ーーどうして私には視えるの。
ーーどうして私には聴こえるの。
ーーなのにどうして私はなにもできないの。
『もうやだぁ!こんな目、こんな耳要らないっ!私普通の人が良い!』
泣きじゃくって、喚いても状況が変わるわけじゃないのに。それでも当時の私は自分が置かれている状況を理解したくないと駄々を捏ねた。
『また泣いとるん?○○は優しい子やねぇ』
泣きじゃくる私の頭を優しく撫でてくれたのは、私と同じ立場の祖母だった。
『視えるだけ、聴こえるだけしかできない言うて、こんなにも霊たちのことを思って泣いてあげられるんは○○が優しい証拠や』
『なんでこんな力があるの!ママもパパもないのに、私とおばあちゃんだけ!なんで……』
『それはな、世に蔓延りさまよう霊たちを助けてあげるためや。○○、どうしてもなにもできん自分が嫌なんやったら、霊たちを守れるぐらい助けてあげられるぐらい強くなり。そのための助力はおばあちゃん惜しまへんよ』
そう言っておばあちゃんが私に差し出したのは一冊のパンフレット。
陰陽術を学ぶことができる学校のパンフレットだった。
あれから十年。
私は今、《黒き華》として初めての任務にあたる。
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