狂った町 サイコタウン

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1:あまたん(・∀・)◆YQ:2018/05/08(火) 19:44

みんなおかしくなっていく。
今までは普通でつまらない日常だった。
───なのに、何で…。

>>2主人公(後からいろいろと登場人物増えるかもです)

112:アマテラス◆YQ:2018/07/24(火) 09:26

どうやら、彼女はナースステーションの
近くにいるらしい。

急いで行くと、結月が手をブンブンと
振っていた。

「麗歌、麗歌!」

「はいはい麗歌ですよ」

オウムのように言った。

包帯が見つからないようで、
一緒に探してほしいという。

「無かったの?」

結月は静かに頷いた。

「あとさ、さっきあそこの部屋から硝子が
割れたような音がしたんだけど…」

指でさされたところを見ると、
一つだけ色が違うドアがあった。

113:アマテラス◆YQ:2018/07/25(水) 07:42

おそるおそるドアを開けると、
そこには…

「バフォミン!?」

バフォミンがいた。

「誰この人」

結月はバフォミンの存在を
全く知らなかったようだ。

「バフォミンと申します。
よろしくお願いします」

「ぶふっ…」

あまりの意外さに
思わず笑ってしまった。

バフォミンの後ろは窓があったが、
硝子が粉々に砕け散っていた。

「何があった…」

114:アマテラス◆YQ:2018/07/25(水) 21:30

「お伝えしたいことがありまして」

伝言…?
何なんだろう。

「麗歌様のお父様が帰って参りました」

…そんなことか。

重要なことだと予想していたから
ずっこけた。

結月はまだバフォミンが何者なのか
分かっておらず、
私とバフォミンを交互に見ている。

「…麗歌様たちは何をなさって?」

「ああ、同級生と肝試し」

バフォミンはそれを聞くと
深く頷いた。

115:アマテラス◆YQ:2018/07/26(木) 19:48

「そうですか、では楽しんでください」

そう言うと、バフォミンは
窓から飛んでいった。

「あ…あ」

「どうしたの?結月」

結月は窓を見ながら
口を開けている。

「麗歌の彼氏に向いてるね!」

「おいおいやめなさい…」

えへへ、と笑った彼女を見て、
部屋を出た。

…包帯を見つけなきゃ。
…こんなことしてる場合ではない。

116:アマテラス◆YQ:2018/07/27(金) 14:54

「包帯なんてどこにあるのかな」

結月はキョロキョロと見渡す。

「分からないけど…
あ、手術室はどうかな。
包帯は無くてもガーゼがあるかもしれない」

名案だとは思わなかったが、
言ってしまったものは仕方がない。

エレベーターまであまり足音を
立てずに早歩きで進んだ。

エレベーターで地下まで降りると、
手術室のドアが開いていることに
気付いた。

廊下を進むと、
足音が響く。

化け物が来たら厄介だな…。

117:アマテラス◆YQ:2018/07/28(土) 12:30

手術室で誰かが死んだという噂は
聞いたことがない。

だから、いきなり
幽霊が飛び出してきたりすることは
多分ないだろう。

「もうついた?もうついた?」

「あと少し…」

結月は目を閉じながら
進んでいる。

手術室についた。

手術台や器具が
生々しく残っている。

118:アマテラス◆YQ:2018/07/29(日) 09:18

ガーゼか何か傷を押さえる物が
きっとあるはずだ。

何かが足にぶつかったので、
拾い上げた。

消毒液だ。

消毒液も必要だが
まずガーゼがなくてはならない。

「麗歌ー、あった…」

結月の方を見た瞬間、
結月の顔が青ざめるのが分かった。

ズル、ズル…

引き摺るような音が聞こえてくる。

ズルズル…

119:アマテラス◆YQ:2018/07/29(日) 20:28

それは何を引き摺っているのかは
分からない。

私は確かめたくなってきた。

そいつが何なのか知りたいから。

「ちょ、麗歌…?」

私は早足で廊下に出た。

音はどんどん近付いてくる。

私は壁に隠れながら
そいつをちらりと見てみた。

…匍匐前進?

暗くて顔はよく見えないが、
肘で進んでいるのは分かった。

120:アマテラス◆YQ:2018/07/30(月) 19:08

だんだん近付いてくる。

顔がどんな感じなのかは
だいたい分かってきた。

…黒目しかない?

