【リレー小説】学園女王【企画?】

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1:ビーカー◆r6:2017/01/29(日) 18:05

――この学園は、女王に支配されている。

【主な内容】
生徒会長によって支配されカースト、いじめなど様々な問題が多発した白羽学園(しらばねがくえん)。生徒会長を倒し、元の学園を取り戻す為に生徒達が立ち上がった……という話です。

【参加の際は】
好きなキャラを作成し、ストーリーに加えていただいて構いません。
ただし、
・チートキャラ(学園一〇〇、超〇〇)
・犯罪者系
・許可なしに恋愛関係や血縁関係をほかのキャラと結ばせる
は×。
また、キャラは「生徒会長派」か「学園復活派」のどちらかをはっきりさせてください。中立派もダメとは言いませんが程々にお願いします。
キャラシートは必要であれば作成して下さい。

【執筆の際は】
・場面を変える際はその事を明記して下さい。
・自分のキャラに都合の良い様に物事を進めないように。
・キャラ同士の絡みはOKです。ただし絡みだけで話が進まないということの無いように。
・展開については↑のあらすじだけ守ってくださればあとは自由です。
・周りの人を不快にさせないように。

244:ABN 一年前十二月七日〜翌年二月末までのどこか/どこかの教室:2019/02/09(土) 13:28

※過去の時系列について考えていたら少し不自然な部分を見つけたので、そこの補完も兼ねた番外編です。
※テコ入れも兼ねて新キャラが登場しています。今後も登場するかどうかは未定です。
※部活設立についての捏造設定があります。
※京子さんの失踪事件についてそれっぽい推理がありますが、実際の真相と違ったらスルーして構いません。
※色々詰め込んだらまた長文になってしまいました、申し訳ありません。



 木嶋京子および木嶋一家の失踪、そして木嶋邸の全焼火災。どう見ても事件性の高いそのニュースは全校生徒たちをにわかに騒めかせた。何しろ白羽学園においての彼女といえば、現生徒会長のお気に入りとなった璃々愛に、かつて陰湿ないじめを行っていた女子生徒。当時の変遷を知る生徒たちはもっぱら、璃々愛が百合香の権力を借りて京子に復讐を遂げたのではないかとこぞって推測を立てた。もっともその仮説の真偽は、今日まで明らかになっていないが。
 いずれにせよこの一件を機に、百合香への反目を企てる者がさらに減少したことは言うまでもない。家庭一つを丸々抹殺できるような支配者を相手取ろうと考える無謀者は存在しなかったのである。――たった一人の例外を除いて、だが。


 ◆ ◆ ◆


「えーん! 剣太郎くん、今日も駄目だったよう」

「いや、俺のところに泣きつかれても困るんだけど……」


 困惑する剣太郎に構わず、やや大袈裟な泣きのジェスチャーで会話を切り出してきたのは、女子にしてはかなり大柄な身長と体形の同級生。そのショートヘアと同じくゆるふわとした雰囲気をまとう生徒の名前は『足立八重(あだち やえ)』と言った。
 彼女は元々、剣太郎と同じく広報部の一員だった。そして部長の千明が部員たちに自主退部を薦めた際、自らの身の安全を優先して退部を選んだ生徒の一人でもある。その後無所属となった八重は新たな楽しみを求め、広報部時代に培ったカメラワークを活かして『映画研究部』を立ち上げようとしているのだが――。


「だってえ、書類の文字も全部綺麗に書いたんだよ? メンバーや顧問の先生だって十分集めたし、条件はちゃんと揃えたんだよ? なのになのに、璃々愛ちゃんったら『広報部の輩が建てる部活なんて承認できない』って言うんだもん! ひどーい!」

「聞いてないし。……まあ、結局あいつらにとってはそれが本音なんだろうね」


 自分の迷惑顔を気にしていない八重にため息をつき、それはそれとして璃々愛の言い分に剣太郎は呆れに似た納得を覚えた。
 白羽学園で新たな部活動を設立する場合、部員集めや顧問の確保など、いくつかの条件をクリアする必要がある。そして最後に教師たちの審議を経て校長からの承認をもらえば、晴れて新部活が誕生するのだ。とはいえ学園内の権力者が、この冬から生徒会長に就任した百合香にすり替わっている現状では、承認をもらうべき相手も校長ではなく彼女に代わっているのだが。
 そしてその百合香と言えば、今日まで映画研究部の設立を否認し続けてきたのだ。八重が用意した書類や部員数などに問題はないにもかかわらず、やれ書類の字が美しくないだのやれ部員のやる気が見えないだのと重箱の隅をつつくような難癖をつけては、八重の申請をことごとく突っぱねてきたのである。しかし実際のところ以上の難癖は生徒会としての建前に過ぎず、璃々愛が言った通り「八重が千明率いる広報部の一員だったから」というのが本当の理由なのだろう。


