マジカル☆ガールズ 町を守る三人の少女

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1:ましろ◆r.:2018/03/06(火) 19:56

ジリリリ ジリリリ
小うるさい、目覚まし時計の音が響いている。


「うーん…もう朝?」

その音に叩かれるかのように、私は目を覚ました。
いつも聞いているけど、この音だけは慣れない。

ガッチャン。

目覚ましを止めると、一瞬で静かになった。
外からは、小鳥の鳴き声が聞こえてくる。


「ふあぁ……」

小さくあくびをしながら横目に見た時計の時間は、朝の六時半。
ベッドから降りた私は、リビングに向かうことにした。

15:ましろ◆r.:2018/03/10(土) 18:42

二人で通ったのは、私が登校に使っていた道だった。

「あの……もしかして、私のために?」

「うん!人の多いところ、苦手って言ってたから」

他の子がそんなに歩いてこないこの道なら、星川さんも安心できると思った。
そして思った通り、星川さんの表情は、さっきより明るくなっている。

「私がさっき言ったから……?ありがとう……それで、話って?」

「うん、あのね……」


私はもう一度、休み時間に何をしていたのかを聞いてみた。


「人の多いところが苦手……それで私、一人で廊下にいるの。廊下の隅っこに」

「そうなの……!?」


一人がいい……それで星川さんは、廊下に出ていることを選んだ。
だけど正直、廊下は風通しがいいから、今の時期でもちょっとは冷えるだろう。

「教室……授業と、ご飯を食べてる時はいいの。でも、休み時間とかはほんとにダメで……」

そう話す星川さんの目は、なんだか涙ぐんでいるようにも見えた。

「廊下で一人、寂しくない……?」

泣いていたから、寂しいはずがないから、私は尋ねた。


「ちょっとは……うん」

「ならさ……!」

歩きながら話していたけど、私は足を止めて、星川さんの手を優しく握った。


「私が一緒に居てあげる……ダメ、かな?」

話を聞いてて思った。この子は、友達を作りたいけど、作れない。
だったら、私から話しかければいい……。一人は、絶対寂しい……。

それに、星川さんは、悪い子じゃないように見えるから……。


「そんなの言ってくれる人、朝露さんが初めて……うん、いいよ。あなたなら私、なんだか安心できるから……」

この街に来て、初めての友達が出来た。

16:ましろ◆r.:2018/03/10(土) 19:40

「それじゃあ、また明日ね。星川さん」

「うん。朝露さんも……」

一言、さよならを言った後、私たちは別れた。

星川さんと、少しは仲良くなれたのかな……
そう思っていると、家の近所まで戻ってきていることに気が付いた。


「ここは……」

朝のことを思い出す。星みたいなものが、私に向かって落ちてきて……
何もなかったように、消えた。

……あんな落ちかた、何もないはずがない。

「この辺り、だったよね……?」

茂みや、物陰を調べる……。


「あ……!」

何かが、茂みの陰に埋まっている。
二本、何かが飛び出しているそれは、すっぽりと地面に埋まっていた。


「……えいっ」

私は何も考えず、それを引っ張った。
すぽんと音がして、抜けた。抜けたけど……

「なにこれ」

最初の一言だった。

耳がついてて、うさぎみたいで、でも二本足の動物。
これには、なにこれしか言葉が見つからない。

私が持ったのは、この動物の足だったらしい。

「ここは……」

!?

