【リレー小説】学園女王【企画?】

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1:ビーカー◆r6:2017/01/29(日) 18:05

――この学園は、女王に支配されている。

【主な内容】
生徒会長によって支配されカースト、いじめなど様々な問題が多発した白羽学園(しらばねがくえん)。生徒会長を倒し、元の学園を取り戻す為に生徒達が立ち上がった……という話です。

【参加の際は】
好きなキャラを作成し、ストーリーに加えていただいて構いません。
ただし、
・チートキャラ(学園一〇〇、超〇〇)
・犯罪者系
・許可なしに恋愛関係や血縁関係をほかのキャラと結ばせる
は×。
また、キャラは「生徒会長派」か「学園復活派」のどちらかをはっきりさせてください。中立派もダメとは言いませんが程々にお願いします。
キャラシートは必要であれば作成して下さい。

【執筆の際は】
・場面を変える際はその事を明記して下さい。
・自分のキャラに都合の良い様に物事を進めないように。
・キャラ同士の絡みはOKです。ただし絡みだけで話が進まないということの無いように。
・展開については↑のあらすじだけ守ってくださればあとは自由です。
・周りの人を不快にさせないように。

115:蒼月 空太◆eko:2017/03/28(火) 10:10

法正視点

片腹 拓也の書き込みが消されたか・・・まったく、報復する側の手口を読めてないと見えるな。
高度なハッキングが出来るのが藤野だけだと思ったか?まったく、一度破った手口はもう聞かないと見せしめするのはいいが、それ以上の技術への報復を受けきれないのは、下策しか考えられない証拠だな。

俺は左手に巻いている赤い布から、スマートフォンを取り出した。操作して、電話をある人物にかけて、言う。

「俺だ」

『ああ、アンタか』

「助けて欲しいんだろ?だったら条件を飲め」

『なんだよ?』

「お前が生徒会長に脅されてやったという報を流す。」

『会長を愛している俺なのにか?』

「行き過ぎた愛、それから生まれてしまった事件、それに気づき真の愛を取り戻す生徒会長と精神が崩壊した少年・・・彼女たちは真の愛を築き上げ、無事に幸せとなった。めでたしめでたし。生徒会長にも、お前にも悪くない条件だろう?」

『まったく、隠れ生徒会派ってのは・・・つくづく嬉しいもんだ。条件を飲むぜ。それに、安部野にも復讐はしてくれるよなぁ?』

「もちろんだ。アイツは生きているだけで邪魔だからな・・・じゃあな」

俺は不適に笑いながら、スマートフォンの電源を切り、赤い布にスマートフォンをしまう。そして左手に巻きなおす。その前に、左手の傷を見る。酷く裂傷した傷だ。俺は鮮明に覚えているトラウマを思い出しながら言った。

「この左手に込めた恨み・・・晴らす・・・」

俺はそこから、片腹 拓也の売名を始めた。





悪名としての。勝手だが経歴などを変えさせてもらった。風花 百合香のストーカー行為などな・・・いや、これは元々か。

116:蒼月 空太◆eko:2017/03/28(火) 14:57

法正視点

そう・・・俺は忘れたことがない。悪夢となり、トラウマとなった。あの頃を。

一年前―

「俺は一葉 法正だ。よろしくな」

俺は、クラスが違っても、片腹 拓也、松葉 晃と仲がよくなった。三人で笑いあった日もあった。
俺はずっと続くと思っていた。この日々が。

ある日。

「なぁ一葉、風花 百合香先輩って知ってるか?美人なんだよ!」

「確かに・・・美人だな。」

「確かに美人だよなー」

俺と松葉も、片腹の意見と同じだった。

「俺はあの人見ててよー、なんつーか、神様だと思ったぜ!」

「処刑制度がなけりゃな」

だが片腹の言っていることに、松葉は顔をしかめていた。

「俺も生徒会役員だからよ、あわよくばパンツの一枚でも・・・」

「お前首飛ばされるぞ」

二人の漫才的なやり取りに、俺も笑ってはいた。ただ。

「でも、処刑制度ってのは、独裁者みたいなものだよな・・・女王気取りなんだろうかな・・・」

この一言だった。俺が言う必要がなかった一言だった。次の瞬間、片腹はカッターナイフを取り出して、俺の左手に刺した。

「っつ・・・」

「テメエ!生徒会長を愚弄するのか?!」

「い、いやただ少し口が滑っただけで・・・」

「うるせえ!許さねえぞ!」

「拓也!押さえろって一葉も悪気があったんじゃないだろうからよ!」

松葉は片腹を押さえた。だが、俺はカッターナイフで刺された傷を押さえながら、帰宅した。そして病院に行った。医者からの一言は、無情な言葉だった。

「傷は残るよ」

「え・・」

「こんだけ深く刺されたら傷だって残るさ」

ふざけるな。何故こうなる?片腹はなんであんなクズを神様だとか言う?ふざけるな。意見の違いだけで人を殺す気か?あいつは。松葉 晃。あいつはあいつでわからない。だから放っておく。だが、俺は決めた。片腹 拓也に忠誠を誓う・・・・フリをして生徒会を滅亡させる。表向きはただの生徒、裏は隠れ生徒会・・・同時に、風花 百合香と、片腹 拓也の滅亡だ。

俺はしばらくしてから、片腹に謝罪し、その後隠れ生徒会となった。しかし片腹への報復は絶対にする。俺は左手の傷を隠すために、赤い布をまいた。そしてそこにスマートフォンを入れた。隠し武器だ。

「いずれ・・・報復する」




俺が誓った、過去の話だ。今更思い出すのは何故か。まぁいい。奴の悪名を徹底的にやってやる。

117:かおり:2017/03/28(火) 15:07

(時間が戻りまして>>111の続きになります。土曜日の午後です)

やっぱり今日の亜衣は元気がない。私・白野恵里はそう思った。
笑顔がぎこちないし、時折寂しそうな顔をするのだ。
気になるけど、むやみに聞くことは出来ない。少し待つか。

気晴らしになるような話をしたい。他人からすればどうでもいい、でも私達にとっては重要な、そんな類の話。
となると話題は―――。
 学園関連はだめ。
 家族についても注意が必要。
じゃあ、それ以外のこと。例えば、共通趣味である小説とか。

私の予想はあっていたのか、これといって亜衣が悲しそうな顔をすることはなかった。とりあえず一安心。
それでも浮かない顔をしていた亜衣。私に言いたくないのかもしれないし、もしかして私に迷惑をかけたくないのかもしれないけどね。それでも―――。
私は困っていそうなひとを見ると、何かしたいと思うんだよ。お節介とか、しつこいとか言われるかもしれないけど、それでも何かしてあげたいんだ。
私なんかじゃ力になれない。分かってる。でも、愚痴を聞くことぐらいならできるよ?
元E組をなめないでほしいね。聞き役なら自信あるんだから。

「……亜衣。どうかしたの?元気ないよ?」
「ちょっと、いろいろとあって……」
「学園関連のこと?それとも家族?」
「恵里はすごいね。両方、正解」
「……?」
「喧嘩、しちゃったんだ。彩姉と」
あれ、亜衣のお姉さんって、よく文芸部に来る人だよね。すごく仲が良さそうに見えたけど……。

「ねえ恵里。板橋先輩達について、どう思う?」
亜衣の眼はいつになく真剣で、ああ、亜衣の悩みはそういうことかと、私は思った。
「亜衣は、板橋先輩達の仲間になりたいの?」
「……うん」
うつむいたまま、消え入りそうなか細い声で答えた。やっぱり、ね。
「私は、いいと思うよ?」
「本当に、そう思う?」
「勿論。月曜日になったら、会おうと思ってたんだ」
これは、本当。本当にそうするつもり。
「でも、彩姉はやめろって」
「……このまま女王に従っていろ、というわけ」
「そう。あとね、笹川先輩も会長の味方」
え……笹川先輩が、女王の⁉ありえない。なんで?


私と亜衣の話は、それから数時間続いた。

私と亜衣は、学園復活派に入ることにした。月曜日に会いに行く。
E組のお二人と違い、私達にはある程度の自由がきく。それを利用するんだ。

学園を元に戻すために。

118:ビーカー◆r6:2017/03/29(水) 22:23

「はぁ……」
百合香の自宅から帰路につく途中、麻衣は小さな公園のベンチに腰掛けていた。子供達が活き活きとして公園中を駆け回っている中、溜息をつく麻衣の表情は重く暗い。
百合香と直接話したは良いものの、結局は何の成果も得られなかった。彼女が何を考えているのかも、何をしようとしているのかも分からない。彼女はただ闇の奥底の様な瞳でこちらを見つめては、時々微笑みを浮かべるだけ。その微笑みは何に向けられているのかさえ知る由もない。
あの女王は果たして、本当に人間なのだろうか?――麻衣はそんな事すら考えた。
人間とは思えない美貌。そして、人間とは思えない残虐性。
その姿はまるで、白い羽をもつ神の様にも、黒い瞳をもつ悪魔の様にも……。
「あの……板橋さん、ですよね?」
不意に声を掛けられ、麻衣の思考はそこで一旦途切れた。声に向かって顔を上げると、一人の少女が目の前に立っていた。彼女の姿を見ると、麻衣は一瞬拍子抜けする。大きな青い瞳、編まれた金色の髪に雪の如く白い肌。整った顔立ちの中心に見えるそばかすも、すっかり馴染んだチャームポイントになっている。
流暢な日本語は話すものの、十中八九、彼女は外国人だった。そして麻衣は同時に、この外国人に見覚えがあることに気付いた。
「……アデラ……さん?」
「はい……B組の、アデラ・ヴァレンタインです」
アデラ・ヴァレンタイン。
入学当初、イギリス生まれという事でそれなりに話題になった少女。日本生まれの周りの生徒より背丈は幾分高く、雰囲気も大人びていた。中学入学と共に日本に越してきたらしく、以前から日本語も学んでいたため白羽学園に入るまでにはほとんどの日本語を完璧に話してしまうまでになったのだ。彼女がコミュニケーションに困ることもなく、むしろ英語も話せるバイリンガルとして人気を集めた。
しかし麻衣とは、特に接点は無い筈だった。二人共クラスは違うし、委員会や部活で一緒になるという事も今まで無かったのだ。あえて言うなら掃除場所が近かったくらいか。
「少し、お話よろしいかしら?」
そんなアデラが、麻衣に話しかけたのは……やはり、あの出来事が原因だろうか。
「……良い、けど……何を?」
「……板橋さん、反逆者の貴方にお尋ねします。昨日生徒会の片原君が暴力事件を起こして……それがネットに拡散されたのは知っていますか?」
「えっ?」
突然の質問と知らない事件の内容。そして反逆者という言葉を投げかけられ、麻衣は少し困惑した。アデラがどちらの派閥かも分からない内だったというのが、それに余計煽りをかけたのかもしれない。現時点で彼女が会長に賛成しているのか反対しているかの情報はまだ無いのだ。
数秒間頭を整理させ、なるべく当たり障りのない回答を考え出した麻衣は遅れた返事をする。
「し、知らないわ……どうしてそんな事を?」
「……やはり。知らないのも無理もありません……麻衣さん。この事件の情報が、数時間経ったら綺麗に消えてしまっていたんです。私が見た時には既にある程度拡散されていましたから、麻衣さんの目にも普通なら届く筈でした。でもその前に、不自然なくらいの勢いで情報は消えてしまったんです」
流れる様に話す、敵か味方かも分からぬアデラ。だがこの様な事をわざわざ口にする彼女は、少なくとも敵ではないのだろうか?麻衣は頭をしきりに回転させつつも、アデラの話に少しずつ対応していく。
「……つまり、生徒会に不利になる情報は消されているって事ね? 何故貴方がそんな事を私に言うの? それに、どうやってそんな荒業が出来るのかしら……」
「はい、その通りだと思われます。……私が貴方にこの事を言った理由は二つです。まず一つ――私が貴方に味方する反逆者であるからです」

119:ビーカー◆r6:2017/03/29(水) 22:24

「……味方?」
改めてアデラの顔を見据える。その表情は極めて強く真剣なものであった。
アデラは再び話し出す。
「私は貴方の味方ですから、貴方に有利になる情報は与えなければと思ったのです。信じてもらえないかもしれませんが、私は本気です。……生徒が同じ生徒を傷付けるなんて、絶対にあってはなりません」
彼女の青い目には、確かな決意と正義の炎が宿っていた。思わず麻衣はその熱さに圧倒されかける。彼女の心で煌々と燃えていたのは、復讐心でも反逆心でもなんでもなく、ただ純粋な正義なのだろう。
「じゃあ……私達に協力してくれるの?」
「板橋さん達が受け入れて下さるのなら、是非そうしたいと思っています」
麻衣はしばらく間を置き、やがて微笑む。義心に燃えるアデラに手を差し出し、言った。
「……なら、これからよろしくね。アデラさん」
そう言われたアデラは、差し出された手を見ると太陽の様に明るく微笑む。麻衣の手を強く握り、しっかりと頷いた。
「……それで、二つ目の理由って?」
麻衣は手を離し、再び話を戻す。その問いかけに、アデラの笑顔へ影が差す。
「……貴方が月乃宮先輩の関係者だからです」
「月乃宮先輩?」
「……板橋さん……月乃宮先輩の家が裕福なのはご存知ですよね? 月乃宮先輩には財力があります……もし、その財力を使って警察に手回ししていたとしたら?」
麻衣の手に震えが走る。月乃宮いばらの顔が脳裏に浮かぶ。
「……え……? ……まさか……」
紫色のカチューシャが、きらりと輝く。
「……あんな風に情報を完全に消してしまうことが出来るのは、警察くらいなものです。風花さんにはとても出来ません……ハッキングでもすれば出来る可能性はありますが、それはただの犯罪です。……正当な、罪に問われない、ただのデマへの対処として……月乃宮先輩が、警察を使った。そう、私は考えているのです」