目の部分は黒く、
白目がよく見えなかった。

そして、私との距離が狭まったときに、
もっと恐ろしいことに気付いた。

こいつは黒目しかないのではなかった。

『目が無い』のだ。

私は口元を押さえ、
手術室に向かわずに廊下にあった
ソファの陰に潜んだ。

…あ、結月。

121:アマテラス◆YQ:2018/07/31(火) 13:46

そいつは手術室に向かって
いっている。

わざわざ匍匐前進しているのではなく、
下半身がないから肘で進んでいるのことが
分かった。

…結月は隠れた?

…結月が危ない目に遭ったら私のせいだ。

手術室にズルズルと
そいつは入っていく。

私は入ってきた様子を見計らって、
結月を助けようと後を追った。

手術室に行き、手術台で身を隠した。

向こう側にあいつがいるから、
慎重に結月を助けないと…

…結月?

122:アマテラス◆YQ:2018/08/01(水) 17:10

手術室のドアが少し揺れたのが分かった。

同時に上半身だけの化け物は、
手術室を出て行った。

結月はどこに隠れているのだろう…

私は化け物が去って行くのを
横目で見ながら、結月を探した。

どんなに探しても、いなかった。

どこに行ったのだろう…。

「麗歌?」

手術室の向こう側のドアから
結月がのこのこと歩いてきた。

123:アマテラス◆YQ:2018/08/02(木) 18:55

「どこ行ってたの…!?」

私は結月に抱きついた。

「え?トイレ行っただけ」

「…え?」



「うん、ちょうどトイレが近くに
あってさ」

どうやらドアの奥にある廊下を進むと、
トイレがあるらしい。

「麗歌は何で逃げてたの?」

…こいつ、ウザイな。

そこが好きだけど

124:アマテラス◆YQ:2018/08/03(金) 16:45

手術室の奥に行ってみる。

化け物に会った恐怖で
自分の目的が分からなくなりそうだ。

廊下は蜘蛛の巣が
所々にはってある。

近くにあった部屋に入ってみた。

何の部屋かはよく分からないが、
棚の中に包帯が入っていた。

見つけたならすぐに
怪我をした子のもとへ行かなければ…

結月の手を引き、
病室に向かった。

125:アマテラス◆YQ:2018/08/04(土) 18:14

階段を上り、廊下を進む。

廊下にあるドアを開ける、
廊下を進む…。

病室に行くと、
傷を負った男子がベッドで
横たわっていた。

私は傷の上から包帯を
手早く巻いた。

「あ…城田さん、ありがとう…」

「それより、何があったのか
教えてくれる?」

126:アマテラス◆YQ:2018/08/05(日) 19:22

話によると、
背が低い何者かに襲われたという。

暗くてよく見えなかったが、
やはり匍匐前進をしていったらしい。

「…ふふっ」

結月は匍匐前進の化け物の
姿を知らないので、笑っている。

なぜ彼を狙ったかも分からず、
肝試しをやめようということになった。

急いで病院を出ようと、
和也はドアの鍵穴に鍵をさした。

ガチャガチャと鍵を回すが、
なぜか開かない。

127:アマテラス◆YQ:2018/08/06(月) 18:06

和也は動きを止めると、
何かを呟いた。

口パクだったが、
『開かない』と言っているのだろう。

他の人が鍵を回しても、
なぜか開かなかった。

…別の道を探すしかないのか…。

また二手にわかれるのは面倒なので、
皆で出口を探すことにした。

「くっそー…何でだよ…」

和也は髪を掻き回し、
結月は怯えて私の袖を掴む。

128:アマテラス◆YQ:2018/08/08(水) 08:40

非常口から抜け出せるかもしれない。

地図があったので非常口の場所を
見てみたが、結構遠いことが分かる。

地図通りに行けば何とか
たどり着きそうだが、
変な匍匐前進の化け物がいるから怖い。

私たちは足音を立てずに非常口へ
向かっていった。

非常口に着き、ドアを開け…られない。

扉には鍵穴は無かったが、どうやら
災害があったときに自動で開く仕組みに
なっているようだ。

「じゃあ、扉のロックを解除しないと
開かないみたいだね」

結月が名探偵のように言う。

129:アマテラス◆YQ:2018/08/09(木) 13:31

「俺こっち見てみる!」

和也がいきなり走り出した。

同時に、他の皆も行ってしまった。

「え…」

結月は固まってしまった。

…団結力というのはないのだろうか。

「はあ…私たちも皆を追うか…」

私は結月の手を引き、
廊下を進んだ。

バタバタと足音が響いてくる。

化け物に会わないように
静かにしてほしいと念ずるしかない。

130:6231◆gU:2018/08/10(金) 20:34

めっちゃ面白い!(少し怖いけど)

