vamp lords

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10:真祖キュリオス:2017/11/03(金) 16:16

「来い!」
 アスカの一声が開戦の号砲となった。
 男は待ってましたとばかりに口元をニヤリと歪ませる、そして地面を強く蹴って跳躍にも似た疾走、生身の人間のスピードを超越した速度で男の剛拳が飛んでくる、ファイティングポーズを取る間もなく胸と背中に強い衝撃。
 殴り飛ばされ背後のブロック塀に叩き付けられたのだと理解するには数瞬の時間を要した。 痛みが爆発により生じた爆風の如く全身に広がる、さすがに無傷とはいかないが骨は折れてない内臓も破裂していない、そう判断しブロック塀にもたれかかりながら立ち上がる。
 そこに男の拳、速い。だが——
「躱せない速さじゃない——っ」 言葉通りそれを身を屈め相手の足元を転がるようにして躱す。
「——ッ、グアアアアアアアア!!!」
 しかし、その回避行動も怪物の前には何の意味も為さない、体勢を立て直す暇も与えず男はアスカの右腕を灼腕で鷲掴みにし凄い力で締め上げる、熱せられた石の車輪に轢かれてるみたいな激痛と熱さにアスカは顔を歪める。
 次の瞬間自分の右腕がへし折れる音を聞いた、少し遅れて先程とは比べ物にならない痛みが身体を蹂躙する。
「————!!!!」
 叫び声を妨害するかのように腹に拳が打ち込まれた、さらに一発、さらにもう一発。
「クハハハハハハハハハハ」
 哄笑と共に男の乱撃がアスカの身体をめちゃめちゃに破壊していく、怪物の驚異的な膂力から放たれる拳は一撃がとてつもなく重く鋭い。身体が爆散したと錯覚するほどの衝撃を伴うそれを都合30発も叩き込まれてなお生きているのは奇跡と言って良いだろう。
 そして31発目、アスカの心臓にとどめの一撃が振り下ろされようとしたその時、攻撃の手が止まった、怯えた表情で男は振り返る、視線の先には夜色の長髪を風に靡かせ、断頭台に向かう処刑人のような足取りでこちらに向かう一人の少女の姿があった、夕日を受けて輝く青い瞳は紛れもなく昨日の少女のものだ。
 しかし中身はまったくの別物のように思えた、昨日感じた剣呑さを薔薇の美しさを引き立てる緑の棘とするなら、これは刃、研ぎ澄まされた刃に他ならない。
「お前は、ロード・パンデモニウム……」
 カミラは魂まで凍り付くような冷たい眼差しを男に向ける。
「私をその名で呼ぶな、真祖(ロード)などと言う忌まわしき名で」
 男の顔が青ざめていく、喧嘩慣れしているアスカを一方的に叩きのめすことの出来る怪物が徒手の少女に気圧されているのだ。まるで古代の巨大な石像を前にしたかのような威圧感、この感覚は眼前の男にも似ているがそれとは比べ物にならない、桁違いだ。


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