ここは明確スイーツ研究部!

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1:モンブラン:2017/01/27(金) 22:06

文才とかないですけど、
見てくださったら嬉しいです。

401: 薫+*Mio+*◆v.:2017/09/16(土) 14:37

真美ちゃんのお母さん!
大丈夫?
それと、400おめでとう!

402:岬◆8Q:2017/09/16(土) 15:44

薫ちゃんありがとう!
どれもこれもみんなのおかげ。
皆さん、本当にありがとう。
コメントサンキューです!

403:岬◆8Q:2017/09/16(土) 19:30

9.コウスケくん
ママの部屋に藤本先生と行く。
笑いながらね。
おばあちゃんはいなかったけど、パパは来ていた。
出張先から飛んできたんだ。

「真美ちゃん?お母さんね、あなたの名前をずっと呼んでたのよ」

看護師さんがかがむ。
ママは寝ているけど、すごく汗をかいていて、苦しそうな顔。

「ありがとうございます」

看護師さんは部屋を出ていき、パパとわたしと藤本先生だけになった。
何話したらいいんだろ。
あたふたしていると、パパと藤本先生が話し始めた。

「真美は、ママの手でも握ってあげなさい」

パパがママの手を布団から出す。
わたしは、坂宮に握られたように、優しく握った。
ママ、お願い。
赤ちゃんを産んで!

「あぁ、遅れてごめんなさい」

「お母さん!」

「おばあちゃん!」

パパのお母さんじゃないよ。
ママのお母さん。
だけど、パパはおばあちゃんのことをお母さんって呼ぶんだ。
そうやって呼ぶ人多いらしいよね。

「真美ちゃん、優樹さん、すみませんでした」

おばあちゃんは、軽く藤本先生にあいさつして、布団をめくった。
わたしのとなりに座り、ママの手を握った。

「ちょっと行くね」

わたしは、部屋を出た。
すると。

「おねえちゃん、おかあさんがいなくなっちゃったの〜」

小さな男の子が、制服のスカートの裾を引っ張った。
お母さんがいないの!?
迷子かな。

「かんごしさんには言わないで!おかあさんにおこられるから〜」

困ったな〜。
看護師さんに言わずに捜す。
…って、お母さんに怒られる理由って看護師さんに言うから!?
どういうことだろう。
迷惑かけたからとかかな。

「僕、俣野コウスケ〜」

俣野?
初めの文字が『コ』?
ドクンとする。
コヨもコンさんも、初めの文字は『コ』だから。

「コウスケくん、おねえちゃんはいるかな?」

「いるよ!コヨおねえちゃんと、コアおねえちゃん。おねえちゃんと同じお洋服だよ〜」

やっぱりコヨだ!
コアさんは知らないけど。
ともかく。

「おねえちゃんは、真美。コヨおねえちゃんと仲良しだよ」

「えっ?コヨおねえちゃんと仲良しのおともだちなの?」

「うん、おともだち」

コウスケくんは、にっこり笑って上を向いた。
考えてる感じ。
コヨのこと思い出してるのかな。

「おかあさんとはどこではぐれたのかな?」

「ここ〜。僕がトイレ行ったらいなかったの〜」

コヨのお母さん、コウスケくんのこと見ててあげてねっ!
そんなことも言えず、立ち尽くす。
どうしよっかな〜。

「あ、僕、おねえちゃんと遊びたい。おかあさんが来るまで遊ぼ〜」

コウスケくんに連れられて、保育園くらいの子が遊ぶようなスペースへ移動した。

404:岬◆8Q:2017/09/16(土) 19:42

10.コンさんの秘密
コウスケくんは、思ったより元気っ子だった。
休憩せずに、ヒーローごっこをして遊ぶから。
わたしは悪者でね。
コウスケくんが剣でやつけるの。

「ごめんね〜、コウスケくん。おねえちゃん疲れちゃった。他のことやらない?」

「え〜?コヨおねえちゃんはずっとやってくれるのに〜」

さすがコヨ。
運動神経抜群だったからね。
体育祭、無我夢中に適当に走ったら一位のわたしとは違う。
たまたまみんなが運動苦手なだけだったし。

「コヨおねえちゃんより体力なくて」

「じゃあ体力付けよ〜」

そういうこと〜?
わたしはコウスケくんに引っ張られて、悪者になる。
そう言えば、どうしてコウスケくんは病院にいるんだろ。
ふと思って聞いてみる。
すると。

「従姉妹のおねえちゃんが病気だから来たんだ〜。知ってる?コンちゃん」

「知ってるよ、コンさん!」

思わず身を乗り出す。
すると、コウスケくんに身を沈められた。

「後から〜。まずはヒーローごっこ!おねえちゃんいいでしょ〜?」

「いいよ」

「やったぁ〜!」

コウスケくんはぴょんぴょん跳び跳ねながら剣を構える。
わたし、お絵描きが好きだったって聞いたな〜。
コウスケくんは好きかな?
遺伝子とかで、コヨは美術苦手だから好きじゃないかも。
わたしは、クスッっと笑って構えた。

「コウスケくんいいよ!」

すると、コウスケくんは体当たり。
わあっ。
思わず寝転がり、コウスケくんが剣でバシバシ叩いた。
痛い、痛いよ〜。
コヨすごいな、耐えれて。

「おねえちゃん立って〜」

立とうとしても。
ち、力が入らない…!
どういうこと!?
コウスケくんがブスッっとしている。

「ごめんねコウスケくん」

た、立てないっ!
すると。

「コウスケ!」

「おかあさん〜」

あ、コウスケくんのお母さんが来た。
あの人がコヨのお母さん。
もしかしたら、コヨはお母さんの遺伝子かも。
顔そっくりだし。

「迷子でした。気をつけて見てあげてください」

「ありがとうございます」

わたしは、苦笑いしながら足をさすった。

405:ルナ◆3es:2017/09/16(土) 19:45

もう少しで400だね……
頑張ってね………

406:岬◆8Q:2017/09/16(土) 19:50

11.優しいお母さん
「痛いっ!」

コウスケくんたちが振り返った。
まだスペースで足を押さえている。
足が動かない。

「おかあさん、おねえちゃん、全然動けなくなったんだよ〜」

「えっ、大丈夫ですかっ!?」

コウスケくんのお母さんが駆け寄ってくる。
足をパッっと見て、カバンから1000円札を取りだし、言った。

「ヒーローごっこですよね。コウスケが出すぎた真似を。すみません。これで病院で治してもらってください。本当にすみません!」

やっぱり、コヨの遺伝はお母さんじゃないかも。
すごく優しいもん。
コヨはちょっと意地っ張りだからね。

「あの、いいですよ」

「いいえ、どうぞ!」

わたしは渋々受け取って、お母さんを引き留める。
もうそろそろ行きたいよね。
コンさんのところ。

「わたしは、お宅のコヨさんと仲良くしている多田本真美です」

「あなたが真美さん!?コヨが楽しそうに真美さんの話をしているのよ」

コヨ…。
コウスケくんのお母さんは、「真美さんは本当に素晴らしい子ね」と言い、コウスケくんと帰っていった。

「あの、すみません」

看護師さんを呼び止め、足を見せる。
1000円札も出してね。
ごめんなさい、コウスケくんのお母さん。
使わせていただきます。

「大変ね。おんぶするわ」

看護師さんが治療室へ運んでくれて、包帯をグルグル巻いた。
コウスケくんは怒られないけど、わたしが怒られるかも〜。
わたしは、怯えながらおんぶしてもらってママの部屋へ行った。

407:岬◆8Q:2017/09/16(土) 19:51

ルナ、ありがとう!
さっき400行けましたっ!
本当にコメントしてくれてありがとう。ガルトの件ごめんなさい。

408:ルナ◆3es:2017/09/16(土) 19:52

ごめん。もう400行ってたね。
おめでとう。

409:ルナ◆3es:2017/09/16(土) 19:52

>>407
良いよ。でも、たまには来てね。

410:岬◆8Q:2017/09/16(土) 21:05

ルナ、ありがとう!
行けるときは行けるよ!
本当にごめんなさい。

411:岬◆8Q:2017/09/22(金) 21:39

12.コン先輩の部屋へ
やっぱりと思ったけど、おばあちゃんにはこっぴどく怒られた。
根に見えてたけど。

「菜和が大変なの分かるでしょ。真美ちゃんまでケガして〜」

は〜い、分かってるって〜。
ケガしたら、お世話じゃないけど、めんどくさいことになるってことだよね。
知ってるんだから。

「すみません、看護師さん」

呼び止めて、コンさんのことについて聞いてみる。
先輩だし、コンさんじゃなくて、コン先輩、かな。

「病気の女の子よ。病名までは言えないわ。個人情報だから」

コウスケくんの言った通り、病気なんだ。
だけど明スイ続けてるんだね。
スイーツを好きっていう気持ちがすごく伝わってくる。
ちゃんと彦宮学園に通っていること、きっと、ずっと通いたいんだろうな。
楽しいこと、見てたいと思うし。

「行ってもいいですか」

今はちょうど起きているらしく、看護師さんに押してもらい、コン先輩の部屋へ向かった。

「失礼します」

「どうぞ」

コン先輩は、いつにもましてぐったりしていて、かわいそうだった。
コヨも悲しいんだろうな。

「真美ちゃん?」

わぁー、名前で呼んでくれた。
コン先輩に笑いかけ、にっこり。
クスッっと笑われて、椅子を引っ張り、座るよううながされる。

「わざわざありがとう。真美ちゃん、車椅子なの?」

「いえ、先程、コウスケくんと遊んでいてケガしたもので」

コン先輩は、キッっと目を見据えた。

412:岬◆8Q:2017/09/23(土) 07:24

13.俣野家の秘密
コウスケくんと、何かある!
急に眉が動いたコン先輩。

「コウスケくん、従兄弟ですよね」

「本当の、従兄弟ではないけど」

…えっ?
コウスケくんも?
コヨは知ってるけど、まさか、コウスケくんまで。

「コヨとも無関係だったのよ。コウスケは、事故で両親を失い、養護施設へ行ったの。それで、叔母さんがコヨと一緒に引き取ったの」

コウスケくん、小さい時から、つらい思いしてたんだね。
いきなり知らない子たちを迎えるコン先輩。
認めたくなかったんだろうな、自分の従兄弟だなんて。

「コヨ、隅木田くんの従兄弟で、誇りらしいのよ。裏切りたくないって」

露島くんと、明スイやるの、ためらってるのかも。
それなら、わたしがやめさせなきゃ。

「お話ありがとうございました。必ずコヨがしたいことさせてあげます。お大事に」

「待って!!」

部屋を出ようとすると、コン先輩が声を上げた。
えっ?
コン先輩に渡された手紙。
コヨへの手紙だった。

413:岬◆8Q:2017/09/24(日) 16:35

14.エプロン作り!
ここは家庭科室。
カフェのエプロン作ってるの。
わたしたちは接客だから、メイドみたいなエプロン着るの。
実柚乃ちゃんをはじめ、料理組は、家にあるエプロン。
メニューがおおまかに決まったところで、実柚乃ちゃんが来てくれた。
さっすがだよね。
料理だけじゃなくて、お裁縫まで一流なんだから。
ミシンなんて、先が見えないくらい早いんだもん。

「あ〜、ダメダメ。コヨちゃんの左手危ないでしょ〜!」

実柚乃ちゃんがミシンを止めて声を上げる。
コヨ、初香ちゃんにはちょっと冷たいけど、実柚乃ちゃんだと笑顔。
どういうことかな?

「ゆっくりここまで縫ってごらん」

「実柚乃ちゃ〜ん!」

すぐ、向こうで初香ちゃんとさやかちゃんが呼ぶ。
コヨは、思いっきりにらむっ!
思わず身がすくむ…。

「さや、ミシン苦手〜」

「実柚乃ちゃん助けて〜!」

コヨは、ミシンをハイスピードにして縫った。
ぐちゃぐちゃ、汚いよー!

「真美、これ初香にあげてきて」

「ダメでしょ、これじゃ。ちゃんと、一着作ってみない?」

コヨは、ムスッっとしながら初香ちゃんたちを見る。
しょうがないなあ、コヨ。
リッパーで糸を取って、0からやり直す。
これは、コヨが着るんだよっ!

「ありがとう実柚乃ちゃん!初香ひとりでも出来そう」

「いやいや〜、実柚乃も、力になれて嬉しいな〜!」

わたしは、実柚乃ちゃんたちを見ながらコヨに差し出した。

「だいたい縫ったから、続きからは、コヨが縫うんだよ」

「は〜〜〜い」

もーう。
もっとやる気出してよーーーっ!

414:岬◆8Q:2017/09/24(日) 16:47

15.文化祭開催
「ただいまから、第46回、私立彦宮学園の文化祭を開催致します!良い思い出を作りましょう!」

わたしが放送を入れて、文化祭は始まった。
放送室から6年1組へ移動する時も、いろんな教室から呼び込まれる。
そのたびに断っててさ。
本当に悪いよ〜。

「あ、真美ちゃんよろしくね!」

午後から仕事の七井さんがピース。
真美ちゃんって呼んでくれるのがすごく嬉しい。
七井さんにし返して、6年1組に入った。
家庭科室がとなりで助かったよ〜。
エプロンを家庭科室へ持っていき、準備室で着替える。

「実柚乃ちゃんたちよろしく!」

「任せといて!あとから試食品出すつもりだから」

おお〜!
こっちも盛り上がってるね。

「真美ちゃん早く!」

「今行く!」

教室へ向かうと、すぐワッフルふたつが来た。
ええっと、5番机だね。

「お待たせいたしました!ワッフルになります。ではお楽しみください」

料理を、家庭科室から運んでくれる樹くんにもらう。
次はソフトクリーム。

「お待たせいたしました!ソフトクリームです!お楽しみください」

あ〜、みんなにっこり笑顔じゃん。
わたしも笑っていると、樹くんに呼ばれて家庭科室へ。

「試食品!外で真美ちゃんが呼び込んで!」

実柚乃ちゃんに渡されたワッフル…。
美味しそうだけど、食べるのはまだ。
任された責任を背負い、家庭科室を出た。

「ね〜、カフェだって。混んでる。向こうの5年2組の注文の多い料理店にする?」

カップルが悩んでいる。
一般の人も来てるじゃん!

「ここのワッフル美味しいですよ!一口いかがですか?」

カップルは食べた途端、すぐ列に並んでくれた。
よーし、呼び込むよっ!

415:岬◆8Q:2017/09/24(日) 16:59

16.やけど事件!
そろそろ教室に戻ってもいいかな。
わたしは、紙皿をゴミ箱に捨て、教室に戻った。

「ちょっと運んでくれる?」

陽茉理ちゃんにパンケーキを渡されて、お客様の元へ運ぶ。
急にどうしたのかな。

「お待たせいたしました。ふわっふわのパンケーキです。お楽しみくださいませ」

あれ、莉保子ちゃん。
わたしに気付いて、莉保子ちゃんはお辞儀する。

「カワイイエプロンですね。カッコいいです、真美先輩」

「いえいえ」

莉保子ちゃんは、パンケーキにこぼれ落ちるくらいのハチミツをかける。
ポトポト音がしそう。

「じゃあいただきますね」

わたしはその場を離れ、陽茉理ちゃんを探す。
大変なことなら何とかしたいし。

「あっ、真美ちゃん」

エリちゃんに呼ばれて、家庭科室へ行く。
すると、手を冷やす実柚乃ちゃん。
注文カードがたくさん貼られた紙。

「どうしたのっ?」

「実は、実柚乃やけどして。明スイの真美ちゃんなら代わってくれると…」

なるほどね。
わたしがお客様が食べるスイーツを。
よーし、任せて!

「エリちゃんは保健室へ連れてって。さあ、作るよ!」

陽茉理ちゃんのことは、ちょっと置いといて、わたしの実力見せてやる!

416:岬◆8Q:2017/09/24(日) 20:29

17.救世主あらわる
大量の注文カードを全て作り、ちょっと休憩。
午後からは、実柚乃ちゃんの代わり、七井さんが入ってくれる。
なんってったって、実柚乃ちゃんに続いて2位だし。

「ふみちゃん、これ」

接客担当の晴奈ちゃんが注文カードを5枚持ってくる。
陽茉理ちゃん大丈夫かな。
見てないけど。

「まーちゃんどうする?」

みんながわたしの指示を待つ。
ワッフルが多いね。
なら、わたしとエリちゃんがワッフル担当。
ソフトクリームが涼太くん。
ふーちゃんは、サンドイッチ。
それを言うと、みんな散って作り始めた。

「おい、樹。これ」

涼太くんが、素早く。
でもていねいにソフトクリームを作っていく。
コーンやカップ様々。

「次は…」

「サンドイッチお願い」

涼太くんがふーちゃんの隣に立ち、どんどん野菜をサンド。
裏返す時になったらササッっと。
ワッフルを裏返して、チョコレートソースをたっぷりかける。

「晴奈ちゃんよろしく!」

チョコレートワッフルがひとつ終わったから、注文カードをゴミ箱へ。
これでも、まだまだたまる注文カード…って量多っ!

