この戦いは、誰のために?

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1:アーリア◆Z.:2018/03/18(日) 20:11




「お、お前ら……全員魔王の手先だったのかよ! 」

 ここは『魔王領』にある、都市『ラバレン』である。教会より魔王討伐の使命を与えられた勇者は仲間たちと共に、度重なる困難に立ち向かいやっとの思いでここまでやってきた。ところが、ここで勇者は絶望することになる。勇者が仲間だと思っていたパーティーメンバーは皆、魔王の手先だったのだ。
 しかもその1人には、勇者の妹も含まれていた。

「ディ、ディアナ、まさかお前も……なのか? 」

 勇者は恐る恐る訊いた。

「そうよ。私は魔王様に忠誠を誓っているの。決してお金のために、貴方を捕らえたわけではないわ」
「ど、どうして……ま、魔王に忠誠って……信じられない」
「兄さんには悪いけれど、これからは牢獄での生活になるわね」

 こうして、勇者は魔王の手先によって捕らえられ、牢獄に幽閉され、心を病んだ。彼の心が晴れるのは幾分かの月日が経った後、『ある男』が彼に接触する時を待たなければならない。


序 終わり。

2:アーリア◆Z.:2018/03/18(日) 20:24

(1)


 アーリア王国の王都カメムーシにある大聖堂で、勇者を選任するための儀式が行われていた。と言っても簡易的かつ極めて短時間で終わる儀式なのだが。

「ユミよ、貴女を勇者として選任する」

 大司教がそう宣言すると、聖剣? のようなものを15歳ほどの外見の少女に授けた。と言うことは、この少女がユミなのだろう。

「勇者ユミ。貴女はこれより、魔王討伐の任務を与える。今から紹介する者たちともに、この任務を何としても達成するのだ」

 半年前にも勇者が選任されたそうなのだが、噂によるとその勇者が集めた旅の同行者が皆、魔王の手先だったとされている。これにより教会が勇者の旅に同行する者についても決定するという方針になったそうだ。そして、何故か私もその1人に選ばれてしまったのである。

「では、これより3名を紹介する」

 大司教はそう言うと、続けてダヴィド、マリーア、カルロ、と3人の名前を読み上げた。カルロというのが私の名前である。そして私は他の2人と同様に勇者の目の前へと移動した。

「以上が、貴女を支える者たちだ。さて、以上で儀式を終わりとする」

 大司教がそう宣言し、儀式が終わると聴衆や神父及びシスターも大聖堂の間を後にする。大司教も旅に必要な金銭が入った袋をユミに渡して、ここを後にした。私たち4人を残して誰も居なくなると、ユミが自己紹介を始めた。

「あの! 初めまして、ユミと言います。これからよろしくお願いします」

ユミが自己紹介を終え、今度はガッチリとした体形の男性が口を開いた。

「俺はダヴィドだ。王宮兵士長を務めていたが、今回、国王陛下の命により勇者ユミに同行することになった。よろしくたのむ」

 続いて、如何にも魔法使いのような恰好をした女性が自己紹介を始めた。

「私はマリーアと申します。攻撃魔法士として様々な仕事を請け負っていました。よろしくお願いします」

 攻撃魔法士というのは、攻撃やその支援を専門とする魔法士のことである。そして、魔法士には回復を専門とする回復魔法士というのも存在する。尚、両魔法士はそれぞれの『魔法士協会』が課す試験に合格した上で、登録することで各々の魔法士としての資格を得ることができる。

「私はカルロという。攻撃、回復と両方の魔法を一応扱うことはできる。ただ、どちらとも資格は有していないから、そこは注意してくれ。まあ、これからよろしく頼むよ」

 私も自己紹介を済ませて、これで一応は4人とも自己紹介が済んだ。
 そしてユミの提案で一先ず、これからの旅に必要な武器・防具などの道具を揃えることにした。

3:アーリア◆Z.:2018/03/18(日) 20:29

王国名と王都の名前が、ふざけたままだ。
後で適当な名前を付けて訂正する。

4:アーリア◆Z.:2018/03/18(日) 23:06

(2)


 大聖堂を後にした私たちは、旅道具が数多く揃えられている百貨店へとやって来た。この店は百貨店であることから、王都カメムーシの中でも有名な店である。

「じゃあ、金貨100枚ずつ預けておくから、各自で必要なものを揃えてね」

 ユミはそう言って金貨が入った袋を取り出すと、私を含め3人に金貨を100枚ずつを、現実の引渡の方法によって占有を移転させた。そして、私たちは約一時間ほどを自由時間とし、一旦解散することにした。
 私はこの百貨店には特段の用はないので、店を出て別の店へと移動することにした。何を求めているかと言えば、傭兵だ。そして何故、直接私の指示に従う『手足としての頭数』が欲しいからである。即ち私が今向かっている店は、傭兵団の雇い入れを斡旋している酒場なのである。

「いらっしゃい! 」

 私が酒場に入ると、元気な店主が出迎えた。

「っと、何だよカルロじゃないか……ってことは、また傭兵団の雇い入れということかな? 」
「そうだ。金貨1万枚の支払いが約されている手形3枚を渡すから、一応信用できる傭兵団に掛け合ってくれ。もちろん、金貨3枚相当だから、危険手当等も込みだと伝えてくれよ」

