このエデル国で生きるには、殺戮人間にならなくては、いけない。
_____それが、私達のすべき事。
タイプ? side シュルツ
キャンディの報告によると、エデルから借った、少女は正反対な性格だという。
キャンディはミスが多いから、あまり信用できないが…
『丘上乃愛は、純情で穏やかだけど、命令を遂行するためには、何をも巻き込む覚悟を持ってる、心の強い、子だよ。
パトリシアは、ハッキリ物をいうタイプで、乃愛より格別秀でてはないが、違った力があるよ。
任務については、かなり楽観的。計画や、潜入については乃愛が正確かな』
ふむふむ。
キャンディの声が、イタズラっぽく、
『乃愛は、シュルツのタイプかもね』
古い事を持ち出すヤツだ。
これを聞いてたら、ヤバくなる。
仕方なく、キャンディとの通話を切った。
真純は、ニッコリ笑う。
「胡蝶蘭の総帥、レンナ様によると、テストしないとダメだって。っつう事で、テストとして、今から廃校に向かいま〜す」
まさかの、歩きで?
「勿論、車で。さぁしゅっぱーつ!」
何時の間にか、黒塗りのベンツが、駐車場の脇に、停められていた。
真純がタブレットを私とパトリシアに見せる。
「胡蝶蘭総帥のレンナ様だよっ!」
タブレット画面には、金髪のちょっとロールした髪に、蒼い目の女の人__少女かな?あどけない顔立ちが美しいくらい。
「で、最高幹部のシュルツ」
色白の、茶髪で深緑の目をした、なんか俳優としても生きていけそうな男の人が映っていた。
「もう二人いるけど、そのうちの1人、スズを紹介するよ」
真純はタブレット画面をスクロールした。
現れたのは、日本人女性。
長い黒髪を後ろにまとめた、質素な雰囲気のきれいな人。
この組織って、美形限定とかじゃ、ないよね?
パトリシアが、ニヤニヤと、
「乃愛も美形だよね〜」
ぬけぬけと戯れ言を言っている。
真純もニヤリと笑いながら、画面をスクロール。
「もう一人は、凌駕」
凌駕__ちょっと金色かな?に染めて、今時風のツンツンヘアの男の人が映る。
チャラ男って感じだけど、シュルツさんとは違う、美形の人。
またまたまた、美形だ!
真純は笑みを浮かべながら、
「畏まって、さん付けしなくて良いよ。大体、二人と同年代だし。あっ、スズの歳はね___」
プルル、プルル
真純のスマホが鳴る。
『キャンディ?今、私の歳を言おうとしたわねぇ?』
私は、これほど怖い殺気を感じた事は、ない。
真純は、笑いながら答えていた。
でも、目は笑ってない‥…。
通話を切り、真純は目元の涙?を拭った。
「スズからかいすぎると、ヤバいからね…」
うん、それはさっきのを見てて、分かったから。
真純が不意に、まじめな顔になった。
「胡蝶蘭の目的、教えたげる」
目的…
「世界から、裏の組織を消すこと、だよ」
裏の組織…!
「99%殺し専門の、テロリストとかを消す。モットーは、蝶のように軽やかに、蘭の花のように鮮やかに、消す。だよ!」
蝶のように軽やかに、蘭の花のように鮮やかに、消す。
私の頭に、インプットされる。
「あっ、もう着くよ!」
真純の声に、私は窓に顔を近づけた。
胡蝶蘭の表姿は、コンサルタント。
白い大きなビル。
真純がワクワクした口調で、
「レンナ様に紹介してから、テストコースに行くからね」
ビルの中は、要らない物は置いていない、殺風景。
奥に進むと。
さっき、タブレット画面で見た、レンナ様がいた。
書類から目を上げて、私達を映す。
ふわりとその目に笑みがこぼれた。
「エデルから来たのですね、岡上乃愛、パトリシア。お待ちしておりました」
私達は慌てて、礼をした。
頭を上げると、レンナ様は言った。
「これから、テストコースに行ってもらいます。そこで、あなたがたの真の力を見せていただきます」
その言葉に、改めて緊張。
ダメだったら‥…
そこから先は、考えたくない。
レンナ様はまた微笑み、
「私に届いた報告では、あなたがたは要ると思います」
なんとか、私の緊張の糸は解けた。
廃校についた。
「説明するよ〜。一階には、スズが仕掛けているよ!二階は、凌駕。三階は、シュルツ。
まぁ〜、ラスボスはシュルツだね〜」
どっくん、どっくん
緊張してきた。
「注意って言うと〜、スズはまぁ簡単だよぅ!凌駕は狙撃だから、ちょいむず!
