冤罪者の鎮魂曲

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1:マキ:2013/07/13(土) 19:03 ID:2Sc

冤罪者の鎮魂曲

 冤罪。
 それは罪無き者が罰せられる事。
 何時の時代になっても、冤罪は消えない。
 そもそも、冤罪が生まれ行く原因は「人が裁く」と言う事にある。
 
 冤罪と言うのは、どうして生まれるのか――……
 警察が間違った方法で真実を得ようとしているからか――……
 新犯人が証拠を消したり、他人を犯人にしようとしているからか――……
 いや――……
 冤罪者は結局を言うと、悪いのは警察ではなく――……
 『間違われる奴が悪い』
 ――らしい……。

 
 【作者コメント】
 こんにちは、マキです^^
 アドバイスや感想コメント大歓迎です^^
 (荒らしや中傷はやめて下さい)←

131:きゅー:2014/01/02(木) 19:09 ID:b1c

どもです。マイペース女王のきゅーです笑

警察&容疑者VS容疑者xですか〜。

台詞も無駄にカッコつけないで行動も繊細に書かれているので、
まるでリアルで起きてると思ってついつい浦風君を応援したくなりますね〜♡

そして、マキ様と同い年と言う事にビックリ!
大人の方が書かれていたと思いました笑

132:マキ:2014/01/03(金) 10:37 ID:MZU

 きゅーさん>>

 コメント有難うございます
 『警察&容疑者VS容疑者X』……さあ、どうでしょう?ww
 今後どんなどんでん返しがあるかわかりませんよ?ww(←作者すらわかってません

 浦風を応援ですかー……。
 浦風がその期待に答えてくれると有難いんですけどね(他人事)←おい
 
 っお!? きゅーさんと同い年?! ビックリです! なんだか嬉しいですね〜^^
 では、同い年同士! 今後とも、頑張っていきましょう!

133:きゅー:2014/01/03(金) 10:58 ID:F7s

>>マキ様

はい!(何を頑張るかわかんないけど)頑張りましょう!!
小説楽しみダナーヾ(@⌒ー⌒@)ノ

134:マキ:2014/01/03(金) 11:34 ID:MZU

 きゅーさん>>

 いつも、コメント有難うございます!
 頑張ると言ったらそれは、もう!
 ……勉強とか……←
 ではなく! 小説ですよ!
 お互い頑張りましょう! しょ・う・せ・つ・を!

135:マキ:2014/01/03(金) 11:34 ID:MZU

「ガキの誘拐事件、あんだろ? それで誘拐されたガキを人質に取ってんだと」

 浦風の感情の無いぶっちゃけ発言に言葉を無くし、浦風の後ろ姿を唖然とした目で見つめる龍崎。
 「っえ、じゃあなに……?」と龍崎は前置きをしてから今聞いた話しを整理した。

「お前は冤罪で任意逮捕されて、警官目の前で死んで、ガキ助けろって言われた……ってか?」

 「イエス。話しが早いね、お兄さん」と浦風がまたも感情のこもらない声で言う。
 龍崎はやはりなにも言えなくなり現実味が無い今の現状を再び頭の中で確認した。
 まず、目の前の高校生は一度逮捕されて、警官が目の前で死んで、逃げだして……。
 そこまで考えて、龍崎はとある疑問を胸に抱いた。
 それを聞いてみて良いものかわからなかったが龍崎は浦風を後ろ目に見ながら聞いた。

「それじゃあ、てめえの言う真犯人……、容疑者X? は、ずっとてめえを監視してたってことか?」

 浦風が動きを止め、無表情の顔を龍崎に向けた。
 「たぶんな」と重たい声で言うと浦風は龍崎から視線をそらした。
 龍崎はそんな浦風に困惑の意を込めた目を向ける。

「てめえ、一体、その真犯人となにがあったんだよ……」
「知るかー。俺だってなんでこんなことになってんのか皆目見当もついてねえんだからよ」

 そう言う浦風だが、一切の疑心を抱いていないわけではない。
 どうして、容疑者Xと名乗る男が自分にここまで執着してくるのか。狙いはなんなのか。
 普段使わない頭で考えてもその答えに行きつくことはなく、途中で思考を止めていた。
 しかし、他人に改めて言われると考えずにはいられなくなる。
 もしかしたら、容疑者Xと言う男と自分は面識があって、なにか問題を起こしたのではないか?
 もしかしたら、容疑者Xは自分の知り合いでなにを思ってか自分を陥れようとしていのでは?
 もしかしたら、容疑者Xは自分たちが信じてやまない警察の……――。
 そう思うから浦風は自分のバカな考えを止めるしかなかった。

136:きゅー:2014/01/03(金) 13:14 ID:ESk

小説ですか…恥
分かりました( ̄^ ̄)ゞ!!
犯人と浦風君に何か接点でもあるのかなー?

137:マキ:2014/01/05(日) 13:07 ID:MZU

 きゅーさん>>

 小説ですよ(笑)
 
 浦風と犯人の接点……、さあ、どんなものでしょう
 正直、作者自体考えてうませn((ry

138:マキ:2014/01/05(日) 13:24 ID:MZU

 * * *

「――紙ガムテに、ビニル紐、っで、ポリバケツ二個……。まじでありやがった」

 床に転がるそれらを見て浦風は言った。龍崎が、「完全に手の中で踊らされてるだろ」と浦風の横で言う。
 浦風はその場にしゃがむと、青いバケツの底を上にして天井で光る赤いなにかの真下に置いた。

「踊れる間に踊っとこうや。にしても、あんの野郎、俺がここに来ることも考えてたなあ。ちくしょっ」

 「あんの野郎」とは言わずもがな、容疑者Xと名乗っている男のことである。
 なんだかんだ言って相手の手の中で良いように弄ばれている気分で怒りがたまっている浦風。
 浦風はバケツとバケツの間に少し隙間を開け、龍崎にその隙間に拳銃を挟むよう指示する。
 「つうか、てめえなにする気だよ」と問う龍崎に、「まあまあ」と言い流す浦風。
 バケツの間に拳銃を挟むと、ガムテープで拳銃をバケツに固定する。引き金の部分を省いて。
 
