そのまんま。自由参加
台本書きはNGでお願いします。
最低五行は書くこと!
ある晴れた日のこと、私は朝早くから散歩をしていた。
少し遠くに行ってみようと町はずれにある海岸まで足を運んだ。
かわいらしい貝殻を拾ったり、とても楽しかった。
遠くまで足を運んだ甲斐があったな、と満足して帰ろうとした時に
………そいつはいきなり現れたんだ。
「やあ、探偵くん」
「はい?」
……だれ。
「ねえ、雪合戦しない?」
「……いま夏ですよ」
「えっ!?」
本気できずいてなかったのか。
「てか、あなただれ?」
「あぁ私かい?私はだね、闇を断ち切る全ての砦である...探偵さ」
「探偵関係なくないですか」
...というかこの人さっきこっちに対しても探偵とか呼んでなかったっけ。
なにこの人。この人の視界には探偵し映ってないの?それただの変態じゃない? いいからその辺の美少女取っ捕まえて「あなたの心です!」とか言いまくってろよ。多分モテるぞ。警察に。
まぁ何にせよ、面倒事は嫌いだし、さっさとこの場を離れようとして立ち上がった。
「じゃ、帰りますんで」
...が、
「あぁ、いや、ちょっと待ってくれ!? 私が悪かったから!」
「何なんですか全く...」
...帰らせてくれなかった。
まぁいいや、そう呟きさっきと同じ場所に座った。
「まずは私の話をしようじゃないか...」
...長くなりそう。やっぱ帰りたい...
「先ずは自己紹介をしよう。私の名前は江戸川乱歩だ」
「は?江戸川乱歩ってあの?」
昔少しだけ彼の本を読んだことがある。その作者か、彼?
「まあ色々あって私は江戸川乱歩なんだよ」
「そんな急に信じられません」
私は乱歩と名乗る彼をまだ警戒している。
「あれ?待って、そういえば…」
7:匿名:2016/12/12(月) 23:22 ↑途中送信してしまった。すみません。
「どうしたんだい?」
怪訝な目で見てくる乱歩を尻目に、人差し指を顎にあてる。
「江戸川乱歩は1965年に死んだはず…まさか…幽霊!?」
「キャー!!」
私は、とっさに十字架のペンダントを突きつけた。
「悪霊退散!悪霊退散!」
「幽霊扱いとは、酷いなあ」
そう言いながら傷付いた様子も見せず笑いながら私のペンダントを掲げる手をやんわりと包み込んだ。
「私は正真正銘の生きてる江戸川乱歩だよ」
確かに、彼の手は温かい。
人の温もりだ。
私は乱歩の顔をじっと見つめる。
「いやあ、年若いお嬢さんに手を握られながら見つめられると照れるねえ」
その乱歩の言葉で私は慌てて手を離した。
顔が段々と熱くなっていく。
出会ったばかりの不審者の事を見つめると言うシュールな空間に少し麻痺していたが、私は男の人に触るのは初めてだ。
「おや、顔が真っ赤だ。どうしたのかな?」
「見ないでください…………」
「はっはっは!からかってすまなかった!」
と乱歩を名乗る男は意外と陽気に笑った。私はむっとして、
「あなたは精神病院から抜け出してきたんですか。
自分のことを江戸川乱歩だなんて言って、ぶちこまれて……」
なんて言いながらも、本当の精神病者にこんなこときいても無駄だなと
思った。しかし、今日の朝新聞で、精神病患者が、逃げ出した、という記事
を読んだので、その可能性もないことはないと思う。
「それも面白い推理だけれど」と、謎の男は言った。「僕は過去からやって来た、
本物の江戸川乱歩だ。いやあ嬉しいね、僕の『小説』は、こんな未来でも
多くの人に読まれるみたいで」
「証明できますか?」
「できない。信じてもらうしかない」
その時突然、銃声がした。
「伏せて!」
と、乱歩(もう面倒くさいから、この人乱歩でいいや)は叫んだ。
わたしが伏せようとしていたら、その前に乱歩が強引にわたしを倒した。
乱歩はわたしを守るように、わたしの上にのしかかる格好になった。
近い………頭がくらくらする。
乱歩は撃たれた、
「う”っ……!負けるもん……か……死んでも君を守るぞ……」
それから乱歩は何度も何度も撃たれたが、わたしには一撃も当たらなかった。
「乱歩さん!」
乱歩の目から、生気が抜けて行く。それでも、わたしが身動きのとれないくらい、乱歩はわたしを
強く抱いている……。
警察の、サイレンの音が聞こえた。
すると、銃撃者は逃げてしまったのか、もう発砲されなくなった。
同時に、乱歩の力は抜けた。動かなくなった。
「乱歩さん……!あなたなんなんですか!突然過去からやってきて、突然わたしを守って……!