「ここ、どこなの?」

「えっ」

私が足から持っている動物、しゃべるらしい……。


「ええーっ!?」

驚いた私は、近所迷惑になるかもしれないくらい、叫んでしまった。

17:ましろ:2018/03/11(日) 19:45

「……」

ちょこんと地べたに座っている、小さな動物。
うさぎのようでうさぎじゃない。

「ここ、人間界?そうよね、人間の女の子がいるんだから

18:ましろ:2018/03/11(日) 20:28

「……」

ちょこんと地べたに座っている、小さな動物。
うさぎのようでうさぎじゃない。

「ここ、人間界?そうよね、人間の女の子がいるんだから」

「ねえ、何でうさぎさん、喋るの……?」

このうさぎ、喋るからだ。

「ワタシ、うさぎじゃないわ。妖精なの!」

「え……?」

この動物が喋っていることがもうビックリなのに、さらに信じられないことが起きている。
自分のことを、妖精だと言っているのだ。


「妖精で、名前はスミレ!」

元気よく自己紹介をしてくれる妖精さんだけど、耳はぴくぴく動いている。
本当にうさぎみたい……。


「わたしは、ひなっていうの。あの、妖精さん……」

「なぁに?」

妖精さんは小さいから、私は見下ろして話してるわけだけど……
誰かに見られていれば、凄く不思議に見えるだろうなと、話しながら思った。


「何であんな場所に、埋まってたの?」

「あ、それはね……」

私に向かって落ちてきたものと、絶対何か関係がある。
にしては、すっごく軽い口調で、妖精さんは説明を始めた。


「ワタシは―――」

言いかけた、その時だった。


「あ……!」

「ん、妖精さん、どうしたの?」

「ごめんっ!行かなきゃ!」

私に話すことよりも大事なことを、思い出してるような感じがする。
そのまま妖精さんは、どことも言わず走って行った……。


「ん……?」

なんだったんだろう……とか考える前に、足元に何かが落ちているのを見つけた。


「なに、これ……」

妖精さんが落としたものだろうか。小さくて四角いケースみたいなのが落ちている。


「届けた方が、いいのかな?」

それを拾った私は、妖精さんを追いかけることにした。

19:ましろ:2018/03/12(月) 21:59

「……ない!」

しまった。
ワタシとしたことが、不覚だった。

焦りすぎてしまったのだろうか。とにかくワタシは、一番大事なものを落としてしまった。


……さっきの、あの女の子と出会った辺りか?
引き返せばまだ、間に合うかもしれない。


「お、こんなとこに居たか。妖精」

「え―――」


ーーーーーーーーーーーーーーー

私は、一人というか一匹で走って行った妖精さんを探していた。

慣れない町を走り回ってみるのは、町探検みたいで意外と悪くない。


「どこ行っちゃったんだろ?」

まっすぐ行ったり曲がったり。妖精さんが歩いた道は、ケントウもつかない。



――ぶるっ


「……?」

何かが震えたのは、スカートのポケットの中。


「これ、さっきの……」

ポケットに入れていた、手のひらサイズの四角い箱。
開けてみると、スマホみたいなものが入っていた。


「携帯電話……あ、何か映ってる」

画面には、赤い点や黒い点が、地図みたいなものに表示されている。
……この近くだろうか?

「行ってみよう……」

妖精さんが落としたものだから、この表示が何か関係してるに違いない。
そう思った私は、点がありそうな場所へ歩き出した。

20:ましろ:2018/03/12(月) 22:15


「ここかな……」

歩いてるうちに、薄暗い道に入った。
表示はこの近くらしい。


「……人間か?」

「えっ!?」


振り返ると、サラリーマンみたいな恰好をした男の人が立っていた。
真顔で、何を考えてるか、よくわからない感じがする。


「ちょうどいい。お前も玉に変えてやろう」

「た、たま……?」

サラリーマンの男の人は、ポケットから何か、丸いものを取り出した。


「……!!」

玉には、人が入っていた。小さく縮こまった人が。
だけどそれは、信じられない人物で……


「ほしかわ……さん?」

さっきまで、笑いあっていた女の子。
星川あまのさん。

なんでその子が、こんな風になっているのか、私にはわからなかった。


「心の中に明るいものを秘めてたからな。俺らにはそれが邪魔なんだ」

「明るいものが……邪魔?」


男の人は、星川さんの入った玉をかかげながら話し出した。

「いい気分。楽しい事。明日への希望。全部邪魔なんだ。だからそれらを抜き取って……」

「こんな姿にしたの……!?」

自分勝手……そう思った。
きっと星川さんは、私と友達になれたことが嬉しかったんだ。
だけど、この人はそんな思いを踏みにじった……。


「私の友達、返してよ……!」

怖い思いはあったけど、私は精一杯叫んだ。
こんなの、絶対駄目だから。


「友達か……じゃあお前も、同じ姿にしてやるよ!」

「っ……!」


男の人の手から、黒い光が放たれる。
テレビみたいなそれは、私に向かって飛んできて―――

21:ましろ◆r.:2018/03/13(火) 17:33

どうしよう。

星川さんを助けたいのに、私も同じ事になってしまうの……?

ああ……ダメだな、私―――


「だああああああっ!」

もう駄目だと思った。目の前がゆっくりと動いて、時間が遅く感じられた。

そんな、遅い時間の中で……


「……これ以上、好き勝手はさせないわ!」

「お前……捕まえていたと思ったのに……!?」

黒い光を打ち消して、私を守ってくれたのは、さっきの妖精さん……スミレだった。


「残念だったわね。逃げ出して、スキを見ていたの」

「小動物が……!」


妖精さんは、体をパタパタとはたくと、私の方を向いた。

「大丈夫?他にけがはない……?」

「う、うん!」

心配ないと手ぶりすると、妖精さんはその手の中に注目したみたいで……


「タブルン、やっぱり拾ってくれてたのね。助かったわ」

「たぶるん……?」

スマホみたいなこれは、たぶるんというものらしい。
……妖精が持ってるんだから、普通の物じゃ、ないよね……?


