探偵チームKZ事件ノート 17

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1:怜◆to:2018/02/08(木) 17:16 ID:PkM

さぁ、17まで来ました!
どんどんKZについて語りましょ!

【ルール】
T.入りたいときは敬語で、了解がでたら入って下さい。
U.荒らし、喧嘩はやめて下さい。
V.荒らしはスルー、連レスは控えめに、スレはあまりたてないように!
W.後はネットマナーと葉っぱ天国のルールを守って活動して下さい!
https://ha10.net/rule.html ←葉っぱ天国のルール

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17と連動しているスレです↓
《夏本番!暑さに負けないKZLovegirlsの専スレ
Part18》
https://ha10.net/yy/1498998694.html
このスレ(1〜17)に入っている人の雑談板です。KZに関係ないことはこの板で!

《*KZ板深夜メンバーの寝室*part9》
https://ha10.net/yy/1487604639.html
KZ板にいる方ならだれでも入れる「夜専用」の雑談板です。20時〜6時までが書き込み可能です。
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→ではでは、startです!→

258:文月◆eo:2018/04/02(月) 22:06 ID:/R.

『心覚えは知ってる』「花火大会」より


秀明の帰り道、ふっと 掲示板を見ている奴に目がいった。
暗くてよく見えないが、少し茶色味がかり 髪は肩くらいで、スラリとしたシルエット。
もしかしたら……と思い近づけば、確信した。間違えない、立花だ。

何をそんな見ているんだ?
不思議に思い 立花の目線を追ってみると、"花火大会"と書かれたチラシ。
それを子供のように 食い入って見る立花に、思わず笑ってしまった。



「立花」


声をかければ 体をビクッとさせて、こっちを振り返った。
恐る恐るという感じで、小動物にどこか似ている。
そしてその姿を 可愛いと思う俺は重症だ。

立花は 俺だと確認して、ほっと息をついたのがわかった。



「上杉君だったんだね。びっくりしちゃったよ」



にこりと微笑む立花は、やはり可愛かった。
いや、綺麗と言った方がいいのだろうか。
小学生の頃は可愛いという言葉が似合った彼女だが、今となっては綺麗の方が似合う。




「これ、行きてぇのか?」




チラシの方に目をやって 立花に問う。
すると 立花は少し頬を赤らめて、小さく頷いた。




「そうなの。小学生以来行ったことがないから、久しぶりに行きたいなって。
 ……でも、一人じゃつまらないから 諦めようと思っててね」




澄んだ瞳には花火大会のチラシが写って、残念そうに顔を歪めていた。



……




「じゃあ、さ。俺と一緒に行かねーか」


「え?」




立花は目を丸くして、俺をまじまじとみる。


当たり前といえば、当たり前である。
俺と立花は KZの調査以外で一緒に外出したりすることは今までなかったのだから。
そして、立花は俺が人混み嫌いだと知っている。だから余計位に驚いたのだろう。



確かに 俺は花火大会なんて興味はないし、人混みは嫌いである。
けれど、落ち込む立花を見て 誘わずにはいられなかった。
それに 二人でどこかに行くのもいいかもしれない。




「え、でも、それって迷惑なんじゃ……」




心配そうに俺を見上げる立花。




「迷惑なんかじゃねーよ。
 むしろ……」



そこまで言ってハッと我にかえった。
むしろ……という後の言葉を考え少し顔が熱くなり、もしそれを言ってしまっていたら。と考えるとゾッとした。




 

259:文月◆eo:2018/04/02(月) 22:07 ID:/R.