「樹くん、接客グループからひとり呼んできて」

呼ばれてきたのはコヨ。
コヨも混じって、スイーツ作り。
さすがだけど、スピード早い。
ミシンとは大違い。
めちゃめちゃ美味しそうだし。

「桜庭、これ」

コヨが樹くんに渡すと、また次々にスイーツを完成させてゆく。
ボサッっとしていると…。

「真美ちゃん集中」

あ、はい!
エリちゃんに注意されて、唾を呑み込む。
コヨに負けないくらい頑張るぞ!
わたしは、またワッフルを裏返した。

417:岬◆8Q:2017/09/24(日) 20:39

18.初美先輩
「真美ちゃん、終わり!」

初香ちゃんに呼ばれて、わたしは制服に着替えた。
ここからは自由時間。
初等部から高等部まで回れる。
ご飯もどこかで済ませなきゃ。

「一緒に回ろ!」

コヨはまだ残るから、4人でいろいろ回ることになった。
まずは昼ごはん。
初香ちゃんオススメ店へ行く。
中等部の…2年7組!?
『お笑いカフェ』。
ここもカフェなんだ。
並んでおらず、普通に入れた。

「さあさあ、お客様やってきました」

おっ、お笑いって本当じゃん。
ご飯を食べながら爆笑する人たち。
面白そうじゃん!

「ここ、お兄ちゃんがやってて」

初香ちゃんは椅子に座り、みんな分のスパゲッティを注文した。
わたしが注目した生徒は、あの子。
楽しくなさそうに立っている。

「初香ちゃん、あの子…」

「ああ、初香のお姉ちゃん。双子だから。でもタイプが違う。初美っていうの」

初美先輩か〜。
ボサッっと立っていて、やる気がなさそうな感じ。

「お姉ちゃん、ダメだよね〜」

何とも言えないけど、何かイヤなことでもあるのかな。
初等部児童会長だけど、ほつんとけないかも。
気づけば、わたしは屋上にいた。

418:岬◆8Q:2017/09/24(日) 20:47

19.関係ない
「初めまして。初香ちゃんと仲良くしてます。多田本です」

初美先輩はコクンとうなずいた。
名を名乗らないタイプね。
わたしは、穏やかな感じで聞いた。

「イヤなことありませんか?初美先輩ですよね」

「別に関係ないでしょ」

初美先輩はムッっとして言い返す。
でもひるまない。
わたしも負けじと言い返す。

「初美先輩がイヤなことあったら、初等部ですけど、児童会長であるわたしが悩みます」

初美先輩は一瞬ひるんだ。
そして、何事もなかったかのように少し笑った。

「北山先輩とでも呼んで。名前を馴れ馴れしく呼ばないで」

…。
北山先輩は、わたしをギッっとにらんで屋上のドアに手をかける。

「待ってください!」

わたしは北山先輩の手をとり、目を見開いて語りかけた。

「そのまま学校にきてほしくないんです。楽しいところであってほしい。だから…!」

「ほっといて。初香が何とか…関係ないものは関係ない」

…、どうして。
北山先輩が出ていった後の風は、いつにも増して寒く感じた。

419:岬◆8Q:2017/10/02(月) 12:49

20.お化け屋敷
わたし、初香ちゃん、さやかちゃん、料理担当だけど、休憩で特別にエリちゃんの4人が来たところ。
ここは、中等部3年1組。
お化け屋敷です!

「いってらっしゃ〜い!」

受付の先輩に見送られてお化け屋敷へ入る。
エリちゃんと手を繋いで、後ろには初香ちゃんとさやかちゃん。

「真美ちゃん怖いよ〜」

「大丈夫、わたしも怖いけど」

エリちゃんと背中をさすりながら歩くこと30秒。
って言っても、進んだのは1歩。
なのに!

「ヒエ〜!何よ〜う」

エリちゃんったら、何もないところで叫ばないでよ〜。
後ろのさやかちゃんは爆笑。
心が緩んだ瞬間!

「ギョエーーーーー!」

お化け出たあ〜!
追いかけてくるし、リアル過ぎるよ〜!

「エリちゃんと真美ちゃん早く!」

初香ちゃんが意外にも声を上げる。
みんなで走り抜けながら、またお化けが現れ。
追いかけられを繰り返して、光がだんだん大きくなり…!

「出れたあ〜!」

ハイタッチしながらお金を払う。
めちゃめちゃリアルだった!
中等部まで行くと、こんなに迫力あるんだね。
高等部だったら、もっと迫力ありそうだな。

「絵理乃さ、またすぐ戻らないといけないから、高等部行っていい?」

露島先輩がいるじゃん。
コン先輩も。
わたしたちは、高等部へ繋がる廊下を走った。

420:岬◆8Q:2017/10/02(月) 13:37

21.コヨに対する気持ち
高等部のバッヂを胸に付けている先輩は、歩き方が大人。
中等部もそこそこだったけど。
初等部はやっぱり子供。
大人びた先輩が多い廊下に、一際子供っぽい子。
初等部1年生のバッヂだ。
注意しようとも思ったけど、文化祭だから、やっぱり楽しみたいよね!

「どこ行く?」

さやかちゃんが指差した教室は、3年5組。
ここには、さやかちゃんのお兄ちゃんがいるらしい。
露島先輩とコン先輩もいるとか。

「何のお店かと言うと。私立彦宮学園お土産屋!」

へ〜、面白そう。
教室に入って、お土産物を見る。
先輩の手作りじゃん。
わたしは、みんなオソロイのストラップを買って、もうふたつ色違いのストラップを買った。
コヨとオソロイなの。

「それ同じのふたつもいる?」

さやかちゃんがストラップを見ながら尋ねる。

「コヨにお土産。オソロイで買って」

「あの子に買ったの〜?」

そうだった、さやかちゃんたちは、コヨに嫌がらせされてるんだ。
初香ちゃんとエリちゃんは、優しいから表に出さないけど。

「コヨちゃんって、真美ちゃんにだけ仲良くするよね。意味分かんない」

やや怒り気味で言いながら、エリちゃんと別れた。

421:岬◆8Q:2017/10/02(月) 14:16

22.演劇会スタート
さあ、演劇会だ!
文化祭も終わって、多目的ホールで初等部は演劇会が始まる。
中等部は、グラウンドにてフォークダンス。
高等部は、体育館にて蓑島菜奈ちゃんのライブが開催される。
高等部に入れば文化祭の後に必ずライブに参加出来るの。
蓑島菜奈ちゃんっていうのは、元彦宮学園生徒で、歌手になった子。
東大卒なの。

「真美、こっちこっち」

コヨに手招きされて、多目的ホールの裏側へ移動する。
6年1組から演技がスタート。
物語はオリジナルで、『6年1組仲良し物語』という。
わたしと実柚乃ちゃんが台本を書いたの。

「コヨは、転校してきたから、転校するまでの物語の間はナレーターだったよね」

 プーーープーーープーーー

「第一回、6年1組仲良し物語。6年1組による、友達関係の物語です。では、開幕です!」

アナウンスが入った途端、となりにいたナレーターのコヨが舞台に出た。

「初めまして。わたしの名前は俣野コヨです。こちらに転校してきました。来たときから、仲良しクラスだなと思い、それを演技します。どうぞ!」

まず、ふーちゃんがひとりで出て、紙を掲げながらマイクの前に立つ。

「わたしが、前期児童会長杉田ふみ!これから頑張ります!」

ライトが消え、すぐ現れたのは、初香ちゃんグループに美華ちゃんグループ。それに、わたしと晴奈ちゃんグループ。
まだ、初めは晴奈ちゃんたちと一緒だったから。
わたしもたくさんセリフあるし、頑張るぞ〜!

422:岬◆8Q:2017/10/02(月) 14:29

23.完結・感動・涙
「晴奈ちゃあ〜ん!」

4人でキャッキャしておしゃべりしながら、美華ちゃんのセリフを待つ。
だけど、いっこうに美華ちゃんの口はおしゃべりをやめない。
優佳ちゃんがセリフを静かに教えてあげて、やっとセリフを言う。

「ちょっとあなたたちうるさいわ!」

「そうよそうよ。美華ちゃん、もっと言ってやって!」

「もっと静かにしたらどう?」

優佳ちゃんと穂乃佳ちゃんも負けじと威張り散らす。
怒られた晴奈ちゃんグループと初香ちゃんグループのわたしたちは、ムッっとしながら言い返す。

「みんながおしゃべりして悪い?美華ちゃんたちだけのクラスじゃないでしょ!」

ライトがクルクル回り、赤、青、黄色と色が変わる。
実柚乃ちゃんが描いてくれた黒板アート風のバックもいい感じ。

「美華ちゃんたちも静かにしてよね!スマホの音うるさいし!」

効果音の音楽がチリチリチリチリ!
リアルにケンカっぽくなってきた。
すると。

「仲良くしなさーーーい!」

ふーちゃんの怒声が響きわたり、多目的ホールは、シーンと静まりかえる。
このリアクションいいねえ。


あのあとも、うまいこと演技は終わって、打ち上げが楽しみ。
これだけの完成用なら、打ち上げやる価値があるねっ!
わたしは、感動して涙が出た。

423:岬◆8Q:2017/10/02(月) 14:47

24.結果発表!
1年生の演劇も終わり、いよいよ明スイ対決がスタート。
本当の明スイはパフェ。
コヨによれば、新明スイはマカロンらしい。
洋菓子だな〜。

「皆さん、この場をお借りしまして、初等部児童会長多田本真美さんが、明スイのままか、新明スイかと対決をさせていただきます。第二回戦です。第一回戦は、見事新明スイ勝利。ここで明スイが勝たなければ、新明スイ決定となります!」

露島くんがマイクを置いて、明確ゼミの時と同様、モザイクのかかる板。
調理器具が並べられたキッチン。
5、4、3、2、1。
調理開始!
となりでは、実柚乃ちゃんが何を作っているのか当てている。
調理器具と、音で。
それで分かったらすごいよね。

「この音…、新明スイはマカロン?」

あれっ?
もう分かっちゃったの?
実柚乃ちゃんは、調理器具にも着目。
新明スイは、確実にマカロンだと決定させた。
一方明スイ。
調理器具がたくさん使われていく。
この時点で、実柚乃ちゃんはパフェだと判断。
お見事です…!


調理は無事終わり。
わたし以外と生徒がスイーツを食べている。
実柚乃ちゃんは、どちらがどちらか分かったから、明スイに入れてくれた。
もちろん、明スイの方が美味しいって言ってたし。
ありがとう…!
きっと明スイが勝てる…!

「結果が出ました!」

結果発表はわたし。
結果の紙を裏返す。
…やった、明スイ勝ちだ!

「隅木田先輩率いる明確スイーツ研究部の勝利です!」

よ〜し、明スイ最強。
次も絶対絶対勝つんだから!

424:岬◆8Q:2017/10/02(月) 14:57

25.打ち上げは恋の予感
文化祭の翌日。
土曜日だったので、打ち上げでカラオケに行った。
中等部以上は土曜日も授業あるんだよね〜、かわいそ。

「学級委員長からお言葉!」

樹くんがマイクで叫ぶ。
七井さんにマイクが渡り、七井さんは曲を入れた。
『ありがとう』という曲。
テレビに映し出された歌詞とは全く違う歌詞を歌う七井さん。

「6年1組は最強〜!
みんなで力を合わせたら何でも出来るから〜!」

『ありがとう』が終わると、わっと部屋が盛り上がる。
ここからはカラオケ大会。
点数が一番高かった人には商品。
彦宮学園生徒が持てたらの誇りのバッヂをプレゼント。
これも美華ちゃんの力。

「初香、俺が一位だったら付き合ってくださいっ!」

樹くん、だいたん…!
初香ちゃんの顔はどんどん染まる。
『愛してるぜ』を熱唱した樹くん。
点数は…えっ、99,8点!?
3時間みんなで歌ったけど、樹くんを越す物はおらず。

「では、お先に〜!」

仲良くふたりで帰ったのでした。

             (つづく)

425:岬◆8Q:2017/10/02(月) 15:08

あとがき
                岬

こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ、12巻、いかがですか?
文化祭に演劇会に対決。
豪華三点盛りでしたね〜!

皆さんは、対決したことありますか?
運動会とかありますよね。
わたしもありました。
ミニ合唱コンクール、体育大会と、中学校のクラス対抗は全部勝ってます。
看板は負けちゃいました。
(ただいま中1)
だけど、わたしは運動音痴。
みんなが強いから勝てただけ。
わたしは何もしてないのです。
歌は得意ですよ〜。
れっいとしたソプラノです!
皆さんも、対決エピソードありましたら教えてくださいね。

ではでは、最後になりましたが。
ここまで読んでくださったあなた。
良ければ書き込んでください。
コメントをくださった薫ちゃんをはじめとするあなたたち。
本当にありがとうございました!
これからもよろしくお願いします。

次回は、持久走大会&期末テスト&第三回戦です!
果たして勝てるのか!

では、次回会いましょう!

426:岬◆8Q:2017/10/02(月) 19:15

『ここは明確スイーツ研究部! 13』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識していた小学6年生。彦宮学園の初等部児童会長。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

427:岬◆8Q:2017/10/02(月) 19:32

1.持久走大会企画
ある12月の寒い寒い日のこと。
そろそろ持久走大会と期末テスト。
ただいま、学校はテストの空気。
おしゃべりの声ひとつ聞こえない。
みんな、教室、学食、相談室、どこを使ってでも勉強してる。
慣れてきた小1の子すら遊んでない。

わたし、多田本真美。
ここ、私立彦宮学園初等部6年。
初等部の児童会長です!
持久走大会の企画は、我らが児童会。
だけど、活動してくれてるのは、5年生の莉保子ちゃんーーー河合莉保子ちゃんだけ。
ひとりで企画してるの。
えらいよねえ、本当。

「児童会長いらっしゃいますか?」

莉保子ちゃんが訪ねてきたのは、わたしがコヨーーー俣野コヨと学食でご飯を食べながら勉強していた時のこと。

「あっ、お勉強の時間中すみません。持久走大会のことですが。企画が完成したので、拝見願います」

コヨは、莉保子ちゃんにも優しい。
実柚乃ちゃんーーー相川実柚乃ちゃんにも優しいの。
後は、だいたいムッっとする。
わたしと仲良くするからだとか。
莉保子ちゃんは先輩後輩関係だから。
実柚乃ちゃんは縛らないから許すんだって。

「オーケー。莉保子ちゃんありがと」

「いえ、お勉強の時間本当にすみませんでした。俣野先輩も、頑張ってください。失礼します」

コヨは、莉保子ちゃんに手を振りながらカレーのスプーンを握る。
そして、カレーをパクリ。

「本当にいい子だよね、莉保子」

うん、いい子だとは思うよ。
コヨも、わたしと同じ私立青山野学園を受験するらしい。
縛りすぎだよ〜。

428:岬◆8Q:2017/10/02(月) 19:58

2.コヨとの関係
コヨと一緒に帰りながら、ふと敵関係かどうかと考えた。
初めて会ったときは、何度も敵だと言われた。
今は新明スイーーー露島先輩とコヨがやってる、研究部に入ってるけど。
すぐ抜けれるんだから。
対決で、明スイーーー隅木田くん率いるスイーツを研究する集いが勝つから。
明スイが勝てば、いつもの生活が戻るもん。

「コヨって、わたしのことどう思ってる?」

「えっ?大〜好き!」

敵だとは思ってないんだね。
明スイが買ったら、敵って思われそうだけど。

「ねえコヨ。そこの神社でお参りしない?期末祈願のお守り買って」

わたしの家から駅の方へ歩いて、コヨの家の方へ歩いたところ。
神社の境内に足を傾け、一段一段かけ上る。

「わたし、黄色のお守りがいい!」

コヨの要望で、オソロイの黄色を買うことにした。
神様がいるところで手を打ってから、お守り売り場でお守りを買った。

「これでわたしたちはずーっ友」

コヨと笑い合いながら、境内を下る。
制服の上にセーターを着て、ガウンを着ているのに寒い。
マフラーも、手袋もしてるのに!

