マオの内緒アート日記

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1:まい◆8Q:2017/07/27(木) 19:24

私、高野真櫻だよっ!マオって呼ばれてるんだ!ある日、アートコンクールに出品したら大賞をゲット!だけど、学校にも友達にも先生にも言ってなくて。わたしのアート日記、始まるっ!

42:相原梨子◆x.:2017/12/13(水) 16:07

6.陽香ちゃんの怒声

「大丈夫!?羽折さん…。ちょっと、いずみちゃん謝りなよ!」

「やっ、やめてっ!」

陽香ちゃんがいずみちゃんの後ろから出てきて、思いっきりいずみちゃんの頭を叩いた。

「みんなバカすぎる!いずみちゃんなんてもっともっとバカっ!内緒何でダメなの?私、いずみちゃんにウソつかれたり、内緒なんていっぱいじゃん!どうしていずみちゃんが言えるの!?」

陽香ちゃん…。
私はその場にいられなくなり、私の味方の子の間を通って教室を出た。
どうして、内緒がこんなに大きく発展するの?
意味分かんないよっ!
いろんな教室の前を走り抜け、上靴のまま外へ。

「羽折さぁーーーーんっ!」

クラスメイトの誰かの声が聞こえるけど、振り向かずに走り続けた。
今さら、誰かと会う気もなかった。
そのまま家へ走る。

「あれっ?マオちゃん?って、どうしたの!上靴のままじゃない!」

叔母さんは、私の部屋に入ってきて、背中をさすってくれた。
私に、バチが当たったんだ。
逃げてきたんだから。
ずっと自分から逃げてる。
お母さんたちからも、逃げて…。

「どうしたの?荷物は?何で上靴のままなの?何で泣いてるの?」

「…」

何も言えない。
だけど、叔母さんに一言言えることがあった。

「今までありがとう。逃げてきたときも、保護してくれて。こんなことになるなんて思ってなかったっ!」

お金を持って、上靴のまま駅へ走り抜けた。
内緒にしただけなのに…!
いずみちゃんの…バカっ!

43:ありふこ◆x.:2017/12/25(月) 21:38

7.私の決心

電車に乗って、家へ帰る。
私の、本当の家に。
もう、こっちで過ごそう。
向こうに行ったのが悪かったんだ。
そもそも、家出してきたから。
うんん、違う。
家であったことが悪いんだ。
お母さんが…。

「君、中学生?上靴のままだけど、どうしたの」

車掌さんに声をかけられたけど、気にしないでいいとだけ伝えた。
ただただうつむく。
何度か、叔母さんの家にもお母さんかや電話がきた。
私が来ていないかって。
もうかかってこなくなったけどね。
あきらめられたのかな。
捨てられたのかな?
そんなことを考えていると、もういつもの駅に着いた。

「降りなくちゃ」

電車から降りて、家への道を歩く。
家の表札に『高野』と書かれている。
家に帰ってこられた…。
ドアをガチャッっと開ける。

「お母さんっ!」

ちょうど玄関のすぐそこの廊下の掃除をしていたお母さんに呼びかける。
お母さんは、一瞬目を疑うようにして見てきた。

「マオなの…?マオよね」

「そう。マオ」

『盆江野』そう書かれたジャージを見て、きっとお母さんは、叔母さんの家に行ったんだと察したんだと思う。

「とりあえず、リビング来て」

優しく包み込むように握ってくれた。
お母さんの温もり。
すごく温かい。
リビングのソファーに腰かける。

「マオ、叔母さんにお世話になったのよね。お礼言った?」

「もちろん」

お母さんは、ちょっとホッっとした顔をして、私の隣に座った。
そして、一枚の新聞を広げた。

「ここに書かれているのは、画家デビューした高野真櫻、行方不明事件。いつか見つかったら捨てようと思って」

その新聞をビリッっと破り、ゴミ箱に思いっきり捨てたお母さん。
この日を夢見てた、のかな?

「ごめんね、マオ。お母さんが、翼くんって言ったから。ごめんね…」

「ごめんなさい、お母さん」

私は涙をティッシュで押さえた。
ずっと我慢していたものが。
全て出た感じ。
マオとミオを違う人に。
ずっとやりたかったことを変えてきた今までの生活。
こんなに辛いことはない。

「マオはどうしたいの?叔母さんのところに戻りたいなら、戻ってもいいんだよ。もう、マオの好きなようにしなさい」

「私は…」

 ピンポーン
お母さんが席を立つ。
きっと、隣のおばさんだろう。
おしゃべりが長くなるよね。
久しぶりに部屋へ行こう。
階段へ足を傾けると。

「おい、マオ」

「翼?タイミングいいね」

あの、ハッポースチロール呼びしてきた翼…なはずだけど。
変わったよね、翼。
がっしりしてて、男の子って感じがする。

「やっぱり、お前ってハッポースチロールだよな。弱い。逃げてばっか」

逃げてばっか。
その言葉に、強く打たれた。
私、どうするのか決めた。
もう迷わない。

「私、盆江野に戻る。謝って、仲直りして、お礼伝えれたら、帰ってくる」

お母さんは、目に涙をためてうなずいた。
翼もニカッっと笑う。
いずみちゃんと、絶対仲直りする。
もし、イヤなことを言われても。

「じゃあマオ、おこづかい」

お母さんの手に握られていたのは、私にしては多めのおこづかい。
だけど、これで頑張れってことだ。

「翼!またね!」

翼は手を上げて、家を出ていく。
お母さんの車で叔母さんの家へ。
私には、迷いの『ま』の字も存在していなかった。

44:ありふこ◆x.:2017/12/25(月) 21:51

8.支えてくれる人

叔母さんの家には、いくつかの靴が散らばっていた。
中には、いずみちゃんと陽香ちゃんの靴もあった。

「すみません、ちょっと」

お母さんが叔母さんを呼ぶ。
まだ泣いている私の代わりに、お母さんが私の意思を伝えてくれた。

「了解しました。まだ、ミオちゃんのままでいこうかしらね」

「ミオ?」

「私のふたつ目の名前。羽折ミオ」

お母さんは笑って帰っていった。
一番私を支えてくれる人。
どうせ、私のことなんてって思ってたけど、お母さんだったんだ。

「ミオちゃん!」

居間に入ると、すぐに陽香ちゃんが声を上げる。
いずみちゃんはこちらを見てくれないけど、来てくれたんだ。

「ごめんなさい、みんな!」

私は、まずペコリと謝った。
陽香ちゃんは「いいんだよ」と体をまっすぐに直した。

「私が身勝手な行動を取ったから、こんなことが起こっちゃって」

私は、何度も何度も謝った。
いずみちゃんが振り向いてくれるまで。

45:相原梨子◆x.:2018/01/08(月) 09:50

9.いずみちゃんの気持ち

陽香ちゃんは「ミオちゃんが謝ることないよ」と背中をさする。
…確かに、私はそんな必要ないのかもしれないよね。
だけど、いずみちゃんが振り返ってくれなきゃ…!