「……っと、ビニル紐、どんだけの長さある?」

 浦風がビニール紐を持つ龍崎に聞くと、「見る限り、十メートルくらい」と返ってきた。
 「まあ、そんぐらいあれば」と言って浦風はビニール紐を龍崎から受け取る。
 そして、紐の先端に輪を作り拳銃の引き金にその輪を引っかけた。

「……てめえ。そんな方法どこで手に入れやがった」

 今から行われることをなんとなく察した龍崎。
 龍崎に言われると、手元の作業を難無くこなしながら、「火曜サスペンス」と一言で返す浦風。
 「最近のドラマってすげえな」と思う龍崎であるがあえて口には出さない。

「さってと」

 束になっているビニール紐を片手に立ちあがる。
 そして、浦風は自分がボイラー室に入る時に使用した出入り口に目を向けた。

139:aribaba chiaryrain@s7.spaaqs.ne.jp:2014/01/06(月) 12:43 ID:bQY

いや〜、すごいですね。
自分と同い年だなんて思えません!
全部一気に読んでも飽きない作品です。
なにを仕掛けているのか楽しみです^^

140:れい:2014/01/08(水) 23:11 ID:9Fk

火曜サスペンスwww

141:マキ:2014/01/13(月) 14:13 ID:MZU

 aribabaさん>>

 コメント有難う御座います!
 同い年ですか〜。嬉しいですねえ(*^∀^*)
 飽きない作品、と言って頂けて幸いです
 私自身、最近、全面的に無理矢理じゃね? 
 と思っていたので、そう言って頂けると本当にうれしいです(笑)

 また、お暇があればコメント宜しくお願いします!

 
 れい>>

 火サスねwww
 もう、それ以外に思いつかんかったww
 笑いのネタになったらいいんだけどねww

142:マキ:2014/01/19(日) 16:41 ID:MZU

 * * *

「――本当にこれで良いんだろうな?」

 白いビニール紐を伸ばし、ボイラー室のドアの取っ手に結ぶ。

「保障は出来ねえよ。だから死んだらごめん」

 ドアの前に佇(たたず)み、目の前に立つ龍崎を見ながら浦風は取っ手に手をかける。
 どこか呆れた顔で、「ごめんで済むかよ」と苦情を漏らす龍崎。
 それを見ながら、「まあまあ」と言いつつ取っ手に結ばれたビニール紐に向けた。
 そして長く伸ばされたビニール紐の先に目を向け、最後に一度だけ生唾を飲み込む。
 伸ばされた紐は床に置かれた拳銃の引き金に輪となって軽く引っかけてある。
 今、紐を全力で引けば引き金に引っかかる輪が縮まり、発砲できる、という単純な仕掛けだが――。

「……やらねえよりマシだろ」

 浦風は目を細める。やらなきゃ死ぬ。自分も、目の前の刑事も。
 先ほどの電話で容疑者Xと名乗る男が言っていたことを思い出す。

 * * *

「ああ? もう泣かないで良いの……お前、まじ死んだ方が良いわ! って言うか死んでくんない?!」
『あっははー。って言うか、良いの? 爆弾が近くにあるのに、こんなふうに駄弁ってて』
「時間制限式じゃねえんだろ。だったら問題ねえだろうが」
『うん、そうだね。でもさあ、時限爆弾じゃないってことは僕の好きなように爆発できるってことだよ?』

 電話越しからそう言われて、浦風の眉が少しだけ動く。
 「つまり、てめえは好きなように爆弾を爆発させられるってことか」と問えば、
 『そーゆうこと』とやはりな口調で言われる。

『っあ、逃げようとか考えないでね? 浦風君が逃げたのがわかった時点で爆発させるからね?』

 そこまで言われて、浦風は電話越しの人物がなにを言いたいのかどこか察した。

『最低限の道具はテキトーにそろえてあるから頑張ってね? っあ、ちょっとは爆発するかもだけど――』

 そこまで言われて深いため息を吐き、浦風は頭を掻いた。そして、真面目な口調で電話に向かって言った。

「ガキ救出の次は、爆弾止めろってか? てめえ、ホント――ぶっ殺してえほど腐れ下道だな」

 電話越しの人物は不気味な笑い声を浦風の耳に届かせた。

143:れい:2014/01/20(月) 15:37 ID:9Fk

火サスを笑いのネタにっ?(笑)

容疑者Xさんょ……爆発させちゃいけませんよww

144:マキ:2014/01/25(土) 22:26 ID:MZU

 わたしは常に笑いを狙って生きています←おーい。
 
 容疑者Xね……。ホント、あの人なに考えてるんだろうね。キチガイなのかな?←おいっ

145:マキ:2014/01/25(土) 22:44 ID:MZU

「――おいっ」

 浦風は龍崎の少しだけ苛立ったような声を聞いて我に返る。
ッハとしたような顔をして龍崎を見ると、龍崎は少し訝しげな顔で浦風を見つめていた。
「なんだよ」と問えば、言葉ではなく視線で答えが返ってくる。
龍崎の目は言っている。「まだ、完全にお前を信じていない」と。浦風に訴えかけている。
 浦風は黙って自分が握る取っ手に目を向けた。目に映る自分の手がひどく小さく見える。
本当にこんな小さな手でなにかを成し遂げることなんて出来るのだろうか?
 襲い来るのは底の見えない不安と底なんて無い恐怖。

「……正直、俺は死にたくない」

 浦風は自分の小さな手を見ながら言った。龍崎が少しだけ黒目を見開く。浦風は続ける。

「だから、生きたい」

 特に考えた様子の無い言葉には重みなんて一つもない。ただ、正直な思いだ。
 龍崎は黙りながらそう言う浦風の顔を見た。
冷たく冷めきった顔をしているがその目にはどこか熱がこもっている。
見ているだけで嫌気がさす。融通(ゆうずう)が利かない、馬鹿うるさい女の同僚と同じ目をしている。
龍崎はそう思った。