131:アマテラス◆YQ:2018/08/10(金) 21:32

>>130
ありがとうございます(血涙)

132:アマテラス◆YQ:2018/08/12(日) 19:53

「はあ…」

結月とトコトコと歩いていると、
後ろから音が聞こえてきた。

ズル…ズル…

「えっ…」

結月が立ち止まって後ろを向く。
向こうから、あいつがやってくる。

「ここに入って!」

私は結月をトイレの個室に
押し込み、鍵をかけさせた。

私はあいつを観察したいので
壁の死角に隠れた。

ズル、ズル…

…なんか、様子が変だ。

133:アマテラス◆YQ:2018/08/14(火) 07:19

目が無いとはいえ、
もう少し速く進むこともできるのでは…?

鈍い音と共に、化け物は
壁にぶつかった。

「あうっ!」

どこからか可愛らしい声が聞こえてき、
化け物の中から女の子が出てきた。

どうやら女の子は目の無い化け物の
マスクをし、わざわざ大人用の上着を
着て、化け物に見せかけていたようだった。

「ママァ…」

女の子は泣いてしまった。

どうしようかと迷っていると、
キッズ携帯を取り出し、電話をかけ始めた。

すると、向こうからお母さんらしき人が
走ってきた。

134:アマテラス◆YQ:2018/08/15(水) 13:13

「利香…!」

女の子は利香というらしい。

でも、何でこんなことを…。

「おい、何やってんだ」

向こうからいかつい男の人が
やってきた。

「泣いてないで、さっさと立て」

男の人は利香ちゃんの髪を掴み、
無理矢理立たせた。

「もうやめて!
この子は奴隷じゃないのよ!」

「うるさい!」

鈍い音が聞こえたかと思うと、
女の人はその場で倒れた。

「これも仕事のためなんだよ!」

135:アマテラス◆YQ:2018/08/17(金) 13:53

利香ちゃんは号泣している。

「新聞のネタにするために仕方なく
やっていることなんだよ。何しろ
ここは俺が元々いたところだからな」

男の人は元々この病院の医者で、
今は新聞記者?をやっているようだ。

「でもこの子を使わなくてもいいでしょ?」

「何をしようと俺の勝手だ!」

鈍い音が鳴り響く。

ついに、女の人は何も言わなくなった。

「ママー!!」

男の人は利香ちゃんを睨むと、
向こうへ去って行った。

「ママ…うっ…」

136:アマテラス◆YQ:2018/08/19(日) 15:53

私は利香ちゃんに近付いた。

「ママが、ママが…」

でも、私にはどうすることも
できない。

利香ちゃんのお母さんは
体の至る所にアザがあった。

よっぽど父親からの暴力が
酷かったのだろう。

結月が辺りを見回しながら
私たちのところまで来た。

「えっ、えっ」

結月は個室に入っていたため、
何が起きたのか分からなかったようだ。

「ママーーー!!」

利香ちゃんは走っていってしまった。

137:アマテラス◆YQ:2018/08/21(火) 16:42

すると、和也がみんなと
向こうから走ってきた。

「解除できたぞ」

和也が解除できるほど
非常口が柔だとは思わなかった。

結局、私たちは利香ちゃんのお母さんの
死体をどうすることもできずに
肝試しを終えてしまった。

家に帰り、寝室に行くと、
机にたこ焼きが置いてあった。

「お帰りなさいませ!」

バフォミンがまたたこ焼きを
買ってきてくれていた。

「ただいま」

私は少し微笑んでたこ焼きを
頬張った。

138:朧月夜◆YQ:2018/08/22(水) 22:13

気がつくと朝になっていた。

疲れてそのまま寝てしまったらしい。

気晴らしに外へ出ると、
近所の人と警察が集まっていた。

「あ、麗歌ちゃん!ほら」

近所のおばさんが手招きをした。
私はみんなに近付くと、
なぜ近所の人が
集まっているのかが分かった。

お父さんが死んでいる。

警察によると、今朝殺されたという。

とっさに家に戻って新聞を見た。
どうやら最近通り魔がここら辺に
いるらしい。

私は父親が死んだことを
認められなかった。

139:朧月夜◆YQ:2018/08/23(木) 09:27

