー」
「おいっ! いつまで深呼吸してんだようらさん!」
「いやだって緊張するじゃん!! しちゃうじゃん!!! さかたんしないの!?」
「めっwちゃwwしwてるwwww」
「ほらぁー!! ほらほらー!!」



 めっちゃ緊張するじゃん。なにこれすげー緊張するじゃんしちゃうじゃん。そんなこんなで五分経過。



「いやーやっぱり? 最初の印象で全部決まるじゃん? 何かする?」
「チャイム押したら歌うww?」
「えっwwいwいwwwけど」
「なにする?」
「……バレリーコ?」
「でぃんでぃんだーんさーあおーどりまっしょー! っておいおい駄目じゃんこれは流石に駄目じゃんおいおい真面目に考えろよさかたー」
「んー、虎視眈々?」
「絶対却下って言われるって分かれw魅惑ワンツースリーとか行きなり言い出したら驚くだろ引くだろwwwww」
「歌ってる時点で心配要らなくね?ww……あー、聖槍爆裂ボーイとか?」
「いーねそれでいこう!」
「あっ、虎視眈々駄目なのにそれ行けちゃうんだ!? なんで!? むしろそっちのがダメでしょうらさん!」
「そういう曲ばっか振ってくるお前もお前だろーがww」
「それもそうか」



 意を決してピンポーンとチャイムを押して、さあ扉を蹴破って__



「たのもぉぉぉぉおうぉぉぉぉぉおらぁあぁあ!」
「うらさんうるっさいな!? てか歌は!? てかうらさんどうしたのうるぁぁあ! って! 気でも触れたの!?」
「うるぁぁあ! とは言ってねーよ気が触れたとかそんな扱いすんなよ見ろやまだがこんなにしょぼーんって」
「なってねーじゃん! やまだぬきちゃん無言で大丈夫かって顔でうらたさん見てんじゃん!」
「…なん、だと……?」
「なん、だと……? じゃねーよ!!!」
「たのもおおおおおおおおお! 依頼だあああああ!」
「だからうらたさんうるさい! 勝手に扉開けちゃダメでしょ! って蹴破ってるけどね!」



 そう言いつつも坂田よ、ずけずけと入ってってるぞ、律儀に靴を脱いでいってるぞ偉いぞ坂田。
 そんなこんなで奥に視線をやれば迷惑そうな顔した銀髪天パとチャイナ少女。あっ、すいません。



「……ちょっとそこの二人、やかましいんですけど。扉壊れてんですけど」
「弁償ネ」
「「ごめんなさい」」



.

214:ぜんざい◆A.:2017/03/10(金) 10:37 ID:m9E


 なんやかんやで客間に通してもらい、依頼の内容を説明した。おっと、その前に自己紹介か。



「えーっと、うらたぬきです、はじめまして」
「俺はアホの坂田です、よろしく」
「君たち良いのそんな名前で」



 自己紹介をすれば速攻で返答が返ってきた。良いのって……なぁ。と坂田と顔を見合わせて「動画配信してるので……名前をバラすととんでもないことに」と坂田が話す。そこでまた止まってくれないのが銀さんたちだ。



「おいおい君たちぃ、夢見るのは良いんだけどね? 他人を巻き込むのはどうかと思うよ? たとえイケメンだとしても」
「はっきりと、はい嘘です言うアルヨロシ?」
「いやいやいやいや、嘘じゃないですって」
「よしリーダー、証拠動画をつきつけろ!」
「今すぐやってやんよ!」
「うらたさん流石!」



 隣に座る坂田がきゃんきゃん喚くが俺はスマホを取り出してとりあえず千本桜をかけてみた。恋色花火とかそこら辺でもよかったかも。
 ニコニコにて再生画面にしたそれをやまだぬきへと渡せばとてとてとそれを抱えて銀さんの方へと歩き、画面をそちらに向けて再生した。



「こんなもん見せられても……ん?」
「歌アルか?」



 流れ出す曲と同時に静かになる二人。浦! 島! 坂田! 船! のとこ好きだわやっぱ。

215:ぜんざい◆A.:2017/04/05(水) 00:14 ID:JO2

名前変えました。

唐突に書きたくなったシリーズの奴(の設定)。ポケモン。あれです、学パロです。にょた化注意、嫌な方はおすすめできません。ハーレム? かな? そうなのかな。男主。出てくるのはマメツキの知識にある子達だけ。ポケスペ要素はない、筈。多分。

晋夜(しんや)
黒髪黒眼鏡の隠れオタクな高校三年。身長はだいたい180前半ぐらい。デンジとマツバ、ゲンで行動することが多いが基本女の子に絡まれてる。天然タラシ。行動はわりと男前。鉄の理性を持つ(時々揺らぎそうになる)。幼馴染みが二人。二人とも女子。知能は中の上寄りの中。言わば平均。そう平均。アウトドアに見えてインドア寄り。目はかなり悪い。近視とちょっとだけ乱視。女子から人気があって男子とも仲良しな世にも珍しい隠れオタク。
レッド
幼馴染み1。ピクレに近いかも。黒髪のセミロング。さらっさらでくくったりはあまりしない。赤い瞳。身体能力が規格外。鋭いつり目の無愛想で無口な方なので冷たい印象を持たれがちと言うか現在進行形で持たれてたり。でも寡黙系美少女。晋夜好き。グリーンも好き。でも二人に対する好きがちょっと違う。後輩も好き。でも負けない。貧乳。無いわけではない。基本晋夜にくっついてる。黒タイツ。グリーンよりちょっと小さい高校三年生。意外と大胆。晋夜が初恋。そりゃそうなるか。
グリーン
幼馴染み2。一軍系な女子だが、ただ元気なだけ。ちょっと高飛車。でもそれに似合う頼れる系美少女。茶髪ショート。前髪にアメリカンピンを五つ付けてる。緑の瞳。運動神経が良いのでよく部活の助っ人へ推参する。ミニスカなのによく動き回るので晋夜とレッドをいつもハラハラさせている。晋夜も好きだしレッドも好き。でも二人に対する好きは違うベクトル。晋夜は好き、レッドは大切、的な。後輩可愛いよね。でも負けない、後輩には負けない。ガンガン攻めよう! 気づくまで! 昔から抱き付いていたのが仇になるとは……。な残念子。なんでもやれば出来ちゃう爆豪くん型コミュ力爆発女子。ハイソックス。普乳を気にする恋する乙女。レッドよりマシかと思う辺りちょっとひどい。身長は女子にしては低くレッドよりちょっと高い。意外にもウブ。晋夜が初恋。レッドがそうならそりゃこうなる。
ゴールド
晋夜達の後輩1。高校二年生。無邪気な元気爆発娘。黒髪で前髪爆発。後ろ髪は引っ張って高いところで括ってる。下ろしたら肩ちょっと下。元気系美少女。動くことが大好きで時々体育の時に男子に混ざったりしてシルバーに連行される。シルバーは頼れる大好きな親友ポジ。スカートはミニスカだがその下に黒のスパッツ。晋夜が関わると無邪気に見えて計算してたり。身長はグリーンより数センチ大きい。巨乳。自分の武器を理解している新星バカの子。勉強より運動したい。と言うか勉強なんかくそくらえ。晋夜もシルバーも好き。でもシルバーにも負けたくない。レッドやグリーンも好きだがやっぱり負けたくない。でもシルバーと一緒に晋夜と居たい。意識してもらえるまで抱きついてやる。レッド先輩が可愛いのでまもってあげたいと思ってる。元気っ子。シルバー離れが出来ない。グリーン先輩なんか経験多そう(そんなことはない)
シルバー
晋夜達の後輩2。高校二年生。頼れるお姉さん的ポジのツンデレ俺っ娘。デレの度合いが半端なく低く、もはやただのツンと化している。但し晋夜は除く。鈍い。ので晋夜が好きかも気付いてるか怪しい。実は初恋だったり。お金持ち。クール系美少女。ゴールドがお転婆なので中学の最初からずっと面倒を見ていたからかゴールドが離れてくれない。ちゃんとゴールドも好きだが恥ずかしくて口にはしない。ミニスカにニーソの絶対領域要員。身長はゴールドよりちょっと高い。頼るより頼られていたので甘やかしてくれる晋夜にたじたじで真っ赤になる。髪は原作よりちょっと長い。晋夜と話したいときはゴールドが頼り。持ちつ持たれつ的な。美脚。イエロー並みに極貧だが成長途中らしい。ほんとか。一般常識がぶっ飛んでる節がある。金銭感覚とか。

216:マメツキ:2017/04/05(水) 14:33 ID:JO2

晋夜くんです
http://ha10.net/up/data/img/18934.jpg

217:マメツキ◆A.:2017/04/05(水) 15:08 ID:JO2



 早朝、俺の朝は起こされるところから始まる。母さんが「晋夜ー、起きなさいよー」と言うところから始まり、幼馴染みの腹への直接攻撃で終わる。
 ぐへっ、なんてつぶれた悲鳴をあげながら、布団から身を起こせば俺の上に跨がってにやにやしているグリーン。お前スカートなんだから位置的に考えろよ太股柔らかそうですねハイ。



『……お前なんで居んの、ねえなんで居んの』
「おばさんが入れてくれたの! ほら起きてよ!」
『退け馬鹿野郎! 起きれねーし見えるぞ!』
「短パン履いてるもん」
『モラルを考えろ! 女だろ!』



 まったく、と呆れたように呟きながらバッと掛け布団をはげば、ころりと転がり落ちて「んきゃ!」と声をあげるグリーン。それを横目にボゥとする頭を左右に振って無理矢理覚醒させる。いかんいかん、二度寝しそう。



「こんな美少女に起こしてもらって無反応とか……」
『倫理的に考えなさい、倫理的に』
「アンタは私のお母さんか!」
『誰がお母さん!? お前の母さんは隣の家にいんだろーが!』



 ぎゃんぎゃんと床に座り込んで喚くグリーンを見て今のうちにとさっさと着替えを済ませてから『降りるぞー』とか声を掛けて扉を開けると、どんっと誰かにタックルをかまされた。グラッとよろめくも扉の縁をガッと掴んでバランスを取って確認すれば俺に寄りかかっているレッド。ちっさい。



『なにレッドお前ずっと扉の外にいたの』
「……居た」
『タックルかまされたように思うんだけど』
「……気のせい」



 気のせいなわけあるか、とか思いつつレッドを腰にくっ付けたまま引き摺って階段を降りる。危ない。レッドが落ちないように慎重に階段を降りれば途中でグリーンが背中に飛び付いてきたからもう踏んだり蹴ったりだ。お前ら美少女なんだからもうちょっとおしとやかにしなさい。俺に対する嫌がらせか。



『おはよ、う!?』
「ふふふ」



 二人を引っ付けたままリビングに入れば母さんが気持ちの悪い笑みを浮かべていた。正直鳥肌立った。すまん。

218:マメツキ◆A.:2017/04/05(水) 16:47 ID:JO2



 とある日の昼休み、俺はほとんどグループ化しているデンジ、マツバ、ゲンと教室の一角で昼食を取っていた。



『デンジ今日も菓子パンかよ』
「悪いか」
『悪いに決まってんだろ馬鹿野郎! もー、まったくこの子はー、もー』
「うるせぇオカン」
『馬鹿野郎、誰がオカンだ馬鹿野郎』
「うるせーよ馬鹿野郎馬鹿野郎って」



 どうしようデンジが反抗期なんだが、とかゲンに言えば「構ってくれて嬉しいんだろう」と笑ってた。おいおい笑い事じゃないんだぞ。あ、デンジがゲンの座ってる椅子蹴った。マツバは苦笑いしながら一人で重箱(二段)をもくもくと食しているし何ここカオス? カオスなの?



「ところで」
『ん?』



 ごちそうさま、と柏手を合わせていたマツバが思い付いたように俺を見た。俺はと言うとデンジの菓子パンを奪い取り、俺の弁当のおかずを詰め込むのが終わったところだ。ただいまデンジはエビフライをくわえて俺を睨んでいる何これ怖い。デンジ目が鋭いから怖いんだよなー、とか言いながらコーラを飲めば「晋夜って最近女の子とどうなの?」とマツバの好奇心にブッとコーラを吹いた。げほげほと蒸せて背中を撫でてくれるのはゲンしかいない。



『いきなり何!? なんなの!?』
「いや、最近どうなのかなって」
『どうなのとか言われてもな!? 俺彼女いない歴=年齢だからな!? 公言したくなかったわ馬鹿野郎!』
「「「えっ」」」
『えってなに!? みんなしてなんなの!?』



 みんなぶつぶつと「四股ぐらいかけてると思ってた」とか好き勝手言いやがって。誰だ今シたい放題とか言ったのデンジか! デンジだな! 俺まだ童てげふんげふんチェリーボーイだぞ! 偏見! 失礼!



.

219:マメツキ◆A.:2017/04/21(金) 23:08 ID:iBo


上記の連載の主人公の設定をそのままにヒロアカの連載。レッドとグリーンはそのままですが、ゴールド、シルバー、新たにブルー、クリスタル、ルビー、サファイアが登場し、この六人はポケスペ設定になります。シルバーはあまり変わらない。にょた注意。

予告でした。多分すぐ書く。

 。

220:マメツキ◆A.:2017/04/22(土) 19:32 ID:iBo

やっぱりネギまの男主夢です。上記のものはいずれ。
 実は前々から考えていた連載ネタ。やりたかったけど原作コミックがマメツキの本棚の中に埋もれて見つからなかったのです。やっと発掘できた……なくしたかと思った(冷汗)。では、いってまいります(笑)(`∀´ゞ。

男主。
緋影 伊織(あかかげ いおり)

イメージ画
http://ha10,net/up/data/img/19184,jpg

 赤い瞳のつり目が特徴的な寡黙かつクールな少年。一応魔法使いだが、魔法剣士の部類に入る。魔法拳士でもある。「アホか」が口癖。得意な魔法の属性は炎。実力もちゃんとある。
 そのせいというかなんというか学園長に「男子校満員になっちゃったから女子中等部通ってね」とわざとらしくただ一人女子の中に放り込まれた苦労人。鋼の理性を持ち合わせており、学園では硬派なのも相まってかなり有名。イケメンである。空手四段。ネギに同情の念を抱いており、何かと世話を焼く。何が起こっても動じない。
 長瀬より少し高いぐらいの身長。声低い。クラスのネギ至上主義に呆れているのだが、同時に自分にもそれが向いているとは思っていない。ネギのようにおおっぴろなアピールはないが、同級生な為みんな恥ずかしがってアピールは控えめ。
 イメージ画の刀は相棒の『アヴァタール』。熱くなれと意思を込めれば刃がめっちゃ高温になって高層ビルぐらいなら溶けてすぱーん。普通の状態でも切れ味は抜群。
 明日菜のように固有能力を持って生まれているただの人間。向こうの世界出身ではない。能力は『身体炎化』、攻撃には使えないものの、移動速度は瞬間移動に近く、相手の攻撃はすり抜ける。ネギの雷化の劣化ver。人間に危害は加えない比較的優しい能力。
 のどかが気になっているものの行動に移す気は無い紳士。但し無表情。温厚派。両親は既に他界。



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221:マメツキ:2017/04/22(土) 19:37 ID:iBo

イラストが出なかったのでもう一回

http://ha10.net/up/data/img/19184.jpg

222:マメツキ◆A.:2017/04/22(土) 20:29 ID:iBo


 今日から三学期が始まる。寮を出て駅に着いて電車乗って降りて駅を出てそこから学校へ運んでくれる路面電車の後ろに着いている取っ手を握り、スケボーでそのまま進む。これは走って体力が減るとかがないのですごく楽だ。
 早いとこさっさと教室に行って教師を待とう。俺のクラス、先生が代わるみてェだから。高畑先生、結構好きな先生だったんだけどな……。巷じゃデス・メガネ高畑とか言われてるけど。
 ヘッドフォンの奥で響くボカロに合わせてふんふんと上機嫌に鼻唄を歌った。

**

 教室に着くと、人はまばらにしか居なかった。それぞれに「おはよう」と返しながら、ちらちらと受ける視線に気づかないふりをして自席に伏せる。いい加減慣れて欲しいものだ、男子が珍しいのは分かるけど、もう二年近く同じクラスなのだから。
 その視線の真意に気付くことなく流れる音楽を聞きながら俺は眠りにつくのだった。


**

ネギside

 魔法の修行として『日本の学校で先生をやること』と課せられた僕、ネギ・スプリングフィールドは学園長に言われてしずなさんと共に2-Aの教室の扉の前に立っていた。流石と言うように女子中学校だからかクラスは女の人ばかりで少し緊張するなぁ。
 そこでふと、一番後ろの席で伏せて寝ている男の人を見つけた。



「あれっ、なんで男の人……?」
「彼はね、男子校に空きがなかったからこちらに入ったの」



 大変だなぁ、と思いつつ先程渡されたクラス名簿を慌てて開けばタカミチ(高畑先生)の書き込みがたくさん。
 えぇっと……出席番号二番、緋影 伊織、空手部。わ、かっこいい人だなぁ。
 顔写真を見つつ、タカミチの書き込みは『頼りになるから安心しなさい』『空手四段』と書いてあった。タカミチが言うなら多分そうなのだろう。
 同性がいたことに安堵しつつ、僕は扉を開くのだった。



.