 実は、私はこの酒場の常連客であるのだ。何度も傭兵団を雇い入れて『色々』と活動しているのだ。危ない橋を何度も渡ったこともある。

「あんたのことだから、どうせ命がいくつあっても足りないことをやらせるだろうな? で、いつも通りの説明を傭兵団にすりゃ良いんだろ? 」
「ああ。いつも通り頼むぜ」
「で、この手形は……グランシス商会が振り出したやつか。金銭的に信用はできる商会だから支払いはこれで大丈夫だろう」

 そして、わたしは適当に飲み物を注文して待つことにした。店主は飲み物を出してから、直ぐに別室へと移動した。

5:アーリア◆Z.:2018/03/18(日) 23:32

(3)



 酒場で飲み物を飲みながら待つこと、およそ20分が経った。別室から戻ってきた店主が、如何にも傭兵というような恰好をした男を連れてやって来た。

「アンタが、カルロか。俺は20名の傭兵団を率いている団長だ。で、アンタさえ良ければ契約を締結したいどころだが……どうだ? 」
「そうですか。念のために確認しますが、命の危険が伴う可能性についてはご理解していただけましたかね? 」
「おう。元々、傭兵は金のために死にに行くようなもんだろ。金貨3万枚もくれるんだ。魔王領だって天界だってついて行ってやるぜ! 」

 よし、こいつの率いる傭兵団にしよう。

「わかりました。貴方の傭兵団にお任せすることにします」
「では、これからよろしくな」

 こうして、私は総勢20名からなる傭兵団を雇い入れた。その後は、とりあえずの行動方針を話し合い、私は百貨店へ戻ることにした。

6:アーリア◆Z.:2018/03/18(日) 23:54

(4)


 旅の準備を済ませた私たちは、一晩を王都カメムーシにある宿屋で過ごした後、王都を発った。目的地は、ただひらすら『魔王領』を目指せばいいのだが、ユミが「ロムソン村」へ行きたいと言うものだから、その村へ行くことになったのである。そして面倒なことに「ロムソン村」は、『魔王領』のある方向とは全くの別方向であった。

「ロムソン村は、魔物に度々襲撃を受けているらしいの」
「なるほどな。王宮兵士長を務めている者して、自国の村の惨状を知って無視はできん! 」

 ダヴィドは王宮兵士長があるが故に、ユミの提案に賛成し、マリーアはどっちつかずの態度であり、結局、反対したのは私のみであった。昨日、大金を叩いて雇い入れた傭兵団を後方から付けさせてあるため、予定外の行動は控えてほしいのである。万が一にも傭兵団が私を見失ってしまったら面倒だからだ。

「ロムソン村までは、ここから半日ほどかかるそうですね」

 マリーアが道の端に立ててあった標識を見てそう言った。

「半日もかかるのか。実のところ王都に居ながらロムソン村へは一度も行ったことがないからな。まさかこんなにかかるとは知らなかった」

 と、ダヴィドが言う。ロムソン村の村人が近隣の町や王都カメムーシへ行くことがあっても、王都市民や他の町の住人がロムソン村へ行くことは滅多にないと聞いたことがある。そもそも、ロムソン村のみならず『村』となるとあまり外部の人間が行く機会が少ないのだ。人の往来が激しいのであれば、必然的にそこは『町』以上の規模に発展するところ、要は人の往来がほとんど無いがために『村』のままなのだ。
 しばらく進むと、次第に舗装されていない道になってきた。そして前方には獣だろうか?その獣らしき生物6匹が道の真ん中で屯していたのである。

「……あれは毒タヌキじゃないか! 」

 私は、その獣らしき生物の正体に気づきそう叫んだ。あれは決して、フレンドになれないケモノなのである。

7:アーリア◆Z.:2018/03/19(月) 00:22



王都名がそのまま、カメムーシになってるけど、少なくとも葉っぱ天国での投稿についてはこれで統一することにした。

8:アーリア◆Z.:2018/03/19(月) 21:07

(5)


 獣らしき生物の正体は、『毒タヌキ』と呼ばれる魔物であった。この『毒タヌキ』は魔物である以上当然に人を襲う。主に『噛付き』『引っ掻き』、そして人の気分を害するものとして『口から胃液を勢いよく吐き出す』という攻撃をしてくる。『毒タヌキ』の『毒』というのは、すなわち奴の胃液から名づけられたものであり、この胃液の匂いを嗅いだだけで徐々に眩暈に襲われて、最終的に気絶してしまうのである。

「あれが毒タヌキなのか。初めてお目にかかる」

 ダヴィドがそう言った。
 王宮兵士長でもあろう者が見たことがないというのは情けない……と、一瞬私は思った。しかし、本来『毒タヌキ』は森の奥地に生息しているので、こうして道中で出くわすことは滅多にない筈なのだ。

「カルロ殿は、毒タヌキと戦ったことがあるのか? 」
「何度かはある。だが、応戦した程度で倒したことはないぞ」

 胃液を吐き出されたら、こちらはそれだけで不利となる。一瞬でも蹴散らせて直ぐに逃げた方が良い。

「私は勇者よ! これから魔王を倒すためには経験が必要だよね」

 ユミはそう言って、剣を構えて『毒タヌキ』の群れへと突っ込んだのであった。

「ユミさん、止まって! 」

 マリーアは制止したものの、それは無意味に終わった。

9:アーリア◆Z.:2018/03/19(月) 23:41

(6)