バフォミンに泣きつくと、
優しく私の頭を撫でてくれた。

「通り魔がまだ捕まっていないなら…
まだ警戒しなければいけませんね…」

バフォミンは翼を広げて外に出た。

「何か買ってきましょうか?」

断ったけど、一瞬で彼はコンビニで
おにぎりを買ってきた。

すると、物陰から何かが飛び出してきた。

「『ヘル・アロー』…!」

バフォミンはそう唱えると、
何者かは数メートル先に吹っ飛んだ。

140:朧月夜◆YQ:2018/08/23(木) 11:12

「いったいなあ…何すんのよ!」

吹っ飛ばされた人をよく見ると
着物を着ていて、
猫耳と尻尾が生えている。

「はっ、すみません…
通り魔が出ると聞いてつい…」

バフォミンは深くお辞儀をした。

「まったく…」

私はその猫耳の女性と目が合った。

「あんた、あたいが見えるのかい!?
あたいは夜巡(よめぐり)!あんたは?」

夜巡と名乗る女性は私の手を握った。

「れ、麗歌…」

「それより貴方、人間じゃないようですね」

バフォミンが夜巡さんを見つめる。

「ああ、あたいは猫又だよ」

141:朧月夜◆YQ:2018/08/24(金) 16:09

「猫又、ですか…」

「何か文句ある?」

「い、いえ…」

夜巡さんは結構気が強い…。

「あたい住む家が無いのよねー、
だからこうやってトボトボ歩いてんのさ」

「あの…よければうちに来ませんか?」

私がそう言うと、夜巡さんは
顔を輝かせて頷いた。

バフォミンは唖然としている。

その時は肝試しのことなんか
忘れていた。
あとからあの真相が分かるなんて
思いもよらなかった。

142:アマテラス◆YQ:2018/08/25(土) 17:44

「ここが麗歌んちかー!
広くて綺麗ね」

夜巡さんは部屋を隅々まで見ている。

恥ずかしいけど仕方がないことだ。

「あんた家族いないの?」

「うへっ!?」

急に聞かれたもんだから
思わず変な声が出てしまった。

「あまり聞かないでくださいよ、
麗歌様のショックは大きいんですから」

そりゃそうだ。
私は幼い頃にお母さんを亡くしている。

そしてお父さんが殺されたから、
ショックは大きい。

夜巡さんは少し俯いた。

143:アマテラス◆YQ:2018/08/26(日) 19:10

「結構最近変なこと起きてるんですよね…」

夜巡さんはお菓子をムシャムシャと
食べている。

「変なことって?」

「なんていうか…怖くて危ないことが
起きている気がするんです」

私の語彙力で説明するのは
難しかったが、
夜巡さんは理解してくれたようだ。

「ま、麗歌に何かあったら
あたいが守るからね」

─私を守ってくれる人がいる。
そう思うだけで嬉しかった。

「そうですよ、麗歌様。
私たちがついてますよ」

なんとなく、
バフォミンがイケメンに見えた。

144:アマテラス◆YQ:2018/08/28(火) 18:38

「ふわ〜、眠くなってきた」

私がそう言うと、
バフォミンは布団を敷いてくれた。

「あ、ありがとう…」

二人に見守られながら、
私は眠りについた。


しばらくしたら目が覚めた。

トイレに行きたかったわけじゃないが、
何かに起こされるような感覚があった。

バフォミンと夜巡さんがいない。

「もしかして夢の世界だったりして」

私は部屋から出た。

145:アマテラス◆YQ:2018/08/29(水) 18:43

変な空間だ。

別に暗闇ってわけではないが、
どこか複雑な色の空間だ。

「うっ…」

私は光に包まれた。


気がつくと、商店街のような場所にいた。
店のようなものが並んでいるが、
何の字かわからない。

日本語ではない。

「お母さーん」

前から子供が走ってきて、
私とすれ違った。

振り向くと、
子供は女の人と手を繋いで歩いて行った。

あの女の人、私のお母さんに似ているな…

146:匿名:2018/08/30(木) 08:23

面白いなあ

147:アマテラス◆YQ:2018/08/30(木) 13:02

>>146
めちゃんこ嬉しいです!
ありがとうございます!