「……開けっぞ」

 沈黙が数秒だけその場を包んだ後、浦風は取っ手を強く握り返した。

「ストップ」

 そう言ったのは龍崎だ。龍崎は間髪いれず続ける。

「俺が開ける」
「はあ? どっちが開けるって関係無くね?」
「俺が開けるから、てめえは先に外に出ろ」
「……あ?」
「これでもお巡りさんなんでな。一般市民より先に戦線離脱するわけにゃいかねえんだわ」

 そう言う龍崎の顔を、浦風は一瞬だけきつい目で見た後に、ニッと笑って見返した。

146:マキ:2014/01/25(土) 23:09 ID:MZU

 龍崎は先ほどまで浦風が握っていたドアの取っ手を握った。深く深呼吸をして、呼吸を整える。
安定した色の無い声で、「行くぞ」と目の前にいる浦風に言う。浦風は首を縦に振る。
 龍崎はゆっくり、だが確実にドアの取っ手をひねる。なんとも言えない緊張感が走り――、

「ドアにタックルぶちかませ、浦風秀哉!」

 そう叫ぶと、勢いよく取っ手をひねった。
それに合わせて、言われた通り浦風はドアに体を勢いよくぶつける。
反動でドアが外側に開く。
取っ手に結ばれたビニール製の紐が伸び、その先にある拳銃の引き金に結ばれた小さな輪がその口を閉じ――、

『ドン――ッ!』

 銃声が一発だけその場に響いた。
 浦風が出た後、そのすぐ背後について龍崎は駈け出す。背後に銃声が聞こえた。
 発せられた銃弾は空を切り、螺旋を描き、空中に向かって線を描く。そして――、

『ドォォオオン――ッ!』

 暗がりの天井に設置された爆弾に直撃し、微力な爆発を招いた。

 * * *

 背後から爆風を受け、
ほとんどその風に押し出されるようにショッピングモールの通路に飛びだした浦風と龍崎。
 二人とも服の所々に汚れや穴を作っていた。

「……」

 浦風がボイラー室に入るために通った薄暗い通路に、
爆風で吹っ飛ばされたのか、ボイラー室のドアが無残な姿で倒れている。
そして全開になったボイラー室の入口からモクモクと黒い煙がわき出ている。
 それを、地面に寝っ転がりながら見ている限り、言葉なんて出てこなかった。
 高い天井を見ていると、黒い煙でそれもさえぎられる。
 静かな人時がその場を包み込む。

「……おい」

 不意に隣に目を向けると、そこには白いワイシャツをボロボロにした龍崎の姿があった。

147:マキ:2014/01/26(日) 16:18 ID:MZU

「っあ、生きてたんだ」

 浦風が寝っ転がりながら言うと龍崎は顔をしかめながら、「たりめえだ」と言った。
浦風は龍崎に向けた目を天井に向けた。煙が立ち込める天井が見える。

――出来た。

 心なしかそう思った。
自分の頼りない、小さな手でも、自分の命と目の前の刑事の命は守れた。自分の小さな手で。
 そう思うと、胸の内に秘めていた変な感情が勢いよくこみあげて来た。

「ばっかみてえ……っ」

 その感情をどう表現していいのかわからず、ただそれだけつぶやいた。

「おい、浦風秀哉」

 龍崎が頭を掻きながら浦風を見据えている。「あ?」と言いながら浦風は龍崎を見た。

「てめえ、なんで爆弾をぶっ壊そうなんて考えた。
もしかしたらとんでもねえ事になってたかもしれねえんだぞ」

 起き上がりながら、「ああ」と言う浦風。そして、ズボンのポケットから赤い携帯電話を取り出す。

「爆弾をそれごと壊しちゃえばデッカイ被害は無いから、そこにいる刑事さんの拳銃で壊しちゃってよ。
まあ、壊したとしてもすぐに逃げないと死んじゃうけどねえ=v
「……っは?」
「って言われたんだよ。ボクっ子気取りのキチガイ野郎に」

 言い捨てるように言うと、浦風は静かに立ち上がり、周りを見渡した。
それを見ながら、「逃げるつもりか?」と言って立ち上がる龍崎。
警察官として、目の前の、一応容疑者≠フ青年をみすみす逃がすわけにはいかないのだろう。
それを知ってか、「いや、逃げるとかじゃないし」と浦風は返す。

「さっきも言ったろ? 無関係なガキが人質様に取られてんだよ。だから、サツに捕まる訳には」
「だからこそ、助けてやるつってんだ」

 その一言に浦風は、「っえ」と言うように目を見張った。龍崎は続ける。

148:れい:2014/01/26(日) 22:03 ID:9Fk

龍崎さぁぁん!!

149:aribaba chiaryrain@s7.spaaqs.ne.jp:2014/01/27(月) 19:41 ID:bQY

急にかっこよく見えてきました!
龍崎さんサイコー!

150:マキ:2014/02/01(土) 13:31 ID:asc

 れい>>

 龍崎くうううん!
 良かったね! れいに名前呼んで貰ってるぜ!

 龍崎「っあ? っえ? なに? ……あ? 一言? お礼のお言葉? っえ、まあ、良いけど。
 ……ええ。いつも駄作者マキがお世話んなってまーす。
 今後とも、この小説(特に俺)を応援して頂けると幸いです。
 まあ、これからもお互い頑張って進めて行きましょうや。ってことで、これからも宜しくお願いしまーす」

 はい。ふざけたよ。ゴメンナサイ……。

 aribabaさん>>

 コメント有難う御座います!
 おお。龍崎君意外と人気ですね。ビックリ。
 龍崎君、本当に良かったねー! 浦風君より人気高いよ! きっと!