「むー。別にわたし、会長さんに反逆しようとか考えてないんだけどなあ。ただ学校生活を楽しめればそれでいいのに」

「足立さんが考えてなくても、向こうはそう思ってるだろうさ。……あるいはそれを抜きにしても、単純に嫌がらせってこともあるかもしれないけど」


(続く)

245:ABN >>244の続き:2019/02/09(土) 13:30

 八重が集めた映画部(仮)のメンバーは、その多くが彼女と同時期に広報部を辞めた部員たちだ。当人たちにその意思はなくとも、生徒会としては強制廃部や部長処刑を理由にした反逆を危惧していることだろう。そんな危険性のある集団を部活認定すれば、部費という名の塩を敵に送ることになってしまう。
 それに百合香からすれば、前々から自分の周囲を嗅ぎまわっていた千明の行動はさぞかし煩わしかったはずだ。恐らくその腹いせを千明一人の処刑だけでは晴らせず、元広報部員である剣太郎や八重にまでぶつけているのかもしれない。
 どのみち部活承認の否認理由が広報部だというのなら、彼女と同じく元広報部員である剣太郎にできることはない。具体案を出せないのなら、これ以上八重の相談を聞いても無意味だと判断し、剣太郎は座っていた席を立った。


「待ってよう。もう少ししたら期末考査で忙しくなっちゃうから、今のうちに承認してもらいたいのにい」

「やめておきなよ。君は前もって退部したからまだマシだけど、それでも出しゃばり過ぎたら部長の二の舞に――」

「呼んだかーい?」

「っ!?」


 噂をすれば影。廊下の外に出ようと剣太郎が手をかけた扉が向こうから開く。そこに現れた人物の姿に――より正確に言うなら、その人物の体の状態に剣太郎と八重は絶句した。


「どーしたんですか部長!? 体中怪我だらけじゃないですかあ!」

「どーしたもこーしたも、毎度お馴染み会長ちゃん主催の処刑大会に決まってるだろ? いやー、みんな面白いほど手加減しないね。はっはっは」

「笑ってる場合じゃないですよ! と、とにかく手当しないと……!」


 扉近くの柱に寄りかかる姿勢で登場した千明の体は、夥しい量の傷や痣で埋め尽くされていた。制服も血や泥で汚れ、明確に集団暴行を受けたと分かる出で立ちだ。何より千明本人もかなり息を荒げており、いつもの笑顔も生気が半減しているように見える。
 このまま放置していては傷が化膿するか、雑菌が入ってさらに状態が悪化してしまう。それを危惧した剣太郎は、救急道具を借りようと急いで保健室の方に向かおうとした。だがそんな彼の行動に、千明は即座に待ったをかける。


「やめとけ。この学園の保健室に行ったって、『処刑対象に手当は必要ない』って門前払いされるのがオチだぜ。それより八(や)っちゃん、ちょっと撮影頼むわ」

「撮影? あー、分かりましたあ」


 千明から差し出された彼女のスマートフォンを見て、首をこてんと傾げる八重。しかしややあってその意味を理解するとスマートフォンを受け取り、ボロボロな千明の姿を写真に収め始めた。最初は全身、次は背面、そして顔、腕、脚、腹部などを詳細に撮っていく。二人の様子を見ていた剣太郎は、千明が何をしようとしているのかようやく理解した。