「真美、寒いから家帰ろ。わたしの家で一緒に勉強しよ〜よ〜」

ひとりで勉強した方がはかどると思うんだけど…これで縁切りたくないし。
コヨのことだから、明スイが勝ったら縁切りそうじゃん。
ふたりでいられる間は、コヨといたいかも。

「いいよ」

わたしは、お守りをスクールバッグに付けながらコヨの家へ向かった。

429:岬◆8Q:2017/10/02(月) 20:15

3.俣野家
「お邪魔します」

すると、出てくれたのは、この前見た活発な男の子ーーーコウスケくん。

「あっ、おねえちゃ〜ん。遊びにきてくれたんだね!遊ぼ〜」

違う違う、勉強しに来たの!
コヨはコウスケくんをなだめてくれたけど、勉強時間をちょっと削って、20分遊ぶことにした。

「何したい?」

「ヒーローごっこ!俺がヒーロー。おねえちゃんがオバケ。コヨおねえちゃんが…妖精のコヨセイ!」

コヨセイっ!?
ネーミングセンスあってカワイイ。
もしかしたら、優眞くんもこうなるのかな。
わたし、お世話しきれない…。

「おねえちゃん、こっちこっち!」

コウスケくんの方へ突進。
すると、100円ショップに売ってそうな剣で叩いてきた。

「コウスケ、もっともっと!」

コヨが、妖精として仕方なさそうに応援している。
コウスケくん、そろそろやめよ〜。


「ごめん真美。コウスケが」

「うんん。コヨって何人兄弟なの?」

「4人。姉のコノカ。妹のコマナ。コウスケ。みんな実の兄弟」

みんなカワイイ名前。
コヨが、コノカさんはいないけど、コマナちゃんを呼んでくれた。

「何か用?」

つっ、冷たい子。
眼鏡をかけていて、比較的冷静。

「俣野コマナです。公立に通ってます。姉が私立でお金使ってるから、わたしは何もできない」

「初めまして。多田本真美です。コマナちゃん、よろしくね」

コマナちゃん、コヨのことにらんでるじゃん。
コヨがコマナちゃんに視線を配った瞬間、すぐ部屋を出ていった。

430:岬◆8Q:2017/10/07(土) 08:24

4.母からの言葉
コヨは、ちょっと切ない感じの目をした。
なんだかかわいそうかも。

「コマナちゃん、きっとコヨのこと応援してるって。わたし思ったけど」

「どうして?」

それは…。
思わず戸惑う。
コヨに、なんと言う言葉をかけたらいいの?
立ち止まっていると、コヨはため息をついて苦笑した。

「真美もさ、あんまりウソつかない方がいいよ。期待しちゃったもん」

コヨの部屋に案内され、勉強道具を取り出す。
コマナちゃん、コヨが私立行ってるからって言ってたよね。
青山野受けたら、もっとお金かかっちゃうじゃん。
でも、彦宮も高いし…。

「コヨ。もしわたしが公立の中学校行ったらどうする?」

「もちろんだけど、真美と一緒に」

「ダメだよ、コヨ。行きたいところ行かないと。行く人で決めてたら、コヨの人生やりたいこと出来ないよ」

コヨは一瞬うなって、わたしに優しく笑いかけた。

「わたしの本当の母が、青山野卒だから、行ってみたい。母が、青山野に行けば分かるはずって言われた謎の言葉を暴けば、元の隅木田家の宝庫が開くに違いない。この話は、お母さんに聞いたんだけどね」

コヨが青山野に行くことで、宝庫が開かれるなんて…!
それを、わざわざコヨの本当のお母さんが、今のお母さんに言うほど…!

「真美は気にしないで。試練もたくさんあるけど、乗り越えたら見つかるものだって。宿命なの」

わたしはそのときはっきり分かった。
新明スイをつくりあげようとする理由が。

431:岬◆8Q:2017/10/07(土) 08:43

5.クラスみんなの心配
後日。
学校へ向かうと、制服姿のコヨがひとりで本を読んでいた。

「コヨっ、おはよ!」

あいさつしたけど、返事はなし。
またか…。
あれっきり、全然会話出来ない。
コヨはひとりでずっといるし。
わたしは、初香ちゃんたちといるんだけど。

「真美ちゃんおはよう!」

初香ちゃんたちが寄ってきて、みんなコヨを見る。
難しそうな本と格闘している。
正直言えば、コヨの内申点では青山野は難しいと言われている。
だから、あれから、ずっと難しい本を読んでるんだ。

「ほっとこ、ほっとこ。さやたちには関係ないんだし」

初香ちゃんとエリちゃんは、やっぱりコヨがひとりはかわいそうらしく、チラチラコヨを見ている。
さやかちゃんは、渋々。

「あっ、エリちゃん見て」

さやかちゃんがヘンな踊りを見せて、コヨのことは気にしなくなった。
ところで、コヨは急にわたしから離れて行ったけど…。
不安が募る。
ちょっと怯えていると。

「真美ちゃん」

美華ちゃんがこっちへ来る。
真美ちゃんって呼ばれたの久しぶりかもしれない。
そんなことを思いつつ、美華ちゃんを見る。

「どうしてコヨひとりなのよ」

「分からないの。受験の話をしたら、それっきりで」

美華ちゃんは腕を組んで考えながら元のグループのところに戻った。
本当に、クラスのみんなが心配してるのに、どうして…?

432:岬◆8Q:2017/10/07(土) 09:19

美華の取り巻き穂乃香の名前
穂乃佳になっているかも。穂乃香です
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
6.更衣室事件
更衣室でジャージに着替える時すら、コヨはひとりだった。
いつもは、わたしととなりでおしゃべりしてるのに。
美華ちゃんが気をきかせて話しかけてるのに無視してるし。

「コヨちゃん、美華ちゃんに失礼だよね、ホント!」

さやかちゃんがコヨに聞こえるくらいの声で言うと、みんながちょっと愚痴を言い出した。

「真美ちゃんもかわいそう。ずっと一緒にいてくれたのに。自分勝手〜」

「そ〜そ〜。いつも自己中だし」

学級委員長の七井さんまで、ボソッっとつぶやいた言葉。

「コヨちゃん最悪」

コヨには全部聞かれてる。
かわいそう。
わたしなんかは全然。
ずっとひとりで、楽しくなさそう。
それに…、悪口言われてるコヨがすごくかわいそう…!

「ダメだよ、みんな。コヨのことそんなに言っちゃ。悪口言うのはよくないでしょ?」

辺りがシーンと静まりかえる。
そこに反応したのは、美華ちゃん。

「真美ちゃんの言う通り。わたしなんかはかわいそうじゃないわ。痛くもかゆくもないもの」

すると、美華ちゃんの取り巻きの子たちまで。

「優佳もそう思うよね?わたしは美華と同じ」

「穂乃香と同じ」

美華ちゃんたち…。
コヨは涙を流しながら、グラウンドじゃない、つまり、校舎側のドアへ駆け込んだ。

433:岬◆8Q:2017/10/07(土) 09:31

7.芽生える友情
わたしはコヨを追いかけて、手を握った。
後ろには、美華ちゃんグループも。
コヨは振り返って、わたしの手を振り払った。

「どうせ真美も思ってるんでしょ?みんなと同じこと!」

コヨの走り出しそうな手を止める。
美華ちゃんたちが、コヨの前に立ちはだかる。

「思ってない!コヨと仲良くしたい。だけど…どうしたらいいの…?」

「真美」

わたしもいつの間にか涙を流す。
きっと、コヨ辛かったんだろうな。
宿命を抱えつつも、前田先生に内申点を言われ。
悪口まで言われて。

「わたしのこと好き?」

「うん、大好きだよ、コヨのこと!」

涙を吹き飛ばすくらい、ニカッっと笑って見せた。
思わず美華ちゃんが吹く。
たちまち辺りは和やかになった。

「持久走大会近いし、早くグラウンド行こっ」


冬の、本当にさむ〜いさむ〜い日の体育の時間。
急に新たな友情の芽が発芽した。
きっと、美華ちゃんたちとの。


体育に行くと、各自グラウンドを走っていた。
これなら紛れ込んでもバレない。
こっそりグラウンドへ入る。

「美華ちゃんたち、優佳ちゃんのことはユウって言わなくなったの?」

「ええ。ニックネームはおさらば」

美華ちゃんは走りながら言う。
こんなに急に仲良くなれるんだ。
クラスのイケイケグループ、美華ちゃんたちと。
内心ビックリだよ。
正直、ただのお嬢様かと思ってたし。

「これからは5人で遊びましょ」

美華ちゃんの突然の提案に、思わず目を丸くする。
だって、わたしもいる!
わたしは、大きくうなずいた。

434:岬◆8Q:2017/10/07(土) 09:40

8.意外な一面
わたし、何度もいろんなグループにお邪魔してるな〜。
そんなことを思いつつ、走る。
穂乃香ちゃんは足が速くて追い付かないけど。

「真美ちゃんファイト!」

優佳ちゃんがとなりで走ってくれて、またスピードを上げる。
コヨは、頑張って穂乃香ちゃんに食い付いて…。

「美華ちゃあん!」

美華ちゃんは後ろでゆっくり走る。
わたしより、運動苦手だったから後ろの方で。

「お菓子食べた〜い」

美華ちゃんが叫びながらスピードをものすごく上げる。
そして、わたしと優佳ちゃんを追い越して、穂乃香ちゃんのところへ。
お菓子パワー炸裂っ!

「美華ちゃん、お菓子大好きなの〜。遊びに行くと分かるけど、プライベートでは、毎回ポテチ」

ポテトチップス毎回!?
美華ちゃんの意外な一面…。
すると、お菓子パワーが消耗してきた美華ちゃんは、気づけばわたしの後ろに…。
これを繰り返すのかも。

「お菓子〜ポテチ〜」

美華ちゃんは、またスピードを上げた。

435:岬◆8Q:2017/10/09(月) 16:59

9.恵梨華と眞理
美華ちゃんが、こんなに単純だったなんて信じられない。
すると、優佳ちゃんはスピードをあげて、いつの間にか前の方へ。
気づけばとなりには美華ちゃんが走っていた。

「わたし、ひとりっこなの」

「えっ?」

聡日さんがいるのに。
美華ちゃんは悲しそうな顔をして続けた。

「両親が離婚したから。だけど、母が再婚して、妹が出来るの」

妹?
わたしと一緒じゃん。
美華ちゃんは、思い出すように笑みを含ませてちょっと泣いた。
両親の離婚って、悲しいよね。
あんまり分からないけど。
ママもパパも仲良しだから。
入院に出張。
会うことも少ないけど。

「恵梨華っていうの。わたしが名付け親」

「カワイイ名だね。恵梨華ちゃん」

恵梨華ちゃんは、きっと美華ちゃんみたいにカワイイ子になるよね。
眞理ちゃんのことを思い出して、わたしも口を開いた。

「わたしもひとりっこだけど、妹が出来るよ。眞理ちゃん」

「眞理?カワイイ」

美華ちゃんはもう泣いていなかった。
笑いながら、恵梨華ちゃんと眞理ちゃんのことを考えている。
やがて。

「恵梨華と眞理ちゃん、仲良くなるといいわね」

「うん。…何だかお母さんみたい」

美華ちゃんと顔を見合わせて、ふふっと笑った。

436:岬◆8Q:2017/10/09(月) 20:49

10.遊ぶ約束
体育は終わり、更衣室で制服に着替えていた時。
わたしは初香ちゃんに耳打ちされた。

「後から話したいことがあるの」

それを言ったっきり、エリちゃんとさやかちゃんと囲んで話してる。
わたしが入ってたのはウソみたいに。
時には実柚乃ちゃんも入ってるし。

「真美ちゃんどうしたの?」

穂乃香ちゃんが顔を覗き込む。
美華ちゃんたちも、心配そうな顔をしていた。

「ヤダな〜。何でもないよ」

制服のボタンを止めて、ロッカーに清潔なジャージを入れる。
今日着たジャージを持って、更衣室を出た。

「大丈夫?真美」

コヨがとなりでこっそり聞く。
ここで初香ちゃんの名前を出しちゃまずい。
わたしは笑ってごまかして、美華ちゃんたちの話に入った。

「また今度さ、5人で遊ぼ。家来て」

美華ちゃん家行けるの!?
楽しみかも〜。
大きなお屋敷。
矢本くん家より大きいかな?

「行く行く〜」

「ポテチ祭りだね〜」

「お菓子持ってく〜」

コヨまでキャッキャしながら教室へ向かう。
優佳ちゃんが急にわたしに話を振ってきた。

「真美ちゃん来れる?」

「あっ、うん。美華ちゃん家の場所、あいまいだけど」

「じゃあ、わたしが迎えに行くわ。真美ちゃん家知ってるから」

優佳ちゃん、わたしの家知ってるの!?
ビックリして優佳ちゃんを見ると、優佳ちゃんはコヨを見た。
そういうことね。
コヨが教えたってことか。

「コヨは何で来る?」

「わたしは歩き」

「遠くない?」

穂乃香ちゃんがつぶやく。
コヨはちょっと焦りつつも、わたしをチラッっと見た。
助けてほしいんだ。
ええっと…。
必死に考えた末…。

「優佳ちゃん、コヨもついでに一緒に行く?」

「あ、オーケー。コヨは、真美ちゃん家に行って。ついでに乗せたげる」

優佳ちゃんも車か…。
コヨはホッっとしたように笑って、わたしにウインクした。

437:岬◆8Q:2017/10/09(月) 21:02

11.勉強生活!
 カリカリ…
勉強机に乗っかった問題集と一対一。
ずうっと見つめ合ってる。
結構前に買ったの。
数学のね。

「真美ちゃん、紅茶持ってきたよ」

おばあちゃんがおぼんに紅茶を乗せて部屋に入ってきた。
わたしは、今おばあちゃんとふたりで暮らしている。
ママは、妊娠しているので入院中。
パパは、出張で東京へ。
おばあちゃんが来てくれてるの。

「期末も近いし、頑張って!」

受験を応援してくれているおばあちゃんは、勉強道具を何でも買ってくれるの。
問題集もね。
リスニングCDも、今では20枚くらいたまっている。

「じゃあ、出るね」

おばあちゃんは部屋を出て、最近ハマっているドラマを見に行く。
ドラマって、今何やってるんだろ。
あんまり勉強しない美華ちゃんは、いつもドラマを見ている。
明日聞いてみよっと。

「ふわ〜ぁ。もう疲れた」

シャーペンを握る力が弱くなる。
わたしはそのまま、クテッっと腕の中に顔をうずめた。


 ピヨピヨピヨピヨ
まっ、真由ちゃん!?
っていうか、朝!?
ヤバイ、そのまま寝ちゃった。
冷めた紅茶。
付きっぱなしの電気。
跳ねている髪の毛。
最悪じゃん。
真由ちゃんっていうのは、わたしが飼っている鳥。
飼ってるっていうか…ちょっとエサあげたら、よくいるの。
ペットって言える段階じゃないんだ。

「真美ちゃ〜ん、起きなさ〜い」

「起きてるよ〜ぅ」

パジャマじゃなくて、勉強用のジャージを脱いで制服に着替える。
あ〜、眠い。
わたしは、ゆっくりカーテンを開けた。

438:岬◆8Q:2017/10/09(月) 21:25

12.リムジン通学!?
ドアを開けると、冷たい北風がビューっと吹く。
マフラーをついつい口元に当てる。
手袋もキュッっとはめ直す。

「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい。明日持久走大会でしょ?頑張って」

練習最終日だあ〜。
おばあちゃんに手を振って、家を出ると、目の前にはリムジン…!
ちょっ、えっ?

「真美ちゃん乗って」

一番前の窓から見えた顔…。
美華ちゃん!?
リムジンの後ろには、優佳ちゃん、穂乃香ちゃん、コヨ。

「わたしと仲良くしてる子は、リムジン通学よ」

え〜!?
お金持ちがすることじゃん。
こんなことしちゃっていいの!?
リムジンに初めて乗る。
暖房の聞いた暖かい車内。
テレビも付いてるし、冷蔵庫も。

「ゆっくりして」

美華ちゃんに言われて、ちょっと後ろに持たれかかる。
柔らかい〜。
彦宮学園すぐそこだけど、リムジンだなんて夢みたい…。

「到着よ。降りて」

降りると、彦宮学園の駐車場。
わたしたちみんなが降りると、リムジンは音を立てずに駐車場を出た。
すっ、すごい…!

「明日からは、わたしが迎えに行ったら家を出て。いい?」

「ありがとう」

美華ちゃんのリムジンで毎日通うんだな〜。
めちゃめちゃお金持ちがすること!

「行きましょう」

美華ちゃんに誘導されて、裏口から3階へ行く。
あのね、階段じゃなくてエレベーターなの。
美華ちゃんだけの道だ〜。
恵梨華ちゃんが産まれたら!
きっとここ通るんだろうな〜。
わたしは想像しながら6年1組へ足を傾けた。

439:岬◆8Q:2017/10/10(火) 14:55

13.イユミ
穂乃香ちゃんがスクールバッグを机に置いて教室を出た。
中等部に用事があるとか。

「あっ、美華ちゃーん。昨日のドラマ見た〜?」

優佳ちゃんが身を乗り出す。
見ていないわたしとコヨは、耳を大きくして聞きいる。

「ええ。恋愛心でしょ?」

「そー!イユミヤバすぎー!」

イユミ…主人公か何かかな。
ふたりで盛り上がっているところに、隅木田くんがわたしを訪ねてきた。
まだわたしたち以外誰もいない。

「真美ちゃん、期末テスト後、すぐに中等部家庭科室へ来て。闘いをするから。何を作るかは、決められてる。どちらも、マカロンを作るんだ」

「マカロン…」

あまり手を染めたことのないスイーツだった、マカロン。
新明スイだって、活動してたのかしらないけど…。
わたしは、笑って見せた。
クヨクヨしてられない。

「勝ってください、お願いします」

お辞儀すると、隅木田くんは頭をポンポンして微笑んだ。
思わずキュンとする。

「任せて」

はわわわわ〜。
隅木田くんが中等部へ帰るのと、穂乃香ちゃんが帰ってくるのがほぼ同時くらいだった。
ニヤニヤしているわたしを見て、穂乃香ちゃんは吹いた。

「真美ちゃんさぁ、隅木田先輩好きでしょ!?」

「ええっ?」

「まるでイユミみたい!」

イユミ…。
わたしみたい、なの?

