時を駆けて、初恋*します。

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1:リリカ@恋歌◆JA:2017/09/03(日) 16:18


*プロローグ*

出逢えたら良かった。
でも。

「私たちは出逢ったらいけなかった。すぐに、もとの世に戻れ」

私たちは逢ったらダメだった。
彼は、そう言った。

701:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/26(日) 12:39

祝、700!
コメントくださった皆様、ありがとうございます!
これからも頑張ろうと思います!(1000いけたら良いなぁ。1000いっても終わんなかったらどうしよ←)

───────────────────

よって、呼ばれたのは。
斎藤さんに、沖田さん、山南さん、藤堂さん。原田さんと永倉さんがいないのは、私が即却下したから。
誰だって、却下するよ。
あの変態コンビは!

「で、夏音はどこの部屋に・・・」

「俺の部屋に決定!」

土方さんの言葉を遮り、斎藤さんがしゃしゃり出る。
にっこり私を見て、斎藤さんは笑った。

「いつでも、貸せるようにな!」

何を、とまでは言わなかったけど。
さっきのだな。
んー。
でも、私、さっきスゴイ気になる物を見ちゃったしなぁ・・・。

「土方さんの部屋にします!」

ギョッとしたような、顔をしたのが一名。
土方さんだ。

「さっきの、何書いてたのか気になるから!」

それと、安全面でもしっかりしてるだろうし・・・。
今、沖田さんと気まずいのもあるし・・・。

「あっ、私、寝相悪いんで。気をつけてくださいね!」

それを言うと、土方さんの顔が、少しだけ青ざめた。
なんで?
ハテナマークを浮かべながら、その日は終わった。                                                                           

702: アーヤ◆TQ:2017/11/26(日) 19:02

壁ドンは沖田さんだったけど夏音にとっては恐怖の壁ドンだったね、それにしてもある意味で怖いよ沖田さん色んな感情が出ていてだけど斉藤さんに抱き付いた夏音が悲しい感情に恐怖の感情が混じって安心させて頭ポンポンって逆に良いね慰めだから。
それにしても土方さんのアレはなんだったのか気になるから土方さんの部屋に決めたんだね、で変態コンビはね……ちょっとだけれど夏音と土方さん二人っきりってこれって密室じゃあないの!?

二人だけだから何かあるよね部屋中でシチューエションが、あって欲しいキスとか手紙みたいなのを見てみたいって奪い合いをしてハプニングって感じかな?

703:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/26(日) 19:47

>>702
ありがとう!
今のところ、ちょっと微妙な感じになっちゃったよね。
夏音と沖田さん。
斎藤さんは意外と、慰め役に徹すると言うか・・・(´V`)♪
確かに、密室だね!
いろいろハプニングが起こりそうだよねo(^-^)oワクワク              

704:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/26(日) 19:56

21,寝言にドキドキ

布団を敷いてっと・・・。
よぅし。
あとは、寝るだけだ〜!
でも、その前に・・・。
そーっと文机に忍び寄る。
どこにあるかな・・・?
ラブレターがでてきたら、どうしよ!
そのときは、そのときで言い訳しよう。
あさり始めたとき。

「何を探してる・・・?」

ギャーッ!
鬼だぁ!
妖怪だぁ!
ぬうっと、土方さんが姿を見せる。
ひゃあぁ・・・。

「何でも!別に、机をあさるつもりは・・・」

「あったんだな」

ひぃぃ!
バレたぁ・・・。
私は、諦めて手紙とかんざしを枕元に置く。
お守り代わりに。

「おやすみなさいっ!」

私は、布団を頭からかぶった。
思えば、密室じゃん!
二人きり・・・。
なんか起こりそうで、スゴイ緊張する・・・。まあ、土方さんの事だし、ヘンな事は考えないだろうけど・・・。
ちょっと、恥ずかしいような、緊張するような。                                               

705: アーヤ◆TQ:2017/11/26(日) 20:40

まあ緊張するからって油断は出来ないからね。
お互いに二人の寝顔が見えたり?
土方が寝言を言っていたり気になるよ

706:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/26(日) 21:10

>>705
ありがとう!
寝顔チャーンス!だね(笑)
夏音にとって、願ったり叶ったり(?)だよね(*^^*)       

707:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/26(日) 21:20

うう・・・。
私は、そうっと布団から顔を出す。
スースー眠っているであろう、土方さんがいることを意識してしまう。
よって。
わぁぁん。
寝れない・・・!!

「ヤバ・・・目が冴えてきちゃった・・・」

暗い部屋にも慣れてしまい、なぜだかドキドキする。
そうだっ・・・。
寝顔見るチャンスじゃないか。
よぅし。
寝顔を、拝ませてもらおう。

「マヌケな顔だったりして・・・」

若干のニヤニヤを抑えきれず、土方さんの布団に忍び寄る。
端から見れば、変態だよね・・・。
んー!
でも、見たい。

「どんな顔かな・・・」

ソッとのぞき込むと。
スゴイ穏やかな寝顔。
私に、あれこれ言ってるときと、別人みたいな。

「夏音・・・」

ほひゃ!?
バレたのかな!?
でも、目は開いてない。
寝言か・・・。

「離れる、な・・・」

えっ・・・?!
胸が、異様に高鳴る。
キュンとなって、頬が火照る。
照れてしまって、私は、自分の布団に潜り込んだ。
明日、どんな顔をすれば良いの・・・!?                                                       

708: アーヤ◆TQ:2017/11/26(日) 21:49

予想外に土方さんではなくって夏音から、土方さんの布団に忍び込んで来たのは予想外だったけど土方の寝顔を見てからの寝言も聞いてドキドキするかなぁ夏音

709:リリカ@恋歌◆JA 今日は、休みだ〜!イェイ!  :2017/11/27(月) 09:17

>>708
ありがとう!
夏音的にも、スゴイドキドキしてたと思うよ(笑)
夜這いしてるみたいだよね(笑)         

710:リリカ@恋歌◆JA 今日は、休みだ〜!イェイ!  :2017/11/27(月) 09:34

22,歯がゆさと愛しさ ※沖田side

「・・・しーちゃん・・・うっ・・・」

泣きじゃくる夏音さんに、声をかける。
そのかんざしは、誰からもらったのかと。
答えにつまっている。
苛々が溜まり、歯がゆかった。

「・・・良いじゃないですか。・・・関係ないですし」

その言葉に、胸が痛くなった。
拒絶された気がしたから。

「貸してください」

自分でも、ぞっとするほどの冷たい声だった。かんざしを貸してもらって、壊したい衝動に駆られる。

「ムリ・・・!!」

潤んだ瞳が、見上げる。
愛しさを感じる反面、嫌がられて困っていた。
力ずくで取ろう。
壁に押し付ける。

「やっ・・・!」

突き飛ばされたあとの事は、あんまり覚えていない。       
 
                          
          

711:リリカ@恋歌◆JA 今日は、休みだ〜!イェイ!  :2017/11/27(月) 16:46

23,私が男色!?

翌日

ううう・・・。
眠いなぁ・・・。
よぅし。
二度寝をしよーっと!
暖かい布団にくるまり、私はごろりと寝返りをうった。
だけど、寝返りをうったら・・・。

「ギャーッ!」

悲鳴をあげてしまった。
理由??
そんなの簡単。

「はやく起きろ!」

土方さんの顔が、近いから!
・・・って。
ここ、もしやの・・・。

「俺の布団を取るな!」

土方さんの布団!?
私、どんだけ寝相が悪いんだろ。
土方さんが、ギッと私の向こうを睨む。

「てめぇら・・・!!」

へっ!?
てめぇら・・・?
後ろを見ると、咲さんをはじめ、斎藤さんや変態コンビ、沖田さん、隊士たちが部屋をのぞき込んでいた。

「副長が・・・!」

「城里と男色!?」

へっ!?
もしや、ホモかと疑われてるの!?
私、男色しないし!
・・・ってか、私は、女だし。

「城里、副長と恋仲なのか〜?」

咲さん・・・。
絶対、知ってて言ってるよね・・・?                                
   