「はあっ!!」

 ユミは、『毒タヌキ』の一匹に剣で斬りかかった。しかし多少は掠り傷を負わせたものの、『毒タヌキ』は素早い動きでよけて見せたのだ。それに続き、他の複数の『毒タヌキ』は爪を伸ばしてユミを目掛けて飛びかかってきたのである。

「くっ! 」

 ユミは咄嗟に左腕で攻撃を防いだものの、その結果当然なことだが左腕から出血しているのが見えた。
 
「何をしているんだ。ユミ、後ろへ下がれ、早くしろ! 」

 私は咄嗟に指示を出し、『毒タヌキ』を目掛けて中級火炎魔法を発動させた。これで、2匹は倒すことができたものの、まだ4匹が残っている。奴らは多少は知能があるのか、それぞれが、距離を置くようになった。纏まって行動していると魔法の餌食になるものと理解できたのだろう。

「ひっかき傷程度なら、初級回復魔法で何とかなるだろう」

 私はユミの左腕に手を当てて、初級回復魔法を発動させた。
 一方、『毒タヌキ』の相手をするのは、ダヴィドとマリーアの役目となった。2人はそれぞれ槍と魔法で交戦している。

「糞……また外したか」

 ダヴィドは槍で突こうとするのだが、素早くよけられてしまい、またマリーアも魔法攻撃をするが、『毒タヌキ』が動き回るものだから、中々命中をさせることができないでいた。

10:アーリア◆Z.:2018/03/21(水) 20:04

(7)



 『毒タヌキ』は攻撃さえ当たれば直ぐに倒すことができる。しかし、素早く動き回るため攻撃が中々当たらないこと、そして何より胃液による攻撃があるものだから、決して下級レベルの魔物ではなく一応は準上級レベルとされているのだ。

「ちっ、こうなったら! 」

 中々攻撃が当たらず、中々埒があかないのだろう。ダヴィドは、『毒タヌキ』へ目掛けて飛びついたのであった。すると、ダヴィドの体は思いっきり地面に叩きつけられるかのような勢いで着地した。

「よっし! これで逃げられないだろう」

 『毒タヌキ』の一匹が、ダヴィドの体に押しつぶされている。
 そして、ダヴィドは槍ではなく、サブで装備していたのであろう短剣でその『毒タヌキ』の喉ぼとけを突き刺した。
 これで、計3匹、すなわち半分の『毒タヌキ』を倒すことに成功した。
 そして、私の方もユミの治療を完了したところであった。

「ユミの治療も終わった。そろそろ逃げよう! 」

 私としては元々、『毒タヌキ』と積極的に戦うつもりは無かったので、そう言った。
 だが……。

「め、眩暈が、うう」

 とダヴィドが言いながら、倒れこんでしまったのである。よく見るとダヴィドの服は何かの液体で汚れていた。その汚れは赤色ではないので血液ではないことは確かだ。しかも、少し黄色っぽい。
 先程、ダヴィドが自分の体で押しつぶした時に、『毒タヌキ』が押しつぶされた衝撃で意図せず「又は」意図して攻撃のつもりで吐いたのだろう。で、胃液を吐き出したわけであるから、ダヴィドがそれにやられた、と考えるのが相当である。

「とりあえず、治療しないと! ユミとマリーアは毒タヌキからの攻撃を警戒してくれ」

 私はそう言って、息を我慢して(胃液対策……意味があるかは別)ダヴィドの元へと駆け寄る。他方、ユミとマリーアは臨戦態勢をとった。
 
「ん? 」

 とその時、後ろを見ると、3人の男がこちらへ向かって来ていることに気づいた。

11:アーリア◆Z.:2018/03/22(木) 22:11

(8)


「おい、大丈夫か! 」

 そう言って、男たちが駆けつけてきた。
 3人の男の内、1人は私が知っている人物であった。昨日、雇い入れをした傭兵団の団長だったかたである。と言うことは、残る2人も傭兵団の一員なのだろう。

「ロムソン村に用があってな、ちょうどここを通っていたらあんたらが、魔物と戦っている姿を発見したわけだ」

 と、団長が言った。あくまでも私とは他人のふりをしているが、これは私がピンチになったら他人のふりをしつつ何人かで駆けつけてきてほしいと、昨日取り決めていたからである。

「私らもロムソン村へ行こうとしてたら、毒タヌキに遭遇してしまってな……。1人、胃液にやられて気絶してしまったよ」

 と私は3人に説明した。
 
「そうか。なら後は俺たちに任せて、あんたらは急いで離れた場所まで逃げろ」
「すまない……そうさせてもらうよ」

 ユミとマリーアもこれに頷く。そして各自お礼を言って速やかにこの場を後にした。
 尚、ダヴィドはどうしたのかと言うと私が背負っているので、当然置いてきたなんてことはない。

12:アーリア◆Z.:2018/03/23(金) 19:21

(9)


 10分ほど歩き続けて、一休みを兼ねてダヴィドの治療をすることにした。私はダヴィドの体に手を当てて解毒魔法を発動する。

「これで、何とかなったはずだが……。眠い……な」

 先程から私は、時間が経つにつれて眠くなってきたのである。疲れのせいだろうか? それもあるかもしれないが、一番の原因は恐らくダヴィドの服に付着した『毒タヌキ』の胃液にやられたのだろう。
 