「いずみちゃん!もう一度、話してくれない?私、仲直りしたいの!」

お願い、いずみちゃん。
私の気持ち、届いて!
やがて、いずみちゃんと陽香ちゃんの他に来ていた手塚さんと七原さんが口を開いた。

「私思うんだけど、いずみちゃんもめんどくさいって言うか、グチグチ言い過ぎだと思う」

「それもあるけど、羽折さんもしつこくない?いずみちゃん嫌がってるのに取り入ろうとしてさ」

七原さん、そう思うの…?
しつこくしてたなんて…。
いずみちゃんも、手塚さんの言葉に口を紡ぐ。

「気にしなくていいの。羽折さんは何にも悪くないんだから」

手塚さん…。
本当に私は何にも悪くないの?
いずみちゃんが、家に来た理由って、やっぱり…!

「もうよく分かんないよ!ミオちゃんはとりあえず離れて!一緒にいるとイライラするのよ」

いずみちゃん…っ!
何でそんなこと言うの?
ついに、私は涙を流してしまった。
みんなの前で。

「イライラするとか、本人の前で言うの、最低だよ!」

手塚さんがいずみちゃんに怒る。
こんなままじゃ、ダメだけど。
でも、今は何もできない…。

「悪いけど、帰ってくれる?」

これでいいんだ。
いずみちゃんはすぐに荷物をまとめて家を飛び出す。
それを七原さんは追いかけた。
陽香ちゃんと手塚さんは「いずみちゃんと気まずいよね。明日、学校で待ってるからね」と言う。
私のこと、そんな風に思ってくれる友達がいるんだ…!


翌日の朝。
重たい足取りでランドセルを背負って学校へ向かった。
上靴を持って、新しい靴で。
いつも履いてた靴は、学校だから。

「あ、羽折さん!」

手塚さんだ!
陽香ちゃんもいる。
思ってた通り、いずみちゃんと七原さんはいなかったけど。

46:相原梨子◆x.:2018/01/08(月) 10:29

10.友達!

陽香ちゃんと手塚さんと教室に行くと、クラスの子たちが遠い目で見てきた。
ちょっと、いずらい。
その中心にいたのはいずみちゃん。
もしかして、嫌がらせ?

「気にしなくていいの。いずみちゃんなんて、自分が一番だったら何でもいいんだから」

手塚さんがそっと耳打ちする。
その性格、大変…。
そう思っていると、江ノ島さんがズンズン歩いてきて叫んだ。

「羽折さんのバカッ!どれだけ真理を心配させたと思ってるの!」

クラスがシンとなる。
江ノ島さんはハッっとして、口元を押さえて教室から出ていった。

「ちょっと待って、江ノ島さん!」

ここから先は屋上だ!
屋上に着くと、江ノ島さんが体操座りをして顔をうつ伏せていた。

「羽折さんが飛び出したから、真理が一番初めに追いかけたの。だけど、羽折さんの家知らないし、足遅いから見失ったの。心配かけすぎよ…!」

「追いかけてくれて、ありがとう」

江ノ島さんはハンカチを目元に当てながらつぶやいた。

「羽折さんと仲良くなりたいの…」

「私も、江ノ島さんと友達になりたいよ!こんな子いないもん!」

江ノ島さんは、にっこり笑って屋上を出ていった。
良かった、こんな子が盆江野小学校にいてくれて。
もちろん、陽香ちゃんや手塚さんも。

47:相原梨子◆x.:2018/02/11(日) 20:34

11.放課後の約束

昼休み、給食を班で食べる。
隣の真理ちゃんと目があった。
真理ちゃんは頬を染めた。

「こっちばっかり見ないでよ…。なんか恥ずかしいでしょ…」

真理ちゃんは箸をギュッっと握って、次々にご飯を口に運ぶ。
照れ隠ししてる?
斜め後ろの席の陽香ちゃんがふふっと笑う。

「カワイイね、真理ちゃん。ミオちゃんが来てくれたから、みんなが仲良くなれたし」

「友情、壊しちゃってない?…いずみちゃんと陽香ちゃんとかっ!」

向こうに座っている奈菜ちゃん(手塚さん)もニカッっと笑った。
みんな、そうやって言ってくれるならいいのかな…?

「そ言えば、ミオりん!また今度放課後寄り道しなーい?」

奈菜ちゃんが手を打つ。
それに対して、真理ちゃんがボソッっとつぶやいた。

「この辺りなんて寄り道するところないでしょ…」

確かにソウデスネ…。
前はひなたちゃんーーー歌井ひなたちゃんと寄り道してたけどね。
奈菜ちゃんはうーんと考え込む。
クラスのメンバーは14人。
男の子は5人だけ。
本当に少なくて田舎なんだよね。

「え〜っ!まりっちそう言うけどさ、まりっち何か案ないの〜?」

真理ちゃんがうつ向く。
確かに、叔母さん家初めて来た時、何も出来なさそうって思ったな〜。

「あっ!私、いいとこ知ってる!」

陽香ちゃんが嬉しそうに笑う。
すると、奈菜ちゃんは興味深そうに身を乗り出した。

「美術館だよぉっ!海王美術館!」

その時、私は思い出した。
海王コンクールの存在を。
すっかり忘れてたぁーっ!

「何で美術館なの?オシャレなカフェ行きたーい!」

「でもないじゃん…。ほら、そろそろ小学生美術コンクールあるでしょ?参考にもなるし」

…うーん、何だかいずみちゃんの視線を感じる。
急に離れていった陽香ちゃん。
やっぱり感じるよね…。
私がもしいずみちゃんだったら、海王美術館行かなくても、私が教えてあげるからって言いたい。
いずみちゃんも、そんな気持ちなのかな?

「まあいいよ。よっちゃんが言うなら、何か収穫ありそうだし。今日行こ!計画したらすぐっ!」

奈菜ちゃんはニヒヒッっと笑って給食を口に運ぶ。
久しぶりの放課後。
友達と過ごせるなんて嬉しいっ!