 龍崎「ああ? んなの高くたって興味ねぇよ。
 まあ、世の中は主人公じゃなくて、他の重要キャラが目立つ時代だしー?
 主人公交代が来たら変わってやっても良いぜえ?(ドヤッ」

 ……。
 はい。ふざけました。スミマセン。本当にスミマセンorz

151:マキ:2014/02/01(土) 13:57 ID:asc

「一応、俺もお巡りさんなんでな。困ってる一般市民見捨てるわけにゃいかねえんだわ」

 そう言う龍崎の顔はひどく朗(ほが)らかだった。その顔と言葉に浦風は目を見張った。そしてうつむいた。
冷たい地面に置いた自分の手が小刻みに震えている事が良く解かった。
今ここですべてを打ち明けたら、きっと自分は救われる。でも――、

「じゃあ、見捨ててくれ」

 龍崎の口から、「っあ?」と声が漏れる。浦風は立ち上がる。
ズボンのポケットに手を突っ込んで余裕のある笑みをつくって見せる。

「サンキューな兄ちゃん。あんた見かけによらず良い人だな」

「だから、ここは黙って見す捨ててくれよ」浦風ははっきりそう言った。
龍崎は色の無い目で浦風の顔を見た。「……あっそ」と言って龍崎も立ち上がる。

「じゃあ、俺さっさと退散しますわ。一応、犯罪者だし?」

 そう言うと浦風は龍崎に背を向けた。
「そのセリフは冤罪を掛けられている浦風秀哉からの物だと思って良いのか?」と浦風の背に問うと、
「ダークヒーロー浦風様からのセリフにしといてー」と大声で返ってきた。
 浦風がデパート内に姿を消した時、龍崎は心なしか安心していた。
そして、その場を後にした。

 * * *

「っま、逃がしても良かったっしょ」

 冤罪者だし。
 独り言を言うように言うと、「っは?」と片桐が言った。片桐の目にはまだ泣き跡が付いている。

「ん? いや。こっちの話。って言うか、重要なお話が偉い人にあんだけど?」

 浦風の事をいち早く誰かに話さなくては。
今、片桐と一之瀬に大雑把にでも話しておいては良いと思うが、今話せば変に混乱が生まれるかもしれない。
不運な事に、デパートの周りにはすでに報道陣が殺到しているし。
 片桐は龍崎に言われると訝しげな顔をつくって、「その前に怪我を治療するのが先よ」と言われた。
まったくだ、と他人事のように龍崎も思った。

152:マキ:2014/02/01(土) 20:05 ID:asc

「って言うか、上に重要な話ってなに?」

 龍崎の数歩先で足を止め、振り返る片桐。龍崎は、「ああ」と言って明後日の方向を見た。
片桐になら言っても良いと思うが、騒がず聞いてもらいたい。
「黙って聞いてねー」と前置きして、龍崎が今まで起こった事を説明する。だが――、

『ッヒュ――!』

 ――何かが空を切るような音が龍崎の言葉をかき消した。
 その音は聞こえるか聞こえないかくらいの微量な物だった。
それは片桐の耳に入ったのが奇跡だと思われるぐらいの、本当に小さな音だった。
 音が聞こえたとほぼ同時に、片桐の目の前で龍崎は地面に膝をつき、静かにその場に崩れた。
そして、倒れた龍崎の体から赤い液体が地面に流れ出てきた。
少しずつ、少しずつ、少しずつ、少しずつ。

「……え」

 片桐の足元で、龍崎が小刻みに震えながら自分の胸元を強く抑えた。
背中と胸に赤い液体がにじんでいる。服が白いせいで、赤いのなんてよく目立つ。

――龍崎。そんな触ったら、その赤いのシミんなっちゃうよ。クリーニング出さなきゃだよ。

 龍崎は背中を地面に付け、荒い息と虚ろな目で天を仰ぐ。
その時、微かにだな、「う、ら、かぜっ」と言ったのが片桐には解かった。

――なに、それ? 今、あんたをこうやって苦しめてる人? その名前、聞いたことあるよ。

「浦風、秀、哉?」

 龍崎の近くに、人が集まってきた。そしてすぐに、担架に載せられた。
 片桐はその場に力無くへたり込んだ。

「浦風、秀哉……」

 色の無い、その声は虚空に溶けて行った。
 
 * * *

「――……あ?」

 誰かに呼ばれたような気がして浦風が振り返ると、無人の車が数台、目に入った。
 先ほどの爆発が効いたらしく、デパートの従業員専用出入り口を這っている刑事らしき者はおらず、
結構ラクチンに外に出られた。
出た所がデパートとビルに挟まれた狭っ苦しい場所ではあったが結果オーライである。
 ここまで来る際に通った通路から白い服を着た者たちが無残な巨大中庭中を歩き回っているのが見たが、
見えなかった事にした。
 今頃、先ほどの刑事はデパートの外に出ているだろう。そして、自分の現状を誰かに話して――。
 そこまで考えて浦風は思考回路を停止させた。
 変な期待はするだけ、無駄だと思ったからだ。

153:れい:2014/02/01(土) 21:29 ID:9Fk

龍崎さぁぁん!←2回目

ダメやん。浦風くんの名前出したら。泣
片桐くんが誤解しちゃうじゃんかぁぁ…↓↓

なんてことをするんだ。笑

154:マキ:2014/02/02(日) 14:26 ID:asc

 あ、あはははは……
 自分でも何やってんだと思った←

 龍崎、意外と人気あったのにね
 無念(>□<;)

 主人公交代はやっぱ無しだね

浦風「(よしっ!)」
龍崎「(っああ゛?!)」

155:れい:2014/02/02(日) 14:34 ID:9Fk

>>154
片桐くんって、龍崎さんのこと大好きなんだね^^
主人公交代するなら、片桐くんでお願いしまーす!笑

156:マキ:2014/02/02(日) 15:19 ID:asc

 片桐ちゃんも一応¥翌フ子だしねえ
 解かりづらいけど←

 時期主人公は片桐ちゃんかあ……。
 よし考えておこう。

片桐「(っふ。((ドヤ)」
浦風「(このアマッ!)」

157:れい:2014/02/02(日) 21:01 ID:9Fk

あかんて!
片桐“くん”じゃないと!
片桐“ちゃん”だと、しっくり来ないww

158:マキ:2014/02/07(金) 19:38 ID:0js

 まじでかww 
 んー、それもそうかなーww

片桐「は、はあ?!」
浦風「っぷ」
片桐「ああ゛?」
浦風「さあせんしたあ!」

 ああ。
 ちゃん≠カゃなくて、くん≠セね
 たしかに。

159:マキ:2014/02/07(金) 20:24 ID:0js

『ヴー、ヴー、ヴー』
 
 毎度お馴染みの振動音が浦風のズボンのポケットから発せられる。
不覚にもビクッと肩を震わせる浦風である。
 気を取り直しながらもおずおずとポケットから音の発信源である携帯を取り出す。
携帯には、電話越しの人物を示す、毎度お馴染みの非通知≠フ文字が。
 頭の中で今言うべき事を一つに絞って、浦風は意を決したような顔で電話に出た。

