ファーストキッスはレモン味!?

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1:たなか:2017/01/04(水) 21:09



ファーストキッスのお相手と結婚しなきゃいけないユギちゃんのお話。

2:もも◆Go:2017/01/05(木) 17:53

タイトルからして、面白そう!
更新、頑張って下さい(^∀^)

3:たなか:2017/01/11(水) 22:24

>>2
もも◆Go様
ありがとうございます!!!
頑張ります!!

4:たなか:2017/01/11(水) 22:24



不毛な恋を、してしまった。
どれほど願っても、どうしてもと神に縋ったとしても、きっと叶いはしない無謀な恋を。


「おいパツキン!酒もってこい酒!!」

あ、もう夕飯食べ始めてるんだ_____玄関の扉を開けた途端に共有スペースから聞こえてきた黒曜の怒鳴り声、そしてみんなの楽しそうな笑い声に、びっくりすると共に思わず肩を落としてしまう。
あーあ。今日もあの輪の中には入れない、か。

_____ボロボロの“あの子”がここの扉を叩いたあの嵐の日から、もう半年が過ぎていた。
私の居場所は、もうここにはないのかもしれなかった。

「ただいま……」

どうせ誰にも聞かれることはないのに。言った直後に自分で思ってちょっと凹んでしまう。

気付かれないようにそーっと敷居を跨ぎ、自室へと繋がる階段を急い駆け上がる。……本当は“気付かれないため”という建前のもとこれ以上彼らと笑い合う“あの子”の姿を見たくないだけの醜い私だって、ここにいるのだが。

(もう、今日は早く寝よう)

疲れているのだきっと。風呂は明日にして、取り敢えず今日は睡眠を取らねばーーと、扉を閉める直前。

「エリナぁ、おかわりー!」

耳に届いたアザミの声に、思わず足を止めてしまう。

『ユギ、おかわり!』

なんて、以前はよく言われたっけか。
夕飯の度に毎回毎回おかわりをせびるアザミに、お腹壊すよ!なんて言いながら大盛りの白米を差し出す。太陽のように顔を綻ばせて見せるアザミが可愛くて可愛くて、ついついあげすぎてしまうのは私の悪いところ。

……でも、今はもうそんなことはないのだ。アザミがあの向日葵のような笑顔を見せるのは、私ではなく“あの子”なのだから。

「やめなよ黒曜にアザミ、エリナだって疲れてるんだ……エリナ、ここは俺がやっとくから」
「うーー……お前らうるさい……」
「そんな……ミモザさんの方がお疲れですのに。それと外郎さん布団で寝てください…」
「エリナ、俺も手伝うから」

「……」

これ以上彼らの話を聞いていられなかった私は、部屋に駆け込んですぐにベッドにうずくまって枕に顔を埋めた。

そう。私がいなくたって、黒曜は口が悪くて、アザミは馬鹿で。紳士なミモザと面倒臭がりな外郎、そして優しい桐。
つい最近まであの中には私もいたのに……今となってはまるで空気のような扱いだ。いや、空気の方がまだマシか。“あの子”だけが彼らにとって必要なものとなった今、私は彼らの生命活動を助ける酸素なんかよりもずっとずっとちっぽけな存在だった。

嫉妬するのはカッコ悪くて、でも1人でいることも辛くて。

(このまま、彼らは私のことを忘れ去っていってしまうのだろうか…)

暗がりにある自分の指先が、徐々に霞んでいく。

彼らはきっと、“あの子”だけを見つめて、“あの子”だけを愛して。
愛を知らなかった彼女が本当に幸せになる頃には、彼らの中に“ユギ”という存在はもうないのだろう。

笑い合う“あの子”と彼ら。周囲にも祝福された、幸せな6人。

「……一番いい終わり方のはず、なんだけどなぁ……」

なぜだろう。虚しさと悔しさだけが胸を占めるのは。

……そんな安易に思い浮かんでしまう未来を考えて、私は今日も1人涙を零すのだ。


「神様……」

5:たなか:2017/01/14(土) 17:47


「非常に涙を誘われますね。10点」
「前回に引き続き質の良い切なさ!10点!」
「桐くん総受けが見たい10点」

3番目の審査員が点数を言い終わるか言い終わらないかのうちに、会場中からは大きな歓声が湧き上がった。

『な、な、なんと!!前回同様審査員全員が文句なしの10点だーーーーッ!!
第38回“見ていて心が痛くなってくる当て馬決定戦”優勝者は、“内股のユギ”に決定いたしましたーー!!!』
「………!うそ…っ!」