48:相原梨子◆x.:2018/02/11(日) 20:50

12.オシャレな奈菜ちゃん

途中まで真理ちゃんと帰る。
叔母さん家って駅と近いけど学校から遠いんだよね…。
学校に行くにつれて高くなっていく盆江野町。
ここは、すっごく低いところ。

「ただいまー」

入ってすぐの和室に入る。
ランドセルを置いて私服に着替えた。
ポーチにサイフとハンカチなどを詰め込んだ。

「あら約束あったかしら。マオちゃん誰と遊ぶの?」

「陽香ちゃんと真理ちゃんと奈菜ちゃんだよ!」

叔母さんは首をかしげる。
真理ちゃんと奈菜ちゃんは知らないよね。
私は、いずみちゃんとケンカしてみんなと仲良くなったことを話した。

「良かったわね。5時には帰ってくるのよ。行ってらっしゃい」

にっこり笑った叔母さん。
お母さんみたいに見守ってくれてるみたいですごく嬉しい。
家を出ると、真理ちゃんと陽香ちゃんがもう来ていた。

「奈菜ちゃんはまだ?」

真理ちゃんはうなずいて、奈菜ちゃんの家の方を見る。
すごく和って感じで、奈菜ちゃんとはイメージが違う家だった。

「ちょっと訪ねてみる?」

陽香ちゃんが腕時計に視線を向けながらつぶやいた。
すると、見ていた家からオシャレな格好をした奈菜ちゃんが来た。

「待たせてごめんよっ!美術館に合わない格好かもだけど可愛くしたくて」

ネックレスが太陽の光に反射して輝いて見える。
すごくオシャレ…!
真理ちゃんが目を輝かせる。

「東京の女の子って感じね。真理なんかは普通すぎるよね…」

「そんなことないってば!」

奈菜ちゃんがキラキラの笑顔を見せる。
すると、電車が来た音がした。
急がなくちゃ!
わたしたちは、みんなで駅へ走った。

49:相原梨子◆x.:2018/02/11(日) 22:21

13.憧れのノンノン先生

海王美術館に着くと、みんなビクッっと立ち止まった。
インターネットによく乗ってる先生、ノンノン先生がいたんだ。
カメラが回っていて、撮影中。
奈菜ちゃんは目を輝かせた。

「私でも知ってるよ、ノンノン!よっちゃん、解説!」

いきなり話を振られた陽香ちゃんは、頭の中を整理して分かりやすくノンノン先生の説明を始めた。
ところどころ付け加えたいところはあったけど、ちょっとやめておいた。
物知りで秀才の陽香ちゃん以上の頭脳を持っているとは思えない。

「まりっちーっ!ここは対応が得意なまりっちが聞いてきて!」

奈菜ちゃんが真理ちゃんにすがりついた。
真理ちゃんはちょっと引いていたけど、ノンノン先生に惹かれたのか受け付けカウンターへ向かっていった。

「ちょっと、ミオりんとよっちゃん!まりっちがあんなに…」

奈菜ちゃんがうるうるしながらつぶやいた。
受け付けカウンターで冷静に対応している真理ちゃん。
さすが、大人だね。

「私ヤバイかも。ノンノンにあそこまで動くまりっち…!」

ちょっと、奈菜ちゃんお母さん目線で話してない!?
真理ちゃんが戻ってくると、奈菜ちゃんは「まりっちーっ!」と抱きつく。
感動したってこと…?

「マーオ」

聞き慣れた声。
一緒にいるとウザくてイヤ。
だけど、助けてもらってばっかりで本当は優しい幼なじみ。

「どうして翼がいんのよ!」

「いちゃダメ?」

相変わらず冷たい〜。
荻窪翼、コイツのせいで家出したんだからね〜!
翼と会うたび思い返すあの日。
旅行バッグを手に電車に乗った。
って…!

「ちょっとごめん!」

翼の手首を握って、目立たないところへ行く。
不思議そうな顔をした翼。
天然って、翼みたいなヤツのこと!?
そう思っていると、翼は握られていた手首を離した。

「マオも友達出来たんだな」

「そりゃあまあ。友達くらい作れるってば!あ、ひなたちゃんどお?元気?歌聴きたいな〜」

ホント。
たまに思い出すひなたちゃん。
私の親友だったけど…。
家出してから会えてないや。

「あ!あと翼。友達がいるところではミオって呼んで!美しいに櫻で美櫻」

「美櫻かぁ…」

翼は何度か「美櫻、美櫻、ミオ…」とつぶやいて笑った。
髪の毛を大きな手でかきまわす。

「いい名前だな。真櫻もお前に似合ってていいけど、美櫻の方が似合ってる」

翼が私を誉めた…!
クスッっと笑って美術館を出ていく翼。
その背中が頼もしく見えた。

50:相原梨子◆x.:2018/02/11(日) 22:40

14.奈菜ちゃんの恋

みんなのところに戻ると、それぞれおしゃべりしたりスマホをしたりして時間を潰していた。
今、入れないんだ〜。
みんなが座っているベンチのすみっこに腰かける。

「あ、ねーねー!さっきのイケメンって誰?私チョータイプーっ!」

奈菜ちゃんがスマホから顔を上げる。
私は、幼なじみってことと、性格を軽く教えてあげた。

「いいヤツだよ、翼は」

奈菜ちゃんはふふふと笑って、翼が出ていった向こうを見た。
サッっと立ち上がり、カバンにスマホを詰め込む。

「翼君追いかける!」

奈菜ちゃんは持ち前の速い足で翼が行った方へ駆け出していく。
私たちも奈菜ちゃんを追いかけた。
言葉で話しただけの翼。
それだけでも翼に感情を持ったとしたら…。

「あっ、あのっ!」

翼に追いついた奈菜ちゃんは声を張り上げて立ち止まる。
瞬間的に翼はこちらを振り返った。
奈菜ちゃんと目が合うと、ペコリと頭を下げた。

「私の名前は手塚奈菜。あの…翼君ですよね?私のことどう思いますか!?」

率直にそこを聞くの!?
ちょっとビックリしつつ、翼の答えを待つ。
多分、何度も告白されてる翼は、他の子からしたら王子様系。
そんな翼に…。

「まだあんまり君のこと知らないけど、いい子だと思うよ」

「何でそう思うんですか?」

「ま…ミオと仲良くしてくれてるからかな。めんどいヤツだけど、仲良くしてやってな」

最後にニコッっと笑った翼は、今来た電車に乗って帰っていった。
今の状況がなかなか掴めていない奈菜ちゃん。
真理ちゃんが、奈菜ちゃんの肩に優しく手を置いた。

「良かったねえ、奈菜ちゃん。これがずっと見てきた夢でしょ?」

やっと我に返った奈菜ちゃんは、黄色い悲鳴を上げて顔を押さえる。
指の間から覗いた顔は真っ赤だった。

「私、翼君好きかも!ミオりん、これからは情報提供よろしくね〜!」

大変なことになっちゃったかも?
でも、いっか。
青春だもんね、奈菜ちゃんの。
そう思いながら、盆江野町行きの電車に乗り込んだ。

51:相原梨子◆x.:2018/02/11(日) 22:58

15.ママがタレント!?

家に帰ると、早速筆を手にコンクール出品作品を描き始めた。
タイトルは『歩』。
1日、1日を人を描かずに表す。

「マオちゃん、オレンジジュース」

叔母さんがアトリエに飲み物を運んできてくれる。
ズビビッっと飲み干すと、また筆を握って絵を描く。
自然を表すためには、緑と赤と黄色、ちょっと青も使って…。

「頑張ってね」

叔母さんはそっと部屋を出ていく。
ホント、お母さんみたい。
…なんて考えてると眠くなってきた。
筆を洗って干す。
アトリエの鍵をかけると、大きなあくびが出た。
楽しかったなぁ、今日は。
ノンノン先生はシルエットでしか見れなかったけど見れたし。
久しぶりに翼に会えたし。
久しぶりの寄り道。
そんなことを考えながら布団に入る。
ぬくぬくしててあったかい…。
…はあ…楽し…かった…。


 ジリジリジリジリジリジリジリ!
うーんもう、うるさいなあ。
目覚まし時計を止める。
あと5分…。

「マオちゃーん?起きてるー?」

一階から叔母さんの声が聞こえる。
起きるしかないかっ!
布団から出てジャージに着替える。
ちょっと寒いよ〜。

「おはよう、叔母さん」

おちゃわんにご飯を盛り付け、おわんにお味噌汁を盛り付ける。
居間の机に朝ごはんを並べてニュースを付ける。

「今日、特大のニュースが入ってきました。まずひとつ目のニュースです。新しいタレント活動がスタートしました」

映像が切り替わり…。
えっ…?
はっ?
どういうこと!?