                   
         

712: アーヤ◆TQ:2017/11/27(月) 17:51

まさか夏音がそんなに寝相が悪いとは思わなかったよ……
でも顔の近さで「ギャっー」て悲鳴をあげたけど、夏音らしくってやり取りが二人らしいよ🎵
起きても夏音が土方さんの寝言を、どう受け止めるか気になるよ《冗談半分》とか思わないで土方さんに覚えているかって言って欲しいよ🎵

なので,土方さんsideを見てみたい

713:リリカ@恋歌◆JA   :2017/11/27(月) 18:06

>>712
ありがとう!
確かに、二人らしいよね(*^^*)
土方さんside、書くよ〜(*´ω`*)     

714:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/27(月) 18:21

24,アイツの寝顔 ※土方side

「ギャーッ!」

アイツが、悲鳴をあげた。
何だ?
朝っぱらからうるさい。

「はやく起きろ!」

急に、アイツの顔が真っ赤に。
まだ知らないのか。
と言うか、寒い。

「俺の布団を取るな!」

怒鳴れば、やっと気づいたらしい。
ん・・・?
視線を感じ、戸に目をやると。

「てめぇら・・・!!」

咲たちが、覗いている。
勝手に人の部屋を・・・。
変な噂をたてる、隊士を見て、アイツがまた真っ赤になった。
それを見ながら、アイツの寝顔を思い出す。



目を擦りながら、布団から起き上がる。
目が覚めてしまった。

「おい・・・」

思わず、つぶやいてしまう。
なぜなら。

「んにゃぁ〜・・・。いちご大福だぁ〜」

拳を固く握り締める。
アイツが、俺の布団に入り込んでいるからだ。
寝顔は、よだれが出そうなほど口が開いており、マヌケだった。

──────可愛いなどと思ったのは、秘密だ。                                     
                          
 

 

715: アーヤ◆TQ:2017/11/27(月) 18:30

土方さんが夏音の赤面の意味が分からないって、以外に土方は鋭いのにどこか鈍いんだね😃
それに土方さんらしく秘かにツンデレ出しているし、夏音の寝言も可愛いらしく思うよ🎵
やっぱり夏音色気っていうより食い気だね(*≧∀≦*)

716:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/27(月) 20:01

>>715
ありがとう!
うん、鋭いような鈍いようなだね(笑)
久しぶり(?)のツンデレだよ(笑)
確かに、色気より食い気だよねぇ(*^▽^*)         

717:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/27(月) 21:17

25,拉致からのタイムスリップ!?

あー。
朝から疲れたよぅ。
みんなの誤解を解くのが、ね。
特に、近藤さんが難しかった。

「そうか!良かったなぁ、歳。晴れて、嫁がもらえるなぁ」

もぅ!
勘違いは、怖いよぉ。
朝ご飯を食べた途端、私に訪問者が。

「きゃっほー☆久しぶり♪夏音。タイムスリップするわよぅ」

そう・・・。
よりによって、お母さんだったのよ!
タイムスリップ!?
そんなのしたくない。
この時代で、過ごしたいのに・・・。

「晋作、よろしくねっ♪」

えっ・・・!?
今、問題発言が・・・。
桂さんが、好きなんじゃ・・・?

「わかったぜ!すまんな、夏音」

高杉さん・・・。
謝られたけど、わからないな・・・。

ゴツッ

あ・・・。
ヤバい・・・。
意識、が・・・。
恐らく鳩尾を殴られた、と思う・・・。
呆気なく、私の視界は真っ暗になった。                       
              
    

718:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/27(月) 21:25

ん・・・。
ハッと、気がついて目を開ける。

「夏音さん。目、覚めましたか?」

沖田さん!?
そんな、に、顔が近いと・・・。
胸がキュンキュンして、ヤバいですって!!

「此処は・・・?」

私の問いに答えたのは、お母さん。

「タイムスリップマシーン内よ♪」

私を、拉致って?
タイムスリップしようとか、考えてるの!?
絶対反対!

「今まで、私に迷惑を被ったのは、どこの誰よ!?」

張本人は、キョロキョロ。
わざと・・・?
ああっ、腹立つ!

「だから、タイムスリップなんて・・・」

私の言葉は、そこで止まった。
なぜか。
それは、お母さんがタイムスリップマシーンのボタンを押したから。
激しい風圧で、私は、必死に沖田さんにしがみついた。


(Iへ続く)                                               

719:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/27(月) 21:33

あとがき

H完結です!
スゴイ嬉しいです!
回を重ねていくごとに、感慨深さが深くなっていくような・・・(笑)

さて。
今回は、切ない友情をテーマ(?)にしてみました。
夏音と、しーちゃん(新見さん)です!

史実通り、しーちゃんは切腹するのですが・・・。
夏音としーちゃんの絆の回、少なかったですけど、書けて良かったです。

文で、しーちゃんの夏音に対する、想いを描けて楽しかったですね。

恋も、進んだ気が。
ツンデレが書けて楽しかったし、良かったです(笑)

Iの舞台は、1000年前(平安時代)の日本です。楽しく書きたいなぁ〜。

いたらない点もありますが、よろしくお願いいたします。

コメントをくださった皆様、ありがとうございます!
語彙力はないに等しいリリカですが、これからもよろしくお願いいたします。

では。            
                          
             

720:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/28(火) 18:01

『時を駆けて、初恋*します。』I

登場人物

城里 夏音
本作の主人公。
明るく、しっかり者。
沖田さんが好きだけど・・・。

沖田 総司
新撰組隊士。
優しく、温和。
夏音と両想いだけど・・・?

土方 歳三
新撰組副長。
夏音に想いをよせる。
最近、接近してるけど・・・?

近藤 勇
新撰組局長。
大食いで明るい。
夏音と土方さんをくっつけようと、画策中。 

永倉 新八
新撰組隊士。
酒大好き。
夏音には、変態と認識されている。

藤堂 平助
新撰組隊士。
優しく、料理上手。
苦労人。

原田 左之助
新撰組隊士。
大食い。
夏音に変態と認識されている。

山南 敬助
新撰組隊士。
知性派。
みんなのストッパー。

斎藤 一
新撰組隊士。
明るい。
夏音大好きで、一途。

井上 源三郎
新撰組隊士。
穏和。
癒し系で、喧嘩もやんわり止める。

彰子
藤原道長の娘。
一条天皇に嫁ぐ。
夏音と出会って・・・?

紫式部
彰子に付き従う。
源氏物語の作者。
引っ込み思案だけど、夏音と出会い・・・?                                                   
        
    
      

721:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/28(火) 18:06

1,1000年前の日本!?

「着いたみたいですよ」

沖田さんの声。
私は、慌てて背中を掴んでいた手を離す。

「やった〜☆1000年前の日本に来ちゃった〜♪」

1000年前の日本!?
嘘でしょ!?
タイムスリップマシーンを出ると。

「わあぁ・・・」

思わず、溜め息。
うっとりしてしまう。
景色は、あんまし変わってないと思うけど、1000年前の日本だと思うと、感慨深いんだよね。

「場所、変えるわね☆」

へっ!?
私は、慌てて戻る。
また、風圧を感じて・・・。                            

722:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/29(水) 18:26

2,彰子さんと紫式部さん

「彰子さま。女官を呼んできます!」

誰・・・?
彰子さん・・・?

「此処に、突然現れるなんて。怪しいですわ!」

『彰子さん』に注意していた人の声。
わっ!?
私の顔をのぞき込んでる!?

「そぉ?紫、私、この子気に入ったわ」

別の声。
別の人が、私を抱きしめる。
艶やかな黒髪に、おっとりしたような感じの、優しい目。
気に入ったの、私なの!?

「彰子さまが、そこまで言うのなら・・・」

彰子さんと違う、人。
紫さん?
黒髪で、綺麗な目。

「私は、紫式部。あなたがたの名は?」

紫式部さん!?
社会の時間に、習った。
国風文化だっけ・・・。
源氏物語を書いた人なんだよね!

「私、城里夏音です!こっちの人たちは・・・」

全員を紹介。
彰子さんが、私の肩を抱く。

「夏音、可愛いわぁ・・・」

嬉しい。
そんなに、可愛がられるなんて。                       
              
                             

723:リリカ@恋歌◆JA:2017/11/30(木) 18:22

3,女の嫉妬は怖し

ところが・・・。
ちょっと照れてる私を、紫式部さんが睨むんだよぉ・・・。

「彰子さま。やはり、宮中にこんな身なりの者たちを連れ込むのは・・・。道長さまに、怒られますよ」

途端に、彰子さんはむううっ。
ふくれっ面で、

「紫は、いっつも父上父上・・・。父上がよほど好きなのね」

そしたら、紫式部さんが真っ赤になった。
あれ、図星?