「カルロさん。大丈夫ですか! 」

 私が地面に座り込んでから、下を向いて俯いているとマリーアが心配したのか声をかけてきた。

「胃液にやられたのだと思う」

 私はそう言ってから、まだギリギリ気が保てている内に、自分に体に手を当てて解毒魔法を発動した。

「具合は、大丈夫ですか? 」
「解毒はしたから、その内、眠気も覚めるだろう」

 とはいえ、私は疲れているので眠気が覚めないかもしれないが。

「ところでユミの奴は……」

 私とマリーアがユミの方を見ると、何とユミは倒れていたのである。

「まさか、ユミさんも! 」

 恐らくユミも『毒タヌキ』の胃液が原因で倒れたのであろう。仕方がないので、ユミにも手を当てて解毒魔法を発動させた。そして、ユミの治療も済ませた後、念のためにマリーアにも解毒魔法による治療を行うことにした。

「まあ、ダヴィドはもろ胃液をかけられたから、直ぐに毒が回って一番早くに倒れたのかもしれないからな。本当に私のこの推測が正しいかはわからんが、マリーアもいつ症状に襲われるかわからないし、早いところ治療を済ませよう」
「ありがとうございます。カルロさんは本当に攻撃系の魔法と回復系の魔法の両方が使いこなせるんですね。すごいです」

 魔法を使える者は決して多くないために(一般的にはこのように理解されている)、攻撃系又は回復系のいずれかを一定以上、使えるのであれば魔法士の資格を有していなくても、それだけで評価されるらしい。また、その両方を一定以上使えるのであれば、王宮でそれなりの地位に就くこともできるとのことなのだ。だから、私も王宮に仕官しようかと考えた時期もあったが(実際に仕官できるかは別として)、特定の国に仕えたがために、今の自由な身を捨てる気にはなれないのだ。
 まあ、現在は勇者の同行者として教会から半ば強制的に選任させられてしまっているが。

「治療は終わったぞ」

 私はマリーアの治療も済ませた。
 しばらくして、ダヴィドとユミが目を覚ましたので、引き続き、ロムソン村へと向かうことにした。
 

13:アーリア◆Z.:2018/03/24(土) 20:30


(10)


 ロムソン村に到着したころには、夕方になっていた。
 私たちはとりあえず、宿屋を探すことにした。人の往来が殆どなくても、一応宿屋はあったので手続きを済ませて、各自、一部屋ずつ使うことにした。尚、魔物の襲撃の件については明日、村人から詳しく聞くことで意見が一致している。

 「今日は足手まといになってしまってごめんなさい。今度から軽率な行動は慎むね……じゃあおやすみ」

 ユミはそう言って、今いる一階の食堂から、二階にある部屋へと向かった。マリーアも、今日は早く休みたいとのことなので部屋へと向かい、残ったのは私とダヴィドの2人である。

「カルロ殿……。今日はすまなかった。もし解毒魔法による治療が為されていなかったらと、思うと恥ずかしい限りだ」
「困ったときはお互い様だろ」

 今日、私は何度も回復系の魔法(攻撃系の魔法も)を発動したが、これは回復魔法士(私は資格は有していないので回復役とでも言っておこうか)として当然の役割であって、それを果たしたまでである。
 それよりも、どうしても気になって仕方がないことをダヴィドに話すことにした。

「あの毒タヌキのことだが、本来は森の奥深くに居るはずなのに、道中で6匹とも遭遇したことが気になってね。もしかしたら……、魔王の配下による仕業かと考えてしまったりするんだ」

 こう考えてしまうのは、私が疑心暗鬼な性格をしているからだろう。実際のところ、本当にそうなのかは確証を得たわけではないからだ。

「それは考えすぎでは? 」
「どうだろうかね。ただ、魔王領出身者の中には『魔物使い』もいるわけだし、こういう者たちが毒タヌキを操っていたのではないかと……ね。仮に『魔物使い』の仕業であれば、その使役する魔物の体のどこかに刻印があるから、それがあるか否かで判るんだ」

 『魔物使い』は使役したい魔物に対して特殊な魔法を放ち、その体(魔物)に印を刻ませることによって自己が操る魔物を取得する。
 仮に素人がこの魔法を覚えて、使ったとしても大概は失敗するのだが、『魔物使い』が発動すれば、当然ながら技量もあるわけだから、それなりに成功するわけである。

「なるほど、では仮に今日遭遇した毒タヌキの体のどこかに刻印があれば、少なくとも人為的なものと推測することができるわけか」
「そういうことだ。まあ、ダヴィドの言うとおり、あくまで魔王領出身者による仕業という推測ができるわけで、本当に魔王の配下による仕業かまではわからないが」

 魔王領出身だからと言って、その出身者全員が魔王の配下、又は直接的な関わり合いは無くとも魔王に忠誠を誓っているというわけではない。

「とりあえずは、今日遭遇した毒タヌキ刻印があるか否かだけは確認したい」

 前回の勇者が嵌められたという噂もあるので、今はとにかく何事も最大限に警戒すべきだろう。とは言っても素性をあまり知らない傭兵団を雇い入れたり……(ああ、これは一応、信用できる酒場の主人の仲介によるから大丈夫か。いや、そもそもダヴィドもマリーアも勇者ユミも……。これ以上考えるのはやめよう)。
 まあ、とにかく毒タヌキの体を確認はして損はない。
「だから、私は今から例の遭遇現場まで向かうつもりだ。私が明日の朝までに戻ってこなければ、遭遇現場へ向かったことを2人にも伝えてくれ」