夢にまで見た、二連覇達成。
それを成し遂げたという実感が湧かなくて呆然とする私の背後から、高いヒール特有のあの音が聞こえてきた。
振り向けば、向こう側から前々回優勝者で過去最多となる五連覇を成し遂げたこともあるレジェンド“当たり馬のミカ”が堂々とした立ち振る舞いでこちらへ向かってきていた。
よく見れば彼女の頬は悠然とした笑みを湛えていたが、その中には確かに悔しさも滲んでいた。当たり前だ。彼女の得点は私とたった一点差の29点。おそらくBL要素が少し足りなかったのだろう。“鋼の腐人”こと腐女子・早川の前で惜しくも一点を取り逃がしたのだった。

そんな彼女が、私の目の前までやってきて足を止めた。
恐る恐る顔を覗き見れば、目があってその妖艶な美貌がますます悔しげに歪められた。

「……この度は優勝おめでとう、“内股のユギ”。……まさか、一点差とはね」
「……!!」

私だって、まだ信じられないのだ。
今回の彼女の作品は、これまでの彼女の情熱的過ぎるほどに激しい愛する人への思いを表したものとは大きく違い、夢見る乙女のような可憐な印象を与えるものだった。
私もそのギャップに、思わず自分の発表も忘れて魅入ってしまっていたほどだし、会場も、あの“当たり馬のミカ”が再びトップを奪還するか、それとも新星のルーキーこと私、“内股のユギ”が彼女を抑え二連覇を成すか、固唾を飲んで見守っていたのだ。

「でも……」
「分かってるわ」

「あなたのものだって素晴らしかったわ」そう繋ごうとした私の言葉を遮って、“当たり馬のミカ”は言う。

「今回こそは、パッと出だと思っていたあなたに打ち勝つことができると……あなたの力はあの時だけのものだと証明できるほどに素晴らしいものを用意したつもりだったわ。
でも、私は鋼の腐人を抑えることができなかった。…そして、あなたはそれを成し遂げることができた。あなたの力は、本物だった……!!
………完敗よ。“内股のユギ”………!!」
「………!!」

“当たり馬のミカ”に差し出された右手をふらりと取ったその時に漸く、遅れて二連覇達成の実感が湧いてきた。
ハッとして彼女の顔を伺うと、今はどこか吹っ切れたような、然し真っ直ぐな瞳がそこにはあった。

「ありがとう……“当たり馬のミカ”!」

そうして私たちは、強く強く手を握り合った。
会場中から巻き起こった拍手は、いつまでもいつまでも止むことはなかった………

6:たなか:2017/01/17(火) 22:13




この世界には、魔物なるものが存在する。

その魔物達は人間達が住まう地上の遥か下、別称ネクロポリスとも呼ばれる層に生息しているという。
魔物は人間たちに害を及ぼすとされているが、ネクロポリスから地上に至るまでには幾重にも重なる結界が貼ってあるため、魔物達は滅多に人間達の元に姿を表すことはない。
しかし、結界とは月日が経つごとに強度が弱まっていくもの。なので、ごく稀にその結界を一層、一層と破っていく強者もいるという。
そんな魔物を討伐するのが彼ら、ホスリア討伐隊、通称ホスリアの使命だ。

ホスリアには春波、夏綾、囁秋、吹冬、創英の5つの部隊があり、中でも創英は春夏秋冬(春波、夏綾、囁秋、吹冬をまとめてこういう)の内から精鋭を選りすぐった面子だけでできた部隊だ。
ホスリアへの入隊というだけでも非常に難しいことなのに、なんとうちの幼馴染5人は全員ホスリアの隊員に所属、中でも桐は史上最年少で創英部隊に所属している。
ちなみに他の4人はミモザが春波部隊、アザミが夏綾部隊、外郎が囁秋部隊、黒曜が吹冬部隊だ。

それから申し遅れましたが、私の名前はユギ。

今まで一緒に過ごしてきたみんなの手伝いがしたくて、ホスリアのみんなが過ごす寮に住み込みで朝昼晩の食事作りや生活の補助を行うサポート班に所属している。
これでも試験内容は結構難しかったし、入隊後もサポート班の6人いる先輩達にはビシバシしごかれた。
まだまだ入って3年の若造だけど、気持ちは先輩達に負けないくらいあるつもり!!