『どーもー! 生きてるみたいだねー、うっらかっぜくーん! 良かったねー、浦風くーん』

 やはり、毎度お馴染みなイラつくくらいハイテンションな声が携帯のスピーカーから漏れ渡り、
狭いその路地に小さく響く。
 今までの浦風であれば、この言葉一つにでも「うるせえ」の一言を言っていた。が。
今は現状が違う。言わなければいけない事がたくさんある中で、聞かなければいけない事が一つ。

「……てめえ、なんで、あの兄ちゃん殺したんだよ」

 あの兄ちゃん≠ニは、言わずもがな、警視庁で殺された刑事。
浦風が信じてみようと誓った言葉をくれた、一人の男。
 浦風が絞り出した言葉を口にすると、少しの沈黙がその場を埋め尽くし、
それを電話越しの人物は、実にあっけらかんと、簡単に打ち砕いた。

『ねえ、それ、今更すぎじゃない?』

 携帯を握る浦風の力が強まった。

『なになに? 浦風君はあのお兄さんが生きてると思ってたの? 本当に? ガチで?
思ってるわけ無いよねえ? 思うはずがないよねえ? 思えるはずがないよねえ?
だって、目の前で死んだんだもん。目の前で動かなくなったんだもん。目の前で殺されたんだもん。
なんで殺した? 答えは簡単。邪魔だから。っえ? 単純すぎないかって? シンプルイズザベストだよ。
でもでも、本当に浦風君はあのお兄さんが生きてると思ってたの? 
死んじゃうって言ったじゃん! 言わなかったっけ? 言ったよねえ? 言ったよ。
なのに、今更その事ぶり返すとか……、浦風君ってネチっ子?』

 ペラペラペラペラペラペラペラ。
 まるで終わりを知らないかのように一方的に語る相手に、浦風は憤りの無い怒りを感じた。
正直、もうなにも考えられずにいた。なにか考えた方が良い気もしたが、なにか考える気になれなかった。
第一、こんな事を平然と言える相手を前に、なにを考えればいいと言うのだ。

160:マキ:2014/02/08(土) 11:11 ID:0js

『あ、そうそう! 僕が電話したわけ、まだ言ってなかったね!』

 本題に入ろうかとでも言いたげな口調で相手は言う。浦風はなにも言わない。ただ黙っているだけ。
電話の相手は一人で、楽しそうに続ける。

『君のお友達に、矢野翼君っているでしょ? その子のおうちに行ってみてよ! い、ま、す、ぐ、に!』

 それだけ言うと、電話が切れた。
 浦風は電話越しの人物が矢野の名前を出した瞬間、ッハと我に返った。
そして、無機質な『ツー、ツー、ツー』と言う音を聞きながら辺りを見渡した。
目に映る狭い路地裏には、ゴミ箱やらなんやらが置いてある。
そして、そんな中に浦風の目に入った物が一つ。

「ッ――……!」

 浦風は目に入った自転車≠ノ走ると、それにまたがり、即座にその路地から抜けた。
向かうは、自分を信じてくれた、やっぱり腐れ縁の友人の家。
 やっぱり、巻き込んでしまった。巻き込ませしまった。どう謝るべきだ。どう謝ったらいいんだ。
 太ももが痛くなるのもいとわず、浦風は全速力でペダルをこいだ。
今にも不安で押しつぶされそうになる心を必死に、支えながら。

 * * *

 車でも三十分近くかかるところを、自転車をかっ飛ばし、
信号と言う信号を無視して矢野家まで訪れた浦風。
 矢野の家の前に着いた時、浦風は汗だらけで息を荒くしていた。

「っう、は、あ……! や、矢野!」

 人目もはばからず、ほとんど叫ぶようにして矢野家のドアを叩き開く。
『バンッ』と言う音とともに、家の中から変な異臭が飛んできた。鼻を刺すような鉄の香り。
 浦風はその匂いの正体を知っている。
 不安と恐怖が浦風の心を襲った。

「矢野ッ!」

 浦風は叫ぶと、土足で家に上がりこんだ。

161:マキ:2014/02/08(土) 16:21 ID:0js

 家の中に入り込むと、鼻を突く匂いはさらに強まった。
 咄嗟に鼻を抑え、ひるむ。すぐに気を取り直し、目の前にあるドアを開いた。
開いたと同時に異臭が増す。
 浦風が部屋の中を見渡すと、相変わらずたくさんの等身大フィギアの群れが見えるだけ。
その中に矢野の姿は見当たらない。

「ッ――! 矢野! いたら返事しろ、矢野!」

 そう言って、その部屋を見渡す。返事も無ければ物音さえ聞こえない。
しかし、浦風の鼻を突くその異臭はその部屋からするわけで。
 浦風は意を決すると部屋の中に入った。
 つい数時間前とは打って変わり、部屋の中はカーテンが閉まり暗闇その物だった。
「矢野!」と叫びながら部屋の中に入ると、その部屋とつながっている台所に目が向かった。
裏口がある、案外広々とした最新のキッチン用具が揃っている台所。
 浦風は等身大フィギアの隙間から見える台所から目が離せなかった。
そして、目の前のフィギアをどけて、進んだ。

「ッ――……、矢野!」

 そして、床に横たわる矢野の姿を見つけた。
 暗がりのせいでよく見えない。
 浦風はフィギアを倒して床に横たわる矢野に近付いた。
目を閉じている矢野に向かって、叫ぶように名前を呼んで見せる。
 何度目かの、「矢野」と言うフレーズを口にしたとき、浦風の手に変な感触が走った。
液体に触れたような、変な感触。
 浦風は自分の手を見て、息を呑んだ。
 それは、暗がりでも良く分かる、黒ずんだ血≠セった。
 血の気が引いた。

「矢野! おい、矢野! しっかりしろ! おい!」

 肩を揺さぶる。よくよく見れば、矢野は腹部から血を流している。
 矢野の茶色い髪が肩を揺さぶるたびになびく。しかし、矢野自体はなにも言わない。
 浦風は頭が真っ白になるのを、たしかに感じた。

162:れい:2014/02/08(土) 21:31 ID:9Fk

矢野ぉぉぉぉぉ!!!
密かに矢野好きだったのに・・・。

犯人X許せない。笑

163:マキ:2014/02/09(日) 10:54 ID:0js

 良かったね、矢野君! 
  怪我したかられいに心配されてるよ! 
   このまま死んじゃっても結果オーライだよ!