ラスボスはスゴい、やばいよ!まぁ、ボクにはかなわないけどね!」
急に真純が怖く見えてきた。
「じゃ、スタート!」
初めまして。
この小説、面白いですねー!
続きを楽しみにしてます!
ありがとうございます!!!!
24:ゆるるん◆p.:2017/06/13(火) 20:28 「どーする?個人個人で行く?」
パトリシアが私の顔をのぞき込む。
「その方が、レンナ様に伝えやすいでしょ」
淡々と言うと、パトリシアが茶化す。
「私、シュルツと仲良くなろーっと!」
「なったら、良いんじゃない」
パトリシアがによによと笑う。
「じゃ、良いのね」
もう、入ろう!
「じゃあね、クリアしたら会おう!」
私は、パトリシアと別れ、校舎に入る。
薄暗い。
これじゃ、仕掛けとか分からない。
その瞬間、私は気配を感じた。
ビュッ!
小振りな石が、私の頬を掠める。
「あらぁ、当たらなかった?私の腕も、落ちたものね」
真純のスマホから漏れた、あの声と同じ…。
「私は、スズ」
真純から聞いてたけど、さらに怖い。
「私の歳、知らないわよね?」
「は、はい‥…」
スズの声が、校舎に響く。
「良かった」
言葉と一緒に、ハンカチが舞った。
それと同時に、私は駆けだした。
ハンカチから、石が落ちた。
他にも色々舞ったけど、私は振り向かず、階段を駆け上った。
狙撃…かぁ。
狙われてるのは、真純が教えてくれたけど、そこから先が分からない。
チャカッ
物音がした。
私は、ハッとして、構えた。
360度、どこから来るか分からない。
ダンッ!
サッと、私は避けた。
弾丸が、すぐそばの窓を割った。
パリーン!
破片が舞ってくる。
私は、軽やかにそれを避ける。
階段へ駆け上った。
此処が、ファイナルステージ。
「来たか」
シュルツの声。
「乃愛〜、ガンバ!」
…パトリシアの声。
仕方ない。
やるか。
パトリシアはフル無視で!
今度は、私から攻撃ね!
さっきの狙撃で割れた、ガラスを握って、飛びかかる。
シュルツが避けた所へ、破片を飛ばす。
「やるな」
私に向けて、シュルツが飛び蹴りを放つ。
「残念ね」
私は、つぶやいてナイフを出した。
真純がどこからともなく来て、
「乃愛、ゲームクリア。合格!」
新キャラ (そろそろ出ます!)
プリシラ
心に闇を抱える少女。
母は、夜盗。
乃愛とパトリシア、真純に拾われる。
ホッとして、身体から力が抜ける。
私は、胡蝶蘭に認められたのだ。
「パトリシアは?」
真純がニコッと笑った。
「もちのろん、合格だよ」
私的には、有り得ない。
真純は笑顔を消して、タブレットを出した。
「レンナ様から、命令が来たよ。殺し担当の、組織ブラッドパールを壊滅させてってさ!」
ドキドキ。
初任務だ!
「まぁ、ボクが見るところ、ペアを作ってすれば良いと思うしぃ、」
真純とパトリシアが、ニヤニヤし始める。
「5人とも、仲を深めるチャンスだと思うよ!」
「パトリシア…‥…」
私は、パトリシアにくぎを差す。
「私と誰かって、区切らないでよ?」
「分かってますよ〜」
信用できない。
こういう、ぬけぬけと戯言を言えるのがパトリシアなのだ。
凌駕が、プッと吹き出した。
「漫才師かよ?」
「「漫才師じゃなーい!!」」
ここだけ、パトリシアと声が重なった。
夕陽が、綺麗…。
私と凌駕は、スーパーに買い出しに来ていた。
「今日から、料理当番決めるよっ!買い出し、作るの二つに分けるからね!」
真純がレンナ様と相談し、決めたらしい。
「今日、何にする?」
凌駕に問いながら、パトリシアと真純が出来るような、料理にしないといけない。
「真純の料理の腕、どーなの?」
凌駕が顔を青くした。
「もう、吐きそうなくらい‥…ヤバい」
考えるだけ、ゾッとした。
パトリシアの腕はと言うと、同室だった私が作るしか、生きていけないという事から、察してほしい。
「でも、二人が共同でしたら…」
「集団殺人事件が起きるね‥…」
私は、カレールーを取る。
「仕方ない、カレーにしよう」
「今日は、カレーかぁ!頑張ろうぜ、パトリシア!!」
「真純、作ろうっ!」
いやあ、あの〜‥…。あまり、張り切っていただかないでほしいです‥…!