148:アマテラス◆YQ:2018/08/30(木) 19:43

変な夢だな…。

すると、急に肩を叩かれた。

後ろを向くと、
魚の頭をした人間がいた。

「…ブハハハハハハハ!!」

私は大笑いしてしまった。

でも、だんだん魚人間を見ているうちに
笑えなくなってきた。

「ニゲナサイ」

そう言うと、魚人間は消えた。

逃げるって、何から…?

そう考えていると、
べちょ、と私の頬に何かが付いた。

血、だ。

149:アマテラス◆YQ:2018/08/31(金) 14:47

上を向かない方がよさそうだ。

べちょべちょと
私の周りに肉片と血が落ちてくる。

私は声も上げずに逃げた。

後ろから何かが追ってくる音が
聞こえた。

これは、本当に夢なのか?

駅のようなものを発見し、
即座に入っていった。

後ろからは何も追ってこない。

ほっとして、電車に乗り込んだ。

電車には誰もいない。
ただアナウンスが聞こえるだけだった。

150:アマテラス◆YQ:2018/09/01(土) 13:41

「本当にどこなんだろ、ここ…」

窓から外を覗いてみたが、
トンネルの中なのか、風景なのかも
分からないくらい暗かった。

もしここが別の世界だったのなら…

この世界に食べ物があったら食べてみたいし、
店があったら入ってみたい。

私は恐怖というよりは
観光に来ているかの気持ちだった。


電車はまだ駅に着かない。

今スマホを持っていない状態だったから
すごく暇だった。

私はその場で眠りについた。

151:アマテラス◆YQ:2018/09/02(日) 09:38

はっと我に返ると、
駅に電車が着いていた。

とりあえず降りる。

至って普通の街、に見えるが…
月があり得ないくらいに大きい。

息を呑み、その街へと向かった。

しかし、人間がいない。
化け物がうじゃうじゃいる。

化け物は私を通り過ぎる度に
二度見をする。

「はあ…こんなときにバフォミンが
いたらなあ…」

私は近くの店に入った。

152:アマテラス◆YQ:2018/09/02(日) 18:16

http://ha10.net/up/data/img/26332.png
下手ですが、だいたいキャラのイメージはこんな感じです。
手前の黒髪の子が麗歌で、右の子が結月です

153:アマテラス◆YQ:2018/09/03(月) 20:16

「バフォミン…うーん…」

店に入ったとき、
奥から男の人?が小走りできた。

バフォミン?

「いらっしゃいませ!」

「いるのかよ!」

思わずこけそうになった。

「え?」

その人はよく見るとバフォミンとは違って
羊の被り物をしている。

「バフォミンのライバルか?」

私も自分が何を言っているのか分からない。

羊の人は混乱している。

154:アマテラス◆YQ:2018/09/05(水) 07:19

「まあ、いいや…」

私は椅子に座った。

「あ、何かお飲みになりますか?」

そうか、ここは飲食店だったのか。

「あ…はい」

私はこの状況がよく分かっていない。

だから何を答えたらいいのかも分からない。

羊の人はお辞儀をしてから店の奥へ行った。

この世界が夢ではないのなら、
地球よりも技術が進んでいるのだろうか。
それとも、何かがこの世界を支配しているの
だろうか。

考えると頭が混乱する。

「お待たせしました」

羊の人がテーブルの上に禍々しい色の
飲み物を置いた。

155:アマテラス◆YQ:2018/09/08(土) 07:20

「何これ」

置かれた飲み物をまじまじと見る。

何かが飲み物の中で浮き沈み
しているようだ。

「ドルチェ・ヴァンパイアです」

ドルチェって音楽の世界では
「優しい、柔らかい」という意味らしいが、
どうもそうには見えない。

とりあえずストローに口をつけ、
ジュースを吸ってみる。

見た目と違って甘かった。

「…美味しい」

「そうですか、ありがとうございます!!」

羊の人はスキップをしながら
店の奥へ戻っていった。

156:アマテラス◆YQ:2018/09/12(水) 16:34

店の中隅々を目で確かめる。

私は寝るときあまり夢を見たい人だ。
でもこんなに鮮明に見える夢は
初めてかもしれない。

奥からまた羊の人が出てきた。

アイスクリーム、をくれた。
どうやらサービスらしい。

食べるとほんのりイチゴの味がした。


しかし、どうやって
元いた場所へ戻るべきか。

アイスクリームを食べながら店を出る。

…怖い。

危険を感じた、というよりかは
自分の存在に恐怖を覚えた。

157:アマテラス◆YQ:2018/09/13(木) 20:20

生暖かい風が吹き、
思わず後ろを振り返る。

さっきまで明るかった場所がなぜか暗い。

気のせいだろうか?