あなたが今死んだら、あなたのこれから書くはずだった小説とか、存在しなくなりますよ!
晩年に書いた、『三角館の殺人』とか、なくなりますよ!いいんですか!」
「……」
返事はない。わたしの記憶の中から、『三角館の殺人』が消えていく。いや、世界から消えて行くのだ。
目の前の江戸川乱歩の死体も消えて行く。わたしの服とか腕とかについた血も消えて行く。
そして、今日の江戸川乱歩との記憶も消えて行く。
気がつけば、わたしは海岸の上を歩いていた。
なぜか警察が来て、話かけてきた。
(なにかわたし悪いことしたかなあ)
「銃声がきこえて、駆けつけたんですが……」
ときょろきょろしている。
「銃声?そんなの聞こえませんでしたけど」
とわたしは答えた。
「おかしいなあ……幻聴?」
幻聴で仕事をしてはいけない。
警察は首をかしげながら、行ってしまった。
「ありすちゃん」
と後ろから声がした。
振り向くと変な男が立っていた。
どうしてわたしの名前を知ってるんだろう?
「あなたは……?」
ときくと、
「江戸川乱歩」
とその男は答えた。
「は?」
「過去からタイムマシンに乗ってやってきた」
「精神を病んでるお方ですか?」
わたしは今朝の新聞を思い出しながら訪ねた。
「いや、本当に江戸川乱歩」
「証拠は?」
「ない」
「……」
「伏せて!」
突然江戸川乱歩を名乗る男はわたしにだきついてきて、押し倒した。
近い……。頭がくらくらする。
謎の銃撃戦が始まった。江戸川乱歩はわたしを守ってたくさん撃たれた。
パトカーのサイレンの音がしてくると、銃声はしなくなった。
「乱歩さん!あなたが死んだら、『孤島の鬼』とか、どうなってしまうんですか!」
返事がない。
わたしは気がつくと、一人で海辺を歩いていた。
いつの間にか夕方だ。
「そうだ」
わたしはいいことを思い出した。図書カードを貰ったので、好きな本がなんでも買える。
「帰りに本屋さんにでも寄って行こう」
というわけで、いつも行く本屋さんに行くわたし。
「清涼院流水とか、舞城王太郎とかの、複雑なミステリもひととおり読んでみたし……ここはひとつ、
江戸川乱歩に帰ろうかな」
と思って、探してみたけど、見つからない。
わたしは店員にきいてみた。
「あの……江戸川乱歩はどこですか?」
「エドガワランポ?」店員はぽかんとした。「そんな作家いたっけな……」
江戸川乱歩も知らないとは!わたしはこの店員の教養のなさに驚いた。そんなんで、本屋さんで働いていけるのか。
「一応探してみます……」
店員は、パソコンでしばらく調べてから、言った。
「お嬢さん、からかっちゃいけない。江戸川乱歩なんて作家、存在しないよ。
検索してもでてこない」
いや、そっちこそからかっちゃいけない……。
しょうがないから、家に帰った。なによあの店員、気分悪いわ。二度とあの店はいかないわ。とか
思った。
帰ったら、すでに読んだ小説でも読み替えそうかな、と思っていたのに、本棚を見ると、江戸川乱歩の本が
一冊もなくなっている。
わたしは妹の部屋のドアを開けて
「ねえ、りん!わたしの本勝手にとったでしょ!」
と起こってみたけど、
「え?なんのこと?」
ときょとんとしている。考えてみれば、妹のりんは、マンガしか読まないやつだ。活字の本は、
二行読むだけでねむくなるっていってたっけ。
「だとすれば……」
わたしはぞっとした。泥棒!