「ぶ、部長……。もしかして、処刑の証拠を集めるために、わざわざ怪我を?」

「正解。処刑対象ってのは、ある意味じゃ処刑制度の実態に一番近いポジションだからな。これでもっと詳しい被害内容が記録できるってもんだ」


 にやりと口角を上げながら、千明は制服についているボタンの一つを指さす。一瞥しただけでは分からないが、よく見るとそれはボタン型のカモフラージュカメラだった。恐らくはこのカメラで、処刑として暴力を振るってきた生徒たちの凶行も記録しているのだろう。
 過程の動画と結果の静画。あとは怪我の診断書を揃えれば、暴行罪を立証することは十分可能だ。ただしその対象となるのは、今回千明を痛めつけた一部の生徒のみ。彼らを裁いても別の会長派の生徒が湧いて出るだけで状況はほとんど変わらず、増してや直接手を下していない元凶の百合香を告発することは到底できない。相応の収穫があったとはいえ、千明が掲げる目標を考慮すれば、彼女が被った負傷は剣太郎にとって看過できないものだった。


(続く)

246:ABN >>245の続き:2019/02/09(土) 13:32

「だからって、ここまで無理することないでしょう! これじゃあ処刑制度を明らかにするとか以前に、部長の体が持ちません……!」

「んなもんとっくの昔に承知済みだっての。それにこの間のあれ、木嶋京子ちゃんっていただろ? その一件を考えりゃあ、この程度のリスクを渋ってる場合じゃねえのよ」

「きしまきょーこちゃん……。ああー、十二月の初めにどっか行っちゃった人かあ。それと部長の目標と、何か関係あるんですかあ?」


 全焼した自宅を残し、謎の失踪を遂げた木嶋京子と彼女の家族。京子には処刑制度が適用されていたわけではないが、「百合香の機嫌を損ねる真似をした」という経緯と「原因不明の失踪」という末路は他の処刑対象たちのケースと酷似している。その点に限って言えば彼女も処刑制度に関わっているかもしれないと予想できるのだが、それはあくまで生徒間に流れる噂の範疇。十分な信憑性を確立できない情報では、「処刑制度を白日の下に晒す」という目標の足しになるとは到底思えず、八重は撮影の終わったスマートフォンを渡しながら頭上にクエスチョンマークを浮かべる。そんな後輩の疑問に答えるべく、千明は得意げに人差し指をぴっと立てた。


「まず二人とも。木嶋一家失踪事件特集のワイドショーは見たかい?」

「え? あ、はい。地元ニュースでもそうですが、全国放送の番組でも大々的に取り上げられてましたよね」

「わたしも同じの見ましたあ。京子ちゃんたちの失踪理由とか考察してて、すごかったですう」

「すっげー文字通りの小並感。んじゃ次。その番組の中で流れたインタビュー映像は覚えてるか?」

「えーっとー。ちょっとうろ覚えですが、町の人たちが答えてたのですよねえ? みんな怖いなーとか無事だといいなーとかって言ってた……はずですう」

「そう、概ねそんな感じでした。言っちゃあ何ですが、行方不明のインタビューにしては月並みというか……。あんな特集を組むくらいなら、もっと関係の深い人に取材すれば良かったのに…………あれ?」


 はたと思い当たったように剣太郎は顔を上げる。言われて思い返せば、あの特集番組には足りないものが一つあった。自分と同じものに行き当たった様子の彼に千明は頷くと、今度は八重に三問目の質問を投げかける。


「じゃあ八重ちゃん。“白羽学園の生徒や教師が失踪事件のインタビューを受けた話”は聞いたことがあるかい?」

「……ああー。言われてみれば、全然聞いたことないですねえ。同じ学校の人なら町の人より、もっといー手掛かりが手に入るって思いそうなのにい」

「その通り。あたしが調べた限りでも、学園関係者が取材を受けたって情報は見つからなかった。あるいは関係者の方が取材拒否した可能性もあるだろうが、全員が全員完全スルーってのは考えられねえ」

「ということは、残る可能性としては……」

「ああ。“会長ちゃんがマスコミに圧力をかけて、白羽学園への干渉を禁止した”だろうな。もし学園関係者が処刑制度に関わる失言をかましたら、そこから自分たちの所業がバレかねねえだろ?」


 最終結論に辿り着いた後輩二人に、千明はにっと笑みを浮かべる。だがその表情は満足というより、苦笑いという表現の方が似合った。
 広報部員たちに退部を薦めた際、千明は「百合香は警察や裁判所を無力化するほどの力を持っている」と考察した。しかし実際はそれらに加え、報道機関をも抑えつける力を持っている可能性もある。情報を武器とする千明にとって、この新情報は非常に都合の悪い凶報だったのだ。


