季節ずれるけど、上彩で 花火大会。
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秀明の帰り道、ふっと 掲示板を見ている奴に目がいった。
暗くて顔はよく見えないが、髪は肩くらいで、スラリとしたシルエット、凛とした雰囲気を持つ。
間違いない、あれは 立花だ。
何をそんな見ているんだ?
不思議に思い 立花の目線を追ってみると、"花火大会"と書かれたチラシがあった。
それを子供のように 食い入って見る立花。
思わず、笑みが零れた。
「立花」
声をかければ、立花は体をビクッとさせて、こっちを振り返る。
恐る恐るという感じで、その姿させかわいいと思う俺は 重症だ。
立花は 俺だと確認して、安堵する表情がわかる。
「上杉君だったんだね。びっくりしちゃったよ」
他の女のように癪に触るような、媚びるような笑みではない、綺麗な笑みを見せる。
前までは可愛いといった方が合っていたが、綺麗といった方があってる気がする。
「これ、行きたいのか?」
顎でチラシを指し、立花に問う。
すると 立花は少し頬を赤らめて、小さく頷いた。
「花火大会ってあんまり行ったことないし。
行ってみたいけど、相手がいなきゃなんだか寂しいじゃない? 」
薄く笑う立花は、寂しそうに見えた。
……
「じゃあ、さ。俺と一緒に行かねーか」
「え?」
立花は目を丸くして、俺をまじまじとみる。
当たり前といえば、当たり前だ。
俺は、kzの調査以外でこいつと外出したことなんてない。
ましてや、こんな人が多いところに 行こうとするなど、前の俺では考えられない。
だが、ここ数年 こいつとなら行ってもいいんじゃないか。と思えるようになった。
まぁ、そんなことを言う勇気なんか持ち合わせていないのだが。
今までの境界線を越え、一歩踏み入れてしまったら 今まで築き上げてきた関係が壊れるようで嫌だったんだ。
……
だが、寂しそうに笑う立花を見て、漏れてしまった本音。
発言してしまったものを撤回するなど、男としてのプライドが許さない。
俺は、立花の返答を待った。
《続》
*前、どこかで載せたものを訂正してアップしました。