マオの内緒アート日記

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1:まい◆8Q:2017/07/27(木) 19:24

私、高野真櫻だよっ!マオって呼ばれてるんだ!ある日、アートコンクールに出品したら大賞をゲット!だけど、学校にも友達にも先生にも言ってなくて。わたしのアート日記、始まるっ!

2:まい◆8Q:2017/07/27(木) 22:20

高野 真櫻
美術が好きな小学6年生。
自分では普通のつもりだが普通ではない。
秘密しか抱えていない?

荻窪 翼
真櫻の幼なじみ。
勉強、運動どちらも出来る。
イタズラ好きな真櫻のお世話係。

歌井 ひなた
真櫻の親友。
声が綺麗で、合宿コンクールでひなたのいるチームは必ず勝つほど。

3:まい◆8Q:2017/07/27(木) 22:36

1.私はハッポースチロール

私は、本当に謎に出会う運命なんだろうなって思う。
だってさ、事件によく逢うのよ。
私の頭と事件の頭がゴッツンコ!
これをポスターに描いてみたのよ。
結構力作でさ、これにならないように。みたいに描いたの。
夏休み後、私のポスターが全国へ行ったって。
どういうことっ?
私が買った画用紙って、羽が生えてたってことっ?
ゾ〜クゾクゾク。
あの画用紙、怖〜い。
でもそれは、数々の審査を通ったってことらしい。
ああ、そういうこと。
早く言ってくれたら、恥ずかしくなかったのにさ。
プンプン。
あ、私、高野真櫻だよっ!
みんなには、腐ったハッポースチロールってよく言われる。
意味は分からないけど、バカにされてることは分かってる。
頭いいでしょ、へっへ〜ん。

「マオ。だから翼君に言われるのよ。腐ったハッポースチロールって」

ムッ。
ママまで何てこと言うんだっ!
私がそんなにハッポースチロールに見えるのか〜!
私がそんなにゴミに見えるのかーっ!

「マオ、マンガばっかり見て。勉強したらどうなのよ、勉強。翼君は頭いいのに、どうしてマオはバカなの」

ムッムッムッ!
ママ、黙って聞いてれば、失礼な言葉並べてるじゃない。
ケンカ売ってるのっ?
でも、わたし売ったことも買ったことも、ないんだよね〜。
ケンカって、売るもの?
買うもの?
値段付けられるのかな?
日本語って、フシギ〜。

「ママ、翼君がほしかったわ〜。カッコいいしねえ。頭いいし。運動も出来るのよね。いい子よ〜」

ママにだけよくしてるだけだよっ。
私には、怒ってばっかり。
イライラしちゃう、もう!
でも、ママってよく言うのよ。
翼君がいい、翼君がいいって。
私じゃイヤなら、いいよ!

「翼君のママもマオがいいって言うものだから。交換したいわ〜」

さすがの私も、これにはキレたっ!
ママをにらみながら立ち上がる。

「ろくなこと考えないマオより、翼君の方が絶対いいわ」

「ちょっと。ママッ!何でそんなこと言うのよっ!」

「だってそうなんだもの」

キーッ!
もういいよ。
私だってママ、いらないもんっ!

4:まい◆8Q:2017/07/27(木) 22:48

2.人生初の体験!?

私は、旅行バッグとコロコロ転がすやつに、マンガたっぷり。
パジャマにお洋服。
ヘアゴムに、ばあばの形見。
ありとあらゆる物を詰めてっ!
ママがためてたヘソクリをもらい。
こっそり私は家出っ!
重い、重いぃ。

「あ、マオ。重い荷物持ってどうしたんだ」

コイツが、ムカつく幼なじみ。
荻窪翼。
原因はお前だーっ!

「翼には関係ないでしょっ。ほっときなさいよ」

私は、翼を無視して電車の駅へっ!
カッコいい男の子なら(マンガの世界)、私を追いかけてくれるのに。
翼、手を振るだけ。
余計ムカつくーっ!