「……こいつを追い払って、あなたの友達を助けるの!だから、それを使って魔法少女になって!」


……へ?

22:ましろ◆r.:2018/03/13(火) 19:15

「タブルンは、魔法が使えて戦える女の子に変身するためのアイテム!あなたなら、きっと使えるわ!」

「は、はあ……」

魔法使いになれ……私は今、とんでもない話をされてるのかもしれない。

信じる信じないの話は、今起きてることを見れば吹き飛んでしまう。問題はそこじゃない。


「私が、魔法少女……」

テレビアニメでは、かわいい女の子が魔法の力で強くなるのをよく見ていたけれど、
それが私となると、どうも実感がわかない、というか、私でいいのかな?


「友達を助けたいっていう、優しくて強い思い!ピッタリよ!」

「星川さんを、助けたい……」


――さっきも思ったじゃないか。そうして、あの男の人に立ち向かおうとして……
魔法少女になったら、今度こそ……!


「なるならなるで早くしろ!定時で上がりたいんだよ!」

サラリーマンの男の人が、大声で口をはさんでくる。
定時で帰るって、ほんとに働いてる人みたい。

…さっきから一言もセリフがない!



「言ったわね?後悔しないでよ!」

妖精さんは、えらく強気だった。


「ふう……」

そして私は、魔法少女になることを決めた……そしたら、タブルンの使い方とかが自然と、
頭の中に入ってくる……。


「―――マジカル・チェンジ!」

23:ましろ◆r. 書き直し:2018/03/15(木) 19:27

「タブルンは、魔法が使えて戦える女の子に変身するためのアイテム!あなたなら、きっと使えるわ!」

「は、はあ……」

魔法使いになれ……私は今、とんでもない話をされてるのかもしれない。

信じる信じないの話は、今起きてることを見れば吹き飛んでしまう。問題はそこじゃない。


「私が、魔法少女……」

テレビアニメでは、かわいい女の子が魔法の力で強くなるのをよく見ていたけれど、
それが私となると、どうも実感がわかない、というか、私でいいのかな?


「友達を助けたいっていう、優しくて強い思い!ピッタリよ!」

「星川さんを、助けたい……」


――さっきも思ったじゃないか。そうして、あの男の人に立ち向かおうとして……
魔法少女になったら、今度こそ……!


「なるならなるで早くしろ!定時で上がりたいんだよ!」

サラリーマンの男の人が、大声で口をはさんでくる。
定時で帰るって、ほんとに働いてる人みたい。

…さっきから一言もセリフがない!



「言ったわね?後悔しないでよ!」

妖精さんは、えらく強気だった。


「ふう……」

そして私は、魔法少女になることを決めた……ん?
いざ手に取ってみたけどタブルンの操作って、どうしたらいいの?


こういうものは、自然と頭の中に入ってくるものと思っていたけど……

「……」

何も浮かんでこない。ここまできてどうしよう。


「ど、どうしたの!?」

様子がおかしいのを心配したのか、妖精さんが話しかけてきた。

「変身の仕方……わかんないよ」

「あっ」

うっかりしてたみたいな顔をした妖精さんは、気を取り直すように咳をして話しだした。


「魔法少女らしく、言葉が必要よ。その言葉は―――」


「……わかった!」

もう一度、私はタブルンを掲げて、言葉を叫ぶ……!


「マジカル・チェンジ!」

24:のん◆Qg:2018/03/15(木) 21:40

勝手ながら、拝読いたしました。
難しい言葉があまりなく、簡潔な文章で情景がすぐに頭に浮かび読みやすいです。
次の更新が楽しみになりました。応援します。

25:ましろ◆r.:2018/03/16(金) 00:54

「ここは……」

呪文を唱えたとたん、私の周りを不思議な光が包んでいた。


「たーぶーるん!」

「えっ!?」

光の中にいたのは、私と……変身アイテムらしいタブルンだった。
そしてまた……喋っている。画面には、タブルンの顔っぽいものが映っていた。

妖精さんが喋ってるから、もう何でもありなのかな……?


