かけもっちゃった。完全フィクション、てか勝手な想像
花最 純菜 カサイ ジュンナ (26)
教師3年目。今年薊(あざみ)中学校へ赴任してきた。理科担当。独身。
中島 望 ナカジマ ノゾミ (29)
教師5年目。二年前薊中学校へきた。国語担当。独身。
赤城 優 アカギ ユウ (24)
新任教師。社会担当。独身。
高見 賢人 タカミ ケント (44)
ベテラン。薊中学校に8年程勤めている。数学担当。既婚。
野田 桜子 ノダ サクラコ (34)
4年前薊中学校へきた。英語担当。既婚。
高須 龍雅 タカス リュウガ (29)
教師5年目。昨年薊中学校へきた。体育担当。独身。
「あとね、未唯は今大変なときだと思うんだけどね、そろそろ合唱コンがあるんだわ…」
「あ〜、未来へのステップでしたっけ?」
「そうそう、それでさー 」
部活をやめるところまで追い詰められている未唯にこの話はよくなかっただろうか。
やはり、表情が暗くなっている未唯。
「……私、というか3組としては、全員で出たいっていう気持ちがあるの」
「やっぱそうですよね〜……」
「うん、その気持ちはずっと変わらない。
でも、最後に決めるのは未唯だからね?合唱コンまではまだ時間あるから、ゆっくり考えて」
すると、なぜか未唯の顔が少し明るくなったような気がした。
「はい!」
この会話の中で何か心に刺さるものがあったのだろうか。
だとしたら、これで明日から何か変わるといいんだけど…
それから未唯と未唯のお母さんに挨拶をし学校に戻ると高見先生が待っていた。
「未唯さん?」
「あ、はい…部活やめたいみたいです」
早めに報告すべきだと思っていたところだったので、一応言っておく。
すると、案の定
「え?なんで?やめさせなくてもなんとか…」
予想通り。まぁ、生徒思いなのが高見先生の最大の長所なんだけど。
「…………わかった、」
高見先生の口からその言葉が出るまでには、とても苦労した。
未唯に対して過保護になりすぎないように気をつけて話すのは意外と大変で、
やっぱり自分は無意識のうちに未唯を贔屓してたのかなぁ、と反省。
しかし、あの高見先生が頷いたんだから、ゴールは目の前だ。顧問の大野先生も、うまくやれば、すぐ終わるはず。
「大野先生、」
「はい」
……………
「あーー、部員減るのはしんどいけど…純菜先生怒ったらぶっ飛ばされそうだしな。いいですよ別にw」
「そんなことしないけどありがとうございます〜」
これはこれは。思ってたよりだいぶすんなりと。
ありがとう大野先生!
それからはあっという間にお偉いさん方のハンコを集めることができた。
まー、校長先生とかそもそも生徒ひとりひとりの事情なんて知らないのに文句言われても困るよね。よしよし。
明日 未唯に連絡、、
と机にメモを貼って、学校を出た。
そして翌日の授業後。
未唯に電話し、退部の準備が整った旨を伝えると「ありがとうございます!」ととても嬉しそうな声が返ってきた。
「そしたらさ…合唱コンのことだけど……」
切り出しにくい内容だったが今だ!と思いいってみた。すると
「あぁ、多分明日から学校行くんで」
んええええ!?
今、何て? 学校行くんでって?
嬉しいの極みだ…!!!!!!!!!!!!