その晩、麻衣は少しばかり寝不足であったという。

120:ABN:2017/03/29(水) 22:44

 週末が明けた、五月四週目の月曜日。休暇中の思い出話や、休み明けの気だるさによる喧騒の中、白羽学園内ではある噂が囁かれていた。
 曰く、二年D組の生徒会役員である片原拓也が、生徒会長の風花百合香に抱いていた恋慕を暴走させ、同じ生徒会の書記である安部野椎哉に暴力を振るったのだという。

 その噂は、共同戦線を一時張っていた翼と彼の友人たちの耳にも届いていた。言づてでも十分伝わる彼の狂気的な感情に、名状しがたい不快感を翼は覚えたのである。


「松葉の家に行ったときも十分アレだったけどよ、まさかそこまでのマジキチだったとはな……」

「しかも追加情報によりゃあ、会長のことストーカーしてたって話だぜ?」

「うっわ、マジかよ! とうとう精神異常者じゃね?」

「だよなー。独裁云々を差し引いても、あんな面白みのない完璧超人を好き好むとかあり得ねえし」

「馬鹿か。問題はそこじゃねえよ」


 いつもの空き教室でぐだぐだと駄弁る友人たち。その途中に差し込まれた検討違いの回答に、翼はぴしゃりと指摘を入れた。水を差された一人は不満げに口先を尖らすが、他の友人は「当たり前だろ」「お前の好みなんざ誰も聞いてねえ」と口々に彼を茶化す。だが、そんな彼らの反応にも、翼は否定的な態度を取った。


「あのなあ。お前らの目は節穴か? この書き込みの投稿時間をよく見てみろ」

「何々? ……月曜、午前3時。それがどうかしたのか?」

「どうもこうも、最初に俺たちがこの話を知ったのは、土曜の夜の掲示板でだろ? だが今はいくら探しても、最古の書き込みがこいつしかない」

「えっ、マジで?」


 驚いた友人の一人が掲示板内検索を使い、同様の書き込みを探しだそうとした。しかし翼が言った通り、拓也についての投稿は月曜の夜中から早朝以降のものしかヒットしない。つまり翼たちが見た、土曜の夜に投稿されたはずの最古の投稿が、何者かによって削除されているのだ。


「土曜に投稿された拓也の記事を、日曜に見た誰かがわざわざ削除した。そして月曜の真夜中にまた誰かが投稿し直したんだろうな」

「なるほどな。削除したのは、やっぱ会長側の奴か?」

「多分な。他の書き込みも綺麗さっぱり消えてたし、こんな大規模な削除ができるのは会長派くらいだろ。月曜の書き込みは土曜と同じ奴か、それとも別の第三者かは分かんねえけど」


 机の上に足を乗せ、椅子に浅く座りながら、翼は大きく溜め息をついた。

 書き込みの削除というのは通常、その掲示板を管理する者の承認が必要になる。そのため、投稿削除というものは本来そこまで積極的に行われるものではないのだ。
 だが今回は違う。土曜日の時点で拓也についての書き込みは、学園掲示板以外にも、大型掲示板や有名SNSなどで発表されていた。しかしそれらも、日曜の時点で既に削除されている。
 常識的には考えられない、複数の掲示板やSNSでの投稿一斉削除。こんな真似ができる何者かを味方に持つ生徒会長は、実質ネット界隈を掌握しているといっても過言ではないだろう。


「……この世はいつだって、力を持ったもん勝ちだ。そうじゃない奴は理不尽を強いられても文句を垂れることすら」

「言い掛かりはやめてください!!」


 唾棄するように吐き捨てた、翼の独り言。しかしそれは、廊下からの大声によってかき消され、誰の耳にも届くことはなかった。
 突然の怒号に、なんだなんだと翼たちは空き教室を後にする。彼らが見た廊下の先にいたのは、女生徒二人と、彼女たちの前に立ちふさがる桃色ツインテールだった。



(続く)

121:ABN:2017/03/29(水) 22:46

(続き)



◆ ◆ ◆



「だから、私たちはデマなんて流してませんって!」

「そ、そうですよ……! 片原先輩って人のことだって、今知ったばかりですし」

「そんなこと言われても、確かに聞いたんだよねえ。『一年の文芸部員が片原クンに濡れ衣を着せて、悪質なデマを広めようとした』って!」


 遠くから見てもはっきりと分かる髪色の主、璃々愛が通行の邪魔をしているのは、一年生の恵里と亜依。二人は身に覚えのない言い掛かりで、糾弾を受けている真っ最中だった。
 亜依ははっきりとした物言いで、恵里はやや弱々しくではあるが、それでも物怖じせずに自分たちの無罪を主張する。しかし当の璃々愛は暖簾に腕押しといったように、二人の言い分を受け流すことしかしなかった。


「大体、私たちがデマを流したっていう証拠はあるんですか!?」

「じゃあ逆に聞くけど、アンタたちが『デマを流してない』って証拠はあんの?」

「はあ? そんなの……」

「証拠が出せないなら、デマを流したって大人しく認めれば? かいちょーは優しいから、早めに観念すれば情状酌量は考えてくれるかもよ」

「ふざけないで! 誰が冤罪なんか認めるもんですか!」

「あっそう。飽くまでしらを切るってなら、アンタたちの文芸部が広報部の二の舞になっちゃっても文句は言えないよね?」

「そんな……!」


 璃々愛は得意の減らず口で反論の余地を奪い、「デマを流した」と繰り返し口にすることで周囲の注目を集める。その作戦は上手く働き、集まってきたギャラリーは既に恵里と麻衣をデマの首謀者だと見なし始めていた。
 このままでは自分たちが濡れ衣を着せられるか、文芸部が強制廃部となってしまう。どちらにせよそれらが実現してしまえば、以降の学園生活は周囲から苦汁を強いられ、革命に参加するどころではなくなってしまうだろう。
 璃々愛からの糾弾は終わることがなく、ギャラリーからの目線は冷たくなっていく。恵里と亜依のみではにっちもさっちも行かなくなった、そのときだった。


「異端審問が悪魔の証明を振りかざしては本末転倒でしょう。結城役員」

「なに? 邪魔しないで……って、うわっ!」


 不機嫌な顔をして後方を振り向いた璃々愛は、そのしかめっ面を直ちに伸ばして驚愕する。恵里と亜依、そしてギャラリーの生徒たちも同じく、目を丸くして彼女と同じ方向を見た。
 璃々愛の背後にあったのは、痣とガーゼが痛々しいほど目立つ、椎哉の変わり果てたの顔だった。



(今回はやや勢いに任せて書いたので、展開が無理矢理だったり滅茶苦茶だったりするかもしれません。また、璃々愛さんの言動がチンピラみたいになってしまいすみません;)
(この後の椎哉や翼の動きで質問がありましたらお気兼ねなくお聞きください)

122:かおり:2017/03/30(木) 13:01

(>>121と同じくらいの時間です)

「ちょっと美紀!説明してもらおうか!」
3−Aの教室に響き渡る大声。生徒達は何事かと目を向けたが、聞こえてくる声から内容を理解し、それぞれ雑談や予習に励むことにしたようだった。
言い争っているのは生徒会副会長と会計。下手に仲裁したりのぞき込んだりすると後が大変になるに違いない。
「説明と言われても、私は会長の決定をそのまま真帆に伝えただけ。一年生には結城さんが、二年生には月乃宮さんが、そして三年生には私が伝えることになったから」
「違う!廃部の理由よ!」
「会長の判断」
「あ、り、え、な、いって言ってるでしょ!恵里ちゃん達がそんなことをするわけがないの‼」
「私はなにも白野さんや戸塚さんだと言っている訳じゃない」
「全員含めて、ありえない!」
ここまで聞いているとほとんどの事情がわかってくる。
要約すれば……文芸部員の一年が何か会長に背くことをやらかし、文芸部は廃部になった。それを美紀が部長である真帆に伝えたところ真帆がきれた、という感じだろう。
それにしても珍しい。真帆が感情的になっている。それ程文芸部を守りたいということだ。
「真帆、今あなたが何をしても変わらない。わかっているでしょう?」
「……そういえばさ、どうして廃部にしたの?そこまで大事ではなかったよね」
「何が言いたいの」
「いや。生徒会と文芸部、どちらも納得できそうな案を思いついただけ♪」
(でたぞ、屁理屈上手の笹川だ)
(真帆ちゃんの正論は言い返せないもんね)
(会計がどこまで反論できるか……)
(無理よ、賭けにすらならない)
生徒たちの意見は満場一致。何かしらのペナルティーは下されるだろうが、廃部にはならない。それだけ、真帆との口喧嘩は無謀なものなのだ。
「美紀、あなたはどうして会計になったんだっけ?」
「……そういうことね。でも、私一人の判断じゃ無理。会長に許可をもらわないと」
真帆は小さくガッツポーズをつくった。
こめかみを抑えながら百合香のもとへ向かう美紀のあとを意気揚々とついてゆく。

「神狩のやつ、相当ストレス溜まったな。俺生徒会入らなくて正解だったわー」
能天気な男子生徒の発言に、クラスメイト達は激しく同意したのだった。

「それで、私のところへ来たというのかしら」
「そ。簡潔にいうと―――文芸部を存続させてほしいんだ」
生徒会室では、会長と副会長の争いが繰り広げられていた。勿論話題は、文芸部の今後について。
自身の要望をきっぱり言い張った真帆に対し、
「駄目よ。あんなことが起こった以上、生徒会は対応しなければならないわ」
百合香は即刻要望を拒否する。
しかし、真帆には真帆なりの案がある。真帆は、勝利を確信したような笑顔でこう言った。
「その代わりとしてね、こちらから提案があるのさ。聞いてもらっていいい?」
自信をもつその表情に疑問を感じた百合香。提案を聞くくらいならいいだろうと思った。
「……その提案とは、どんなもの?」
「簡単だよ。百合香が許可して、美紀が書類をつくればいいだけ。生徒会と学園のメリットもある」
「参考までに、それをお聞かせ願えるかしら」
それに答える真帆の返答は、とんでもないものだった。
「……そうね。それならいいかもしれません。でも、あなた達文芸部はそれで大丈夫なの?」
「大丈夫に決まってるでしょ。あたしたちをなめないでよね。ほかの学校の文芸部とは格が違うんだから」
「そう。ならいいわ。美紀、私は真帆の提案をとろうと思うの」
「……問題ないよ。まだ一学期だから、つくった書類は少ないの。あとは百合香と真帆の署名、ここの二ヶ所」
風花百合香、笹川真帆と、二人はそれに署名した。

文芸部存続と、真帆の勝利が確定した瞬間だった。

「璃々愛ちゃんたちに知らせてくるわ。あとは美紀に頼みます」
「わかった。書類は提出しちゃうよ」
女王が進むところには、きっと大勢の生徒が並んでいることだろう。

「安心した?美紀」
「……別に」
「そう?」
女王が去った後の部屋では、美紀をからかう真帆の姿が見られたという。

123:ビーカー◆r6:2017/03/30(木) 16:38

「はっ!? ちょい、安部野にぃ……それ……!」
「ああ、この怪我ですか? いえ、先日ちょっとした揉め事に巻き込まれましてね……」
片原拓也が暴力事件を起こした、というデマである筈の噂。しかし、生徒達の目の前にいるのは正に暴力の被害を受けたのであろう安部野。この矛盾した状況に、生徒達は困惑していた。一方、罪を擦り付けられた文芸部の二人も目を丸くし、驚きを隠せないという様子だ。
「……と、というか……何? アンタ私の邪魔すんの?」
「邪魔という訳ではありませんが、その様な尋問は如何なものかと。容疑者の言い分も聞かないというのは少し横暴ではありませんか?」
璃々愛は少々分の悪そうな顔をする。これでは文芸部を葬り去ってしまおうという会長の意向が台無しになってしまうではないか。何とかしてこの厄介な男を先ずは退けなければならない……。
璃々愛が思考を巡らせていた時、生徒達が一斉に道を開けた。コツ、コツという足音が廊下に響き渡る。黒く長い髪が艶目かしくゆらりと揺れた。
「あらあら、何の騒ぎかしら?」
「……! かいちょー……」
そう、女王のお通りだ。
「安部野君、怪我は大丈夫だった? 大変だったわね、まさか交通事故に遭うなんて」
「……えぇ。まあ」
百合香は安部野の顔を覗き込み、いかにも心配そうに声をかける。だがその言動一つ一つには、余計な事を言うなという強い牽制の意味が込められていた。
安部野も今、全てを打ち明けようとする事はなかった。ここで会長の怒りを買っても何一つメリットは無い。まだ焦る必要はないのだから、あくまで自分は誠実な生徒会の一員として行動しておくべきなのだ。少なくとも今は。
「あまり無理はしないで、早く治すのよ。……それで、璃々愛ちゃん。ちょっと良いかしら?」
璃々愛は相変わらず居心地の悪そうな様子だった。それでも下を向かまいと、周囲を睨み付けるかのように強く見る。百合香はそんな璃々愛の方に歩み寄ると、小さく耳打ちをした。
璃々愛の表情は途端に変貌する。何か言いたそうにする璃々愛に向け、百合香は人差し指を口元で立てた。その「静かに」という合図を受け取った璃々愛は、急に俯き大人しくなってしまう。
彼女は一度周りに軽く礼をすると、璃々愛を連れて廊下の奥へと歩いていった。璃々愛は文芸部員達を一瞥すると、会長に着いて歩き出す。
辺りはしばらく静まり返っていた。
少なくともこの一件で文芸部員達への疑いが晴れた訳ではない。いや、疑いというのは語弊がある。彼女達に向けられたのは既に『反逆者』を見る目であったのだ。
「……余計な事考えるからこうなるんだよ。大人しくしてりゃ平和に暮らせるのに」
「白野さん、戸塚さん!」
誰かのその声に被せるかの様に、大人びた声が響き渡る。二人が声の方に視線をやると、アデラ・ヴァレンタインが駆け寄ってくるのが見えた。

