探偵チームKZ事件ノート 17

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258:文月◆eo:2018/04/02(月) 22:06 ID:/R.

『心覚えは知ってる』「花火大会」より


秀明の帰り道、ふっと 掲示板を見ている奴に目がいった。
暗くてよく見えないが、少し茶色味がかり 髪は肩くらいで、スラリとしたシルエット。
もしかしたら……と思い近づけば、確信した。間違えない、立花だ。

何をそんな見ているんだ?
不思議に思い 立花の目線を追ってみると、"花火大会"と書かれたチラシ。
それを子供のように 食い入って見る立花に、思わず笑ってしまった。



「立花」


声をかければ 体をビクッとさせて、こっちを振り返った。
恐る恐るという感じで、小動物にどこか似ている。
そしてその姿を 可愛いと思う俺は重症だ。

立花は 俺だと確認して、ほっと息をついたのがわかった。



「上杉君だったんだね。びっくりしちゃったよ」



にこりと微笑む立花は、やはり可愛かった。
いや、綺麗と言った方がいいのだろうか。
小学生の頃は可愛いという言葉が似合った彼女だが、今となっては綺麗の方が似合う。




「これ、行きてぇのか?」




チラシの方に目をやって 立花に問う。
すると 立花は少し頬を赤らめて、小さく頷いた。




「そうなの。小学生以来行ったことがないから、久しぶりに行きたいなって。
 ……でも、一人じゃつまらないから 諦めようと思っててね」




澄んだ瞳には花火大会のチラシが写って、残念そうに顔を歪めていた。



……




「じゃあ、さ。俺と一緒に行かねーか」


「え?」




立花は目を丸くして、俺をまじまじとみる。


当たり前といえば、当たり前である。
俺と立花は KZの調査以外で一緒に外出したりすることは今までなかったのだから。
そして、立花は俺が人混み嫌いだと知っている。だから余計位に驚いたのだろう。



確かに 俺は花火大会なんて興味はないし、人混みは嫌いである。
けれど、落ち込む立花を見て 誘わずにはいられなかった。
それに 二人でどこかに行くのもいいかもしれない。




「え、でも、それって迷惑なんじゃ……」




心配そうに俺を見上げる立花。




「迷惑なんかじゃねーよ。
 むしろ……」



そこまで言ってハッと我にかえった。
むしろ……という後の言葉を考え少し顔が熱くなり、もしそれを言ってしまっていたら。と考えるとゾッとした。




 


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