きみの声を聞いてみたい。

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1:Rinon◆V6:2017/08/03(木) 23:43


こんにちは、Rinon(りのん)です!

りのちーという愛称で知られています(そんなことないか)。

『お願いだから、わたしを好きにならないで。』の作者でもあります。

優しい感想等、喜んで受け付けます♡ 厳しい感想…う、受けて立ちます!!

荒らし等はお控えください。もし、あったとしても、スルーします。


では、新たな物語のスタートです!!



    >>2 ♡ 登場人物

    >>3 ♡ プロローグ
 
  
  
   ( レス禁です…! )

2:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 09:58


 -登場人物-

〔星川 美藍(ほしかわ みらん)〕
私立紫蘭女子学園中等部に通う、中学1年生。
小学4年生のときに事故に遭い、中途失聴者に。
学校ではいつもひとりぼっち。父・母・兄・姉がいる。

〔水沢 幸(みずさわ こう)〕
公立泉ヶ丘中学校に通う、中学1年生。
明るくて前向きで、とても優しい性格。
どこでも人気者でムードメーカー。父・母・弟がいる。

〔西園寺 玲奈(さいおんじ れな)〕
美藍のクラスメイト。学年一のお嬢様。
リーダー的存在で、美藍との仲は悪くなかった。
でも美藍の耳が聞こえなくなると、嫌がらせを始めて…。

〔綾瀬 莉子(あやせ りこ)〕
美藍のクラスメイトであり、元・親友。
おどおどしていて、控えめな性格。
玲奈に脅されて、美藍と距離を置くように…。

〔佐倉 柚葉(さくら ゆずは)〕
幸のクラスメイト。
さばさばした明るい子で、誰からも好かれる。

3:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 10:03


 -プロローグ-

正直、耳が聞こえなくてもいいと思ってた。

周りの音なんか、聞こえなくて幸いだとも思った。

ピーッというけたたましい音や、ザワザワという音。

嫌だけど、それだけでも構わないと思ってた。

そんなわたしに。

初めて、聞きたいと思わせてくれた音は。

『おれが、美藍を守る』
『美藍の声、誰のよりも綺麗だ』

コウちゃん、きみの声だったんだよ…。

きみは、わたしを泣かせるようなことばっかり言うね。

わたしは目で読み取っているから、涙でぼやけていたらきみが言ったことが分からないのに。


あぁ、わたしは今こんなにも。




きみの声を聞いてみたい__。

4:まい◆8Q:2017/08/04(金) 10:46

おおお、続き気になる!
更新ファイト!

5:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 12:15

>>4
早速ありがと!頑張るね!!

6:まい◆8Q:2017/08/04(金) 12:17

うん!応援してる!
りのの小説のファンクラブ会長だよ!

7:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 12:19

>>6
そんな、ファンクラブって。。。
大げさだよ〜〜

8:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 13:35


 -1-

「美藍」

朝ご飯を食べに行こうと思って廊下を歩いているとトントンと肩を叩かれた。

くるっと後ろを振り向くと、お姉ちゃんがいて笑顔でわたしの名前を呼んだ。

「お姉、ちゃん……」

家族の前では声を出していても、恐る恐るとだ。

「おはよう、今日は元気?」

「う、ん……まあ、ね」

わたしのお姉ちゃんは4歳年上の高校2年生で、家族であるわたしから見てもとっても美人さん。

おまけに気遣いも出来て優しくて、頭も良いという完璧な人。

わたし、読話には慣れたからゆっくり話さなくてもいい、って言ってるのに、今でもゆったりとした話し方でいてくれる。

……読話っていうのはいわゆる読唇術のことで、主に聴覚障害をもっている人が唇の動きだけで発話の内容を読み取る、というもの。

わたしが聴覚障害者になったのは小学3年生の頃だから、もう随分慣れたことも多い。

耳鳴りがすること、周りの音が全く聞こえないこと、自分の声すらも聞こえないこと……。

そういうのは悲しいし、辛い。

だけど、それよりももっと嫌なのは……。

「美藍ー?」

はっと我に返ったときには、目の前でひらひらとお姉ちゃん手が揺れていて、それと同時に不思議そうな顔をしたお姉ちゃんも見えた。

「あっ……」

「もー、何ぼうっとしてるのよ、ほら行くよ」

相変わらずゆったりと話してくれるお姉ちゃんの優しさに、涙が滲み出したのが分かった。
 

9:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 14:18


 -2-

お母さんが作ってくれた美味しい朝ご飯を食べて、お姉ちゃんと学校に行く。

わたしが通っているのは『私立紫蘭女子学園』略して『シラ女』の中等部。

そして、お姉ちゃんはそこの高等部に通っている。

初等部から高等部まで同じ敷地内にあるから一緒に登校できるの。

「おふぁよ〜」

あ、欠伸と同時に来たこの人は、わたしのお兄ちゃんで6歳年上の大学1年生。

国内でも有名な頭の良い人が行ける学校に行ってるんだ。

お寝坊さんだから、いつもわたしたちが家を出る時間に起きてくる。

「おはよぅ……おにぃ、ちゃん」

「おー、よしよし。美藍は今日も可愛いなぁ」

挨拶を返しただけで、頭を撫でられる始末。

子供扱いしすぎじゃないですかね?わたし、もう中学生なのに!

「ちょっと兄貴!汚い手で美藍を触らないでよ!」

「兄貴呼びは直せって言ってるだろ!あと、美藍は俺の妹でもあるから、美紅にどうこう言われる筋合いはない!」

「兄貴が嫌なら、碧空って呼び捨てにしてやるわ!っていうか、“き・た・な・い・て”で触るなって言ってるだけよ!」

お兄ちゃん、お姉ちゃん……!

「こら碧空、美紅!美藍を挟んで言い合いしない!」

どうしようもなくて途方に暮れていた時、お母さんがびしっと言ってくれて、収まった。

でも、いつものことなんだよねぇ……はぁ……。

あ、そうそう『碧空』っていうのはお兄ちゃんの名前で『りく』、お姉ちゃんは『美紅』で『みく』って読むの。

上から『碧』『紅』『藍』と、色が入っているんだ。

1人目が生まれる時、男の子だったら『碧空』で、女の子だったら『美紅』にしよう、ってお母さんとお父さんで話したらしくて。

1人目は男の子で、2人目が女の子だったからちょうど良かったみたい。

そして、わたしが生まれることになって、また必死で考えたんだって。

『みどり』『あか』ときたから、『あお』にしよう、てことで『藍』が入ることが決定。

それからは、『美紅』の『美』を入れて『美藍』になったらしい。

『素直な笑顔で、美しく華のある』子に育ってほしい、というお母さんたちの願いも込められているんだ。
 

10:薫:2017/08/04(金) 15:05

りのちー、読みました‼

これもまた面白い‼

それに同級生の子と名前が同じキャラがいて、(漢字は違うけど)親近感が沸く!

続き楽しみにしてるね!

11:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 15:06

>>10
わ、ありがと〜

そうなんだ!同じ名前。。。すごい!

うん、頑張るねっ!

12:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 15:21


 -3-

「じゃあ美藍、あたしは今日部活だから、友達と帰ってね」

「……ぁ、うん」

返事が一拍遅れちゃった。

お姉ちゃんを見送って、中等部の校舎のほうに歩いている時に思い出した。

そうだった、何で忘れてたんだろ。

家族には、わたしがひとりぼっちなこと、言ってなかったじゃない。

何気なく、視線を前に送ると。

前を歩いている子たちの姿が見えた。

仲良さげに笑い合っているみたいで、わたしにも友達がいた頃を思い出して懐かしく思っていたその時。

「……あ……」

うちのクラスの玲奈ちゃんたちだ……。

玲奈ちゃんはわたしの学年で一番のお嬢様だけど、高飛車じゃないから人気者なんだ。

いつも玲奈ちゃんの周りには取り巻きが5人いるの。

仲良くしてもらえると、色々自分に良いことがあるからね。

今もその取り巻き5人を引き連れて……って、6人いる?!