「私、高野茉琴はタレント活動を始めたいと思います!」

「ママっ?」

ど、どうしてママがタレント?
『高野茉琴』とバッチリ書かれているし、この顔はママまちがいなし。
何で今さらタレントなの!?

「娘のマオのことではご迷惑をおかけしたのですがぁ…」

ゴックン。
何を言うのやら。
ママは、ハハッっと笑った。

「取材受けたときビビッってきてぇ、タレントになりたいって思いました!高野茉琴なので、たかまこって呼んでください」

ちゃっかり有名になってんじゃないよーっ!
何やってんの、ママ!

52:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 10:16

16.朝から大事件

重たい足取りで学校へ行く。
だいたい、ウチのクラスの男の子たちは芸能人の話ばっかりする。
新しいタレントなんて、話題まちがいなしだから。
校門を横目に通りすぎると、男の子の学級委員、和田はじめくんが来た。

「おはよう、ミオちゃん」

「おはよ!」

はじめくんはおっとりしてて癒し系。
お母さんのことは言わないよね…。
ちょっとゾッっとしながら下駄箱へ向かう。

「おーいっ、はじめーっ!」

後ろから走ってきたのは、クラスの男の子たち。
私とはじめくんを見るなり、みんな驚いた顔をした。

「はじめ…お前、ミオのこと好きなのかっ?クラス初のカレカノ!?」

はっ…?
何でそうなんの…?
クラスの男の子たちは、一目散に下駄箱へ走っていった。
待って待って、違うからーっ!

「ちょっとぉ〜!みんなぁ〜!」

はじめくんと付き合ってるわけないでしょ!
私に恋とか似合わないし!
はじめくんを置いて教室に着くと、みんな目を輝かせて私を囲んだ。

「はじめと付き合ってるってガチ?」

「秀才くん付けるなんて、羽折さんやるね〜!」

「いつからいつから!?」

ち、違ぁーうっ!
みんなの言ってること違うからっ!
はじめくんが教室に来ると、私はポツンと取り残される。
みんな、はじめくんの方へ行った。

「違うよ違う!僕なんかがミオちゃんと付き合うわけないでしょ」

みんな面白くないと言ったように散らばっていく。
すると、赤いランドセルを背負った奈菜ちゃんが教室に来た。

「みんなおっはよ〜!」

「おはよお」

「奈菜〜、おはよー」

奈菜ちゃんは手をパンと打って、ニカッっと笑って声を上げた。

「今日のニュース見た!?高野茉琴!ヤバくない!?私、もうファン〜」

えっ、えーーーーーーっ!

53:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 13:18

17.市長を脅す小学生!?

この日、お母さんの話題で持ちきり。
誰もが高野茉琴と口にしていた。
いずみちゃんと七原さんの会話に耳をそばたてる。

「高野茉琴カワイイしいいと思うけど、マオちゃんほっといていいのかな」

七原さんもうーんとつぶやく。
お母さんのこと悪く言われてる?
それって私のせいだよね。
ネットで炎上したらどうしよう!

「マオちゃんの母親でしょ?今はマオちゃんどこで生きてんの?」

確かに、世間の人には出てないよね。
お母さんにも言わないでって口止めしたし、翼にも。
だけどね、七原さん。
マオはここにいるよっ!

「でもいいじゃん。マオちゃんのこととか関係ないし」

そ、そうだよ。
いずみちゃんや七原さんには関係ないんだから探らないでよ。

「そう言えばさぁ、私海王コンクール出品したんだよね。マオちゃんも出品するから会えるかなぁ」

うん、会えると思うよ。
今も会ってるわけだけど。
いずみちゃんは目を輝かせる。
そんなにマオってすごい存在?

「バラエティーに高野茉琴出るよね!私、録画する〜」

奈菜ちゃんが夢見るように言う。
私も録画してチェックしようかな。
ヘンなこと言わないかとか。
お母さんもキャピキャピしてる感じがするし…。
私が家出してから、お母さんは子供っぽくなった気がする。
気のせい、かな?

「今日はさー!家に帰らずにそのまま寄り道しよーよー!昨日のは寄り道って言わないじゃん」

奈菜ちゃんが足を組む。
読書していた真理ちゃんが顔を上げる。

「今日こそ海王美術館行ってみる?」

「やだやだーっ!カフェーっ!」

行けたら私もカフェ行きたいよ〜。
すると、陽香ちゃんがふと顔を上げて声を上げた。

「盆江野町にカフェを作ってもらうしかないと思う!市役所に行こう!」

キョトンとする私たち。
そんな簡単にカフェ建てれないよ…。
陽香ちゃんは、みんなを手招きして自分の周りに集める。

「私のお父さんは盆江野町の市長なんだけど、なかなか人が集まる施設を建てようとしないの。だけど、お父さん脅しちゃえば一発!」

脅すって、私たちが!?
陽香ちゃん、何する気っ?

54:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 13:31

18.いざ、市長さんへ!

ランドセルをギュッっと握って、高い建物を見る。
盆江野町には似合わないビル。
ここが、市役所…。
陽香ちゃんを先頭に市役所に入る。

「みんなはちょっと待ってて。市長室に通してもらうから」

受け付けカウンターへ走っていく陽香ちゃん。
真理ちゃんの呼吸が荒い。
すると、奈菜ちゃんが真理ちゃんの背中をドンと叩いた。

「よっちゃんが計画したことだよ?成功するに決まってんじゃん!」

ん、そうだよね。
陽香ちゃんが、盆江野町のために考えてくれた計画だもん。
すると、市役所で働いている人が市長室へ案内してくれた。
一際目立つ部屋の前で止まる。

「陽香さん、ここです」

案内してくれた人は持ち場に戻る。
陽香ちゃんは、スッっと息を吸って市長室をノックした。
中から野太い声が聞こえてくる。

「陽香です。お願いしたいことがあって来ました」

市長室が開く。
中から出てきたのは陽香ちゃんのお父さんであり市長さん。

「初めまして、市長さん。陽香さんと仲良くしている江ノ島真理です」

「私は奈菜でーす!」

「私は羽折ミオです」

市長さんは驚いた顔をする。
とりあえず部屋の中に入れてくれた。
椅子に座ると、早速奈菜ちゃんが切り出した。

「カフェ!盆江野町に、カフェを建てたいと思います!」

「えっと、奈菜ちゃんとか言ったっけ。そんな簡単に…」

「お父さん聞いてっ!」

陽香ちゃんが声を張り上げる。
ここから、陽香ちゃんの脅しが始まった。

「盆江野町はお年寄りが多いでしょ?人口が減ったら、盆江野町はどうなると思う?クラスメイトも13人。どんどん減ってるの!」

圧力半端ない…!
お願い、市長さん。
許可してっ!

55:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 18:13

19.時間がヤバイ!

困った顔をした市長さん。
確かに困るよねぇ。

「まず、この町にカフェは合わない。逆で考えてみなさい。お年寄りが多いこの町に誰が集まるんだ」

陽香ちゃんが言葉を濁らす。
すると、市長さんは書類をドンと机に置いてこちらを見据えてきた。

「陽香や友達が盆江野町のことを考えてくれるのは嬉しいけど、無理もあるってこと、分かってくれ」

陽香ちゃんはうつ向いたまま動かない。
私も何も出来なかった。
盆江野町は、確かに集まるとは思えないくらい目立たない地域。
ここの人口が増えるキーワードがカフェに…。

「お父さんっ!来月ね、学園祭があるんだ。私たちのクラスでカフェやるから来てくれない?数が200人以上来てくれたらカフェ建てて!」

陽香ちゃんが涙目になりながら言う。
小学校を利用してカフェを作る。
そこでお客さんを集めればいいんだね!

「お願いします、市長さん!」

私は深々と頭を下げた。
市長さんは「えっ…」と声を漏らす。
すると、次々に真理ちゃんや奈菜ちゃんも頭を下げる。
そして、諦めたかのような市長さんは頭を抱えるようにして立ち上がった。

「分かったよ。1人でも足りなかったら建てないからね、陽香たち」

私たちはコクンとうなずく。
市長室から出ると、みんな一斉にため息を漏らした。
奈菜ちゃんがつぶやく。

「市長さん強っ!家に市長さんが帰ってくるなんて考えられない!よっちゃん、なんかすごいね!」

「そんなことないよ。お父さん、私を大切にしてくれてるから怖くないし」

いいなあ、お父さんがいるって。
元から交通事故でお父さんを亡くしている私。
お母さん、ひとりでいるのかもしれない。

「ミオりん?どーかした?」

「あはは、何でもなーい」

市役所を出ると、もう外は暗くなってきていた。
陽香ちゃんが腕時計を見る。

「うっ…もう4時50分。歩いて帰ると20分…」

昨日、叔母さんに言われた。
5時までには帰ってきてって。
帰れないじゃんっ!

「お父さんに車を出すよう頼む!」

一目散に駆け出す陽香ちゃん。
私たちは顔を見合わせてプッっと吹いた。
だらしない感じ。
しばらくすると、陽香ちゃんを乗せた車が目の前に停まった。

「早く乗って!」

急いで車に乗り込むと、車はゆっくり、でも速く走っていった。
あっという間に道を下る。
盆江野町が素早く走って見える。

「あ、ここ私ん家です!」

さっき見た和って感じの家、奈菜ちゃん家の前で停まる。
奈菜ちゃんが降りると、次は真理ちゃん家。
最後に私の家の前で停まった。

「ありがとうございました。さよなら。バイバイ、陽香ちゃん!」

今日はスリルがめっちゃあった。
朝から、はじめくんと付き合ってるとか言われたり。
今の市長さんを脅したり。

「マオちゃんっ!」

「叔母さん!」

叔母さんは心配した顔をして、こちらに歩み寄ってきた。
そして、私の目の前で止まると、私をギュッっと抱き締めた。

「帰ってこなくてビックリした…。寄り道しないで帰ってきて。それから遊びに行って…」

私は、叔母さんの温もりがすごく嬉しかった。

56:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 19:03

20.いきなり相談

叔母さんに買ってもらった、白いワンピースに番号札を付ける。
眼鏡を外して、付け髪をして。
今日は、海王美術館で結果発表。
出品作品が賞とってるといいけど。
海王美術館に着くと、高野真櫻様席に案内された。

「こちらが真櫻様の席です。お母様は保護者席へ」

いずみちゃんが隣の席に座ってる。
マオでいずみちゃんに会うのは二度目。
一度目は、彦宮学園で講演会をした時のこと。(短編小説板へGO!)
叔母さんの正体がバレるから、叔母さんはお母さんになりすませないから、親戚ってことで。
付け髪をして眼鏡をかけてる。
絶対、叔母さんって分からない。

「マーオちゃん、久しぶり」

「久しぶりだね」

いずみちゃんと話すのも久しぶり。
ミオのままじゃ、話せないもん。
すると、いずみちゃんは声を小さくして言った。

「始まるまで、ちょっと相談聞いてくれない?友達関係だけど。マオちゃんに聞いてもらいたいの」

私や陽香ちゃんたちのこと?
その予想は見事に的中した。

「マオちゃんの友達にミオちゃんっているで…。ハオミちゃん?」

うーん、設定的にはどっちでもいいんだけど…。
ここはミオで行こう!

「羽折ミオちゃんのこと?」

「そうそう!…でね。私、ミオちゃんとケンカしちゃったんだけど…」

すると、電気がパッっと消えた。
スポットライトが海王美術館の館長さんに集まる。

「このたびは、我が海王美術館に出品、そして閲覧ありがとうございます。ただいまから、海王コンクール結果発表を行います」

前の方の席に座っているノンノン先生に目を止める。
一見、髪の毛をポニーテールにした元気な女の子のイメージ。
顔を隠しているノンノン先生。
見えちゃうっ?

「まずは佳作賞からです」

モニターみたいなのに名前がズラッっと並んだ。
この中に『尾原いずみ』といずみちゃんの名前が書いてある。

「佳作賞、おめでとう」

「ありがと」

「次は館長賞です」

モニターに映し出されたのはたったひとりの名前。
隣の席の人だった。

「やった!」

私の名前、出るといいけど…。

57:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 19:21

21.結果は?

モニターが消える。
館長さんがマイクを構えた。

「次に、知事賞です」

すると、ついに私の名前が。
たったひとり、私の名前『高野真櫻』と映し出された。

「おめでとう、マオちゃん!」

「ふふっ、ありがとう」

その後もどんどん発表されていき、最優秀賞はノンノン先生だった。
表彰で、代表でノンノン先生が前に出ていった。
ノンノン先生の正体。

「表彰状。ノンノン。あなたは…」

館長さんが読み終わると、ノンノン先生が賞状を受けとる。
辺りから拍手が起こった。
ノンノン先生が振り返る。

「スピーチをお願いします」

館長さんからマイクをもらい、ノンノン先生はにっこり笑った。
そして、マイクを構える。

「初めまして、ノンノンです。本名は清田望です。海王コンクール出品者の方々はたくさんいると思います。賞をとれた皆さん、おめでとうございます。この中で、私の作品が最優秀賞をいただき、お決まりの本名を発表させていただきました」