「お嬢ちゃん、ひとりで旅行かい?」

駅で座っていたおじいさんと目が合った。
このおじいさん、普通じゃない。
怠けた(すぎた)おじいさんみたい。

「ちょっと親戚の家へ」

「すごいねぇ」

思ってないくせに、そんなこと言うんじゃない。
本当に感じたことを言うんだっ!
私がちょっとにらむと、おじいさんはビクッっとして、もう話しかけてこなかった。
あら。
おじいさん、何か、すみません。
みんな通るのかな?
家出の道。
出来るだけもう通りたくないな。
うん。

5:まい◆8Q:2017/07/28(金) 08:48

3.家出仲間

電車に乗って、マンガを読む。
私の夢は、ズバリ!
マンガ家なのです!
絵をいっぱいいっぱい描くんだ!
そうだ。
家出した子の絵を描こう。
ママに会ったら、つき出してやるんだ。この子かわいそうでしょって。
そう言えば私、どこで降りよう。
私、どこへ行こう。
親戚の家が一番いいから、ママが苦手な叔母さん家へ行ってみよう。
絶対楽しいぞ!
ウキウキ、ランラン、ルンルンルン!
確か、降りる駅は、里賀。

「マオ!そんな荷物持ってどこへ行くの!?」

この子は、クラスのめんどくさい学級委員長、大堀沙矢子。
慣れなれしく、マオって呼んでくるのよねぇ。
呼び捨てで。

「大堀さんこそ、大きな荷物持ってどうしたの」

もしかして、家出?
ちょっと答えを楽しみにしていると、大堀さんはため息をついた。

「お母さんとケンカしたの。私、家に帰りたくない」

あら、家出じゃない。
ちょっとクスッっと笑ってしまうと、大堀さんは怒った。
そりゃ、イヤだよねぇ。
私なんかに笑われちゃあ。

「マオはどうしてなのよ」

「家出。親戚の家行くの」

大堀さんも、クスッっと笑った。
何か、いい気分じゃないね。
でもさ。
大堀さんがイヤだったなら、私に笑わないでほしいな。

「同じ家出ね。私も親戚の家行こう」

大堀さんのことは知らないけど、親戚の家行くなら、私も親戚の家に決定。
ところで私、どこで降りるんだっけ?

「次は、籠尾ー、籠尾ー」

駅マップを見ると、里賀は過ぎている。大堀さんの、バカァ!

6:まい◆8Q:2017/07/28(金) 16:12

4.第二の人生?

何とか里賀に着いた。
大堀さんは、籠尾に降りたんだ。
内心焦ったよ、ホント。
でも、籠尾で降りて、里賀に戻る。
時間ロスだったね、ふんっ!
麦わら帽子を手に、叔母さん家へ向かう。
夏休みってことあって、やっぱり暑いなあ。
ドアフォンを押すと、叔母さんが優しい顔で出てくれた。

「どうしたのマオちゃん。連絡なしで私の家に来て」

私は、叔母さんに、今まであったことを伝えた。
電車降り遅れ事件もね。

「マオちゃん、大変だったわね〜。どうぞどうぞ、上がってちょうだい」

叔母さんに手を引かれて、叔母さんの家に上がった。
あ〜、いい匂い。
蚊取り線香もあって…!
なんて和なのっ!

「お願いなんですけど、私のこと言わないでください。ママやみんなに。私を、羽折にしてください」

羽折って言うのは、叔母さんの名字。
もう、いっそのことここに住んじゃおうかしら。
すごく楽しそうだわ、ランっ!

「マオちゃん、乗ったわ。家ではマオちゃん。外ではミオちゃんでどう?」

「うん、私、羽折ミオになる!」

別の生活だけど、これでいいんだっ!
叔母さんはにっこり笑った。
学校も、新しくここで通えばいいものね。
テレビをポチッっと付けると、ニュースがやっていた。

「速報です。東京都に住んでいる高野真櫻ちゃんが行方不明だそうです」

ゲッ!
私のことっ!

7:まい◆8Q:2017/07/28(金) 16:33

5.行方不明の高野真櫻

このままだと、学校の子にバレちゃうよね、高野真櫻ってこと。
叔母さんと話し合った結果、私は伸ばしていた腰くらいまでの髪の毛を、元美容師の叔母さんに切ってもらいっ!
視力を落とすことにして、メガネをかけるっ!
するともう別人だぁ!