気にせずに街を歩き、また後ろを向く。

特に何も変化はない。
ほっとして前を向くと、

「こんにちは」

人形がいた。

「や…ギャアア喋ったあああ!?」

人形が喋ったのを間近で見ると
恐怖しか湧いてこない。

人形は首をかしげ、こちらへ歩いてくる。

…来ないでほしい。

158:アマテラス◆YQ:2018/09/15(土) 17:27

「何で逃げるの?」

私の足元にやってくると、
これでもかというくらいに首を曲げる。

ポキッ

首が外れた。

私は声が出ないまま固まっていた。

「やだ、いっけなーい」

人形は首を付けて元通りになった。

「あなた、名前は?」

人形に問われるも、うまく声が出せない。

「…ひぇっ」

勇気を出したら変な声が出た。

人形はクスクスと笑っている。

159:アマテラス◆YQ:2018/09/17(月) 11:53

「言わないと、刺すわよ」

人形は一瞬で真顔になり、
目を見開いてナイフを私に突きつける。

「麗歌!麗歌!」

私は自分の名前をすかさず言った。
そのとき自分の名前に感謝をすることができた。

「麗歌ね、私はレイラ。
人間と話すことがあんまり得意じゃないの」

「え、この世界に人間がいるの?」

私が問うと、レイラはナイフを腰にさした。

「そりゃいるわよ。来て」

彼女は私の手をとり、走り出した。

160:アマテラス◆YQ:2018/09/20(木) 20:47

息ができなくなるほど走ると、
レイラは私の手を離した。

「見て、あそこ」

レイラは細道を指差す。

誰かいるようだ。

ニット帽を被り、マスクをしているから
男か女かも分からない。

本当に人間なのだろうか。

気がつくと、レイラはその人のもとへ
行っていた。

「麗歌ー!こやつ人間だったわよー!」

こやつって言ったよな今。

161:アマテラス◆YQ:2018/09/23(日) 20:00

「あなた、名前は?」

ナイフを突きつけるレイラ。

ナイフ好きだなあの子。

「言うからナイフを下ろしてくれ」

レイラが舌打ちをして腰にさすと、
その人はため息をついてニット帽を整えた。

そして「優」とだけ名乗った。

性別が分からない。

「あの…非常に失礼ですが
性別はどちらでしょうか」

私が尋ねると優さんはマスクと
ニット帽を外した。

162:アマテラス◆YQ:2018/09/25(火) 18:30

「男!?」

私は思わず叫んでしまった。

レイラはぽかんと口を開けている。

口パクで「てっきり女の人だと」と
言っている。

優さんは男性だった。

言葉では言い表せないくらい
整った顔をしている。

七瀬君よりかっこいい、と思ってしまった。

屑だ、私。

「んで、何のよう?」

はっと我にかえる。

「この世界について何かご存じですか?」

163:アマテラス◆YQ:2018/09/29(土) 13:34

優さんはうつむいてスマホを取り出した。

私もつられて取り出す。

圏外、ではなかった。

でもやっぱり電話をするのはやめよう。
きっと誰も信じてくれないだろうから。

「麗歌、お腹空いた」

レイラが私の袖を掴む。
可愛い、と思った。

「私お金ないわ今…」

そう言うと、レイラはむっと
頰をふくらます。

ふと優さんの方を見ると、
なぜか私の方をチラチラ見ながら
スマホをいじっている。

164:アマテラス◆YQ:2018/10/01(月) 16:41

怖いくらいに真剣にスマホを
いじっている。

何か分かったのだろうか。

優さんは動きを止め、
スマホをパーカーのポケットに入れた。

「ここは君が創り出した世界、
とでも言っておこうか。
ま、そのうち元の世界へ戻れるよ」
と彼は言った。

「そのうちっていつよ!?」

レイラが優さんに殴りかかろうとしたので、
必死で止めた。

私が、創り出した世界…?

どういうことなのかさっぱり分からない。

私がこの世界にあるものを望んだわけでも、
誰かに会いたいとも思っていないのに
なぜ“私の世界”が生み出されてしまったのか?