223:マメツキ◆A.:2017/04/22(土) 22:32 ID:iBo



「キャアアア! か、かわいいー!!」



 何やら突然騒がしくなった教室の女子の騒ぎ声で目が覚めた。なんだなんだとむくりと体を起こせば教卓の方で子供がクラスメイトに囲まれていた。
 その様子を傍観していれば飛んでくる先生と言う声。どうやらあの男の子が俺たちの担任のようだ。すげーとか感心しながら眠たい頭を働かせていると「いい加減になさい!」といいんちょ__雪広あやかが机をバンと叩いて立ち上がった。



「皆さん席に戻って。先生がお困りになっているでしょう? アスナさんもその手を離したらどう? もっとも、あなたみたいな凶暴なおサルさんにはそのポーズがお似合いでしょうけど」



 雪広の言葉に感化され神楽坂を見てみれば確かに、神楽坂はネギ先生とやらの胸ぐらを掴みあげ、教卓の上へと座らせてメンチを切っていた。神楽坂ェ。



「なんですって?」
「ネギ先生、先生はオックスフォードをお出になった天才とお聞きしておりますわ。教えるのに年齢は関係ございません。どうぞHRをお続けになってください」
「は……どうも……」



 妙にキラキラした雰囲気の雪広にそういわれ、ネギ先生は唖然としたように返事を返した。返事したのは偉いぞ先生。俺が彼を眺めていればネギ先生がふと俺を見たので手をひらひらと振っておいたらずいぶんホッとしたように溜め息を吐いていた。同性が好意的で安心したのだろう、聞けばまだ10歳だと言う。それは仕方ない。
 雪広と神楽坂に視線を戻せば既に取っ組み合い手前、まあ、互いの胸ぐらを掴み合い怒鳴り散らし始めていてまたかと呆れた視線を飛ばして席を立った。



「言い掛かりはお止めなさい! あなたなんてオヤジ趣味のくせにぃぃ!」
「なっ!?」
「わたくし知ってるのよ、あなた高畑先生のこと……」
「うぎゃーーー! その先を言うんじゃねーこの女ー!」
『雪広、神楽坂、お前らそこまでにしとけ』



 ばっと殴りかかろうとしていた二人の間に腕を滑らせ引き剥がし、見下ろしながらたしなめる。二人はハッとしたようにそのままの形でかたまり、引き下がる。キッ、と睨み合いをしているからきっとまたやるだろう。



『見ろ、ネギ先生困ってんぞ。時間押してんだし、とっとと席戻れ。喧嘩すんのは悪いことじゃねェが、授業中じゃ迷惑が掛かること……分かってるよな?』
「……すみません」
「……ごめん緋影」
『分かれば良い。次からやめような』
「はいはいみんな、席に着いて〜ありがとねぇ緋影くん。ではネギ先生、お願いします」
「は、はい」



 その後、席について授業を開始したのは良いが、再び神楽坂と雪広が本格的な取っ組み合いの喧嘩をおっぱじめてしまい、英語の授業が消えたのはすぐの事だった。あの二人俺のいってたこと聞いてなかったのか。



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224:マメツキ◆A.:2017/04/23(日) 14:45 ID:iBo



  やっと一段落ついた頃、やかましい教室を出校舎を出、俺はてくてくと散歩をしていた。
 音楽をシャカシャカヘッドフォンの奥で聞きつつ鼻唄を歌っていれば、前方に本を大量に持つ本屋ちゃん__宮崎のどかを発見した。ぐらぐらとバランスが危うく、進む先には手すりなどもない階段、なんと言うか、足を捻って落ちそうで怖い。



『宮崎』



 後ろから声を掛ければ彼女は立ち止まり、振り向く。不思議そうに「緋影くんー……?」と呟く彼女に落ちそうで怖かった、と伝えて本を宮崎の腕から取り上げた。宮崎はいいのに、とは言っていたが心配だっただけだと告げれば大人しくなった。好意は素直に受けとるに限るぞ。

 そのまま二人で階段を降りていけば視界の端に俺たちをぽけっと見上げているネギ先生がうつりこんだ。別に意識することも無いだろうとそのまま進んでいけば、一冊の本が滑り落ち、そのまま階段を外れて落下していく。そのまま落ちたら一瞬でお陀仏だろう。なんせこの学園の本はやたら古いのが多いし、劣化も激しい。価値は希少なものも多い。やべ、と思ったときには本はもうすぐ地面のそこ。気付いたときにはネギ先生が杖をふりかざし、ふわりと本が浮いた。
 バカ、なに魔法使ってんだよ、と思う暇もなく少年はそこへ飛び込み本を抱えて転がる。とりあえず感謝の意は示しとくか。



「は、はいこれ……落としましたよ!」
『おー、ありがとうネギ先生……ってうわ、っ、!?』



 感謝を述べた瞬間ネギ先生は神楽坂にさらわれていた。俺の手元にはあのとき落とした本だけが残っていて目が点になりそうだ。どんなときでも動かない表情筋はなにかと役に立つ。……見てたな、神楽坂の奴。



『まあ、とりあえず。傷がつかなくて良かった』
「はいー……後でお礼をしないとー……」
『確かこのあとネギ先生の歓迎会やるんだったか。俺は行かねェけど、その時に図書券とか渡せばいい』
「緋影くん来ないの……?」
『俺、新学期でもう疲れててな、先生にもよろしく言っといてくれ』
「あ、うんー……」



**


 翌日、ネギ先生もとっととホームルームを終わらせて一時間目の英語の授業を開始した。すらすらと英文を読み始めた先生は笑顔で「今のところ、誰かに訳して貰おうかなぁ」と微笑む。
 それと同時にさっ、さっ、と目線を背ける。神楽坂が一番目をそらしていたにも関わらず当てられ、ぎゃんぎゃんとわめき出すが読んで、大失敗。仕舞いにネギ先生のくしゃみで服が飛んで下着になる神楽坂を見まいとサッと俺は教科書を立てて視界を遮ったのだった。

 放課後、とっとと返ってきた俺は女子寮の一番隅の部屋、他の部屋よりもずっと広い俺にあてがわれた部屋へと帰宅していた。だがしかし、帰ってきたのも束の間、シャンプー等は向こうにあるよな、と呟き桶とタオル、そして着替えを持って部屋を出た。
 前々から学園長に頼んでいたのだ。月イチで大浴場貸し切り。女子風呂なので気が引けるが、ずっとあの部屋についている風呂ではなんか俺が嫌だ。
 いそいそとやって来た大浴場の札を『緋影入浴中』のものに掛けすたこらと準備をして中へと入った。



『……何回見てもすげェよなァ…ここは』



 どこぞの温泉施設のようだ。俺は一番オーソドックスな湯へと浸かりふへーと間抜けに息を吐き出す。やっぱり風呂はガス抜きだよなー。
 ずるずると滑っていき、肩が浸かる位まで体勢を崩し、枠に腕を引っ掻けてリラックス。そのまま防水加工のしてあるイヤホンをつけて濡れたタオルを目に掛けた。



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225:マメツキ◆A.:2017/04/23(日) 15:07 ID:iBo



 何やらぎゃいぎゃいとやかましい。タオルを取って辺りを見れば神楽坂がネギ先生の頭を洗っていた。……俺、札掛けといたよな……気付かなかったのか?
 すいすいと泳いで二人に近付き声を掛ける。



『おい』
「わひぃっ!?」
「なっ、な、緋影!? なんでここに……!」
『なんでって……札掛けといたろ。『緋影入浴中』っての。見てねェのか?』
「嘘っ、今日だったの!? ごめん!」



 パッと謝れる神楽坂はいいやつだ。わざとじゃないならいい、洗い終わったらとっとと出な。と告げて俺は背を向け再び枠に腕を掛けた。
 と、そこで。脱衣所の方からきゃっきゃと女の声が聞こえてきた。今日は厄日か。ちら、と二人へ視線を送れば既に身を潜めており、ハァと息を吐く。なんなんだ今日は。
 入ってきたのは雪広、宮崎、早乙女__早乙女ハルナ、お嬢__近衛木乃香、綾瀬__綾瀬夕映。札、見てねぇのかよオイ。
 入ってきた五人はまず悲鳴をあげて俺が居ることに驚いた。



「なっ、なな、なんで緋影さんがここにいらっしゃって!?」
「あっ、もしかして……」
『そのもしかしてだよ。今日は俺の貸し切りの日だ。とりあえずタオル巻け』
「っうわ!」
「きゃあ!」



 そう俺が言えばみんな札見てなかった……と唖然としタオルを体に巻いた。こんなに来てるし、もうそろそろ良いだろう。



「す、すみません……すぐ出ますです」
「すまんなーイオリくん」
『いや、いい。俺が出る。もうそろそろ出るかと思ってたところだった』



 タオルを腰に巻いてざぱりと立ち上がり、彼女らの横を通り抜け俺は風呂から上がったのだった。



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226:マメツキ◆A.:2017/04/23(日) 19:31 ID:iBo

一方の風呂場side
「それにしても……なんですのさっきのは! 何であの暴力的で無法者のアスナさんの部屋にネギ先生が」
「あー、それはウチのおじいちゃんがそうするよーに言ったんよ」

 雪広あやか、もとい『いいんちょ』の言葉にこのかがすかさずそう返した。学園長先生が? と聞き返すいいんちょたちとは別に綾瀬が宮崎に話し掛ける。

「それにしても、緋影さんには悪いことをしてしまいましたね」
「あうぅ……そうだねユエ」

 綾瀬、もといユエの言葉に同意した宮崎、もといのどかは気まずそうな表情を浮かべる。このかはそれに「ホンマ優しいやんなぁ、イオリくん」と微笑んだ。コクコクと一同が同意するなか、早乙女、もといハルナが「っていうか、私達の裸すら見ようとしてなかったよねぇ、緋影くん」とのびをしながら呟く。

「普通、ガン見するなり鼻血出すなり変なこと考えたりするのにさ」
「なっ、緋影さんはそんなこと致しませんわ! あの方は常識をわきまえておりますのよ! 今日だってアスナさんが突然下着になったときも咄嗟に教科書で見ないように……!」
「チキンかヘタレなだけってことも有り得るよねー」
「……いや、それはないと思いますよハルナ。私達を『女の子』として尊重してのことです。ですよね、のどか」
「う、うんユエー……今日だって私が大量の本、運んでるときに階段から落ちそうだったからーって、代わりに本を持ってくれたしー……」
「あーいうん硬派って言うんやなぁ」
「流石緋影さんですわー!」
「麻帆良の堅物は伊達じゃないってねー!」

 その会話を聞いていたアスナとネギ。湯船の中で葉に隠れたアスナにネギが小声で問い掛けた。

「緋影さんってそんなにすごいんですか?」
「そりゃそうよ。緋影の理性は鋼より固いの。そうじゃないとあんな場面で顔色が一切変わらなかったりなんてしないし、あんたにみたいにデリカシーが無いことなんてしないわ」
「あうー」
「わりと有名なのよ、緋影は。『麻帆良の堅物』って呼ばれてんの。クールでイケメンだから女子人気もかなり高いし。ウチのクラス、そんなに騒いだりしないけど水面下争いしてるわ」

 二人がそんな会話をしているとは露知らず、五人の会話はヒートアップしていく。

「ネギくん来たから人気が二分しそうやなー」
「な! ネギ先生も緋影さんも死守しますわ!」
「頑張るですよ、いいんちょさん」
「話を戻すけど、私達もネギくんか緋影くんと相部屋になれるようこのかのおじーちゃんに頼んでみよっかなー。ネギくんか緋影くんが一緒だと嬉しいよねー」
「なっ!?」
「えっ」
「そうですね」
「あっ、のどかは緋影くんの方が嬉しいかー!」
「はっ、ハルナー……!」

 そこで影から聞いていた二人はなんのはなしだと首をかしげ、いいんちょは声をあらげる。

「勝手に決めないでいただけます!? ネギ先生と同居し立派に育てるにはもっとふさわしい人物がいると思いますわ!」
「緋影くんは?」
「あっ、緋影さんは……ああっ、そんな……二十四時間一緒だなんて!」
「いいんちょ、なに考えたんや……?」
「でも緋影くん断りそうだよねぇ。こう、自分から告白して彼女が出来るまで同居とかしなさそう」
「誠実な方ですからね」
「はうう……」

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227:マメツキ◆A.:2017/04/23(日) 20:09 ID:iBo


 ネギ先生が来てから5日が経過した。昨日はバカ五人衆(レンジャー)の居残り授業など麻帆良は恐ろしくやかましかったが、まあ退屈はしないので良いだろう。

 昼休み、俺が校内の一階の廊下を歩いていると、ばたばたと佐々木と和泉が駆けてきた。



「あっ、いおりくーん!」
「緋影くんやぁぁっ」
『え、なんだなんだ。どーしたお前ら怪我してるじゃねェか……』



 とりあえず手持ちの絆創膏を和泉の額に貼り、佐々木の手の甲にも貼る。聞くところによると高校生が場所を横取りしようとバレーで暴行を仕掛けてきたらしい。



『……とりあえず、俺が行ってくるからお前らネギ先生呼んでこい』
「ありがとーいおりくーん!」
「絆創膏もありがとなぁ!」



 ぱたぱたと駆けていく二人を見送りさて、行くかと俺も廊下を走り出した。まったく、高等部の人たちも大人気ないな。

**

 俺が校庭に到着すると話とは違い、神楽坂や雪広の二人、あとネギ先生もそこにいた。「誰が譲りますかこのババア!」と雪広が怒鳴ったのが鬨の声となり、中高生が殴り合いになろうする寸前。雪広、お前意外と口悪いな。やれやれ、とあたふたしているネギ先生を一瞥して俺は静かに声を掛けた。



『なにやってんすか、先輩方』



 俺の声に全員がぴたりと動きを止め、俺を見つめる。



『元気なのはいいんすけど、後輩相手にちょっと大人気なくないっすか』
「それは……」
『まぁでも、ウチにも非があったみてェなんで、あいこってことで場はおさめましょうか』



 後ろから神楽坂と雪広の両名に肩を組んでリーダー的存在の先輩を見つめれば「そ、そうね……」と引き下がっていただけた。去り際鼻を鳴らしていたのは頂けないが、まあ良いだろう。二人から腕を退けて先輩の方を見ながらため息を吐いた。



「でも緋影! 悪いのはあいつらよ!?」
『手ェ出しゃ一緒だ神楽坂。そもそも、お前ら美人なんだから取っ組み合いなんかすんな。みっともないぞ』
「うぅー……!」
「あ、緋影さんっ、そもそものところ、続きをなんとおっしゃいましたか……!? 私たちがどうの……」
『? 美人なんだから?』
「はうっ!」



 くら、と立ちくらみを起こした雪広を怪訝に見つめてから俺はそのあとの処理をネギ先生に丸投げしたのだった。



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228:マメツキ◆A.:2017/04/23(日) 21:51 ID:iBo

女子side
「ねえねえ、やっぱ緋影くんってすごくない?」
「……うん」
「確かに頼りにはなるかにゃー」
「……そのあと来た高畑先生もね」

 上から、和泉亜子、大河内アキラ、明石裕奈がそう会話していた。アキラの言った高畑は、あの騒動のあとの場を収束させてくれたのだ。その会話を聞き、このかがアスナに問い掛ける。

「なにかあったん?」
「高等部と場所の取り合い」
「えー、またですか?」
「みんなやられてるよ」



 アスナの言葉に不安そうに呟いたのは鳴滝双子だ。上から妹の文伽、姉の風香。見た目は小学生だが立派な中学生である。

「ネギくんはちょーっと情けなかったかなー」
「でも十歳だししょーがないじゃーん」



 明石__ゆーなの言葉に返答したのは佐々木まき絵。いいんちょが「なんですの皆さんあんなにネギ先生を可愛がっていらっしゃったのに!」と憤慨を露にする。そのままきゃっきゃと会話をしながらバレーをするため屋上のコートへと足を運んだ。……運んだのだが。



「あ!」
「あら、また会ったわねあんたたち。偶然ね♪」
「むっ」
「高等部2ーD!!」



 なんと、自習の先程の高校生たちがコートを占拠していた。そしてそこで捕まっているネギ先生。体育の先生が来れなくなったので代わりに、と言うことらしい。それで呆気なく捕まったわけだ。