私と凌駕、溜め息を吐く。
「ん〜♪ん〜♪♪」
何か歌いながら、パトリシアと真純は野菜を切り始める。
危なっかしい!!
「1つ言わせてっ!切り方、ざっくばらんにしないでよっ?」
「もぉう、乃愛五月蠅いなぁ!」
包丁は振り回すなっ!
ああ‥…
怖い怖い怖い。
凌駕も真純を凝視。
危なっかしい手付きに、私と凌駕はもうドキドキ。
「しっかり、煮込んでよ?」
「分かってるってば!」
パトリシアの「分かってるってば!」は、信用できない。
私、それで何回死にかけたと思って?
十回は、死にかかってるわよ!
「乃愛と凌駕、レンナ様から、ブラッドパールに侵入してほしいって、ボクに言ったんだ。
ちょっと、カップルのふりして、行ってきてよ」
ハァ!?
真純とパトリシアは、によによと笑っている。
何か、考えてるんだよね?
男は、辺りを見回して、後ろの私達__私と凌駕に、
「誰もいねぇな?…で、何でアンタらはきたんだ?この組織に?」
私は、ニコッと笑って、
「レンナ様からの命令なので」
男は、ギロリと、
「アンタら、胡蝶蘭か?」
私は、集中して目を閉じた。
風が、吹いて、辺りの物が吹き飛んでいく。
風が私を中心に、取り巻く。
私は、男に向かって微笑んだ。
「さようなら」
呆然としている男に、飛び蹴りをかまし、鳩尾をつく。
これで、暫くは起きないはず。
念のため、術もかけておこう。
「ダスヴィダーニャ」
男は、動かなくなった。
凌駕が驚いたように、
「術も、使えるのか?」
「うん」
ロシア出身の、お師匠さまに教えてもらったっけ。
流石に、お師匠さまに追い付いてないけどね。
「行こう」
路地の先は、ブラッドパールの本拠地。
一見、ただのバー。
私達は、ソッと戸を開ける。
「…ん?」
たばこを吹かしていた、男が私達を視界に入れる。
「なんだ、お前ら」
なんだって、言われてもね…。
チャッと音がして、凌駕が銃を出した。
「胡蝶蘭か…。見ねぇ顔だな、新人か?」
ううう。
たばこ臭い。
私は、腰を落として、構える。
コイツは、かなり強い。
男は、ニヤリと笑った。
「お前、血の匂いがするな、かなりの暗殺者だな」
ドクンッと心臓が脈打つ。
血の匂い…
「乃愛!気を取られるな!」
凌駕が叫ぶのと、男が動き出したのが同時だった。
たくさんの蹴りや突きが飛ぶ。
それをかいくぐっていたら。
「っぐ!」
回し蹴りが当たった。
痛い。
でもこれでへたれていたら、ダメだ。
拳を固め、飛びかかる。
ヒョイッとよけられる。
でも、これぐらい計算内だ。
擦りむいた指をペロリと舐め、相手を眺める。
どこか、急所は‥…。
と…
背中を叩きつけられる。
相手の足を掴み、床に叩きつけようとすると。
「甘いな、未熟者め」
反対に、床に叩きつけられた。
相手に喉元を見せては、いけない。
何度、蹴りを入れられたか。
バンバンバン!
銃の音がして、男がバーを飛び出していくのが辛うじて見れた。
「ゴメン、すぐ撃てなくて」
凌駕が謝る。
そして、私の体を支える。
あれ?
力が入らない。
急に、意識が遠くなっていって‥…。
「鬼姫、」
誰……?
逆光で、顔が見えない。
服装は、貧しい農民の着物を着ていた。
「さぁ、目覚めましょう」
私が、鬼姫?
目覚め…?
「覚えてないのですね。それも、そのはず。貴女は、水責めで亡くなったのですから」
農民が、手を振り上げて‥…。
「…愛!乃愛!」
目を開けると、パトリシアと真純が私の顔をのぞき込んでいた。
「あれ?」
どうやって、あのバーから帰ってきたっけ?
「凌駕が運んでくれたよ」
えっ……………。
ドキッとした。
私、重くないよね?
「凌駕は?」
真純が首を傾げて、
「一人で、ブラッドパールの本拠地にもう一回行ったよ」
「一人で!?」
あわわわわ…………!
あの男に、一人で!?
「私、行ってくる!」
玄関を飛び出したら。
「まて!」
シュルツだった。
「なに?」
シュルツの蒼い目は、私をジッと捉えていた。
「一人で、死に行くのか?」
「違う!凌駕を助けに‥…」
「それが、死に行くということだ、わからないのか?」
どういうことか、分からない。
「お前は、さっき倒された。と言うことは、また殺されに行くことだ」
「そんな‥…!」
違う、違う。
私は‥…!