「いい?マオちゃん。あなたは、羽折美櫻なの。いいわね?」

叔母さんに聞かれて、うなずく。
風邪の子ということで、マスクしながらメガネ屋へっ。
夏だから、髪の毛が縛れないし、マスクしてるから暑いのよ。
ミオの生活、いつまで続くんだろ。
でも、よく考えたら、メガネ買っちゃえば、マスクはいらないの。
ずっとミオでいいけど。
でも、全校出校日に、ポスターとか、作文とか提出しちゃった。
1日マオになっても、いいかも。
それで私は、メガネをかけて家に帰ったの。
在庫をそのまま買ったんだっ!
テレビを付けると、まだ私のことが流れてるっ!

「高野真櫻ちゃんのお母さんです」

キャスターが言い、画面がお母さんに切り替わる。
フラッシュをバシャバシャ浴びてる。

「マオとは、ちょっとケンカをしてしまいました。マオの幼なじみの子のことで。そして、全然マオが部屋出てこなかったものですから、部屋をノックしました。返事がなかったので、寝ているのかと思いまして。私はとりあえず部屋に入りませんでした」

ふん、もうその頃には、私はいませんよーだ。
叔母さんもとなりで観ていて、これからどうしようか検討するの。

「時間が経っても経っても来ないので、謝ろうかと思い、部屋をノックしました。返事はなく、心配で部屋を開けました。そうしたら、マオはいませんでした。家中どこを探してもいませんでしたから、警察へ連絡しました」

ふーん。
もうちょっと、娘の心配したらどうなのよ、ねえ。
今はね、叔母さん家で幸せに暮らしてるのよ(暮らそうとしてるのよ)。

「次は、真櫻ちゃんの幼なじみ、翼君に聞いてみました」

翼も出るのぉ。
めんどくさいなぁ、この番組。

8:まい◆8Q:2017/07/28(金) 16:41

1巻の題名は、
『マオの内緒アート日記 1
        消えた画家の日記』

9:まい◆8Q:2017/07/29(土) 10:05

6.転校だっ!

すると、次は翼がバシャバシャフラッシュ浴びてる。
翼って、こういうの好きなのかな。
好きなんだったら、私に感謝しなさいよねっ!

「俺が家の前を通ったら、マオが重たそうな荷物を持っていました。どこへ行くんだと聞いたら、翼には関係ないと言われました。マオは、駅の方へ行きました」

ゲッ!
そこまで言ったら、特定されるじゃないかーっ!
そしてキャスターは、「駅へ行ってみました」と言って、駅が映る。
ドクンドクン。

「重たそうな荷物を持った、高野真櫻ちゃんを見た方いらっしゃいますか?駅員さんに聞いてみます」

すると、次は駅員さんにフラッシュがバシャバシャ!
どれだけ私のニュースやるのよ。

「重たい荷物を持っていらっしゃったお客様は、おふたりいらっしゃいましたので。何とも言えません」

駅員さん、ナイスよ!
このまま、追いかけてくるのを止めてちょうだいっ!
キャスターは振り返った。

「大きな荷物を持った、高野真櫻ちゃんを見かけた方は、こちらまでご連絡をお願いします」

ここで、私気付いたのよ。
大堀さんがいてくれたおかげで、駅員さんで途絶えたんだなって。
大堀さんも、私が乗った駅から乗ったんだね。
バカなんて思って、ごめんなさい。

「マオちゃん。とりあえず、ここの近くの、盆江野小学校へ行きなさい」

ボンエノ小学校。
私、友達出来るかな?
怖くて出来ないかもしれん。
だってさ、友達にバレたら終わりだもんね。
ってほど、軽いことじゃないんだけども。

10:まい◆8Q:2017/07/29(土) 10:16

7.突然女神様っ!