**

 俺が体操服の長ズボンを吐き、ジャージを腰に巻いて屋上へやって来た頃にはなぜかあのときの高校生とうちのクラスはドッチボールをしていた。
 制服姿で明らかにやる気がないエヴァンジェリンに手招きされ、俺は彼女の隣に腰を下ろした。
 エヴァンジェリン・A(アタナシア)・K(キティ)・マクダウェル。小学生の見た目だが、金髪に白い肌、西洋人形(ビスク・ドール)のような美少女だ。だがしかし、その実態は齢三百年を生きる吸血鬼の真祖だ。『闇の福音』『ダークエヴァンジェル』『魔王』等と呼ばれる三百億の賞金が掛けられた悪の大魔法使い。実質最強に位置するのだ。
 どうやら俺は彼女に気に入られているようで、俺が胡座を掻けば彼女はその上にトスンと座る。側にはうちのクラスの天才二人__葉加瀬 聡美(はかせ さとみ)と超 鈴音(チャオ・リンシェン)が産み出したアンドロイドの絡操 茶々丸(からくり ちゃちゃまる)もいた。高身長だがこう見えて二歳らしい。頭いいけど。



「やっと来たか、いおりよ」
『おう。で、なにこれ』
「高等部がわざわざこちらに来て勝負をしにね。自分たちが勝ったらあの坊主を教生に寄越せと我が儘を通しに来たのさ。ついでにお前もな」
『普通に考えて無理だろ。学園長が素直に頷くとは思えねェ。そもそもそんな勝手な人事異動他が認めねェ筈だ。』
「ああ。それをあのクラスのバカ共が本気にしたのさ」
『みんなネギ先生大好きだな』
「(それだけじゃないと思うが)」



 エヴァ嬢の呆れた視線を受けつつ俺はそれをボケッと観察する。どうやら彼方さんは大会でも優勝したことのあるチームらしく「トライアングルアタックよ!」とあのリーダー格の人が叫んでいた。トライアングルアタックて。そこで立ち上がったのは雪広だ。



「ネギ先生気をつけて! 私が受けてたちますわ!」
『頑張れよ雪広ー』
「はうっ、緋影さんっ! ……ふっふっふ! さあ来なさいオバサマ方! 2-Aクラス委員長雪広あやかがネギ先生と緋影さんをお守りいたしますわ!」
『(気合い入ってんな雪広)』
「(こいつ……)」



 エヴァ嬢の冷やかな視線をなぜか一心に受けつつゲームの行く末を見守る。雪広? トライアングルアタックにやられてた。きゃ、とか、あん、とかビビりながら。やはりそこは雪広財閥の次女だというところか。よく頑張ったよ雪広。
 そして太陽を背にした先輩に神楽坂がやられ、一気に諦めモードに入ったがネギ先生の先生らしい言葉にみんなが気を持ち直し、無事勝利を納めた。ネギ先生、服が破ける程の威力のボールは投げないでください。



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229:マメツキ◆A.:2017/04/23(日) 22:35 ID:iBo



 ネギ先生達他が魔法書を取りに行った期末テストも初めての学年クラス最下位を脱出しあまつさえトップを取れた。これでネギ先生も正式な先生として授業ができるはずだ。と言っても、もう終了式は終わっていて、ネギ先生は正式な先生としてこの学園で生活している。労働基準法はこの学園都市じゃ通用しないぜ。

 ……あぁ、今日は雪広のあの日だった。春休みで実家に帰省すると言っていたから、出向こうか。
 俺と雪広、神楽坂は小学校からずっと同じクラスで所謂『幼馴染み』に当たる。まあ、小1からの付き合いだ。神楽坂と雪広は出会って一時間目が終わったあとから喧嘩をし出し、それを俺が止めに入る。それが七年も続いたものだから、あの二人が喧嘩をし出すと俺が止めに入るのがデフォルトになってしまっていた。小さい頃は雪広、神楽坂両共に「いおり」くんや呼び捨てだったのだが、いつの間にか名字になっていた。神楽坂が高畑先生に好意を抱いてからだろうか。雪広も神楽坂につられるように呼ばなくなった。それが少しさみしいとも思うが、俺は最初から名字呼びしかしてなかったので当然と言える。関係は悪くないから気にしていない。
 そうしてやって来た雪広邸。相変わらず豪邸で広い。チャイムを押せば「どなたでしょうか」と執事さんの声が聞こえてきて『緋影です』と返答すれば、快く門を開いてくれた。
 だだっ広い前庭を相変わらず綺麗だなぁと感心しながら邸内へ足を踏み入れればメイドさん達が「ようこそいらっしゃいました、緋影様」と歓迎してくれる。それが幼い頃と変わらず少しくすぐったくなった。



『今どこに居ます? 雪ひ……あやかちゃんは』
「只今、ネギ先生とアスナ様、近衛様達とプールの方に居られますのでご案内いたましす」
『あざます』



 俺を見て懐かしそうに微笑むこの人たちの優しさに触れて、相変わらず雪広は恵まれていると素直に羨望できる。ここはとても暖かい。忘れずに今日、ネギ先生を連れてきた神楽坂も大概雪広想いだ。
 水着に着替えるかと聞かれたが、そこまでしてもらうわけにもいかないので断った。入るつもりはないが、プールサイドにでも居よう。



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230:マメツキ◆A.:2017/04/23(日) 23:06 ID:iBo



 プールサイドの椅子に座っている雪広とネギ先生に『邪魔してるぞ』と声を掛ければ二人は驚いたように俺を見た。



「緋影くん!?」
「緋影さん……!? ど、どうして……!」
『遊びに来た。久しぶりに、執事さんたちにも挨拶したかったからな』
「まぁ……!」



 笑顔の雪広に大丈夫そうだな、と安堵してから、雪広が「私の手作りクッキーですの」とサッとクッキーの入った篭を取り出した。綺麗に焼けたそれはさすがと言うかなんと言うか、焼き具合が絶妙で酷く美味しかった。
 そこからまた水着姿の神楽坂が飛び込んで来て二人は大喧嘩。神楽坂のショタコン女と言う言葉がトリガーとなり、雪広が「もー怒りましたわ! 帰って! この家の敷地から即刻出てってくださいまし!」と叫び、売り言葉に買い言葉、「ハイハイわかったわよ出ていきます!」と神楽坂が背を向けた。お互いことを大事に想っているくせに、本当に不器用な幼馴染み達だ。俺が引き留めようとした瞬間、神楽坂が告げた。



「さっきのショタコン女は取り消しとく。今日だけは。ゴメン」



 なんだ、言えるじゃないか。俺はほっと息を吐き、落ち込んだ様子の雪広とそばにいるネギ先生を見つめた。



「ごめんなさいネギ先生、みっともないところを。アスナさんと私、本当に本当に仲が悪くて、いつもケンカばかり……」
「それは違いますよ。アスナさんは今日、いいんちょさんを元気付けようとして、僕にここに来るよう頼んだんですよ」
「え?」
「いいんちょさん、弟がいたんですよね。僕と同じくらいの」
「あ……!」



 そう、雪広には長男となる弟が居たのだ。結局、雪広はその弟に会えなかったが。今日は雪広の弟の誕生日であり命日だ。幼い頃、もうすぐ弟が生まれるんですのと嬉しそうに話していた。いつ生まれても良いようにと部屋まで作っていた。それらが全て実現が不可能となったときの雪広の落ち込み具合は半端が無かったのだ。毎日ショックが抜けきらず、綺麗な目は赤く少しばかり腫れていたのを覚えている。それを一番に元気付けたのは神楽坂。その頃、一等無口だった神楽坂は「元気出せ」の短い言葉と蹴りを一発。なにするんですの! とおいかけっこをして少しばかり元気を取り戻した雪広にホッとしたのも覚えてる。そのあといつものように俺が止めに入ったのだっていい思い出だ。



「そっか……今日は弟の誕生日でしたわね……」



 そこまで呟いてパッと俺を見た雪広は俺を嬉しそうに見つめる。俺は照れ臭くなって視線を逸らした。



「ありがとうございます、いおりくん」
『……! ……別に、大したことじゃない』



 そうして背を向けた雪広は「本当に、幼い頃からあの女は……」と震えた声で言葉を紡ぐ。



「暴力的で無法もので……とんでもないクラスメイトですわ……」



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231:マメツキ◆A.:2017/04/23(日) 23:44 ID:iBo



 それから。ネギ先生のパクティオーがパートナーだあーだこーだだの、前々から知らされていた学園都市一斉電力調査で停電だの、その間に桜通りに出るだの言われていたエヴァ嬢がネギ先生と対決して負けただの、なんかもういろいろ濃い。何この一学期超濃い。あ、あと神楽坂の誕生日である4/21にはちゃんとプレゼントを渡してきた。新しいスニーカーである。神楽坂には両親が居らず、学費などは学園長が負担して返済など要らないと言っているのに律儀に毎朝新聞配達をしている。だからか、革靴ではないプライベート用のものはボロボロだった。喜んでくれたことには酷く安堵した覚えがある。
 そしてとうとうやって来た修学旅行。京都に行くらしい。京都といえば、お嬢の実家があるところか。今回俺は学園長からお嬢の護衛は頼まれていないので、ほとんど桜咲に任せるつもりだ。
 桜咲 刹那。京都神鳴流派の女剣士。半デコ少女だ。小柄なのだが『夕凪』と言う鐔のない太刀を使用するこのかの幼馴染みで専属護衛。このかとは距離を取っているようだ。幼い頃は仲がとてもよかったと聞いている。

 荷物を持って駅にやって来れば、ほぼ全員が集まっており「遅いよー」と口々に文句を垂れられた。なんてこった、一番はしゃいでいるのはネギ先生じゃねーか。

**

 新幹線に足を踏み入れてすぐ、俺と桜咲、ザジ__ザジ・レイニーディはネギ先生の元へと歩む。
 エヴァ嬢はネギ先生の父親、『世界を救った英雄』『赤毛の悪魔』『千の魔法を持つ男(サウザンド・マスター)』と呼ばれる20年前に世界を救った大英雄、ナギ・スプリングフィールドに登校地獄と言う中学生を延々やりつづける呪いを掛けられ、学園から外に出られないのだ。ちなみにもう15年中学生やってる。それの訳はどうやらエヴァ嬢がナギにしつこくアプローチしていたかららしい。女の子だったわエヴァ嬢。と言うわけで、エヴァ嬢は学園を離れられないから来ていない。茶々丸は主人と共に居ることを望んで不在。そのおかげで俺達六班は三人だ。流石に駄目だろうと先生に声を掛けた。
 俺達は他の班に入れてもらうことになり、一番親しい神楽坂のいる班になった。桜咲も。ザジは雪広のところだった。
 俺は席に着くなり班員__早乙女、宮崎、綾瀬、お嬢、神楽坂に挨拶をしてからイヤホンを装着し、アイマスクをしてから眠りについた。五時起きだぞコノヤロー集合はええよ。

**

 俺が早乙女に揺さぶられ、起こされたのは降りる直前だった。どうやら車内で蛙が大量発生する事態があったらしい。俺、どんだけ寝てたんだ……?

 京都に着くなり、清水寺で集合写真を撮った。鳴滝双子が「これが噂の飛び降りるアレ!」「誰かっ! 飛び降りれ!」と騒いでいた。
 その他、恋占いの石に雪広と佐々木が挑戦して、なぜか蛙がいる落とし穴にはまったり地味に宮崎が挑戦して無事辿り着いていたり。音羽の滝の恋愛側に酒が盛られていてクラスメイトの大半が酔い潰れたり。
 まあ、生徒指導の新田先生にばれなくてよかったよかった。やっぱり女子って恋のためならなんでもするんだな……。
 そしてやって来た旅館、嵐山。和風と言うか、風流で空気が澄んでてもう俺ここに住みたい。

232:マメツキ◆A.:2017/04/24(月) 00:12 ID:iBo


 修学旅行二日目。俺はネギ先生と同じ部屋にあてがわれていたのだが、ネギ先生が10歳と言うだけあって幼く、ずいぶんと仲良くなった。
 俺は男なので、一応班には組み込ませてもらったものの自由行動は基本一人で許可されている。特例だ。女ばかりに囲まれてちゃ息苦しいだろうって。新田先生、正直感謝です。
 二人して服を着替えて共に階段を降りていく。一階の大広間で朝食だ。



「それにしても、昨日は疲れました……」
『あー、酒飲んで大変だったみたいっすね。蛙が出てどうだのこうだの』
「それもありますが昨日の夜……いえ、なんでもないです!」
『(まだ俺も魔法使いだってこと分かってないのか。桜咲は無事判明したようだが)』
「朝御飯楽しみですねー! なんだろう!」
『っすね』
「緋影くん身長高いですもんね」
『成長期なんすよ』
「何センチぐらいですか?」
『あー……185越えたっけな……。まあ、心配しなくても先生もすぐ来ますよ、成長期』
「僕、どれくらい身長伸びるんだろう」



 そんな他愛ない会話をしている間、ネギ先生のそばにいるオコジョは俺を見つめていた。カモミール・アルベール。下着泥棒で有名だったあのオコジョ妖精だ。どうしてネギ先生の使い魔としているのか謎だが、ネギ先生のそばにいれば捕まる心配もないからか。打算的だな、コイツ。噂じゃパンツ神だとか。男として有り得ないだろコレは。

**

 朝食を食べ終え、ネギ先生と神楽坂と共にロビーを歩いていたときだった。宮崎がやって来たかと思うと佐々木が飛び込んで叫ぶ。


「あのー……」
「ネギくーん! いおりくーん! 今日一緒に見学しよー!」
「ちょ、まき絵さん! ネギ先生といおりくんはうちの3班と見学を!」
「えー! いいんちょずるーい! 先にうちが誘ったのにー!」
「あのー……」
「だったらぼくらの班もー!」



 ごちゃごちゃと争奪戦になっているネギ先生の頭をぽんぽんと撫でて視線で頑張れよ、と送るもののネギ先生は泣きそうな顔して訴えかけてきた。いや、そんな顔されても。その時だった。


「あ、あのー! ネギせんせー! 緋影くん! よ、よろしければ今日の自由行動……私達の班と一緒に回りませんかー……!?」



 宮崎にしては大きな声が出て、辺りは騒然とする。ネギ先生は少し考えたあと、あっさりと許可してしまった。あれか、お嬢が関西呪術協会の陰陽師一部に狙われてるからだろうか。



『俺はー……』
「緋影くん……!」



 やめろ、先生、俺をそんな目で見るな。同性で仲良くなったからだろうか。こっちに来てほしいオーラが半端ない。仕方ない。俺もいくとしよう。



『わかった、わかった先生。俺も一班に行くからそんな顔して俺を見るな』
「やったー!」
『(手放しのネギ先生の笑顔プライスレスェ……)宮崎も誘ってくれてありがとう』
「あー……いえー……」



 周囲が本屋が勝っただのなんだの言っているがなんのことかさっぱりな俺は首をかしげるしかなかった。



.

233:マメツキ◆A.:2017/04/24(月) 00:31 ID:iBo

女子side


 やって来た東大寺に、ネギ、いおりを引き連れた一班はやって来ていた。初めての鹿を見て大興奮のネギを神楽坂がたしなめる。いおりを含む周囲もそれを微笑ましそうに眺めるなか、のどかはその後ろで幸せそうに微笑む。いつもと違って髪を揺ったのどかは前髪を少し切ったこともあり可愛い女の子だ。



「えへへー……緋影くんー……♪」



 そこへ弾丸のごとくのどかに蹴りを入れたのはハルナとユエだった。



「キャー!?」
「見直したよアンタにそんな勇気があったなんて!」
「感動したです」
「えへへ……うん、ありがとー……。緋影くんと奈良を回れるなんて幸せー……今年はもう思い残すことはないかもー」



 そこへのどかに「ばかぁ!」と頬をひっぱたく真似をしたのがハルナだ。



「この程度で満足してどーすんのよ!? ここから先が押しどころでしょ!
告るのよのどか。今日ここで緋影くんに想いを告白するのよ!」
「えーーー!? そ、そんなの無理だよぅ!」
「無理じゃないわよ! いい!? アンタはもう二年も片想いしてるのよ! そして修学旅行は男子も女子も浮きたつもの! 麻帆良恋愛研究会では修学旅行期間中の告白成功率は87%を越えるのよ!」
「ははははちじゅうなな……」



 ハルナの熱気をユエは表情を崩すことなく「ファイト」とでも言うような顔をして立っている。のどかはと言うと目をぐるぐると回しておりそこまで気が回らないようだ。



「しかもここで恋人になれば明日の判別完全自由行動日は二人っきりのラブラブ私服デートも……?」



 ハルナのその言葉にのどかは顔を赤く染めてくるくる目を回しつつ考える。(ラブラブデート……緋影くんと……)ここら辺やはり乙女である。



「そっそそそ、そんなこと急に言われてもー……」
「大丈夫! アンタなら行ける!」
「ファイトですのどか」



.