「……うそ、だ……」

あの、ボブヘアの子をわたしが見間違えるはずはない。

りこたんだ……。

何で、玲奈ちゃんと一緒にいるの?

本当に、わたしのことが嫌になっちゃったのかな……。
 

13:薫:2017/08/04(金) 15:25

うん!

みらん、こう、りこって子が漢字は違うけど知り合いなの。

あと、私と1文字違いの子がいる(笑)

薫は仮名で、本名になんのかすりもないんだよねー

14:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 15:31

>>13
ふぇぇぇ!!そんなに…!
まァ、今回は結構いそうな名前にしたからね〜

15:Rinon◆V6:2017/08/04(金) 18:22


 -4-

りこたんこと綾瀬 莉子は、わたしの親友だった子。

親同士も仲が良くて、初等部のときからずっと一緒にいた子。

いつも控えめで自分の意見は出さないけどちゃんとあって、しっかりしていて。

わたしに『10年後もみらりんと一緒にいたいな』って恥ずかしそうに言ってた。

それなのに、あの子はわたしを裏切ったんだ……。

玲奈ちゃんがわたしに嫌がらせをするようになってから、離れていった。

どうせ、自分がいじめられたくないから、なんだろうけれど。

りこたんのことが、心底嫌いになった。最低だと罵った。

……はず、だったのに。

やっぱり嫌いになれるわけがなかった。

『助けてほしい。一緒にいてほしい』

わたしがそう言って苦しむのは、りこたんだから。

苦しめたくない。笑っていてほしい。

こんな風に思うのは、偽善だと自分でも思うよ。

だけど、りこたんの笑顔をわたしのワガママで奪うのは、それこそ最低だから。

りこたんだって、玲奈ちゃんに脅されて仕方なく離れていっちゃったんだ。

そう思って待っていた。いじめが、なくなるのを。

でも、もうだめなんだ。りこたんは……。

自分の意志であの中にいるんだ。もう、こっちに戻ってきてはくれない。

りこたん自身がいたい、と思ってなければ。

ついこの間まではわたしの前でしか見せなかった、あのふわっとした笑顔は見せないだろう。

もう、手遅れだ。

全てはあの日、事故に遭ったせいなんだから。
 

16:Rinon◆V6:2017/08/05(土) 09:31


 -5-

りこたん、りこたん…って、馬鹿みたい。

どれだけ諦めが悪いのよ、わたし……。

女々しいったらありゃしない。

「わっ……?!」

その時、急に誰かに突き飛ばされた。

向こうはぽんと軽く押しただけのつもりかもしれないけれど、何しろわたしは耳が聞こえないものだから、背後から来られたらとっさに反応できるはずがない。

お陰さまで、膝と手を地面に付くというみっともない格好になったわたしがいた。

そして、そんなわたしの視界に誰かの足が入ってきた。

その人を見上げると、わたしの予想通り玲奈ちゃんだった。

というより、こんなことを大々的にする時点で玲奈ちゃんとその取り巻きに決まっていた。

周りを見るとわたしを囲むように取り巻きたちが立っていて、すごい目つきで見下ろされていた。

りこたんは……?

諦めの悪いわたしは、取り巻きの中にりこたんがいるのかが気になって仕方がない。

首が回らない真後ろにいるのかも、と思って後ろを振り向こうとすると、

「莉子は、日直だから先に行ったわよ?」

まるで、わたしの心を見透かしたかのような玲奈ちゃんに、髪を引っ張られて前を向かされた。

「……っ」

いないんだ、良かった……ここに、りこたんがいたら……。

考えただけでも恐ろしい。

「何よ?莉子はもう、こっちの子よ?あんたに構うのが嫌になったんだってさァ」

そう言う玲奈ちゃんの口許を一瞥した後、真っ直ぐその瞳を睨みつけた。
 

17:まい◆8Q:2017/08/05(土) 09:38

おお〜。
私の名前も、本名にかすってない。
憧れの先輩の名前です…。
りこって漢字同じ子いる!

