この戦いは、誰のために?

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧キーワード▼下へ
39:アーリア◆Z.:2018/04/12(木) 19:34

(26)


「わざわざ、こんな時間に申し訳ありませんね」

 ロベステン鉱山から戻ってきた私は今、西ムーシ町長の家にお邪魔していた。

「西ムーシ商会の副当主さんがお越しになったという事は、商売に関係するお話ということですよね? 」

 町長の言ったとおりだ。私は西ムーシの町から融資を得ようと考え、町長の家にやって来たのである。

「ええ。町長さんも、近日中にロベステン鉱山が競売にかけられるというのはご存知ですよね? 」
「……なるほど。ロベステン鉱山を競落するために必要な資金を欲しているということですか? まあ何せ相手はグランシス商会ですからね」

 話が早くて助かる。

「はい。融資のご相談で参りました」

 もちろん、ただで融資をお願いしにきたわけではない。対価に相当するような利益を西ムーシの町に提供するつもりである。と言うのもまた幸運なことに(これを幸運と言うのも酷い話かもしれないが)、西ムーシの町には浮浪者が多くおり、能力的な問題はさておき数だけでいえば労働力が有り余っているわけである。

「まず当然、利息は付して返済いたします。その上で、我々がロベステン鉱山を競落できましたら、西ムーシの町の住人から一定数を労働者として雇用いたします」

 この王国には人頭税なる税金がある。まず、王国に払う必要があるのは当然として、王都を始め町や村でも独自に人頭税を徴収することができるのだ(西ムーシの町では現に徴収している)。
 しかし、西ムーシの町の住人であればその全員が町にも人頭税払わなければならない義務があるとはいえ、無一文の者が払うことは事実上不可能である(不良債権のようなもの)。そこで仮に西ムーシ商会がロベステン鉱山を競落できたとするなら、そのような浮浪者たちを雇入れて一定以上の賃金を払えば、町としては現実に人頭税を徴収できることになる。
 尚、ロベステン鉱山を取得した者は競落した者は、そこで現に働いている労働者について使用者としての地位がアリムーシ商会からそのまま移転することになっている。よって、浮浪者を多く雇入れても、ド素人集団になることはないだろう(たぶん)。

「……そういうことなら、融資いたしましょう。西ムーシ商会が競落に失敗しても、それはそれでお金を払う必要はなくなるわけですから、元本だけは直ぐに返せるでしょうし」
「ありがとうございます」

 この後、どうやら町長と当主が親友同士だったこともあり、当主を呼んだうえで融資に関する契約は締結することになったのである。
 尚、私が町に提示した条件はそのまま当主より追認された。


続きを読む 全部 <<前 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新