「るーん!」

画面には、笑顔のタブルンと、クローゼットのような絵が映っている。


「これ……魔法少女のお洋服?選べばいいの?」

「るん!」

ご機嫌そうなタブルンは、押して押してと言ってるかのように見える。


「えと……この服でいいのかな?」

私は、クローゼットの中からふりふりとしたピンク色のドレスを選んだ。


「たーぶるんるんるん!」

タブルンのかわいらしい声が聞こえると同時に、自分の服や足に向かって光が飛んでくる……。


「わぁ……」

暖かいその光は、さっき選んだドレスに変わっていって、私の身体を包んでいく――。

26:ましろ◆r.:2018/03/18(日) 20:25

定時で上がりたかった。さっさと任務を終えて帰りたかった。

魔法少女だろうが何だろうが、子供相手なら負けるはずなかった。

だが、今俺は猛烈に、後悔している。


「な、なんだ……」

捕まえた子供の友達だと言う少女は、妖精から貰ったアイテムを使って、光に包まれた。

「お前、何をしたんだ……!」

「あなたがなれって言ったんじゃないの!」

そうだ、俺は言った。「なるならなるで早くしろ」と……。

だが俺の言葉は、とんでもない力を生み出してしまったらしい。


「変身が、終わるわ……!」

「なにっ!?」


「……っ!」


光は小さくなり、四方に散っていく。そして、その中に居たはずの少女は――――



「……これ、私なの……?」

27:ましろ◆r.:2018/03/18(日) 22:45

目を開けると、元の世界に戻ってきているようだった。


「すごい!ホントに、魔法少女になっちゃった……!」

妖精さんが、キラキラした目で私を見ている。


「これ、私なの……?」

腕とか足を見ると、さっきタブルンで選んだ格好に変わっている。
ふりふりとしたピンクのドレス。ところどころに花飾りがついているのが可愛らしい。

「魔法少女……マジカルガールってとこかしら?」

「マジカル、ガール……」

恰好だけじゃない。身体の奥から、力がわいてくる。ほんとに、魔法みたいに……。
これが、魔法少女の力なんだ……!


「ああああ!定時で上がれないじゃないかぁ!」

サラリーマンの男の人は、私を見るなりすごく焦った感じになって、飛びかかってきた。
私にこぶしを向けて……殴られる?

「防いで!」

「え、ふせぐって……」

妖精さんに言われて、私は思わず両手でガードをする――――

28:ゆいゆい◆YE:2018/03/25(日) 06:58

凄いよ!ましろ!これからも必ず見る!面白い!

29:ましろ◆r.:2018/03/25(日) 10:07

――ガツンと、重い音が響く。

相手の攻撃が当たったのだろうと思った。私の腕にも、重い衝撃が伝わってくる。
……だけど、何か違和感を感じた。


「いたく……ない?」

すごく重い音の割に、痛みがない。

そして、もう一つ。

目の前が真っ暗で、何も見えない。
……思わず、目をつむってしまったからだろう。

だから、ゆっくりと目を開けてみた……。


「――なんだと……!?」

最初に写ったのは、サラリーマンの男の人が、驚いている顔だった。


「えっ……?」

私も驚いた。
相手のこぶしが、交差させた腕の中でがっちりと固められているからだ。


「ぐっ、ぐうううう……!」


交差させている腕には、不思議と力が入る。相手が引っ張ろうとしても、全く動かない。
動かないのはわかるけど……この状態から、どうしたらいいんだろう?


「防いでるだけじゃだめ!攻撃して!」

「わ、わかってるけど!」

相手の腕を固めれるから、手は使えない。だったら、使える場所は……!


「……えいっ!!」

私は軽くジャンプすると、男の人の顔めがけて思いっきり頭を縦に振った。


「がっ!」

顔……の、鼻先に当たったらしい。
男の人はよろけたけど、私が掴んでいるから倒れることもできないみたい。


「えっと、次は……」

よろけているから、腕を外すスキができた。


「はぁっ!!」

つかんでいた腕をほどくと、私はすぐさま、相手のおなかに自分のグーを叩き込む。



「のわぁぁぁっ!」

痛々しい悲鳴を上げながら、男の人は遠くのほうまで吹っ飛んだ。
……スーツだったけど、傷んだりしないのかな?

30:くろねこ:2018/03/25(日) 11:01

面白い!続き楽しみにしてます!

31:Moc◆AIIQ2:2018/03/25(日) 16:26

続きが気になる展開が続き、自然とワクワクさせられました!これからも楽しみにしています!

32:ツウィ:2018/03/25(日) 18:09

すごい!ましろはそういう才能ある!面白い!

33:ましろ◆r.:2018/03/27(火) 08:59

「……これ、私がやったの?」

男の人は、おなかを抱えて苦しんでいる。
私は、これを自分がやったということが、少し信じられなかった。


「そうよ。一応……、魔法少女の力だけどね」

「それでも、すごいよ……」

攻撃をふせいだり、頭突きしたり……
普段の私なら、考えられないような力だ。


「さて、とどめの一発よ。タブルン、お願い!」

「るんー!」

妖精さんの合図とともに、私のポケットの中からタブルンが出てきた。
ずっとこの中にいたの……?