234:マメツキ◆A.:2017/04/24(月) 17:32 ID:iBo



「アスナー! ネギセンセー! 一緒に大仏見よーよ!」
「へぶぇっ!?」
「ぶふぅっ」
「せっちゃんお団子買ってきたえ一緒に食べへんー!?」
「えっ」



 そうして連れ去られた俺と宮崎の他のメンバー。なんだよ置いてくなよ。
 唖然とする宮崎にとりあえず二人で回ってしまおうかと誘えばおずおずと頷いてくれて、拒絶されなくてよかった。と表情には出さずにホッとする。



「あっあのっ、緋影くん! 私、大、大、す、好き……大仏が大好きで!」
『へェ。渋い趣味だな、良いよな。大仏。俺たちも綾瀬の仲間だな』

「あのっ、そのっ、私、緋影くんは大、大吉で!」
『ああ、みくじでも引くか』
「いえっ、じゃなくてー……大吉が大好き、いえっ、大仏……!」
『(……うわ、大凶ェ)』



 今日の宮崎はどうしたんだ。何かを伝えたいみたいだが、どうもうまく言えていない。東大寺へとやって来て周囲を見回し、良いものを発見する。



『宮崎、ホラ。大仏の鼻と同じ大きさの穴があるぞ。くぐり抜けられたら頭が良くなったり願いが叶ったりするみてェだ』
「えっ、願いが!? やります! くぐりますー!」
『(……小動物みてェで可愛いな)』



 とまぁごそごそと入っていったは良いものの、どうやらポシェットがつっかえたらしい。それを俺が引っ張り出せば、宮崎は申し訳なさからか泣きっ面で走り去ってしまった。



『……俺、なんかしたっけ』



 その後ふらふらと徘徊しながら宮崎を探しつつ見学する。どうしようもう足がパンパンだ。膝いたい。そこで再び宮崎が姿を現した。



「緋影くん! あのっ、実は私……大、根おろしも好きで……」
『落ち着け宮崎、深呼吸だ。大根おろしも旨いよな。急かしてねェから落ち着いて話せ』
「あ、ありがとー……!

あ、あの、緋影くん……! 私、緋影のこと、二年前からずっと好きでした! 私、私……緋影くんのことが大好きです!」



 背後で桜咲、神楽坂、オコジョが俺を見ていることに気が付きながらも、俺はピシリとその態勢と表情のまま俺は硬直した。たらりと冷や汗が俺の頬を伝う。実を言うと、人生初の告白を受けたのだ。



「あ、いえー……わ、分かってます。突然こんなことを言っても迷惑なのは……ごめんなさい。でも私の気持ちを知ってもらいたかったので……失礼するね緋影くんー!」
『……!? ……! ……っ!!!?』



 走り去る宮崎を引き留めることも出来ず、一人棒立ちのまま唖然とする。どさりと尻餅をつけば神楽坂とネギ先生が慌てて此方へ駆けてきた。
 ガシッと神楽坂の腕を掴んで顔を上げる。



『か、かかかっ、神楽坂っ、俺はどうしたらいい!? 断ればいいのか!? 受け入れりゃいいのか!? なんなんだ!? 俺が言えばいいのか!? どうすりゃいい!?』
「はぁっ!? あんたこれまでも告白されたことあるでしょっ!?」
『馬鹿言えっ、人生初だ! 告白なんてされたことっ、』
「嘘でしょ!?」
「無いんですか緋影くん!?」
「(いつも無表情の緋影さんがこんなに取り乱している……)」
『桜咲ェ……!』
「(心を読まれたっ!?)」



**


 夕暮れになり、旅館へと帰還した俺はロビーのソファに座って膝に肘を置き、前屈みになって深刻な顔をしていた。



『……(宮崎に、告白された。告白までされたなら、それなりに責任を……!? でも俺宮崎のこと何も知らねェ……確かに宮崎は可愛い。以前まで前髪が長くて気付かなかったが、相当……)いやいやいや、いや、でも……ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙っ。あ゙ー、駄目だ駄目だ。どうすりゃいいんだ俺は……』



 うんうんと唸るなか、雪広と佐々木が「いおりくん、どうされたんですの?」「昼の奈良公園で何かあったの? いおりくん」と俺に聞いてくる。



『いや、……告白されたらどう返したら良いのか……』
「えええ!? こ、告白!?」
「えーそれホント!? いおりくん告白されたの!?」



 何!? と騒ぎ出すコイツらにやべ。と頬を掻く。騒ぎ出したコイツらにバレるとヤバイので俺はその場をすたこらと逃げ去ったのだった。



.

235:マメツキ◆A.:2017/04/25(火) 00:13 ID:iBo

「五番、和泉亜子。三月卒業する三年に告白するもフラれ彼氏なし。気が弱くお人好しだが運動能力は高い。六番、大河内アキラ。彼氏なし。運動能力高し。水泳部エース、高等部からも期待の声。寡黙。十八番、龍宮真名。彼氏不明学園内の神社で巫女のバイトをしている模様。十九番、超 鈴音。天才その一。勉強スポーツお料理なんでもござれの無敵超人。二十四番、葉加瀬聡美。天才その二。研究以外に興味なし。あだ名はもちろんハカセ」

そこまでオコジョ妖精のカモに説明したのは麻帆良のパパラッチ娘、報道部の朝倉和美だった。つい先程までいおりに誰が告ったのか調べ、宮崎と言うことが判明し宮崎の健気さに証拠を撤去したのち、ネギが魔法使いだと知ったのである。最初こそ朝倉は魔法使いを世に広めようとしたがカモの説得兼熱意に当てられ一旦その考えをよした。キスからなる仮契約に二人してネギとやらせようと言う思考を会わせ持っている二人は何やら怪しげな作戦を今夜決行しようとしていた。

一方、ロビーではネギがアスナと刹那に早速朝倉に魔法がバレたと報告していた。それを聞いたアスナは「はあ!?朝倉に魔法がバレた!?」と怒鳴り声をあげる。なんでどうしてと問い詰めてくるアスナに酷く落ち込んだ様子のネギ。

「もーだめだ、アンタ世界中に正体バレてオコジョにされて強制送還だわ」
「そんなぁー!一緒に弁護してくださいよアスナさん桜咲さんー!」
『なにしてんだ?』

そこへ偶然立ち会わせたのは緋影伊織だった。やって来た彼にアスナとネギが慌て出す。何も聞いてないわよね、なにか聞いてませんよねと詰め寄る二人に圧倒されたいおりは困惑した顔で刹那に視線で助けを求めた。

「実は、朝倉さんにネギ先生の魔法がバレてしまって」
「なっ!?」
「何言ってるんですか桜咲さん!」
『待て。朝倉にバレた?なにしてんすかネギ先生ェ』
「えっ」
「緋影アンタ、もしかして!?」
『そうだ、俺も魔法使いだ』

緋影の突然のカミングアウトにえっと叫びを挙げたネギとアスナ。刹那は知っているようで、気付いてなかったのかと嘆息していた。

「彼は全盛期のエヴァンジェリンさんをも凌ぐ程の実力者、あのナギの実力に最も近いと言われています」
『俺そんな実力ねェよ桜咲』
「え!父さんに最も近い!?」
『だから…』

若干ふて腐れたような顔のいおりの後ろから現れたのは朝倉。彼女が言うにカモの熱意にほだされネギの秘密を守るエージェントとして協力してくれるらしい。
夜、騒ぎ過ぎたA組は新田先生に自分の班部屋から出たものはロビーで正座を命じられ、それにA組の大半が落胆したのも束の間。朝倉が彼女らにゲームを持ち掛けた。

「名付けて『くちびる争奪!修学旅行でネギ先生、緋影くんとラブラブキッス大作戦』!ネギくんのマネージャーの許可も取ってあるよ」
「え!?」
「ネギくんかいおりくんとキス!?」

叫び声をあげる彼女等に朝倉は「こらこら大声出すなって!新田がまた来るぞ」と小声でたしなめた。

「ルールは簡単、各班から二人ずつを選手に選び、新田先生方の監視を潜り、ネギ先生かいおりくんの唇をゲット!妨害可能!但し武器は両手の枕投げのみ!上位入賞者には豪華景品プレゼント!なお、新田先生に見つかった者は他言無用朝まで正座!死して屍拾う者無し!」
「きびし! 見つかった人は助けないアルか!?」
「豪華景品ってなんだよ!?」
「ひみつ♪ でも期待して良いよ」
「いいね面白そう!」
「ゴールがどちらか二人とキスってのもいいかも」
「でも見つかったら正座だよ?」
「そのくらいの方が緊張感があって良いよ!」
「おー!」

そこで朝倉の名前を呼んだのはいいんちょだった。やっぱりダメか、と朝倉が冷や汗を流したとき、「やりましょう。クラス委員長として公認しますわ」と許可が出た。

「よーし各班10:30までに私に選手二名を報告! 11:00からゲーム開始だー!」
<オオー!>

 乙女たちは知らない。朝倉とカモの真の目的がパクティオーカードだと言うことを。

236:マメツキ◆A.:2017/04/28(金) 20:28 ID:8.o



 11時となり、乙女達(大半がネギ狙い)が血気盛んに盛り上がっていく頃、一方のいおりは外へと涼みに来ていた。和服があまりにも似合わないと思って自嘲した彼は持参のワイシャツにカーゴパンツ姿。酷く涼しげである。
 途端、ふるりと背を這うような悪寒と、何かしらの執念を感じとり、小麦色の肌に鳥肌を立たせて旅館を振り返った。



『……なんだ?』



 訳もわからずに眉を潜めるいおりは地面に光るものにやっと気が付いた。足元に電球でも埋められているのかと思っていたが、どうやらソレは仮契約用の魔法陣。魔法陣はぐるりと旅館を囲っており、ようやくいおりはカモミールか、と人相悪く舌打ちをかました。
 成功すれば仮契約は一人につき五万円を協会が支払うことになっているのだが。大方、金に目が眩んだか、か弱いネギ先生が多くの女子にモテるところをにやにや見ていたいのか。どちらとも取れるその行動にいおりは再び舌打ちをひとつ。
 妙にカモミールと仲が良かった朝倉の事だ、アイツも参加していると考えていい。そしてこの異様な執念。恐らく朝倉に焚き付けられて何か仮契約、言わばキスに関するゲームでもやっているのだろう。まったく、ロクなことをしてくれないバカたちだ。しばらく外にいる方が安全だと思い、ベンチに座って月夜を見上げる。綺麗だと思うと同時に、あの夜を思い出した。



……や、やめっ、やめてくれ、俺を……

[……嫌だぁっ、死にたくないっ、死にたくない死にたくないっ! 嫌だあああああ! あああああ!]
[ぎゃああああっ! いやっ、熱いっ! 熱いよおおおおお! 何で、何であんただけっ!]
[助けてっ、助けていおりくんんんんん! 熱いのっ、痛い、溶けそうなの! ずるいずるいずるい! アンタずるいんだよ! ひぎっ、熱いいっ、あつ、ああああああ!]

……また、死んだ。一人二人、三人四人、大勢が俺に助けを求めて死んでいく。積み重なる屍に俺は涙を流すのみだった。鉄格子から覗いているのは漆黒の闇とそのときの俺を嘲笑う化のように爛々と輝く綺麗な月。残っているのは、俺と__。

 ハッとして目をぱちりと見開く。周囲はあまり変わっていないが、時計を見ればもう11時半。寝てしまっていたようだ。俺の体は汗がぐっしょりで、はあ、と息が上がっていることに気が付く。ずいぶんと昔の夢を見た。気分の悪い夢だ。気持ち悪い。



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237:アポロ改めぜんざい◆A.:2017/05/31(水) 22:51 ID:FdI

突発的シリーズその一。知識有転生トリップ傍観前世アイドル男主。enst→はじあく。前世では夢ノ咲学院出身の人気アイドル。羽風や瀬名等の三年生と同い年だった。当時はアイドル一の色気を誇っていた色男アイドル。声がエロボ、仕草が色っぽい。但し本人にそんな気はない。眼鏡。常識人。隠れオタク。はじあくも本誌とコミックスを読んでいたサンデー派。しかしマガジンも読む。ジャンプはあまり読まなかった。あくまで傍観、ジローたちとはただの友人。高校生にしてアイドルしてるので学校は休みがち。超人気。オカン気質。名前は『最原伊織』、ニックネームは「イオ」や「いおり」。


**

 俺は生まれたときから少々他人とは違っていた。前世の記憶があるのだ。まあ待て、ふざけてるわけじゃない。俺は至って正常だ。
 俺の前世はまあ、大変輝かしいもので、その世界でもアイドルをしていた。この世界とは違い、アイドルを出せば出すほど売れる世の中だった。もちろん人気が出ず終わるところもあったが。
 俺は前者で飛ぶように売れたアイドルだった。周囲に『UNDEAD』や『流星隊』『紅月』その他もろもろなどの数人が集まったユニットの中で俺はソロでよくやった方だと思う。夢ノ咲の暗黒時代のせいで他の人が変わっていった中で俺はよくやった方だと思う。転校生のプロデューサーのあんずが来て暗黒時代も脱したが。トリスタ万歳。
 俺はそんな数々の人気アイドルを輩出してきた名門夢ノ咲学院のアイドル科出身で、まあ順風満帆に仕事を行ってきたと思う。
 本題はここからだ。俺、死んだ。死因なんてそんな大したことじゃなくもなかった。大変なものだった。妄想に取り付かれ、俺の彼女だと言い張った女の子のファンに否定を入れたら逆上して刺されて死んだ。このポジション……薫とかじゃないのか普通。
 まあ悔やんでいても仕方がなく第二の人生を歩んでいたら大変なことに気がついた。お隣さんが『渡』さんなのだ。まあ渡なんて名前はよくいる。そう思っていたが、どうにもそう思いきれない。俺が通う高校は『三葉ヶ岡高校』、お隣の渡さんは同級生で同じクラスの『渡恭子』。その友人は通称ユキの『東雲雪路』、アキの『中津川秋穂』そして先日このクラスに編入してきたのが自分を悪の組織の科学者で次期首領だと名乗るマントを羽織った男『阿久野ジロー』。これはもしや、というかもしやどころではない。サンデー屈指のギャグラブコメディの『はじめてのあく』ではなかろうか!? そう、あの壮絶なバトルとギャグとラブコメと貧乳の悩みが対立せず均等に存在するあの!
 超関わりたくないが、まあ大丈夫だろう。だって俺はお隣と言うだけで渡ちゃんとも仲良くないし、中津川ちゃんや東雲ちゃんとも話したことはない。小学校からずっと一緒だがここまで関わりがないのはすごい。ぐっじょぶあの頃の俺。しかも俺自体が口下手でコミュ障。お陰でテレビでも普段でもクールで通ってます畜生。俺も普通の青春したい。でもアイドル楽しい。そんな俺にも友人がいますよええ。
 俺はスマホ片手にとある人物に電話を掛けた。



『緑谷ェェエイ……!!!』
「ど、どうしたの最原くん、いきなり……」
『なんなんだアイツェェェエ!!!』
「ああ、阿久野くんだよね」
『そうソイツ。何あれ怖い。渡ちゃんファンクラブに潰されろ』
「あ、でも前に中津川さんの家でみんなで勉強会したんだけど、良い奴だったよ。ファンクラブの人たちも認めてる」
『緑谷ェェエイ!!! 羨ましいんだよこんにゃろーめが! 失せろ! お前らだけ青春しやがって! お前は俺を置いてかないと思ってたのに!』
「ごめん」
『俺こそごめん、取り乱した』



 じゃあまたな、と電話を切る。とりあえず緑谷は今後東雲ちゃんを好きになるので全力で応援してやろうと決めた。



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238:アポロ改めぜんざい◆A.:2017/05/31(水) 23:13 ID:FdI



 まあ、あれから月日が流れるのは長いもんで、もう三年生だ。彼らは彼らで順調に物語を進んでいるし、俺は仕事でちょくちょく抜けたり。彼らはキルゼム部とやらを作って仲良しだ。元ファンクラブの会長の赤城さんとはちょくちょく連絡を取り合う仲である。ただしいまだにメイン勢と絡んだことはない。俺の人見知りなめんな。
 だがしかし、今回は違う。俺は高校に入って初めて、部活動とやらに入ることになった。そう、かのキルゼム部である。阿久野に「入ってくれええええ」と土下座されたので流石に可哀想になり、受けたのだが。なぜ俺が三年にもなって彼らの話題に上がっているのだ。現在教室の外の壁に張り付いてます。



「あの寡黙な最原くんがアンタのたのみごと聞いてくれるなんて奇跡じゃん」
「ああ、俺も受けてくれるとは思わなかった」
「よく受け入れてくれたよねー、最原くん」
「ほんとにな。アイドルやってて近寄りがたかったんだけど、いいやつかもな」
「えっ、お前らアイツと話したことねえの!?」



 女子三人組と阿久野の会話を聞いていた黄村がすっとんきょうな声をあげて驚いた。やめて驚かないで。緑谷も苦笑いしないで。



「あいつって……アンタまさか最原くんと話したことあんの!?」
「ファンクラブに殺されねーか!?」
「あの女子に人気の眼鏡エロイケメンくんと、黄村くんが!?」
「東雲辛辣じゃね?」



 黄村に同意。それ俺も思った。



「アイツ超話しやすいぞ、話題吹っ掛けるとベラベラ喋ってくれる。めっちゃ笑うし」
「うそお!? 話しかけても「ああ」か「おう」か頷くしかしないのに!?」



 俺のハートにぐさりと何かが刺さったぞどうしてくれる渡ちゃん。



「あー、アイツ超のつくほど人見知りだからな。最近彼女欲しい青春したいって言ってたぜ。そこら辺は多分緑谷の方が詳しい」
「!? そうなのか緑谷!?」
「うわっ、ジローくん唾飛ばさないでよ! まあ確かに、僕多分彼と一番仲がいいと思うよ。友達欲しいって言ってたのを高1の時からずっと聞いてたし」



 もうやめて、俺のライフはもうゼロよ。って感じなんだが。死ぬ。恥ずか死する。



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239:アポロ改めぜんざい◆A.:2017/06/06(火) 01:04 ID:.N.