清田望っていうんだ。
ノンノン先生は、またマイクを構え直してみんなを見回した。

「皆さんの作品も素晴らしく、私には描けません。自分の作品に誇りを持って、描いていってほしいと思います」

わぁーっと歓声が上がり、拍手の雨を浴びるノンノン先生。
気持ちいいだろうなあ。
私もあそこに立ってみたい。

「ありがとうございました。これにて終わらせていただきます」

また歓声が上がる。
部屋の電気が付いた。
いずみちゃんが相談の続きを話し始めようとした時のこと。

「いずみっ」

向こうでいずみちゃんのお母さんが手を振っている。
いずみちゃんは振り返ってにっこり笑って見せた。

「やっぱりいいや。ありがと。また会ったら聞いてね。バイバイ!」

いずみちゃんはお母さんの元へ帰っていき、賞状をもらって帰っていった。
ちょっとボーッっとしているうちに、叔母さんが来る。

「おめでとう!マオちゃん!」

「ありがとーっ!」

海王美術館を出るとき、知事賞のトロフィーと賞状をもらった。
初めてのコンクールがトロフィー!
うーん、正確に言えば初めてじゃないかもだけど。

「今日はごちそうね。何がいい?」

「ピザ食べたいっ!」

叔母さんは張り切って大型スーパーへ車を動かした。
私の海王コンクール出品に向けていろいろあったけど、今日くらいはいいよねっ!
私は、車の中でトロフィーをギュッと握りしめた。

             (つづく)

58:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 19:30

あとがき

こんばんは!
『マオの内緒アート日記』作者の相原梨子です。
今回の2巻はいかがですか?
ケンカしてしまったミオちゃんといずみちゃん。
なかなか複雑な友情です。
今回は真理ちゃんもキーパーソンですよね。
みんなの友情、見守ってください。

マオの内緒アート日記は8〜10巻ほどで完結させる予定です。
最後のあとがきでも会えたら嬉しいと思います!
ヨロシク!
でも、完結したら残りのレスは感想やオリジナル小説を書いてね。
著作権は大丈夫。
私が許可しましたからっ!

2巻も1巻に引き続き、読んでくださってありがとうございます。
3巻もよろしくお願いします。
これからもずっと読んでいただけると私は泣いて喜びます。
じゃあね!

       完結を目指す相原梨子

59:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 19:32

☆次回予告☆
校内学園祭が開幕。
美術展示会もあるし、カフェで人も集めなきゃだし…。
大丈夫!?

60:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 19:37

★ミオの仲間プロフィール★

岡田 陽香
おっとりしているが、本気になるとおっとり度がなくなる。
優しいまとめ役。

手塚 奈菜
元気なスポーツ少女。
いざという時は守ってくれるが、基本空気読めない。

江ノ島 真理
読書が大好きな地味っ子。
密かにミオを待っていた。
平均的すぎる成績。

61:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 19:46

『マオの内緒アート日記 3
   絶対成功!?盆江野小学園祭!』

登場人物

高野 真櫻
美術が大好きで得意な女の子。
ミオとハオミの異名を持つ。
昨日コンクールで知事賞をとった。

岡田 陽香
盆江野町の市長の娘。
ミオの入っているグループのひとり。
おっとり屋。

手塚 奈菜
元気なオシャレっ子。
考えたらすぐ行動する気任せ。
だけど信頼度は超高い。

江ノ島 真理
ミオのことが誰よりも好き。
何もかも普通。
クラス一の地味っ子。

62:相原梨子◆x.:2018/02/12(月) 21:35

1.今日は私の誕生日!

10月に入って涼しくなってきた秋のある日のこと。
私、高野真櫻は誕生日を迎えました!

「誕生日おめでとう、マオちゃん」

叔母さんがにっこり笑う。
ここは叔母さん家。
だけど、私はここに住んでます!
理由は家出したから。
詳しくは『消えた画家の日記』を読んでね!
お母さんも今は認めてくれてて、応援してくれてる。
詳しくは『コンクールは事件祭!?』を読んでね!

「12歳ね〜、早いわ〜。さあさあ、朝ごはんですよ」

居間に並べられた朝ごはん。
お米にお味噌汁、卵焼きにほうれん草のごま和え。

「いただきまーす!」

箸をギュッっと構えてご飯をかきこむ。
今日から学園祭の準備。
市長さんにはカフェやるって言っちゃったけど、まだみんなに言ってない。
とりあえず、みんなを説得するんだ。

「そう言えばマオちゃん。学園祭楽しみにしてるわね。そろそろでしょ?」

「うんっ!絶対6年1組来てね!」

叔母さんは笑いながらお味噌汁をすする。
宣伝もしなくちゃだし…。
まだまだ大変なことがいっぱい。
大丈夫だよね、カフェ。


家を飛び出すと、和って感じの家からひとりの女の子が出てくるのが見えた。
その子に手を振る。

「ミーオりーん!」

「奈菜ちゃーん!」

手塚奈菜ちゃん。
私、陽香ちゃん、奈菜ちゃん、真理ちゃんの4人グループのひとり。

「Happy Birthdayミオりん!」

「ありがと、奈菜ちゃんっ」

誕生日を友達に祝ってもらえるなんて、チョー嬉しい!

63:相原梨子◆x.:2018/02/16(金) 22:13

2.まさかの出来事

教室に行くと、陽香ちゃんと真理ちゃんが私と奈菜ちゃんを囲う。
岡田陽香ちゃんと江ノ島真理ちゃん。

「誕生日おめでと、ミオちゃん!」

「12歳の仲間入りね」

私たちの会話を聞きつけた子たちが、さらに私たちを囲う。
みんな口々に声を上げた。

「え〜?ミオちゃん誕生日なの?おめでとう!」

「羽折さんおめおめ〜」

「羽折ちゃんおめでと!」

こんなに大勢の人にっ!
みんなにっこり笑ってくれる。
それが、すごく嬉しかった。
ずっと前までは、人数が多すぎてみんなの誕生日が覚えられず、祝ってもらうなんて夢だった。
だけど、人数が少ないのもいいよ。
みんなの誕生日覚えられるから。

「ありがとう。みんな!」

わいわいと盛り上がっていると、担任の守口先生が入ってくる。
たちまちのうちに散らばっていく。
ついに、この時。
学園祭の出し物を決めるのかと思いきやっ!

「後期の学級委員を決める。推薦、立候補はないか〜?」

すると、スッっと奈菜ちゃんが挙手した。
みんなの視線が奈菜ちゃんへ向く。
ふっとこちらを見て不敵な笑みを浮かべた奈菜ちゃん。
イヤな予感が体内を駆け回る。
そして、ニヤッっと笑って言い放す。

「ミオりんがいいと思いまーすっ!」

やっぱり言うと思った…。
どうして言っちゃうのよぅ。
呆れながらボオッっとしていると、辺りから拍手が起こった。

「よおし!羽折ちゃんでいい人は、挙手っ!」

クラスの男の子が言うと、私を除いたみんながビシッっと手を挙げる。
そりゃあ、やりたくないもん。
守口先生がにっこりしながらこちらを見る。

「いいか?羽折さん」

「は…はい…」

あーーっ、もうっ!
こんな予定じゃなかったよ〜!