124:ビーカー◆r6:2017/03/30(木) 16:38

廊下を歩きながら、会長と璃々愛は若干抑え気味の声で話をしていた。会長から事情を聞いた璃々愛は、複雑そうな顔をしている。
「……で、それを飲んじゃったの……」
「ごめんなさいね。せっかく用意してもらったのに……それにしてもあの子、頭高くない?」
「どうする会長、処す? 処す?」
どこぞの将軍の様なやりとりを繰り広げる会長と璃々愛。会長はにこやかに微笑んではいるものの、表情には珍しく疲弊が見え隠れしていた。資料の作成の為に印刷室へと入ると、百合香は溜息をついて椅子に座り込む。憂い気な会長の姿に、璃々愛まで元気を無くしていく。
「……気に入らないわ……これじゃあ私の計画が台無しよ。せっかくあの文芸部を潰してしまうチャンスだったのに」
百合香が弱音を吐くのは久しい事であった。というよりも、百合香の計画が邪魔されるという事自体が滅多になかったのである。
璃々愛はそんな百合香の顔をしばらく見つめると、やがて出来る限り明るく振舞って言う。空元気に過ぎないものだったが、それでもその声は華やかに響いた。
「大丈夫だよ、かいちょー!」
百合香の手を強く握ると、その目をしっかりと見つめる。
「このまま文芸部の好きにはさせない。アタシがいずれちゃんと潰してあげるし! かいちょーに逆らう奴らは、みーんなアタシが始末してあげるんだから!」
璃々愛の笑顔を会長はしばらく自信の無さそうに見つめていたが、やがてゆっくりと微笑み返すと言った。
「ありがとう、璃々愛ちゃん。……神狩さんも璃々愛ちゃんも××××も味方してくれて、私は幸せね」
明るい笑顔から一変、璃々愛は怪訝そうな顔をした。
「かいちょー、またそいつの話?」
百合香はくすくすと笑い、立ち上がって印刷機に向き合う。
「役に立つのよ、あの子? ……そうね、そろそろ活躍してもらおうかしら」

125:蒼月 空太◆eko:2017/03/30(木) 17:53

一方、学園掲示板は。

片腹 拓也(マヌケ)について語るスレ

1:名無しのエリート

片腹 拓也のせいで生徒会長の面目丸潰れだわ。
何が会長を理解してるだよ。氏ね。
会長のゴミ漁ってるとかありえんわ。夜道をついてくとか馬鹿かよ。
っつーか片腹生きてる意味ある?

2:名無し様だぞあがめてろついでにパスタよこせ

>>1

確かにwwwwアイツの親の顔見てえわwww

3:アホです

>>1マジキチだからなー。(ーдー)会長のパンツ欲しいって言ってるくらいの変態だからなー。
さっさと氏ねばいいのにー
ってことで殺ってみた

.       ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       (;´Д`)< お片づけお方付け
  -=≡  /    ヽ  \______________
.      /| |   |. |   ←俺氏
 -=≡ /. \ヽ/\\_
    /    ヽ⌒)==ヽ_)= ∧_∧
-=   / /⌒\.\ ||  ||  (´・ω・`) ←片腹 拓也
  / /    > ) ||   || ( つ旦O
 / /     / /_||_ || と_)_) _.
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゙~,,,....-=-‐√"゙゙T"~ ̄Y"゙=ミ    L____
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,,/|,/\,/ _,|\_,i_,,,/ /
_V\ ,,/\,|  ,,∧,,|_/

4:皆のアイドルではない何か

>>3マジか。アイツもう犯罪者予備軍・・・っつーか犯罪者だったわ。

5:生きてる人

>>4それな

6:匿名でしかない人

>>4マジか。片腹ってアイツ偽善者じゃん。

7:もっさもさな毛

片腹「会長をwww理解してるのはwww俺wwww」

やべえ書いてて笑ったわ




このように、悪口が飛び交う一方で。笑みを浮かべるものが二人。

「いいぞ・・・どんどん広がれ・・・」

不適な笑みを浮かべる一葉 法正。

「っしゃ!拓也の奴これ見てどうなるかなー・・結果が楽しみだぜ!」

喜びの笑みを浮かべる松葉 晃。片腹 拓也は、学園掲示板を見る気にすらならない状況。しかし、後一歩まで追い詰めれば、拓也をどん底へ落とせる。お互い知らなくとも、考えがまったく同じ晃と、法正は。更なる追撃に出た。

8:座布団です座らないでください、立ってください

俺今日片腹 拓也の様子覗かせてもらったら会長って連呼してたwwwwワwロwスw

9:報復マン絶対マン

片腹 拓也きっと会長のこと想像してくっだらねえ夢見てんだろうなwwww思ったら授業集中できないwwww助けてwwww

10:座布団です座らないでください、立ってください

>>9しwるwかwwwwwふぁーwww



8と10が晃、9が法正。彼らは更なる追撃をかけ、レスを上げていく。完全に拓也を潰すために。生徒会の面目を潰すために。風花 百合香へと泥を塗るために。
そうして彼らは、スマートフォンをタップする。このスレッドを上げて行き、反逆者を優先するよりも。
晃は、管理者の権限を使い、スレッドを固定かつ、削除不可の設定を施した。

(なんつーか、笑えない冗談になったけれど、こうして行く・・・というのになってしまったのです。不満があったらすみません。)

126:ABN:2017/03/31(金) 23:37

(放課後、自室の晃くん視点です)
(椎哉の考えを伝えたかっただけなので、字の文とメール本文のバランスがおかしなことになっています、ご了解ください)



 掲示板をリロードすれば、分単位でレスが増えていく。時折煽動するようなレスを落とせば、面白いくらいに同調者が集る。すっかり大盛況となった拓也に対しての罵声スレッドを前に、晃は満足げな笑みを浮かべていた。


「はっはっはっ、ざまあ見やがれってんだ! 真の裏切り者め!」


 かつて拓也は、友人だったはずの晃に裏切り者だと吐き捨てた。しかし今度は、とても友人相手にはしない所業を、晃が拓也に平気で行っている。これが友情をないがしろにした拓也の因果応報か、あるいは晃が彼の二の轍を踏んでいるだけなのか。二者の区別は晃本人には判断できなかった。
 炎上の燃料となるようなレスをいくつか投稿し、そのネタが尽きて晃の気も済んだ頃。傍らに置いていたスマホが震えながら机を這う。スマホを捕まえて画面を見ると、表情されているのは千明名義の椎哉のメール。


『情報拡散のご協力、ありがとうございます。つきましては残っている片原役員についての書き込みを、現在炎上している片原役員についてのスレッドと共に、可能な限り全て削除してください』

『なんでだよ? あんただって拓也に散々ボコられてただろ。病院のときはあんだけ意気込んでたのにビビってんのか?』


 反逆者となった自分をあっさり見捨て、自宅の玄関も破壊し、果てには自分に本気の殺意を向けた。そんな元友人のクズを、コテンパンに打ちのめせる折角のチャンスだというのに。
 すっかり気が大きくなったところに水を刺され、不貞腐れた晃は否定的な疑問符をつけて返信する。椎哉の回答は、それからやや長い時間を置いた後に届いた。


『協力していただいた調査の結果、本日未明に再投稿されたものを除く、片原役員についての書き込みが数時間以内に全て削除されていました。ネット上の掲示板やSNSは、ほぼ全て風花百合香のテリトリーだと言っても過言ではありません。
 そんな場所で犯罪同然の行いをすれば、風花百合香側の人間に「処刑に値する正当な理由」を与えることになります。反論材料をたった一つでも向こうに渡してしまえば、狡猾な彼女たちはそれを最大限に利用し、あなたたちを徹底的に追い詰めることでしょう。
 争いとは、先に手を出した方が悪となり、やり返せば両成敗となるものです。革命を成功させたいのなら、今は「処刑制度の被害者」でいることをお勧めします。「こんな人間は処刑されても仕方ない」と判断されないよう、清廉潔白な無実の犠牲者であるように努めるのです。
 追伸:これは感情論になりますが、折角復讐を行うのなら、与えるダメージはより大きい方がいいと思います。複数回に分けて少しずつ追い詰めるより、一度で奈落に突き落とした方が受けるショックは強いですし、何よりその方が復讐の達成感も大きくなるのではありませんか?』

「…………はあ」


 椎哉のメールが長文であるのは今更な話ではあるが、それを差し引いても今回のメールは長文だ。加えて自分の感情的な行いを否定するような内容と、文面だけからでもありありと伝わる復讐への執着心に、晃は胸焼けのような不快感を覚えたのであった。



(椎哉のメールの内容に従うかどうかは晃くんにおまかせします)

127:文月かおり:2017/04/03(月) 19:45

(放課後、文芸部にて)

白羽学園、文芸部室。ワープロソフトの入ったパソコンや資料となる本が並べられた部屋の中で。
月に一度の話し合いのために、部員全員が集まっていた。
普段通りなら進み具合を報告し、一年間の見通しをたて、次の締切を確認して終わりになるのだが、この日は違った。それは、部長である真帆の発言のせいだろう。
「さて、これにて終了!と言いたいところだけど、ちょっと時間もらうね。我らが文芸部の今後に関わる重大発表なのでしっかり聞くこと」
『文芸部の今後に関わる重大発表』。部員達には心当たりがあった。
二年女子がそれについて質問した。
「笹川先輩。今朝月乃宮先輩から聞きました。文芸部は廃部になってしまうのですか?」
彼女の発言を合図としたように、部員達は不安と疑問を口にする。
「せっかく仲良くやってたのに……。そんなの嫌」
「私も聞いたよ。でも理由は教えてくれなくて」
「結城先輩は、誰かがデマを流したからって言ってました」
「なんか、会長の判断らしいよ」
「そんな!」
「じゃあ、もう……」
その声は次第に収まっていき、部員の視線は真帆に集まっていく。
真帆は暗い表情のまま、口を開いた。
それは、この話の一部始終。

 時間も無いし簡潔に話したいけど、それじゃあんまりだろうからきちんと話すね。
 片原ってやつ知ってる?三年なんだけど。知らない人が多いだろうね。
 デマを流したってのは本当だよ。そいつの悪評を流した犯人が文芸部の一年生だっていうんだ。
 こんなのあたしは信じてないからね。文芸部の子達がするわけない。みんなも、信じないでよね。大切な仲間なんだから。
 でもさ、それを理由に文芸部は廃部にされたわけ。
 ああ、ここで終わりじゃないよ。
 それで、会長と会計に直談判したのね。文芸部を存続させてくれって。やっぱり駄目だったけど。
 だからあたしね、条件をつけたの。廃部の次に厳しくて、でもあたしたちなら大丈夫なやつ。
 そうしたらなんとね、文芸部は存続させていいって!一安心!

暗い表情を一転させ、屈託のない笑顔でそう言った真帆。
しかし、部員達はその表情に嫌な予感しか抱けない。
「真帆、その条件ってなに?」
「え、簡単だよ?ただ―――」

「―――学園から文芸部に与えられる資金がゼロになるダケ♪」

部員達の思考が停止した。




(続きます)

128:文月かおり:2017/04/03(月) 21:22

(続きです)

「……は?」
「え、ちょ、本気ですか?」
「真帆、なんてことを……」
部員達はいっせいにまくしたて始める。真帆は手を打ち鳴らしてそれを無理矢理止めた。
「確かにね、大変なことだよ。それは分かる。でも、もう後戻りできない。書類は作成済みだよ」
「でもっ、ゼロにしなくてもいいじゃないですか!」
「そうよ。半分なら黙って受け入れるのに」
「廃部のかわりだよ。半分じゃあ認められない」
「……っ」
「これに異論がある人は退部していいよ。誰かいる?」
真帆はそう言ったものの、名乗り出る者はいなかった。
当たり前だろう。真帆がここまでして守ったのだし、何よりも、部員達は文芸部に誇りを持っていた。
「……いないのね。じゃあ最後に、あたしからのお願い」

「みんな、もう分かったよね。生徒会に逆らったら、周りにも迷惑がかかるんだよ。いまこの白羽学園には、革命とか言ってる反逆者がいるよね。間違ってもあんなことをしないように。そりゃあ、不平不満はあるだろうさ。でも、生徒会に反逆するのはやめて。それが、あたしからのお願い。―――じゃ、話し合いはここまで!お疲れ様!」
「お、お疲れ様でした?」
真帆はそう言うと、文芸部室を後にした。
残ったのは、混乱したままの部員達。ざわつく彼女らをまとめたのは、副部長の三年だった。
「えっと、解散しよっか!あとから詳しく話すね!」
部員達はそれぞれ帰宅の準備を始めた。その顔には不安の色がででいる。
「亜衣……」
小さな声で亜衣に呼びかけた恵里にいたっては、泣き出しそうになっている。真帆の『お願い』と自分の決断の板挟みになっているのだろう。
笑って励ましたいが、亜衣はそこまで器用な人ではなかった。
「笹川先輩が大丈夫って言ってるし、きっとそうなんだよ」
「でも、資金がゼロになっちゃうんだよ?」
「それは……頑張るしかないよ」
「あはは……。そう、だね」
恵里はなんとか笑みを浮かべるが、すぐに落ち込んだ表情に戻ってしまった。
「大丈夫……だよね?」
そんなつぶやきが、文芸部室全体から聞こえていた。