 私はそう言って、宿屋を出た。

「カルロ殿。1人で行くのは危険すぎる。だから自分も付いていこう」

 と、ダヴィドも外まで出てきた。

「いや、ダヴィドも疲れているだろうし、今日は休んでくれ。私は1人で旅をすることは、これまでも数多くあったから、危険を察知する能力はあるしな。大丈夫だよ」

 本音を言うと、道中で野宿をしているであろう傭兵団に頼みたいことがあるので(その時ばかりは他人のふりが出来ない)、その際に私が傭兵を雇入れたことがバレるのが嫌なのである。
 ダヴィドは特に追及することもなく、「では気をつけろよ」と言って宿屋へ戻った。これで何とか1人で向かうことができる。

14:アーリア◆Z.:2018/03/25(日) 22:02


(11)



 二時間ほどかけて、再び『毒タヌキ』と遭遇した現場に戻ってくると、傭兵団が野宿していた。

「まさか、ここで野宿しているとはね」

 私がそう言うと、団長が気づいてやって来た。

「お、あんたか。……で、ここまで何をしに戻って来たんだ? 」
「それなんだが、1つは毒タヌキの死骸があるなら、確認したいことがある。で、もう1つは、貴方たち傭兵団に頼みがあってね」

 とりあえず、まずは『毒タヌキ』の死骸についての話を進めた。しかし、団長の話によると全部焼却の上、埋葬してしまったので、刻印の確認は出来なかった。これは仕方ない、諦めよう。

「なら、もう1つの話を進めよう」
「頼みがあるとかの方か」

 私が傭兵団に何を頼みたいかと言うと、ロムソン村を襲撃する魔物の討伐である。

「私としては、とっとと『魔王領』まで行きたいのだが、昨日話したユミという勇者と、王宮兵士長のダヴィドが村の惨状を放置できないみたいでね」

 『魔王領』まで急ぎたいのは本当である。とは言っても、何も魔王を倒したいわけではなく、他に色々とやらなければならないことがあるのだ。つまり、私にとってはタイミング悪く、教会から勇者の同行者に選任されてしまったというわけである。唯一、幸いなのは、勇者の使命が魔王討伐であるが故に、目的地が『魔王領』方面ということだろうか。

「あんたからは大金を支払ってもらってるし、応じないことはない。だが、あんたに付いて行く頭数は何人か必要だろ?」
「それは……4〜5人ほど頼もう」

 ということで、話は纏まった。
 尚、傭兵団の面々には、なるべくユミ、マリーア、ダヴィドの3人には顔を見られないように、ロムソン村に来てもらうように念をおした。仮に傭兵団全員の顔を覚えられてしまっては、後々の偶然を装った救援の際の『他人のふり』に困難が生じるからである。

15:アーリア◆Z.:2018/03/26(月) 19:23

(12)

 
 翌日。
 
「と言うことで、傭兵団が魔物討伐の依頼を引き受けたみたいだし、私たちは早いところ魔王領へ向かおうと思うのだが」

 と、私は朝食を食べながら3人に提案した。

「それに、魔王領に入ったからと言って直ぐに帝都……あ、いや魔王城に到達するわけでもないし、戦闘経験を積む面での心配もないかと思うぞ」

 魔王領は決して狭いわけではない。少なくともここ、アーリア王国よりかは広い国土を有する。

「そうだね。魔物がいつ村を襲撃するのか判らないもんね。いつまでもここに居られるわけでもないし……」

 魔王討伐が勇者の使命であるわけだから、ユミもロムソン村に長居が出来ないことについては理解しているようだ。私は、てっきりユミが駄々をこねるかと思ったいたのである。
 しかし私が少しばかり感心していると、思わぬ人物から反対意見が出た。

「折角ロムソン村まで来たのですし、何もせずに帰るのはどうかと思います」

 そう言ったのはマリーアであった。まさか、彼女から反対意見がでるとは思っていなかったが、ダヴィドは私の意見に賛成するだろうし何とかなるだろう(たぶん)。

「時分はカルロ殿の言う通り、魔王領へ直ぐに向かった方が良いと考えている」

 よし。
 これで少なくとも私とダヴィドの2人が『とっとと行こう派』となる。
 まあ、先ほどダヴィドに対して賛成してもらうよう説得していたのだ。と言うのも『毒タヌキ』の体を調べたところ刻印があったと嘘をつき、『魔物使い』による仕業であるものと話をでっち上げたうえで、まだ経験の浅いユミがいると危ないと言って説得したのである。嘘も方便だ。
 さて、後はユミさえ説得すれば3対1に持ち込めると思っていたところ、

「ダヴィドさん! 貴方はそれでも王宮兵士長なのですか」

 と、ダヴィドに対してマリーアは言ったのである。しかも王宮兵士長のプライドを刺激するかのような物言いで、とても厄介なことになりそうだ。

「そ、それは……」

 案の定、ダヴィドは動揺しているようだ。仕方がない、私も何か言っておこう。

「マリーア。傭兵団が討伐する以上、問題はないはずだ。ここでわざわざ王宮兵士長云々と言うのもどうかと思うが? 」
「カルロさんって冷たい人なのですね」

 マリーアは直ぐに言葉を返した。私に対しても心を動揺させようと『冷たい人』などと言ったのだろうか? まあいいや。考えても無駄だ。

「これは周知のことだが、前に選任された勇者が嵌められたという噂がある以上、多少は冷酷な人間であると言われような対応をしようと、こればかりは仕方ないね」
「今、前の勇者の話は関係あります? まあ良いです。3人の判断に任せます」