短編。黒バス洛山。※この男主は超短気である。
**

 バスケ等の運動部の古くからの強豪校、洛山高校。この伝統ある高校には、とある噂が……というか出来事がある。ある男子生徒が異常に女子生徒にモテているというものだ。屋上の扉がギィと開いてやって来たのは黛千尋。洛山高校のバスケ部所属の三年生である。今日も今日とてラノベを読破しようとやって来た訳だが、男女の話声が聞こえてくるのでどうやら先客が居たようだ。まったく、と背を向けるも、くぐもった唸りの様な男の声は聞き覚えのあるものだった。
 黛は真顔で思う、またかよ。大きく溜め息をはき、給水タンクの裏に回ればそこには一人の眼鏡の男を囲む五、六人の女子。男の方は腕を後ろ手に縛られており、口には布で猿轡とさんざんな格好だ、めちゃくちゃ怒鳴り散らそうとして猿轡のせいで唸るしかない。そして黛にとってそれはもう見慣れたものである。

「はぁ、最原くんカッコいいよ最原くんぅへ……、ふへっ」
「いやもうホントエロイケメンいおりくんhshsprprしたいカッコいいエロいもう好き! 抱いて!」
「そうよもう抱いて!? 今日は教室に帰さないよぉっ! 散々私達のことイかしてぇっ!」
「うへ、ふへへへへ、いおりくんのぉ、いおりくんと……」
「はいじゃあ脱ごうね! 上半身のボタンは既に外してあるからね!」
『ん゙ん゙ん゙!? ん゙ん゙ー!』

めちゃくちゃキレてる最原の前全開のワイシャツに躊躇なく手を伸ばしそのワイシャツは彼女らの一人にガッチリホールドされている。どたばたと足を暴れさせて抵抗する最原だが上に女子生徒が一人馬乗りになりそれも出来なくなる。
 見ていた黛も流石に駄目だと判断して止めに入った。

「おい、お前その辺にしとけ」
『ん¨!(狂喜乱舞してる)』
「うわ、黛くん来ちゃった!」
「え、もーおわり? おっと、最原くん次は頼むよ!」
「つまんない、あ、いおりくん今度会おうね!」
「いおりくんまたね!」
「いおりくん好き! また今度!」
『ん¨ぅ¨!? ん¨ん¨ぅ!』

走り去る女子に汚い罵声を浴びせていく最原だが、それすらも恐らく彼女らにとっては至福の一言だ。乙女の脳内補正怖い。黛が拘束を解いたとたん意味不明単語を怒鳴り散らしながら周囲の壁や地面に八つ当たりを開始する最原。これだって((ry

『最近の女子どないなっとるねんクソボケカスどもが!』
「いや、お前のこととなるとこの学校の女子はほとんどが肉食系女子になるから、その中でも突出した奴らだ」
『何冷静に分析しとるんや黛! っちゅーか女子こわ! なんやそれ怖! 俺軽く貞操の危機やったやん女子積極的すぎてホンマこわ!?』
「でもお前童貞卒業してんだろ」
『それ小学四年生の時に姉貴の友達の高校生のおねえさんに襲われてやからな!? 逆レ(ピー)やからな!?』
「はえーよ」
『好きでやったんちゃうわ!』

そう、最原いおりという男は、異性から異常に好意を抱かれるのだ。普段はこんな風にかなり短気ですぐ怒鳴り散らす短細胞の塊のような男だが、顔よし頭よし運動神経よし面倒見よし、そして短気だが紳士と来た。以前、階段につまずいて降ってきた隣のクラスのミスコン優勝者を咄嗟に片手で抱き止めその場で彼女に告白されたのは記憶に新しい。その前は体育の授業で倒れた女子をお姫様抱っこで運び保健室で襲われ、曲がり角でぶつかった後輩に手をさしのべればストリップを始めようとされ、なんかもういろいろとヤバイのである。体育の時に制服が無くなり、困っていれば数分後扉の前に「いおりきゅんの制服良い匂いだったよ! ネクタイはちょっと部長がいただきますしたから後日返すね!」と言うメモと共にネクタイを除いたブレザー一式が綺麗に折り畳まれていたり、シャープペンシルや消しゴム筆箱挙げ句鞄すらなくなったこともあった(基本ちゃんと返ってくる)。今回のように襲われているところも、少なくはない。そんな女子を見て男子の間では俺たちの友人の最原は死守しなければならないと言う謎の義務感を背負っているのである。親しい友人の黛もその一人だ。

「今回は派手だな」
『後ろからスタンガン浴びせられてやー、気ぃついたらワイシャツのボタンは全部外れとるしなんやらでびっくりやで』
「びっくりで済ませられるお前にびっくりだっつの」

今日も今日とて黛は思う、コイツホントにラノベの主人公より可哀想だなと。

240:アポロ改めぜんざい◆A.:2017/06/10(土) 18:34 ID:EAo

あんスタ夢。逆ハー狙い撃退のお話。あんずちゃんと夢主は同一人物ではありません。メインストーリー終了後。所謂革命後。
夢主の名前は『最原 いおり』。設定↓
学年・クラス:二年B組
身長:157cm
誕生日:4/12
星座:牡羊座
血液型:A型
 あんずと同じ時期に夢ノ咲学院アイドル科にやって来たデザイン科テスト生。普通科とは学科が違うので気まずいだろと言うことで同時期にやって来た女子一人のあんずの為にもとアイドル科に設置された。傍観しない傍観主。
 オタク。容姿は平凡。巨乳。絵が上手い。キャラから背景や風景画までそつなくこなすイラストに関してはハイスペック夢主。衣装のデザインやポスターレイアウトまで請け負う。逆ハー狙いに目の敵にされている。UNDEADと一番仲良し。
 肘に大きな古傷のあと。あと背中にも。黒タイツ。
 脳内はあんずちゃんマジホンマかわええマジリスペクト。会話するなどおこがましい。というか女神。かわいい(あんずは仲良くしたい)関西弁。
 性格はネガティブでとうらぶの山姥切国広の性格をちょっと軽くした感じ。自尊心は人並み。「どうせこっちなんて劣等生……」。言いたいことはズバッと言う派。逆ハー狙い主を見て逆ハー狙いとかリアルにおったんやすげえ。そしてうざいキモい。的な。逆ハー狙い怖い。声は低い。基本自分を下婢して自分自身を嘲笑している。何かあれば頼るのは大神。人間不信ぎみ。
 黒髪黒目。ショートカットで前髪はセンラさんみたいな。肩上の毛先は少々外に跳ねている。ブレザーは腕捲り。前はキツくて閉められない。

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241:ぜんざい改めマメツキ◆A.:2017/06/10(土) 19:31 ID:EAo


 夢ノ咲に転校してきて、S1だのB1だの見てこれは酷いと思って、思ったものの何もせずクラスの人たちとは程々に打ち解けUNDEADとかなり仲良くなりあんずちゃんの可愛さに撃沈し衣装のデザインがほしいと頼まれたのでササッと書いて手渡しエンジェルスマイルの残されトリスタがドリフェスで帰ってきた皇帝を負かし、ほぼ八百長だったB1などに革命を起こして平和になった夢ノ咲。相変わらずあんずちゃんは人気者でもうこっちには雲の上の人。コミュ障のこっちには些か声をかけるにはレベルが高い。だからせわしなく駆け回るあんずにお疲れ様も言えず仕舞い。ホンマこっちは死んだらエエ。



『そう思うやろ大神……』
「話見えねぇよ」
『ホンマにこっちクズやなって』
「……コイツめんどくせえ」
『めんどくてホンマすまん、ホンマこっち存在意義が分からへん死にたい』
「だあああああああ! うぜええええええ!」



 席から立ち上がって苦悩の声をあらげた大神はこっちに本気のチョップを一発浴びせて叫びながら教室を出ていった。なんだあいつ。ホームルーム始まるんやけど。やけに騒がしい教室の中で話し相手も居なくなったから音楽プレーヤーで曲を選らんでイヤホンを填めた。

 案の定担任に引きずられてあやつは帰宅。おかえりわんこ。そういったらわりと真面目に殴られた。
 ホームルームが開始されて、早速聞かされたのは教室がざわめいていた理由と言うか根元と言うか。
 どうやらA組に転校生が来ているらしい。遅れてきたプロデューサー科のテスト生のようだ。



『……ガミくんどう思う、プロデューサー科にテスト生がもう一人やで』
「……知らね〜よ。あんず居んのになんでもう一人とは思うけどな、ど〜せほとんどあんずに依頼殺到だろ」
『あんずちゃん女神ヴィーナスマジ天使』
「真顔きめぇ」
『ホンマすまんキモくてすまん生きる価値なくてすまん……』
「うぜ〜」



 翌日、鳴上ちゃんから聞いた話ではその新たな転校生はミーハーだと言うことが判明した。やな予感する。



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242:ぜんざい改めマメツキ◆A.:2017/06/11(日) 16:39 ID:EAo

※今後捏造が多かったり。

 翌日、教室でヘッドホンをつけながらアイポットで曲を聞きつつタブレットでブッ快感がテーマの爽快パネル破壊スマホゲームをしていたら、あんずちゃんがB組に駆け込んで来た。あ、涙が見えとる。かわゆす……とか言っとる場合ちゃう。何があった。
 伊更や鳴上が必死に宥めている光景を見ていれば、大神が軽音部から帰室していたらしく後ろの席にどさりと腰を下ろす。めっちゃイライラしとんやけど、目付きが凶悪なんやけど。こわ。



『……どないしたん、オオカミ』
「クソ気持ちワリ〜女に絡まれた、ってオオカミじゃなくて大神だっつの。役に立たねぇあんずに変わってプロデュースしてやるだとよ、何様だアイツ。腕に絡まってきやがったキモい」
『……その子は死んだらエエ』
「お前マジいい性格してわ、同感だけど。その女、例の新しいプロデューサーだぜ」
『クソもへったくれもないなクソ女死んだらエエ。上よく通したな』
「死んだら良いって二回言ってんぞ」



 二人でぐちぐちとこっちは未だ顔を拝見したことのないその二人目のプロデューサー、『姫野 愛(ひめの めぐむ)』について罵り合う。顔はずいぶんと可愛らしく美少女らしい。見るとこカスですねごめんなさい。
 二人で駄弁っているとあんずちゃんと鳴上が側に寄ってきていて、あんずちゃんが泣いていた理由は姫野が大神に言っていたことを偶然聞いていたからのようだ。説明ありがとう鳴上ちゃん。タイミング悪いな、そして姫野許すマジ。



「私そんな風に見えてたのかなぁ……」



 泣きながらそう呟いたあんずちゃんにこっちはぴしりと固まり、周りは真剣にそんなことはないと理由を述べる。
 あんずちゃんは作曲を月永先輩に頼みに行き作詞をしレッスン場を借りステージを用意しドリフェス企画をいくつも立ち上げとる敏腕プロデューサー。正直ちょっと前まで素人だったとは思えんぐらいにはすごい。
 そのあんずちゃんを役立たず言うんやから姫野は多分目ェ悪い。いや、こっちも眼鏡やから目ェ悪いんやけど。それか自分がそれ以上にデキル子なのか。多分ありえへん思うけどな。
 そうつらつら自分の考えを喋ればあんずちゃんが号泣した。びっくりしてあんずちゃんの脇に居た伊更に目をやればめっちゃ目をキラキラさせてて再び驚く。鳴上ちゃんみたら涙ぐんでた。なんでや。三人の反応が怖すぎて大神に視線で助けを求めれば渋々うんうん頷いてた。コイツはぶん殴りてぇ。



『な、んで泣いとるかは知らんけど、まぁ、気にせん方がエエと思う……んやけどガミくんこれ正解? なぁコレ正解なん?』
「知らね〜よ俺様に聞くんじゃねえ」
「イオちゃんありがとぉ……」
『……こっちなんかに礼言う前に鳴上ちゃんと伊更に言うたってや……』



 とりあえずあんずちゃんを二人に任せて大神連れてA組行こう。どんな子か見たいし、弟の方の朔間さん探しにいこう。
 一刻も早くここから逃げたかったこっちは大神の腕を引っ張って教室を出た。



「っ、どこいくんだよ」
『A組』
「帰る!!!」
『A組行くだけやって』
「ぜって〜帰る!!!」



 掴んだ方の腕を大神がぶん回すので抱え込んで再び引っ張っていざA組へ。途中最後の抵抗と思わしき大神の拳骨はわりと痛かった。一部始終何やら怒鳴っていたけど聞く気にはならん。うるさい。



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243:ぜんざい改めマメツキ◆A.:2017/06/13(火) 18:32 ID:EAo


 到着した隣のクラスを後ろの扉から覗き見れば、そこには氷鷹の腕に絡みついて遊木、明星と楽しげに談笑する姫野愛がそこにはいた。トリスタの三人は揃って隠してはいるが嫌悪感に濡れた顔をしている様子。
 こっちの上から覗いてきた大神は「マジきめ〜あの女」と苦々しくぽそりと呟いた。こう見えて人のいいわんこがここまで他人を嫌うとは……なにやつ姫野愛。



「おいいおり。気づかれる前に帰るぞ」
『せやな、帰ろか。すまんトリスタ三人しばらく犠牲になってくれ』



 そそくさと二人でその場を去り、教室に帰ってくるとみんながどうだったと聞きにやって来た。



「ど、どうだったイオちゃん!?」
「様子を見る限りは……」
「あ、やっぱりー?」
『ホンマに姫野気持ち悪かったわ』
「「「ん?」」」
『A組行ってきてんけど、姫野が氷鷹の腕に絡み付いて猫撫で声あげとってびびったわ。大神とさっさと退散してきた』
「えー……」
「……マジなのね」
「大神、お前ってやつは……」
「こっち見んなてめ〜ら!」



 大神が暴れとったのをスルーしてこっちは席につき毅然と再びゲームを開始した。今日からジューンブラインドフェスやねん!