矢野「ふっざけんなあああ! 
今の現状見たら、俺ただ単に浦風に勝手に巻き込まれて一方的に怪我させられただけじゃねえか!
萌えキュンハートナノちゃんとのランデブーが待ってるっつーのによおおおっ!」

浦風「どんまい(ドヤッ」

矢野「(イラァア)」

 ……。
  矢野君の健闘を祈ります 笑

164:マキ:2014/02/09(日) 11:42 ID:0js

 矢野の腹部から出る血が止まらない。浦風の頭が真っ白になっていくのを止める事が出来ない。

「! そ、そうだ、きゅ、救急車……っ! 救急車、呼ばねえとっ」

『容疑者X』などと言うふざけた奴との連絡にしか使わない携帯を開き、『1』の番号に指を伸ばす。
しかし、今まさにそのボタンを押そうとした時、浦風の腕を誰かが掴んだ。
見れば、息も絶え絶えな矢野が、震える腕で浦風の腕を持てる力で引っ掴んでいるではないか。

「矢野ッ、てめ」
「う、らかぜ……っ」

 心配の声をかけようとする浦風の言葉をさえぎり、矢野は力無く浦風の名を呼ぶ。

「つ、ばっき、が……っ、つ、ばき、ちゃんっ、っが」
「つ、ばきって……。あいつが、ツバキがどうかしたのかよっ?」

 矢野の腕が浦風の腕から離れる。矢野の息がもっと荒々しくなる。
 浦風の心に募る不安が、『ツバキ』と言う一つのワードで膨れ上がった。

「っ、さらわれ、った……っ」
「っな――! ど、どう言う事だよ、矢野!」
「知るか……っ! ……てめえが、出てった後、刑事が来て……っ、そいつらが帰ってたら……」

 そこまで言うと、矢野は静かに微かに開いていた目を閉じた。出血が尋常じゃない。
「おい、矢野」と浦風が矢野の名前を呼ぶが、返事が無い。沈黙が走る。

「ツバキ……」

 遠くの方から、何故か救急車のサイレンの音が聞こえた。
それに混じって、救急車とは違う物のサイレンも。
 それを耳にすると、浦風は歯ぎしりを立てて矢野宅の裏口から勢い良く外に出た。
 矢野が最後まで言いたかったことなんて何か解からない。でも、とにかく今はあれだ。
 矢野は殺しても死なないヤツだと信じてる。だからこそ、今やらなければいけない事は一つ。

全速力で馬鹿みたいに逃げる

 こと、だけだ。

165:マキ:2014/02/09(日) 16:55 ID:0js

 冤レク(冤罪者の鎮魂曲(レクイエム)の略)も160スレ突破!
 これも皆様のおかげです!
 と、言う訳で(?) なぜか、冤レクキャラを描いてみました!
 マウスなので下手ッピですが、お暇とユーラシア大陸並みの大きな心のある方はURLを↓

URL:http://www.kakiko.info/oekaki_bbs/data/IMG/_003278.jpg

(手前から、矢野君、龍崎さんです。奥の方にいる吹き出しの人は主人公君です。
 作者のイメージなので、皆さんのイメージと違っていたらスミマセン……<(_ _)>)

166:マキ:2014/02/09(日) 16:59 ID:0js

すみません! URL間違えました!

URL:http://www.kakiko.info/oekaki_bbs/data/IMG_003278.jpg

167:れい:2014/02/10(月) 22:57 ID:9Fk

矢野くん想像通りすぎてワロタ\(^0^)/″
矢野やっぱ好きやわぁ。笑
龍崎さん意外と童顔((跳び蹴り

168:マキ:2014/02/16(日) 13:45 ID:0js

 おお。それは良かったwww
 龍崎、ねえ。まあ、あの人は、あんな感じです。はい。
 ちっさかったけど、浦風もあんな感じ←

169:マキ:2014/02/16(日) 17:11 ID:0js

 * * *

 片桐は、『手術中』と言う文字が光る部屋の前に置かれた椅子に腰かけていた。
その目には色が無く、顔色も冴えなかった。

「片桐」

 名前を呼ばれて、声のした方を見ると、一之瀬が立っていた。眼鏡越しの目は沈んでいる。
「なに?」と片桐は色も感情もなにもこもらない声で聞く。

「……龍崎が撃たれた瞬間、お前が一番龍崎の近くにいたんだ。なんか見てねえのか?」

 そう言う一之瀬の目は、やはり沈んでいた。
 一之瀬とて、こんな事を今聞くのは嫌なのだろう。だが、状況が状況。職業が職業なだけある。
 片桐は椅子に腰かけたまま、静かにうつむいた。

「それは……、刑事としての質問? それとも、一之瀬一個人としての質問?」

 口ごもる一之瀬。黙りこむ片桐。
 少しの前を開けて、一之瀬は、「もちろん、刑事として、だ」と沈んだ目をぎらつかせていった。
 片桐は一之瀬のそれを聞いて、静かに微笑んだ。「そっか」

「間違っても、『両方だ』何て言う格好良い事は言ってくれないわけね。安心したわっ」

 立ち上がり、一之瀬に近付く片桐。まだ、目に色は無い。しかし、その顔は悲しそうに笑っていた。
 時計を見ると、午後八時を回っていた。一体、何時間ここにいたのだろう?
自分でそう思うも、分かったって意味なんて無いだろう。きっと。