440:岬◆8Q:2017/10/10(火) 15:02

14.初香ちゃんの気持ち
今日の更衣室は、それぞれのグループで話していた。
わたしは初香ちゃんたちのグループで着替える。

「初香はさ、真美ちゃんが美華ちゃんたちのグループにいたいならいればいいけど、来てほしいな。初香たちのところ」

小さな声で言われた言葉。
でも、かなり重みがあった。
どちらにいるのかってことだから。
初香ちゃんは、ちょっと微笑む。

「そんなに無理してじゃないよ。真美ちゃんといると楽しいなぁって」

「ありがとう」

エリちゃんは、さやかちゃんとふたりでおしゃべりしながらもこちらを伺う。さやかちゃんも。

「初香は縛ろうとしてるんじゃないからね」

ごまかすようにそっとつぶやく。
知ってるよ、わたし。
初香ちゃんがそんな子じゃないってことくらい。
だけど…。
樹くんのことといい、コヨのことといい…。
初香ちゃんもいろいろ大変。
いろんなこと気にしてるもん。

「来たかったら…うんん、良かったらいつでも来てっ!」

初香ちゃんはそれだけ言い残して、グラウンドへ足を傾けた。
エリちゃんとさやかちゃんは、それを追いかけるように。
わたしは、ポツンと置いてかれた。

441:岬◆8Q:2017/10/10(火) 21:52

15.美華ちゃんの夢
走る時は、美華ちゃんとふたりでおしゃべりしていた。
眞理ちゃんと恵梨華ちゃんのこと。

「恵梨華は、もうすぐ産まれるの。今日か明後日くらいって言われてるわ」

「すぐじゃん。呼んでよ〜」

またお母さん目線だ。
美華ちゃんとおしゃべりしていると、あっという間に一周。
さあ、二周目、三周目!

「眞理ちゃんはいつなの?」

「3月頃」

「ちょっと遅れたら、同級生じゃなくなっちゃうね」

そんなこと考えたことなかった。
確かに、3月ってギリギリ。
友達関係か、先輩後輩関係か。
やっぱり同級生がいいよね〜。

「3月きっかりだといいけど」

美華ちゃんも心配げにつぶやく。
同級生ならね、わたしたちも仲良くさせてあげられるけど…。
先輩後輩関係だと、なかなか何とも言えないし…。

「もう次は三周目よ」

気づけば、二周目も終わり、三周目に差し掛かっていた。
はっ、早い…。

「持久走大会は毎年、秀花、穂乃香、陽茉理だけど…」

あれ、陽茉理ちゃん3位なんだ。
っていうか、秀花ちゃんさすが…!
毎年一位は誰も取れないね。
秀花ちゃんじゃないと。

「秀花はもったいないわ、青山野行って。残るか、東大附属でも行けばいいのに」

「東大附属ねぇ」

ふーちゃんこと杉田ふみちゃん、涼太くんこと青山野涼太くんが受験する、東大附属。
ちなみにふたりは幼なじみで付き合ってるんだけど。
涼太くんのおじいちゃんが校長で、そこそこお坊っちゃんかも…。
ちなみに、美華ちゃんのおじいちゃんは本校の初代校長。
相当なお嬢様。

「恵梨華には、初等部彦宮、中学から高校を東大附属、大学は東大へ行かせたいわ」

「どうして?」

「わたしとお母様の夢だったの。でも努力したくないから、やがて消えた。恵梨華にはこんな思いさせたくないってところよ」

恵梨華ちゃんのこと思ってるんだ。
わたしは、ママも眞理ちゃんも元気でってことしか考えてない…。
気づけば、もうチャイムは鳴っていた。

442:岬◆8Q:2017/10/10(火) 22:01

16.持久走大会開会!
 パン!
鳴り響くピストル音。
体育委員会の人たちがピストル確認やラインを引いている。
放送委員会の人たちは、放送マイクの確認。
我らが児童会は、企画書、原稿の確認をしているところです!
持久走大会の担当は、わたし、柴田さん、莉保子ちゃん。
3人で創り出すんだ。

「児童会長、柴田オーケー」

柴田さんが片手を挙げる。
莉保子ちゃんもそれに続いた。
わたしも、オーケー。
原稿確認が終わり、放送室へ向かう。
初めの放送はわたし。

「初等部の皆さん、おはようございます。児童会長です。持久走大会の開会式を行います。速やかにグラウンドへ向かいましょう」

マイクに向かって吹き込むと、初等部の教室からズラズラとみんなが出てきた。
同じことをもう一度言う。
完全に誰もいない。
グラウンドの前に立ち、開会式の原稿をめくる。

「開会式の放送お願いします」

放送委員会の人がアナウンスを入れ、柴田さんが朝礼台の上に立つ。

「開会宣言。ここに、私立彦宮学園初等部、持久走大会の開会を宣言する。児童会役員柴田」

次は体操。
朝礼台に莉保子ちゃんが立つ。
初等部みんなで体操!
わたしも、力いっぱい体を動かした。

443:岬◆8Q:2017/10/11(水) 18:13

17.よーいどん!
 パン!
ピストル音と同時に、1年生の男の子がスタートした。
となりの初香ちゃんが、うっとりした顔で男の子たちを見る。

「カワイイ〜。男の子なのにぃ」

確かに、小さい子だと男の子でもカワイイよね。
だけど…。
チラッっと初香ちゃんを見る、と。

「初香」

樹くんが歩み寄ってきて、そのままふたりでどこか行くし…。
ちょっと、手、つないでるっ!?

「ねえねえ、エリちゃんっ!」

エリちゃんはビックリ顔で振り向く。
わたしは、震える手を止めて、初香ちゃんたちを指差した。

「ああ、樹くんが初香ちゃんに告白して付き合い始めたの」

「えええ〜!?」

「真美ちゃん静かにっ」

さやかちゃんが口元に手を置いて、落ち着く。
付き合ったの!?
初香ちゃんおめでと〜。

「よっしゃ、家の子1位!」

近くで由里歌ちゃんが叫ぶ。
キャラ変わったな〜。
おっとりタイプだったけど。
陽茉理ちゃんも、由里歌ちゃんと手を叩いて喜んだ。
わたしもあそこにいたんだ〜。
そう思うと、胸がムズムズした。


 パン!
6年生男の子がスタートした。
ええっと、涼太くん、坂宮、頑張って!樹くんもねっ!
初香ちゃんが思いっきり樹くんを。
ふーちゃんが思いっきり涼太くんを応援する。
わたしは坂宮かな。
みんなに負けないくらい大きな声で、坂宮を応援、しようとしたの…。

444:岬◆8Q:2017/10/11(水) 18:23

18.驚きの真実
だけど、だけどね。
向こうの女の子。
キャッキャしてるグループの中。
一際目立つ…秀花ちゃん。

「秀花さ〜、別れたのにまた他のヤツと付き合い始めてさ。秀花はカワイイし何でも出来るからいいよね。付き合いたかったら付き合えるくらいコントロール出来るもん」

「別に〜」

そんなこと言ってる秀花ちゃん。
受験で別れたって聞いたのに、また付き合いだしたの!?
コントロールって…。
秀花ちゃん、勉強も運動も男の子もコントロール出来るんだ…。
唖然。
耳をすませていると…。

「坂宮くんさ、サッカー部のレギュラーだし、サッカー習ってるじゃん?その彼女とかイケイケ〜!」

坂宮の彼女?
 ドクンドクン
心臓が早く脈打つ。
胸がキュッっと痛む。

「彼女の秀花、応援しなよ」

ひとりの女の子に急かされて、秀花ちゃんはくっきり、はっきり言う。
しかも大きな声で。

「坂宮くん頑張って〜!」

「彼女からの応援〜」

「スピードあげたよ!」

みるみるうちに、坂宮はスピードをあげていく。
秀花ちゃんもすごく喜んでるし。
わたしに好きだとか言ってたくせに、秀花ちゃんなんだ。
なんかイラッっとするーっ!

「あっ、坂宮くん1位よ!」

見ると、ガッツポーズを、わたしじゃない、秀花ちゃんに見せた。
そして、ゆっくりグラウンドの中を歩き終わり、秀花ちゃんの元へ駆け寄る。

「ちょっと…」

秀花ちゃんの周りにいた女の子はみんな退いて、ふたりきり…!

「応援してくれてありがとな。秀花も頑張って」

ふたりはにっこり笑って、ゆっくり離れていった。

445:岬◆8Q:2017/10/11(水) 19:10

19.いざスタート!
 パン!
とうとうわたしたちのスタート。
樹くんは初香ちゃんを。
涼太くんはふーちゃんを。
坂宮は秀花ちゃんを応援する。

「初香ーーーー!ダァーッシュッ!」

「ふみちゃん前見てー!」

「秀花1位のまま〜!」

やっぱり秀花ちゃん1位か〜。
わたしは後ろから数えた方が早いくらいだね。
全くだよ、ホント。

「ちょっと転んでくれる?」

胸に佐藤と付けた子に言われる。
あなたに言われる筋合いないんですけど!
ちょっと加速して、佐藤さんから離れる。
すると、佐藤さんも加速してわたしの前に並んだ。

「ホイッ」

佐藤さんが急に止まって、わたしはつまずく。
それを、3人の女の子が踏む!
意味分からないんですけど。
どうして踏むの。
手を踏まれるとかそれくらいだったけどさ。

「真美ちゃん、大丈夫?」

後ろと差をつけて、速く走ってきた秀花ちゃん。
わたしベリで一周遅れじゃん。
秀花ちゃんに引かれて立ち上がり、佐藤さんを追いかけて走る。
もちろんだけど、そのまま秀花ちゃんに抜かれて…。


はぁっ、はぁっ。
 パンパン!
この音は、1位ゴールの…。

「優勝者、今年も杉田秀花ー!」

秀花ちゃんおめでとう。
もうすごすぎる。
わたしもラストスパートを走りきる。
ベリじゃないよ、ちゃんと抜かしたもん、佐藤さん。
わたしを踏んだ子も。
勝手に踏んで、勝った気にならないでよねー!
わたしは心の中でちょっと思った。

446:岬◆8Q:2017/10/11(水) 19:19

20.秀花ちゃんから
「ここに、私立彦宮学園持久走大会の閉会を宣言する。多田本」

朝礼台から降りて、閉会式は幕を閉じた。
これで期末に全てを捧げられる。
頑張って、今回こそは…!

「秀花」

坂宮が秀花ちゃんの元へ行くのが見えた。
本当なんだ。
やっぱりウソじゃないんだ。

「1位おめでと、秀花」

「ありがと。坂宮くんも!」

坂宮は頬を赤らめて微笑む。
もういいや。
告白してきたけど、わたしは断ったんだもん。
それに、好きかって言われると、嫌いじゃないけど、恋愛として好きではないから。

「真美ちゃん?」

いつの間にか秀花ちゃんがとなりに立っていて、坂宮はいなかった。
思いきって聞いてみようか。
でも…。

「1位おめでとう、さすがだね」

「うんん、大したことないよ」

秀花ちゃんにしてはね。
わたしにしてはすごいことだよ。
本当に。

「わたしさぁ、付き合い始めたの。坂宮くんと。青山野は受けるよ。坂宮くんは残るらしいから、遠距離だけど」

 ドクンドクン
秀花ちゃんから口にした言葉。
『付き合い始めた』。
ついに…ね。

「別にいいよね、付き合ってても」

「いいんじゃ、ない…?」

わたしは、ちょっとムズムズしながらつぶやいた。

447:岬◆8Q:2017/10/11(水) 19:55

21.焦りの期末
わたしは、勉強が手につかず、あまり勉強せずに一夜を過ごした。
こんなことを、何度も繰り返して…。


あっ、今日期末だ。
ちょっとは勉強したけど、ついに迎えてしまった期末1日目。
国語に数学に技術家庭科に美術。
まあまあいけるかな〜。

「真美ちゃん、制服の上に着るセーター乾いてないから、ダウンでも着てってくれる?」

下からおばあちゃんが言い、クローゼットからダウンを出した。
いつもセーター着てるんだけど、昨日の雨のせいで乾かなくって。
ダウンってちょっとダサいから嫌いなんだよね〜。

「スクールバッグに弁当入れといたよ〜。図書室で食べておいで」

そうだった。
今日は冬季講習だった!
明確ゼミ希望生が行ける講習。
希望してないけどね。
お邪魔するの。
授業法式で教えてくれる。

「弁当と図書室で食べたら、そのまま冬季講習。いい?」

彦宮学園の図書室で行われる冬季講習。弁当は、学食でいいかな。

「行ってらっしゃい」

よぉし、頑張るぞぉっ!
家を出ると、ちょうど美華ちゃん家のリムジンがあった。

「真美様、こちらへ」

わたしのことブスって言った運転手も、いつの間にか『真美様』。
何なのよ、もう。
でも、リムジン通学はまだ続いてる。
今日は、ゆっくりドライブしながら勉強して、みんなと同じ時間に学校に着く日程。
ドライブしてくれてて、その間国語の確かめをやっていた。

「コヨ、ここなんだけど」

意外と言ってもおかしくないくらいの美術得意のコヨ。
絵の上手さと知識の豊富さには驚いたよ、うん。

「美華〜、これこれ!」

数学が得意な美華ちゃんに、穂乃香ちゃんは聞きいっている。
わたしはひとりで、国語でも…。

「真美ちゃん、主語述語って何!?」

優佳ちゃん、そこから!?
ビックリしつつ、解説。

「主語っていうのは、だいたい人。何がってところ。述語は、主語に対して、どうした。何をしたってこと。これについて修飾語とかあるから気を付けた方がいいよ。ちなみに修飾語は、ひとつとは限らないから」

優佳ちゃんは、うめき声をあげながら椅子に座り直す。
果たして、いいのだろうか…。

448:岬◆8Q:2017/10/11(水) 20:17

22.冬季講習あいさつ無茶ぶり!?
 キーンコーンカーンコーン
よーし、今日のは終わり。
国語はそこそこ出来たし、まあ何とかなるでしょ。
数学は中間良かったからあんまり勉強してないけど…いいよねっ。

「真美ちゃんのおかげで主語述語修飾語出来たよ!」

優佳ちゃんが嬉しそうににっこり笑顔で言う。
近くから見ると、美少女〜。
まつげ長いし、ちょっとぶりっ子っぽいところも。
ぶりっ子に見えないぶりっ子。
演技っていうか、上手いな〜。

「ありがとう!」

「いやいや、解けてよかったね!」

 ピーンポーンパーンポーン
突然放送が入る。
辺りがしーんとなり、放送音が響く。

「冬季講習を受ける生徒、すぐ図書室へ向かいなさい。講師の先生がお見えです」

もう〜?
優佳ちゃんと別れて、スクールバッグを片手に図書室へ向かう。
あいさつしたら、弁当だよね。
この講習には、コヨも参加してる。
希望してないよ、コヨも。
無料だしねえ。

「明確ゼミナール講師の松村です。今日はよろしくお願いします」

新任かな、知らない名前だ。
男の先生で、ガッチリした体つき。
怖そ〜う。

「こちらの児童会長から言葉がありますので」

ええっ、聞いてない。
松村先生は、こちらをジッっと見つめる。
仕方ない、あいさつするか。

「今日は、わざわざ足を運んでくださりありがとうございました。よろしくお願いします!」

松村先生はにっこり笑って、弁当タイムをとってくれた。
コヨと学食へ向かう。
4人掛けの机で、勉強も弁当も食べられるようにするの。

「優佳さ、美術結構出来たらしいけどさ、わたしより、かな」

「どうだろ」

コヨはモヤモヤしながら、弁当の卵焼きにかぶりついた。

449:岬◆8Q:2017/10/12(木) 17:20

23.容量の悪い松村先生
松村先生が図書室の黒板に『数学』と書き込む。
復習か〜。
数学の問題用紙を開いて、松村先生の手のチョーク先を見る。
繊細な文字で、綺麗に。
文字と数字の移項と書き込む。
移項ね〜。
左辺か右辺かってやつ。
わたし苦手。
符号が変わったり、途中式長いし。
ちょっとでも間違えたら可能性ってないじゃあん!

「いいですか?」

松村先生は途端に厳しくなって、ビシビシやっていく。
彦宮生じゃなくても参加出来るんだけど、制服が目立つ。
公立の一般的なの、私立のオシャレなの、市立の昔っぽいのまで。
彦宮学園の制服が一番カワイイと思うのは、わたしだけ?

「ここ、誰か挙手」

すかさず、彦宮学園の意地を見せる。
公立校に負けてられないよ!
指名されたのは、他の学校の子だったけど…ネクストネクスト!

「はい、答えー」

はいはい、わたしわたし!
分かります〜。
あっけなく他の学校の子が指名されて、だんだんいらだってきた。
図書室貸してるのに何なのよ。
初等部の図書室広いのにいっぱいでしょ!?
感謝しなさいよ〜。

「次、ここ」

今度こそは当ててよね〜。
っと、神通力でもあったのか、松村先生はこちらを見ている。
はいはい、わたし当ててください!
目一杯手を挙げた、けど。

「えっと…佐藤さん」

わたしじゃないぃ!?
本当にイライラしちゃうよ、もう!
すると、指名された佐藤さんは、にっこり笑って答えを言う。
佐藤さんって…もしかして。

「あなた…」

そう。
持久走大会で、わたしを…。

「転ばせた人…」

だよ、ね…?