「タブルンのクローゼットに、魔法のアイテムが入ってるの。探してみて」

私は言われたとおりに、タブルンを操作してクローゼットを調べてみる。


「ええと……これ?」

クローゼットの中に、それっぽいものを見つけた。これは……魔法のステッキ?


「るーん!」

タブルンの声とともに、それは私の手元に現れた。
重過ぎなくて持ちやすいステッキ……魔法少女って感じのアイテムだ。先っぽには、花みたいな飾りがついている。


「それで、あいつごとお友達の玉を浄化しちゃって!」

「じょうか……あ、うん!」


星川さんを、ようやく助けることができるんだ……そう思いながら私は、
いまだにしゃがみこんでいる男の人に、ステッキを向けた。





「くっ……特注のスーツが……」


スーツを気にしている場合ではない。このままでは任務失敗だ。
せめて、この玉を持って帰るくらいはしたい。

だが、あの少女の攻撃は、見た目以上に強力だった。
大の大人が起き上がれないレベルとは……。

「くそ……」

しゃがみ込みつつ、俺は目線を少女に戻す。


「……っ!?」

するとどうだろう……少女は俺に向けて、杖のようなものを向けている。

直感した。

あれを食らったら、仕事どころではない――

34:ましろ◆r.:2018/03/28(水) 08:43

「いい?呪文は、今教えた通りよ」

「うんっ……!」

妖精さんとうなずき合った私は、自分の中に流れる力をステッキに集中させる。


「ふぅっ……いくよ!」

ステッキの先についた花は、その力を解き放つように、ぱあっと光りだして……


「解き放て、魔法の花!……フローラル、マジック!」

私が呪文を叫ぶと同時に花が開いて、そこからぶわぁーっと、ピンク色のビームが発射された。



「くっ、これじゃどうしようも……!退くしかない!」

「あ……!」

男の人は、出会った時とは全然違う焦った顔をしていた。そして、ビームが当たる直前……
星川さんが入った玉を置いて、消えてしまった。


ビームは、玉だけに当たった。
そして、悪いものが消えるみたいに玉は消えていき……


「助けられた……の?」

ビームも終わったころ、そこには星川さんが、気持ちよさそうな顔をして眠っていた……。

35:ましろ◆r.:2018/03/30(金) 07:26

「早く、起こしてあげなきゃ……あ」

「ん? どうかした?」


星川さんを起こそうと駆け寄ろうとしたとき、私はすっごく大事なことに気づいてしまった。



「このかっこう、元に戻らないの?驚かれちゃうよ……」

こんな格好だから、私だとはわからないはず。
でも、それを寝起きの女の子に見せるのはどうかと思う。


「あ、それもそうね。戻りたいって思うだけで、元の姿に戻れるわ」

「そうなの……? 意外とかんたんだったね……」


私は、言われた通り……思ってみた。


「……もどれ!」

思わず口に出てしまった。
直後、魔法少女の服は、ピンク色の光に包まれてぱぁっと消えていく……。



「も、もどった……」

上も下も、さっきまで着ていた洋服に戻っていた。
これで、大丈夫。



「星川さん、起きて!」

私はとりあえず、名前を呼びながら体をゆする。


「ん……あさつゆさん……?」

「うん!朝露ひなのだよ!」


何事もなかったかのように、星川さんは寝起きな顔をしていた。


「わたし……どうしてこんなところに?」

さっきの人に襲われたこと、覚えていないのだろうか。
なんて説明をしたら……。


「あれ、うさぎさん……?」

「えっ――――」


私のすぐ後ろ……妖精さんがいる。
それが、見つかってしまった。


なんでそっちは隠れてないの……!?

36:スミレ◆aw:2018/04/01(日) 14:29

どうしよう。妖精さんが見つかってしまった。
よくよく見たらウサギじゃないし、星川さんにもバレちゃう!