――浦風、秀哉。

 片桐の目が、赤く光る『手術室』の文字盤に。

「絶対……、絶対、ぶん殴ってやるっ」

 そう言う片桐の目は怒りと悲しみが入り混じった、重たい物だった。


冤罪者の鎮魂曲 第五話・人が死ぬと言うこと 終

170:マキ:2014/02/23(日) 15:18 ID:0js

冤罪者の鎮魂曲 第六話・もがく黒主人公

 辺りが薄闇に溶け込む中、制服を着た警官が懐中電灯片手に公園を歩きまわっていた。
 そして、息を殺してそれが去って行くのを、公園に植えられる背の高い木に猿の如く乗って見つめる者が。

「……こっちは異常なし、ッと」

 警官はそう言うと静かに夕闇の中に溶け込んで消えていった。
それを見届けると、木に乗っていた者は勢いよく音を立ててそこから滑る落ちた。

「どうわあああっ!」

 その人物――浦風は、地面に落ちると苦々しく顔を歪めた。「だあああ」と唸り声を上げる。

「あっぶねえ……! ああー。まさか木に登って中国大芸能みてえな体技しねえといけなくなるとか……」

 そう言って、枝と枝に足をかけやじろべえ的な体勢でいた事を思い出す。
 ズボンのポケットから携帯を取り出し時間を見ると夜の八時を回っていた。
 何時間この木に身を潜めていたのか、考えるだけで自分のメンタルの強さに一目置く浦風である。

「ったく、これからどうすりゃあ良いんだ」

 腹は減ってるし、帰る場所は無いし、金も無いし、現状も解からないし、腹減ってるし。
 今まさに何をすれば良いのか全くと言っていいほど分からない。
 だが、ひとまずあれだ。あれ。

 どっか、ご飯を分け与えてくれる人を探そう。
 どこぞの店の試食でも良い。だから、ホントにひとまず何か食う物を。

 そう思って、浦風は公園の外に広がる繁華街に目をやった。

171:マキ:2014/03/02(日) 13:10 ID:NUE

『――ヴー、ヴー、ヴーッ』

 すると、ポケットに入っている携帯が音を立てて振動した。本日何度目か解からない電話だ。
 浦風は表情を険しくすると着信相手の名前を見た。
案の定、と言うか当たり前の如く、いつも通りのヤツだ。
 浦風は静かに携帯を開くと受話器ボタンを押した。「……はい」

『っあ、浦風くーん! どうやら捕まってないみたいだねー! 良かった、良かった!』

 電話に出た瞬間に飛んでくるこの声。どうにも、この声を好きになれない浦風である。

「……てめえ、ツバキをどこにやった」

 ドスの効いた声で言えば、電話越しの相手が微かに笑ったのが聞こえた。

『ツバキ? ああ、矢野君の妹さんの? どこにやったって……、どっかに?』

 あくまでもすっとボケるつもりでいる、容疑者X。それに怒りを募らせざるを得ない浦風。

「……あの凶暴娘がてめえみてえな奴にどうこうされるとは思ってねえ。安心しろ」
『何を安心しろっての?』

 語尾に『(笑)』がつくような口調で言われ、浦風はピクリと眉間にしわを寄せた。

『っま、いいや。今日はもう遅いし、ゲームはまた明日ねー。そろそろお休みの時間だし』
「てめえの脳内は昭和か」
『健全な男たるもの、ラジオやテレビは八時まで。良い子はさっさとおねんねよっ』
「昭和に帰れ殺人鬼」

 憤怒の感情を込める顔で浦風が言うと、スピーカーから笑い声が聞こえて来た。
本当につくづく、この電話越しの人物は浦風をイラつかせてくれる。

『現在進行形で言えば、殺人鬼は浦風君だよ?』

 電話が切れた。

172:きゅー:2014/03/04(火) 16:09 ID:2SM

お久しぶりです。

どんどん面白い展開になりましたねー!
ホンっト、xさんは人をイラつかせるの得意ですね(まるで私みたいです笑)

173:マキ:2014/03/16(日) 15:26 ID:NUE

 きゅーさん>>

 いやー、どんどん、わたしでさえも頭が故障品になる内容になっていってますよ←
 Xさんは、知り合いの男の子をモチーフに書いてます
 いやはや、その子も顔面タックル決め込みたいほどイラつく人で……
 
 Xさんってそのうち絶対に浦風にぶん殴られますよ。わたしも一緒にぶん殴りたいです。


Xさん「っえ?! 僕ってそんなに悪者なの?!」
浦風「今更?」

174:れい:2014/03/25(火) 00:55 ID:FZ6

はろー⭐︎

お久しぶりか感じの私(笑)

今後も楽しみにしてるよ!

X悪者(笑)
浦風君殴ったれーぃ!

175:マキ:2014/04/11(金) 19:06 ID:yB2

※更新を放棄してしまい申し訳ありませんっ!
いや、放置しようとか思ってたんじゃないんです!
誰かのサイトポリシーに巻き込まれて更新出来なかったんですっ

っていう事で!←
XP の件などありますが、本日より更新を再スタートさせていただきます!

以前同様、なんともいえない駄文ですが、宜しくお願いしますっ!