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244:ぜんざい改めマメツキ◆A.:2017/06/13(火) 23:14 ID:EAo

アドニスくんの喋り方がよくわからん……ごめんねアドニス……。


 今日はUNDEADに衣装案を考えてほしいと言われ彼らの元にやって来た。学院でこっちが一番安心する顔ぶれである。学院一背徳的なユニットと名高い彼らは存外優しいのだ。好き。
 今回も五人で顔を付き合わせてこっちの持ってきた幾つかの案にあーだこーだとわーぎゃーと意見を出していた。



「この案6の衣装ならここにシルバーのアクセントを入れた方がいいんじゃない? いや、衣装案全体にシルバーアクセント入れる? シルバーかゴールドのコサージュとか。俺達のイメージぴったりじゃん」
『そうっすね……でも案6やと全体的に灰色っぽいんで目立たんのとちゃいます? いっそ黒にしますか? 今回はどれもスーツに似せたんで』
「そうじゃな……黒は今までと被るから灰色のままで、アクセントにブルーシルバーやヴァイオレットシルバーを入れるのはどうじゃ? あと我輩は帽子も欲しいように思う」
「それならジャケットは裾を伸ばして黒色も良くないだろうか。……いや、それだと大神には似合わないな」
「そこは個人の意見でいいじゃね〜か。俺は腰巻きにする」
『ああ、それなら大神のイメージっぽいな、ちょうどエエし。どうします? これでいきはりますか?』
「ふむ、そうじゃなあ。元々の原案に不満は無かったし、これで行こうか」
「お、マジで! やったね!」



 衣装決めが終了し、隣の羽風さんがはあああああと長い息を漏らしながら椅子の背もたれへと倒れ込む。こっちは決まった案を避けて原案を纏めてファイルに突っ込み一息吐く。
 その間もあああと言い続けてる羽風さんはわりと異常だ、なにかあったのだろうか。みんなして不思議そうに羽風さんを見つめるものだから視線に気づいた彼は「ああ、いや……」と体を起こし煮えきらない態度だ。いつもの憎たらしいほどスパッと爽やかにサボるねーだのカフェ行こーだの饒舌に回る口にしては珍しい。彼は疲れた顔をしてこう言った。



「あのさー、聞いてよー。新しい転校生ちゃん来たじゃん?」
『察しましたわぁ……』
「おー……」
「……言いたくはないが、まぁ、俺にもわかった」
「あぁあの噂の」
「そーそー。っていうか朔間さんまだあの子と会ってないんだ……」
「探しておるようじゃがな」
「まあ、その姫野ちゃんさー。そのときみんなの言ってた噂知んなくて、偶然見かけてお茶でもどー? って誘ったんだよ」
『女好きが仇になった』



 違うよーもーとか言いながら頬をその長い指でつんつんつついてきたので頭を叩き、続きを促す。



「誘ったは誘ったで良いけど、その態度が自分は誘われて当然、みたいな? そんな風でちょーっと感じ悪くてねー。しかもうるさいし」
「薫くんはうるさい子が苦手だったかのう」
「そうそう。だから誘ったは良いけどこの子ダメだってなってね。ちょうどそのときレッスンある日だったからさ。忘れてたふりして理由つけて戻ろうとしたんだよ」
「てめ〜最低だな」
「あんずが羽風先輩が来ないとその日嘆いていた」
『あんずちゃんに嘆かせるやなんて……羽風さん』
「ひどい! まあ、その転校生ちゃん、転校初日に誘ったんだけど、その子がいきなり「薫はレッスンよくサボるからそんなわけないの!」とか言い出して困っちゃったよ」
「……どういうことじゃそれは……」
『不気味っすね』
「……ああ」



 姫野愛って何者だよ。



.

245:ぜんざい改めマメツキ◆A.:2017/06/17(土) 00:54 ID:5/U

あんずちゃんに対してマメツキはそんなこと思ってません。きっといい子。姫野の頭が破綻してるだけ。

姫野side

 私の名前は姫野愛(めぐむ)、愛称はめご。唐突にいっちゃうと私には前世の記憶があって、神様に御願いしてこのあんさんぶるスターズの世界にトリップさせてもらったの!
 死因は通り魔に刺された出血死。本来死ぬ予定のなかった私が死んじゃったから残りの寿命をこの世界で過ごすことになったの。もちろん三つの特典だってあるわ、だって私は愛されているもの!
 美少女補正に頭脳、そして運動能力! 逆ハー補正も欲しかったけど、この世界で一番彼らを理解している私はきっと自然に愛されるから心配要らない。
 でもあんずが同じクラスにいるしで鬱陶しいのよね。私的にはB組が良かったと思うのに。それに何よ! もうメインストーリー終わっちゃってるじゃない! これじゃ記憶の意味ない! とか思うけどこれからのイベントを楽しめばいいわ。この前だって一番推しのUNDEADの薫にお茶に誘われたし、晃牙ともお喋りしたし、アドニスは優しい! 零さんにも早く会いたいな!

 そして一つ、気掛かりがあるの。



「んー、次のドリフェスの衣装案、これでもいいけどさー、やっぱりダントツこれだよねウッキー!」
「そうだね! いいよね二人とも!」
「あ、デザインなら私がするよ! 任せて!」



 スバルと真が一枚の案を握り締めながら真緒と北斗に聞くものだから、私がデザインすると申し出てあげた。だってそれはきゅうごしらえなんでしょ?
 キラキラした視線で問えば四人とも首を振った。



「いおりはUNDEAD以外のデザインを滅多に作らないからな。今回、乙狩に頼んでそのツテで書いてもらったのだ」
「そういうわけで、アイツの書いたデザインは貴重なんだ。出来るだけ使いたいって訳だ!」
「レアだよレア〜! UNDEADのメンバーが同じクラスにいてくれてホントよかった〜」
「そうだよね! 絵に関しての才能有りまくりと言うか、とにかく鬼才なんだよなあ!」
「ウッキーの言う通り〜」



 そう、いおりとか言う訳のわからない女。一体何者なのよ。フルネームは知らないけれど、あんずと同じ時期に転校してきたデザイン科テスト生らしい。現在は晃牙と一番仲が良くて、アンデPらしい。あんたプロデューサーじゃないじゃない! と思ったところ、UNDEADの強い希望らしくUNDEADでのみプロデュース可能、それ以外はレアと言われる少数の衣装のデザイン、ポスター等を担当しているらしい。噂で聞くと巨乳眼鏡のようだ。何狙ってんのよ! どうせトリッパーでしょ! 絶対その女を学院から追い出してアンデPの座についてやるんだから!



.

246:ぜんざい改めマメツキ◆A.:2017/06/21(水) 22:45 ID:5/U

いおりside

 ぞくりと背筋に悪寒が走る。ふるりと肩を震わせれば零さんが「どうしたいおり」と声を掛けてくれた。



『……や、ちょっと悪寒が』
「風邪か? それなら肉を食べて寝るといい」
『乙狩……心配してくれるのは嬉しいけどな……』



 乙狩の反応に若干引きつつ感謝を述べる。隣の席で横から「あのとき声かけなきゃよかったー、いおりちゃーん慰めてー」と後悔しまくりの羽風さんが引っ付いてきてよしよしと宥める。あ、零さんが叩いた。

**

 レッスン終わりの帰り道。校門を出るまでUNDEADの面々と共に歩いていたのだが、何者かが後ろから突き飛ばして来て、ぐらりとバランスを崩す。とりあえず建て直して、転けると言う事態にならなかったのは助かったが。なんで今押されたんこっち。
 後ろを振り返ってみれば、さっきまでこっちが居た場所で、大神と羽風さんの腕に絡まるあの逆ハー狙い。とりあえず四人とも何が起こったかわからないと言う顔をしている。こっちも流石に唖然。ここまでするか普通。逆ハー狙い魂やべー。



『……ガミくん、今こっちなんで突き飛ばされたん』
「知らね〜よ! つーか離せマメ女! 気持ち悪ぃ!」
「ひっどぉい大神くーん! めごがせぇ〜っかく! 来てあげたのにー!」
「誰も頼んでね〜っつーの! はーなーせー!」



 必死に腕を振り回す大神と引っ付く姫野の激しい攻防の隅で、がっちり腕をホールドされている羽風さんが震えていた。ちらちらこちらに助けを求めるんやめてもらってエエですかね。
 零さんと乙狩? 二人は姫野のド迫力についていけず既に此方の側で待機してます。おじいちゃんは「な、なんじゃこの子は」と訳のわからない生態にわりとビビってる。とりあえず肩を握りしめるのやめてもらって良いですかね、結構痛い。



「どーして私はダメなのにデザイン科の……えーと、最原? さんだけ良いの!? そんなの不公平!」
「不公平以前の問題じゃよ、転校生や。我輩たちはお主とあまり仲がよくないじゃろう」



 おじいちゃんの精一杯のどっか行けアピールは「これから仲良くなればいいもん!」と言う発言で論破された。カワイソス。



.

247:マメツキ◆A.:2017/07/24(月) 22:50 ID:F9w

上記連載は一旦停止。ここで連載しているほとんどをネタだと思って読んでください。
次は唐突に書きたくなった地縛少年花子くん連載。八尋寧々ちゃんポジションの記憶なし夢主。オチは恐らく花子くん。いずれ絵もあげますが今まで通りのショートカット眼鏡に関西弁巨乳。気だるげ。名前は小原一織(コハラ イオリ)。
次の更新からスタート。

248:マメツキ◆A.:2017/07/24(月) 23:16 ID:F9w


 __ねえ知ってる? この学園にある七不思議の話。全部の正しい話を集めると、何かが起こるんだって。知らないの? じゃあひとつだけ教えてあげる。一番有名なお話ね。

“七不思議の七番目 トイレの花子さん”
 旧校舎三階女子トイレ、奥から三番目。
そこには花子さんがいて、呼び出した人の願いを叶えてくれる、でも引き替えに何か大切なものを取られてしまうんだって。

**

 七不思議の噂を聞いた一織は恐る恐ると言ったように旧校舎の三階の女子トイレの扉を開いた。わりときれいなトイレの中で一織はきょろきょろと気だるげな表情で鋭い目の奥の瞳を慌しなく動かす。こくりと小さく息を飲んだ彼女は奥から三番目のトイレのドアをノックした。



「……花子さん花子さァん、居らはりますかァ?」



 独特のイントネーションをそのままに、彼女の敬語が響く。そのまま視線をトイレへと集中砲火させていると、ドアがひとりでにギィと開き、そこから手が出てきた。



「はーあーいー」



 先程の問い掛けの答えのようで、間延びした声が返ってくる。これには流石の彼女もびくりと肩を震わせ、ばしんと彼女はためらいなく少し青くなった顔でドアを開けた。だが、そこには何もない。



『……なんや、気のせいか』



 ほっと息を着いた瞬間、後ろから肩にポンと手を置かれ、「こっちだよ」と囁かれる。思わず『ひっ、』と言う声が溢れた一織を恐怖に歪んだ顔で素早く振り向きその威力を殺さぬまま、遠心力の回し蹴りを叩き込んだ。スカートの中が見えるとかそんなのに構ってなどいられない。だが。ふっとすり抜けたそれに、とうとう悲鳴をあげてしまった。



『うおおおおおっ!?』
「くっ」



 色気のない悲鳴をあげると同時に、先程の場所からくすくすくふふと堪えた様なかわいらしい笑い声が聞こえてくる。明らかに少年の声。不思議に思った一織が振り向くと、すぐそばにはくりっとした大きな瞳、左頬に『封』とかかれた紙を引っ付けている一昔前の学ランに学帽の格好をした少年がいた。状況を把握した彼女はキョトンとしたまま眉を寄せ、どうして男子が女子トイレに居るんだと思いながら、彼をよく見てハッとする。



『透ける体、人魂、昔の制服……お前は……』



 若干震えた声の一織に少年はにこりと笑い、「俺は怪異さ」と軽く告げ、ひらりと三番目の個室のトイレの貯水タンクに腰を下ろす。



「七不思議が七番目、「トイレの花子さん」。はじめまして」



 そう言って彼、『トイレの花子さん』はへらりと笑って帽子のツバをクイ、と下げた。

249:マメツキ◆A.:2017/08/13(日) 00:19 ID:xhA

上はもうネタと認識してくださって構いません。
 通り魔に刺されて死んで転生して弱ペダのにょた化した荒北さんに成り代わった女がその世界で健やかな一生を終えてから復活に転生するややこしい話。
とりあえず復活での容姿はにょた北さん。ロングヘアの巨乳にょた北さん。名前は『荒北 いおり』。中学生。行き帰りはもちろんロード、愛車のビアンキちゃん。ソロで大会にも出ており『運び屋』『野獣』などと通り名がついている。一人称『あたし』の喋り方荒北さん。逆ハー主を傍観する感じ。かつ原作終了後の中学三年生のお話。にょた北さんに成り代わる前がオタクだったため知識は健在。てか弱ペダにもあったし。っていうにょた北得設定。クールな美人。京子ちゃん花ちゃんとはお友達かつツナたちとは関わりのないただのクラスメート。前世の影響を受けロードはずっと大好き。

**

 あたしが通り魔に刺されて殺され目を覚ませば夢小説でありがちな転生してて、転生した世界が大好きな弱ペダで傍観しよーっと、とそう考えていたらあたしは大好きな荒北さんになってて、かつにょたでみんな女の子で戦って年とってようやく安らぎを得られると思ったら再びの転生。絶望したわ。超超絶望的に絶望的で絶望的だったことにとても絶望した。循子チャンは天使。安らかに寝かせろよマジで。
 そんなこんなで悟りを一瞬開いた今回は成り代わることもなく再び荒北いおりとして生きていたあたし。しかし中学校が『並盛』で御近所さんに沢田さんいりゃ凍り付いたわ。復活じゃねーかって。とりあえずツナとは関わりなかったし、京子チャン花チャンと仲良くしてりゃいいやと過ごしてロードに勤しむ傍ら、見れるとこだけ原作傍観して特に巻き込まれることなく原作終了。泣いて喜んだらアキチャンに吠えられた。悲しみ。
 なんだかんだ有りつつ自分には一切何もなく身構えさせんじゃねーよって内心怒鳴りながらもやっと安寧を得た荒北さんですどうも。いやぁどうもどうも、歓声をどうもありがとう。は? 歓声? 脳内補正だ馬ァ鹿チャンが。



「え、どうしたのいおり?」
『あァ? なァに京子チャン』
「あんた凄むのやめなさい」
『凄んでねーヨ……。で、なァに』
「ううん、いおり、すごく満足そうな顔してたから!」
『マジかヨ』



 二人といるときは脳内補正だやいのと騒ぐのやめよ。ばれるわ。こえーマジこえー。
 朝の教室の一角(京子チャンの席)に集まってそんな会話を繰り広げていたら、花チャンがそうそう、と思い出したように言った。



「私、聞いたんだけど。今日このクラスに転校生来るみたいよ」
「古里くんの時みたいな人かな?」
『さァ? どーだろうネ。あたしあんま転校生とか興味ナァイ』
「はー。流石『野獣』。やっぱり狼は狼でも一匹狼ね」
「他にも『運び屋』って呼ばれるんでしょ?」
『いやそれチャリの話だからァ』



.

250:マメツキ◆A.:2017/08/13(日) 01:00 ID:xhA


 転校生云々の話をし始めたら後ろの方の席のボンゴレトリオがバッとこちらを向いた。ちなみにクローム髑髏チャンは一緒に行動する友人である。現在四人で談笑中だ。クロームチャンもむもむパン食べてて可愛い。てか教室のみんなは黒いスーツの赤ん坊いることに疑問抱かんのね。まったくもってわけわからん。見えてないのか。
 そんな今年も仲良く何かしらの陰謀すら感じるメインキャラの代わり映えしないクラスでトリオを無視しつつ原作終了しているがゆえのアクシデントに巻き込まれないように花チャンから話を聞く。



「なんでも、女の子のイタリアからの帰国子女らしくて」
「へー! 仲良くなれると良いなぁ」
『そーだネー』



 口では京子チャンに同意しつつ、脳内でこれ逆ハー狙い主のトリップじゃね? と目星をつける。目の前で呑気に微笑むメインヒロインとそのお兄さんと交際している黒髪美女を絶対出来る範囲で守り抜こうと傍観に徹することにした。原作終了して先が読めないから巻き込まれたくない。やっぱり可愛いのは自分の身だ。どうだ驚いたか。情けない。前世の荒北さんどこいった。当事者だからか、納得。
 そしてやってきた朝のホームルーム。先生の合図と共に入ってきた転校生はツインテの髪と瞳があたしたちの目に痛いドピンクなショッキングピンクの女だった。これ絶対決定じゃナァイ、逆ハー狙い主ジャン。顔付きは普通、体型ちょっと肥満気味のドピンクチャンはめっちゃぶりっこして猫撫で声で告げる。「私ぃ、両親が日本人なんだけどぉ、生まれも育ちもイタリアの帰国子女なのぉ。日本語もちゃんと喋れるから安心して! よろしくねぇ!」まず名前を言え名前を。一番後ろの席の窓際に着席しているあたしが内心即座に突っ込んだのはご愛嬌だ。
 固まる教室で引き気味な笑みの担任が「名前名前!」と言うと彼女はこう言った。



「やだぁ、私ったらうっかりぃ〜。私、姫野麗子! 麗子って呼んでねえ!」



 きゃぴっとした動作の彼女に一言もの申そう。めっちゃ痛い子だよ。気付こうよ。そしておっちょこちょい狙ってんのか狙えてねーよばーか。
 とりあえず、掴みが最悪な彼女は京子チャンをキッと睨んだあと、密集するボンゴレトリオに蕩けるような視線を送る。とりあえずコイツ逆ハー狙い確定だな。


**

 案の定というかなんというか。代理戦争で吹っ切れたのか、最近ボンゴレ十代目の自覚をし始めた沢田やその部下の獄寺、山本に早速絡んでいた彼女はあの子馬鹿かと横目に流しながら花チャンとクロームチャン下校するため下駄箱に居た。京子チャンは少しツナたちと話をするらしく、校門で待っていてほしいと頼まれた。今日はロードもないし、久々に歩いて帰る。
 沢田綱吉。一年や二年の時の様に彼を『ダメツナ』と呼ぶものはもうこの学校には居ない。身長も割りと伸び、元々可愛らしく整っていた顔は成長に連れ逞しく、プリーモの面影を移すまでのイケメンになっていた。それに獄寺や山本の言う『ボス』や『十代目』の呼び名。雲雀さんもわりと話し掛け会話する。
 こんなこともあり、沢田に話し掛ける人はあまり居ない。なのでいつものメンツと何ら変わりなく過ごしているのだ。本人はまだダメツナだと思っているようだが。京子との恋路を影で見守っている。頑張れ。
 それ故に転校生は奇行種だ。だからと言って関わる気はないが。
 あ、京子来た。



「待たせてごめんね!」
『いーよ別にィ。花チャンは知らねェけどあたし急いでねーしィ』
「私もよ」
「よかった〜……あ、ハルちゃんとも待ち合わせしてるの! いおり今日は自転車持ってこないって聞いてたから! 久々に五人でナミモリーヌ行こっか!」
「……!」
「そーね」
『あたし最近行ってねェし、行こっかァ』
「よかったー!」



.