「わぁ、かわいい……」

しかし星川さんは、普通にペットを見るような目で妖精さんを見つめていた。


「ワタシ、うさぎじゃないわ」

あっ


「え、うさぎさんが……喋った?」

「だから、ワタシはうさぎじゃないわ。妖精よ」

しかしのしかし。私の思いとは逆に、妖精さんはぺらぺらと、星川さんに話しかけている。


「ようせい……?」

星川さんは、いきなりこんな話をされたからなのか困った顔をしていた。


……一番困ってるのは、私だった。これ、どう説明すればいいんだろう。


「そこにいるひなって子がね、あなたを助けてくれたのよ」

「ちょっ……!」

な、なんでそこまで言われるの!?
魔法少女の話までしなきゃいけなくなる……

「朝露さんが……どういうこと?あと……妖精って……」

そこ、聞き流してくれるはずないよね。


「あのね、星川さん。ここまでに色々と事情があってね。それでね……」

ああもう、どう説明したらいいか全く分からない。



「……魔法少女?朝露さんが?」

「う、うん……」


結局、一から十まで全部話すことになってしまった。
いきなり、正体がバレたのだ。


「こうなる前のこと、何も思い出せない。でも……怖そうな人から、私を助けてくれたんだよね?」

「そう!カッコよかったわ!とっても!」

妖精さん、そんなに言ったら、恥ずかしすぎるっ!


「……あのね、星川さん。これ、内緒にしててほしいの」

「えっ?」

周りの人に知られたら恥ずかしいとか、大騒ぎになるとか、まあ色々と。


「……わかった。助けてくれたんだもん。それに……」

「それに?」

星川さんは、一息おいて続けた。


「……ともだち、だから」

なんだか恥ずかしそうだったけど、その言葉はしっかりと聞こえた。


「星川さん……ありがとう!」

ふう……これで、一安心?

37:スミレ◆aw:2018/04/03(火) 19:19

その後私達は、先程別れた道まで戻ってきた。

「ちょっと、遅くなっちゃったかな」

夕日が、ちょこっと顔をのぞかせている。5時前だろうか?


「朝露さん、……またね」

「うん!」

お互いに手を振って、今度こそ私達は別れた。
星川さん、また変なことに巻き込まれないと良いけど……



「また、あなたが変身すればいいじゃない」

表情で、考えてることを読まれた……!?
妖精さんは他人事みたいに話すけど、もうあんなのはこりごりだ。


「あなたねぇ……はっ!」

自分も家に帰ろう。そう思ったとき、一つの重大な問題が浮かんできた。


「あなたを、お母さんやお父さんに見せるわけにはっ……」

ペットを飼っちゃいけないとかは、ない。だけど、この子は犬でも猫でも、うさぎでもない。
妖精拾ってきたーなんて、言えない。

じゃあ、どうしようか。


「も、もう人前で喋りだすのは、なしだからね!」

「わかってるわよ。安心して」

「ホントかなぁ」


どの口が言うかと思ったけど、今は信じるしかない。
家にたどり着くまでの間……どうやって説明しようかと、私は考え続けていた――

38:スミレ◆aw:2018/04/06(金) 21:01

「ママ、ただいま!」

「おかえり、ひな。遅かったわね、どうしたの?」

「あ、それはね……」


その後普通に帰った私は、魔法少女のことは隠しながらも、星川さんという友だちができて、一緒に遊んで帰ったことを話した。……ちょっと嘘が混ざってるけど、良いよね?


「はずかしがりやだけど、優しい子なのね。ひな、仲良くしなさいよ」

「うん!わかってるよ、ママ」


玄関で会話をしたあと、私は自分の部屋へ直行した。
チラッと靴置きを見たけど、パパの靴はなかった。まだ、帰ってないみたい。




「……よし、出してあげるからね」

私しかいない、窓もしまって風も吹かない自分の部屋。

入ってすぐ、私はランドセルを床において、鍵を開けた……。



「ぶはぁっ!ワタシ、死ぬかと思ったわ……」


ぷっちんという言葉にしにくい音とともに、ランドセルに入っていた妖精さんが飛び出してきた!