夏休み最終日、8月31日。
みんなが焦る日かもだけど、私はダラダラ、ダ〜ラダラッ!
この前の小学校の宿題なんて持ってきてないし、意味ないもんね。
叔母さんが、羽折美櫻で、盆江野小学校の入学許可を得てくれて、明日から盆江野生、かぁ。

「最近引っ越してきた、羽折美櫻って言います。よろしくお願いします」

近所のみんなにあいさつに回る。
この辺りは、すっごく田舎で、お年寄りがちょっと多い。
だから、小学校の人数もちょっと少ないんだって。
今ごろ、ひなたちゃんはどうしてるのかな。
ひなたちゃんっていうのは、私の親友だよっ!
元の小学校のね。
歌井ひなたって言うんだけど、歌がものすごく上手いの。
感心よっ!

「家の子、盆江野小学校の子なのよ。ミオちゃんと同じ6年生。仲良くしてあげてね」

へ〜。
ここの子も6年生なんだ!

「では、よろしくお願い致します」

あ〜、明日が楽しみっ!
だけど…本当に仲良く出来るかな。
私、どんどん自信なくなってくる。
わーん。

「ミオちゃん。ちょっとっ!」

叔母さんが私の手を引いて、家に帰った。
どうしたの、叔母さん。
そんなに慌てて。
慌てるのは、宿題に追い込まれた子だけでいいのよ。

「大堀さん、家に帰ったんだって。だけど、マオちゃんのことは言わなかった。かばったのよ」

わーん!
感動!
本当に、女神様っ!
バカなんかじゃない、神秘的っ!

「戻るなら、流れに乗って、大堀さんと同じように戻れるけど、本当にいいの?」

「はい」

叔母さんはにっこり笑って、家事に戻った。

11:文楓:2017/08/03(木) 21:42

「明スイ」や「1%の叶わない恋」も読みました。
この作品も新しいジャンルで面白いですね。
頑張って下さい。楽しみにしています

12:まい◆8Q:2017/08/03(木) 22:08

初めまして!
ありがとうございます!
この言葉が励みになります。
これからも、マオをよろしくお願いします!

13:薫:2017/08/04(金) 15:17

まい先生、こっちも読んだよ‼

これからどうなっちゃうの?ドキドキハラハラだよ!

14:まい◆8Q:2017/08/04(金) 18:09

薫先生も目を通してくれたの!?
ありがとうございます〜!
マオねぇ、どうなっちゃうのか。
では、どうぞ。

15:まい◆8Q:2017/08/04(金) 18:22

8.画家デビュー?

翌日、私はニュースを付けた。
朝ごはんのトーストをかじって、ニュースの内容を見る。
『スクープ!行方不明の高野真櫻ちゃん、画家決定!』
へっ?

「今日、画家デビューした高野真櫻ちゃんですが、見つかったら本格的に画家活動をしていく方針です」

え〜!
わたし画家になれるのぉっ!?
ずっと夢だった画家。
帰ってもいいかな?
帰りたい。
正式的に画家になりたいぃ!

「マオちゃん、こうするのよ。まず、テレビに書いてある電話番号にかけるでしょ?それから、私はマオですって言うの。送るのは叔母さんがやるから、それで活動したら?」

うん!
送るのはどうにかしたらいいし、場所も多分バレずに済む!

「叔母さん、ありがとう。私、電話かけるね!」

受話器を握りしめて、おそるおそる電話をかけた。

「もしもし。朝のニュース見ました。高野真櫻です。画家活動させていただいてもいいですか」

「ま、真櫻ちゃんっ?どこにいるの?どうしてかけてきたの?」

「あなたにお答えする必要はないと思います」

私はきっぱり断った。
どうせ、画家デビューってだけでニュースになるのに、そこまで言ったら特定されちゃう。

「真櫻ちゃん、本当に?」

「はい」

「分かりました。では、電話番号を教えてください」

こいつぅっ!
私がかけてるとこ、特定しようとしてるでしょ。
あんたなんかの手柄にしないんだからね、大人のやることも分かるのよ。
フンッ。

「☆★○-●◎◇◆-□■△▲です」

私は、叔母さんの電話番号を教えた。
今日から学校なんだから、かけてこないでよね。

「失礼します」

おおっと。
わたしが切ったら特定される?
そう思って、相手が切るのを待った。
ようやく切れると、ため息。
画家で嬉しいんだけど、ねぇ…。

16:まい◆8Q:2017/08/04(金) 18:36

9.無愛想だけど?