18:Rinon◆V6:2017/08/05(土) 09:57


 -6-

「だか、ら……何で、すか……?」

「え?なにィ?聞き取れなぁい!……だって、発音悪いし?」

「……!?」

やっぱり無理だ、わたしは。

こう言われたら、もう逆らう気も無くなっていく……。

「ちょっと、あんた何か言えば?」
「しゃべってもキモいし、黙っててもムカつくし」
「いる意味がないよね」
「もうとっくに存在意義なんか消えてるっしょー」
「ほんとウザい。特別扱いされててさ」

あぁ、本当にもうだめだ。

わざわざわたしの目の前に回ってきて言うから、全て読み取れてしまった。

取り巻き5人の言葉がぐさぐさ胸に突き刺さる。

「もォ、行こ?しゃべらない人形なんか、相手にしてる暇ないわ」

玲奈ちゃんが前に立って、歩き始めた。

そして、その場に残されたわたしは、ぺたんと座り込んでしまった。

わたしを避けながら生徒玄関に向かう人たちを横目で見ながら、わたしはいつしか涙を流していた。

引っ張られた髪はぼさぼさで、コンクリートの地面に打ち付けた膝には痣ができて。

通り過ぎていく人たちの視線を痛いほど感じながら、わたしは迷わず校門に向かって歩き出した。

こんな学校、もうたくさん。

そう思いながら、前だけを見て歩いて行く。

その姿を、教室の窓から悲しそうに見ている誰かがいるなんて、思いもしなかった。
 

19:まい◆8Q:2017/08/05(土) 10:09

美藍ちゃん、可愛そう…。

20:Rinon◆V6:2017/08/05(土) 11:09

>>17
お、莉子ちゃんいるんだ!!

>>18
美藍に、私を重ねて書いてるの。(ほぼノンフィクション、ちょっと理想)
実際に言われたことかもね〜

21:Rinon◆V6:2017/08/05(土) 11:32


 -RIKO-

『みらりんには、あたしがいるよっ!』
『みらりんは1人なんかじゃないっ……!』

そう、声をかけることができていたあたしは、一体どこに行ってしまったのだろう。

登校中に今日のいじめのネタを楽しそうに笑いながら考えている玲奈ちゃんたちを見て、ふとそんなことを考える。

「美藍って、キモくね?」

取り巻きのひとり、沙羅ちゃんがそう言った。

「あっそれ、めっちゃ分かるゥ」
「マジしゃべんなっての」
「筆談もおっそいけど」
「それなー!あんなヤツ、待ってらんないって!」

それに乗っ取って、取り巻きたちが話し始める。

『みらりんは、気持ち悪くない!耳が聞こえないのだって、なりたくてなったんじゃないよ!』

その時、そう言えていたら良かったのに……。

あたしは結局、自分が可愛いんだね。

だから、言えなかった。……いや、言わなかった。

……いじめられたくないから。

「ねェ、玲奈〜」
「今日は、何する〜?」

ご機嫌を取るように猫なで声で玲奈ちゃんに話しかける取り巻きを見て、そういえば玲奈ちゃん何も話してないな、ということに気がついた。

「わたしは……」

しかも、言葉に詰まっている。

玲奈ちゃんってもしかして、美藍のことまだ好き……?

「今ちょうど後ろにいるしさァ、転ばせてみようよ」
「手慣らしとして、ね」

あぁ、もうこんな会話聞きたくないっ……。

「あっ……あたしっ、日誌取りに行かなきゃっ!」

逃げたいがために頭をフル回転させて思い出したことは、今日が日直の日だってこと。

「えー残念。じゃ、後でねー」

沙羅ちゃんにそう言われて、去り際にちらりと玲奈ちゃんを見ると、向こうもこちらを見ていて。

『わたしも、こんなことしたくないのに……』

そんなことを思っているんじゃないか、と思うような瞳をしていた。
 
あたしはその足のまま職員室に寄って日誌を取った後、気になって教室の窓から外を見てみた。

そこには、ぼろぼろになって、でも毅然とした足取りで校門に向かって歩いて行くみらりんの姿があった。

それを見て、何かが込み上げて来て気付くと一筋、頬を滑り落ちるものがあった。
 


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