「ごめんごめん」

「それで済んだら魔法少女はいらないのよ……」

軽い言葉で返事をしたけど、妖精さんの方は暑そうだった。
そりゃ、教科書も入ったランドセルに押し込まれてるもんね……。


「妖精さん、色々と教えてほしいよ……」



今日、妖精さん……スミレと出会ってから、変な人が現れたり自分が魔法少女になったりと、
いろんな事があった。

聞きたいことはたくさんあるけど、小学校三年生の私にはそれを整理するのは難しい。



「わかったわ。ああ、そうそう……」

「ん?」

「妖精さんじゃなくて、スミレでいいわよ」

39:スミレ◆aw:2018/04/08(日) 21:38

「それで、何から教えてほしいの?」

妖精さん……スミレは、あぐらをかくみたいに座っていて、すごく人間っぽかった。


「えっと……」

何から聞こう?たくさんあるなぁ……。


「あなたは、どこから来たの?」

とりあえず、一番簡単そうな質問をしてみた。
少なくとも、地球じゃあないと思う。


「……妖精の王国よ!」

「ようせいの、おうこく?」

ババーンという音が聞こえてきそうなくらい、スミレはドヤ顔で言った。

妖精の王国……凄く、ストレートっていうの?わかりやすい名前……。


「この世界の反対側にある、とてもキレイでステキで妖精がいっぱいいる場所なのよ」

「そうなんだ」


他にも、スミレみたいなのがいっぱいいるんだ……
そんな場所は、とてもいいところなんだろうなと私は思った。

「それで、何で人間の世界に来たの?」

「あ、さっきも言ってたわねその質問」

「そういえば――」


私とスミレが会ってすぐ、似たような質問をした。なんだったかな……

「なんで、埋まってたの?って聞いたよね……」

色々ありすぎて、忘れかけていたこと。
スミレは不思議な事に、頭から埋まるというおかしな状態だった。


「その質問、ちょうどいいわ」

「え?」

スミレは、コホンと小さく咳をして続けた。

「その質問が、今日起きたこと全てにつながることよ」

「本当!?」


今日起きた、不思議な出来事……。全部、わかるんだね!


「……長くなるわよ?」

40:スミレ◆aw:2018/04/09(月) 06:14

長くなる。そう言われて私は、「うん」とうなずいた。

長い話でも、謎が解けるなら……と。



「妖精の王国は、いつも平和な国だったわ……」

「うんうん」

話しているスミレの顔は、なんだか暗かった。


「ある時、王国に……大きな敵が現れたの」

「てき?」


「敵は、ディスピアーズと名乗ったわ。そして、王国は攻撃を受けた……」

「でぃ、ディスピアーズ……それで、どうなったの!?」


私は、とてもスケールが大きい話に、興味しんしんで耳を傾けていた。
だけどその気持ちは、次のスミレの一言でくずれる事になる……。


「ワタシ以外の妖精は、みんな捕まったわ」

「……ええ!?」


こんなこと、話させたらいけなかったような気がした。自分の友だちがみんな、捕まってしまうなんて……。
私は驚いたと同時に、少し申し訳ない気持ちになった。


「ワタシは、タブルンを持って妖精の王国を離れたわ。
人間の女の子に、この世界を救うよう頼めと言われて」

「それで、人間の世界に来たんだ……」


「でも、それが敵にバレた」

「えっ?」


「さっきのあの男……あいつに追われたの」

あの男……スミレの話から思い浮かぶのは、星川さんをあんなことにしたサラリーマンの男の人だけだった。


「それで、逃げながら人間界に降りたときに……墜ちた」

「あ――――」

落ちた……それで、思い出した。
朝、私に向かって落ちてきたのは……。

「……その瞬間、私見てたかも」

「そうなの!?」


今朝、目の前に迫ってきてギリギリ私を横切ったことを話した。

「なら、気づいたわよね?ワタシがいたこと」

「それは……」

落ちたことすらわからなくて、気づかなかったことも話した。


「ああ、それならしょうがないわね……」

なんかあきれたような顔をしてたけど……きのせいきのせい。


「で、あなたを魔法少女にしたは良いけど、これものすごく危ないわよ?」

「う、うん……」

さっきの男の人も、魔法少女になってなかったらすごく危ない人だった。
私も、星川さんと同じ様になっていたかもしれない。

そう思うと、少し怖い。

「ディスピアーズのあいつが人間界に来てやっていることは、人間の希望を抜き取ることよ」

「きぼうを……」

さっきも言っていた。明日への希望が、邪魔だと……。


「ホシカワアマノって言ったかしら?あの子みたいな被害者が、また出てくる可能性もある。
阻止できるのは、魔法少女だけ。でも……強制はしないわ」


「……つまり、魔法少女をやめることも出来るの?」

「ええ。ワタシは代わりの女の子を見つけてみせる。あなたは、普通の生活のままでも問題ないの!」


魔法少女じゃない、普通の生活……でも、私は見てしまった。希望を抜かれた人がどうなるかを。
代わりを見つけられなかったら、人間の世界も大変なことになってしまう。


「スミレ……私、やる。魔法少女を続ける!」

「良いのね?」

私はまた、「うん」とうなずいた。

「悪い奴らから、みんなを守れるなら……私は頑張る!」

41:スミレ◆aw:2018/04/09(月) 06:27

「……じゃあ、今から正式にお願いね。マジカルガール、ひな!」

「うん!」

マジカルガール……そう呼ばれて、悪い気はしなかった。

「じゃあこれ、さっきのタブルン。あなたのものよ」

そう言うとスミレは、私の手にタブルンを握らせた。


「わあ……」

タブルンにも顔があって、しゃべるのは知っているけど……夜の時間は、
気持ちよさそうに眠っている。いいなぁ


「時が来たら、王国を取り戻すために戦ってもらうと思う」

「王国を……」

また、スケールの大きい話。
そしてそれは、私に与えられた役目。

「私、出来るのかなぁ」

そんな大きなことを抱えるには、まだ私の心は子供だった。


「大丈夫。魔法少女になるのは、あなただけじゃないから」

「えっ?」

スミレはいつのまにか、両手にタブルンを持っていた。
青と黄色……私のピンク色とは違うものだ。


「あと二人よ。魔法少女になれるのは」

「二人もいるの!?」

二人。そう聞いて、さっきの不安が収まってきた。
三人ならなんとか……と。

「でもまだ、見つけてないの」

「そんなぁ!」

一気に落とされた気分。結局一人なの……?