450:岬◆8Q:2017/10/12(木) 17:31

24.テスト終了!
 カリカリカリカリ…
今日は期末テスト3日目。
松村先生の指導で、何とか出来たかも知れない。
分からないけど。
案外…って、習ったっけ!?
書かれている問題は、見たか見てないか分からないほど難しい問題。
ちょっと目を横に寄せて、となりの涼太くんをチラリ。
って、もうこんな問題解き終わってる!しかも、この問題の解答、ビッシリ文章書いてあるじゃん!
あ〜、もう飛ばそう。
理科ってこんな難しかったっけ?
期末ヤバイかもーーーっ!


 キーンコーンカーンコーン
ついに期末終わった〜!
解放された気持ちで、思わず机に突っ伏した。
でもこれから。
受験はしなくても推薦だけど、やっぱり勉強置いてかれたらヤバイ。
実柚乃ちゃんと秀花ちゃん、受験だからな〜。

「おい、ふみ!」

「杉田〜」

「これ何!?」

秀才ふーちゃんに、みんな集まり、自分の答えが正しいか確かめている。
違うとすぐ「あ〜!」なんて。
合っていると「俺天才!」なーんて。
本当にそうか分からないのに。

「真美出来た?」

コヨは、自信満々に聞いてきた。
良さそうな結果だったんだ。
わたしは全然ダメだよ。
首を横に振ると、コヨはニヤニヤしながらつぶやいた。

「真美越せたら、だいたい一桁かも」

いやいや、わたし越したってそんなに大きいところには…!
でも…。
途中受験で入学してきたコヨのことだし。
めちゃめちゃ頭良かったりして。
わたしは、ビクッっとしながら問題用紙をファイルに閉じた。

451:岬◆8Q:2017/10/12(木) 17:43

25.闘い最後
わたしは、中等部の家庭科室へコヨと向かった。
足取りは重たい。
わたしだけが食べて決めるんだもん。
責任重大。
もう、調理器具はそろっていて、わたしとコヨが来たところでスタート。
どちらもマカロンってことだけど。
本当に大丈夫だろうか。
坂宮は秀花ちゃんと付き合ってるなんて事実抱えてるし。
知らなきゃ良かったよ〜!

「真美、ダウン着てていいよ〜」

コヨがニーッっと笑った。
わたしが今日ダウンなの気付いてたんだ。
今日もダウン。
ダサいけど、仕方ないよね。
我慢してる。

「ありがと」

ダウンを羽織り、両者を見つめる。
お願いします、神様。
わたしは何でもしますから、明スイに微笑みを見せて…!
わたしは、祈るような気持ちで見守った。


時間が終わり。
両者とても素敵なマカロンが。
どちらがどちらか、見当すら付かない。食べて、味も分からなさそう。
ひとつ目のマカロンをパクリ。
ふたつ目もパクリ…。
一発で決めてそれだけ。
迷って、やっぱりとか思いたくない。
ひとつ決めたらそれだけ。
もう迷わない。
わたしの答えは、これ!

452:岬◆8Q:2017/10/12(木) 17:48

26.わたしの未来は
わたしは、ふたつ目のマカロンが乗っていたお皿を指差す。

「こっち。こっちが美味しかった」

…露島先輩は、肩を落とし。
コヨは涙を流し。
明スイはよく喜んでいる。
決まった!
わたしが入るところ。
ずうっと明スイだ〜!

「露島先輩、お誘いありがとうございました」

露島先輩はそのまま退室して、コヨが残った。
友情は終わらないよね。
コヨは優しく笑った。

「負けちゃったけど、人をスイーツで勝負するなんてバカだよね。新明スイは解散するよ」

コヨは涙を拭いて退室。
明スイの、カッコいい男の子たちを見る。
清々しい。

「ありがと」

わたしは、みんなを見ながら、これからの明スイ生活が楽しみに思った。

453:岬◆8Q:2017/10/12(木) 17:54

あとがき
                岬

こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者の岬です。
いかがでしたか?
今回もドキドキハラハラ。
早かったですね〜。
なんやかんやあって明スイ勝利。
みんなはどっちが勝ってほしかったでしょうか。
意見どうぞ。
お待ちしております。

皆さんは、テストどうですか?
わたしは今日で中間が全部返ってきましたよ。
最悪なのや、嬉しいのまで。
いろいろでしたね。
友達には、わざと高い点数言って、ウソだ〜ってバレちゃって。
だけど、ウソとは言いませんでした。
友達関係ってやつですね。
こんな最悪な岬を見放さないで!
テストのエピソードもお待ちしておりますので。

さてさて、お礼といきますか。
ここまで呼んでくださったあなた、どうもありがとうございました!
これからもよろしくお願いします。
ご支援くださった薫ちゃんをはじめとするあなた!
ありがとうございました。
これからも、ご支援お願いします!

次回は、コヨちゃんの転校。
真美ちゃんと明スイのクリスマス…。
次回もお楽しみに!

454:岬◆8Q:2017/10/12(木) 18:00

『ここは明確スイーツ研究部! 14』

人物紹介

多田本 真美
明スイの書記担当の小学6年生。私立彦宮学園の初等部児童会長。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

455:岬◆8Q:2017/10/12(木) 18:14

1.突然事件!
国語の時間。
わたしは期末テストを返してもらったんだ、けど…。
何この点数。
76点。
胸に引っ掛かる点数。
こんなの…イヤ〜!

「真美ちゃん何だった?」

さやかちゃんに聞かれたけど、心が凍り付いて何も言えない。
もう何もかもダメだぁ〜!


わたしは多田本真美。
国語には自信があった小学6年生。
れっきとした私立彦宮学園初等部後期の児童会長です!


「おい、ふみ何点?」

みんなが秀才、ふーちゃんーーー杉田ふみちゃんに集まる。
大したことないように、ふーちゃんが掲げた解答用紙。
100点…!

「ふみすげえ!」

「さすが〜」

本当だよ。
わたしは76点。
イヤイヤ、イヤ〜!
となりの席の涼太くんーーー青山野涼太くんは96点。
…わたし、死にそう…。
こんなに低い点数で。
あっ、ちなみにだけど、ふーちゃんと涼太くんは付き合ってるよ。
中学校は、ふたりで東大附属へ。
すごいよねえ。

「はーい、終わりー!」

国語の先生が言い、学級委員長の七井さんが号令をかける。
もう家帰りたくない〜。


えっ、47点!?
85点か〜。
66点なんてある!?
74点!?
ヒョロヒョロとその場に崩れ落ちる。
こんなに点数低い…。

「真美」

コヨーーー俣野コヨに呼ばれて振り向く。コヨは、途中受験で入学してきたので、はっきり言って頭がいい。
90点代しか出してないんだ。

「わたし転校するから」

「えっ?」

突然のことだった。
コヨは制服を脱いで、ジャージに。
ハサミでチョキチョキ制服を切る。

「ちょっ、コヨ」

「さようなら」

荷物を持って、テストも置いて学園を出たコヨ…。
急に、何で?
ちぎれた制服を見て、わたしは涙でいっぱいになった。

456:瀬内 梨帆◆x.:2017/10/14(土) 13:35

トリップ変えました〜。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2.コヨの考え
実柚乃ちゃんーーー相川実柚乃ちゃんがボロボロの制服を拾った。
何か決心でもしたかのような顔をして、教室を出ていった。
美華ちゃんーーー彦宮美華ちゃんたちも呆然としている。

「わっ、わたし、追いかけてくる!」

上靴のままグラウンドに飛び出して、門を開ける。
コヨの家の方へ足を向けると、コン先輩が庭のお手入れをしている様子を思い浮かべた。
この前、コン先輩やってたし。

「真美ちゃん、ちょっと、上靴…」

おばあちゃんがとなりの家の人と立ち話している。
悪いけど無視して、コヨのところへ駆け出す。

「真美ちゃんっ?」

おばあちゃんの心配げな声も聞こえたけど、ごめんなさい!
コン先輩は、予想通り庭のお手入れをしていた。

「コヨ来ましたかっ?」

コン先輩はうなずいて、コヨを呼ぶ。
ガクガク震える足を押さえて、コヨと会った。

「どういうこと?」

「学校行って。推薦じゃ行けなくなるよっ!」

「いいってば」

コヨはうなだれていて、仕方なく話してくれた。

それは、やっぱりあの時。
明スイが勝負に勝った時、もう転校しようと思った。
真美が嫌いになったわけじゃないし、もちろん真美とは仲良しでいたい。
でも…!
もうここにいたくない。
コマナにはよくにらまれるから。
いいんだ。
露島くんとも解散したし。
わたしの居場所、ここじゃないし。

457:渚◆t/k:2017/10/14(土) 13:47

久々に、コメントしにきたよ!岬は、良く私の小説にコメントしてくれるけど、私はしてなくてごめんね!
やっぱり、岬が書く、『明スイ』は面白い!でも、やっぱり、気になるのは、最終回だよ!!もし、小説になって売ってたらその時は絶対に買う!
私最近、小説のネタが思い付かなくて、全然投稿できてないんだよ〜
あと、報告!短編小説に新しい小説作ったよ!ぜひ、見てくれると嬉しいな!
頑張ってね!


長文ごめん!

458:岬◆x.:2017/10/14(土) 13:52

名前↑ミスです!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3.恵梨華ちゃんついに…!
そんなこと考えないでよ。
わたしはそう思った。
コヨがいなくなったら寂しい!

「やめて。ここにいようよ」

「真美に決められる筋合いはない!」

コヨはそう言ったっきり、ドアを閉じて会ってくれなかった。
コン先輩は必死に謝ってくれたけど、わたしのせいなんだから。
学校に戻ると、クラスの子みんながわたしを取り囲んだ。

「コヨ何って?」

「そもそも会えた!?」

「俣野、退学届出したってよ〜」

落ち着いて、冷静に考えた。
どこまでを言うべきだろうって。
わたしは、みんなに笑顔を見せた。

「家庭の事情だって。仕方ないよ」

「なーんだ」「つまんねえっ!」「めちゃめちゃでかいことになるかと思った〜!」なんて。
思いっきりでかいことだけど。
テレビに取り上げられると思ったのだろうか。
それとも…!

「真美ちゃん、本当のこと教えて」

美華ちゃんたちに言われて、わたしたちは図書室へ移動した。
そして、コヨに言われたことをそのまま伝える。
今がお昼の時間で良かった。
先生にバレてないし。

「コヨ、そんなことがあったんだ」

「コマナちゃんの言い分は分からなくもないけど、コヨ頑張ってたよね」

ああ、美華ちゃんたちに話して良かった。
コヨのことをグズグズ言ってても仕方ないと言う美華ちゃんの言葉で、気分をちょっと変えた。
まだちょっと辛かったけど。

「そ〜いえば、家産まれた!恵梨華」

恵梨華ちゃん!
恵梨華ちゃんって言うのは、美華ちゃんの妹。
美華ちゃんが名付け親だって。
ちなみに、わたしにも妹と弟が出来るんだ。
眞理ちゃんと優眞くん。
恵梨華ちゃんと仲良くなれるといいよねっ!

「おめでとう!」

「恵梨華ちゃん見せてね〜!」

「眞理ちゃんとも遊んであげてね。まだまだだけど」

わたしが眞理ちゃんのことを話した瞬間、初香ちゃんが食いついてきた。
初香ちゃんーーー北山初香ちゃん。
お母さんが保育士さんなんだよね。
だから食いついてきたのかな。

「眞理ちゃん!?また見せて!」

お母さんの遺伝かな。
初香ちゃんの迫力に押されて、苦笑いでうなずいた。

459:岬◆x.:2017/10/14(土) 13:54

渚ちゃん、ありがとう!
えっと、失礼なんだけど、名前変えたよね?
元誰だっけ?
ごめん。
見てくれてありがとね!
最終回まで書けたらHAPPY!
良ければ最終回までよろしく♪

460:渚◆t/k:2017/10/14(土) 14:06

元レア、ルナだよ!!

461:岬◆x.:2017/10/14(土) 14:31

わざわざありがとう。
短編小説見たよ。
だから分かった。
コメントありがとね。
私も渚のにコメントしたよ。

462:渚◆t/k:2017/10/14(土) 14:34

>>461
ありがとう!
小説の邪魔しちゃってごめんね!
応援してる!新作も期待してるよ!

463:岬◆x.:2017/10/14(土) 14:39

いえいえ。
こちらこそ。
邪魔じゃないよ!
渚のコメントめちゃめちゃ嬉しい。
期待なんて…ありがとう!!!

464:岬◆x.:2017/10/14(土) 15:06

4.汚れたお守り
美華ちゃんのリムジンで家へ帰る時、わたしはショックを受けた。
リムジンの中からでも、しっかり見えたお守り。
コヨとオソロイで買ったお守り。
誤って落としたことは絶対ない。
コヨ自らの手で落としたんだ。
だって、絶対落とさないようにしたって言ってた。
コヨに届けようとして、コヨの家へ行ってみたけど、もう空き家だった。
本当に引っ越してしまったんだ。
と、お守りも置いて。
すごく悲しかった、けど。

「真美ちゃん、学校外に上靴で出て何があったんだい?」

おばあちゃんが聞いてきた。
そうだ、無視したんだ。
焦りつつも、本当のことを言う。
おばあちゃんはため息をつく。

「いいかい?コヨちゃんがどうか知らないけど、真美ちゃんが言えることは何もない。おばあちゃんがいろいろ真美ちゃんのために尽くしたことは何だったんだい!」

相当怒ってる。
身をすくめて反省した。
本当におばあちゃんの言う通りだ。
わたしは期末も全然ダメだった。
何もかも対策を考えたり支えてくれたりしたのはおばあちゃんなのに。

「ごめんなさい」

「別にいいよ。青山野に行く気がないってことが分かったよ」

おばあちゃんはココアを飲み、テレビを付けた。
わたしのココアを飲むと、冷たく感じてしまった。
もう無理だなって思った。
おばあちゃんが怒るのも分かる。

「本当に真美ちゃんは行く気がないんだね。止めないんだ」

「青山野行きたいです!お願いします行かせてください!」

おばあちゃんに頭を下げる。
青山野に行きたい。
行けば、きっとコヨと会える。
コヨ受験するよね?
会えなくてもいい。
わたしの夢を広げに。
涙を流しながらお願いした。

465:岬◆x.:2017/10/14(土) 16:30

5.クリスマスプレゼント
おばあちゃんはちょっと笑った。
そして、わたしの背中をさすった。

「真美ちゃんが行きたいって思ってることは知ってる。児童会長としても恥ずかしいだろう」

おばあちゃんの言うことって、全部本当だ。
言われたことで、ウソとか、ためにならないものってない。

「頑張りなさい。勉強、推薦だからっておこたらないで」

これも、必ず報われる。
わたしは涙を拭いて、階段を駆け上がる。
勉強、勉強、勉強!
部屋に入ると、CDをセットして、たまった英語のリスニングCDを入れた。

「真美ちゃん、ココア。温かいの入れ直したよ」

本当だ。
今までで一番温かいくらいかも。
ココアをズズッっと飲み、リスニングに集中する。
さっきのは何だったんだろう。

「頑張って」

おばあちゃんが残してくれた言葉。
必ず出来る。
わたしなら…きっと…!


その日の夜。
おばあちゃんとカレンダーを見ながら話していた。
今年もすぐ終わるなぁ。
明スイも、結構やって来たなぁ。

「そろそろクリスマスだけど、真美ちゃんは何を頼むんだい?」

「本当。そろそろだね」

わたしが今欲しいもの…。
ものっていうより、コヨと会いたい。
ちょっとでもいいから。
だけど無理だよね、そんなこと。

「分からない。何にしよう」

強いて言えばだけど…わたしは運動用具を思い浮かべた。
中学校で入りたい部活、バトミントン部。
初等部でやめてしまった悔い。
これを晴らしたいから!