「ったく、百合香に反逆とか意味わかんないし。ま、処刑制度はおかしいけどね。でもさ―――」
廊下を歩きながら愚痴をこぼすのは真帆だった。
「―――百合香を守る人がどんな思いで守ってんのか知っちゃったら、反逆なんかしようと思わないよ。それぐらいの覚悟は見せてもらわないと、ね……」
スマートフォンを取り出し操作すると、戸塚彩美からのメッセージを見た。

『from:彩美さん
 亜衣は反逆者に味方するらしいよ 気をつけてね(^ ^♪
 オマケ情報 文芸部を守りたいなら美紀ちゃんに協力してもらうとイイよ
 いくら百合香ちゃんの決定といっても、あの子は文芸部を捨てることは絶対にしないから』

今朝登校している時に届いたものだ。なぜこのことを知っているのかは定かではないが、とりあえず利用させてもらった。文芸部は守れたので、お礼のメールを送る。すると、すぐに返事がきた。

『to:彩美さん
 謎の情報ありがとうございます 文芸部は無事です
 美紀が文芸部を……ってことは、やっぱりアレですか?』

『from:彩美さん
 ん、まあそんな感じ?ただ、文芸部以外だと百合香ちゃんが全てだからね
 アレを考えると納得だけどさ
 じゃあまたね(*^ ^)』

『to:彩美さん
 はい
 またなにかあったらよろしくお願いします』

「確かに、美紀はすごいなー」
そう呟き、スマートフォンをしまった。

129:ビーカー◆r6:2017/04/14(金) 12:28

(今回は場面を分けて書かせていただきます。長文となり読みにくいかもしれません…申し訳ございません)

「しっつれいしまーすっ!」
夕日の光が差し込む病室に、ピンク色のツインテールを揺らしながら立ち入る少女。白い部屋を優しい橙色の光が淡く彩り、その中に黒いシルエットを映し出す。両手で造花の(匂いが不快になるといけないから、と百合香が買わせたのだった)花束を抱えた彼女は、目先の患者に元気よく笑いかけた。
機械のコードと点滴のチューブに縛られ、刻刻と眠り続ける患者に。
「やっほー、お久しぶり。元気にしてた? ってしてるワケないか」
まるで子供の様な声は、無機質な電子音に重なって患者の、千明の耳をすり抜ける。彼女には何も聞こえていないのだ、それがたとえ愛する家族の嘆きであれ。ましてや小生意気な後輩の声などが彼女の思考を再び動かすはずもない。
「全く、かいちょーに逆らうとか……何なの? 馬鹿なの? 自分の平和を自分から壊しておいて自殺? 後処理大変だったんだからさぁ、どうせなら跡形もなく蒸発すれば良かったのに。ムカつくわぁ……あんまり迷惑かけないでくんない?」
それにも関わらず、璃々愛は横たわる少女に語り続ける。というより、少女を嘲笑い見下したという方が正しい。現に璃々愛の口元は可愛らしい顔に似つかない程歪んでいるのだった。
「ま、かいちょーがお見舞いしてあげてなんて言うから来てあげたけどー。感謝してよね、アタシにもかいちょーにも。かいちょーってばマジ優しいよねっ、神すぎ!」
花束を机に置くと、ちいさなメッセージカードがはらりと落ちた。落ちたカードを拾い上げて花束に添えると、璃々愛は改めて患者に向き合う。
「……かいちょーの言う事大人しく聞いてたら、助けてあげたのにさ」
ただ眠っているだけの様だった。ほんの少しうたた寝をしているだけで、数十分もすれば目を覚ましてしまうのではないだろうか。そして机の上の花束を見て……。
「私さ、千明ねぇって嫌いじゃなかったんだよ。意外と」
煌々と輝く夕日が、建物に沈んでいくのが見える。電灯がまだ灯らない病室が、徐々に暗く染まっていく。
「中学の時の千明ねぇ、ちょっと好きだったし。アンタはアタシなんて知らなかったんだろうけどさー、アタシは密かに憧れてたんだから」
千明の心拍に合わせて刻まれる電子音は、ごく無機質に、ごく機械的に響いていた。刻まれる音の一つ一つが、彼女の生きている証であった。
璃々愛は一度言葉を切った。いくらギャルと呼ばれる璃々愛であれ、彼女もまた進学校の生徒なのだ。自分の意思を明確に伝えられるほどの語彙力は持っている。
「あんな風になれたらなって思ってた。芯が強くってしっかりしてる、千明ねぇみたいになりたいとか考えてた。せめて人前で顔上げて話せるくらいになって、そしたら千明ねぇとちょっとでも話してみようとか。卒業する前に挨拶くらいはしてみようとか。できたら仲良くしてみようとか……結局卒業式の日にお祝い言っただけだったけど。面識ないアタシに笑って返してくれた辺り、親切なんだなって思ったよ。白羽学園に行くって聞いて、ついそっちに惹かれちゃった。頑張ってるんだろうなって期待してたのに、さ」
白から黒へと移り変わった病室で、その悪魔は妖しく微笑んだ。桃色の髪がふわりと揺れ、幼い瞳は哀れな一人の少女を映し出す。少女はただただ、眠り続ける。
「――こんな身の程知らずの偽善者だとは思わなかった」

璃々愛が立ち去った後の病室には、赤黒いクロユリの花束とカードが残された。白いカードの周りには、ご丁寧に黒い装飾がなされている。
『どうぞ安らかなお眠りを 白羽学園生徒会一同』

クロユリ 花言葉:呪い

130:ビーカー◆r6:2017/04/14(金) 12:29

「花井さんは、モンテ・クリスト伯をご存知かしら?」
放課後の生徒会室へ訪れた生徒に、百合香は問いかけ言葉を投げかけた。彼女の身体は本棚の方に、彼女の視線は完全に自分の手元の本へと向いている。
「モンテ・クリスト伯、またの名を巌窟王ことエドモン・ダンテスはね――元は優秀な船乗りだったの。美しい婚約者と結婚して、船長になるはずだった……のに、そんな彼を疎ましく思う人間によって、無実の罪を着せられてしまうのよ。彼はモンテ・クリスト島の監獄島に投獄され、14年間の月日と婚約者を奪われた」
パラパラと百合香はページを捲りながら語り出す。相手の生徒、花井愛夏……の、『もう一人の方』は、黙ってその話を聞いていた。
「彼は同じ塔に監禁された神父と話す内に、自分が嵌められた事を知る。ダンテスは復讐に燃え、本来なら生涯幽閉されていたであろう牢獄……シャトー・ディフから脱獄し、モンテ・クリスト島の財宝を手に入れてパリの社交界に現れたわ。自分に手を差し伸べた人間に恩返しをしながら、嵌められた経緯の調査を始めた。そして遂に、自分を陥れた人間達に九年間かけて復讐を成し遂げたの」
ざっくりとあらすじを説明すると、百合香は本を木製の本棚に戻した。
「私はこの話が大好きでね。数年前から何度読み返したことか……今の日本ではなかなかお目にかかれない、あの独特な文章スタイルはとても興味深く魅力的だったわ。そして」
愛夏の鞄ではスマートフォンのアプリがその音声を録音していた。今のところまだ核心に迫るような情報は得られていない様だが。
「彼の復讐の在り方に、私は強く惹かれたのよ」
愛夏の眼が見開く。
振り向いた百合香は、相変わらずの笑みを浮かべている。
「ダンテスは復讐鬼となりながらも愛を忘れることはなかった。恩も仇も全てきっちりと返して、最後には娘の様に可愛がっていた元貴族の奴隷のエデと結ばれた。これこそ正に理想の復讐というものだと思ったの。年月を犠牲にし緻密な計画を立てて、それでも人間の心は捨てきれない。なんて素晴らしいと思わない?」
「つまりさ、生徒会長……あんたは復讐鬼になりたいわけ?」
愛夏がそこで口を挟む。
「あら、そうじゃないわ。ただね……私に刃向かう人間の半数が自分は『復讐をしている』のだ、と訴えかけたのよ。笑っちゃうわ……そんな薄っぺらい行為で復讐の名を穢してもらってはたまらない。彼らは復讐の言葉だけを借りて感情任せに行動しているだけだもの。現に板橋さんも松葉君も、ただ感情に縛られているとしか言えないじゃない。あの二人は何が目的だか知らないけど……そういう人達が復讐だと叫ぶのを見てると、どうしても滑稽に見えてしまうのよ」
「ふーん……で、結局何が目的なのさ?」
席についた百合香は、両肘を机に付けて手を組み微笑んだ。
「ふふ、教えると思って?」

131:ABN:2017/04/15(土) 19:20

 生徒会長と多重人格女子の片面が、かの有名な復讐者について語らっている頃。校長室へ至る廊下を、美紀はため息をつきながら歩いていた。文芸部の部費に関わる書類に、校長からの判を押してもらうためである。百合香が学園一の権力者であるとはいえ、それでも彼女は一介の生徒。校則や校費など、学園の根底に関わる決定事項は、今でも校長の許可をもらう必要があるのだ。


「手続き上必要なこととはいえ……。はあ、やっぱり煩わしいわね」


 自分にも降りかかりかねない処刑を恐れ、今や百合香の言いなりになっている校長だ。どうせ二つ返事で判を押すのだから、わざわざこちらから出向いて許可をもらいに行く必要性を感じられない。いっそ校長が持つ権限も百合香のものになれば、このような面倒な手続きは発生しないだろうに。そもそも百合香はこの学園で既に絶対的な存在なのだから、近い将来にでも是非そうなるべきだ。
 そんな現実味を帯びた美紀の仮定的空想は、ガラッという窓の開閉音と共に立ち込めた刺激臭によって中断されたのであった。


「おおう、びっくりしたわー! 美紀ちゃんか!」

「倉敷さん……。また換気しないで油絵描いてたの? 酷いわよ、絵具のにおい」

「ホンマか? 堪忍なあ、集中してまうとついつい忘れてまうねん」


 廊下に面する美術室の窓から身を乗り出してきたのは、三年C組に籍を置く美術部員「倉敷良」。暇さえあれば、あるいは暇がなくとも美術室に籠り、感性の赴くまま筆を走らせ続けるという根っからの芸術家だ。彼の才能はプロも目を見張るほどのもので、実際に彼の作品はあらゆる絵画コンクールで高い評価を得ている。尤も、学力第一の進学校で芸術的功績が評価される機会はあまりないのだが。
 シンナーのような悪臭に顔をしかめる美紀をよそに、良は廊下側の新鮮な空気を肺いっぱいに溜めた。その動作の途中、美紀が腕に抱える書類に彼の目が留まる。


「何や? そのシンプルイズ重要そうな紙」

「文芸部の部費についての書類よ。学園の評判を貶めるデマを流した責任として、活動資金を取り上げたの」

「うっわあ、えげつないことするなあ。でもそのデマって確か、二年坊が会長をストーキングしたって話やろ? 百合香ちゃんの決定にしては温(ぬる)ない?」

「勿論、最初は強制廃部にする予定だったわ。でも部長の懇願と会長の慈悲のおかげで、部費なしという条件で存続を認めることにしたの。部費を取り上げれば、その分の金額を他に有効利用できるメリットもあるしね」

「そうかいな? 字並べて部誌作るだけの文化部にかかる資金なんぞ、ぶっちゃけ高が知れとるけどなあ。その程度の金をケチケチするくらいやったら、潔く強制廃部にしたった方が処刑制度的にも良かったと思うで?」

「簡単そうに言わないで。こっちにも事情があるのよ」



(続く)

132:ABN:2017/04/15(土) 19:20

(続き)



 文芸部の強制廃部が最も理想的な処分であることは、美紀にもよく分かっていた。しかし生徒会の一因ではなく個人として、幼馴染の百合香にも打ち明けていない妥協の理由が彼女にはあったのである。そんな複雑な心境も露知らず、理想論を口だけで言ってのける良を美紀は睨みつけた。容赦ない彼女のきつい目線に良は僅かにおののくも、確かにそれは仕方ないという風に肩を竦めてみせる。


「まあ、部費ゼロが最善手っちゅうんなら、是非ともその方向で頑張ってほしいわ。俺がこうして作品作れんのも、一重に百合香ちゃんのおかげみたいなもんやし!」

「会長を応援してくれるのは構わないけど、絵ばかり描いてないで少しは自分の心配もしたら?」

「俺、実は『一日十枚は絵描かんと画力とセンスが衰える病』を患っとってな……」

「話はそれだけ? じゃあ私、これから校長室に行かなきゃいけないから」

「あー待って! ごめんて! もうちょいだけ聞いて!」


 つまらない良のジョークをばっさり切り捨て、美紀はその場を後にしようとする。無慈悲にもその場に置き去りにされそうになった良は、慌てて彼女を引き留めた。彼の無様な呼びかけに、あからさまにうんざりしたような顔を向けながら、それでも美紀は立ち止まった。


「百合香ちゃんに伝えてくれへん? 『俺の絵のモデルになってくれんか』って! 構図ラフができ次第になるから、実際に見て描かせてもらうんがいつになるかは分からんけどな」

「伝えるだけなら別に構わないわ。でも、どうして会長の絵を?」

「さっきも言うたけど、百合香ちゃんのおかげで俺は絵が描けるねんて。せやから、そのお礼みたいなもんとしてな? それに……」


 ――女王なら、肖像画の一つくらい描いてもらうんが嗜みやろ?
 そう言って良は、垂れ目の目尻をさらに下げてにっと笑う。彼の笑顔は、女王の繁栄を願う者のそれであった。

133:かおり:2017/04/15(土) 22:11

(>>132のその後)

「失礼します、学校長」
そう言って、校長室の扉を閉める。その思考は様々な愚痴のオンパレード。

 ……ほんと笑えるわ、なんなの、あの校長の表情。表面上とはいえ大切な生徒っだっていうのに。しかも、この書類。まとめにくいったらありゃしない。普通箇条書きなんてないでしょ。今度百合香に頼んで改訂してもらおうかしら。