176:マキ:2014/04/11(金) 22:03 ID:yB2

浦風は、おもむろに空を拝んだ。
厚い雲の隙間から、微かな光りを放つ星々が顔を出している。

「……」

現在進行形で自分は、殺人鬼? そうさせたのはどこの誰なんだか。
静かにため息を吐くと、浦風は携帯を強く握りしめた。
その拳には、有り得ないはずの“今日”を、強く捻り潰そうと言う思いがこめられていた。

* * *

「矢野翼の妹と連絡がつかない」

開口一番。
片桐が仮眠室から出た矢先、一之瀬はそう言った。

「友達の家にいる、……とかじゃないのね」
「ああ。親の方とは今朝方連絡がついたんだが、妹――矢野椿(やの つばき)の方は、まだ」

一之瀬の話しでは、親しい友人の家にも連絡したが矢野椿はいないとのこと。
それどころか、昨日の午後から音信不通と化している。

「実の兄貴が刺されたのに音信不通ねえ。大分、兄妹仲が悪いようねえ」
「お前も今回の事件に関係あると思うか」
「ええ。例えニジオタ引きこもりぷーたろうが兄貴でも刺されたって聞いたらすっとんでくわ」

「アホ面を拝みにか」と訊くと「もちろん」と返ってきた。
一之瀬の腕時計が朝の九時を指した瞬間だった。

* * *

始めに言っておくと、浦風の体は固い方だ。

「……」

なので、寝床にポリバケツを選んだのは、ただ単に浦風がバカだったからだ。

177:マキ:2014/04/14(月) 20:13 ID:yB2

ポケットから振動を感じて、目を覚ました。携帯のデジタル時計は朝の九時前を表示している。

「……はい、」
『おっはよー、浦風君! 良い朝だねー! 素敵な朝だねー!』

半分ほど寝ている頭で携帯に出ると、テンションの高い声が飛んできた。
「誰だこいつ、」と思いながら視線を上に向ける。青い天井が見えた。
あれ、ちょっと待て。俺の部屋って天井青かったっけ?
そう考えて浦風は、自分がボリバケツの中で寝ていた事を思い出した。

「っあ、いってえ……、」

もともと体が柔らかいわけでも無いのに狭苦しい密閉空間で安息をしこうと言うのが間違っている。
昨夜は結局手持ちも無いので何も食べずにドラム缶状のバケツで寝たのだが。
流石に辛かった。
お陰で体中が痛い。
バケツを倒して外に出ると薄汚れた路地裏が目に写った。

『丸一日経つのに、まだ捕まらないなんてスゴいねー。冤罪者の才能あるんじゃないー?』
「んな才能、特典付きでも要らねえ」

「っで、要件は何だ」浦風が声のトーンを下げて問う。
電話越しの人物は少しだけ間を開けると言った。

『いさぎがいいね。流石に黙って従ってくれるようになったのー?』
「ツバキが絡んでなかったら暴言の百個や二百個たれてやってたよ」

笑い声が聴こえた。浦風はこの笑い声が、どうしても好きになれなかった。

178:マキ:2014/04/24(木) 19:35 ID:yB2

『じゃあ、』

 一呼吸置くと、電話越しの人物は続けた。『そろそろ真面目な話しをしようか』
 浦風の表情が険しくなる。

『浦風君のいる場所は携帯のGPSで解ってるんだけど、』

 常に監視下にある。とでも言っているような口振りだった。

『近くに青い看板引っ提げてる建物無い?』
「建物?」

 路地の外に顔を出し、辺りを見渡す。
傍から見れば怪しい事このうえないだろうが、そんな事を言っていられるような場合でもない。
 辺りに目を向けているとそれらしき建物が目に入った。
 浦風がいる場所から、道路を挟んだ向こうにある建物だ。確かに青い看板が見える。

『今から三十分くらいしたら、堂々とその建物の中に入って屋上へ向かってよ』

 階段真っ直ぐ上っていったら着くからさあ。
 気楽に言ってくれやがる。そう思ったが口には出さなかった。

『それじゃあ、頑張ってねえ』

 言うが早いか、勢い良く電話がきれた。
 無機質な電子音を発する携帯を片手に、

「ホント、気楽に言いやがって」

 と、愚痴を溢した。

179:マキ:2014/04/27(日) 19:31 ID:yB2

 浦風がツバキと出会ったのは、きっと偶然が重なっただけに過ぎなかったんだ。

 その日はクリスマスを二週間後に控えた日だった。
 朝から雪が降っていて、気温も低く、人々が縮こまって歩くような日。
 当時、中学三年生だった浦風は、家族不在で訪れるクリスマスをどう過ごすべきか考えていた。
普通なら受験勉強一色なのだろうが、生憎浦風にその四文字はない。
自分はやれば出来る子、YDKと考えているからだ。実際浦風はやろうと思えば大概の事は出来る。
やろうと思うのは365日中の4日程だが。

 そんな日のそんな浦風に声を掛けたのは、同級生でクラスが同じの矢野だった。
 浦風と矢野は腐れ縁の仲で小中と同じクラスなのだ。

「今日家族で早めのクリパやるからお前も来い」

 クリスマスパーティーをクリパと略すのは個人の勝手だが、なぜそれに自分も行かなければいけないんだ。
 そう聞くと、

「お前どうせ暇なんだろ。凡人を誘ってやってんだ。有り難く思え」

 ひとまず、一回殴っておいた。

* * *

「おい矢野! てめえ親父さんが予約したレストランに行くんじゃねえのかよ!」

 小綺麗な包装紙で包まれた箱を両手に抱えて浦風は叫んだ。
その叫びを受けた矢野本人は、自分の後方を歩く浦風に落胆の目を向けた。

「約束は七時だ。今から行っても二時間近く待たされる。だから暇潰ししてんだ。
つうか、本当ならてめえら凡人がどう足掻いても行き着く事の出来ない、
超がつく高級レストランに連れてってやるつってんのにんだその態度。てめえは恩を知らねえ猫か」
「勝手に連れてきた分際で舐めた事ぬかしてんじゃねえよ。
なんならこのオモチャどっかに沈めて帰ってやっても良いんだぞ」

 腕に抱えた荷物と矢野を交互に睨み付けながら浦風は言った。
「イヤダナー、浦風君。ホンノカワウィー冗談ジャナイカー。真二受ケルナヨー」、と、
あからさまな片言で言い切ると、矢野は右手に並ぶ様々な店に目を向けた。
 そして、

「ッ──! あ、あれはっ!?」

 等と言うが早いか、浦風を一人残し目の前の人混みの中に消えていってしまった。

「っえ、ちょ、矢野君?! あ、っちょ、え、や、やの、矢野おおおおお!」

180:れい:2015/08/23(日) 11:22 ID:pEg

マキー!久しぶりです!
私はいつまででも待ってるからね!更新!


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