「バトミントンのラケットかな」

持ってたけど、ボロボロなんだよね。
持ち手とか、恥ずかしいもん。
おばあちゃんは「了解」と言って、ご飯を食べた。
バトミントンのラケット。
これを持つことで、コートに立つことで…何か変わるかな。

「真美ちゃんはコートに立って闘ったことある?」

「ないんだ」

きっとね。
コートに立てるときがくるよ。

466:岬◆x.:2017/10/15(日) 10:00

6.明スイ始動決定
翌日、明スイの集合がかかった。
昼休みに中等部の学食へ向かった。
明スイっていうのは、明確スイーツ研究部の略し。
明確ゼミナールで立ち上げたスイーツを研究する集いなんだけど、わたしは明確ゼミをやめたんだよね。
メンバーは、隅木田くんーーー隅木田優斗くん。
矢本くんーーー拓斗くん。
坂宮ーーー坂宮陽都。
それにわたし。

「おい、真美」

後ろから来たのは坂宮。
わたしに「好き好き」って言ってたくせに、他の子と付き合ってるの。
本当にやになっちゃうよ。
飽きられるよ。
でも口に出さずに学食へ向かう。

「弁当?それとも、学食の?」

「学食で買うよ」

本当は初等部しか学食がなかったんだけど、生徒会長の隅木田くんの力で、中等部にも学食を作った。
すごいよね、本当。

「失礼します」

学食へ入ると、中等部のカッコいい先輩たちがご飯を食べていた。
隅木田くんと矢本くんも、椅子に座ってほおばっている。

「遅れてすみません。あの、買ってきていいですか?」

隅木田くんの許可を得て、坂宮と買いに行く。
初等部より多いメニューに驚いた。

「わたしは、和食セットにしようかな。坂宮は?」

「俺も真美と同じで」

和食セットを頼み、隅木田くんたちがいる椅子に座った。
明スイの書記担当のわたしは、ノートに書き込む。

「そろそろクリスマスだよね。クリスマスって、スイーツいっぱいでしょ?だから、活動しないかなって」

隅木田くんが言って、昨日おばあちゃんと話したことを思い出した。
確かに、毎年クリスマスはケーキを食べる。
クリスマスって、キリスト教の関連するイベントだよね。

「俺やりたい!」

坂宮が賛成する。
わたしもうなずいた。
矢本くんは元から納得していたらしく、クリスマスに明スイは活動することになった。

「じゃあさ、何をどうするか決めよ。パーティー2回目にする?それとも、明スイだけとか」

隅木田くんが言うのと同時に、ご飯が運ばれてきた。
中等部は運んでくれるんだ。
初等部は作るまで待つのに。

「ありがとうございます」

「明スイで集合?楽しそうね」

学食のおばさんが笑った。
隅木田くんが笑い返す。
…おばさんが行くと、また話を切り替えた。

「どうする?」

うーん、どっちでも楽しそうだけど。
頭をひねって考えた。

467:岬◆x.:2017/10/17(火) 18:51

7.会場は?
わたしは、例年のクリスマスの夜を思い浮かべた。
ひとりっこだったわたしは、ママとパパと食卓を囲んでチキンを食べていたな〜。
ママ手作りのピザだったり。
時には、パパ手作りのハヤシライスもあったり。
あれはちょっと不味かったな〜。
いろんな思い出が思い浮かぶ。

「わたし、家族のイベントだと思います。ですから、明スイのイベントでいいと思います」

隅木田くんに言うと、みんなに確認をとった。
坂宮が反対する。

「だからこそじゃん。他の楽しみ方もあるってこと」

そういうこと〜?
隅木田くんはわたしに賛成。
矢本くんは坂宮に賛成した。
ちょうど考えが真っ二つになる。
こういうとき、新メンバーとかいてほしいな〜。
奇数だと嬉しいから。

「おっ、木咲!」

「何、矢本。あなたたち明スイよね?わたし、木咲」

木咲先輩は中等部1年生のようで、梨歩佳さんの仲良しだそうだ。
よく矢本くんの家に来るとか。

「木咲は、クリスマスどうする?」

「何誘い〜?」

木咲先輩、違います、意見お願いします!
矢本くんが説明し、やっと理解してくれた。

「家族〜?やっぱり、姉帰ってくるしさ〜。いろいろあるんじゃない?」

やった、家族イベント!
あっさり木咲先輩は引き返して行って…決まり!

「決定〜」

468:岬◆x.:2017/10/17(火) 19:21

8.坂宮からの告白
急いで和食セットをかきこみ、初等部へ坂宮と戻る。
なぜか、秀花ちゃんのことを思い浮かべてしまった。
秀花ちゃんから切り出してきたことなんだから、坂宮に言ってもおかしくないよね。
言ってみようか。
息を吸う。

「あの…」

「真美、聞いて」

…かぶったぁっ!
ふたりとも目をそらす。
なんか、双子みたい。
眞理ちゃんと優眞くんもなるのかな?

「俺からいい?」

コクコクとうなずく。
坂宮は、良かったとでも言うように顔をほころばせた。

「何度も何度も言ったじゃん、真美に好きって。俺、まだずうっと好きだけどさ…」

言葉をにごらせる。
どうせ言うならはっきり言ってよ。
坂宮は、遠くを見つめるように言う。

「秀花と付き合い、始めて…さ…」

「別にはっきり言えば?それに、わたし関係ないし。好きにすればいいじゃん」

そうよ、そうよ。
わたしは、音も立てずに走った。

469:岬◆x.:2017/10/17(火) 20:53

9.最近のニュース
わたしはその夜、小説を書いた。
佐藤ななみちゃんの物語。
何度も何度も書き直しててね。
タイトルは『佐藤ななみ物語』に決定したの。
生涯を描くの。

「真美ちゃんお勉強?」

1日家に来たママが部屋を訪ねる。
あわてて勉強道具を出した。
ちょうどドアを開けた。

「推薦で行けるなんてすごいわね。だけど、気を抜かないでね。真美ちゃんなら大丈夫そうだけど」

わたしの勉強ノートを覗き込む。
ちょっとしか書いてなかったので、あわてて前のページに戻した。

「結構前からやってるの。見て」

たまったリスニングCDを見せる。
これ全部やったんだよね。
毎日5枚確実にやってるんだ。
ママは驚いた。

「すごいわね。さすが。お母さんにもお礼するのよ」

「うん」

おばあちゃんには、本当に感謝してるってば。
わたしのためを思ってくれてるもん。
ママもそうだったよね?


朝起きると、リビングのこたつにおばあちゃんとママがいた。

「おはよう」

トーストが準備されていて、となりに目玉焼きまである。
いつも少ない塩コショウのおばあちゃんとは違い、多めのママ。
この目玉焼きはママが作ったんだ。

「いっただっきまーす!」

トーストに一口かぶりつく。
あっ、この焼き加減といい、マーガリンの多さといい…ママ!

「最近、事件が多いねえ」

おばあちゃんが新聞を見ながらつぶやく。
確かに最近は、不倫や離婚、結婚、出産などのニュースは少ない。
交通事故や覚醒剤、もうイヤになるほど聞いているニュースだ。

「絶対使うんじゃないよ、真美ちゃんは」

わたしは大きくうなずいた。
使うわけがない。
利益ないもん。
そう思いながらトーストを食べた。

470:岬◆x.:2017/10/21(土) 17:52

10.登校は波乱の予感!
制服を整えて、家を出る。
坂宮とのことがあってからと言うものの、やっぱり秀花ちゃんとも顔を合わせられない。
合わせる顔、ないし。

「あっ、真美ちゃ〜ん」

実柚乃ちゃんが電車から降りてきて、駅から走ってきた。
ちょっと駅の方へ向かう、と。

「真美ちゃん」

しゅ、秀花ちゃん。
あわてて家の中へ駆け込む。
忘れ物とかしてないかなーなんて。
おばあちゃんとママにはヘンな目で見られるし、秀花ちゃんはいるし。

「ね〜えー!真〜美ーぃちゃあん!」

外で実柚乃ちゃん呼んでる…。
カーテンをちょっと開けて外を見てみると、秀花ちゃんはいなかった。
急に逃げて、弱いな、わたし。
それに…わたし最低。

「真美ちゃんいないのぉ〜?」

あっ、待ってるんだ。
ドアを開けると、家の中から見た通り、実柚乃ちゃんしかいなかった。

「ごめんね。ちょっといろいろあったんだよね」

「へ〜何?」

実柚乃ちゃんは興味津々というように身を乗り出してくる。
どこまで話していいのだろう。
プライバシーっていうか、そういうのあるよね…。
告白してきたこととか。

「言いにくいならいいや。早く行こ」

あっさり終わった…。
長々と聞いてくるかと思ったけど。
すると、実柚乃ちゃんはランドセルから本を出した。

「ねえ、見て見て。青山野に受かる対策問題集!これやってるの」

ちょっと借りて、中をペラペラめくってみる。
何から何まで書かれている。
予備で、入るといい塾、制服のデザインから部活動まで。

「実柚乃は、料理部入るよ〜」

さすが。
わたしはバトミントンを続けようかなと思ってるよ!
あっという間に学校に着いて、わたしはあることを思い出した。
美華ちゃんが迎えに来ると言うことに。

471:みゆ◆x.:2017/10/21(土) 21:22

名前変えました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
11.クラスでクリスマス会
学校で準備をしていると、美華ちゃんがいつも通りやって来た。
時間は遅いし、コヨはいないけど。
そのまま椅子に座り、準備を始めた。
あれっ?
何か言ってこないのかな。
わたしは、ちょっと考え込む。
もしかしたら、わたしから謝れってことかも。
いや、もしかしたら、絶交とか?
背中にスーッっと冷たい風が吹き込む。ヤバイ、ダメだ。

「美華ちゃんっ!」

「どうしたの、真美ちゃん」

相変わらず、普通。
見つめながら、朝あったことを素直に話した。
すると、美華ちゃんはたちまち爆笑し始めた。
わ、わたし、ヘンなこと言ったっ?
優佳ちゃんたちも来て、美華ちゃんに話を聞くと、優佳ちゃんたちまでもが爆笑。
ど、どうして?

「真美ちゃんウケる〜。別によくね?リムジンで行かなくても」

優佳ちゃん、キラキラ語だ!
キラキラ語っていうのは、よくね?みたいな、すごい言葉。
わたしは絶対使わない言葉!

「でも、わざわざ家来てくれたのに」

「そう思うなら、ちゃんと待ってて」

美華ちゃんは笑って吹き飛ばし、笑いながら準備に戻った。
案外、一番楽かも。
ここのグループ。
コヨがいたらもっと楽しくなるのに。
ひとり外を見ていると、なぜか寂しくなってきた。


翌日、その翌日と、普通に過ぎていく日々。
すると、あの日。
学級委員長の七井さんがクラスの前に出た。

「みんな〜。クリスマス会やらない?みんなバラバラになるから、パアッって楽しく!」

七井さんの言葉で、クラスは盛り上がった。
みんなグループで集まってワイワイガヤガヤ。
わたしも美華ちゃんたちとおしゃべりしていた。

「おい、七井やるじゃん」

最近多いよ、キラキラ語。
そう思いつつも、七井さんの話を聞いた。

472:みゆ◆x.:2017/10/21(土) 21:32

12.クリスマスプレゼント
七井さんの話と立候補により、クリスマス会は、陽茉理ちゃんの家の、自分の階の会場で。
12月24日にクリスマスプレゼントをひとつ持っていって、クジで当たった人からもらうらしい。

「わたしは、まあ13万くらいの腕時計でいいかしら」

美華ちゃん、高いよそれ!
優佳ちゃんたちも「ダメダメ」って言うけど、美華ちゃんは「そんな安いのないし」って。
はぁ〜。
お金持ちは違う…。

「実柚乃は何か作ろ〜」

「さっすが実柚乃ちゃん!」

「クジで実柚乃ちゃんが当たりますようにっ!」

みんなが実柚乃ちゃんを囲う。
わたしの作るクリスマスプレゼント誰のところ行くんだろ。
一応お裁縫のつもりだけど。
実柚乃ちゃんのところに行ったら、下手感増すな〜。

「穂乃香は何買うの?」

「まあ、適当に文房具セットで」

いやいや、適当じゃない。
文房具セット買う子多いと思うし。
わたしもそれ思ったし。

「真美ちゃんは?」

優佳ちゃんに聞かれて、「キャラクターのマスコットかな」と答える。
美華ちゃんは感嘆をもらす。
そんなにすごいことじゃないし!
絶対絶対、ぜぇ〜ったい。
美華ちゃんの方がすごいぃ〜!

473:RINA:2017/10/22(日) 01:24

モンブランさん私と友達になりませんか?

474:みゆ◆x.:2017/10/23(月) 12:14

もちろんいいですよ。
そんなこと言ってくださってとても嬉しいです。

475:みゆ◆x.:2017/10/27(金) 22:11

13.4人でお買い物!
その日、わたしたちは隣町のショッピングモールへ出掛けた。
学校が終わってから、すぐ荷物を持って、美華ちゃん家のリムジンで。

「まあ、わたしはここでプレゼント済ませようかしら」

美華ちゃんがつぶやき、優佳ちゃんが持っていたスマホを差し出した。
画面を覗き込む。
すると、ショッピングモールに売られているクリスマスプレゼントの一覧が出ていた。

「美華ちゃんこれ見て決めたら?」

穂乃香ちゃんも同じページを開いて、見せてくれる。
今回、保護者として、運転手さんとおばあちゃんが来てくれる。

「見て見て!これ可愛くない!?」

わたしが指差した文房具セット。
鉛筆、消しゴム、メモ張、ペン、小さな鉛筆削りのセット。
しかも、値段は560円。
めちゃめちゃ安いじゃん!
わたしのお小遣いでもよく買える!

「真美ちゃんがこれ選ぶとするじゃんか〜。男の子がもらったら?」

「それは…誰かもそういうことあるかもだし、交換?」

「それはそれで面白いかもね」

なんて話を交わしていると。
リムジンが停まり、美華ちゃんが指示を出す。
一度来たことがあるここ。
晴奈ちゃんと来たんだよね。
ああ、楽しみっ!

「じゃあ行きましょう」

美華ちゃんは、ワンピースのすそを翻して、クリスマスプレゼントルームへ足を向ける。
止まることなくズンズン歩いて行く。
調べてくれたのかな?
トウナちゃんたちが調べてくれたみたいに。

476:みゆ◆x.:2017/10/28(土) 13:53

14.マーフィーの文房具セット
ここがクリスマスプレゼントルーム。
彩り鮮やかなラッピングを手に、スキップする保育園児。

「ここから選びましょう」

美華ちゃんが品を手に取る。
よーし、わたしも、スマホに載ってた文房具セットを探すぞ〜。
近くに、男の子でも女の子でも使えそうなのあるかもだし。

「真美ちゃん待って待って」

おばあちゃんも一緒に探す。
なかなか見つからないな〜。
穂乃香ちゃんが、探していた文房具セットを見つけてくれた。

「ありがとう、穂乃香ちゃん!」

探していたキャラクターのセットを見つけて、手に取る。
これは確実に女の子だもんな〜。
わたしは、男の子でも使えるデザインのセットを見た。

「どれか、真美ちゃん用に買ってあげようか?」

「うんん、いい」

おばあちゃんにはラケットもらうんだけど、サンタさんからは何もらおう。
シューズにしようかな。

「これはどうだい?」

おばあちゃんが手に取ったセット。
それは、最近人気のマーフィーの文房具セット。
女の子はもちろん、わたしも使いたいくらいのデザイン。
それに、男の子でも使える、女の子過ぎないデザイン。

「これにする!値段は…680円」

サイフから700円を取り出す。
先に会計を済ませて、美華ちゃんたちのところへ向かった。

477:みゆ◆x.:2017/10/28(土) 14:04

15.突然スプレー事件!
それぞれ、わたしはマーフィーの文房具セットを。
美華ちゃんは中学校でも使えるトートバッグを。
優佳ちゃんは腕時計を。
穂乃香ちゃんは髪の毛のアレンジセットを買ったみたい。

「じゃあね、美華ちゃんありがとう」

順番に、穂乃香ちゃん、優佳ちゃん、わたしの順番で降りていく。
家に着くと、おばあちゃんはリムジンを見つめた。

「真美ちゃんの友達にあんな子がいたなんて知らなかったわ」

話したことなかったもんね。
今日はいろいろあったしということで、外食にした。
久しぶりにお寿司も食べたかったし。

「ごめんね。おばあちゃんとふたりきりのお寿司で」

「うんん。嬉しい」

こんな時だけだった。
わたしが嬉しいだなんて言えるときなんて。


学校に行くと、美華ちゃんたちも、もちろんわたしもビックリした。
まだ誰も来ていないはずの校舎。
警備員が警備したはずの校内。
なのに…。

「多田本真美、青山野学園の校長に断られた…ですって!?」

初等部の壁いっぱいにスプレーで書かれている言葉。
わたし、断られてないし!

「真美ちゃんガチ?」

「うんん、知らないよ、違う違う!」

何で…一体、どうして…。

478:みゆ◆x.:2017/11/02(木) 16:48

16.犯人は
みんなが登校してきて、人だかりが出来るようになった。
そんな中で、クスクス笑う子たち。
そちらを見ると、秀花ちゃんグループがいた。

「ちょっと、こっち見られた!あっち行って、あっち」

秀花ちゃんのグループのひとりが声を張り上げ、逃げていく。
そんな様子を、美華ちゃんはしっかり見ていた。

「真美ちゃんは児童会長だからとかじゃない。めっちゃ頑張ってたし!」

美華ちゃん…。
ほっこりした気持ちで見ていると、美華ちゃんは指差して叫んだ。

「優佳と穂乃香、捕まえてここまで」

足の速い穂乃香ちゃんは、ひとりで秀花ちゃんたちを追い掛ける。
優佳ちゃんもそれに続いた。
ムスッっとした顔の美華ちゃんに、とても嬉しかった。

「真美ちゃんがかわいそう。意味わかんねえ。どうせアイツらだよ」

穂乃香ちゃんが秀花ちゃんと、ふたりの女の子を。
優佳ちゃんがひとりの女の子を連れてきた。

「ちょっとこっち来い」

美華ちゃんに呼ばれて、秀花ちゃんグループはたたずんだ。
思いっきり美華ちゃんはみんなをにらみつけると、声を張り上げた。

「これやったのお前らだろ!」

「…」

秀花ちゃん、わたしと楽しく話す仲良しの友達だと思ってたのに。
どうしてわたしの友達は…。

「答えろよ!」

辺りはざわめきを消し、こちらを注目している。
美華ちゃんに呼び出されるのはすごく大きいもんね。
だって校長先生の孫だし。
わたしも、自分が怒られているかのように聞いていた。

479:みゆ◆x.:2017/11/07(火) 20:21

17.トドメの一言
すると、一番初めに秀花ちゃんがゆっくり前に出た。
美華ちゃんをはっきりにらむ。

「よく分かったね。わたしたちがやらせてもらった」

「何のために?」

「もちろん嫌がらせのため」

秀花ちゃんが、わたしに嫌がらせ…?
ウソでしょ。
一緒に児童会活動したじゃん。

「だって、わたしの方が優秀だし、児童会も入ってるし。涼太の幼なじみだよ!?なのに何で」

美華ちゃんは、鋭い目でにらみ、吐き捨てた。

「そんなことやってるから推薦されないんだよ。真美ちゃんに謝り、反省文5枚をわたしと校長、真美ちゃんに提出し、グループみんなで弁償することが償い」

美華ちゃんの後を、悲しい目をしたわたしたち3人は付いていく。
どうしてわたしの仲良しはこんなに離れていってしまうの…?