文芸部は廃部、と百合香に聞いた時。危うく百合香に反論しそうになった。
いくら百合香の決定とはいえ、文芸部だけは譲れない。真帆の奇想天外な提案は、美紀にとって渡りに船だった。

『美紀、あなたはどうして会計になったんだっけ?』
真帆の質問が蘇る。
『ねえねえ、美紀ってさあ、どうして会計になったの?百合香の傍にいたいなら副会長の方が良くない?』
これは、美紀が会計になった直後に言われたことだった。

「私が会計になった理由、ね……」
人通りのない廊下で一人、つぶやいた。
「そういうことが得意なのもあったけど、それよりも……会計になれば学園の資金はほぼ私―――ひいては百合香のものになるから、かな……」


美紀が文芸部を守りたいと思っていることは誰も知らない。
幼馴染の百合香でさえも。


幼馴染。
たしかに美紀と百合香は、まだ言葉を知らない頃から知り合いではあった。でも友人ではなかった。百合香は風花家の令嬢で、美紀は―――。

(中途半端でごめんなさい!本日の美紀はこれでしゅうりょーです)

134:文月かおり:2017/04/15(土) 22:16

(ハンドルネームまちがえましたああああ)

135:文月かおり:2017/04/15(土) 23:08

(同時刻)

「っあー、詰んだ詰んだ、今日は無理」
握りしめていたシャープペンシルを机に投げ出す。
文字のないノートに一本の黒線が書かれる。そのままシャープペンシルは勢いよく床に落ちた。
それを気にも留めず、ある写真を見つめるのは戸塚彩美。
「……樹の、バカ野郎。なんで置き去りにしちゃうの。」
樹、と呼ばれたその写真の人物。
今はもういない、大切な人。
「駄目だ。あんたの顔見ると泣きそうになる」
目を覆ったけど、それでも涙は一筋頬をつたう。いささか乱暴にそれを拭い、椅子に座りなおした。
その顔は、いいことを思いついたという笑顔。
落ちたシャープペンシルは無視して、別のものを取り出す。無造作に持ったそれは、白い花の絵があるペン。
彩美は顔をゆがめた。
「しつこいって、もうやめてよ……」

『誕生日、いつなの?』
『10月12日。前も言ったよ』
『あれ、そうだっけ。ごめん』
『あやまんのテキトーすぎ。許すけど』

なんでもないように思えた会話。今になってみればその意味が分かった。
「10月12日は、ガーベラの日。2月15日はスイートピーの日。9月28日は……」
知らないうちに、花に詳しくなっていたのだろうか。そういえば、一ヶ月ほど前に書き上げた小説にもそんなことがあったかもしれない。
「……あーあ、こうなったらもうやけくそね。あんたとあたしたちを題材にしてやる。勿論、感動の再会はナシね。あたしの物語は現実的なんだから」
シャープペンシルの線がついたままのノートに、ネタを書き込んでいく。
樹と、彩美と、真帆と、美紀と、百合香。
当事者も知らない、もう一つの物語。
刊行されたら驚くだろうなあ、と。
思い浮かべたのは誰なのか。

136:蒼月 空太◆2E:2017/04/16(日) 07:44

「ったく………しゃーね。」

晃は、早速掲示板の書き込みを消し始めた。
自身へのセーブか。それとも正気になったのか。

「拓也………俺ってなんで空いたと友達になったんだろ………」

友達。そのワードに、晃は、ハッ、と気づいた。
一年間忘れていた友達。

「アイツ今でも元気かな………よし、駄目元だけど…」

晃は早速MINEを操作し、ある友達を、公園に呼び出した。



「何のようですか、松葉 晃」

一葉 法正。左手に赤い布を巻いている男。

「本当にすまねえ!俺が………ちゃんと拓也を止めていたら!」

晃は頭を下げた。
その行動に法正は驚いたが。

「貴方は風花に復讐をするんですか」

法正の問い。晃は。

「あったり前だ!」

法正は。

「そうか………なら、貴方に協力しますよ」

学園復活派。一葉 法正の誕生。

137:藤井美鈴:2017/04/16(日) 08:18

>>130の続き

「じゃあ…会長にとって『復讐』は長い年月をかけて、大規模……ってこと?だから、二人のしていることは『復讐』ではない、ってこと?」

「そうですね」

「会長、どうやって処刑制度を作ったの?」

〔ごめんなさい。一回保留します〕

138:ABN:2017/04/18(火) 17:20

>>123の直後、>>124と同時期くらいの話です)



「白野さん、戸塚さん! お二人とも大丈夫ですか!?」

「はい、大丈夫です。ええと……アデラ先輩、でしたっけ」


 デマの真偽とその出所は曖昧にしたまま、百合香が璃々愛を連れて消えた後。未だに緊張冷めやらぬ恵里と亜衣の元に駆け寄ってきたのは、黒や茶ばかりの人混みでは一層目立つ天然の金。英国からの留学生アデラ・ヴァレンタインの名は、別学年の生徒の間でも有名だった。
 アデラは二人の体や顔色を観察し、怪我や精神的ダメージが見受けられないことを確認すると、ほっと安堵の息をつく。それから未だに騒々しい周囲を見渡してから、パンパンと手を叩いた。恵里と亜衣に侮蔑的な目線を向けていた生徒たちの注目がアデラに移る。


「皆さん。学園が貶められるような情報が流れてお怒りなのは分かります。しかし感情に任せて、何の根拠もなしにお二人を責めるのはおやめください」

「で、でもアデラちゃん! 確かに文芸部の一年がデマを流したって、生徒会が……」

「生徒会の証言なら全て鵜呑みにすると? いくら信頼しているからといって、彼女たち名義の情報が常に正しいと判断するのは軽薄ですよ!」

「はあ? お前、会長が嘘ついてるっていうのか!?」

「そのような色眼鏡がいけないと言うんです。風花先輩が嘘つきかどうかは今の論点ではありません」


 飽くまで問題は生徒たちの先入観であり、百合香を悪者に仕立て上げる意図はない。アデラが置いた前提は、しかし無意識下で百合香を妄信している生徒たちにはぬかに釘であった。彼女がいばら率いる風紀委員会の一員であるため炎上こそしないものの、彼らとアデラの間に剣呑な空気が漂い始める。そんな一触即発な二者の間に、挟まれる口があった。


「残念ですね、ヴァレンタインさん。僕たちがあなたの信頼に値しない存在だったとは」

「安部野先輩まで何を言っているんですか? 問題はそこではないと言っているでしょう。それにあなた……」

「ええ、存じております。全面的な信用を置いていただけないのは生徒会として非常に遺憾ですが、それはそれ。他者からの情報を頭から信じ切ることの是非については、僕も同意しましょう」


 生徒会である椎哉が口にしたのは、不敬に対する叱責ではなく、意見の限定的な賛同。アデラの言動を反逆だと定義するものとばかり思っていた生徒たちは、彼の予想外な対応に思わず耳を疑った。一斉にどよめく生徒たちを一瞥し、椎哉は言葉を続ける。


「進学校の生徒である以上、皆さんは利発な方々であるはずです。それなら得た情報の信憑性を自分の力で調べ直すことなど、造作もないでしょう。まさか事実確認なんて初歩的なことを怠るなど、白羽学園生として恥ずかしい真似はいたしませんよね?」


 学園の名前を引き合いに出され、生徒たちの大多数が言葉を詰まらせた。自分たちに反抗的なアデラの言い分を支持したのは気に喰わない。しかしここで彼に反論すれば、自分が事実確認もできない愚者だと主張することになる。そうなれば白羽学園に、延いてはその生徒会長である百合香に恥をかかせかねない存在だと、他の生徒に見なされてしまうだろう。
 剣呑な様相が鳴りを潜め、気まずい静寂がその場に満ちる。やがて椎哉の論破は不可能だと断念した生徒たちは、一人また一人と人混みから離れていった。悪意に満ちた視線から解放され、恵里と亜衣はようやく緊張を解く。だが一方アデラは椎哉に、傍からでも分かるほどの疑いの目を向けていた。


「安部野先輩。あなたは一体何がしたかったんですか」

「何が、といいますと?」

「風花先輩と文芸部一年のみなさん、どちらを支持するつもりだったのかということですよ。風花先輩の味方であれば、そんな怪我だらけの顔で結城さんを止めなければ良かった。文芸部の味方であれば、その怪我が片原さんによるものだと説明すればよかった。なのにあなたはそのどちらも行わず、曖昧な物言いでその場しのぎをしているようにしか見えませんでした」



(続く)

139:ABN:2017/04/18(火) 17:24

(続き)



 アデラの正義感は、学園内でも話題になることがあるほど強い。そんな彼女にとって椎哉の付和雷同さは、百合香の独裁政治と同等に許容できないものだった。どちらの味方とも明言しない彼の態度が、アデラの目には不愉快に映ったのである。対して当の椎哉は、相変わらず感情が見えない笑顔をアデラに向けるだけ。そんな彼を問いただそうとしたアデラを、恵里が慌てて止めた。


「待ってくださいアデラ先輩! 安部野先輩を責めないでください!」

「ですが、白野さん……!」

「だ、大丈夫ですよ。本当だったらあのまま結城先輩に丸め込まれて、そのまま反逆者にされてたかもしれないのに、それを少しでも庇ってくれただけで十分助かりましたから……」


 椎哉の事情を把握している恵里は、どもりながらも必死に弁解を紡ぐ。学園では会長派を名乗っているとはいえ、彼も自分たちと同じ復活派(一切の犠牲を厭わないという相違こそあるが)なのだ。アデラは知り得ていないとはいえ同じ派閥同士が争うのは無意味であるし、彼女によって学園における椎哉の心証が悪くなってしまえば、自分たちも不利な状況に陥ってしまうだろう。
 あまりにも必死な恵里の弁解に、このまま椎哉を問い詰めるべきかアデラが躊躇ったとき、見計らったように朝礼の予鈴が校舎に響き渡った。


「おや、もうこんな時間ですか。それではこの話は、また別の機会ということで」


 アデラと恵里、亜衣に一礼し、椎哉は踵を返してその場を後にする。恵里と亜衣は同じく一礼して彼の背中を見送るが、アデラはやはり最後まで懐疑心を外すことはなかった。


「……全く。彼は本当に困ったコウモリ男ですね」



◆ ◆ ◆



「コウモリ男……。留学生とは思えない語彙だね」


 去り際にアデラが呟いた独り言は、椎哉の耳にしかと届いていた。学園では会長派を名乗っているとはいえ、ただ生徒会に従属しているだけでは意味がない。真の会長派の目を盗みつつ、自分や他の復活派の人間が少しでも有利になるよう、密やかに行動する必要があるのだ。そのような言動の境界を何も知らない者が見れば、彼が軽佻浮薄な人物に映るのは当然のことだろう。だが椎哉はその批判的な比喩表現に憤ることはなく、むしろ自分に似合いの言葉だと感嘆した。


「まあ、万が一彼女一人が騒いだとしても、大多数の人たちは僕を信用してくれているからね。だから心配はいらないよ、姉さん」


 とうに日も暮れた真っ暗な病室の中。街灯の明かりが窓から差し込み、真っ白な千明の腕を照らし出す。椎哉はその手を取ると、おもむろに自分の頬へ触れされた。死体のように一切の力が込められない彼女の手は、それでも辛うじて体温を滲ませている。この温もりが椎哉にとって、千明を生者たらしめている唯一の証だった。もし、この温度が失われることがあれば――。


「あら、しいちゃん! こんな真っ暗な中でなにやってるの?」

「!」


 陽気な中年女性の声とともに、病室が真っ白な明かりで照らされる。慌てて顔から手を離し扉のほうに振り返ると、そこにいたのはふくよかな看護師だった。突然の第三者の介入に、彼にしては珍しく驚いた様子を見せるが、看護師は彼の挙動を訝しむことはせず、代わりにサイドテーブルに置かれた黒い花束を見て顔を顰めた。



(続く)

140:ABN:2017/04/18(火) 17:26

(続き)



「やだこれ、黒百合じゃないの。冗談でもお見舞いに持ってくるような花じゃないわよ」

「すみません。一緒に贈られていたメッセージカードによると、どうやら僕と同じ学園の生徒が持ってきたもののようですね」

「ああ、そういえばうちの同僚が言ってたわね。白羽の制服を着た派手なピンク髪の子が、真っ黒な花を持って歩いてたって。まさかとは思うけど、その子が?」

「なるほど。そんな派手な色の人を見間違えるとは思いませんし、おそらく彼女が届けてきたもので間違いないでしょう」

「いやあねえ。いくら進学校の生徒でも、こういう一般常識を弁えてないのは最近の都会っ子って感じだわ」

「あまり酷い物言いはいけませんよ。その女子生徒が偶然、花に対しての知識がなかっただけかも知れません」


 この看護師は、良くも悪くも正直な性分なのだろう。椎哉が嗜めるのも構わずに、彼女は花束の贈り主への嫌悪感を隠そうともしなかった。もしここが白羽学園の真ん中であれば、会長派の生徒たちによって容赦ない処刑が下されていたかもしれない。そんな白羽の暗黒面を知ってか知らずか、看護師は花束を手に取ると自分の小脇に抱える。


「どちらにせよこんなものが置いてあるなんて縁起が悪いし、私が片付けておいてあげるわよ。もしピンクの子がまた来たら、あたしが適当言っておいてあげるから」

「……ありがとうございます。実は僕も心苦しかったので、助かります」


 心苦しいのは、贈り主の好意を無碍にすることか。それとも姉の病室に悪意の花を放置することか。椎哉は明言しなかったが、彼の意思を汲み取った看護師は、自分に任せろと言いたげな笑みを見せる。