「安心して。タブルンには、魔法少女にふさわしい女の子を見つける機能が付いてるから」

「本当!?」


こうして私は、魔法少女として戦うのと、魔法少女探しの2つを頼まれた……。

あと二人、そもそも私の周りにいるのかなぁ?

42:スミレ◆aw:2018/04/11(水) 05:19

「ひな、ごはんよー!降りてらっしゃい!」


下の階から、ママが私を呼ぶ声が聞こえてきた。


「すぐ行くねー!」

私も、大きな声で返事をした。
そっか、もうご飯の時間か……。

窓の外は、すっかり暗くなっている。
こんな時間になるまで話してたんだね。



「あのー……ひな?」

「ん?」

自分の部屋から出ようとすると、スミレに呼び止められた。


「今から、夕食なのよね?」

「うん」

何か言いたそうだけど、遠慮してるようにも見える。
どうしたのかな?


「実は……ワタシもおなかが空いてるの!」

「あ、そっか……」

人間の世界に来て、何時間もああして埋まったままだったもんね……。


「スミレ、人間のごはんは食べれるの?」

「ええ。向こうでも、食べてるものは人間とほぼ同じよ」

「そうなんだ……」

ほぼ同じ……何を食べてるのか気になって、さらに妖精の世界に興味がわいてくる。


「……あ、そうだ。いいものあった!」

私は、ごはんを食べると同時にスミレに、「いいもの」を取ってくることにした。

43:スミレ◆aw:2018/04/19(木) 19:48

「おう、ひな。お帰り」


リビングに降りると、パパが帰ってきていた。

「ただいま!パパも、お帰りなさい!」


私が返事をすると、パパはにこっとした笑顔を返してくれた。


「よし。ひなもパパもそろったことだし、ご飯にしましょうか」

「わーい!」


ごはんをよそったり、お皿を並べたりと、
家の中では一番楽しい時間だ。こうしてる間は、いやなことも忘れることができる……


「パパ、今日学校でね……」

初めてできた、女の子の友達の話をした。


「そうか、転校初日で友達ができたのか!大事にするんだぞ」

「うん!」

……色々話しながら、ご飯の時間は過ぎていく。


「……ごちそうさま!」

「よく食べたわねー。お皿、流しに置いといてね」


ママに言われて私は、流し台に食べ終わった後のお皿を置いて行った。
……そして、ここでやることはもう一つ。


「えっと……あった!」

台所といえば、食べ物がたくさん置いてある。
私の思った通り、お菓子の買い置きがいっぱいあった。


「ひとつ、持っていこう……」

とりあえず私は、一袋ずつになったポテトチップのひとつをちぎって、ママたちに見えないように隠し持つ。

「わたし、部屋に戻るね!」

「あら、勉強?」


「そんなとこ!」

本当のことは隠しながら、私は自分の部屋に帰るのだった。

44:スミレ◆aw:2018/04/19(木) 20:08

「スミレ!持ってきたよ!」

「な、なにを?」


私は部屋に戻るなり、お腹をすかせているスミレのため、さっき持ってきたお菓子をプレゼントした。

「え、いいの!食べていいの!?」

「うん。お腹空いてるんだよね?」

私がほほえむと、スミレは感激したようにお菓子の袋を開けた。
……開けられるんだ。


「こ、これはポテトチップというやつね……ん、おいしい!」

びりびりと袋を破ったスミレは、顔を袋に突っ込んで中身を食べている。


「ああ……」

その食べっぷりに、私は出す言葉がなかった。


「ふう……美味しかったわ!」

からだが小さいからか、食べ終わるのに少し時間がかかっていた。
でも、袋の中身はすっかりからっぽ。


「おいし…か……ぐー」

「えー!?」

スミレは、そのまま目を閉じてしまう。
食べ終わってすぐに、眠ってしまったみたいだ。


「まだ、聞いてない話もあったんだけどなぁ。私も寝ちゃおう……」

スミレを私のベッドに寝かせて、私も寝る準備をすることにした。


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