64:相原梨子◆x.:2018/02/16(金) 22:26

3.ふたりの言い合い

結局男の子の学級委員は決まらず、私ひとりの進行で学園祭の出し物決めを行った。

「悪いけど羽折さん。先生は用事があるんだ…。ひとりでいいか?」

「分かりました…」

守口先生は責任感を持たずに教室を後にしていく。
すると、クラスの間で守口先生の愚痴がこぼれ始めた。

「何で羽折さんひとりに?かわいそ!だいじょおぶぅ?」

彩葉ちゃんーーー七原彩葉ちゃんが嫌味を言うかのようにつぶやく。
私といずみちゃんーーー尾原いずみちゃんがケンカした時のこと。
彩葉ちゃんはいずみちゃんの味方をしたんだ。
だけど、長いから彩葉ちゃんって呼ばせてもらってる。

「いろちー、意味ありげ!」

奈菜ちゃんが持ち前のネーミングセンスで彩葉ちゃんに言う。
元々は、奈菜ちゃんと彩葉ちゃんが仲良しふたり組だったんだけど、私たちのケンカを通して割れたんだよね。

「何?そういうのやめた方がいいよ。奈菜の悪いとこ」

あーっ、めんどくさいことになってきてるんじゃないのっ?
ふたりの言い合いを見守るクラス。
みんなの目は「羽折さんどうにかしなよ」や「学級委員っ!」や「もー、やる気なくなったわー」って感じ。
私、どうしたらいいっ?
すると、真理ちゃんが机をバンッっと叩いて言い放した。

「真理が代わりに一緒にやる。学園祭の出し物決めよう」

真理ちゃん…。
すごく気が利く真理ちゃん。
友達ってすごく大切!
そう噛み締めて進行していった。

65:相原梨子◆x.:2018/02/17(土) 13:02

4.出し物でハラハラ

彩葉ちゃんはふて腐れたようにそっぽを向いてしまう。
真理ちゃんはトンと教卓を叩いてみんなを見回した。

「今回の学園祭の出し物を決めたいと思います。案がある人はいますか?」

計画通り、陽香ちゃんが手を挙げる。
私は陽香ちゃんを指名した。
みんなの視線が陽香ちゃんに集まる。

「カフェがいいと思います」

普通さを装って椅子に座る。
すると「はいはーい!」といずみちゃんが手を挙げた。
指名するべきだけど…。
ゆっくりと真理ちゃんを見る。

「大丈夫。指名して」

そうだよね…。
計画では、陽香ちゃん以外の案は上がらないつもりだったけど。

「いずみちゃん」

「校内美術館をやりたい!特にこの教室を中心に、廊下にもいっぱい絵を貼って見てもらいたい!」

すると、クラスの子たちは口々に自分の意見を好き勝手に言い始めた。

「カフェとかだりぃー!美術館とかいずみとミオだけのためだろ」

「いずみちゃんが自分の実力認められたいだけでしょー?」

「カフェとか恥ずかしー」

真理ちゃんが「うるさいっ!」と声を上げるまで収まらなかったみんな。
たった真理ちゃんの一言でシンとなった。

「陽香ちゃんがカフェをやりたいと言ってくれたのには理由があります。陽香ちゃん、どうぞ」

真理ちゃんが陽香ちゃんを見る。
不敵に笑った陽香ちゃんは、みんなを見回してニコニコ笑った。

「盆江野町は田舎でどんどん人口が減ってるけど、父にカフェを建てたいと言ったら、私たちがカフェでお客さんを集めればいいって言われたの」

すると、女の子の顔がパアッっと明るくなってきた。
男の子は上の空。

「オシャレなカフェに寄り道っ!絶対カフェだよ〜!陽香サンキュー」

「男子、やるよぉっ!」

「陽香ちゃん気が利く〜」

そして、男の子の許可も出てカフェに決定した。
ここからは役割分担。
またいろいろごちゃごちゃしそ〜!

66:相原梨子◆x.:2018/02/17(土) 14:01

5.いざ準備開始っ!

なんやかんやで守口先生が来て、みんなブーイングの嵐。
天然かもしれない守口先生はハハハッって笑ってたし…。

「ありがとな、江ノ島さん」

「いえ…」

真理ちゃんは席に付き、守口先生と一緒に進行することになった。
責任感なさすぎ…。
そう思いつつみんなを見回す。

「カフェはどんなカフェにしますか?具体的に案を出してください」

計画で行くと、陽香ちゃんが手を挙げるはずなんだけど…。
チラッっと陽香ちゃんを見ると、頭を抱えて困っていた。
セリフ忘れちゃったっ?
それに気付いた奈菜ちゃんは、陽香ちゃんの代わりに手を挙げた。

「コスプレカフェがいいと思います!カワイイの着たいし〜」

また女の子たちの反響を呼ぶ。
「カワイイ」や「奈菜も頭いいんだ」や「コスプレしたーい」との声が。
男の子はというと、アニメ好きの子以外はやる気なし。

「いいじゃん男子〜!モテるよ〜?」

ニヤニヤ笑った奈菜ちゃん。
その言葉に、男の子みんながピクンと反応して口々に言った。

「俺たちもやるかぁ」

「コスプレ燃えてきたーっ!」

さすが奈菜ちゃん!
コスプレカフェも決まったところで、役割分担が行われた。
買い出し組、衣装作り組のどちらかひとつ。
接客組、調理組のどちらかひとつを選ぶことになっている。
合計ふたつを持つ仕事。

「買い出し組がいい人!」

ザッっと目を通すと6人。
つまり、衣装作り組が8人。
って、男の子と女の子に別れてる!
買い出しは私が着いてけばいっか。

「では、接客組がいい人!」

ここはばらつきがあり、9人。
こんなに接客が多くても…。
私も接客がいいし。

「調理組が多い方がいいので、移動してくれる人はいませんか?」

仕方なさそうに手をあげている彩葉ちゃんといずみちゃん。
これで7人だし、まあいいかな。
先生に役割分担の紙を渡す。

「じゃあこれでやってもらう。明日、家庭科の時間をとるので、調理組は調理実習。接客組は調理組と相談してメニュー決め。買い出し組は、メニューに入っているものを買うこと。衣装作り組はどんなものを作りたいか決めてデザイン画を描くこと」

あ〜、面白くなってきたっ!

67:相原梨子◆x.:2018/02/17(土) 17:38

6.着地と進む学園祭

接客組と調理組、つまりみんなでメニュー決めを始めた。
だいたい、20個くらいの種類を作りたい願望もあった。

「スイートポテトって季節だよね?作りたい作りたい!」

奈菜ちゃんが身を乗り出す。
私は黒板にスイートポテトと書く。
みんなを振り返ると、たくさんの手が挙がっていた。

「じゃあ、陽香ちゃん」

「和風プリンです」

お年寄りの方も来てくれたら、和風プリンってめちゃめちゃ好評だよね!
またも黒板に書き込む。

「次は〜、健一くん」

「ドーナツーっ!」

健一くんって、ドーナツ好きって有名だったけどホントだったんだ。
カフェやるって言ったら一番始めに乗ってきたし…。

「それから…彩葉ちゃん」

「クッキーがいいと思いまーすぅ」

このような感じで書いていくと、あっという間に20個出てきた。
守口先生は相変わらずの責任感のなさだよ…。
うとうとしたかと思えば寝てる。

「では、衣装作り組はデザイン画を描いてください。買い出し組はこちらに来てください」

守口先生の分も、学級委員として買い出し組の責任も負わないと。
男の子たちがぞろぞろとやって来て、決まったメニューを書いた紙を見せた。

「このメニューに必要なものを放課後に買いに行くんだけど、コンピュータ室でクックパッドを見て必要なものを調べてください」

ダダダッっとコンピュータ室へ駆け出す男の子たち。
はじめくんーーー和田はじめくんがいるからいいよね。
頼れる穏やかなはじめくんだもん。
ユーチューブとか見ないよね…?