「さーて。面会時間もそろそろ終わりだから、さっさと帰ってご飯食べて寝なさい。明日も学校でしょう?」

「ふふ、まるで母親みたいな物言いですね。それでは、千明をよろしくお願いします」

「やっだあ、どうせまたすぐに来るくせに何言ってんのよ!」


 堅苦しい椎哉の挨拶を、うるさいくらいの声量で笑い飛ばす看護師。彼女の言葉に彼は苦笑じみた表情を浮かべるも、二人の様子は中睦まじい親子のようであった。



(今回出てきた看護師には少々伏線を仕掛けているので、登場させることがあればABNに一声かけていただけると助かります)

141:ビーカー◆r6:2017/04/21(金) 18:57

翌朝。8時に始まる朝学習の10分前の昇降口には、生徒達がわらわらと集まっていた。
この時間帯だと、A組の生徒達は既に席に着いて授業の予習や先日の復習に励んでいる。しかしC組やD組の生徒達は、彼等の様にそこまで厳しいスケジュールを送っていない者が大半だ。
恵里と亜衣もまた、例外ではなかった。彼女達も他の生徒と同じ様に、会話に花を咲かせながらのんびりと靴を履き替えている。
「おはようございます、白野さんに戸塚さん」
不意に後ろから声をかけられ、雑談に興じていた二人は思わず肩を跳ね上げた。慌てて上履きにしっかりと足を入れると、顔を上げて声の主を見返す。
「あっ……ば……ヴァレンタイン先輩?」
「アデラで構いませんよ、皆そう呼びますから」
そう言って、二人の前でアデラは微笑んだ。
「昨日はごめんなさい、余計なことをしてしまったみたいで……大丈夫でしたか、お二人共?」
「いえ、気にしないでください! 先輩が庇ってくださったおかげで、あたしも恵里も処刑されずに済んだんですし……」
昨日のあの一騒動の後、アデラは周囲をもう一度説得し直しなんとかその場を収めたのだった。勿論不満気な生徒達も少なからずいたのだが、風紀委員長が例の月乃宮いばらだという事もあり、彼等は渋々身を引いたのだ。
「そうですか……なら良かった」
「そ、それより先輩……確か、B組でしたよね? 朝の学習は……」
「ああ、それなら。私は生憎夜型でして、朝はどうしても早起きできず……夜に必要な勉強は全て済ましてしまうのです、暗記には夜の方が向くと言いますし」
彼女の言葉の流暢さは、やはりとても英国人とは思えない程のものだった。口を開けばすらすらと言葉が流れていくその様は、アナウンサーでも志望しているのかと思わせてしまう。
「そうだったんですか! ご立派ですね、ちゃんと夜に」
「ちょっと失礼」
亜衣の言葉を、一人の男子生徒の声が遮った。聞き覚えのない静かな声に、三人は振り返る。
ひょろっとした痩せ型の男子生徒が、こちらを見据えて微かに微笑んでいた。日に焼けていない肌とその体型が、いかにも病弱という雰囲気を醸し出す。その顔を見るなり、アデラは青い目を大きく見開いた。

142:ビーカー◆r6:2017/04/21(金) 18:57

「ぶ、部長……!? あの、お身体は……」
「もうすっかり大丈夫だよ。華道部の方はどう? 昨年から皆に任せっきりだったけれど」
「はい、お陰様で……」
部長と呼ばれたその生徒は、一年生の恵里と亜衣にとっては見覚えのない人物だった。だが周りを見廻すと、辺りがやけにざわついている。恐らく彼は上の学年の間では有名人なのだろう。
「なら良かった。ところで、安部野君はいるかな」
「私は今日は見ていませんが……何かご用事が?」
「いや」
そこまで言うと生徒は一旦顔を背け、コホコホと咳をする。弱々しい咳がますます彼の病弱な雰囲気を強めた。ある程度呼吸を落ち着けてから、再びアデラに向き直った。そして若干声を潜めて言う。
「怪我したって百合香から聞いたから。ちょっと心配でさ」

「あの、アデラ先輩……あの方は?」
生徒が去った後に、恵里はアデラに問う。
「……彼は私の部の先輩なんです。元々お身体が弱かったのですが、昨年の2月に体調を崩してしまって……しばらく休学されていたのですよ。彼こそが華道部の部長、北条智さんです」
「へえ、華道部の……その、北条先輩は生徒会長とお知り合いなんですか?」
「百合香」という単語に反応した亜衣が、アデラに問いかける。
アデラは少し困った様な表情を浮かべた。しばらく頬に片手を当てた後、微かに溜息を吐いて話し出す。
「そうでした……一年生のお二人は彼を知らないんでしたね。彼はこの学園の……生徒会長に恋心を燃やす、副生徒会長なんです」
アデラの発言に、同時に「えっ!?」と声を出す二人。
入学当初から密かに語られていた謎の副生徒会長の存在。その正体は、つい先程まで自分達の目の前にいた男子生徒だったのだ。
まさか、彼が噂の副生徒会長だったとは――。
アデラはやはり重苦しそうな表情をしていた。それに気付いた二人は最初こそ頭に疑問符を浮かべていたものの、徐々にその理由を察し始める。
副生徒会長、ましてや会長に恋する人物。となれば、自分達に協力するという事はまず有り得ないだろう。百合香と連絡も取り合っていれば、当然反逆者の事も知っている筈だ。彼が復活派の敵となる未来は、とても避けられそうにもない。
「……生徒会の中でも、彼はかなり穏和な人物です。直接処刑に加わることもほとんど無いようですし……ただ、協力はしてもらえないでしょうね。彼はいつも言っていますから……『百合香の為なら何だってするよ』、と」
SHRの始まりを告げるチャイムが鳴る。
だが三人は、しばらくその場を離れはしなかった。

143:文月かおり:2017/04/24(月) 15:12

>>142の朝から)

『はーい、彩美さんどうされましたー?原稿なら受け取りましたよー』
「ふみちゃんオハヨー。いや、次の打ち合わせしたいなぁと」
『……えええ、早くないですか⁉もう⁉』
「アハハ。今日できる?」
『今日は……あ、大丈夫です。10時から第二会議室でお願いしますー』
「りょーかい、じゃあバイバイ」
『失礼しまーす』

「さて、準備するとしよう」
自室で一人呟いたのは彩美だった。
打ち合わせは10時からなのでまだ時間はあるが、もう少し構想を練っておきたかった。なんの構想かというと、勿論次の小説について。
樹という人物に関する実話を基に書こうと決めたのが数日前。当事者であったおかげでネタはすぐにまとまってしまった。
そういうわけで出版社の担当さんに連絡した訳だが……。
「……さすがにアレをそのまま書くわけにはいかないなー」
問題が一つあるのだ。
あれこれ自問自答しながら時間を浪費していると、いつの間にか家を出る時間。
担当さんにも聞いてみようと思い、とりあえず出かけることにした。


「物語にはハッピーエンドを入れるべきか、ですかー……」
「そーなのよ。ふみちゃんどう思う?」
「えええ、私ですかー?」
ここはとある出版社の三階。第二会議室という立派な名前こそあるものの、収容人数は多くて6人の小さな部屋だった。
そこにいるのは彩美と、ふわふわの茶髪とパステルカラーの服を着た女性。文香という名の彼女は、愛らしい見た目や緩く伸びる口調とは裏腹に、手際の良い仕事ぶりで評判だ。……どうやら彼女が担当した作家は締切を破れなくなるらしい。
「んー……今の段階ではちょっと分からないですねー。ストーリーやジャンルによります」
「そっかー、ちなみにどんな感じ?」
「……恋愛小説なら十中八九必要です。青春小説はある程度あった方がいいですねー。推理小説は解決がハッピーエンドだから置いといてー。えっと、ホラーはどちらでもアリじゃないでしょうかー?」
彩美は腕を組んで頷いた。そのまま自分の世界に入り込んでいく―――

(あー、彩美さん思考中?集中力すごいからしばらく待つかー)
文香は彩美を見てそう考えた。こんな時は他に手段がないのだ。
手元にあるのはあらすじと登場人物のリスト。
(男の子と父、母、妹、その友達と……女の人?あ、成長した男の子のカノジョ!ま、まさかの恋愛系ですかあ、彩美さん⁉文香さんは聞いてませんよー‼あらすじ読まないとー!)
慌てて紙をめくると、ライトグリーンのメモが挟まっていた。

  一応これ、実体験なんでよろしくねー♪ 彩美

(な、なななんですとー⁉彩美さんの実体験‼超レアですー!)
文香は物凄い勢いであらすじを頭に入れていくのだった。

144:蒼月 空太◆eko:2017/04/24(月) 18:17

晃が法正と仲を取り戻してから翌日。
晃は、白羽学園のB組の前の廊下に呼ばれた。
そのために、朝時間から晃はB組前の廊下に法正と対面する。

「で・・・法正、用ってなんだ」

晃の一言に、法正は。

「別に・・・貴方にとってはどうでもいいかもしれませんがね・・・ただ、俺的には伝えたいから伝えるだけです」

「なんだよ?」

「実は俺と貴方・・・種違いの子ですよ」

・・・。
晃は一瞬固まった。
顔も違う、似ているところなど何もない。
しかし、一つだけ共通していた。
法正はやられたらやりかえす。
もちろん、晃もその精神を持っている。
つまり。

”負けず嫌い”
が一致していたのだ。
母親が同じというところが、負けず嫌いが同じで、昔は親近感の沸くような性格だったのだ。

「おいおいおいおい・・・・どういうことだよ!?」

「俺の父親は姓が一葉です。貴方の姓は松葉。しかしですね、母の旧姓は俺も貴方も、全て一致しています。名前に誕生日、身長に体重も。全て一致しています」

法正の一言に、晃は目がくらんでいた。

「おいおい、そりゃあないだろ・・・?」

「まぁ、なんにせよ、義理の兄弟です。だから、仲良くやっていきましょう―」

法正の一言に、晃は。

「ったく・・・友人どころか、それ以上じゃねーかよ・・・」

と言いながら、E組の教室へ向った。


―その影では。

「見つけたぁ・・・反逆者の弱点。」

そう呟きながら、スマートフォンの録音アプリを閉じる、一人の駒。
ピンク色の悪魔―。

145:藤井美鈴:2017/04/30(日) 10:02

>>137の続き

「ふふ、教えるわけないでしょう?

「…あっそう」

「他の人には言ッたノ?」

「いえ、言ってませんよ」

「フ〜ん、ジゃあモウいいヤ」

そう言って、出ていった。しなしなになったオダマキを置いて…。

≪花言葉≫
オダマキ  愚か

146:ABN:2017/05/04(木) 05:42

 看護師という職業は多忙である。必要とされる知識や経験は膨大で、人命を預かる仕事である以上一切のミスは許されない。加えて緊急の呼び出しや患者の都合に振り回されることもしばしばあり、規則的な生活リズムを保つことさえ難しい。そんな看護師たちにとって、休憩時間というのは非常に貴重な憩いの時だ。
 廊下からは見えづらいナースステーションの死角。備え付けのエスプレッソマシンで作られたコーヒーを啜りながら、中年看護師は全体重を椅子に預けてくつろいでいた。一端の女性としては流石にだらしない姿勢の彼女に、苦笑を浮かべながらすみれは声をかける。


「お疲れ様です、島江(しまえ)さん」

「あら月乃宮さん、お疲れ様。悪いんだけど、ちょっと聞くだけ聞いてくれる?」

「はい、なんでしょう?」


 すみれの姿を認めるなり、空いている近くの椅子を引き寄せて手招きをする。島江に勧められた通り、彼女はその椅子にそっと腰かけた。
 島江がこういう言い方をするときの話題は、決まって仕事や対人関係の愚痴だ。その話の内容自体に益はないが、心の中に溜まった鬱憤を他者に発散し同意してもらう行為は良いストレス発散になる。医療知識の一環としてそれを理解しているすみれは、二つ返事で島江の愚痴に付き合うことにしたのだ。


「月乃宮さんも知ってるでしょう? 意識不明の天本千明って子。あの子にお見舞いの花を持ってきた子がいたんだけど、その花がよりによってクロユリだったのよ!」

「そうなんですか。クロユリを持ってきた子の話は聞いていましたが、天本さん宛てだったんですね」

「酷いと思わない? 花の知識に疎い人でも、普通患者に黒い花を贈ろうだなんて思わないわ! しかもその子、白羽学園の生徒だっていうじゃない。それほど賢い頭の持ち主ならなおさら分かることだろうし、あのクロユリは絶対に確信犯よ!」

「白羽の生徒さんが? まさか、あんな立派な学園の子が……」

「学校の名前なんて関係ないわよ。あの年頃の子供って言うのは大体、何の力もないくせに自尊心だけは一丁前で、それなのに他者を敬うってことをしない。だからあんな不吉な贈り物だって、平気な顔で届けられたんでしょうね。そういう生意気で非情な生き物なのよ、あいつらは!」

「は、はあ……」


(続く)

147:ABN:2017/05/04(木) 05:43

(続き)


 表情はにこやかな笑顔を保ちつつ、すみれは内心で「またか」と密かに溜め息を吐いた。
 島江の子供嫌いの話はこれが初回ではない。というのも、彼女はどういうわけか子供、特に十代の少年少女を理不尽に嫌悪しているのだ。島江自身は常に朗らかで精神的にも丈夫という中々の人格者であるだけに、その致命的な一点だけを周囲は非常に残念がっていた。尤も職務上、患者たちの前で若者嫌いをひけらかすことはしていないため、仕事を妨げるような問題にはなっていないのだが。
 けれども自分には、丁度十代の妹がいる。本人にその意図はないだろうが、大切な家族の一員を「あの年頃の子供」というカテゴリで一括りにして非難されるというのは、とても気持ちのいいものではない。島江の愚痴を否定するわけではないが、せめて妹の人柄だけは弁解したい。そう思って反論を紡ぎかけたすみれの言葉を、しかし島江は食い気味に阻止した。