 ようやく、マリーアは諦めてくれたようだ。
 その後ユミも説得に応じてくれたので、早速私たちはロムソン村を後にした。

16:アーリア◆Z.:2018/03/26(月) 19:27

「時分はカルロ殿の言う通り、魔王領へ直ぐに向かった方が良いと考えている」

「自分はカルロ殿の言う通り、魔王領へ直ぐに向かった方が良いと考えている」


以上の通りに帝政。

17:アーリア◆Z.:2018/03/27(火) 22:00

(13)


 ロムソン村付近の某所

「例の勇者の一行なのですが、村を早々と出てしまいました」

 そう報告してきたのは、俺の部下である。

「ロムソン村を魔物が襲撃するという噂が広まったためか、どこか傭兵団が討伐の依頼を受けたとかで来てしまったみたいです。恐らくですが、勇者一行はその傭兵団を信頼しして村を出たのでしょう」

 なるほど。部下の言う通り、勇者一行を誘き寄せようと度々ロムソン村を魔物に襲撃させたが、結果噂が広がり過ぎて余計な者たちまでもが来てしまったと見ることもできる。だが、たかが1つの村ごときに傭兵団が引き受けるような程の報酬を出した者がいるとして、さてそいつが何者なのかが俺は気になった。


「前回は八百長があったがために勇者は何とか魔王領まで辿り着くことはできた。しかし今回はそのような情報はない。そして、俺も魔王領に辿り着けないという方に大金を賭けている」
「だからこそ、勇者一行が魔王領に辿り着く前に拘束又は始末するってことですよね? 」
「そう言うことだ」

 今回は使える魔物が『毒タヌキ』の6匹しか居なかったがために、あっさりと対処されてしまった。しかも、ロムソン村に長居させて時間稼ぎをする方法も失敗したのである。
 しかし、勇者一行がロムソン村が魔物に襲撃されているという噂を聞き、放置できないと判断して村までわざわざやって来たのは事実だ。つまり、これからも『○○村が大変なことになった』と言った類の噂を広めて、誘き寄せることは可能ということだろう。
 俺は早速、次の策を練ることにした。

18:アーリア◆Z.:2018/03/28(水) 20:02

(14)


 ロムソン村を朝早く出発した私たちは、昼過ぎには王都カメムーシに到着することができた。そこで軽く昼食を済ませた後、早速、『魔王領』を目指して王都を発ったのであった。ここから、1日(12時間)かけて進んだところに、国境の町西ムーシがあるのだが今日はその途中にある馬車駅付随の宿屋で夜を明かす予定となった。
 そして、

「これで6匹目、だね! 」

 ユミがそう叫んだ。
 道中に出現する魔物をユミ自身で倒したのが、今のでちょうど6匹目なのだ。ロムソン村へ行く道中で出現した『毒タヌキ』に比べれば明らかに雑魚であるから、戦闘経験の浅いユミでも容易に倒すことが出来るのだ。
 勿論、ユミ以外のメンバー(私を含めて)も、各自、通行を妨害する魔物を倒している。

「カルロ殿は相変わらず、例の刻印を確認しているようだな」

 ダヴィドが、ユミとマリーアには聞こえないような小さな声で、そう言った。

「雑魚とはいえ仮に刻印があれば、その意図はともかくして何者かによる行為であることは判るからな」

 私も小声でそう答えた。
 肝心の刻印付きの魔物だが今のところ1匹も発見していない。しかも次第に確認作業が億劫になってきたのである。さらに、ユミとマリーアが刻印の確認行為を不審に思ったのか気にしているようだ。
 そして、私が刻印の確認行為を続けるか否か判断しようとしたその時、激しい頭痛が生じた。

 ―――――――― 気をつけろ。お前を暗殺しようと、奴らが動いたぞ。今日中にお前のもとへ来るだろう ――――――――
「うっ! 」

 それは脳へ直接刺激するかのように、聞こえた。より正しく言うなれば、頭の中にその言葉が響いたとするべきか。それはともかく、私は【気をつけろ。お前を暗殺しようと、奴らが動いたぞ。今日中にお前のもとへ来るだろう】と一文一句、覚えている。こんな経験は初めてであるがしかし、ユミ、ダヴィド、マリーアの3人には聞こえてない(頭の中に響ていない)ということを『知っている』。

19:アーリア◆Z.:2018/03/29(木) 20:14

(15)

 これは、想定よりも早く『奴ら』が動き出したということである。元々は『奴ら』を何とかしようとして『魔王領』へ急いでいたのであるが、まずは『奴ら』の内、今日中に来るらしい暗殺者への対処が先決だ。
 私はそればかりを考えていた。

「カルロさん、先ほどから何か悩んでいらっしゃるようですが……どうかしました? 」

 マリーアが心配したのか、そう声をかけてきた。周りを見るとユミやダヴィドも私の様子を窺っているのがわかった。皆、心配させてしまったようだ。
 
「カルロ殿。とても暗い表情をしながら一言も発せずに下を俯いていたが、何か深刻なことでもあったのだろうか? 」

 ダヴィドも声をかけてきた。
 そして、

「カルロ! 悩んでいるなら遠慮なく相談してよね」

 と、ユミも言う。
 まだ旅が始まってから3日目だというのに、どうもありがとうと私は心の中で礼を言った。
 だが、事が本当に深刻なものだから(私が暗殺される可能性)、この悩みを安易に口に出すべきではない。口に出してしまうと、3人を混乱に陥れることになってしまいかねないからだ。よって私だけで対処する必要がある。当然、傭兵団に協力してもらうつもりもない。
 さて、黙っているのも変であるからどのように誤魔化そうか?