スッっと息を吸い込み、みんなを見回す。

「初めまして。羽折美櫻です。元気が取り柄です。よろしくお願いします」

みんなが拍手してくれて、担任の先生の守口先生を見る。
私の席は、パッっと見無愛想な女の子のとなりだった。
うまくいけるといいなぁ〜。

「私、羽折美櫻。よろしく」

女の子に笑いかけると、その子はちょっとお辞儀した。
礼儀正しいのかな、この子。
でも、そんなのを覆すことをボソッっとつぶやいた。

「そんなの知ってるわよ。さっき自己紹介してたでしょ。私の外見で聞いてないとか決めつけないで」

ヒッ。
そんなつもりじゃなかったのに。
私がシュンとうなだれていると、後ろの女の子が教えてくれた。

「あの子、江ノ島真理。美櫻ちゃんが来ることを誰よりも楽しみにしてたんだよ。ちょっと緊張してるだけだから気にしないであげて」

へえっ!
真理ちゃん、ありがとう!
待っててくれたんだ。
嬉しい〜。

「ちなみに、私は尾原いずみ。ミオちゃんって呼ぶね!」

「うんっ!いずみちゃんって呼ぶね」

な〜んだ。
真理ちゃんいい子じゃん。
私、ここ来て良かったな〜。
あるひとつのことを除いてだけど。

17:まい◆8Q:2017/08/05(土) 10:37

10.変えたいこと

始業式が体育館であって、みんなに着いて行って広いホールへ行った。
ホールの奥へ行くと、体育館がある。
紛らわしいよね、ちょっと。

「ミオちゃん、ここが体育館だよ」

ちょっと狭かった廊下から抜けて、開けた体育館に出た。
盆江野小学校の体育館、狭い。
この前は、結構広かったけど。
いずみちゃんの後ろに座り、始業式が始まった。
自己紹介があるみたいだけど、高野真櫻って言わないようにしなきゃ。
私は、羽折美櫻。
気付けば、校長先生の話だった。

「今日から転校してきた子がいます。自己紹介お願いします」

ドックン。
私は立ち上がり、クラスで自己紹介したみたいに自己紹介した。

「初めまして。私は羽折美櫻です。ミオって呼んでください。よろしくお願いします」

お辞儀すると、みんな拍手してくれた。よく見たら、真理ちゃんも拍手してくれてる。
私と目があった瞬間、すぐにそらされちゃったけど。
耳が赤い。

「座ってください」

校長先生が笑ったので、良かったんだとホッっとする。
始業式が終わり、教室に帰る。

「ミオちゃん緊張しなかったの?」

「しない。私、こういうのすごく慣れてるから」

って言うのもウソ。
私、ずっとこういうの苦手だったの。
でも、マオとミオは違う。
人柄も変えたいし、人を変えたい。
だから、出来るだけ何もかもを変えるんだ。

「ミオちゃんカッコいい。私も、ミオちゃんみたいになれたらいいのに」

「私なんてバカだし、取り柄なんて全然ないよ」

いずみちゃんはそう言うけど、本当。
元気が取り柄ってのはあるけど、自慢は出来ない。
もっとカッコいい取り柄、ほしいな。
あ、学力は上げるつもりよ。
あんまり下でも上でもなかったから、もうこのまま貫くのは無理。
上げてかないと、将来に響くの。
画家だったらいいかもだけど。
国語は結構高いの。
でも、算数が出来ないから低くて、結局真ん中くらいになっちゃう。
これは絶対、変えたいなっ。

18:まい◆8Q:2017/08/06(日) 12:08

11.美術女いずみ

教室に戻って、みんなが宿題を提出している時、私は教科書に名前を書き込んでいた。
盆江野小学校は、ポスターを今日出していた。
遅くない?
出すコンクールが違うのかも。