「私は、夏音さえいればいいの」

彰子さんがまた、微笑む。
えっ・・・とぅ・・・?
どう対応すればいいの?
間違ったりして、紫式部さんの怒りをかうのはヤダからね。

「夏音〜・・・」

紫式部さん!?
そんなに、睨まないで・・・。
女の嫉妬は怖し!                                              

724:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/02(土) 20:03

4,ナルシスト系道長さん

「彰子〜」

御簾?の向こうから、男の人の声。
そのとたん、彰子さんの顔がげんなり。
対して、紫式部さんの顔が、明るくなった。

「父上・・・」

「開けるぞ!」

って、言いながら勝手に開けたし。
のぞき込んできたのは、ちょっとぽっちゃりだけど、ハンサムな人。
うぬぬ・・・。
土方さんの方が、カッコイいわ!

「なんだ、コヤツらは!」

コヤツら!?
ひどくない?!
彰子さんが、庇うように、

「父上。この者たちは、私の知り合いで・・」

道長さんが、彰子さんを一瞥した。

「なぜ、私以外の美男がいる!?」

指した先には、土方さん&沖田さん、藤堂さんに山南さん。
代わりに、近藤さんや原田さんが、がっくり。

「こいつ、自分以外の美形、認めないの?」

斎藤さんが、引いたように言う。
だよねぇ・・・。
完全な、ナルシスト系だ。                                
                   

725:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/03(日) 13:01

うーーん。
私、ナルシスト系と、変態は嫌いなんだよね。

「変だなぁ」

「キモいですよねっ!」

私は、斎藤さんとひそひそ。
ところが。
紫式部さんが、私たちの前に仁王立ち。

「道長さまに何てこと!」

ほへっ!?
”さま“!?
ギュインッと目を吊り上げた紫式部さんが、

「時の権力者に!」

ええっ!?
そんなに、惚れてるのかい!?

「よいよい。小童の戯れ言じゃ」

むううっ。
紫式部さんをたしなめてるように聞こえるけど、さり気なく私を、けなしてるよね!?
土方さんでさえ、言わなくなった”小童呼び“!?

「ひどいです!小童って!」

私が反論すれば、沖田さんが私をたしなめる。

「夏音さん。落ち着いて」

は、はいいぃ!
沖田さんの顔が、近いぃぃ!
よしっ。
けなした道長さん、許してあげようじゃないか〜!                                               

726:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/03(日) 16:06

5,恋い慕う

紫式部さんが、ポッと頬を染めた。
恋い慕う気持ちが、すごいわかりやすいなぁ。

「源氏物語、できました・・・」

おずおずと差し出したのは、本。
もしや!?
源氏物語!?
道長さんの顔が、パッと明るくなった。

「おお!借りるぞ」

紫式部さんの許可を取る前に、奪い取る。
私たちも、後ろからのぞき込むと。

「何これ!?」

読みにくい!
ってか、字なのかこれは。

「式部、次はどうなるのじゃ!?」

それを聞いたら、ダメでしょ。
紫式部さん、照れたように笑う。
ちょっと、はにかんでる。

「・・・秘密でございます」

道長さんが、大口を開けて笑った。
雰囲気が、近藤さんぽいぞ。

「続きが気になる」

言われた途端に、まぁた紫式部さん、真っ赤に。
恋い慕う気持ちが、だだ漏れだよ〜。
紫式部さんが、私を見る。

「夏音ほどではないわ」

えっ!
私も、だだ漏れなのかい!?       
                                        

727:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/04(月) 19:44

6,恋する乙女同盟

「何なら、伝えて・・・」

「ちょおおっ!」

私は、薄く笑んでいる紫式部さんの、着物の裾を掴む。
ダメでしょう!
そりゃ!

「私が、自分で伝えますから!」

紫式部さんが言ったら、勘違いが起こりそうだもの。
・・・とは言え、いつだったか沖田さんに、告白しそうになったよね、私。

「それよか、道長さんのどこが良いんですか?」

理解不能なんだけど。
紫式部さんが、頬を赤く染めた。
初々しくて、可愛い。
幸せですよオーラが、わいてる。

「優しいし、私なんかを気にかけてくれて・・・」

へぇ。
ナルシスト系なのに、優しいんだ?
ただ単にチャラいのでは?
でもなぁ・・・。
私は、紫式部さんを応援したくなっていた。
恋する乙女として、ね。

「紫式部さん、互いの恋に協力するのは、どうでしょう?」

そしたら、互いにとって、良いよね。
紫式部さんが、こくんとうなずく。
恋する乙女同盟が成立だ〜っ!                  
                                  

728:リリカ@恋歌◆JA 米がないと困るけど、コメントもないと生きてけない>_<病みリリカだぞ☆        :2017/12/04(月) 21:21

7,翳り

わきゃわきゃしてる私と、紫式部さんの背後から(!)彰子さんがぬううっ・・・。

「夏音〜・・・」

わひゃ!?
抱きつかれても、困るんだけど!

「好き〜・・・」

ガチですか?
私、そっち系の趣味ないんだけど・・・。

「って、あっちの男たちが言ってたわ〜」

えっ!?
指した先には、沖田さんたち!?
本当ですかね・・・。
みんな、照れたように目をそらしてる。
怪しいな〜・・・。

「俺は、夏音が好き!」

斎藤さん!?
後ろから、抱きすくめられるとは、予定外だよ。
まぁ。
斎藤さんは可愛いから、許そう。
まっすぐ想いを伝えてくれて、嬉しいしさ。

「斎藤さんは、人斬りにはならないですよね?」

純粋に聞くと、斎藤さんだけでなく、みんな一斉に目を翳りを浮かべた。
私は、あえて見ないふりをした。                                                     

729:リリカ@恋歌◆JA 夢に捕らわれたいの…。永遠の夢に。醒めることない、永遠の夢に。          :2017/12/05(火) 19:50

8,幸せになりたいから・・・

「父上。なぜ、私が帝に嫁がなければならないのですか!?」

急に、彰子さんが声を荒げる。
どうしたの・・・?

「夏音や、紫は幸せになれるのに。何故、私は・・・」

当然の事だった。
普通の女の子なら、誰もが望むこと。
それなのに・・・。
いきなり、妃になるとか、考えられないだろうに。

「仕方ないだろう。藤原家のためなのだからな」

ブチッ

何かが切れる音。
何よ!
家のためだとか!!

「そんな事・・・!!」

反論しかかると。
彰子さんが、私を制す。
きっ、と道長さんを睨み上げて。

「父上のもとになど、帰りませぬ!」

それだけを言って、部屋を飛び出した。                                      

730:リリカ@恋歌◆JA 私は、要らない人…。       :2017/12/05(火) 21:16

私は、スッと立ち上がった。
沖田さんが、立ち上がる。
私は、それを制す。

「女同士の、話ですから」

私は、ひらりと御簾を押し開けて出た。
彰子さんは・・・?
近くの、女官にたずねる。

「彰子さんは・・・?!」

女官は、戸惑ったように、先の廊下を指す。

「あちらに・・・」

「ありがとうございます」

簡単に礼を言って、駆け出す。
この際、廊下を走るな!のルールは、無視ね。                           

731:リリカ@恋歌◆JA    :2017/12/05(火) 21:25

走っていくと、泣きじゃくる彰子さんを発見。
重たそうな着物なのに、案外素速いんだね・・・。
彰子さんが、クルリと振り返る。

「・・・夏音・・・」

そう言って、私の腕の中にダイブ。
私は、恐る恐るその震えている背を、抱きしめるように撫でた。

「幸せに、なりたいのに・・・」

胸が、どっくんと跳ねた。
この人は・・・。

「幸せに、なりたいから・・・」

抱えきれないほどの、悩みや怖さを抱えている・・・。
幸せになる資格なんて。
みんなあるハズなのに・・・。

「そーだっ!入れ替わりますか!?それとも、私が帝に嫁ぎましょうか?」

そうすれば、彰子さんは幸せになるし。
彰子さんが、ふんわり笑った。
そこいらの花より、綺麗で。
淡くて、儚い。

「少しだけ、お願いできる?」

もち!
大丈夫です。
どうか、1日でも彰子さんが救われたら。
私は、にっこり微笑んだ。                                                     

732:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/05(火) 21:30

9,十二単

「重い!」

私は、思わず悲鳴をあげた。
だってさ・・・。
十二単が重いんだよ!
これで、素速いって・・・。
彰子さん、すごいよ!