「大丈夫よ、真美ちゃん。アイツらもやらざるをえないから。校長に伝えてくるから、後はよろしく」

美華ちゃんは校長室へ向かい、わたしたちは教室へ向かった。
だけど、関係者として。
児童会長として。

「優佳ちゃんたち先行ってて」

わたしは、トイレのバケツに水をたっぷりため、廊下へ出た。
学校のスプレー、水で落とせるんだよね〜。
手荒い場のスポンジとぞうきんを使って、スプレーを消す。
これでも、ちょっとは汚れてる。
これをしっかり弁償するんだ、秀花ちゃんたちは。

「真美ちゃん。わたしもやる。黙って見てられないし」

優佳ちゃんと穂乃香ちゃんが来て、一緒に壁とスプレーと立ち向かう。
近くで、秀花ちゃんグループがいた。
腕を組んで。

「まだ真美ちゃんに用があるわけ?」

優佳ちゃんが一歩前に出る。
わたしと穂乃香ちゃんも壁と立ち向かうのを一旦やめる。

「早く帰りな。あなたたちに用はないから」

穂乃香ちゃんの一言で、去っていった秀花ちゃんグループ。
はぁ〜。
わたしは、冷たくて痛い手でほっぺたを叩いた。

480:みゆ◆x.:2017/11/07(火) 20:32

18.秀花ちゃんに下された処分
校長先生や前田先生、それから小林先生や家族にまで知り渡ってしまった秀花ちゃんグループ。

「アイツらが悪いんだから」

校長先生は大きなダメージを受けたらしく、一番にやり、計画した人を、退学処分に下した。
残念ながら秀花ちゃん。

「やめてあげてください!きっと…秀花ちゃんはそんなことしません!」

わたしは必死で校長先生に言ったけど、秀花ちゃんの生徒手帳、生徒書類をゴミ箱に捨てた。
彦宮学園から秀花ちゃんの名前が消えていった。

「いいのよ秀花は。青山野も終わり。あんなことする人じゃないと思ってたのに、最悪」

ふーちゃんは、泣きながら秀花ちゃんが彦宮学園を出ていくのを見ていた。
門を抜け、ひとりで出ていく姿を。

「ごめんなさい。まーちゃん」

ふーちゃんがお母さんみたいに謝る。
秀花ちゃんは悪くない。
だれも…。

「気にすることないわ。それでみんないいんだし」

そうかなぁ。
ふーちゃんはまだ泣き止まず、今日1日中ずっと泣いていた。
涼太くんや実柚乃ちゃんが声をかけても、どうにもならない。

「わたしも、本当は退学寸前だった。気持ちは分からなくもないかも」

「アイツのことなんていいじゃん」

美華ちゃんは苦笑しながらつぶやいた。

481:みゆ◆x.:2017/11/07(火) 20:47

19.よいお年を!
今日は終業式。
みんなと今年会うのも終わり。

「では皆さん、よいお年を!」

前田先生が笑顔で言い、わたしたちは帰った。
よいお年を、かぁ。
明後日はいよいよ明スイパーティー。
楽しみだなあ、冬休み。
宿題はもちろん多いけど。

「じゃあ真美ちゃん、よいお年を!」

実柚乃ちゃんはスキップしながら先に階段を駆け降りる。
わたしは美華ちゃんたちと階段をゆっくり降りた。

「クリスマスは何をもらうの?」

穂乃香ちゃんがつぶやき、わたしたちは一瞬でクリスマスムード。
やっぱり冬休みと言えばクリスマス!
それから〜お正月。
お年玉に初詣!

「わたしはバトミントンとラケット。中学校でも続けたいの」

「わたしは、海外旅行券を」

えええっ!?
美華ちゃんのクリスマスプレゼントは海外旅行券!?
わたしは絶対無理だ。
優佳ちゃんは、黄色の腕時計。
穂乃香ちゃんは、アクセサリーをもらうらしい。

「ラケットいいね。カッコいい」

「いやいや!美華ちゃんのクリスマスプレゼントがすごいよ」

海外旅行券なんて、絶対いらない。
もらうほど欲ないから、まずもらわないし。
もらったとしても、どうしたらいいのか分からないし!

「今日リムジンないって言ったよね」

ああ、そうだった。
そのまま久しぶりに門を通り、交差点へ向かい、そこから駅の方へ行く。

「そろそろだね。バイバイ」

穂乃香ちゃんが別の方向へ帰り、3人だけになった。
すぐ、交差点になり、わたしもひとりで帰る。
終業式が終わり、冬休みになる期待でいっぱいだった。


明スイパーティーの準備は今日。
昨日の終業式から解き放たれ、わたしはパーティーの準備を始めた。
わたしの役割は買い出し。
スイーツの材料を買うんだって。
おばあちゃんとスーパーへ行き、材料をカゴに入れていく。

「真美ちゃんお母さんみたいだねえ」

「うんん、おばあちゃんの買い出しの手伝いみたいだよ」

わたしは、またポンポンと材料をカゴに入れていった。

482:みゆ◆x.:2017/11/07(火) 21:05

20.メリークリスマス!
クリスマス!
陽茉理ちゃんの家でパーティー。
今日はパーティーが二回も。
しかも、ここで。

「まずは、やっぱりプレゼント交換しない?」

七井さんが言い、みんなが一層盛り上がる。
実柚乃ちゃんのプレゼントがほしい!
きっとすごいのだし!
手作り〜。

「真美ちゃんの文房具セットほしい!実柚乃、そのキャラクター好きなの」

良ければ交換〜。
七井さんは、「適当に座って」と指示を出す。
椅子に座り、音楽に合わせてプレゼントを横へ横へ回していく。

「止めっ!」

七井さんが声を張り上げる。
わたしの前にあるプレゼント。
『あなたへ捧げる歌by陽茉理』
陽茉理ちゃんからだ!
歌詞が書いてある。

「ねえねえ陽茉理ちゃん!」

もらった歌詞集を掲げ、見せる。
陽茉理ちゃんはにっこり。
しっかり握られている。
わたしの文房具セット…!

「わたしと陽茉理ちゃんのプレゼント交換だね」

陽茉理ちゃんも大きくうなずく。
ちなみに実柚乃ちゃんのプレゼントは穂乃香ちゃんのところへ。
美華ちゃんのプレゼントは涼太くんのところへいった。

「交換が終わりました。陽茉理ちゃんの家の方々が料理を作ってくれたので、食べましょう!」

ここで昼ごはんを食べて解散。
解散したら、すぐ矢本くんの階へ。
矢本家の人みたい。
幸せだろうなあ、お金持ち。
わたしも幸せだけど。

「お〜い、真美ちゃん。陽茉理ちゃんに感謝してごちそう食べよ!」

美華ちゃんがニッっと笑いながら、チキンにかぶりつく。
優佳ちゃんや穂乃香ちゃんも同じようにかぶりつく。
えーい、わたしもっ!

「真美ちゃんいけいけ!」

穂乃香ちゃんが言い、取り皿にチキンをのせ、かぶりつく。
とっても豪快に。
あ〜、美味しい!

「ありがとう陽茉理ちゃん!」

陽茉理ちゃんはにっこり笑い、陽茉理ちゃんもチキンをかぶりついていた。
チキン人気かな。

「楽しいね、クリスマス会!」

「うん!」

わたしは、また一口。
また一口と、チキンをかぶりついていった。


明スイの気持ちに切り替える。
ここは矢本くんの階。
まだみんな来ていないので、陽茉理ちゃんと話ながら待っていた。

「本当にありがとう。すごく美味しかった!」

「嬉しいわ。お母さんも喜ぶ」

矢本くんもとなりで聞きながら喜んでいた。
陽茉理ちゃんの歌詞もすごかったし。
この時、本当の笑みがこぼれた。

483:みゆ◆x.:2017/11/07(火) 21:11

21.明スイパーティー!
かき混ぜたり、焼いたり。
初めての明スイ活動より絶対に手早くなってきてる!
そう思いつつ、オーブンからクリスマスケーキを取り出す。
わたしがひとりで作ったの。
チョコレートプレートには『メリークリスマス』と書かれている。

「真美ちゃん上手いね!さすが」

隅木田くんが、わたしのケーキをほめてくれた。
嬉しい…。
最後にイチゴを飾り、冷蔵庫へ。
冷やすんだ。
ここからは、隅木田くんの手伝い。
マカロン再挑戦か…。
この前のも美味しかったけど。

「きれいですね、このマカロン」

すごく形の整ったマカロン。
お店に出せそうだよ!
隅木田くんはにっこり。
今日は笑顔あふれる日だね。


「いっただっきまーす!」

出来上がったスイーツを、明スイメンバーみんなで食べる。
やっぱり美味しい!
マカロンもケーキも。
他のスイーツももちろん。

「今度はさ、お店に出品してみたいよね」

隅木田くんがつぶやき、共感。
思ったもん。
これなら出せるって。
きっとわたしたちの団結力なら!
きっとわたしたちなら!
わたしたちを信じて、みんなでうなずいた。

484:みゆ◆x.:2017/11/07(火) 21:18

22.最後のパーティー
翌日の夜。
今日は家のパーティーだ。
ついに明日の25日、サンタさんがクリスマスプレゼントーーーバトミントンのラケットを…!

「真美ちゃん寒いね…」

今度はスーパーに今日の買い出し。
もちろんおばあちゃんに着いていってみた。
チキンを探して。
陽茉理ちゃん家のチキンは高級だから無理だけど。
きっと売ってるよね。

「真美ちゃん、あれ」

おばあちゃんが指差したそれ。
チキン!
おばあちゃんはチキンを手に取り、そっとカゴに入れた。

「いいのっ?」

レジでひとつだけ高いチキン。
きっと美味しいはず!


「メリーメリーメリー…クリスマス」

おばあちゃんとふたりのクリスマス。
チキンを、思いっきりかぶりつく。
陽茉理ちゃん家で食べた時と、もちろん迫力は変えない。

「すごい食べっぷりね真美ちゃん」

おばあちゃんをうならすほどの食べっぷりのわたし。
今年、ほぼ最後。
いろんなことがあったな〜。

「美味しいかい?」

「もちろん!」

わたしは、いろんな意味でうなずいた。

             (つづく)

485:みゆ◆x.:2017/11/07(火) 21:22

あとがき
               みゆ

こんばんは!
皆さん、『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイいかがですか?
もう14巻。
感謝です!

今回はあまり雑談ありません!
話すと長くなってしまう。
ちょっとした恋愛感ありますから。
良ければ日記板『えみりん』へ。

ではでは。
次回予告といきますか。
次回はやっと新年!
コヨとの再会、坂宮の失恋。
だんだんみんなも受験必死です!

ここまで読んでくださったあなた!
コメントしてください。
本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!
では次回会いましょう!

486:みゆ◆x.:2017/11/11(土) 19:43

『ここは明確スイーツ研究部!15』

人物紹介

多田本 真美
私立彦宮学園の児童会長。私立青山野学園へ推薦で入学が決定している。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

487:みゆ◆x.:2017/11/11(土) 19:53

1.明けましておめでとう!
みんな、あいさつ。
新しい年を迎えました。
わたしは多田本真美。
さて!
新年、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!


年越しそばを食べた夜。
今は朝。
元旦の。

「明けましておめでとう!真由ちゃん」

ピヨピヨッっと返事をするのは、真由ちゃん。
わたしが飼ってる?鳥なの。
一階に降りると、おばあちゃんがおせちを作っていた。

「おはよう、真美ちゃん。お雑煮を食べたら、初詣に行こう。」

家には、久しぶりにいるパパ。
それからおばあちゃんにわたし。
ママはいないんだ。
どうしてかって?
入院してるからだよ。
妊娠してるんだ、双子の子を。
だからおばあちゃん!

「お雑煮早く食べたいなっ。おもち、おもち」

テレビを付けると、やはり元旦スペシャルがやっていた。
芸能人の人たちによるサバイバル。
歌コンテストなどなど…。

「も〜しも〜し。緑川で〜す」

緑川ーーー晴奈ちゃん家だ!
晴奈ちゃんとは、わたしの幼なじみ。
家はちょっと遠いけど、ずーっと仲良しなんだっ!

「はいっ!」

ドアを元気よく開けると、ピッシリ着物を着た晴奈ちゃんと晴奈ちゃんのお母さん。
初詣に行くのかな?

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくね。受験でバラバラになるけど」

晴奈ちゃんのお母さんが言う。
出てきたおばあちゃんもあいさつ。
は〜っ!
新年、だぁーーーーっ!

488:みゆ◆x.:2017/11/11(土) 20:04

2.初詣でのお願い事
暖かいセーターを着て、わたしとパパとおばあちゃんで初詣に向かう。
パパの運転で、有名な神社へ行くらしい。
どこなんだろう。
ワクワク。
別名最強神社だって。
何が最強か分からないけど。

「真美は何をお願いするんだ?」

「教えな〜い。教えると、ご利益がないんだって。そんなのヤダもん」

ちょっとムスッっとした顔をして見せる。
おばあちゃんが顔を見て笑った。

「ひどい顔だよ。真美ちゃんのカワイイ顔が台無しじゃないか」

カワイイって…!
思ってないでしょおばあちゃん。
おばあちゃんを見ると、ちょっとニヤニヤ…。
ちょっとっ!

「着いたぞー。降りてー」

パパが車を停め、降りる。
なっ、何という立派な神社!
さっ…さすが最強神社。

「お守り買うでしょ?真美ちゃんたくさん持ってるけど」

秋の遠足で大量買いしたもんな〜。
実柚乃ちゃんと。
実柚乃ちゃんとは、家庭科が得意なカワイイ女の子。
仲良しなんだ〜。

「買いたいけど、いい?」

おばあちゃんはにっこり。
あっ、ありがと〜う!
わたしは感謝しつつ、お参りの参列に並んだ。
すごい並んでる。


 パンパンパン!
柏手を打つ音が響く。
お賽銭を入れて、お願い事!
ええっと…。
美華ちゃんたちと一緒にいられますように。
秀花ちゃんたちと仲直りできますように。
気持ちよく卒業できますように。
中学校楽しめますようにっ!
多かった、かな?

「真美ちゃん、こっちこっち」

おばあちゃんに手を引かれる。
神様お願いしま〜す。
わたしはケムリを浴びるところへ来て、たっぷり浴びておく。
そして、お守りの列に並んだ。

489:みゆ◆x.:2017/11/11(土) 20:16

3.思わぬ再会
売られているお守りを見回す。
ピンク、カワイイな〜。
今年のお守りはピンクにしよっと。
色を決めて見ていく。
なかなかカワイイデザインばかりで決められない。

「恋愛、学問、交通安全…」

やっぱり学問かなぁ。
中学校へ進学する年だし。
学問のピンクのお守りを差し出し、おばあちゃんにお金を払ってもらう。
お守りを大事にポケットにしまうと。

「ちょっと待って」

おばあちゃんを止めて、目をこらす。
ちょっと汚れたお守りを付けた女の子が歩いていた。
そのお守りは、わたしがコヨにプレゼントしたのと全く同じ。
汚れてた部分も同じかもっ!

「コヨっ…か、カズエちゃん!」

コヨの本名、カズエちゃんと呼ぶと、振り返った女の子。
間違いない。
カズエちゃんだ。
コヨだ。

「真美だよ、カズエちゃん!」

カズエちゃんはこちらへ歩いてくる。
となりには、友達らしき子も。
友達出来てるじゃん。
充実してるみたいで。

「真美…」

「カズエちゃん、お守り付けてくれてたんだね。ありがとう」

「本名覚えててくれてありがとう」

すると、となりの友達がカズエちゃんに話しかけた。
カズエちゃんって呼んでない。
イネコと呼んでいる。
また異名かな。

「カズエって何?本名って?」

「うんん、カズエって名前で劇やってさ。カズエのことみんなカズって呼んでたから、本名覚えててくれたって」

言い訳ダメじゃん。
ちょっと笑いを堪えつつ、話を聞く。
イネコって名前なんだ。

「新しい家庭に引き取られたの。前の人たちには捨てられた…。コウスケとふたりで。コンは違うけど」

捨てられた…。
カズエちゃんは普通に言う。
そんな軽いことじゃないのに。

「わたしの名前は高橋イネコ」

「イネコ…」

カズエちゃんはきびすを返す。
友達と来た道を戻った。
カズエちゃん…わたしは悲しい気持ちでいっぱいだった。
だって、捨てられたなんて…。

490:かわた◆gY:2017/11/11(土) 20:18

みゆさんの小説面白い。
後、このスレ覚えてる?
http://ha10.net/yy/1509096222.html

491:みゆ◆x.:2017/11/11(土) 20:31

4.おみくじの結果は?
おばあちゃんに今あったことを伝えると、すごくビックリしていた。
やっぱり。
イネコのことまで全部。

「カズエちゃんと会ってきたのかい」

おばあちゃんはにっこり。
もう、泣きたい。
どうしてカズエちゃんは…。
わたしたちと同じようにしていくことは出来ないの…?