「それに今は私が片付けちゃったけど、花にはメッセージカードがついてたの。その内容がね……」

「……えっ?」


 ――どうぞ安らかなお眠りを。白羽学園生徒会一同。

 声量を絞った声で伝えられた言葉に、すみれは耳を疑った。喪中のような白黒デザインのカードに書かれていたという文章は、明らかに白羽学園の生徒会が千明の死を期待、祝福しているような内容。それが重体患者に相応しくない色の花に添えられていたとなれば、贈り主の悪意を疑う余地などない。
 だがすみれは、その意図を理解はしても納得はできなかった。名門進学校と名高い、しかも自分の妹が通っている学園の生徒会が、いじめにも等しい所業を行っているという事実を彼女は飲み込めなかったのである。半ば呆然とするすみれに構わず、島江は思い出したように話題を続ける。


「そういえば月乃宮さん、あなたの妹さんも白羽学園の生徒だったわよね?」

「は、はい」

「生徒会が直々にあんな嫌がらせみたいな真似をしてるんだったら、その学園の風紀も高が知れてるはずだわ。そこんところどうなの? 学園について、妹さん何か言ってたりしない?」

「え……ええと……」


 あの白羽学園が、実は生徒会ぐるみのいじめを黙認している問題校かもしれない。衝撃の推論で混乱冷めやらぬ頭を抱えながら、すみれは島江の回答に対する言葉を必死に模索するのだった。

148:文月かおり:2017/05/04(木) 16:48

燃えている

わたしのいえ

燃えていく

わたしのかぞく

燃えて、燃えて、燃えつづける


おねがい

わたしをおいていかないで……

行かないで

逝かないでよ

なんでいっちゃうの……


今からもう、ずっとずっと前。
私の両親は燃えきって、灰と煙と、焦げた骨になりました。


その時はまだ、私は独りじゃなかった。
兄がいた。私にとって唯一の、最後の家族。


花に詳しくて、勉強はできるけど運動はダメで。
いつも、何があっても笑ってて、とても優しくて。
あのヒトが大好きで、話しているとすごく嬉しそうで。


そんな兄も、死にました。

これで私は、独りです。

149:文月かおり:2017/05/04(木) 17:11

なんででしょう。

何か、悪いことをしてしまったのでしょうか。

なら、悪いのは誰ですか。

お母さんですか。  いいえ、お母さんはとてもいい人でした。わたしの憧れる、強い人でした。
お父さんですか。  いいえ、お父さんはとてもいい人でした。わたしの頼れる、大きな背中でした。

ならどうして、吹けば舞い散る燃えかすになってしまったのでしょう。

教えてくれますか。
わたしの大好きなお兄ちゃん。

すると、兄は言いました。

 きっと、あっちで元気にしてるよ。

違います。わたしが求めるのは、お母さんとお父さんが死んでしまった理由です。

なのに、兄は答えてくれませんでした。


そうですか。ならいいです。

悪いのは、わたしなんだ。
そういうことにしておきましょう。

誰にも言わず、ひっそりと。
私は独り、決めました。

そして、兄は死にました。




     『ブルースターの日に死んだお兄ちゃん。』序章より

150:文月かおり:2017/05/04(木) 17:15

「……実体験を他者目線で、か。うん、いいかもしれない」

戸塚彩美、執筆開始。
7月下旬、刊行予定。

151:ビーカー◆r6:2017/05/05(金) 00:10

「私は、特に……いばらも、学園のことはとても楽しそうに話してくれますし」
「楽しそうに?」
「え、ええ……風紀委員長として頑張ってるみたいですよ? 『皆仲が良いし仕事もやりやすい』って喜んでましたわ。生徒会の会長さん……百合香さん、だったかしら? 彼女とも仲が良いみたいでしてね。一度家に遊びに来たのだけど、美人で穏やかだし礼儀正しくて。とても悪い人には……いばらも付き合う友人はかなり選ぶタイプですしね」
あの妹さんが楽しそうにねえ、という言葉を島江は飲み込んだ。
すみれの妹、いばらとは彼女も面識がある。
しかし姉妹ながらその性格は正反対。愛想の良く優しげなすみれとは反対に、いばらは常に冷たく刺々しい雰囲気を醸し出していた。
決して態度が悪いことはなかったのだが、彼女の立ち振る舞いはどこか距離を感じさせるものがある。院内でもその姉妹の差は度々看護師達の話の種になっていた。
あのいばらが楽しそうに話すということは、学園や生徒会を相当気に入っているのであろう。……だがあのクロユリとカードを見た島江は、いばらもまたその類の人間だと疑わずにはいられない。ましてや彼女は風紀委員長。その様な立場の人間が生徒達の非常識な行いを見逃すとは考えにくい。彼女自身が生徒会ぐるみのいじめに加担している可能性も充分にあったのだ。
更に彼女が仲良くしているという生徒会長。あんな事をする学園の、しかも生徒会の会長と仲良くするなどとても考えられなかった。当の会長は一体何をしているのだろう。自分達と同じ学園の生徒があんな目にあっているというのに、心が痛まないのだろうか? この件に対して怒りを抱きはしないのだろうか?
「……いじめとか、本当に起きてないの? そこまで行かなくともトラブルとか」
「いえ、何も……大丈夫だと思いますよ。多分ただの悪戯でしょう、大方喧嘩でもした生徒がいたんじゃないでしょうか? いばらに注意するよう私からも言っておきますから」
そう言ってすみれは軽く微笑んだ。
悪戯で済まされる話じゃない、と言いかけた時、別の看護師が駆け込んでくる。
「月乃宮さん、電話……学校の生徒さんからみたいだけど」
「あら、妹かしら……ありがとうございます。すみません、失礼致しますね」
島江に申し訳なさそうに告げると、すみれはその場を後にする。紫色のバレッタが、照明の光を反射してきらりと光った。
「……やっぱり、妹さんも好きになれそうにないわ……月乃宮さん」
残された島江は、一人呟く。

152:ビーカー◆r6:2017/05/05(金) 00:10

「もしもし、姉さん? ごめんなさいね、仕事中に呼び出して」
「いえ、休憩時間だったから良いのだけど……どうしたの? わざわざ学校から電話するなんて。忘れ物?」
昼休みの学園は、いつも少し騒がしい。
一コマ65分の窮屈な授業から一時的に解放された生徒達は、背を伸ばし思い思いに自由時間を楽しんでいるのだ。ある者は会話に花を咲かせ、ある者は職員室に質問へ行き、ある者は何をするまでもなくぶらぶらとうろついている。
そんな中、月乃宮いばらは公衆電話の前に立ち、姉のすみれと話していた。携帯電話を使うという手を選ばなかったのは、あくまで風紀委員長としての立場の為だ。校則で一応は許されているとはいえ、校地内でスマートフォンを使うのはやり抵抗がある。その声は普段通り、非常に落ち着いていて冷たく静かだ。
「いえ、ちょっとね。……北条君、学校に来たわよ。もう大丈夫なの? 一応元気そうだったけれど」
「ああ、智くんなら……もう安心していいわ。大分調子も戻ったし、流石に体育とかはまだ見学してもらうことになるけれどね。風花さんとはどうだった? 会うのも久々でしょう」
「お互い嬉しそうだったわよ……安部野君とも挨拶したみたいだし。今年は副生徒会長を二人にして正解だったわね、北条君の身体の負担も大きいだろうから……まあ、風花さんにとっては北条君相手の方がやりやすいのだろうけど。あの人、風花さんの言うことには従うしね。自分の部が潰されたって何とも思わないんじゃないかしら」
「うふふ……確かにそうかもしれないわね。北条君、風花さんのことあれほど大好きなんだもの」
いばらの片手の十円玉は、次から次へと減っていく。最初は山積みになっていた小銭は、気付けば十枚程を消費してしまっていた。もっとも、普段から財布に万札が数枚入っている様な彼女にとって、こんな金額ははした金でしかないのだが。
すみれの声に若干微笑んだ後、いばらは一度周りを見渡した。顔付きを変えるとより声を潜めて言う。
「……クロユリの件、大丈夫だったの? 何か言われなかった?」
「……一応、ね。大丈夫、私が場を収めておいたから。貴方は何も心配しないで……面会なら私に言うように伝えておいてちょうだいな」
「そう……なら良かった」
いばらはそう言った後、軽く息を吸い込んだ。覚悟を決めた様な顔をすると、重い口ぶりで告げる。
「姉さん――そろそろ、花瓶の水の入れ替え時よ」

153:藤井美鈴:2017/05/15(月) 22:32

「……あれ?………ここは…ま、まさか…!?」

何で!私さっきまで自分の部屋にいたよ!?何でこんな所にいるの!?私が一番嫌いな所……。

「さぁ、今から裁判を始めます!」

あぁ、『今日』も始まった。『裁判』という名の処刑が……。今日……裁かれるのは、誰?

「うふふ…貴方は何をしたのか、分かってる?」

……また、濡れ衣を着せられたのか。どんどん排除する、自分にとって『邪魔な存在』を……。

全員参加の狂った『裁判』。また、生徒が、先生が―――


狂いだしたのはいつだろう?

学校で『裁判』が始まったのはいつだろう?

あの狂った人が会長になった日だろうか?

それともあの『事件』が起きた時からだろうか?

それとも―――。




                  『狂いだしたのは、いつ?』プロローグより

154:藤井美鈴:2017/05/15(月) 22:35

華藤 美咲、今月の最新作登場。

氷ノ宮 氷雪の最新作。

155:文月かおり:2017/05/17(水) 16:51

朝。上履きに履き替えながら雑談するD組の生徒たち。
なんでもない日常のワンシーン。
誰もが一度は耳にしたことのあるチャイム音が響く。

 『文芸部員にお知らせー。本日放課後、部員会議を開くので、どんなに忙しくとも顔を出すことー。
 繰り返し連絡しまーす。文芸部員は本日放課後、必ず会議に参加してくださーい。以上、文芸部長からー』

「……だってさー、亜衣」
「ん、りょーかい。一緒にいこ」
「はいはーい」
のんきに会話する部員。
これからの学園生活がどうなるのかも知らずに―――

156:文月かおり:2017/05/17(水) 18:26

白野恵里―――私と亜衣が部室に来た時は、既にほとんどの部員が集まっていた。
正面にホワイトボード、部員会議の大きな文字。

ざわつく室内、部員たち。議題はもう、分かっている。

 今後の課題

どうすればいいのかなんて、誰も知らない。
部費をゼロにされたのに、焦ってなかった私達が悪いのだろう。
怒涛の五月はもう過ぎ去ろうとしている。

「全員、集まった?始めるよ」
笹川先輩が雑談を遮り口を開く。

「分かってるよね、今回のテーマはこれからどうやっていくか、について」
「……あ、あの。部費がストップするのは六月分から、ですよね?いいんですか?なんか、いつも通りなんですが……」
私と同じ一年生の人が質問を投げかけた。
「あ、それアタシも思ってた!」
「ああ、そういうのは全然大丈夫。三ヶ月くらいなら余裕だよ」

「……はあ?三ヶ月も?」
「意味わかんないし」
「いくらなんでもそれは……」
「奇想天外どころの話じゃないです」
「事実は小説より奇なり……」
「それな。さすが真帆ちゃん」
いっせいに始まるブーイングの嵐。うん、まあ……

私も、ソレはないと思った。
三ヶ月分て、どこから来たんですかそんなお金。
みんなの反応からみて、誰も知らなかったらしいし……。

「いやコレ本当だからね?嘘はつかないよ?とりあえずさ、落ち着いてって。ちゃんと話すから」
そう言って、笹川先輩は立ち上がった。マーカーペンを持ちホワイトボードに向かう。
部員たちはひとまず黙り、笹川先輩のことを見つめる。勿論、私も亜衣も。

「六月から三月まで、学園からの支給停止。他生徒及びその保護者、もしくは外部からの寄付も禁止。つまり、これからの活動費は自分たちで手に入れろ。これが生徒会長から言い渡されたことね。
 ああ、廃部を防いだだけマシよ。あの百合香相手にね。
 でさっきの話だけど、私が稼いだ今までのバイト代でしばらくはやっていける。だからその間に、資金稼ぎ頑張ってもらうからねっ!勿論、全員で!」

「……」
「笹川ちゃん無謀だねえ」
「ちょっと無理があるかな、と」
「うちらで稼ぐって、どーすんのよ」
「努力はしますが……」
そんなので、やっていけるわけがないと。
だれもが、そう考えてた。

……いや、正確には、笹川先輩と―――あともう一人を除いて。

 「なーに?随分と暗い雰囲気じゃない。せっかくの里帰りだっていうのにさー」

初めて聞く、女の人の声。聞こえた先は、奥のドア。
「あ、彩美さんっ⁉」
「リアルでは久しぶりー真帆ちゃん。話は聞いたよ、協力しよっか?」
彩美さん……て、まさか?
思い当たることがあり、私は隣の亜衣にささやきかける。
「……ねえ亜衣。もしかしてさあ、あの人」
「……そのまさかだよ恵里。なんで来るんだし」
やっぱり。
突然現れたあの方は、私の親友と冷戦中のお姉さんでした。

「彩美さんお久しぶりです!」
「見たよーあの新刊。面白かった」
「次は七月の下旬だっけ?」
「相変わらず早いですねえ先輩」
三年生の先輩方が親しげに集まっていく。以前の部長とは聞いていたけど、ここまでとは……。
「えーっと、センセイ?なぜこちらに?」
先輩の一人が疑問をぶつける。すると、彩美さんはこう答えた。
「そんなの、可愛い後輩をヘルプしに来たに決まってるでしょ」