「夏音、似合うわ〜」

えへへ。
嬉しいな。       

733:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/06(水) 21:19

ふふふーん。
鼻歌を歌いながら、歩いていると。

「彰子さま!」

誰だ?
束帯姿の、貴族と思しき男性が。
ううむ。 
土方さんの足下にも及ばないな!
しいて言うなら、近藤さんあたりかな。

「道長さまに、よろしくと・・・」

はぁ?
媚びるためなの?

「私は、父上の犬ではございません。では」

興味なく言って、立ち去ろうとしたら。

「彰子さま!ずっと恋い慕っておりました!」

別の男性が現れた。
えっ・・・?!
恋い慕って!?
と、思ううちに。                             

734:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/07(木) 16:51

10,私は誰の物!?

ドンッと壁に押し付けられ。
ほへ・・・!?
怖いのに。
声も出せない・・・。

「彰子さま!」

嫌だ・・・。
気持ち、悪い・・・。
と。

「・・・人の物に、手を出しましたか?」

わぎゃあ! 
沖田さん・・・。
大魔王が降臨してます・・・!!

「・・・斬ろうか」

土方さん!?
恐ろしいよ・・・。
二人を怒らせたら、この人の命が吹っ飛ぶよ!

「夏音!無事か!?」

斎藤さんまで・・・。
ってか、私、バラしたっけ・・・?
おわっ・・・。
大魔王が一気に、三人に増えたよ!?
ご愁傷様・・・。

「斬ります」

笑顔が!
超!怖いよぉ・・・。 
                       

735:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/07(木) 21:06

「逃げた方が・・・」

私が、そっとささやくと。
この人、斬られて天国行っちゃうよ!?

「彰子さま〜」

ほひゃ!?
抱きついたら、逆効果だって!

「んもう!止めて」

それを言っても、やめてくれない。
仕方ない。
こういう時、時の権力者の名は役に立つ。

「父上に申しつけますよ」

道長さんの名前を使ったら、やっとその人は逃げていった。
ふうぅ・・・。

「夏音〜!!」

大魔王の顔を崩して、斎藤さんが抱きつく。
嬉しいよ。
しかもさ、可愛くて。
萌えちゃう!

「あれは、何だったんだ?」

土方さんの言うとおり。
何だったの、あれ。

「ともかく、“私の”夏音さんが無事で、良かったです」

さりげなく、問題発言をさらっと・・・。
案の定、斎藤さんと土方さんがかみつく。

「いつから、総司のだよ!」

「俺のだ」

えっと・・・??
別な意味で、修羅場かも・・・。                                         

736: アーヤ◆TQ 体調が悪かったコメ出来なく&:2017/12/08(金) 14:29

沖田さんに土方さんに斉藤さん達が魔王になったよ!
そして夏音が単純な性格だって分かったよ……、沖田さんの恐ろしさで避けたのはどこに飛んで行ったのやら❔

737: アーヤ◆TQ:2017/12/08(金) 14:30

あと、明日小説更新せれたらします

738:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/08(金) 17:20

>>736
お久しぶり!
体調、大丈夫!?
最近、風邪が流行ってきたよね・・・。
魔王化した三人を止めれるのは、夏音くらいかも(笑)
良くも悪くも、単純なんだよね(*^^*)
確かに。
どこへ飛んでいったんだろ?
宇宙の果てかな(笑)

>>737
楽しみにしてる!!
すごい気になるもん(*^▽^*)                 

739:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/08(金) 17:28

無意味な押し問答が続いてて。
その間、私は、どんな顔をしたら良いんだろう?

「私のです!」

「俺のだ!」

「違う!俺のだよ!」

あはは・・・。
苦笑するしかないね。

「だから!」

聞いてるうちに、すごいイライラが溜まってきた。
私が誰の物かって・・・。
私に、拒否権とかないのか!

「あのぅ・・・!」

とりあえず、此処で喧嘩するのはやめよっ。
貴族たちの視線が痛いから・・・!
喧嘩してる三人の背中を押して、彰子さんと紫式部さんのいる部屋へ戻ると。

「書けない!私、『源氏物語』書けないわ!」

ヒステリックな、紫式部さんの声が届いた。
何!?
私は、三人を押しのけて、入ると。
そこには・・・。                                               

740:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/08(金) 18:47

11,代筆!?

ペタンと座り込んでる紫式部さんが。
よよよと彰子さんに泣きついてる。
あれ、主従関係だよね・・・?

「紫が、『源氏物語』を書けないと・・・」

彰子さん、戸惑ってる。
当たり前だよね。
ようは、ネタが尽きたって事ね。

「夏音〜・・・。私の代わりに、代筆して〜・・・」

ええっ!?
ダメでしょ!?
あとさ、私、『源氏物語』読んだことがないしさぁ・・・。

「それでもいい!お願い」

ええっ!?
嘘でしょう!?

「無理でしょ!?紫式部さんが、考えたストーリー・・・話どおりにいくか、わかんないよ」

第一、道長さんをモデルにしてるんだったら、無理だよ。
道長さんの良いところばっかり、書けるわけない・・・。                                       

741:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/08(金) 21:28

12,反則笑顔

「って事で、無理です!頑張ってくださいね」

そうじゃないと、社会の教科書に載らないからね。
困っちゃうよ。

「お願い!」

だから。
それが無理なの!
押しが強すぎるな・・・。

「やってあげたらどうですか?」

ぐぬぬぬ・・・。
好きな人に、それを言われたら。
女子なら、反対できないよ!

「し、仕方ないですね!」

あっ。
私、ツンデレ化してしまった?
紫式部さんが、にっこり笑った。
さっきの泣きついてたのは、何なのよ!!

「よろしくね」

あぁぁ・・・。
断れない・・・。              
       

742:◆5YQ:2017/12/09(土) 09:57

3人には段々と呆れるぐらいに独占欲に1人占めがあって、夏音病にもなったね

743:◆0pk:2017/12/09(土) 09:59

上の私です
パソコンからです

744:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/09(土) 13:25

>>742
ありがとう!
夏音病・・・(笑)
確かに、発症してるね(*^^*)
独占欲がスゴいよね(笑)

>>743
了解でっす!     

745:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/09(土) 13:34

「何なのよ!」

私は、思い切りグチる。
誰だってそうでしょ。
嫌な、わかりもしない物語を代筆しろなんて言われたらさ。

「道長さまぁぁ!」

と、萌えてるのは紫式部さん。
ちょっとさ・・・!
私に押しつけといて、勝手に萌えるのはやめてよね!

「って言うか。恋愛でしょ、これ。私、光源氏みたいな人いないよ。付き合ったことすらないし」

12年間、彼氏いないし。
逆を言うと、お母さんのせいで彼氏を作れないんだけど。

「少しは、協力を・・・」

しかし、紫式部さんは聞く耳を持たず。
彰子さんに至っては、けらけら笑うばかりで。こんな中で、書けるかっての!!

「しますよ」

協力しますよ・・・?
沖田さん!?
嬉しいけど、心臓がうるさくなるよ。

「どういう事をすれば?」

いやいやいや。 
その笑顔、ヤバい!
反則笑顔だよ!!
・・・なーんて思う私は、恋の病にかかってるかも。                                                                       

746:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/09(土) 15:05

13,私が遊女?

「そう思えばさぁ」

なぁに?
斎藤さん。
さっきの大魔王が消え去っていて、良かったよ。
子どもっぽいから。

「夏音って・・・」

何々?
ためないでよ。
ドキンッとするじゃんか。

「遊女に変装できそうじゃない?」

遊女!?
って。
そんなに、まじまじと見ないでよ。
恥ずかしい・・・。

「幼女趣味なら落ちるぜ」

ロリコンを落とせる!?
そんなの、確定しないでよ!
しっかし、なぜかみんながうなずいてる。

「監察方に加わってもらいましょう」

ひょえ!?
沖田さんまで?

