糸使いと異能マンションの住民たち

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1:ミルト 初投稿です!:2017/03/09(木) 22:24

初めまして、ミルトです。現代ファンタジーを書いてみたいと思ってます!
よろしくお願いします。


0、異能マンション

木枯らしの吹き始めた10月、秋――—
若葉 糸乃(わかば しの)は下校中にその肌寒さに身震いした。
16歳の高校一年生女子だ。日本人らしいショートカットの黒髪に黒い瞳を持つ。
血のつながった家族は無し、養子として引き取ってくれた父がいる。が、家に帰ってくることはほとんどなく、現在糸乃は二十階建てマンションの十階に一人で暮らしている。
性格は・・・本好きで少しドジ。学校の友達や親友は複数いる。運動神経が抜群なことで有名だが、普通の学校生活を過ごしていた。
そんな糸乃は大きな秘密を持っていた。一つだけではない。
自分の住んでいるマンションに着いた糸乃は重いドアを開いてエントランスに入った。
【お帰りなさいませ、糸乃様。お疲れさまでした。】
機械的だが穏やかな男の声がエントランスに響くと同時に、閉じていた自動ドアが開く。
AI、いわゆる人工知能によってこのマンションは管理されている。
「ただいま、サージュ。何か連絡とかある?」
糸乃はエレベーターに乗り込んで十階のボタンを押しながら尋ねた。
【特に糸乃様宛てのものは届いておりませんが、糸乃様の部屋に訪問者がいます。スライミー様です。】
「そっか。ありがと。」
【どういたしまして。】
その機械音声を背中に聞きながら、糸乃は自分の部屋へ向かった。

糸乃の住んでいるマンション―――それは世間的にはシュア―ヴの名で知られている。まあ、マンション名を気にする人はあまりいないが。気にするのはせいぜい年賀状を書くときくらいだ。というのは置いておいて、シュア―ヴの住民たちはシュア―ヴを異能マンションと呼んでいる。
なぜならば、その住民は異能を持っているか、この世界の者ではないから。

10:ミルト:2017/06/10(土) 00:05

「刑務所!?そんなの魔界にあるのか・・・」
「うん。この世界に研修しに来た悪魔が是非って魔王にお願いしたらしいね。」
樹の驚きに満が答えた。
「それより。A&Bって・・・随分適当な名前ね。」
「うん、ただの呼び名であって、本名じゃないよ。」
「それ、どういうこと?」
賢一の言葉に、シルヴィアが訝し気に尋ねる。糸乃も気になって眉をひそめた。
「それについてはそこの悪魔くんの方が詳しいんじゃないかな?」
満は肩をすくめてイルラに視線を流した。心なしか、イルラの顔色が悪い。上級悪魔であるイルラはどんな姿にでもなれるが、今はシルヴィアに合わせて人間の姿をとっている。悪魔も顔色が悪くなるものだなと、妙な所に感心をしながら糸乃はイルラを見た。
「イルラ、大丈夫か?」
樹が不思議そうに尋ねたが、イルラは答えずに頭を抱えた。
「そんなに厄介な相手なの?」
糸乃が続けて問う。イルラは悪魔としてはトップレベルの魔力を持つらしい。そのイルラが頭を抱えるという事は、厄介なのだろう。案の定、イルラは呻きながら頷いた。
「双子の男女の悪魔だ。二人とも上級悪魔で、A&Bは幼い姿を好んでいる。思考も幼い子供のようで、物事が思い通りにいかないとかんしゃくを起こす。それだけならまだいいが、双子は調合の知識が多くて。かんしゃくを起こすと、決まって危険な薬だったり、爆弾だったりを仕掛けて破壊しまくる。A&Bの本名を誰も知らないのは・・・本名を知るほど近くにいた者はその爆発に巻き込まれて命を落としたか、記憶を失う薬を飲まされたかのどちらかだからだ。」
その説明を聞いた一同は押し黙った。シルヴィアは沈痛な面持ちで、騎士もゴブリンも、その雰囲気から重い空気をかもし出しているのが分かった。みんな、元々居た世界では死は常に生活に隣接していたようだ。糸乃や樹は特に親しい身内も無く、平和な国で過ごしてきた。今一つ、命を失うという事の重みが実感できていない二人は顔を見合わせて居たたまれない表情をしていた。
「あのさぁ・・・僕は暗い空気は好きじゃないんだよね。賢一、本題を伝えろよ。」
満がその場の空気を最初に破った。賢一は小さくため息をつく。
「本題?まだ何かあるの?」
シルヴィアの言葉に満は苦笑した。
「ただ警告するためだけにわざわざ急いで来ないよ。賢一が中々話さないから言うけど。君たちにはA&Bを捕獲してもらう。」


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