「大丈夫。カズエちゃんは楽しそうだったんだろう?」

わたしはコクンとうなずく。
おばあちゃんはまたしてもにこにこ笑い、おみくじの所へ向かう。
パパはもういるみたい。
おみくじの所へ行くと、すぐパパを見つけた。

「パパっ」

パパの所へ駆け寄る。
100円でおみくじ一回ね。
おばあちゃんに100円をもらい、みんな一斉におみくじを開く。
数字を出し、引き出しを開ける。
何だろう、何だろう。

「いっせ〜の〜でっ!」

わたしの掛け声で3人がおみくじを開く。
うーん、吉か〜。
パパもおばあちゃんも吉。
面白くないな〜。
災いがたびたび降りかかってくる…。
ウソーッ!
何でなの〜!?
運悪いのかも…。
学問、学問っ!

「成績はアップやダウンの差が人生最大ですって!?」

あわわわわ。
思わず大きな声を…。
あわてて口を塞ぐ。
でっ、でもでも!
人生や未来はわたしが創るもの。
だから…大丈夫。
わたしは、スーッっと息を吸い込んで拳を固めた。

492:みゆ◆x.:2017/11/11(土) 20:33

かわたさんありがとうございます!
あと、覚えてますよ。
コメントしてなくてすみません。

493:みゆ◆x.:2017/11/17(金) 22:07

5.年賀状
初詣から帰ってくると、早速パパからお年玉。
そして、おばあちゃんからお年玉。
ばあばとじいじの喫茶店に行ったら、またお年玉もらえるっ!
ウキウキしつつも、一応受ける面接にドキドキする。
青山野学園の面接なんだけど、推薦だけど受けるんだって。
それが、来週。
今ドキドキしてどうする!
 ピンポーン

「はーい」

おばあちゃんが出る。
お正月って大変。
いろんな人がごあいさつに来るし、おせち料理もあるもん。

「彦宮さんよ〜」

美華ちゃんっ!?
急いで一階へ降り、玄関へ出る。
マフラーをグルグル巻きにした美華ちゃんと運転手さんがいた。

「こんにちは、美華ちゃん。明けましておめでとう!」

「おめでとう、真美ちゃん」

美華ちゃんは、手作りのオソロイマフラーをプレゼントしてくれた。
わたし、作ってないよっ!
だけど、これからもよろしくって意味のプレゼントだって。
マフラーを配ってるとか。
あ、グループの子にね。

「じゃあ、これからもよろしくね、美華ちゃん!」

「もちろん」

美華ちゃんと少し会話を交わし、美華ちゃんはリムジンで交差点の方へ走っていった。
…!
その時、わたしは気付いた。
年賀状のことを。

「おばあちゃーんっ!年賀状!」

ポストの中には、大量の年賀状が。
おばあちゃんの年賀状はないけど。
パパとママとわたしの年賀状の束を持って家に入る。

「真美ちゃん宛にたくさん届いて良かったねえ」

「うんっ!」

晴奈ちゃん、ふーちゃん、坂宮、隅木田くん、矢本くん兄弟、実柚乃ちゃん姉妹、ファンと思われる知らない名前の子たちに…。
前田先生!
涼太くんと樹くんからも届いてる!

「すごくいっぱい!」

わたしは、みんなの一言一言をゆっくり読んだ。

494:みゆ◆x.:2017/11/17(金) 22:19

6.おせちと最後の始業式
その日の夜。
ばあばとじいじにもらったお年玉も含めて、たまったお年玉を見た。
今年はあんまりお金使うつもりはないし、やっていける!

「さあ真美ちゃん、た〜んと食べて。明日からおばあちゃんは家に帰るんだから、当分食べられないのよ?」

そうだ!
おせちのお重に詰めてある美味しそうな卵をお皿によそう。
豆も調理されてて美味しそう!

「いっただっきま〜す!」

卵にかぶりつき、黄身が口の中でとろけていく。
ほ、ほひひい…。
パパのお皿に盛ってあるエビ、わたしも食べたああい!

「食べっぷりが最高ねえ」

おばあちゃんが嬉しそうにわたしの食べっぷりを見る。
あ〜、今年もいい日に、なりますように。


今日は始業式。
ピッチリ制服を着こなす。
これが最後の始業式。
もう、終業式って終わったんだ。
と思うと、胸がムズムズする。

「真美ちゃん!実柚乃の年賀状どうだった?」

実柚乃ちゃんの年賀状ーーーそれは、今年の戌年で、戌のスタンプが押されており、イラストも描いてあった。

「スタンプね、実柚乃が彫ったの!すごくない?」

「めっちゃかわいかった!」

実柚乃ちゃんは誇らしげに鼻をすする。わたしも来年は、あんな感じに、しようかなあ。

495:相原梨子◆x.:2017/12/11(月) 18:41

名前変えました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
7.スイーツフェスティバル
家に帰ると、すぐ実柚可さんが訪ねてきた。
実柚可さんーーー実柚乃ちゃんのお姉さん兼お母さん。
もう、実柚乃ちゃんはお母さんが亡くなっていて、実柚可さんが、お姉さんもお母さんも代わってやっているんだって。

「ごめんね、真美ちゃん。これ見てもらえる?」

実柚可さんは、一枚のパンフレットを差し出してくる。
受け取り、内容を見てみた。
『スイーツフェスティバル』。

「実柚乃から聞いたけど、真美ちゃん明スイメンバーなんだってね。これ、出てみない!?」

実柚可さんの話に寄ると、このスイーツフェスティバルは、実柚可さんが企画して立ち上げているそうだ。
今のところ、出店がないみたい。

「明スイが来てくれたら、盛り上がると思うんだ!アイドルも呼ぶ予定なんだけど!」

「行きます行きます!出店してみたいです!」

実柚可さんはニッっと笑って、パンフレットをくれた。

「お願いしに来て、こんなことさせるのはあんまりなんだけど、パンフレットに従って、出店届書いてね。じゃあ楽しみにしてまーすっ!」

実柚可さんは、ドアをバタンと閉めて帰っていった。
しゅっ、しゅっ、出店ーっ!
あわてて隅木田くんに電話する。

「もしもし。多田本ですけどっ!」

「真美ちゃん?どうしたの?」

わたしは、実柚可さんに言われたことを全て話した。
隅木田くんは、楽しそうに聞いてくれる。

「ありがとう。真美ちゃん。ぜひ参加しようよ。じゃあ、明日矢本の家で」

約束をして、電話を切る。
彦宮祭で出店してから久しぶり!
あ〜、楽しみっ!

496:相原梨子◆x.:2017/12/11(月) 19:31

8.坂宮とふたりで
翌日の午後。
約束通り矢本くんの家へ自転車を走らせる。
ダウンの下はセーターと、暖かい格好をしているはずなのに寒い。
何でこんなに寒いの〜?

「あっ、真美」

後ろから坂宮が自転車に乗ってくる。
ここからは、ふたりで行くことにした。坂宮と付き合っていた秀花ちゃん。
会ってるのかな?

「俺さ、また真美好きになった。秀花が退学になって、別れたから」

「秀花ちゃん、公立行ったんだよね。何か、わたし悪いことした気がする」

坂宮は自転車から降りて、手で押しながらニカッっと笑った。

「秀花が悪いんだから、真美は気にするなよ。真美は悪くない」

そうかな…。
一番、坂宮が秀花ちゃんの近くにいて、その坂宮が言うんだから。
きっとそれでいいよね。

「おい、着いたぞ。どこ行く気だ」

わぁっ。
もう着いてた。
あわてて自転車から降りる。
本館を通りすぎ、別館へ向かう。
こっちが、矢本家のたくさんいる子供たちのプライベートルームみたい。
 ピンポーン
坂宮がドアフォンを押す。

「俺の階来て。あれ?多田本と坂宮ふたり!?付き合ってるの〜?」

「付き合ってない、付き合ってない」

わたしはすぐ否定した。
とりあえず、坂宮と矢本くんの階へ向かった。

「真美、否定するの早すぎ」

「だってそうでしょ?…もう。わたし先行くから」

矢本くんの家のスリッパをパタパタさせながら矢本くんの階へ足を傾ける。
いつも行く、一番奥のキッチンへ行くと、もうふたりともいた。

「遅れてすみませんでした。あの、スイーツフェスティバルのパンフレット印刷してきました」

隅木田くんと矢本くんに、それぞれパンフレットを差し出す。
坂宮が来ると、わたしは詳しくスイーツフェスティバルについて説明した。
日時は再来週。
それまでに準備するんだ。
まだまだ時間あるから大丈夫!

497:相原梨子◆x.:2017/12/24(日) 16:45

9.メニューは?
それから、早速何のスイーツを作るのか決めた。
案はみっつ。
まずは、マカロン。
スイーツと言えば女の子。
女の子と言えばカワイイもの好き。
カワイイスイーツと言えばマカロン。
次に、プリン。
これは、お手伝いに来てくれた矢本くんの妹、梨萌佳さんの言ってたことなんだけど、味のアレンジが簡単なんだそうだ。
最後に、きなこもち。
正月を迎えて、新年はおもちというワードが出てきて、きなこもち。

「やっぱり、プリンじゃない?いろんな味が楽しめるの」

梨萌佳さんがクックパッドを調べながらつぶやいた。
わたしたち明スイは、出来るだけオリジナルのスイーツ作りを試みている。
なので、今までもあまりクックパッドを見なかったのだ。

「おい、梨萌佳。お前の発言権利、ないから」

矢本くんが冷たい目で見る。
梨萌佳さんはちょっと不貞腐れたけど、クックパッドを閉じて椅子に持たれかかった。

「すみませんでしたー。まあ、もしプリンにするんだったら、案があるから呼びに来てね!」

そう言い残して、矢本くんの部屋を出ていく。
一瞬沈黙が流れる。
すると、隅木田くんが手を打った。

「全部合わせるって方法でやってきたけど、マカロンにプリンにきなこもち。これらを合わせるって出来る?」

ここは何でもお任せ!
矢本くんの妹のひとりであり、梨萌佳さんの双子、梨歩佳さんに頼る。
梨萌佳さんもスイーツ作りは得意。
だけど、梨歩佳さんは特別。
すごい腕の持ち主だ。

「呼んだ〜?あ、真美ちゃん、あけおめ〜」

梨歩佳さんは、ハイテンションなのを押さえきれずにハグしてくる。
矢本くんが無理矢理引き離した。

「うっとうしい。多田本に嫌われるぞ。明スイのことで相談」

別に、嫌わないけど。
そんなことを言う合間もなく、わたしが記録していたノートを見た。

「こんなの簡単、簡単。パフェ状にしてしまえばいいのよ」

パフェ?
わたしの質問に答えるように、梨歩佳さんはノートのページをめくり、シャーペンを走らせた。

「まず、プリンを下に引くように。それの上から、きなこもちとマカロン。生クリームなんかでデコしたら?」

おお〜。
さすが梨歩佳さん!

「ありがとうございます!」

ペコリとお辞儀する。
すると、梨歩佳さんは耳元でそっとささやいた。

「本当に礼儀正しくていい子だよね。いつでも家に着いていいよ」

「どういうことですか?」

聞いたけど、それっきり何も答えてくれなかった。
梨歩佳さんは矢本くんの部屋を出ていく。
ちょっと、意味教えてくださ〜い!

498:相原梨子◆x.:2017/12/24(日) 16:55

10.お久しぶり、香音ちゃん
今日は、とりあえずプリン作り!
誰よりも張り切っている梨萌佳さんと一緒にプリン作りを始める。
料理器具を机いっぱいに並べる。

「梨萌佳、担当決めて」

矢本くんが梨萌佳さんに指示する。
梨萌佳さんが口を開けかけたとたん。

「あけおめことよろ!坂宮くん!」

久しぶりだ、香音ちゃん。
香音ちゃんは、矢本くんの従姉妹。
同い年で、坂宮が好きなの。

「香音ちゃん、悪いけど忙しいの。陽茉理と遊んでてもらっていい?」

梨萌佳さんが頭を下げる。
一緒に隅木田くんも頭を下げた。
香音ちゃんは「イヤイヤ」とわがままを言ったが、坂宮に断られ、あっさり帰っていった。

「坂宮くんありがとね。香音ちゃん、なかなか止まらないから」

梨萌佳さんが苦笑いしながらつぶやいた。
そうかな?
それだけ好きってことだから、わたしが坂宮だったら嬉しいけど。

「おい梨萌佳、た、ん、と、お!」

矢本くんが声を上げる。
そうだった、プリン作るんだ!
梨萌佳さんが気を取り直す。

「ええっと、」

「待て!俺と真美は一緒な」

ちょっと、坂宮!
急に突っ込んだので、矢本くんに頭を叩かれる。
本当ににぎやかだなあ。

「いいーっ?」

梨萌佳さんがふたりをにらむ。
ふたりとも「はいっ!」と情けない返事をして椅子に座った。

「じゃあ、坂宮くんと真美ちゃんが基本的なプリン作り。隅木田くんと拓斗兄が温度作業。わたしがサポートね」

温度作業って言うのは、温めたり、冷ましたり。
基本的なプリン作りは、温度作業以外のことをいうのかなっ!

「さあ、開始ーっ!」

広いキッチンに、梨萌佳さんの大声がこだました。

499:相原梨子◆x.:2017/12/24(日) 17:06

11.ふたりが言った意味
分からないところは梨萌佳さんへ。
時々、香りに釣られてか香音ちゃんが覗きにくる。
だけどそのたびに、坂宮が断り続けてるんだ。
粘り強いよね、香音ちゃん。
ある意味、尊敬する。

「真美ちゃん、こっち」

今から蒸す。
隅木田くんにプリンを渡す。
熱い、熱い。
あわてて水で冷ます。

「大丈夫?真美ちゃん。火傷してない?冷ますなら、これ、保冷剤」

梨萌佳さんが心配して保冷剤を差し出してくれた。

「ありがとうございます。ですけど、大丈夫です。お返しします」

保冷剤を梨萌佳さんに返す。
すると、さっきの梨歩佳さんと同じように、耳元でそっとささやく。

「いい子だねえ、真美ちゃん。良かったら、わたしお姉さんになれるよ?」

その時、やっと分かった。
梨歩佳さんが言ってたことが。
矢本くんと結婚して、矢本家に着くってことだったんだ。

「イヤイヤイヤイヤ、早いです!」

梨萌佳さんはニヤニヤ。
それを見ていた坂宮が、ムッっとした顔をしてこちらにやって来た。

「何を話しているんだ、真美!」

すると、梨萌佳さんはからかいもふくめて坂宮に忠告した。

「嫌われちゃうよ。真美ちゃんに。いつでも拓斗兄が取っちゃうからね」

坂宮はちょっと弱気になったのか、あわあわしている。
もう、坂宮ったら。
本当に受け止めて。
嫌いにならないよ、それくらいじゃ。

「蒸し終わったぞ、梨萌佳」

矢本くんがプリンを持ち上げる。
梨萌佳さんは、ちょっと残念そうな顔をして笑った。

「冷ましてー」

冷蔵庫に入れられたプリン。
わたしたちは、冷ましている間にお茶会をすることにした。

500:相原梨子◆x.:2017/12/24(日) 17:14

12.最高のプリン
時計の針が動く音が、やけに大きく聞こえる。
 カチッカチッカチッ
みんなで時計をジッっと見つめる。
さんっ、にいっ、いちっ。

「今だ!行けっ!」

矢本くんが声を張り上げ、梨萌佳さんがプリンを取りに行く。
そっとプリンを持って帰ってくる。
ここは、矢本くんの家。
プリンが冷まし終わったのだ。
昨日作った、プリンが。

「食べてみよっ!食べてみよっ!」

梨萌佳さんがラップをペラペラと剥がしていき、ぷるっぷるのプリンを机の真ん中にドンと置く。
ほひひほ〜!(美味しそ〜!)

「いっただっきまーすっ!」

坂宮が、大きなスプーンで自分のお皿にプリンをよそい、自分のスプーンを構えた。
そして、一口パクッ!

「うっめえ!みんなも食ってみろ!」

坂宮は目を輝かせて、大きなスプーンでみんなのお皿にプリンをよそった。
わたしのお皿にも、たくさんのぷるっぷるのプリンが。

「いただきます!」

プリンを手に、プリンをパクッ!
いい香り!
これに乗って、味も最高。
梨萌佳さんに向き直る。

「指導ありがとうございます!」

すると、梨萌佳さんはキャハハと笑いながらつぶやいた。

「前言ったの忘れないでね!」

だから、結婚とか全然まだですってば〜!


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