「ミオちゃん、いずみは盆江野小の美術女だよ!」

いずみちゃんと仲が良いらしい陽香ちゃんが教えてくれた。
へ〜、上手いんだ。
絶対私負けない。
美術だけは、絶対抜かれないんだからね!
いずみちゃんにも譲らない。

「私、すごく美術好きなの。結構前、画家デビューしたの。今年は高野真櫻ちゃんよね」

マオ、私の名前。
私の名前にビクンとしたのを、陽香ちゃんは見逃してなかった。

「高野真櫻ちゃんのこと知ってるの?ミオちゃん」

「うん。友達なの。マオちゃんに絵、もらったことあるから見せるね」

いずみちゃんも、私のこと知ってるんだ。
陽香ちゃんも。

「楽しみ!高野真櫻ちゃんと、勝負してみたいな〜」

いずみちゃん、私だから、勝負しようね、また今度。
秘密は教えられないよ。
いずみちゃんが、ポスターを広げて見せた。

「本当は、交通安全ポスター描いたんだけど、高野真櫻ちゃんのこと聞いてから、ちょっと高野真櫻ちゃんを真似して描かせてもらったの。家庭の日」

それは、昔の私そっくりの子が、お母さんそっくりの人と翼そっくりの人と仲良く話している風景。
懐かしい。
翼のお母さんの帰りが遅いとき、よくこうしてたな。

「高野真櫻ちゃん、早く家に戻らないかな。今のままじゃイヤだなぁ」

私がマオに戻ってほしいの?
ミオでいてほしくないよね。
でも…私の人生はミオだから。

19:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 11:10

12.外での叔母さん

やっとみんなが宿題を出し終わって、リュックを背負って帰る。
今日は、守口先生からもらったいろんなものに名前書くの。
ちょっとめんどくさいけど、仕方ないよね、もう。

「ミオちゃん、手伝おうか?」

いずみちゃんが何度も言ってくれたけど、こんなにめんどくさいことさせられないもんね。

「ん、いいよ」

リュックにたくさん詰め込んで家に帰る。
表札が羽折で、ちょっと違和感。

「ただいま〜」

すぐメガネを取って、目をほぐす。
痛かったな、目。
叔母さんがリュックの中に詰め込んである荷物を見て驚いた。

「担任の先生はいい人だった?そんな荷物どうしたの?友達はできた?これからやっていける?」

「守口先生っていってね、いい先生だと思うよ。名前書くのをもらったの。友達はできたよ。いずみちゃんって子とか。これから楽しみ!」

叔母さんはホッっとして椅子に座った。きっと、ずっと心配してくれてたのかな。
ありがとう、叔母さん。

「じゃあ、名前を書きましょう。早く済ませた方がいいわ」

叔母さんも手伝ってくれて、全部に名前を書いた。
実は、叔母さんって書道習ってたらしいから、すっごく字が上手いの。
私の下手さが身に染みるっ!

「すみませーん。いずみでーす。ミオちゃんいらっしゃいますかー?」

いずみちゃんっ?
私は、叔母さんにちょっとお願いして玄関に走った。

「ミオちゃん、大変でしょ?手伝いに来たよ!」

「いいってばいいってば。叔母さんが手伝ってくれてるし、」

「あら〜、ありがとね〜!もうそろそろ終わるからいいよ。良ければ、遊んでおいで」

叔母さんが突っ込んでくる。
家に上げちゃダメかもだしね。
いずみちゃんは、「遊ぼ〜」って笑ってくれたから、遊ぶことにした。

「私、荷物持ってくるから、そしたらもう一回来るね」

いずみちゃんが帰って、叔母さんが私の手を握る。

「マオちゃん、叔母さんは、外ではお母さん。叔母さんって言わない」

「はい、ごめんなさい」

叔母さんは、私にカワイイカバンを渡してくれて、私は家を出た。

20:みぃ◆8Q:2017/09/06(水) 21:37

13.翼あらわる!