「“野良猫”以上の仕事をしろ」

むうう。
しつこいなぁ、土方さん。
いつだったかの、からかいを蒸し返さないでよっ。

「あっち(幕末)に行ったときですよ」

マジでやりたくないけどさ。
鬼気迫ってる勢いを、斎藤さんから感じたから、くぎを差した。                                          

747:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/09(土) 16:31

14,恋する乙女は強い

「道長さまぁぁ!お慕いしておりますうぅ♡」

あはっ。
そんなに、道長さんが好きなんだ。
オタク化してるよ・・・。

「父上を呼ぶわ」

彰子さん、ニヤッ。
途端に、紫式部さんが赤くなる。
代筆を頼んどいてえぇぇ!!
思いつかない物書きほど、怖い物はないよ。

「これだから、書けないんじゃ?」

我ながら、当たってるよね。
道長さんの一挙一動にキュンキュンしてるようじゃ、書き進まないよ。

「道長さまが、かっこいいからよ♡♡」

当たりだぁ!
恋する乙女は、強いと言うか。
物思いにふける事が多いし。

「清少納言さんに、負ける・・・」

言い掛けたら、強い殺気を感じる。
殺気を発してるのは、紫式部さん。

「清少納言・・・・・??!!」

あわわ。
マズいこと、言っちゃった・・・??                                                        

748:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/09(土) 18:12

15,好きになってほしいから

でも、違った。
少し涙を浮かべた、紫式部さんが私に言う。

「・・・はは。皆、私より・・・。清少納言が好きなのね・・・。皆・・・」

えっと・・・??
どういうこと・・・。

「帝も・・・。清少納言の仕えた、定子さまが一番だと」

そんな。
垣間見えた、紫式部さんの闇。
宮廷に入ったとたん、言われたんだろうな。

『清少納言がいた頃が、懐かしい』

とか。
皆が知ってて、自分が知らない。
比べられているように、思えたのだろう。

「・・・だから。『源氏物語』も書けない」

っ!
それは、違うのに。
なのに、紫式部さんが吐き出す闇を否定できなかった。

「・・・里に下がらせていただきます」

「それは・・・!!」

彰子さんの瞳が、揺れる。
私は、もう黙っていられなかった。

「それで良いんですか。道長さんに、好きになってもらわなくて」

僅かに、瞳が揺れて。

「私も、好きになってほしいから、頑張ってますよ。私なりに、だけど」

空回りになったり、だけど。
にっこり、笑う。
それに、さ。
決めたじゃない。

「『恋する乙女同盟』、破棄するんですか?」

紫式部さんが、私に抱きつく。
おわっ!
ただでさえ、自分の十二単で重いのに、紫式部さんのもかかってきて。

「『恋する乙女同盟』って、何です?」

あわわっ!
沖田さん・・・。
それはですねぇっ・・・。
無理です!
言ったら、パーになっちゃうし。
第一、恥ずかしいですよぅ。                                                                                                    

749:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/09(土) 21:26

16,大好き

紫式部さんと、顔を見合わせて、笑いあう。
可笑しくって。

「代筆、しなくて良いわ。私、自分で書くから」

良かった!
紫式部さんが、自分で書くと決意したから。
歴史が変わることも、なくなるね。

「道長さまの事も、頑張ろうと思うわ」

うん!
私も、恋する乙女として、応援するから。
彰子さんが、

「着替えたらどうかしら〜」

のんびりと言う。
確かに。
いつまでも、十二単着てるの、辛いから。

「似合うと思うんですけどね」

ほひゃ!?
そ、そんな無邪気な笑顔で見られたら・・・。沖田さんへの恋心、当社比、一・五倍増したよ!

「き、着替えるんで、あっち向いててください!」

ちょっと照れたように、私は言った。
みんなあっちを向いたから、彰子さんと紫式部さんに手伝ってもらって、十二単を脱ぐ。
あぁ、軽くなった。
服に着替えて、みんなに戻って良いと声をかけた。
にしても・・・。

「さっきの・・・」

無邪気すぎて、胸がキュンキュンとしてしまうよ!
ヤバい!  
心臓、持たないよ〜・・・。
好きなんか通り越して。

「大好き・・・」

改めて口にすると、頬にじんわり熱を感じる。
本当に、大好きなんだよね・・・。
私は、沖田さんが好きで好きで・・・。

「仕方ないんだね」

出逢う前には、絶対なかった。
こんな、温かくて切ない感情。                                                                     
                    
    

750:アーヤ◆PY:2017/12/09(土) 22:42

時代が同じ時代だったら良かったのにね、本当に切なく想う

751:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/10(日) 08:29

>>750
ありがとう!
だよね・・・。
時代が時代なだけに、末路がわかってしまって、切ないんだよね(*_*)
       

752:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/10(日) 08:37

17,君がいて良かった ※沖田side

夏音さんが着替えてる間、少し俺は切なくなった。
菊乃のときから、ずっとそばにいたから。

「思えば、不思議だな」

一さんが、言う。

「俺らが夏音に出逢ったのって・・・」

確か。
夏音さんの母上の何かとかで。
突然、現れたっけ。
そして。
心引かれるのもあっという間で・・・。

「いろんな所に、行きましたね」

「そうだな」

今、振り返れば可笑しな話だ。
でも。
何度だって思う。
君がいて、良かった。

「こっち向いて、良いですよ〜」

振り向けば、明るい笑みをたたえた、夏音さんがいた。
この笑顔を、忘れることはないんだろうな。                                                   

753:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/10(日) 12:26

18,おんぶ!?

私は、自分の高鳴る心臓の鼓動を抑えながら、苦笑い。 
だってさ。
私が生きる『時代』と、新撰組の生きる『時代』は違うから。
どう足掻いても、それは超えられないんだよね。

「夏音」
 
紫式部さん?
どうしたの?
そんなに、思いつめた顔して。

「『源氏物語』、私が死んだあとも、読まれるのかしら?」

なんだぁ。
そんなこと。
私は、にっこり笑った。

「当たり前じゃないですか」

じゃないと、社会の教科書に載んないよ。  ホッと安堵したような、紫式部さんが御簾を開ける。
庭には、蹴鞠をしてる人たち。
と・・・。

ボカッ

ほひゃ!?
鞠が、私に向かって飛んできた。
勢いは止まらず・・・。

「いったぁ!」

足に、当たって止まる。
ちょっと痛いわ。

「ううう・・」

ヤバい。
私は、思わず屈む。
と。
ヒョイと抱え上げられた。
斎藤さんに。

「夏音〜」

わぁ。
おぶわれて、なんだか。
おんぶ!?
うわわぁ。
赤ちゃんのとき以来だよ。
おんぶなんて。                                                   
              

754:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/10(日) 18:03

19,監察方

恐らくにやけてるであろう、斎藤さんの背中にもたれながら、ぼんやり。
赤ちゃんのとき・・・・か・・・。

「お父さん・・・」

つぶやいた私に驚いたのか、斎藤さんが聞く。

「俺が、お父さん?」

あっ。
そう言う意味じゃあ・・・。

「おぶわれるのって、お父さんにされたのかなって。懐かしくなって」

記憶が、ないけどね。
斎藤さんが、

「そう言や、夏音の父上って・・・」

話してなかったっけ。
今でも、あのときの衝撃が忘れられない。

「事故で亡くなったの。私が生まれて、しばらくしてね」

声のトーンが低くならないよう、ちょっと笑った。                            
            
       

755:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/11(月) 21:25

って!
何々。
この、『いけないことを聞いちゃった・・・シーン』は!?
しんみりしなくて、良いのに。
同情なんかいらない。

「それより!私、紫式部さんの『源氏物語』絶対読みます!楽しみにしてますから」

うん、これは絶対。
紫式部さんが、微笑んだ。
何も言わなかったけど、私には汲み取れた。

「Hello☆夏音〜!」

しっかし・・・。
ヤツ(お母さん)は、殺意がわくほどののほほんとした顔でタイムスリップマシーンに乗って現れた。

「お楽しみのとこ、悪いけど♪次、行くよ〜っ!」

はぁ!?
私、唖然。
次って!?