251:マメツキ◆A.:2017/08/13(日) 01:39 ID:xhA



 ハルチャンを交えて五人でナミモリーヌに入ると、みんなが一様にショーケースを見つめるので、あたしは『先選んで来いヨ』と彼女ら四人をその場に、あたしは席取をした。
 ガラス張りの奥の商店街の景色を眺めていると、ちょっと不安そうな四人が帰ってきた。どした。



『え、みんな不安そうな顔してどーしたヨ。あたしわりと困惑してんだケドォ』
「え、いや、いおりがノリ気じゃなかったらって思っちゃって……」



 全員が頷くもんだから笑ってしまった。そんなことナイからァとヒィヒィ笑うあたしに安堵したのか、選んで来なよと背中を押された。とりあえずご厚意に甘えてとミックスベリータルト、ラズベリームースケーキの二つを選んできた。視線を釘付けにして離さなかったのである。くっ。
 席に戻ると始まる女子トーク。みんな可愛いなァと眺めていると、不意にハルチャンがあたしを話題に出した。



「それはそうとですね! ハルはいおりちゃんはとてもすごい女の子だと思います!」
「あ、分かるよその気持ち!」
「私も」
「……私も」
『は、いきなりナァニ』
「だっていおりちゃんは気遣いも出来て勉強も出来て運動も出来ますよね! 美人ですし! そして自転車の大会でも必ずトップ! 運び屋や野獣なんて通り名までついてて格好いいです!」
「なんでアンタうちのチャリ部入んなかったのよ? 入部頼まれてたでしょ?」
『……ロードってさァ。一見個人競技に見えて、団体競技なんだヨ』
「えっ、そうなの?」
「そうなんですか?」
『うん、そーなのォ。言っちゃなんだけど、ロードは努力した分報われる訳じゃなくて、生まれ持つ才能的ななんかが必要なわけェ。ペダル回した方が強ェ。でも、仲間との信頼関係とか、時には敵と協力しつつ切磋琢磨して、でも絶対自分が優勝するって想いながら望むんだヨ。でもなんか今は、女子特有の部内の蹴落とし合いみたいのあんじゃナァイ? 部品壊したり盗んだり。あたしそれが嫌なんだよネェ』
「あー」



 そう同意する彼女らにわかって貰えたと言う感動的な? なにかが胸を占めるがケーキ食って誤魔化す。『まぁ実力は個人なんだけどネ』と告げるとまぁそうだよねと苦笑いされた。解せぬ。
 とりあえず話の途中で店に来ていたボンゴレトリオはもう無視だ。話したことねーし。



『とりあえずあたしの愛車のビアンキチャンは色も形も軽さもオールラウンダー向きでさァ! あたしはビアンキチャンに乗ると、こう! なんつーのォ!? 匂うんだヨぞくぞくすんだヨ! ゴール手前になると、テレビの車も前の自転車もコース取りも邪魔でさァ! どけ邪魔だ道塞ぐんじゃねェって叫びながら足が千切れるぐらいペダル回してスピード落とさず相手に体当たりしてガードレールとか車のミラーに体引っ掻けて威嚇して攻撃して、そんで最後周りに誰も居ないめっちゃ気持ちいいゴール! これ味わうともう嫌でもやめらんねェな! 何回も何回もって体がそのときの興奮を欲するんだヨ!』
「アンタの生傷が絶えないのはそのせいか!」
『っだ!?』



 ゴール時がいかに気持ちいいか説明すると花チャンに頭を叩かれた。他三人がキラキラした笑顔であたしを見てるのに、花チャンの目が絶対零度だ。怖い。



「まあ、アンタが『野獣・荒北』って呼ばれるのはよくわかったわよ。アンタは優勝求めて大会出てるし」
『かれこれもうずっと優勝してるヨ』
「すごいですー……。あ、じゃあいおりチャンが運び屋って呼ばれるようになったのはなんでですか?」
『……さァ? 時々あたし、気に入った奴見つけると引っ張ってゴール前まで連れてってあげるんだよネ。引っ張る時も全力で相手のこと考えてなくてついて来れる奴だけついてこいって感じだケドォ。結局優勝はあたしが取るけどそれじゃナァイ?』
「……すごい」
『クロームチャンうちに来ない?』
「やめなさい。まあ、そんなとこじゃないの?」
「いおりすごい!」
『実感はないケドネ』



.

252:マメツキ◆A.:2017/08/13(日) 11:25 ID:xhA



 翌日、四人で昼休みに談笑していると、ボンゴレトリオと姫野に京子チャンとクロームチャンが呼ばれ、京子チャンに引きずられるようにしてその場にご参加させていただいた。



『……そー言やァ、三年間クラス一緒なのに今まで沢田チャンたちと話したことなかったよなァ』
「あっ、えっ、うんっ! そうだね!」



 あたしがそう言うと沢田が思いきりキョドって目を逸らした。なんだ? と首をかしげると花にこら、と怒られた。



「いおり、睨むのやめなさい」
『マジかヨ。あー、沢田チャンごめんネ。目付きわりーの生まれつきなんだわ、別に睨んでる訳じゃないからァ』
「あっ、そうなんだ」



 パッと笑った沢田チャン可愛い。獄寺睨んでくるけど。山本笑ってるけど。姫野射殺さんばかりの視線送ってきてるけど。リボーンが視界の端で笑ってんだけど。
 とりあえず、スマホ鳴ってるから見てくるわ、と一旦その場を離れる。突き飛ばそうとしていた態勢の姫野はポカンとしたあとまた睨んできた。別に怖くナァイ。
 鞄からスマホ取り出してディスプレイ見てみると、見知らぬ番号。いや、見覚えは有るが、この世界には無いものだ。唖然とディスプレイをつったって眺めていると、一旦切れる。そしてまた鳴り出す。しばらくそれを眺めて、苛立ってきたので通話ボタンを押した。もしもし、よりも早くに。



『さっきから誰か知んねェケド音ぴーぴーうるせェんだヨ! 何回も掛けんな! 痛電してェなら他所でやれっつっーのうっぜえ! マジうぜェ!』



 そうしてぶつりと通話を切る、んでから綺麗なフォームで地面に叩きつけた。予想通りなら、相手は前世のうざいアイツだろう。あいつなら、絶対もう一度かけ直してくる筈だ。
 周囲が唖然としてるのを横目に、再び鳴り出すスマホを冷静に手にとった。



『もしもォし』
「うざくはないな!」
『やっぱりお前かヨ鬱陶しい』
「鬱陶しくもないぞ! わっはっはっはっは!」
『お前もう超めんどくせェ、クソやかましいんだケドォ。このナルシスト女が』
「ふッ、嫉妬しているのか荒北! 私が美形なのは事実だ!」
『うっぜ』
「登れるうえにトークも切れる! そしてこの美形! 天は私に三物を与えた! 山神、東堂八子とは私のことだ! はーっはっは!」
『自己紹介頼んでねーし耳元で叫ぶんじゃネーよ、このでこっぱち。切るヨ』
「あっ!?」



 ぶちっ、と容赦なく電話を切ったあと、思い直して電話を再び掛ける。とりあえず騒がしくなってしまったので屋上に行こう。京子チャンたちに教室を出るとレクチャーすると唖然としたまま手を振られた。
 全部東堂のせいだ。



.

253:マメツキ◆A.:2017/08/28(月) 01:50 ID:OSI

また新しいのを書きます。
 以前に、多分ここかトリップの方でゲムポケの男主人公たちのにょた化ハーレムのネタを乗せた気がします。それに女の子主人公を混ぜ、舞台を復活の並中にしてーって言うのを唐突に書きたくなりました。ネタです、嫌だと言う人はUターン!
 レッド、グリーンはシブレ、シブグリで以下の六人はポケスペでブルー、ゴールド、シルバー、クリスタル、ルビー、サファイアまでが登場。みんな適当に漢字にしてます。レッドなら『頂 赤色(いただき あかいろ)』、グリーンなら『大木戸 翠(おおきど みどり)』など。
 ブルーは『色盗 蒼衣(しきとう あおい)』、色っぽいし盗みは得意な女の子なので。ゴールドはゲムのヒビキから取って『黄金 響(こがね ひびき)』。
シルバーは『榊 銀(さかき しろがね)』。親がサカキなので。しろがねはしろがねでも白銀と銀に迷った。
クリスタルは『栗水 晶(くりみず しょう)』、クリスとクリスタル(水晶)から。
ルビーが、ルビー……コイツむずい……。『紅玉 悠季(こうぎょく ゆうき)』でどうでしょう、ユウキはゲムポケから借りました。女の子にユウキは有り。有りったら有り。多分ユウキだったはず……コウキだったかな……? それはシンオウの子か……? 紅玉はそんままのルビーです。
 サファイアが『織田巻 藍(おだまき あい)』。これしかないと思いました。
 みんなニックネームがレッドやグリーンなどの元のものです。
 そして男主。黒髪黒目。眼鏡は無いですが名前は『最原いおり』。名前またおんなじかよと思われた方もおられるでしょうが、暇なときに見てやって下さい。
 並盛中学校三年生の柔道部の部員。わりといけめん。気付かないハーレム体質。レッド、グリーンとは同い年の幼馴染み。一個下の後輩にゴールド、シルバー、クリス(三人とも沢田と同じクラス)がいて、その下の学年にルビー、サファイアがいる。みんな美少女なのでそんな友達がいる俺勝ち組とか思ってるクソ鈍感。実は雲雀とおともだち。雲雀はおともだちなどとは決して認めないが、応接室でレッド、グリーンも交えてお茶する中。
 見た目怯えてしまうほどの近寄りがたいぐらいクールなのに、喋るとわりとフレンドリー。
 笑顔で柔道の投げ技する人。
 時間軸は原作終了後。

**

 朝、そう朝。小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、そんなものがあれば俺は不気味で飛び起きるだろう。なんたって俺は白と黒でシックに纏めた普通の部屋で睡眠を取っているのだから、万が一にもそんなもんない。あってたまるかこのやろう。
 そんなわけで俺はいつも通り、腹に重みを感じながら目を覚ます。そして目の前にはちょっと焦ったような、咄嗟に作った感じの美少女の笑顔。ギャルゲーならここで慌てたりするもんなんだろうが、悲しきかな、もう慣れたわ。



『……おはよう、グリーン』
「えっ、反応うすっ!」



 極限まで顔を近付けていたらしいグリーンは俺の顔の横についていた手をのけ、俺に跨がった態勢のまま「つまんなーい、もうちょっと楽しい反応見せてくれると思ってたのにー」と俺の腹に手をついてゆさゆさと揺れる。おお、胸が揺れる揺れる。絶景かな絶景かな。あいた、頭を叩かれた。なんて理不尽な。
 そしてなんで俺の部屋に居るんだとか色々言いたいがどうせ母さんが入れたに決まってる。とりあえず短いそのミニスカートで跨がると見えるぞと注意すると「短パン穿いてるし!」とスカートを捲った。思わず残念な視線を送ったのは仕方ない。なんで下穿く、なんで下穿いた。



『もうちょっと学校のさ、お前のこと気になってる男子にサービスしてやれよ、俺じゃなくて。プロポーション抜群の美少女なんだから』
「見せてあげる義理なんてないもーん」



 コイツ幼馴染みだからって俺のこと絶対男として見てないわ。
 グリーンをそのままにむくりと起き上がるとグリーンが転がってベッドの下に落ちる。なにすんのとかほざいてるが知らん。そのまま制服へと着替えを済ませるとグリーンが「女子の、女子の目の前で着替えなんて……!」と目を両手で押さえながら指の隙間からこちらを見ていた。見てんじゃねーかよ。まぁ毎度のことである。ほっとこう。
 そんなことを考え、荷物を持って部屋の扉を開けた。



.

254:マメツキ◆A.:2017/08/28(月) 02:26 ID:OSI



 開けた瞬間、ゴッと扉の奥で何かにぶつかる音がした。見ると額を押さえて震えるレッド。え、レッドごめん。
 数秒その場で震えた彼女はおもむろに俺へと抱きつく。相当痛かったらしい、ううと唸りながらぐりぐりと黒髪ロングを揺らして頭を押し付けているのでとりあえず撫でる。キューティクルサラサラ過ぎかよレッド。後ろでグリーンが「レッドどしたの!? 大丈夫!?」と俺の背中をどついている、いてててて。本気のグーで殴るな本気のグーで。どけってことかおいこら。相変わらずグリーンの中のヒエラルキーは俺よりレッドの方が上らしい。いや、同じか……?
 パッと顔をあげたレッドはグリーンに「……大丈夫」と告げた。あ、どつくのがおさまった。



『さっきすげえ音したしな……でこ赤くなってるな、レッド』
「……大丈夫」



 ふるふると顔を横に振って大丈夫を表現するレッドにそうかと苦笑いしてから、どうして扉の前になんて居たのかを聞くと、俺が着替えを始めたかららしい。なんだこのいい子。律儀か。
 レッドが俺の着替え途中の上半身裸の写真を隠し撮りしていたことに気付かずに頭を無言で撫でる。レッドがグリーンと親指をたてあいサムズアップしていたことには気付かなかった。
 レッドが抱き付いて離れないのでそのまま歩き出し、階段に差し掛かると後ろからグリーンが突撃してきて危うく落ちるところだった。咄嗟に手すり掴んで良かった、ほんとよかった。
 幼い頃から可愛いな綺麗だなと思っていた幼馴染み二人だが、中学に入ってからその頭角をぐんぐん見せ始めた。レッドは大和撫子的なおしとやかなしかし目付きの悪さと無口さからか近寄りがたいミステリアスな雰囲気を放ち、なんかもう俺たち幼馴染みとよく知る友人にしか近付かない人見知り。
 グリーンは化粧をバッチリ決めてくせっけの地毛である茶髪をポニーテールにしている。すっぴんでも可愛いが。こちらはめちゃくちゃ明るくやればできてしまう天才型なので常に周囲に人がいる。
 対照的な二人だが、お互いがお互いのことをめちゃくちゃ大切に思っているので基本二人で一組と言うか、どこにいくにも一緒だ。そこになぜか俺も含まれているのだが。ううむ。

 家を出て二人に挟まれながら歩く。家は学校に五分で到着する距離、急ぐ必要は皆無。そして周囲の生徒からの羨望の視線なんてもう慣れたもんだ。どうだ羨ましかろう。

 校門に差し掛かると、風紀委員の草壁が見張っていた。それに三人各々おはようと言うとおはようございますと仰々しく頭を下げられた。レッドがビビって跳ねるように腕に飛び付いてきたので早足でそこを抜ける。グリーンお前もか。
 教室に入ると流石に席が近いわけでもないので離れる。レッドとグリーンはお互い隣の席で、通路側の一番前の席。俺は窓側の一番後ろの席。先生あれですか、美少女二人に囲まれてる俺を妬んだんですか。すいません言ってみたかっただけです。くじ引きは運でした。
 がたりと席に着くと前の席のデンジが振り向いた。



「……うざい」
『は、俺が?』
「マツバ……」
『マツバちょっとこっち来い、デンジがなんかほざいてるから』
「ほざいてねーよ」



 レッド、グリーンの後ろの席の春夏秋冬マフラー巻いてる金髪にバンダナのイケメンを呼ぶ。最初は首をかしげていたが、デンジのことだと分かると笑顔でパタパタとこちらにやって来た。



『マツバお前、今度はどんな話をデンジに聞かせたんだ』
「うん、えっとね。僕の家に置いてある髪の毛の伸びる日本人形の僕の家に渡ってきた経緯をね」
『……お前なんでそんなもんしってんだよ』
「あはは」



 へらりと笑ったマツバにぞわりと鳥肌が立つ。一体誰に教えてもらったんだよぉマツバよぉ。全部聞かなくて良かったと思うと同時にデンジに少し同情した。お前いっつもこんなんきいてんのかよ……。



.