一方立花は不思議そうに首を傾げて「むしろ……? 」と疑問を投げかけた。
もちろん俺はその疑問に答えられるわけがない。




「……別に 何でもねーよ」




ツン と横を向いて、可愛くない言葉を吐く。




「それで 行くか、行かないのか。どっちなんだ? 」



そう聞けば、少し頬を赤らめて 嬉しそうに
「う、上杉君がいいんなら、行きたいな……」と言った。




遠慮がちだが、それでも 嬉しそうにする彼女はやはり 愛おしい。
この姿が 俺のものになればいいと、何度思ったことか。

俺は、心の中で小さなため息をついた。




「んじゃ、決まりな。明日18:00に、お前の家に迎えに行くから」

「え、家まで来なくっていいよ。自分で行けるから」




慌てて首を振って断る立花。
その姿を見て、今度は 盛大にため息をついた。


夜道、危ないから言ってんだろうが。
……こいつ、絶対自覚ねぇよな。




「俺が行くっつてんだからいいだろ。それとも、迷惑なのか?」


「ち、違うよ!迷惑じゃないよ!
 逆に、嬉しいっていうか……」




勢い余って言ったのか、立花は言った後で ボン と蒸発するかのように 顔を赤らめめて「ごめん……」と小さく呟いた。



俺の方は軽くショート気味で、さっきの立花の言葉が脳裏から離れない。
違う、立花は深い意味なんか考えてない。自惚れるな俺。
この言葉も何度も頭の中で繰り返し、立花の言葉をかき消そうと必死になった。



さすがに、このままだとヤバイ。
そう諭した俺は、待ち合わせ時間だけ 確認して足早にその場を去った。





 

260:文月◆eo:2018/04/02(月) 22:07 ID:/R.

翌日の夕方、立花の家に行く前 机の上に置いてあるパンフレットが目に入った。
そこには『10代の君へ!』というキャッチフレーズと共に、留学の案内が書いている。



……



先月 親父が久しぶりに帰ってきたと思えば、留学を勧められた。
親父曰く「留学に行けば お前のやりたいことも見つけられる」らしい。
その時は そんなんでやりたいこと見つけられりゃ 人生楽だろうな、と親父を嘲笑った。



しかし、やりたいことが見つかるとは断言できないにしても、将来に役立つことは確かである。
グローバル化が進む現代では、留学をしているか、していないかの差は大きい。
けれど、俺は高等部からZに入りたかったし、留学なんてできるわけがなかった。



留学かZ。
選ぶとしたら どちらか一方で、どちらかを捨てなければならない。



前から憧れていたZに入りたい気持ちは強いが、留学は就職の大きな手助けになる。
そう考えると どちらかなんて選べるはずがなく、そんなことをここ数日悶々と考えていたのであった。



俺はそのパンフレットに手をかけようとし、そこでハッと我にかえった。
長針が45という数字を指しているのを見て 慌てて家を飛び出す。



危ない……立花との約束に遅れてしまうところだった。




……
それから歩いて10分。
家の前に着くと同時に 立花が出てきた。


白のトップスが薄っすら透けていて、その下には黒のキャミソール。
紺と白のチェックの膝上スカートが風に弄ばれて、ちらちらと白い肌が目についた。
髪は上の方で結われ、普段隠されている頸は丸見えで 俺はごくん、と息を呑んだ。


立花はKZの活動のため 制服以外でスカートを履くことは少ないし、髪を結うことはそれ以上に珍しい。横から見える男とは違う柔らかそうな(ruby:頸:うなじ)が、立花が“女”であると認識させた。




「え!上杉くんもう来てたの? 」




驚きながらそう言い「待ってるなら チャイム鳴らしてくれてもよかったのに」と言葉を続ける。




「いや、ここに着いたらちょうどお前が出て来たから、待ってねーよ」




それを聞いて ほっとする立花が、少しだけ落ちてしまった髪の毛を耳にかけた。
その仕草が、妙に艶っぽく 俺の心をざわつかせる。



俺は 溢れ出そうとする感情をなんとか抑え「行こうぜ」と言い、花火会場へと足を向けた。






 

261:文月◆eo:2018/04/02(月) 22:07 ID:/R.