(続く)

247:ABN >>246の続き:2019/02/09(土) 13:32

「公的機関も駄目ならマスコミを当てにしようかと思ってたんだけどな。そこも潰されたとなりゃあ、もはや学園の真実は自力で外に持っていくしかない。だからこそ自分の身を犠牲にしてでも、処刑制度の情報を集める必要があるんだよ」

「……なるほど、部長の考えは分かりました。でも、やっぱり俺は……」

「剣くんの言うことも一理ありますう。命あっての物種っていーますし、死んじゃったらその真実も抱え落ちですよう」

「へーきへーき。だってあと一、二ヶ月もすりゃあ合法的にトンズラできるんだぜ? ボコボコになることはあれど、流石に死ぬことはねえだろうさ」

「トンズラ? 部長、どこかに行っちゃうんですかあ?」

「そんな今生の別れみたいな目すんなって。卒業だよ、そつぎょう!」


 三月一日。それは高校生活最後の日であり、学修の日々に有終の美を飾る門出だ。そしてこの日を迎えれば、三年生は卒業証書と引き換えに『白羽学園生』の肩書を失う。つまり学園とは無関係の人間になり、百合香の独裁から解放されるのだ。ついでに言えば、学園外の人間には処刑制度を適用することもできないため、理不尽な処刑生活もそこで終了する。それが千明の考える魂胆だ。


「この学園から逃げおおせれば、会長ちゃんにできることは何もなくなる。部外者まで不用意に処刑しようもんなら、それこそ自分の足がつきかねないだろ? あとは持ち帰った証拠を外にぶちまけりゃあこっちのもんよ」

「なるほどお、だったら本当にあとちょっとの我慢なんですねえ! そしたら会長さんも反省して、映画部も承認してくれるかも!」

「そんなに上手くいくかなあ。それに、木嶋さんについての噂が本当なら……」


 楽観的な女子二人に対し、不安げに肩を落とす剣太郎。そのタイミングで時間の区切りを告げるチャイムが響く。その音に気付いた剣太郎と八重は、驚いた様子で時計を見た。


「ああー、もうこんな時間だあ。剣くん、そろそろ行かなくちゃあ」

「うん。でも、部長をこのまま放っておくわけには……」

「大事ねえよ。こんなこともあろうかと、ある程度の救急道具は自分で持ってきた。伊達にこれまで処刑制度を調べてきたわけじゃないぜ?」


 処刑制度を理由に保健室を頼れないとはいえ、それでも千明の負傷を放置することはできない剣太郎。彼の心配を察した千明は、おもむろに制服のポケットから自前の包帯やガーゼなどを取り出した。ポケットに入る程度の量しかないため十分とは言い難いものの、痛みを凌ぐための気休め程度にはなるだろう。


「なら良いんですが……。でも、手当してもすぐに動かないで、少し休んだ方がいいと思います。怪我だけじゃなくて体力も消耗してるでしょう?」

「うんうん。部長がここにいることは、わたしたちが適当に誤魔化しておきますう」

「オーライ、そこまでしてくれりゃあ十分だ。二人もあんまり油売ってると他のやつらに怪しまれるぜ? そろそろ行きな」

「は、はい! 部長もどうか気を付けて……!」


 去り際の瞬間まで自分の身を案じながら、教室を後にした剣太郎と八重。広報部という繋がりは既に途絶えたにも関わらず、それでもかつての部長として慕ってくれている。千明はそんな二人の背中を見送ると、廊下側の窓の下に身を隠してから壁に背を預けた。ここなら廊下からは死角となって見えづらいため、当分は他生徒たちの追撃をやり過ごすことができるはずだ。
 後輩たちの手前平気なふりをしていたが、やはり女子の体に容赦のない暴力は堪えたのだろう。千明は目を閉じたまま、しばらくの間ゆっくりと大きな息を繰り返していた。そしてある程度疲労が癒えたところで、不意に口角をニヒルに歪める。


「……ま。ああは言ったけど、あの会長ちゃんが卒業を待ってくれるほど悠長な性格とは思えねえしな」


 皮肉のような独り言を呟きながら、メール機能を立ち上げて新規作成画面を開く。その件名欄に入力したのは『遺言書』の三文字だった。


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