【リレー小説】学園女王【企画?】

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142:ビーカー◆r6:2017/04/21(金) 18:57

「ぶ、部長……!? あの、お身体は……」
「もうすっかり大丈夫だよ。華道部の方はどう? 昨年から皆に任せっきりだったけれど」
「はい、お陰様で……」
部長と呼ばれたその生徒は、一年生の恵里と亜衣にとっては見覚えのない人物だった。だが周りを見廻すと、辺りがやけにざわついている。恐らく彼は上の学年の間では有名人なのだろう。
「なら良かった。ところで、安部野君はいるかな」
「私は今日は見ていませんが……何かご用事が?」
「いや」
そこまで言うと生徒は一旦顔を背け、コホコホと咳をする。弱々しい咳がますます彼の病弱な雰囲気を強めた。ある程度呼吸を落ち着けてから、再びアデラに向き直った。そして若干声を潜めて言う。
「怪我したって百合香から聞いたから。ちょっと心配でさ」

「あの、アデラ先輩……あの方は?」
生徒が去った後に、恵里はアデラに問う。
「……彼は私の部の先輩なんです。元々お身体が弱かったのですが、昨年の2月に体調を崩してしまって……しばらく休学されていたのですよ。彼こそが華道部の部長、北条智さんです」
「へえ、華道部の……その、北条先輩は生徒会長とお知り合いなんですか?」
「百合香」という単語に反応した亜衣が、アデラに問いかける。
アデラは少し困った様な表情を浮かべた。しばらく頬に片手を当てた後、微かに溜息を吐いて話し出す。
「そうでした……一年生のお二人は彼を知らないんでしたね。彼はこの学園の……生徒会長に恋心を燃やす、副生徒会長なんです」
アデラの発言に、同時に「えっ!?」と声を出す二人。
入学当初から密かに語られていた謎の副生徒会長の存在。その正体は、つい先程まで自分達の目の前にいた男子生徒だったのだ。
まさか、彼が噂の副生徒会長だったとは――。
アデラはやはり重苦しそうな表情をしていた。それに気付いた二人は最初こそ頭に疑問符を浮かべていたものの、徐々にその理由を察し始める。
副生徒会長、ましてや会長に恋する人物。となれば、自分達に協力するという事はまず有り得ないだろう。百合香と連絡も取り合っていれば、当然反逆者の事も知っている筈だ。彼が復活派の敵となる未来は、とても避けられそうにもない。
「……生徒会の中でも、彼はかなり穏和な人物です。直接処刑に加わることもほとんど無いようですし……ただ、協力はしてもらえないでしょうね。彼はいつも言っていますから……『百合香の為なら何だってするよ』、と」
SHRの始まりを告げるチャイムが鳴る。
だが三人は、しばらくその場を離れはしなかった。


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