厨二のチェニー  

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1:苺ましまろ*◆LM:2017/12/23(土) 05:59


都内の剣山《つるぎやま》学園は、校舎は古くて制服も古風なセーラー服の、冴えない中学校。

そこに、SNSで話題の“チェニー”が転入してくることになった。

宇宙を制覇し、魔王を倒し、人は死後どうなるのかを知っているなどと宣言している彼(彼女?)は、毎日のように騒動を起こし、剣山学園やSNSを掻き乱しながら暴走していく。
 

9:こもも◆/s:2018/04/25(水) 16:03


「みんな、スゴいことが起きたから聞いてくれっ!」
ある日、チユリがものすごい勢いで教室に入ってきた。様々な会話が飛び交っていた教室内は、一気に静まり返った。
「なんと、この僕が宿題を全く解けなかったんだ!」
チユリは頬を真っ赤に火照らせながら嬉しそうにそう叫んだ。でも、それに反応する生徒は極わずかしか居なかった。
「何だよ、もっと喜んでくれよ。この僕が宿題を全く解けなかったんだぞ?大事件じゃないか!今これをSNSで呟いたら、絶対バズると思うんだけどなぁ」
「へ、へぇ……」
「な、何か……良かったね?」
クラスメイト達の反応の薄さに、チユリは真っ赤な頬を膨らませた。
「何だよ、もっと大ニュースになると思ったのに……」
不貞腐れながら、とぼとぼと自分の席に着いた。
「……やっぱりチェ二ーって、ただの人間なのかな」
「そりゃそうでしょ、本当に魔法使えるわけないじゃん」
「結局ただの厨二病なんだよ」

10:こもも◆/s:2018/04/27(金) 14:58



給食の時間。全員が席に着き、全員が手を合わせ、全員が「いただきます」と唱えた。
「今日のメニューは……ふむふむ、きなこ揚げパン、ポトフ、卵焼き…………んんん?」
大声で独り言を言うチユリに、クラスメイト達の視線が集まる。
「な、何で卵焼きにもずくが入ってるんだ!?僕はもずくが嫌いなんだ!!!」
叫びながら、チユリは椅子を蹴倒して立ち上がる。
「先生、もずくよけてもいいかい?」
「ち、ちゃんと食べなさい……」
「僕はもずくを食べちゃいけないんだ!もずくを食べたら魔力が低下してしまう…………それはとても重大なことなんだ、地球がどうなっても知らないぞ!!!」
チユリは何としてでももずくを食べたくないようだ。
「……とにかく座りなさい。」
「僕はもずく食べなくていいって言うまで座らない!」
「ならずっと立ってなさい……」
教師もクラスメイト達も呆れ返ってしまった。チユリはそれでももずくを食べようとしなかった。

……五分後。
「え、もずくって美味しいんだな!こんなに美味しいなんて知らなかったよ!もずく!もずくさいこー!!」
チユリはもずくの虜になっていた。

11:こもも◆/s:2018/04/29(日) 17:17


文化祭の準備の最中。
「ねえ、何でお化け屋敷なの?」
「何か出し物は先生達が決めちゃったんだって」
「最悪、カフェやりたかったのに……」
「まー決まっちゃったし仕方ないよ」
2年2組のクラスメイト達は、不満を漏らしつつも準備を進めていた。
「ちょ、何してんの!」
そんな中、1人の女生徒が声を上げた。そこにクラス中の視線が集まる。
「何でそんなべたべたにしてんの!?有り得ないんだけど!!」
「ちょっと、どうしたのよ」
心配して数人のクラスメイトが駆け寄ってくる。叫んでいた女生徒は、足元を指差して怒声を上げた。
「チェ二ーがペンキべたべたに塗りたくってんの!床までべたべたなんだよ、考えらんない!」
真っ赤なペンキに塗れるチユリを指差しながら、女生徒は忌々しげに足踏みをする。
怒られていると言うのに、チユリは全く気にしていない様子だ。
「ここでは僕のことはチユリって読んでくれよ。何のために人間の名前を考えたと思ってるんだ?」
そらどころか、全く関係ないことを怒り出した。
「はぁ……?」
「そういえば、これ、あの龍の血に似てるな。このどろっと具合が特に」
チユリは呟きながら、ペンキが入ったバケツをひっくり返して、中身を手のひらに乗せた。指の隙間から零れたペンキが、彼女(?)の制服を赤く染めていく。
「あああ、ちょっとチェにー!零れてるって!」
「これはまさか…………君たち、いつの間に龍の血を取ってきたんだ!?危険じゃないか!!」
「チェ二ー、話を聞いて!」
「龍に何かされなかったか!?もう絶対に近付いちゃだめだぞ!」
そこに居る誰もが、もうチユリに言うことを聞かせることを諦めていた。

12:こもも◆/s:2018/05/07(月) 18:01


「なあ、ちょっと訊いてもいいか?」
唐突に口を開いたのは、机に突っ伏したチユリだった。傍から見たら寝てるようにしか見えないので、周りのクラスメイト達は驚いてチユリを見た。
「君たちは僕が本当に勇者であるとは信じてないんだよな?」
「急に何……?」
「私は別に、信じるとか信じないとか関係ないけど……」
「じゃあ逆に訊くけど、チェニーは本当に魔法少女やら龍やら悪の魔王やらが居ると思ってんの?」
「ああ、もちそんそうだが。」
クラスメイトの冷やかな物言いに怖気付く事もなく、チユリは突っ伏したまま頷いた。
「だって僕自身がそういう存在で、それを見てきたんだからな。」
自信満々に言うチユリに、クラスメイト達は溜め息を吐いた。
「あんたさ、ずっと思ってたけど、頭おかしいんじゃないの?そういうのはネットの中だけにしなよ?」
「そうだよ、SNSではチヤホヤされてるかもしれないけど、ここにはチェニーのお遊びに付き合ってあげる人なんて居ないんだよ?」
クラスメイト達の厳しい言葉に、チユリも流石に傷付いたのか、
「エゴサーチなんかしなければよかった」
と、涙声で呟いた。


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