……という心の声は電話越しにも漏れていたらしく
未唯の笑い声にハッとした。
「色々考えたんですけど、やっぱ部活さえなければ嫌なことなさそうだし
先生が私のために色々してくれた、それにこたえたいって思って」
胸がジーンとなりますね。
未唯、すごくいい子。
「……グスッ ありがとーね」
「ははっw では、ありがとうございました」
「うん、はーい」
ガチャッ
電話を切ると私の涙腺は限界を迎えたようで。
26歳、職員室にて泣き出しました。
まわりなんて何も見えてません。
とにかく嬉しい。
自分の、いや、クラスみんなの思いが未唯に届いた。
そう思うと本当に本当に嬉しい。
「かさい先生?どうしたんですか?」
お姉さまのような優しい野田先生にさっきの出来事を伝えた。
「………っで、未唯さんが来るんですっ……って!!!!」
すると野田先生、自分のことのように喜んでくれた。
「やったね!!私も未唯ちゃん会いたかったです!」
ああぁ野田先生やさしーいなぁ。
と。
それから野田先生と少し話すとだいぶ心も落ち着いたので帰ることにした。
「お疲れ様でした〜」
そしてこの嬉しいふわふわした気持ちのまま家に帰り、
ルンルンで愛する妹のもとへ。
「凜菜〜♡ただいま〜!!」
「え、ねぇキモい。大丈夫?」
秒で振られましたが。
さっきの出来事を話したくて凜菜聞いてよ!と。
「どーぞお話になって」
携帯をいじりながら返事をする凜菜。
絶対聞く気ねーだろ!と思いつつも私が話したいだけなので話を続ける。
「……それでさ!未唯が明日から来てくれるつって」
私は今とにかくハイテンション。
でも凜菜は相変わらず携帯とにらめっこ。
またスルーか生返事かな、と思っていたら意外な返答が来た。
「その、みゆちゃん?ってさ、名字、何?」
え?は?なぜ?知り合い?
「え?個人情報?いっていいのか?」
「あー、個人情報か…でも一応…佐々木みゆ?その子」
ビンゴ。佐々木未唯ですね。
荷物を片付けながら詳細を聞いてみる。
「なんでしってんの?」
「えとねー、同級生に佐々木未佳っているの。未佳からも話聞いてたから妹かなって」
「え?未唯さんってお姉ちゃんいたのね!」
そこの衝撃よ。長女感溢れてたからさ。
でも凜菜と同級生ってことはもう21でしょ?まーまー年離れてるのね。
「って!焦点ずれてるよ!」
はっっ。心の声が漏れた。
振り返ると案の定、凜菜が笑っている。
「それ、学校でもいってんの?」
「いや、気を付けてるつもり」
「ふーん。まぁ出てるだろうけど」
なんちゅう不毛なやり取り。
私も凜菜も飽きてきたので、静かになった凜菜の部屋を出てお風呂場へとむかった。
翌日。
なぜかめちゃくちゃ早く目が覚めた。
どうしようか…と少し迷ったが、久しぶりに朝練に行くことにする。
「おはようございまーす」
朝早いからか、いつもより少し静かな職員室。
昨日私が泣いたところを見ていたと思われる先生とはなるべく目を合わせないように、素早く荷物をおいて多目的室へ。
結局点呼ギリギリになってしまったがまぁいい。
「おはようございまーす」
「「「おはようございます」」」
あーこの空気、いつぶり。
朝の点呼とか片手で数えられるほどしか居たことないし。
私どんだけ朝練サボってたんだ。
朝はパート練習だから、どこに見に行こう。。と。選べるわけでもなく
高橋先生が今日はクラを見るので、フルートにまわってほしいと。
でも個人的にフルートの音は好きなので、ルンルンで被服室へ。
階段を降りたあたりから、きれいな音がよく聞こえる。
チラッ。
ドアのそばから少し覗くと、松井ひなたが気づいた様子。
続いて先輩たちもみんな気づき始め。
結局一瞬で全員に私の存在がばれた。
いつも通りのパート習を見るのが私の仕事なのにさと…
結局にぎやかなフルート&オーボエガールズに囲まれ
「先生ここのリズム教えてください!」
から始まったのに、いつの間にか話題はアニメとか。
「ほらー、もう終わりだし、全然練習しとらんやん!」
「先生が話しかけてくるからですよ!」
そんなことないわー。とか反論してササッと被服室を出る。
そろそろ終わりの点呼なので、多目的室へ戻る。
「ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
朝からにぎやかで何だかんだいいスタート。
朝打ちもスムーズに終わったし今日はいい日ね、
なんて思いながら未唯の姿があるかな、と期待しながら教室へ戻った。
「おはようございま〜す」
窓側の一番後ろを見ると、荷物が置いてある。
おっ、と思い教室を見渡すと……
いた。!!!!!!!!!!!!!!!