「お楽しみの、幕末♪♪」

私の、握った拳を見て、彰子さんと紫式部さんがふるふるとふるえ出す。
私の目に、暗い光が宿っているだろう。

「・・・一発殴らせろ〜っ!」

「きゃは☆」

ヤツは、私の攻撃を避け、タイムスリップマシーンに。
つられて、乗り込む。
あっ、はめられた。
そう気づいたときには、新選組と私はタイムスリップしていた。                                                                                   

756:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/14(木) 21:35

お知らせ

明日、更新できないかも(*_*;
最近、更新できてないし・・・。
土日に乞うご期待←おい
来週からは、またいつもどおりできると思います。            

757:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/16(土) 09:17

はぁぁ。
相変わらずのハチャメチャなお母さんだわ・・・。
私に、この人の血が流れているとは到底思えず。

「やっぱさぁ〜、このドキドキ感が良いのよね♪」

あのねぇ・・・。
沖田さんはじめ、みんなから殺気がわいてるよ?

「お母さん・・・。斬られてあっさり逝くよ?いつか」

断定するように、言えばお母さんは二ヒヒと笑った。
不気味!

「私には、長州がついてるから♪」

だからそれがヤバいの!!
とまあ、賑やかに(?)屯所に着いた。
お母さんは、なぜだか沖田さんの部屋に居座るって。
良いなぁ!

「おい、今から夏音の仕事について、教えてやる。咲と山崎を呼んでこい」

久しぶりだな、咲さん。
土方さんの部屋に残って、咲さんを待っていると。

「副長〜・・・。夏音が監察方、できますか?」

ぬぬぬっ。
咲さんめぇ!
やっぱり腹黒いよぉ・・・。
私が、恋敵だから?
うーん。
それだけじゃないような・・・。
なんて、気のせいかな。                                                                            
  

758:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/16(土) 12:45

20,バレるのはこりごり

すすっと障子が開いて、咲さんと知らない人。
この人が、山崎さんかぁ。

「監察方の仕事について、説明する・・・」

土方さんが言うけど、あんまり聞いてない。
だってさ。
山崎さん、美丈夫だもん。
浮気する意味とかじゃなくて、普通に思っただけ。
目が澄んでいて、綺麗。

「・・・わかったか?」

はっ。
聞いてない・・・。
んん〜。
聞いてないのバレたら、切腹になりそうだし。

「あはっ。大丈夫ですよ〜」

土方さんが、怪訝そうに見る。
怪しまれてる!
咲さんが、

「俺が注意しときます、手取り足取り教えときますから」

と、ニヤリ。
怪しいや。
咲さんは腹黒いし・・・。           
                                

759: アーヤ◆TQ:2017/12/16(土) 13:25

なんだか行き先が危ういよ!

760:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/16(土) 18:07

>>759
ありがとう!
確かに、色々危なさそうだよね(*^o^*)    

761:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/16(土) 18:21

手取り足取りって・・・。
危ない気がするし。
山崎さんが、グイッと身を乗り出す。
美丈夫に見られたら、困るよ〜。

「・・・女々しい」

ありゃあ・・・。
やっぱり、女々しいよねぇ・・・。
斎藤さんのときと良い、私って女々しいんだね・・・。

「女装なら上手いんじゃないか?」

咲さん・・・。
知ってて言ってる感満載だよ。

「・・・女装は、頼む」

はぁ!?
断定されたよ!?
土方さんが、くつくつと笑った。
でも。
山崎さんにバレるのはこりごりだよ。                           
        

762: アーヤ◆TQ:2017/12/16(土) 18:56

バレるかは時間の問題

763:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 12:18

>>762
ありがとう!
時間の問題だよね(*´ω`*) 

764:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 12:22

21,終焉へのエピローグ

────和やかなままだと思ってた。

みんなの目が、“鬼”の凄絶な光を放つ、までは。
でも・・・。

しーちゃんのときのような、別れが密かに近づいていた。                  

765:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 12:27

あとがき

はいっ!
I完結で〜す!
今までこんなに続けられた作品は初めてなので、すごい嬉しいです。

今回は、前半平安時代にタイムスリップしました!
あの紫式部と夏音が対面!

後半は、いつもの(?)幕末へ。
最近、別ればかり書いてるような・・・(汗)
あの人との別れです。

新キャラも出てきましたね。
注目してみてくださいね(*´ω`*)

コメントくださった方々、ありがとうございます!
こんなに続けられたのは、みなさんのおかげです。

これからも頑張ろうと思います。

        リリカ                                  

766:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 14:02

『時を駆けて、初恋*します。』J

登場人物

城里 夏音
本作の主人公。 
明るい。
裁縫などのチマチマ作業が得意で、沖田さんに想いを寄せている。

沖田 総司
新撰組隊士。
優しく、剣の腕が立つ。
夏音と両想い。

土方 歳三
新撰組副長。
S気質。
夏音が好き。

近藤 勇
新撰組局長。
大柄。
大食漢。
 
永倉 新八
新撰組隊士。 
明るい。
チャラい。

藤堂 平助
新撰組隊士。
優しく思いやりがある。
苦労人。

原田 左之助
新撰組隊士。
大食らい。
明るい。

山南 敬助
新撰組隊士。
穏和。
知的で頼りにされている。

斎藤 一
新撰組隊士。
子どもっぽく純粋。
夏音が好き。

井上 源三郎
新撰組隊士。
穏和。
ある意味最強。

山崎 蒸
新撰組隊士。
監察方で夏音の先輩。
夏音が女だと気づいてる・・・?


新撰組隊士。
夏音と同じく女。
腹黒いが、沖田さんが好きで夏音の恋敵。

花(はる)
夏音に惚れた女の子。        
                        

    

767:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 14:07

1,お梅さんの悩み

ふあ〜・・・。
幕末にタイムスリップして1日めの夜。
眠い〜・・・。
布団に潜り込んで、はたと気づく。
前の時、土方さんの布団に入っちゃったよね!うわぁ・・・。
今、同室の土方さんはいないけど、ドキドキする・・・。
なんて思うのは、私だけ?

「あっ。前の、あの気になってた物・・・」

白い帳面みたいだったよね。
気になるから、探そうっと。

「よぅし・・・」

二ヒヒと笑って、文机に近づく。
秘密、見つけちゃうぜ〜・・・!!                                

768: アーヤ◆TQ:2017/12/17(日) 15:00

土方さんの布団にデシャウで潜ったね、あとまた目的の土方さん宛てのラブレター諦めてなかったんだ

769:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 16:02

>>768
ありがとう!
夏音、諦めない質だからね(笑)  

770:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 16:06

しっかし!!
タイミング悪かった・・・。
文机の持ち主=同室の方がギラギラした目で、私を見下ろしていた。

「・・・何をしていた?」

地の底から響いてくるような、低い声。
ゾワワッと背中の毛が、逆立つ。

「あはは。別に・・・」

愛想笑いして、そうっと布団に潜り込もうとしたら。
首根っこを掴まれた。
笑い事じゃない〜!!

「・・・全部吐け。拷問するぞ?」

いやだぁぁ!!
私、今日が命日かも・・・。                                   

771: アーヤ◆TQ:2017/12/17(日) 17:45

土方さんに見つかるとは運が悪いね夏音……
でも吐かなかったら強引にでも攻めて来そうだから、早くも言ったら夏音命拾いするからね。

772:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 17:59

>>771
ありがとう!
いろんな意味で、吐かないと危ないね(笑)
不運なのも夏音の特徴だよね(笑)     

773:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 18:06

「・・・すいません、ラブレターが気になって・・・」

人間、素直が一番よね。
私が言うのも、何だけど。
土方さんが、首を傾げる。

「らぶれたー?」

ああっ。
この時代、ラブレターなんて言葉ないか。
 
「恋文ってことです。で、誰宛なんですか?」

謝るのは後でね。
気になることを、聞いとこう。
土方さんが、不思議そうに、

「恋文・・・?そんなの送らないが」

はい!?
じゃ、あれは・・・。
何なの!?
ところが、土方さんが怒ったように(完全に怒ってる)、

「人の文机を、荒らすな・・・」

ひぃぃ!!
ごめんなさい〜!!                                

774:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/17(日) 21:25

うわぁ・・・。
お怒りになってる・・・!!
ヘルプミー!
沖田さんでも、誰でも良いから!
しかし・・・。
祈りむなしく、襲いかかられる。
ギャーーッ!