花火会場へ向かう間、小塚がウズラの卵を(ruby:孵:かえ)したとか、土砂崩れに巻き込まれたとか。そういうたわいもない話をしていると、いつの間にか花火会場についたみたいで、俺らは雑踏に押しもまれていた。




「……人、多いね」


「だな。あっちの方空いてるから、行こうぜ」


「うん」




雑踏を掻き分けながら 少しだけ空いているスペースへと移動する。
空いている と言っても、他と比べてという意味で 人がいないわけではない。
座るところもギリギリ2人分あるくらいだった。




「えっと、今が8時25分だから あと5分だね」




楽しみだな、と子供のようにはしゃぐ立花。
こいつを見てると 今悩んでることが消えていくようで、俺は頬を緩ませた。


小さい頃に数回行ったきり花火大会に行くことはなかったし、こんな人が多いところをにくるのは嫌だった。けど こうやって立花と過ごせるのなら、 花火大会っていうのも案外悪くないかも。




『なぁ、お前留学したんだろ。どうだったんだ? 』
『すっげぇ、よかった。なんか新しい道が開けたって感じ。お前も行ってみたら? 』
『そうしようかな。みんないいって言うしな。両親も勧めてくるし……』




ふと耳に入った隣の男二人の会話。
それを聞いて俺は、夢の世界から急に現実に引き戻された気がした。



留学ね……



マジで、どうすりゃいいんだろ。
高校入学前に決めなければならないし、安易には決められないわけで。


留学の利点とZの利点を浮かばせ、どちらが将来に役立つか、俺はじっと考えた。



……



「……上杉くん? 」
立花がそう言うまで俺は 自分の世界へ入り込んで、周りを まるで気にしていなかった。
だから、夜空の大きな華が上がるのさえ 気づいていなかった。




「大丈夫? もしかして具合悪いの? 」


「いや、大丈夫だ」


「で、でも 様子おかしいよ? 」




立花は 普段 俺らが呆れるほど鈍感なくせに、こういうことは鋭くて、いつも俺をどきりとさる……
腹に響く音を聞きながら、俺と立花はお互いから目を逸らさず、じっと見つめあった。





 

262:文月◆eo:2018/04/02(月) 22:08 ID:/R.

先に目をそらしたのは俺で、一つため息をつき「負けた」と言った。



立花は、プライベートに踏み込んでくるやつではないが、相手が無意識に出している警告に気がつけば、その時は 強引であっても聴きだすことが多い。
プライベートに勝手に入り込んでくる女は嫌いだが、こいつは別。
相手のことを考えた上での行動で、悪い気がしなかった。




「立花は、やりたいことが複数あって どれかを切り捨てざるを得ない状況だったらどうする? 」




あえて、具体的な部分を伏せた。
立花は多少面食らった表情を見せたが、俺の意図がわかったのか 花火が上がる夜空を見上げた。
俺もその目線を追うように ふっと空を仰ぐ。



白竜が上へ上と上がって、その姿が消えたと思えば、大輪の華が咲き乱れた。
バァン、後から響く音に続き 周りからの歓声が聞こえる。




「……私はね、そういう時 一度立ち止まるの」




花火音と歓声にかき消されるくらい小さい声だったが、俺には聞こえた。
立花は 花火を見ていた目をこちらに向け直す。




「そういう時ってね、色々なことを考えすぎちゃって 本当の心が霞むことがあるんだ。
 だから、一度立ち止まって 何も考えないで、じっとここに聴くの」




そう言って立花は、自分の手を胸の当てた。




「メリットとかデメリットとか そんなことは関係ない。
 無条件で 自分がやりたいことが選び取るべきものなの、それが真のやりたいことなんだよ」




でもね、と彼女は言葉を続ける。




「本当にやりたいことが複数でる場合だってある。
 私も そういう時があったから、よくわかる」




そう言った立花は、誰を思い浮かべたのか。
そんなものは愚問だろう。




「そういう時は、そのやりたい事に期限があるかを 考えてみるかな。
 今のうちにできるものを 目一杯した方が楽しいでしょ」




そう言って、屈託のない 笑顔を見せた。
風になびかれるミルクブラウンの髪が 彼女の頬に影を描く。



そして同時に 俺の中で ストン、と何かが落ちる音がした。



なんて、単純なものを見失っていたのだろうか。
就職に有利だとか、将来のためになるとか、どうでもいいメリットばかりを並べてた自分を嘲笑ってやりたい。
真のやりたいことなんか、最初から決まっていたではないか。




「ありがと」



最後の花火と同時に、彼女は花を咲かせるかのように笑った。
今日見た中で一番好きな笑顔。



ああ、彼女はやっぱり綺麗だ______





(right:終わり*)


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