「ユギ!よそ見しない………ってほら手ぇ切ってるじゃん!!このバカ!!」
「うっ…すみません」

………なんて考えてる側から鈴蘭さんからの厳しい叱咤と絆創膏が飛ぶ。いたたた。結構ざっくりだぞこれ。

金曜日の今日は隊員全員で集まって夕食を摂る日なので、私たちサポート班の7人+エリナちゃんの計8人は今日はせわしなく夕食の支度をしていた。

基本的にホスリアは年齢ごとに住む寮を分けているので、普段は私、桐、ミモザ、アザミ、外郎、黒曜、エリナちゃんの7人で寮生活を送っている。
エリナちゃんが来る前は、入隊後も入隊前と変わらない6人で毎日楽しく過ごしてきた。特に、二親のいない私たちはお互いが心の拠り所であり、それぞれみんなを家族のように思っていた。あ、別にエリナちゃんが来たから楽しくなくなったってわけじゃないよ?むしろ男所帯に華ができて嬉しいくらい。(私は女として見られてなかった。)

「ユギちゃん!!」
「?………エリナちゃん?」

向こう側からパタパタと駆けてくる足音が聞こえると思ったら、当のエリナちゃんだった。

「どうしたの?怪我?」
「うん。ちょっと切っちゃっただけ……全然平気!」

彼女は、どうやら休憩中だったようだ。
心配かけちゃいけないと察し、私は怪我をした左手を隠す。しかし、目ざといエリナちゃんにはすぐに見つけられてしまった。
肌を伝う血を見て、エリナちゃんが大袈裟に驚く。

「酷い怪我!どこが平気よ!」
「うぬぬ………」

私がサポート班にしては致命的な程に傷の手当てが下手くそなのは周知の事実。それは、絆創膏一つにしてもそうだった。いつもいつも傷の所にガーゼの部分を当てられないのだ。
観念した私は、エリナちゃんに左手を差し出した。

7:たなか:2017/01/17(火) 22:15


ある日、外郎の属する囁秋部隊が任務先から連れ帰ったボロボロの少女がこのエリナちゃん。
珍しい金色の髪を持つ美しい少女の身に何があったのか、詳しい事情は何も聞かせてもらえなかったけれど、年齢が近いということでひとまずは私達の寮に身を預けることとなった。

と、そこでだ。
彼女が来て一週間もたたないうちに、当然のことだが可愛くて優しくて気立ても良い彼女に惚れる隊員は後を絶たなかった。
そして私の幼馴染達も例に漏れず、1ヶ月も経つ頃にはすっかり彼女にぞっこんだった。
私は成長する子供を見守る親のような気持ちがある反面、すこーしばかり複雑。息子を嫁に取られて嫁いびりする姑って、こんな気持ちなのかな?

(……それにしても…)

すっっっっっごい美人だわこの子。やばい、すっっっっっごい美人だわ。私も惚れるわ。

薄ピンクに色づいた頬を縁取る、天使の輪っかができた美しい金糸のような髪。白い肌を一層引き立てる形の良い桃色の唇。
髪同様金色の長い睫毛に、スカイブルーの空を彷彿とさせる大きなおめめ!!
いやあダメだよこれ。殺人級な可愛さだよ〜〜!!

エリナちゃんは女性にしては結構背が高くて、目測だけど170はあると思う。しかしそれは短所ではなく、むしろ手足がすらっと長くて羨ましいし、我が幼馴染達と比べたら高すぎず低すぎずなので良い塩梅だ。
そんなモデル体型のエリナちゃんは、どんな洋服を着せても完璧に似合う。現に、見よ。私のひよっこ感丸出しの割烹着姿に対峙するエリナちゃんの圧倒的女将さん感。全く、同じ服着てるとは思えねえぜ!!

……なんてぼーっと考え事をしていた私の血の滴る左手が、ふいにすっと捉えられた。

見ればそれはエリナちゃんの華奢な腕で、ハッとして見惚れていると……エリナちゃんの唇が、ぱくっと食んだ。私の左手を。私の、さっきまでジャガイモ握ってた左手を。

「ひゃっ……ってなにしてんの!汚いよ!」
「えー……でも、舐めときゃ治るかな〜って思って」
「アホ!!可愛いけどアホの子だよあんた!!」

なんかそういう天然なとこは前からあったけどさ〜〜〜!なんだよ天然鈍感無自覚美少女夢主の具現化かよとか思ったけどさ〜〜〜〜!

「エリナちゃんあんた、こういうの知らないおじさんとかにやっちゃダメよ〜?」
「らいひょーふ。ゆひひゃんにひかひゃららいから」
「ん〜??」

もう舐められすぎて皮ふやけてそう……ちょうどそう思った時にすっと手が抜かれて、近くにあった桶で手をゆすいでもらった。
タオルで優しく拭って見れば、もう血は止まっていた。エリナちゃんに複雑な思いのまま「ありがとねー」と告げると、嬉しそうにはにかまれた。う〜ん、もっと別の方法を探して欲しかったけどまあ良いや!

絆創膏を貼ってふいに後ろを見た私が、幼馴染達から送られるブリザードの如き冷視線で背筋を凍らせるのはあと10秒後くらいの話。


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