「ママ!泥棒が入ったよ!警察に電話してよ!」
「ええ……?なにかなくなったの?」
「本が、本が……!」
「もう少し探してみなさい。どうせまたどこかに置いてあるんだから」
ということで、もう少し探してみたけど、やっぱりない。
わたしは無性に乱歩の小説が読みたくなったので、新品のノートを取り出して、
記憶をたどって文字起こしをすることにした。
「あれ?」わたしは、シャーペンを持ったまま、静止してしまった。
(江戸川乱歩って、何を書いた人だっけ……?)
一つも思い出せなかった。そこでスマホを出して、検索してみた。すると、
江戸川乱歩の記事はひとつもない。WIKIPEDIAにもない。
もしかして エドガー・アラン・ポー ですか?
と出た。いや、江戸川乱歩でお願いします。
わたしのノートは、江戸川乱歩という文字でぎっしり詰まっていた。
江戸川乱歩江戸川乱歩江戸川乱歩江戸川乱歩江戸川乱歩……と。
これっておかしくない?作者の名前だけはちゃんとわかるのに、
作品がひとつもないなんて!
作品の無い作者なんて、そんなの矛盾している!
江戸川乱歩、江戸川乱歩。
「江戸川乱歩!!!あなたは一体だれなのよ!?」
「江戸川乱歩……それは、僕のことだね」
わたしはいつのまにか、旅館の部屋みたいなところにワープしていた。
わたしの目の前には、江戸川乱歩が座っていた。原稿用紙に、小説みたいなのを
書いている。わたしはそれに向かいあって、正座していた。
そう!わたしは全てを思い出した!江戸川乱歩は「人間椅子」とか「二銭銅貨」とか「芋虫」とか
書いた人である。うん、うん。
って、どこよここ!人が突然瞬間移動することなんてありえるの?
「君、どうやった?」
「え?」
「トリックだよ、トリック」
「トリック?」
「うん。突然、僕の目の前に、魔法見たいに現れたじゃないか。どうやったんだい?
よければ教えてほしい。こんどの探偵小説のネタに使いたい」
乱歩のメガネが光った。
「わかりません。気がついたら、ここに居ました。わたしは、ついさっきまで、わたしの部屋で、
あなたのことを考えていたんですよ……って、あれれ?」
「ん?」
「どうして乱歩さん、生きてるんですか」
「はっはっは……また哲学的な質問だね。僕は、まあ、人間の異常心理を解き明かす、そのために小説書く、それが
生き甲斐でね」
「いや、そういうことじゃなくて……あ!」
「ん?」
「わたし、タイムトリップしている!」
「へえ」乱歩は愉快そうに笑った。「それは興味深い。H.G.ウェルズの小説のようだ。」
江戸川乱歩は、わたしの現象に、とても興味を持ったらしくて、しばらく一緒にいなさいと言ってくれた。
「じゃあ、もう遅いし寝るよ」
「え、寝るって」
わたしはどきんとした。
「はっはっは、何を妄想したかしらないけれど、安心したまえ、僕はこっちで寝るから。君は布団で寝なさい」
わたしが寝てる間に、変なことされないかと、寝たふりをしていたら、乱歩の方が先にいびきを書き始めた。
(……あの江戸川乱歩だ。あれも寝たふりかも知れないぞ……)
と警戒していたら、ついになにもなく、夜があけた。
「あああよくねた!」と、乱歩は気持ちよさそうに伸びをする。
おまけに、
「君もよく寝られたかい」
とか言い出した。
わたしは苦笑いしながら、
「え、ええ……」
曖昧に答えた私の顔を覗き込む乱歩。
「ふむ、隈が出来ているね。もしかして眠れなかったのかな?」
「…………おかげさまで」
少し不機嫌にそう言葉を溢すと乱歩は楽しそうに笑った。
「はは、それはそれは。悪いことをしたね」
眩しいぐらいの笑顔を浮かべる乱歩。とりあえず彼が生きているのだ、と実感して安心した。
それにしても、これはいったいどういう事なのだろうか。
未来から来たという江戸川乱歩。皆の記憶から消え去った江戸川乱歩。
何が起きているのかは全くわからなくて肩を落とす。
「……よし、ご飯にしようか」