165:アマテラス◆YQ:2018/10/04(木) 15:58

「要するに、君の好奇心から生まれた世界
っていえば分かるかな」

私の好奇心から生まれたのであれば、
優さんも私が創り出したのか…?

急に恥ずかしくなってきた。
多分私の顔は真っ赤だろう。

そうこうしている内に、
空は明るくなっていた。

レイラは「来たわね」と呟く。
優さんもそれにあわせて頷く。

「来たって、何が」

私は宙に浮き、空へ吸い込まれた。

166:アマテラス◆YQ:2018/10/05(金) 17:06

目が覚めた。
全身は汗でびしょ濡れになっている。

怖かった、ただそれだけだ。

着替えて外に出る。

「せっかく会った人もすぐにまた
会えなくなっちゃうんだよなあ…」

石を蹴る。
電信柱にコツンと当たる。

その瞬間に自分だけ
この世にいてはならない存在なのかなと思った。

周りが変わっていくのを感じ、
背筋が凍り付く。

いずれ私もその世界に巻き込まれ、
自分ではなくなるのだろうか。

167:アマテラス◆YQ:2018/10/07(日) 19:00

時が経つのが早いな、と
改めて感じる。

その時が流れているうちに
何が起きてこうなったのだろうか?

「ん?」

悲鳴が聞こえた。

何かあったのだろうか。

嫌な予感がして一目散に
声がした方向から逆の方向に走った。

悲鳴が大きくなっていく。

168:アマテラス◆YQ:2018/10/13(土) 07:29

「…気持ち悪い」

誰かが叫んでいるのであれば、
助けた方がいいのだろうか?

そのとき、後ろから叫び声が聞こえた。

後ろから…!?

『目の無い女』が叫びながら立っていた。


どれくらい走ったのだろうか。
気付けば知らない場所にいた。

耳をすませると、叫び声が耳に入ってくる。

「け、警察を呼ばないと…」

169:アマテラス◆YQ:2018/10/17(水) 15:48

「もしもし?警察ですか?
目が無い人が追いかけてくるんですけど」

「何を馬鹿なことを言ってるんですか?
イタズラなら切りますよ」

何度も説得したが、仕舞いには
切られてしまった。

なぜなら、女の声は聞こえるのに
一定の距離まで近付かないと姿が見えないからだ。

ブツブツ愚痴を言いながら家まで歩く。

どうせならもうあの女に捕まってもいいのでは?
そう考える自分がいる。

親も失い、地獄のようになってしまった日々は
もう過ごさなくてもいいのではないか?

170:アマテラス◆YQ:2018/10/20(土) 21:14

「腰が痛い…」

背中を反らす。
あまり運動しなくなったので
体が鈍ってきたようだ。

「キャアアア」

悲鳴を無視する。
はやく家に帰りたい。

「麗歌様!なぜそんなにむあえぶえす!?」

バフォミンが来てくれたが、
焦っているのか、
正直何を言ってるのか分からない。

「ああ、なんかもう疲れちゃって」

適当に答えると同時に悲鳴が聞こえる。

171:アマテラス◆YQ:2018/10/23(火) 21:00

「妙な雄叫び…」

バフォミンがボソッと言うと、
手から光を出した。

「おお…」

中二病かと思ったが、
まあ悪魔だからそれくらいできるだろうと
自分を安心させた。

悲鳴が近くなってくる。

バフォミンは光を向こうへ放った。

同時に目の無い女が現れる。

「あ」

一瞬申し訳ない気持ちになった。

172:アマテラス◆YQ:2018/10/26(金) 20:12

「あ、ええ…」

女はあたふたしている。
バフォミンが横でフンと鼻で笑った。

「すみませんでした」

女はそれだけ言うと、
走り去ってしまった。

私は思った…
「何がしたかったんだ」と。

「ま、まあ一件落着したことだし、
帰ろうか」

そう言うと、
バフォミンと笑いながら
家に帰った。

173:アマテラス◆YQ:2018/10/29(月) 17:49

「おかえり」

夜巡さんがエプロン姿で
玄関に来る。

「お風呂にする?ご飯にする?」

それとも、と言いかけたところで
「お風呂」と即答した。


バスタブに浸かりながら考える。
家の中なら安全なのではないか?

バフォミンもいるし、
化け物に会うこともない。

変な夢は見るが、
外よりかはマシだと思う。


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