「お邪魔するね」

と、障子が開く。
障子の向こうから、山南さんの仏のような後光が眩しい笑顔が覗く。
助かった・・・?
ところが、山南さんは襲っている土方さんと、襲われている私を一瞥して、

「・・・邪魔してすまないね」

相変わらずの笑顔で、するするっと障子を閉めた。
あぁ!
神様〜!!
なんで唯一の神様が去っていったのよぅ!                                       

775: アーヤ◆TQ:2017/12/18(月) 18:31

勘違い夏音と冷静土方さん最高に面白可笑しく夫婦関係に見えるよ(*ノ▽ノ)

776: アーヤ◆TQ:2017/12/18(月) 18:33

やっぱり山南さんグッとタイミングってえっ👀⁉
何故か閉めた?

777:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/19(火) 17:00

>>775
ありがとう!
夫婦漫才みたいな(笑)
コンビ組んでも良いかもね(笑)

>>776
そりゃ・・・。
大人だし、察したんだよ(笑)   

778:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/19(火) 17:03

私は、障子にすがりつく。
ガバッと開けて、

「助けて!」

誰かに抱きついた。
だってさ、後ろに危ないヤツがいるもん・・・。

「夏音?」

斎藤さん!
助かった〜・・・!!     

779:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/20(水) 18:40

斎藤さんが、なぜか目をそらす。
はて?

「・・・目のやり場に困る」

んっ?
そうっと、視線を下げると。
わぁ!
着物が、はだけてて。
私の頬が、熱くなる。

「すいません!」

斎藤さんが、耳まで真っ赤にさせて、

「そう言や、お梅さんが悩んでる風情だったぞ」

お梅さんが??
何を、悩んでるのかな。

「ありがとうございます」

お礼を言って、八木邸に向かおうと後ろを向くと、斎藤さんが声をかける。

「着物、正せよ〜。平山さんに叱られるぞ」

平山さんに会ったことはないけど、口うるさそうな人なんだな〜。                           

780:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/21(木) 14:25

八木邸に着いて、戸をガラッと開け放つ。

「こんにちは〜!お梅さん〜?」

そう言いながら、入っていく。
珍しく、芹沢さんの声が聞こえない。
前だったら、大声が響いてたのに。

「・・・あぁ、夏音・・・」

お梅さん!?
現れたお梅さんの髪も、着物も乱れていた。
泣きじゃくったのか、頬に涙の後。

「・・・聞いちゃったの」

ほへ?   
何を?
まさかの芹沢さんが別の女の人を、妾にしようとか?
土方さんじゃあるまいし。

「・・・旦那様の、暗.殺計画を・・・」

芹沢さんの!?
どこで!?
それとなく、なんだかみんなが隠れて何かしてるな、とは感じてたけど。

「・・・夏音・・・。どう、すれば・・・」

良いの、という声は、掠れていた。
お梅さんの悩みと言うより、悲しみは深い。
私は、ただお梅さんの肩を抱いていることしかできなかった・・・。                            
                            

781:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/21(木) 14:32

2,為くん

「────お姉ちゃん!遊んでよ」 

為くんの声に、私はハッとした。
お梅さんの聞いた、あのことが気になって仕方なくて。
私は、笑って、

「わかったよ。他の子は、呼ばなくて良いの?」

為くんはにっこり笑った。
おおっ!
天使の微笑み〜。
癒される〜。

「もう呼んでるよ。お姉ちゃん、しっかりしてよ」

あはは。
ホントだ。
私が、物思いにふけってて、見てなかったけど近所の子が来ていた。

「じゃ、遊ぼっか」

為くんが、またまたにっこり。

「うん!」

鬼ごっこや、かくれんぼをしてしばらく遊んでいた。
和やかな、ひととき。
少しの間だけでも、芹沢さんの話を忘れることができて、良かった。                                             

782:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/21(木) 14:40

3,怪しい人影 

「ありがとう、お姉ちゃん!」

為くんが、近所の子たちと、にっこり笑って礼をした。
えへへ。
お礼言われるまでの事、ないけどな〜。

「お姉ちゃん」

為くんがいきなり、思い出したかのように真面目な顔に。
したがって、私も真面目に。

「今日、お姉ちゃんがぼんやりしてたときに」

ぼんやりしてたのか、私は。
ちょっとショック。

「変な男の人がね、見てたの」

誰を?
為くんを?
それか、近所の子たち?

「お姉ちゃんを」

えっ、私を!?
為くんが、真剣な面持ちで、

「じいっと見てて、僕たちが『お姉ちゃんに用事?』って、聞いたらね」

そこで、別の近所の女の子が、口を挟む。

「逃げてったよ。刀を持ってたから、お侍さんだよ」

逃げてったの?? 
そう言えば、ちょっと怪しい視線を感じた気が、したけど・・・。

「ありがとう、為くん。暗くならないうちに、帰ってね」

怪しい人が、為くんたちに手を出す確率も、高いしさ。
私は、為くんたちに手を振って、屯所に戻った。                                                                  

783:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/21(木) 16:24

4,「守れなくて、ごめんね」

その夜の事、だった・・・。

「夏音!」

斎藤さん?
どうしたの?
私は、お風呂から上がって、髪を少しだけ布で拭いていると。
斎藤さんと、沖田さんが部屋に入ってきた。

「この子たちが・・・」

二人の後ろからは、近所の子たち。
泣いてる?

「為くんが、いないの・・・」

はぁ!?
いない!?
もしかして・・・。
私は、考えるより先に飛び出す。
夜の風が、冷たい。

「来たか」

ゾッとするほど冷たい、声。
振り向けば、切れ上がった目の男の人が為くんの背に刀の刃を当てていた。

「為くんを返して」

「新撰組の情報を流してくれたらな」

えっ・・・。
それは・・・。
無理だよ・・・。
でも。

「わかった」

私は、わかっていた。
この人は、為くんも斬って私も斬るつもりだって。
為くんがこっちに、走ってくる。
それと同時に、白刃が閃く。

「守れなくて、ごめんね」

私は、そうっと為くんを抱きしめた。
刀が一閃。
熱い。
そう思った時、視界に沖田さんが駆け寄ってきたのが見えた。
私の意識が、闇に消えた。                 
              
                           

784:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/21(木) 16:34

5,お父さん

濃い霧が、私の周りを包んでいた。
此処は・・・?
私、斬られたハズだよね・・・?
私は、知らない間に歩いていた。
花が咲き乱れる、不思議な野原に来ていた。

「夏音」

ほえ?
誰?
濃い霧の合間を縫うように、誰かが来た。
ふっくらした、顔にどこか鋭さを秘めたような切れ長の目。
私と、そっくりで───────・・・。

「お父さん・・・?」

その人は、やんわり微笑んだ。
信じられない・・・。
涙が、流れる。
だって───────────・・・。

「ホントなの・・・?」

私が、小さい頃に死んじゃったから・・・。
でも、幻には見えなくて。
恐る恐る伸ばした手に、触れた温度。
温かい・・・。

「お父さん・・・!!」

見間違うことない。
写真で見ている、私のお父さん・・・。

「お父さん・・・。お父さん・・・!!」

抱きついて、泣いた。
今まで、お母さんが教えてくれた話でしか、わからなかったのに。
目の前にいるなんて───────・・・。                           
    

785:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/22(金) 14:28

ふと見れば、小川が流れている。

「夏音、行こっか」

お父さんが、ニコッと笑う。
えくぼができて、愛嬌がさらに溢れる。

「うんっ!」

しばらく戻りたくない。
これが夢ならば。
いっそ、覚めてほしくない。

「おいで」

お父さんが、先に向こう岸に行く。
私も、小川に足を突っ込んで、岸に上がろうとすると。
向こうの霧が深いところから、ぬうっと誰か現れた。

「お父さん・・・!?」

現れたのは、お父さんで。
お父さんが二人!?
でも、向こう岸から現れたお父さんは、厳しい顔。

「戻れ」

えっ!?
どういう・・・。
すると、優しい顔だったお父さんの顔が、般若のように歪んだ。

「邪魔するな!」

発せられた声は、さっきとは打って変わって地獄のそこから聞こえてきそうな声。
厳しい顔のお父さんが、般若顔のお父さんを止める。

「夏音!戻るんだ!」

ひょえ?
私は、止めているお父さんの言う通りに、来た道を戻る。
般若顔が、鬼の姿に変わって。

「振り返らずに戻るんだ!」

お父さんの声。
私は、必死に顔を覆って走る。
絶叫が聞こえた気がしたけど、振り返らずに走った。                  
                               

786:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/22(金) 14:38

6,あの世?