「「「「「ヤッタ―――――‼‼‼」」」」」

「ね、先輩たちなんであんな喜んでるの?」
「さあ?」
「強力な助っ人とか」
「だといいね!」
騒然となる部室。あとで確実に文句を言われるだろう。
っと、それは置いといて。
「……亜衣、大丈夫?」
沈んでいる亜衣に話しかける。そりゃあビックリだろうなあ。冷戦中のお姉さんが、部活に来たんだから。
「おおい、あーいーさーん?」
「今日はツイてないわ……」

157:文月かおり:2017/05/17(水) 18:37

「……じゃ、続きをドーゾ、現部長さん」
「はいはい了解しましたっと。
 ゴメンねみんな。そこの人はあとで説明するから、会議に戻るよ。座ってー」
「「「はーい」」」
よくわからないが、とりあえず笹川先輩のほうに注目する。
ホワイトボードに書かれた、活動費調達の大きな文字。
「みんながそれぞれバイトするのもアリだけど、それじゃあ効率が悪いので。
 文芸部らしい調達方法でいこう!」
「それって、つまり?」

 「色々なコンクールに小説を応募したり、部誌の制作を拡大したり」



【いったんストップします】

158:文月かおり:2017/05/17(水) 19:57

「まずは確認から。
 この中で、応募経験のある人は挙手」
笹川先輩に言われ、私は右手を挙げる。うなだれたままの亜衣も。
「……八割ってとこかな。よし、じゃあ次。
 一次選考を通過した人?」
その後は二次選考、最終選考と続き、挙がる手の数はどんどん減っていく。
私は最終選考まで、亜衣は二次選考までで手を降ろす。

【またまたストップ】

159:文月かおり:2017/05/17(水) 22:36

「最終選考が一割……思ったよりも成績良いみたいだね。一安心。
 では最後の質問。最終選考も通過し、賞を取った人はいる?」
私は最終選考で落ちてしまったので、少し落ち込む。通知が届いたときはうれしかったけど、後になってみれば、もう少しだったのにと、それしか思えなかった。
私の更に上をいく、最終選考を通った人は……
「三年が二名、二年も二名、一年が一人か……。
 大丈夫。これならいける」
それをみた笹川先輩は不敵に笑う。

笹川先輩は、何を考えているんだろう。
前から知りたかった。

生徒会長に味方する理由、資金ゼロでも文芸部を続けたい理由。

よく分からない人だなあ……。


「OK 最初に言ったように、みんなには、創った小説をコンクールに応募してもらうよ。
 手短に、ある出版社のコンクールが丁度期末テストの頃だから、当分はそれに専念してね。
 で、ここでやっとゲストの登場ってわけ。彩美さん、あとは頼みました」
「あいよ。―――文芸部員のみんな、こんにちは。二年前、文芸部の部長やってた戸塚彩美。今は専門学校に行ってて、作家活動もしてるよ。いろいろとあって、ちょくちょく顔出すんでよろしくねー。あ、そこで死んでる亜衣の姉だよ」
「以上、最近売れ出し中の作家さんでしたっと。読んだことない?『朝顔の観察、現実的に進む恋心』とかさ。最近だと『四つ葉をみつけたおんなのこ』が刊行されたんですよね?」
「さっすが、アタリさ」
彩美さんの、ちょっと満足げな表情。笹川先輩と似ていた。
ていうか、さっき、『朝顔の観察、現実的に進む恋心』っていってた?それ……読んだ!
「あのっ、私、読んだことありますっ!」
思い切って少し大きめの声で言ってみた。みんなの視線が一気に集まってくる。
いつもだったらひるんじゃうけど、今はそんなこと気にしていられない。本に関することなら……全然平気!
「彩美さんの―――天色アオイさんの小説は全部!」

ちょっと、嬉しかった。好きな作家さんに会えたことじゃなくて、たくさん人がいる中で、離れたところにいる人に話せたことが。
私は、変わったのかな?他人からすれば当たり前かもしれないけれど、とても嬉しい、今の自分。

「アオイ……そっか、君は読んでくれてるんだ。お名前は?」
「え、えっと……?」
だめだめ、自分から話したんだから、きちんと答えないと。それにこの人は……あの、天色アオイさんなんだ!
「白野恵里、です!」
「ん、恵里ちゃん?もしかして亜衣の友達って子?次の小説に出てもらえない?名前は変えるからさ」
…………え、えええ⁉私っ!
「はーい彩美さーん、うちの子を勧誘しないでくださーい?」
あたふたしてたら、笹川先輩が止めてくれた。正直、ちょっとほっとしたよ……。
「あ、真帆ちゃんも出るからね?美紀ちゃんと風花ちゃんも出るんでよろしく」
……先輩方も?
「あー、なんとなく分かりました。つまり、実体験をってことですか?メインは誰にするんです?」
実体験……笹川先輩の?どうして私が?
「そんなの決まってんじゃん。アイツだよ?」
「ま、さか……。立ち直ったんですか?まだでしょう⁉なのにどうして
「真帆ちゃん、後でちょっと話したい。だから今は文芸部に専念してて。あたしは帰る」
「……っ」
「失礼しましたー」
そう言って、彩美さんは帰ってしまった。

「……」
「ま、真帆……?」
「……ごめん、取り乱した。もう大丈夫。
 ―――さ!気を取り直してジャンル確認から始めるよっ!」
部室の空気は一見明るくなったように感じた。

たぶん、みんな気を使ってる。


文芸部に暗い雰囲気は似合わないと。
そう言っていたのは誰ですか?
私たちに気を使っているようだけど。
逆効果だと気づいてますか?

あなたたちの過去には一体―――


 何があったのですか?



【以上です。長々と失礼しました!】

160:藤井美鈴:2017/05/20(土) 11:38

「氷雪、早いよ〜。まだ書いてるのにー……………よしっ!終わったぁ〜〜!」

「よかったじゃん、あえかちゃん」

「麻美先輩、やっと終わったのにちょっと冷たいですよぉー」

「あえか、早く校閲に持っていかないと、明日締め切りでしょう?」

「氷雪、それ早く言って!」

今、私の部屋にいるのは、麻美先輩、和希先輩、氷雪の3人。私、あえかはたった今、出版予定の物語が書き終わったところだ。

「あえかちゃん、麻美はもうすぐコンクールだから、そのことでいっぱいなんだよ」

あぁー、だから上の空だったのか。

「ねぇ、あえか。ペンネーム、教えて」

「あ、そっか。今、氷雪と美雪以外知らないのか。えっと、『青島 美希』でーす!」

「分かったー。じゃあ、超楽しみにしてるよ!」

「えぇーー!そんなに期待しないで下さい!」

「じゃあ、時間だから帰るねぇ」

「あっ、私も帰るね」

「はーい、バイバーイ!また明日ー!」

先輩たちと氷雪は帰った。

「相変わらず、氷雪は書くのが早いなー。推理小説なんて結構めんどくさいのに。流石優等生」

161:藤井美鈴:2017/05/20(土) 11:46

「何で、捕まってるの?」

「――黒髪、黒い瞳…。そなたはどこから来た?」

言葉が違うのに、何で言ってることが分かるんだろう?

「どこって言われても……ここは【日本】ですか?」

「二ホンとは?」

え……。服装は完全に日本なのに!和服なのに!あっ、でも……髪と瞳が違う。こんな色日本人はありえない。

〔ちょっとストップ〕

162:藤井美鈴:2017/05/20(土) 21:43

〔止めてすみません!続き〕

「まぁ、いいだろう。私が面倒を見る。名前を言え」

「私は青井茉莉です」

「そうか。茉莉、くれぐれも会長に捕まらぬようにな」

え、何で?それが顔に出ていたのだろう、答えてくれた。

「会長は『処刑』という地獄のようなことをするからな。会長に逆らったらもう終わりだ」

もうすでに地獄のような生活が始まっていたことを、その時の私は気づいていなかった――

163:文月かおり:2017/05/22(月) 21:35

 ある日の放課後。私白野恵里はある人物に呼び出され、屋上への階段を上っていた。
 これから、何が起こるんだろう。呼び出しの手紙、差出人不明。理由も不明。
 ほんの少し暗いこの空間に、靴音はよく響く。
 私は―――



 ―――なーんてことはさらさらなくって、ここは普通の公園。
 私は、木製に見せかけた金属のベンチに座っていた。近くには親友の―――もう親友って言っても、いいよね?―――亜衣もいる。
 呼び出しを受けたというより、呼び出した側かな?

 そうなんです。私たちは今、とある二人をお待ちしているのです。

 超有名人のお二人ですよ。知らないという学園生はいないでしょうね。


「恵里っ、急いで、公園っ!」
 いきなり言われた。驚いたどころの話じゃない。
 慌てつつも問い詰めて問い詰めて、やっと分かった。

 どうやら、準備が整ったようです。

 ちょっと気になって、亜衣に質問した。
「どうやって呼び出したの?」って。
 そしたらね、亜衣は、あっけらかんと笑ってこう答えた。


 「んっとね、【ラブレターを渡すための、古典的で典型的な代表例】って言ったら通じる?」


 つまり。先輩方の靴箱に手紙を仕込んできたんですね……。よく考えるなあ、亜衣は。

 とにかく、【ラブレター】で指定した時間まであと10分をきった。

 もう、後戻りできないんだ。


 そう実感して、改めて事の重大さに気づいた気がする。生半可な決断でしていいことじゃない。みんなを、裏切ることになるかもしれない。
 それでもいいの?私なんかに、そんな覚悟がある?

 亜衣が計画者。私は協力者であり、共犯者であり、発案者だから。


 いいですか?風花百合香生徒会長?
 女王陛下には分からないでしょうね。

 私たち下っ端の努力と結束力。
 


 文芸部きってのグリム童話好きが教えてあげる。

 物語をより感動的なハッピーエンドにするにはね、一度暗闇にいくといいんだって。
 灰かぶり姫も髪長姫も白雪姫も人魚姫も、みんな暗いどん底から抜け出した。
 なら、私たちも大丈夫。
 暗闇なら、もう慣れたから。

 私をE組に降格しますか?それは、私にとってただの里帰りですよ?





「……」
 亜衣が小さく笑ったような気がした。
「……きっかり五分前行動ですか?白羽学園生として手本となりますね、先輩方」
「亜衣?」
「恵里、いこっ。賓客様のお出迎え!」
いつになく元気な亜衣が、少し羨ましい。

私も、慌ててゲストの方へ駆け寄った。





 どうかこの想いが届きますように

164:文月かおり:2017/05/27(土) 20:53

(遅くなり申し訳ございません!続きになります)

「……もしかして、これ二人の?」
「正直、また処刑関係かと思ったんだがー?」
 色白でかわいい先輩と、すっごい睨んでくる先輩。先日のことで一躍有名になった、板橋先輩と松葉先輩です。
 今回のゲスト、御登場というわけ。

「初めまして、1年D組の戸塚亜衣です。こっちは―――」
「ぁ、白野恵里と申します……」
「ご丁寧にどうも。知ってるだろうけど私は板橋麻衣。よろしく」
「2−E、松葉。よろしくするつもりはないからな」
 なんか……物凄い警戒されてるなあ。
 こんな状況で、ひょうひょうとしていられる亜衣は何なの?
「で、こんな手を使ってまで私たちを呼び出した理由を教えてくれない?」
 板橋先輩の視線は相変わらず厳しい。私は、黙ったまま縮こまることしか出来ない。
「……簡潔に言うとですね」


  「協力者になりませんか?」


 松葉先輩の顔に驚きの色が見えた。しかし、何も言わない。
 亜衣が、その沈黙を破った。

「メリットもデメリットもあります。先輩方が拒否されるのなら、それでこの話は終了です。どうしますか?」
 面白いことを見つけた、という小さな笑みは、彩美さんとよく似ていた。
 でも、いつもの亜衣ではない大人びた表情は、あまり見ていたくない。私が知らない亜衣を見るのは、ちょっと怖い。
 ……しっかりしなきゃ。私が発案者だってことを忘れちゃいけない。
「ならもう解散だな。俺らはお前たちと組まない」
 きっぱりと言われた。亜衣は少し悔しそう。
 私が言い返さなきゃ。

「いいんですか?メリットもあると、先ほど申しましたよね」

 私たちの切り札はコレ。
 学園での革命が有利になる、いくつかの情報。
 一部教えられないこともあるけど、それ以外なら―――この人たちなら。
 本当は、切り札を使いたくなかった。だって、そうすると、『あの人たち』の過去を広めることになるから。たった数人でも、嫌なんです。
 でも今は、そうしないと意見が通らない。何としても避けたいんです。

「……じゃまず、デメリットは?」
 板橋先輩が聞いてきた。やっぱりそっちからなんですね。
 これには亜衣が答える。
「会長にばれる確率が上がるおそれは、無いとは言えません。」
「そりゃそーだ。芋づる式になったら元も子もない」
 松葉先輩の的確な言葉が返ってくる。
「メリットは?人数が増える以外に何かあるの?」
「情報交換、です……!」
 これならいける。自信をもって答えた。

「学園の中には、いくつかの派閥が存在していますよね―――

 会長さんに賛成する人、私たちのように反対する人、中立の立場に立つ人。
 でもそれだけじゃないんです。極々少数派ではありますが、

   『会長さんに賛成しながらも反発する方』

 がいるのをご存知ですか?私が知る範囲では……学園内、それも生徒会に2人と、学園外に1人います。

 ―――もう一度お聞きします。どうしますか?」

「……」
 先輩方は、さすがに驚いたようだった。
「情報ありがとね。でもごめん、すぐには決められない」
 ハーフアップの髪が左右に揺れる。

 ちょっと、残念だった。


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