255:マメツキ◆A.:2017/08/29(火) 00:31 ID:OSI



noside

 翌日にレッドとグリーンは2年のとある教室を訪れていた。もちろんゴールド、シルバー、クリスにとある写真を渡すためだ。
 とある写真とは。以前にグリーンがイオリの気を引き、レッドが隠し撮りをしたことがあっただろう。それだ。



「おーいゴールド、シルバー、クリスー」
「……写真、出来た」



 元気に笑顔で彼女ら三人を呼ぶグリーンと、そのグリーンの服を摘まんで後ろに隠れるように姿を表したレッド。何度でも言おう、二人は美少女である。そして今から来る三人も群を抜いて美少女だ。
 身長も三人の中では一番高く、今後出てくる女の子の中でも一番胸の大きな爆発している前髪でショートカットのゴールド。
 髪を二つ括りにしつつもその毛先は真上をみている、委員長が似合う真面目なタイプのクリスタル。
 二人の幼馴染みであり、一人称が拙い「おれ」でありレッドと同じ程度の貧乳のセミロングの赤い髪が特徴のシルバー。
 三人のうち一人は嬉しそうに、うち二人は複雑そうに二人のもとへ行くのだから教室は静かになる。沢田綱吉らボンゴレトリオ、シモンの炎真もそこに釘付けだ。
 五人は静かになっていることなど気にせずにきゃいきゃいと会話をしだす。



「……前に言ってた、写真」
「えっ、マジスか!? もしや!?」
「そうそう! 成功したんだよね!」



 嬉しそうな表情の二人と少し緩んだレッドにみんなが耳を傾けるのは当たり前と言える。
 そんな三人にクリスタルとシルバーが物申した。



「……でも、イオリさんに悪いんじゃあ……」
「いくら男と言えど、バレたらヤバいだろ」
「……要らないの?」
「「いりますけど……」」



 物申した時の顔のまま平然と言ってのける二人にやっぱりな、とゴールドが腕を組んでうんうん頷く。やっぱり好きな人の写真は欲しいのである。
 そうして三枚の写真を手渡したグリーンたち二人は、一年の教室へと向かっていった。
 三人はというと達成感溢れる顔で京子たちの元へと戻っていった。



「ねえねえゴールドちゃんたち、さっきの三年の頂先輩と大木戸先輩だよね?」
「おう! そうだぜ!」
「一体……先輩になんの写真貰ったのよ」



 花の言葉に三人は顔を見合わせ、「イオリ先輩」と口を揃える。驚いた顔の二人は「なんで?」と問う。



「あー? 何でって言われてもなぁ? なぁクリス、シル公」
「そうねぇ……そんなの決まってるわね」
「ああ。おれ達五人、イオリ先輩が好きなんだ、仕方ない」



 腕を組んで平然と言ってのけるシルバー達に、目を見開いた二人は五人って、と思いつつ「最原さんって、ガード固いんじゃなかったっけ?」と疑問をぶつけた。



「……そんなことはない」
「おうよ。イオリ先輩自体、ガードガバガバだぜ? すげー無防備だな。前に先輩のお母さんに挨拶して家に入ったときもイオリさん「え、ゴールドいらっしゃい」で終わったしな」
「まぁそんなイオリさんだから、主にレッドさんとグリーンさんが片っ端からガードしてるのよ」
「ああー……」



.

256:マメツキ◆A.:2017/08/30(水) 00:50 ID:OSI



 俺は今、右頬に湿布を貼りながら2年の教室に訪れている。こんな俺でも一応保健委員の委員長として活動しており、同じく保健委員のクリスにプリントを届けに来たのだ。
 俺が来たことで多少二年生の教室がざわめいたが見慣れない三年生が来たからだろう、慣れたわ。
 中を覗くとクリスがちょうど側に居たので助かった。その奥でゴールドがそわそわしてたが後でかまってやるからじっとしてな。あ、男子三人が側にいる。茶髪の重力に逆らった髪型のかわいい顔の子と銀髪の不良イケメンと有名な山本だ。このクラスだったのか。



『クリス』
「んきゃ!? えっ、イオリさん!? あ、だからそわそわしてたのねゴールド!」
「えー」
『クリス、ゴールドは一旦ほっといて俺を見ろ』
「えっ、えっ」
「ちょ、先輩酷くないっすか!?」



 ぱたぱたと寄ってきて俺の腕に飛び付いて「ねー先輩そこんとこどーなんすかー」とやかましいゴールドをとりあえずそのまま放置し、クリスと向かい合いながらプリントを取り出してそちらに視線を向ける。



『これ今日配って明日回収な』
「……え、あ、はい! でも早くないですか? 今日配って明日提出なんて……」
『俺が忘れてた』
「えっ」
『俺がもらってそのまま一ヶ月忘れててな。昨日回収だったみたいでいつ出すんだってヒバリに殴られた』
「ああ、それで頬を」
『その話に触れてくれるなよ……。まぁ明日までにしてもらったから、早めにな。頼むわ』



 一時もプリントから視線を逸らさず言い切り顔をあげるとクリスがこくこくと勢いよくうなずいた。クリスえらい。超えらい。



『そんじゃ、俺次で最後だから行くわ』
「えっ、あたしに関しては本当にスルー!? 酷くないすか!? えっ、マジで!?」
「最後……? 誰ですか?」
「あれっ、クリス!? あ、あたしも気になるんすけど!」
『最後はブルーだ』
「「えっ」」



 クリスとゴールドが「そう言えばあの人保健委員の副委員長だった」と思い出したらしい。まぁぴったりだよな、ブルーは。アイツホント中学生かよ、ってな色気っつーかフェロモン出すから生殺しだわ。逝ってくる。
 あれ、そう言えば。



『……シルバーは?』
「男子からの呼び出しー。シル公ってばモテるんだから! さすが、血は繋がってないけどブルー先輩の妹、モテる、モテるわー。いつか彼氏作ってきそー」
「二人揃って美人ですもんね」
『はー、あそこの義理姉妹ヤバいな』
「その点あたしは? シルバーと違って? うん……あ、や、その、えーと、うん、あーっと、い、いお、イオリ先輩ひとす「イオリさん時間大丈夫ですか?」クリスてめえこのやろ」
『あ、ホントだヤバいな』



 目の前でゴールドとクリスが「人がせっかく……!」「抜け駆けさせるわけないでしょ?」と会話しているが二人ともシルバー大好きなんだな。
 それはそうと時間もヤバいな……。早く行かねば。と思った瞬間ケータイ鳴るとかどうなってんの? 絶対ブルーだ。出ないと言う手もあるがそれはあとが怖いからやめとこう。渋々出る。



『もしも』
<イオリーーー!? 今どこーーー!?>
『うるっさっ!』


 あまりの声量に咄嗟に耳から限界までケータイを離す。


<全くー、早く来なさいよね! レッドとグリーンカンカンよ!? イオリイオリってうるさいんだから!>
『待てなぜそこに必死で撒いたそいつらが』
<……てへっ☆>
『ブルーてめこのやろ』
<早く来ないとアンタの寝顔写真ばらまくわよ>
『おいいつ撮ったてめえ。いつ俺の部屋に侵入した、この詐欺師』
「……うふっ、二分ね♪」



 ぶちっと連絡を切る。アイツあれだ、やる気だ。



『……二分で保健室来いって言われたから逝ってくる』
「死なないでくださいね」
「イオリ先輩とブルー先輩が保健室!? ダメだダメだ! あたしも行く!」
『目的は?』
「寝顔写真っす! あ、やべ」



 元気よく挙手して答えたゴールドの返答に、瞬間俺は真顔でその場を飛び出した。

257:マメツキ◆A.:2017/09/01(金) 00:08 ID:9WY


 現在、俺とグリーン、ブルーはヒバリを抱えて猛スピードで逃げるレッドを追い掛けていた。



『おいこらレッド!! 待てって!』
「……や」



 気を失っているヒバリを小脇に抱えて全力疾走して尚息切れすらせず涼しい顔の小柄なレッドはその黒く長い髪をなびかせながら首をふるふると横に振った。
 『とりあえず廊下は走っちゃいけません!』と二年の教室に向かう階段を駆け降りながら言うと、レッドは神速のごとき速さで姿を消した。
 追い付けるわけない。実はレッド、運動神経等はもう人間の域を越えていると言って良いほど素晴らしい。もうオリンピック出ろお前。足も速く、俺が追い付けるわけもないのだ。
 隣で激しく息を切らすグリーンは「ここ、廊下じゃな、階段!」と絶え絶えに言い切る。ブルーは隣でへたりこみながら天井を仰ぎ、「グリー、ン、問題は、そこじゃない、わよ」と突っ込む。
 俺も中腰になり膝に手をついてぜえぜえ言ってると、背中にどんっと衝撃が襲った。しかも柔らかいものもおまけと言うように二つ。
 しかし反応できるほど俺今元気じゃない。そのままどべしゃと倒れるとグリーンとブルーが「「イオリーーー!?」」と叫び声をあげた。
 ちなみに俺の背中に突撃してきた本人はというと。



「あ、ちょっとちょっとせんぱーい? こんくらいでへたってちゃダメじゃねぇすかー、ほらイオリ先輩頑張って!」
『……ゴールド』



 倒れた俺の首に腕を絡めて顔をぐいと近付けたゴールドに本当なら何か言うべきなのだろうが、もう俺疲れてるんだ。
 そのとき、「し、知らない先輩がゴールドちゃんに襲われてるー!?」と少年の声が響く。俺がそちらに顔を向けると、俺を指差し驚愕している少年三人と何考えてるか全く分からん赤ん坊とわなわなと震えるブルー、シルバー、クリス。そして無表情で腕を組んで俺を見下ろすグリーン。威圧感ぱないんだが。とりあえずゴールドをどうにかしてくれ。



『……誰か、ゴールド退けてくれ……重い……』
「おもっ、あたしそんなに重くねぇんすけど!!!」
『どうせあれだ、栄養が脳みそに行かなくてただひたすらむn』
「い、イオリ先輩の変態! 鈍感! 黒アスパラ!」



 バシンと頭を叩かれ、駆け出したゴールドを見る間もなく、バンと叩かれた反動で地面に叩き付けられた俺の顔。
 最早顔を上げる気にもなれずそのままでいると、何か俺を中心に赤い液体が広がっていく。それを見たクリスとシルバーが慌てて助けに来てくれた。



「きゃあ! イオリさん鼻血で顔が血濡れに!!」
「あら、保健室かしら?」
「ねえさん、やめてくれ。この人委員長だ」
「そうだったわね!」
『俺もう立ち直れない』



 なんだコイツら、とクリスに貸してもらったタオルで顔を拭っているとグリーンがぱんぱんと場の雰囲気を戻すように柏手を打った。



「そんなことより!」
『……あれ、俺そんなことよりで終わる存在だったか?』
「レッド優先なの分かってイオリ、ヒバリさらわれてんのよ」
『うっす』

258:マメツキ◆A.:2017/09/19(火) 00:54 ID:LAM

マギにFTのジュビアがトリップする話。シンドリア中心。原作前。煌帝国の原作前の白雄さんたちが生きてた頃の話もいずれやるはず。
 なぜシンドリアかと言うとあれです。ヤムライハ居るじゃないですか。あの子水魔法得意なのでジュビアはわりと気が合うんじゃないかなって。安直か。
 ジュビアはフェアリーテイルは完結後。つまりグレイと良い感じ。フェアリーテイル無事にハッピーエンドで終わって良かった……ありがとうフェアリーテイル。ありがとうヒロ先生。最終話の大団円は笑った。感動をありがとうヒロ先生。グレジュビのもどかしい恋愛模様をありがとう。神かよヒロ先生。

259:マメツキ◆A.:2017/09/19(火) 01:28 ID:LAM

ジュビアの一人称は「ジュビア」ですが、ジュビア視点の時は「わたし」となります。ジュビアの服のイメージはタルタロス編から一年後のアヴァタール教団の時のもの。


 それは突然だった。相変わらずヤムライハが研究に没頭し、実践し、煙をあげた時。



「けほっ、けほっ」



 ヤムライハはこの時生物を召喚する魔法の試運転を行っていた。水蒸気のような煙が部屋を包み、蒸せ返る彼女に、轟音を聞いて光の速さで訪れたジャーファルと興味本意で着いてきたシンドバッドはまたかと片や眉をつり上げ、片や快活に笑う。



「まったく……! ヤムライハ! あなた、今回は何をしでかしたんですか!」
「まあまあ、落ち着けジャーファル」



 ぐちぐちと言い出すジャーファルを笑顔で宥めたシンドバッドにヤムライハは「すみません」と一言謝罪した。



「生物を召喚する魔法陣で……今回もやはり失敗してしまいました……」



 はあ、と意気消沈とばかりに肩を落とすヤムライハに「また挑戦すればいいさ!」と爽やかに笑ったシンドバッドはふと、煙の晴れたその魔法陣を見て動きを止めた。
 続けてジャーファル、ヤムライハと続けて視線をそちらにやると、そこには実践前にはいなかった水色の髪に帽子をかぶった女が横たわっていた。



**

 温かな光に当てられ、不意に意識を浮上させた。ぱちりと伏せていた目で瞬きすれば、そこは消毒液の匂いがする医務室で、慌てて体を起こす。
 どうやらここは窓際のベッドらしく、柔らかな日射しが差し込み、少し目を細めた。
 ふとどうしてここに居るのかと考えだし、意識を失う前の記憶がまったく無いことに気が付いた。一気に不安になるも、まぁとにかく今のところ害はないし大丈夫だろうと安堵する。フェアリーテイルの人間ならではの思考である。
 わたしが起きたことに気が付いたのか看護師さんが血相を変えて「ここで待っていてくださいね!」と部屋を飛び出していった。せめてここがどこなのか聞きたかったのだが、まあいい。
 しばらくしてから姿を見せたのは、身に纏う七つの金属の部類を日に反射させる紫色の髪の男とクーフィーヤをかぶったそばかすのある男、そしてわたしより明るい水色の髪の女性だった。



「いきなりすまないね。体は大丈夫かな?」
『……え、あっ、はいっ。大丈夫です』



 紫色の髪の男性に優しく微笑まれながらとう問われ、こくこくと顔色も変えずに頷く。
 とりあえず、これは一体どういった状況なのでしょう。そう問い掛けると、そばかすの男性が少し目を逸らし、紫色の髪の男性が少し真面目な顔つきで話を切り出した。



「その前に、自己紹介をしておこう。と、なると……まずはお前からだな!」
「……ジャーファルと言います。ご紹介に預かりまして、私はここ、シンドリア王国の財務官をしております」
「私はヤムライハよ、よろしくね」
「そしてこの俺が、『シンドバッド』だ」
『……ジャーファルさん、ヤムライハさん、シンドバッドさんですね。わたしはジュビア・ロクサーともうします』



 浅く上体を倒してお辞儀をすると、彼ら三人は目を見開き、「やはりシンの仮定はあっていたのですね」とジャーファルさんがヤムライハさんと耳打ちをする。
 少し首をかしげて疑問を口に出す前に、シンドバッドさんが言葉を発した。



「唐突ですまないが、どうやら君は異世界からやって来たようだね」
『……えっ』
「実はね、ヤムライハが生物召喚魔法の試運転を行った際、君が現れたんだ」
『はあ……』
「それもあるが、第一に俺の名前を聞いて反応しないのがまず可笑しいんだ」



 ますます訳がわからなくなってクエスチョンマークを飛ばす。いや、何となくは分かっている。ヤムライハさんの魔法に巻き込まれてここにいると言うことだろう。しかしなぜこのようなことが言い切れるのか。



「俺はここ、シンドリア王国の国王にしてかの有名なシンドバッドの冒険書の本人、『七海の覇王』と呼ばれている」
『っ!? お、王様だったのですか!?』



 慌てて失礼しました、と頭を下げると焦ったように頭をあげてくれと返ってきた。
 確かにそうだ。そこまで有名な人なら、知らなければ異世界から来たと認識するはずだ。フィオーレのことを聞いても知らないようだし、決定的だろう。


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