「……あ……ううん……うっ! 」

 何も思い付かず、それしか声に出せなかった。とても情けない。

「カルロ……大丈夫? 」

 さらに心配させてしまったようだ。
 とはいえ、私は3人に気をつかっている場合ではない。

「問題はない! 悩むのことは趣味だ」

 自分でも何を言いたかったのか判らなかったが、3人はどう反応を返したら良いのか判断に困ったのだろうか、しばらく何も言ってはこなかった。
 だが私はこの間、対処法を模索することに専念できる。

20:アーリア◆Z.:2018/03/30(金) 18:43

(16)


 その後、馬車駅付随の宿屋に着いた私たちは早めに夕食を済ませた後、各自部屋で休むことにして今日は解散した。そして解散後、私は3人には気づかれないよう、馬車駅を発ったのである。目指す先は『人が一切来ないような所』だ。これから来るであろう暗殺者共をそこまで誘導し誰にも気づかれないように、こっそりと対処するつもりである。結局、思い付いた策はこれだった。
 さて、どのレベルの奴が来るのか……。場合によっては即死もあり得る。20分ほど歩くとちょうど良い森を見つけたので、その森へ入った。

……。

 森に入ってからさらに1時間が経った。どうやら、お待ちかねのお客さんがやって来たようである。10人前後で現れ、私を取り囲んだ。

「やっと見つけたぞ! 息子を返せ! ここでころしてやる」

 1人がそう叫んだ。その者は背中に白い翼が生えており、そして頭の上にはこのものが『天使』であることの最大の証明となる『天使の輪』がある。
 他の者も同じだ。

「そうか……。息子さんは死んでしまったのかね? なら、会わせてやるよ」

 私はそう言った。そして、

「私をころしたいようだがどうやら君たちは、下級天使ではないか」

 と、続けた。
 先程はどんなレベルの奴が来るのかまでは判らなかったが、実際にやって来たのは『下級天使』であった。これは『天使の輪』の色で判別できるのだが、少なくともここに来た奴ら全員の『天使の輪』は、『紫色』に光っているので下級天使である(尚、天使の輪はその力に応じて変色するらしい)。
 そして下級天使ごときであれば10名ほど居ようとも、私は楽に倒すことが出来る。

21:アーリア◆Z.:2018/03/30(金) 19:47

(17)

「しね! 」

 私が、彼らを下級天使であると馬鹿にしたからなのか、1人がそう叫びながら槍を構えてこちらへ向かってきた。

「やはり……下級だと碌に魔法も使えないようだな。そんな雑魚のくせに人類よりも偉いってか? 」

 私がそれを言い終えた時には、向かってきた天使は炎に包まれて悶え苦しんでいた。私が奴に向けて上級火炎魔法を発動したからである。仮に中級天使以上になれば、魔法攻撃から身を守る魔法を使うことができるであろうから、このように楽には倒せない。
 他の下級天使たちは何もできずに、ただその場で突っ立っていた。その中には、恐怖のためか震えている者もいる。

「先の戦争で、お前ら下級天使は抵抗も出来ずに死んでいったよな? であるにも関わらず、私を殺そうとしたのか」
「だ、だまれっ! 絶対にお前だけは許さない。お前が全ての元凶だ……うっbgbgbgbbg」

 また1人が斃れる。今度は口から大量の血を吐き出しながら。
 私が編み出した魔法によるものであり、対象に向けて発動すると、その対象の内臓を滅茶苦茶にするという効果がある。とはいえ効果こそヤバいが、魔法攻撃を跳ね返す手段を有する者からすれば大したものではない。

「で、誰の指示だ? まさかお前らだけで動いているわけではないだろう」

 今ここにいる下級天使たちに直接暗殺の指示を出したのが一体どこの誰なのか、私は気になったのである。本当に暗殺を成功させたいなら、このような著しく戦力の劣る者を使うはずが無いからである。
 そしてさらに気になるのは、天使がこの世界(星)に居るということは、天使たちの世界(星)から転移魔法を使って来ているわけである。行きは他の協力者が使えば良いが、魔法を使えない彼らが、帰りはどうするのだろうか? 

「お前ら……仮に私を殺したとして、どうやって帰るんだ? 」

 私はそう訊ねた。

22:アーリア◆Z.:2018/03/30(金) 21:05

(18)


「畜生! 俺たちは使い捨てにされたのか! 」
「あの野郎、騙しやがったんだ」

 彼らは己が魔法を使えず帰れないことにようやく気付いたのだろう。指示を下した者への怒りの心情を察することが出来る。
 だが、

「でも、こいつを殺せばきっとエレドス様が迎えに来てくださるはずだ」

 と、1人が言ったがために、皆、それに同調し再び私へ怒りの矛先を向けたのか槍を構えだした。

「あくまで、私を殺したいわけか」

 私は、上級火炎魔法を連発し1人を除き皆殺しにしたのである。炎に焼かれ死にゆく者の断末魔は決して心地よいものではないが、やむを得ない。

「く、くそおおおお! み、みんな殺しやがって! お前えええ」

 あえて1人は生かした。むろん指示を出した者が誰なのかを聞き出すためである。そして、私はその生かした天使を地面に抑えつけた。

「誰の指示なのか答えろ。返答が早ければ早いほど、お前がこれから失うものは少なく済む。むしろ、早く答えることで得られるものもあるぞ」
「黙れ! 」
「答えなければ、毎分ごとに手足を一本ずつ切断してやる。手足がなくなれば、今度はお前の綺麗なその白い翼をもぎ取ってやろうではないか」

