愛しているのだ、いつまでも。

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1:匿名:2017/02/03(金) 23:00



恋をしていました。
何があったって到底叶うことのないような、物凄く不毛な恋。


ああ、初っ端から夢も希望もないような出だしでしたね。すみません。
しかし残念ながら“夢も希望もない”というのは大方間違っていません。だって、私の大好きな彼と結ばれることが私にとっての夢であり希望だったのですから。

そう、これはヒーローとヒロインの波瀾万丈な恋物語ではないのです。ヒーローに恋する、ヒロインの恋敵の話。ロマンス小説に出てくる、最後にはヒーローに振られてしまうかませ犬の役柄ですね。
ですからこれは、ハッピーエンドが好きな方はあまり良い気持ちはしない話だと思います。

……あら、それでも聞いてくださるのですか。ありがとう。嬉しいです。
ならば私も、少しでも楽しんでお聞き頂けるよう頑張りますね。


さて、どこから話しましょうか____

2:匿名:2017/02/04(土) 20:11


ざっくりと説明いたしますと、私と彼は昔から仲の良い幼馴染でした。

ちなみに彼 ルナーフィ・アルレイドはこのスペリアム王国を統べる国王様のご長子様に当たります。

ここで、「あれ?」と疑問に思った方もいるでしょう。なぜ、たかが伯爵令嬢の私が皇太子である彼と懇意にしていたのか___それは、私が5歳、彼が6歳の頃のことです。

私が5歳、すなわち30年ほど前になりますが_____その年の春、長らく闘病生活を送っていた私の母がとうとう逝ってしまいました。まだ幼かった私の記憶の中にも、あの日のことは鮮明に焼き付いております。
何より一番苦しかったのが、父____当時のリヒャインダ伯爵でしょう。

妻を失った悲しみと、1人で我が子を育て上げなければならないプレッシャー。

当時の父は精神的にもだいぶ弱ってしまい、食事も喉を通らず日に日に痩せこけていく一方だったと言います。
このままでは本当に危ない___となったその時に、たまたま父が書類の提出のため出向いた王宮で奇跡は起こりました。
変わり果てた父の姿を偶然見かけ、事情を知った国王からこう申し出があったのです。

あなたの娘を、毎日王宮に通わせなさい。王妃教育を受けさせよう、と。

幼い頃からあまり母に甘える機会がなく、屋敷に無駄に多くある書物ばかりを相手にしてきたからでしょうか。父に連れ添って屋敷の外に出向けば、色んな人から『大人びた、賢い子だ』と言われてきました。
どうやらその噂は国王の耳にまで届いていたようで、私は皇太子のお妃候補に入れられていたそうなのです。

陛下は身分差が大きいから、とためらっていたそうですが、もうこの際だからと私に王妃教育を受けるように申し付けてくださいました。
その際、ちょうど遊びたい盛りの息子ルナーフィと歳が近いので、教育の合間に遊び相手をしてやってほしいと頼まれ、父は二つ返事で了承します。

____これが、私と彼の出会いに繋がる全ての始まりでした。

3:アテナ:2017/02/04(土) 20:12

あああ気になる!
急にごめんなさい

4:匿名:2017/02/05(日) 20:48



>>3
アテナ 様
ありがとうございます!
頑張ります!これからも応援よろしくお願いします!

5:匿名:2017/02/06(月) 20:39



家に帰った父が久しぶりに見る心底嬉しそうな笑顔でその旨を伝えた時____私は思わず読んでいた書物を取り落としてしまうほどには衝撃を受けました。
それは、これほどの身分差がありながら王妃候補に選ばれていたから_____ではなく。

「い、いやあああ〜!王子様とお友達になんてなれっこないわ〜!」
「そ、そっちかフィリア……」

その頃の私は、まだ生まれて5年とちょっとのひよっこです。
おまけに母は床に、父は仕事に忙殺されておりましたから、普段から滅多に外に出ることはありませんでした。
たまーに父に連れられて外に出向けば、人見知り発動。まあこれが「大人しくて聡明な子」と呼ばれる所以となったのですからなんとも複雑な心境です。
どう考えたって、こんな私が同年代の子供達と遊んだり、ましてやお友達に!だなんて不可能なことだったのです……

でも……

「なんとか我慢しておくれフィリア。社会勉強だと思って」
「ゔぅ〜」

たかが伯爵位の私たちが、国王様のご好意を無下にすることなんてできるはずがなく。翌朝、なんとか仮病を使って部屋に篭ろうとする私を、父は強引に引きずって行きました……

6:匿名:2017/02/10(金) 21:52



「ルナーフィ・アルレイドです………よろしく、フィリア」

まるで、あれほど対面を渋っていた自分自身が嘘のようだ、と思いました。

初めて彼と目があった、その瞬間の私の心情を分かりやすく擬音で表現したとすると____ずきゅーん、でした。
そう、恥ずかしながら、一目惚れというやつです。ただ、それを理解するにはあの頃の私は人生経験が足りなさすぎましたが。

ふいに「フィリア、フィリア自己紹介」と、父に突かれて我に帰れば、王子が怪訝そうにこちらを見ていました。
あ、いけない___私の番です。心の中で、挨拶の台本の冒頭を復唱します。

__第一印象を決める大切な場面です。しっかり背筋を伸ばし、呼吸を整えました。

「わ、私はリヒャインダ伯爵家が娘、フィリア・リヒャインダにございます」

_____まあろくな教育も受けてこなかった私がご挨拶の作法なんて知るはずもないので、取り敢えず書物に出てくる主人公がやっていた挨拶を真似て会釈をしてみたのですが。

「……?…………?」

一瞬でその場の空気が凍り、陛下は首を傾げ。


まあそんなわけで、初の対面のご挨拶は見事に大失敗だったわけですね。はい。


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