うっ・・・。
私は、恐る恐る開けた目に、眩しさを感じてゆっくり目を開ける。
お父さんは・・・?
般若顔、否、鬼は・・・?
どうなってるの・・・?

「夏音が目を覚ましたぞ!」

斎藤さんの声が、遠く聞こえる。
私・・・。
着られたんじゃ・・・?
生きてるの・・・?
ゆっくりと、目の前に手を動かす。
生きてる・・・。

「私、・・・生きてる・・・!」

背中に、ピリッとした痛みを感じる。
でも、それが生きてる証で。
そっと傷口が開かないよう、座る。

「夏音!」

「意識戻ったんですか!?」

ドタドタと音が聞こえる。
心配性(?)だなぁ。
クスッと笑っていると。
ガラッと戸があいて、沖田さんと土方さんが駆け込んできた。

「あはは。元気ですよ〜」

ちょっと心配かけたくないから、嘘言っちゃった。                                       
      

787:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/22(金) 19:55

そうだ。
お父さんの事も、言っとこう。

「実は、夢なんですかね?どこかの花が咲き乱れていた野原に私、いたんです。そしたら、お父さんに会っちゃったんですよ!でね・・・」

と、さっき見た出来事を言うと。
沖田さんが、ニコニコと、

「あの世に渡りかけたのでは?」

と、土方さんを見やる。
当の土方さんはどうともしてない感じ、だけど。
額から汗が流れたのを、私は見逃さなかった。

「あれぇ?怖がりなんですかぁ?」

「なっ!んなわけねぇ!」

じゃ、なんで焦ってるの?
私と、沖田さんと斎藤さんはニヤニヤ笑った。
からかえるし!

「そーだ!今度、お化けが出ないか、確かめてみません?」

いっそ、みんなで。
そしたら、誰が一番ビビってるかも、よぅくわかるし。
って言っても、ビビってる人、もうわかっちゃった。

「そう言や、傷口、お医者さんに・・・」

見せたのかな。
斎藤さんが、

「ああ。咲が、サラシを巻かせてな」

そう言う事ね。
女だとバレたらアレだし。
咲さんに見られたくらいなら、大した問題ないや。

「咲が名乗り出なかったら、俺がやるつもりだったけどな」

土方さんが、ぼそりと聞き捨てならない事を言う。
ダメだろ、それ!
現代だったら、犯.罪だぞ!?

「さすが、女には手が早いですねぇ〜」

「女に好かれるからな、副長は」

あはは。
確かに、二枚目だし手も早そう。
そう言えば、前、好きな人がいるって言ってたよね。

「前に、好きな人がいるって言ってましたよね。その人と、どうなったんですか?」

もう恋仲に?
ちなみに、その人は誰なんだ?                                      
                                                                 

788:リリカ@恋歌<偽者>JA:2017/12/22(金) 20:31

その相手は…ノンスタイル井上だった。

789:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/22(金) 21:24

>>788
止めてくれますか?
一応、削除依頼出しました。
これ以上するようでしたら、アク禁出しますので。    

790:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/22(金) 21:32

7,肝試し

ん?
私、可笑しな事言ったか?
土方さん、真っ赤。

「・・・それは・・・」

無理には聞かないけどね。
私が、そう言うと、がっくりと肩が垂れた。
ありゃ?
悪いこと、言っちゃった?

「それよか、肝試ししません?二人一組になって」

途端、沖田さんの目が輝く。
子供みたい。
ふふっ、可愛い〜。

「どうやって決めますか?」

妥当な、じゃんけんとか。
じゃんけんの仕方を教えて、やってみる。

「最初はグー・・・じゃんけんぽい!」

私・・・パー。
沖田さん・・・チョキ。
土方さん・・・パー。
斎藤さん・・・チョキ。

「見事に分かれましたし、これでやりましょ!」

心中、ビビる土方さんを見たくてうずうず。
・・・なんて、私はSかも。                                    

791:アーヤ◆PY:2017/12/22(金) 21:59

夏音と土方さんのハプニングお化け屋敷見てみたい

792:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/23(土) 08:18

>>791
ありがとう!
いろんな意味でのハプニング、ありそうだよね(*^▽^*)

793:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/23(土) 08:33

8,お墓

「って事で、近くのお墓に、おぼん借りてきたので、これを取りに行ってもらいま〜す!」

私は、ジャンッとおぼんを見せる。
用意周到なのだ!
おぼん借りる際、近藤さんたちも参加したいって言ってたし、OKした。
人数が一気に増えたけど、なおさら楽しそう!

「じゃあ、沖田さんたちから!」

「行ってきます」

にっこり笑って、沖田さんたちが出発。

「楽しみですね〜!お化け、出たら良いなあ〜」

スリルとか出そうじゃん!
反対に、土方さんは真っ青。
あはっ!
鬼がお化けを怖がってる!
面白すぎる!

「ギャーー!」 

ありゃ?
斎藤さんの悲鳴だ。
お化けが出たとかっ!?
しかし、ウキウキする私と反対に、顔を白くする土方さん。
これが、演技だったら、相当な役者だよ〜。                                                             

794:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/23(土) 10:34

9,女の子

しばらくして。

「こぇぇ〜!」

「そうでしたか?」

ちょっと青い顔になった、斎藤さんと飄々としている沖田さんが戻ってきた。
演技じゃなかったんだ。
さっきの悲鳴。

「何か、出たんですか?」

ワクワク。
出たんなら、さらにビビる土方さんを見れるし。

「いやいや、雰囲気が怖くてな・・・」

斎藤さん、ブルブル震えた。
それを聞いたら、一気に土方さんが青ざめる。
私は、にっこり笑って腕をとる。

「行きますよ〜」

「行かねえぇぇ!」

絶叫する土方さん。
山南さんが、仏の笑顔でその肩を叩く。

「土方くん、人間、諦めが肝心だよ」

そうそう!
私は、にっこり笑う。

「行って来まーす!!」                                          

795:アーヤ◆We.:2017/12/23(土) 11:34

完全なる夏音がドSになっているけれども、土方さん以上じゃあなくって安心だよ。
相当なハプニングでキスをしたりとか?
夏音の胸を触ってとかのハラハラドキドキのハプニングが好きです

796:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/23(土) 12:48

>>795
ありがとう!
ハプニング、楽しみだな〜←他人事
書いてても、ハラハラする(*´ω`*)  

797:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/23(土) 12:59

私は、さっき沖田さんから聞いておいた話を思い出す。
ふふっ、どんな反応するかなぁ?

「そう言えば、昔、ここらへんで家族が斬られたって事件があったらしいですねぇ。女の子の幽霊でも出るんですかね」

思い切りニヤニヤ言うと。
おおっ、怖い!
睨まれたよ。
怖くなっての、逆ギレ!?

「その子、絶対土方さんに惚れますって、沖田さんが言ってました〜」

私も、そう思う。
あわわ。
土方さんからピリピリした殺気を感じるよ。

「総司、絶対斬る!」

うわーん、怖いよ。
・・・なぁんて茶番は止めて、真面目に歩こ。

「・・・お姉ちゃん、亜依のお母さん、知らない?」

ひょえ?
いきなり、背後から声をかけられる。
振り向くと、黒髪を結った、女の子が立っていた。
為くんの友達かなぁ?

「見てないよ。じゃ、一緒に探してあげる」

女の子────話からして、亜依ちゃん───は、ニコッと笑った。
かく言う事で、肝試ししながらの亜依ちゃんのお母さんを探していると。

「亜依!」

綺麗な女の人が、現れた。
髪には薄紅色の簪が。

「お母さん!」

良かったね、亜依ちゃん。
亜依ちゃんは笑って、

「ありがとう、お姉ちゃん!」

ふふっ、良かったぁ!
土方さんを見やれば、プルプル震えている。
どうしたの?
亜依ちゃんが、お母さんと手を取って歩き出す。
いたって、いい光景じゃん。                                                          
                              

798:&◆Sg:2017/12/23(土) 14:01

バカな光景じゃ。

799:アーヤ◆We.:2017/12/23(土) 14:47

まさかの幽霊だからか2人して何かが起こりそう

800:リリカ@恋歌◆JA:2017/12/23(土) 14:50

>>798
あのう…。
批判、誹謗中傷はやめてください。

>>799
ありがとう!
ありそうだよね( ̄ー ̄)ニヤリ

800行くよ〜!
応援してくれて、ありがとうございます!(*^-^*)  
   


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