いずみちゃんととなりに立って歩く。
行きたいところがあるんだって。
私としか行けないところ。
陽香ちゃんもいないし、相当だと思っていたら、駅だった。

「真櫻ちゃんが描いた作品を観るの。通ってた学校へ行くから」

いずみちゃん…私、バレる。
だって、だって…。
ずっと長い付き合いの人ばっかり。
髪の毛切ったって、眼鏡かけてたってバレるに違いない。
翼とかにはバレないかもだけど。
だってね、学校で私じゃない人に「マオ」って呼ぶのよ。
ひどいよねえ。

「いずみちゃん。マオちゃんが、私のことを間違えて羽折だから、ハオミって呼んでて。みんなハオミって言ってるから、ハオミって呼んで」

いずみちゃんは、騙されずにオーケーしてくれた。
違和感あるな〜。
ウソに、ミオに、ハオミ。
電車に乗ったすぐから、いずみちゃんは「ハオミちゃん」って呼んでくれてさ。
私って悪いヤツって思ったよ。

「確かここ。ハオミちゃん、ねっ」

「うん。ここで間違いない」

ああ、私の家に近づいてく。
小学校へ行くんだ、小学校へ。
すると、後ろで肩をポンポン叩かれたんだ。
翼に。

「お前ってどこのヤツ?」

「ちょっとあなた、女の子に言い方悪くない?初対面なのに」

いずみちゃんが、翼から私をかばうようにグイと前に出た。
すると翼は苦笑。

「お前には言ってねえ。コイツ。初対面じゃねえだろ」

え…?
耳元でこっそり言われた。

「お前マオだろ。バレバレ。世間に出されたくなかったら、眼鏡外して俺ん家来い」

いずみちゃんに手首を引っ張られて、通っていた小学校へ行く。
久しぶりだな、ここの道。

「あの子嫌な子だったね。女の子に失礼な」

「うんん。ハオミって知ってたけど、なんか名前をマオって言ってて」

「え…?」

いずみちゃんがゆっくりこちらを向く。ここで言うか。
隠し通すか。
やっぱり___。

「私、マオちゃんと顔似てるの。とっさのことで混乱したみたい」

「ふーん」

いずみちゃんは、面白くなさそうに校門をくぐった。

21:岬◆8Q:2017/09/19(火) 17:09

14.マオ室!?

職員室を訪ねる。
あ、担任の先生の悠先生じゃん。
指輪してるってことは、結婚したんだねっ!
おめでとう!

「マオさんっ!?」

こっちでもマオ…。
職員室の先生は、ドッっと私たちを囲んだ。
いずみちゃんが前に出る。

「この子、マオちゃんじゃないです。マオちゃんの友達の、ハオミちゃん。ちょっと顔が似てるだけです」

すると、先生たちは「なーんだ」と言いながら椅子に座った。
悠先生にわけを話して、図工室に案内してもらう。
…本当に懐かしいな〜。
思わず涙が出そう。

「いちにのさんはいっ!」

「一球魂一生捧げる」

あ、野球部の声だ。
ここの小学校オリジナルの掛け声。
ちょっとダサいかもだけど。

「すごく元気なんですねえ」

いずみちゃんがつぶやく。
悠先生は、誇らしげにグラウンドを指差した。

「ここの様子を、マオさんは描いてたの。その作品も見せるから」

私が描いた絵、か〜。
図工室に着くと、いずみちゃんも私もすごく驚いた。
正しく言い直すと、図工室じゃなくてマオ室かも。
私の作品の、ありとあらゆる絵が壁いっぱい…天井にも貼ってある。

「マオさんの絵を展示したの。見本になるし、本校の誇り。それに、早く戻ってほしい願いの表しよ。マオさん、ここに来てほしいわ」

悠先生は、肩を下ろして言った。
私、マオ、ここにいるよ。
気付かないだろうけど。

「ハオミさん、マオさんの友達なんでしょ?話せる機会があれば話してね。悠先生って言ってちょうだい」

私はにっこり笑い返した。
悠先生のこと、みんな葉山先生って呼んでたけど、私だけ悠先生だった。
ちゃんと覚えててくれてたんだ。
私は、悠先生が担任をしてくださったことを、改めて誇りに思った。


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