 拷問だ。だが、こちらも命が係わっているわけであるので、仕方がない。今回は下級天使であったから良かったものの、これが上級天使以上となると本当に危ないのだ。特に大天使となると、呆気なく瞬殺されてしまう可能性がある。

「わ……わかった。答える、答えるよ。俺たちに指示を出したのは、エレドスと言う上級天使だ。彼が俺たちを集めてお前を殺せと命じたんだ。もちろん、俺はお前を心の底から憎んでいるからな! 快く応じたんだよ! 」

 エレドス……先程、誰かが口にした名前だ。

「他には? そのエレドスとやら以外に、もっと上の奴とかは居ないのか? 大天使とか」
「いや、これ以上は俺は知らない」

 なるほど。とりあえず、まずはエレドスという名前は覚えておくことにしよう。そして私は金貨100枚が入った袋(ユミが初日に渡してきたやつ)を、彼に贈与したうえで、解放した(どうせ、帰れないのだと思うが)。

「さて、宿屋へ戻るとするか」

 当初、『奴ら』が動き出したと聞いて驚いたがもしかしたら、その一部の連中による個人的な暗殺行為に過ぎなかったのではないだろうかと私は考えた。例えばそのエレドスとやらが私に対して抱いた恨み感情による復讐だ。仮に暗殺計画につきエレドスの上がいるなら、残るは大天使か又は、現在天使共の中で最頂点に君臨する筆頭大天使のみであり、もしこれらが計画していたなら、もっと強い戦力を以て私を排除することが出来る。
 ともかく、エレドスについて調べる必要がある。元々魔王領に行き『奴ら』……もとい『天使の糞野郎ども』への対策をするつもりであったが、着いたら真っ先に先の戦争で管理していた捕虜の資料に当たってみよう。
 ……調べるも何も、今、お前が教えてくれれば済む話なんだがな。また頭の中に直接声を響かせてくれよ。あの頭痛は嫌だけどさ……。

23:アーリア◆Z.:2018/03/31(土) 23:21

 (ここまでのあらすじ)




1日目。

大司教「勇者よ、魔王を倒せ」
ユミ「はい」
大司教「仲間のカルロとマリーアとダヴィドだ」

ユミ「よろしく」
ダヴィド「よろしく」
マリーア「よろしく」
カルロ「よろしく」

そして、4人は装備を整えに行く。
でも、カルロは傭兵団を雇いに酒場へ行く。何故か大金(手形)を持っているカルロであった。

王都で一晩過ごすことにした。


2日目。

ユミとダヴィドがロムソン村を魔物から救いたいと、寄り道を提案。カルロだけは反対したが結局行くことへ。

本来の生息地とは異なる場所で『毒タヌキ』と遭遇。色々あったけどロムソン村へ到着。

カルロ「毒タヌキについては誰かの仕業だ。魔物の体に刻印があれば魔物使いの仕業だ。調べてくる」
ダヴィド「自分も行こうか? 」
カルロ「いや、1人で行く」

『毒タヌキ』は焼かれてしまい、確認できずに終わった。
カルロは傭兵団にロムソン村を度々襲う魔物の討伐を命じた。

3日目。


何故かマリーアが最後までロムソン村で魔物討伐をするべきと主張。でも、無事、出発した。因みにこの3日目の夜にカルロが天使と戦闘になる。天使に恨まれるってカルロは一体何をしたのかね?


以上の通り。


尚、次はここまでのキャラクター商会でもします。

24:アーリア◆Z.:2018/04/01(日) 16:51

(キャラクター等紹介)

・カルロ
本作の主人公。元々『魔王領』へ赴き、とある目的達成を目指していたがそんな時に勇者の同行者として選任されてしまった。

・ユミ
勇者として教会から選任された少女。実は3人兄弟の末っ子。15歳。

・マリーア
勇者の同行者として選任された攻撃魔法士協会所属の魔法士。

・ダヴィド
アーリア王国の王宮兵士長の1人で、今回、勇者の同行者として選任された。

・魔王?
魔王領の統治者。勇者の討伐の対象となっている。

・ディアナ
兄である勇者を裏切った(元々、魔王に忠誠を誓っているので裏切ったという表現は誤りかもしれないが)。

・ディアナの兄
勇者であったが、妹らに謀られ幽閉される。

・『毒タヌキ』を操っていた名無しの魔物使い
勇者たちが魔王領へは到達できない方へ、金を賭けたがために、勇者ユミたちの旅の妨害をしている。

・エレドス
上級天使。カルロを襲撃した下級天使たちに指示を出したのがこいつらしい。

・謎の声
カルロの頭の中に響いた謎の声らしきもの。旅を始めて3日目にカルロは初めてこの現象に遭遇したものの、それがどう言ったものなのかは、事前に知っていた。

・グランシス商会
少なくともアーリア王国内では大企業である。そして、カルロはこの商会が振り出した手形を複数枚持っている。

25:アーリア◆Z.:2018/04/01(日) 16:54

・酒場の主人
カルロの知り合いで、カルロにとっては信用できる人物。

・傭兵団団長
カルロに雇われた傭兵団の団長のこと。


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