「俺も行く。それで良いなら、行こう」
目の前が、明るくなった。
「行く!」
シュルツと共に、本拠地に行くと。
ガッシャーン!
激しい物音が聞こえてきた。
恐る恐る、戸を開けると。
まず視界に飛び込んできたのは、カウンターが壊れていて、男と凌駕が取っ組み合っていた。
凌駕が不利だ。
私は、二人の間に飛び込んだ。
男か凌駕の拳が、突き出される。
私は、男の方を向き、意識を集中させる。
「ダスヴィダーニャ………」
男は、倒れた。
シュルツが、息があるか確かめた。
多分ないはず。
だって、この術は‥…。
「………、乃愛」
凌駕が、息も絶え絶えに、
「ありがとう……」
そして、気を失った。
私は慌てて、凌駕を抱える。
「シュルツ、帰ろう」
シュルツもうなずき、私は車の後部座席に凌駕を横たえる。
私は、助手席に乗り込む。
この戦いで、ブラッドパールの中心人物をなくした。
それは嬉しい。
けれど、ブラッドパールを壊滅させた訳じゃない。
『人を殺して、何も思わないの?』
師匠の声を思い出す。
『それはね、人としての大切なモノをなくした証なのよ』
私は、遂にバケモノになり果てるのか。
それでも良いのかもしれない。
でも、胡蝶蘭のメンバーとしても、在りたい。
これは、欲望なのだろうか?
「乃愛、レンナ様から新しい命令だ」
物思いに耽っていたら、シュルツが言った。
私はハッとして、
「え、でも、ブラッドパールは?」
「幹部は消えたから、後は下っ端だけだ。これくらいは、他のメンバーも出来る」
ほへ〜!
この組織の団結力は、すごい。
「で、命令は?」
「庫裡村という村に、財宝がある。それを、手に入れるとのことだ」
「えっ、胡蝶蘭は、財宝系も手に入れるの?」
シュルツは、当たり前だというように、うなずく。
「因みに、パトリシアと真純も一緒だ」
いやだー!
あの二人が来たら………!
「安心しろ。凌駕も行く」
いやいやいや、安心どころじゃなくて!
「て、この車何処向かってんの?」
シュルツは不思議そうに、
「勿論、庫裡村じゃないか」
と、答えた。
シュルツ曰く、庫裡村は地図にすら載らない古い村だ。
『鬼姫、目覚めましょう』
不意に、あの不思議な夢を思い出した。
鬼姫って、誰なの……?
「庫裡村に着いたら、村民に泊まるところを聞け。財宝についての情報は、スズから伝えられるから、待て」
「………、分かった」
晴れていた空が、暗雲に包まれていく。
もうすぐ雨が降りそうだ。
と、思った瞬間。
ザアザアザアー
大降りの雨。
「着いたぞ」
シュルツの言葉にうなずき、傘を貸してもらう。
ドアを開け、後部座席に向かう。
凌駕は微かに目を開けた。
「此処は……?」
「レンナ様から、新しい命令が届いたって。此処_____庫裡村で財宝を探すの」
凌駕は今度は、目を見開いた。
そりゃそうだろう。
私だって、ビックリしたんだもん。
起き上がる凌駕に手を貸して、外を見渡す。
山は濃い霧に包まれていて、神秘的だった。
「こんな隠れ村なら、何が起こっても、おかしくないよね…」
誰かが、そう言った。
そうだよね、とうなずきかけて、ふと怖くなった。
私は、凌駕とシュルツに聞く。
「ねぇ、今の誰?」
震える腕を抱え、答えを待つ。
凌駕とシュルツは、不思議そうに、
「何も、聞こえなかったけど」
と、答えた。
嫌だ。
私は昔から、こういう系は嫌いだ。
でも。
この声の正体が、パトリシアとか真純だったら…!
有り得る。
やだぁ…!
どうか、そういうことが起きませんように!
「と、とりあえず、村の人探そう!」
私はそう言って、村に入っていく。
庫裡村は、畑が多い。
隠れ村なのか、田舎っぽい。
と…。
「あんた……………、鬼姫だねぇ」
鬼姫……?
おばあさんは、涙を流しながら、
「どうかこの、不浄な村の咎を冥府に流して、清めてくだされ。そうしなければ、この村は、永遠の地獄へと変わりゆくのだから」
一体、この村で、かつて何があったのだろう。
鬼姫と言うのは、私なのか?