一応声をかけときましょうか。
「未唯おはようー、大丈夫そう?」
「おはようございます、大丈夫です!ありがとうございます!」
あー、何ていい子よ。これで学職の黒板の3組連続欠席者の欄が “なし” になる。
今日はもう本当にいい日。まだ朝だけど。
朝の会をすませてから未唯と少し話し、1時間目のため理科室へ。
ガチャ、、、開かない。
鍵忘れた。悲劇。
急ぎ足で職員室へ鍵を取りに行く。
キーンコーンカーンコーン♪
あー。間に合わなかった、
しかも1時間目はうるさい4組。これからどうなるかは想像がつく。
とりあえず急いで理科室に戻ると4組の人たちが廊下で待っていて。
「先生遅い!!」
「遅刻ですか〜!w」
って。やっぱりな、めんどくさ
わぁ、いけない。最近よく黒い感情がすぐ出てきてしまう。
教師になってから、忙しすぎて病み期はずいぶん減った。
それでも突然訪れる病み期は教師になってから…3回目かな。そして1回1回が長い。
「はぁ、、むり……」
何とか授業を終えてもそんな呟きばかり。
ボーッとすることも増えて普通に迷惑、だね。。
「せ…せい……先生!」
「はいっ?!なんでしょう!」
「あー、、疲れてます?大丈夫ですか??」
たまにはこんな優しい子もいるけど(未唯です、はい)
教師はそんなとこで弱音を吐くもんじゃない。
「ううん!めっちゃ元気〜!それで、どうした?」
そう。こうするしかないんだ。…
「花最先生〜」
「花最先生ちょっと」
「じゅんな先生〜!」
あーもう。呼ばれるたび、顔は笑顔で振り向くが心ではろくなこと考えていない。9割が、またかよとかうるせーなとか、マイナスな感情
「花最先生」
「はーい」
あーほらまただ。顔と心がずれすぎてて頭がおかしくなりそう。
「今時間ある?」
めんどくさい、いくら優しい野田先生でもめんどくさい。
がしかし、口はやはり心と反対に動く。
「はい!大丈夫ですよ!!」
「あのー、明日の研究授業の〜………………」
「あー。ですよね、私もそうします!」
「ほんと?ありがとう!純菜パイセンは若いのに頼れるねぇ」
「いややめてくださいよ頼れませんからww」
はー。普段は自分にも他人にもすごく正直で嘘なんてつけないのに、変だ。
やっぱり、我慢はよくない……ってことかな。
最近すごーく我慢してるもの。買い物。
今までは月1、いやそれ以上何か買ってたけど最近は忙しくなかなか時間がとれないので、即決が苦手ということもあってずいぶん買い物は減っていた。
あっ。。今週日曜日部活ない。一日空いてる。
ネットショッピングで服買い漁ろう…!!
よし、今日からは日曜日を楽しみに頑張るだけ。
なんて考えていると、また怖い顔でもしていたのか、赤城先生に「何かあったんですか!!」と言われてしまった。
それからの数日間は一瞬で過ぎていった。
授業もすごくスムーズに進むし、部活も絶好調で、指揮者になってから早1ヶ月、指示出しもうまくなったねと高橋先生が誉めてくださった。
やっぱり自分が明るいと何でもうまくいく。
そして余裕ができてまわりが見やすくなる、つまり教師としてのレベルがあがる、、?
「花最先生」
「はい」
「文化祭の運営、生徒会の先生だけじゃ足りないから手伝ってもらえますか?」
驚いた。そういうお誘いは高見先生ならきっと、高須先生とかにするかなと。1年部は文化祭の分担はフリーか必要以上にいる装飾係が多いから。私も装飾係担当だったし。
まぁ、謎は残るが、喜んで返事をさせていただく。
「はい!やらせてもらいます」
「おー!よかった!少し前は元気なかったけど最近また急に調子出てきましたね」
「そうですか?」
「うん、だからお願いしましたね」
ほお。すごーい。元気ってすごい。
中学校の教師なんて初めてなのに、いきなり生徒会がやる文化祭の運営に関わってしまうとは、私ついてる。
そして高見先生は生徒だけじゃなくて私たちのこともちゃんと見てくださってる、まさに教師の鑑だね。
先週とは真逆のポジティブ思考で仕事がはかどる。
そして今日は金曜日。明日が終われば日曜日。
突然舞い込んだ大役ともう目の前の日曜日にルンルンしながら帰る帰り道は、気のせいか信号待ちもいつもより少ないように感じた。