「ねえねえミオりん!美術女だけだと時間かかるから、ミオりんも描いて」

デザイン画がもう決まったらしく、早速スケッチに取りかかる。
大変だけど、今が一番楽しいかも。
みんな、そうやって言うもんね!

68:相原梨子◆x.:2018/02/17(土) 17:58

7.買い出しで恋っ?

そして放課後。
奈菜ちゃんと私を含めて男の子たちみんなと買い出しに行った。
盆江野町のスーパーだと売ってないのがあるから、もうちょっと大きいスーパーにね。
だから、今は電車に乗ってます!

「ミオさぁ、学級委員やめとけば良かったのにマジで引き受けたよな」

「奈菜の圧力ぱねぇもん」

「ちょっと、どゆこと!?」

学級委員って、断る乗りだったの?
全然分からなかった…。
言われたらやるもとだと…。

「だけど偉いよね、ミオちゃん。彩葉ちゃんにいろいろ言われてたけど」

はじめくんがボソッっと言う。
すると、隣に座っている奈菜ちゃんがふふっと笑いながらつぶやいた。

「ミオりんが断ると思ってたからわざと言ったけど、マジで引き受けたからビビった!」

ガーーーン!
やっぱりやめれたんだ…。
今更ながらトホホ。
すると、健一くんが声を上げた。

「羽折ちゃんしっかりしてるし、俺学級委員やるわ。よろー」

他の人の視線がより一層厳しくなる。
健一くんが大きい声出すからあっ!
ぷうっとふくれる奈菜ちゃん。
そう言えば、奈菜ちゃんと健一くんって幼なじみだったよね。
仲良しだし。
ちょっと気になっている存在の健一くんだけど、私じゃ無理。
奈菜ちゃんも、きっと健一くんのことが好きだし。

「羽折ちゃん降りるよ」

ズッキューンッ!
こういうのが、健一くんはいいんだよ〜!

69:相原梨子◆x.:2018/02/17(土) 19:32

8.奈菜ちゃん作戦実行?

スーパーに着くと、カートとカゴをセットして足を踏み入れた。
何だか主婦になった気分。

「おい、男子!自分が持ってくるもの持ってきて!」

奈菜ちゃんが指示する。
係を持ってないのは健一くんと、私たち女の子だけ。
私が健一くんのこと密かに思ってるのは内緒だから、奈菜ちゃん気付いてないと思うけど。

「ああっ、バナナいるよね!?チェックし忘れた〜!ミオりん行ける〜?」

「オーケー!バナナね」

ほぼ正反対だから遠いな…。
そう思いながら、遅れないようにバナナを取りに行く。
もしかしたら、奈菜ちゃんの作戦だったりして。
まあ、私は奈菜ちゃんを応援したいんだけどね。

「あれ?ミオちゃん担当あったっけ」

はじめくんとぶつかりそうになって、ふと顔を上げる。
私は首を横に振って、訳を説明した。
はじめくんはなるほどと笑った。

「僕もバナナ探すよ」

はじめくんと並んで歩きながらバナナを探す。
なかなか見当たらない。
なぜかぶつぶつ何か言っているはじめくん。
どうかしたんだろうか…。

「ミオりん遅い!あれ?はじめ?」

「バナナが見つかんないの!」

「えっ?」と困った顔をする奈菜ちゃんの隣、健一くんもキョロキョロとバナナを探してくれた。
ズッキューーーン!
健一くんも探してくれてるよ〜!

「あ、あったよ!」

はじめくんが指差した向こう。
黄色の果物、バナナがあった。
あわてていい色をしたバナナを取ってカゴに入れる。

「ありがと、ミオりん」

たくさんのものが集まり、会計を済ませると、健一くんを中心に男の子たちが重たい荷物を持ってくれた。
ズッキュンズッキューーーン!
今まではこんなことあんまりなかったのに〜!

70:相原梨子◆x.:2018/02/17(土) 19:48

9.翼と過ごす誕生日

また電車に乗って、盆江野小学校へ長い坂を上って、重たい荷物を交代に運んで解散した。
奈菜ちゃんと途中まで帰る。
幸せそうに、奈菜ちゃんは健一くんの話をしていた。

「だから好きなの!健一カッコいいでしょ?私、おさなで良かった〜!」

ホント、健一くんの幼なじみなんてひとりしかいないからね。
それが奈菜ちゃんなんだもん。
私の幼なじみ…。
翼、今どうしてるんだろう。
私の誕生日とか忘れてるよね。

「ウチここ!じゃね!」

奈菜ちゃんと別れると、長い坂を下まで走って駆け降りた。
家に入ると、男の子の陸上靴が脱ぎ捨ててあった。
クラスメイトじゃないよね?
居間に着くと、見慣れた顔、翼がいた。

「よぉ、マオ!」

「何で翼がいるの!?」

「いちゃダメかよ…」

いや、そういう訳じゃないけど…。
もごもごしていると、翼がクシャッっと私の髪の毛をかき回した。

「誕生日おめでと、マオ」

「ありがと」

何だか照れくさい。
翼なんて、いつもこんなこと言ってくれなかったもん。
赤面化している翼。
あの翼にしてはすごいかも。
わざわざ来てくれたし。

「翼くんも夕食食べてってね。今日はおごちそうにするつもりだから」

叔母さんのご飯は美味しいからね!
翼もにっこり笑って居間でゴロッっとくつろいでいる。

「そう言えばさぁ、マオ」

翼がこちらをジッっと見つめてくる。
そして、眼鏡を取り上げた。
もう視力がかなり落ちていて、ちょっとぼやける。

「マオ、眼鏡似合わないよ」

71:相原梨子◆x. 読者の皆様へ。:2018/02/20(火) 19:32

こんばんは。
花粉で苦しい人もいるでしょうが、予防を気を付けてください。

ここで、私からお知らせがあります。
他のスレで知った読者さんもいるかもしれませんが、3月15日に葉っぱを卒業します。

本当に急なことですみません。
葉っぱ依存症に悩んでいて、悩みに悩んだ結果です。
ここまで短かったですが、読者さんにはすごく感謝しています。
今までありがとうございました。

これからは、完結に向けて小説執筆を行いたいと思っています。
この巻が最終巻です。
3月15日は、私のスレに来てください。

完結したら、オリジナル小説をここに書いてください。
マオの小説のオリジナルです。
読めるとき読むので楽しみにしています。

では、引き続きお楽しみください。


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