突き進め! この新楽土の地を

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1:アーリア◆Z.:2018/05/09(水) 19:20

(1)

 私の目の前には玉座らしきものがあった。
 
 その玉座らしきものには、王道RPGゲームに登場する王様のような恰好をしている中年の男が座っている。
 さらにその者の横には少年少女そして中年の女性が立っており、仮に玉座らしきものに座っている中年男性を国王とするならば、中年女性は王妃、そして少年少女は王子や王女と推察することができる。

「ほう……勇者の召喚が成功したようだな。とはいっても4人のはずが、何故か5人であるのが、まあ些細なことは無視して今は召喚に成功したことを祝福すべきだろう」

 玉座らしきものに座っている中年男性がそう言った。

「おい! ここはどこなんだよ」

「そうよ! 家に帰ろうと思って校門を出た思ったら、なんでこんなところに居るのよ」

「これはゆ、夢なのかしら」

「…………」

 真横から声が聞こえてきたので、そちらを見てみると、私以外に高校生らしき4人がいた。何故、高校生らしきかといえば、4人が制服を着ているからである。

「うむ。突然のことで驚いているようだが、君たちは勇者として召喚されたのだ」

 再び玉座らしきもの座っている中年男性が言う。

「はあ? 勇者ってなんだよ。おっさん中二病なのか! 」

「勇者って……、あんたたち馬鹿にしているの! 」

「やっぱり夢なのかな」

「…………」

 そして高校生らしき者たちが抗議の声をあげた。

「おい貴様ら! 国王陛下に対してそのような態度をとるとは! 」

 抗議の声をあげた途端に、私たちの両サイドに居る貴族風の身なりの男たちからの口撃が始まった。

「まあまあ。彼ら世界を救う勇者様なのだ。しかも突然の召喚で戸惑っているわだから仕方のないことだ」

 と、国王が彼らを宥める。
 それから国王はなぜ勇者の召喚をしたのかについての説明を行った。まず、約1000年前にこの世界を支配していた魔王をかつての勇者たちが討ち滅ぼしたものの、つい最近になって魔王が復活したとのことである。世界各国の精鋭騎士団等が征伐に向かったものの、返り討ちに遭い、次なる策として勇者の召喚を行ったとのことらしい。そして勇者として召喚された者は、少なくともこの世界では潜在的に人並外れた強さを有し得る素質を持っているのだという。

「もしかして……い、異世界に来てしまったのか? 」

「そ、そんなのありえないわ! 」

「ゆ、夢じゃないの? 」

「…………」

 ここが、異世界……。
 どうにも実感が沸かない。だが、とりあえずはここが異世界であるということで行動しようかと思う。

「王様。あなたに聞きたいことがあるのですが、先程、『何故か5人であるのが、まあ些細なことは無視して』と言いましたね? 」

 私はここにきて初めて口を開いた。

「4人を召喚するつもりだったのだがな。なぜか5人が召喚されてしまったのだ」

 なるほど。
 もしかしたら、5人の内の1人はおまけとしてこの玉座の間に連れて来られた可能性があり、そのおまけは『勇者』ではない存在と私は推測している。

「例えば、召喚の際に例えば勇者以外の者が巻き込まれるというのはありますかね? 」

「実はそういう前例があったと記されている書物はある。よく見るとお主だけは何故か他の4人に比べて年齢が幾らか上に思えるが…………」

 やはり、私は巻き込まれてこのに連れて来られたのかもしれない。

「陛下。確かに彼だけは一切の魔力が感じられません。勇者としての素質があれば、一定上の魔力が感じられるのですが……。もちろん他の4人は相当な魔力が感じられます」

 貴族っぽい恰好をした者の1人がそう言った。

「なるほど。魔力が一切無いとなると、お主は巻き込まれたのだろう。では、お主には幾分かのお金を渡す。それで当分は生活するがよい」

 そして私は別室に連れて行かれたのである。

13:アーリア◆Z.:2018/08/01(水) 21:24

(8)

 横柄な態度をとりやがった王宮魔導士総長のマレックスに半ば部屋を追い出された私は、早いところ王宮を後にすることにした。
 まあ、王宮魔導士総長のマレックスの野郎は本当に失礼極まりない奴ではあったが、一応は必要な話は聞けたので、良しとしよう。

「あ、東沼様。お話の方はどうでしたか? 」

 と、言いながら私に近づいてきたのは何と、第二王女のルノアであった。

「こ、これはルノア殿下。ええ、お陰様でとても大事な話ができました。ありがとうございます」

 ありがたいという気持ちは本心である。
 このまま執事のドナッドに任せていたら、いつマレックスの野郎と話が出来たかわからない。奴はとても横柄な野郎であるから、ルノアを通してという形でなければこうして会って話すことも出来なかったかもしれないのだ。

「そうでございますか。私も東沼様にご協力出来てうれしい限りです。さて、もう王宮を後になさいますか? もし良ければ王宮で一泊なさっても構いませんよ」

 ほう。
 王宮で一泊と……? お、おっと危ない。魔王討伐に関する話について勝手に進められるのもたまったものではないので、ここはサッサと王宮からオサラバしなければ!

「その申し出は大変ありがたく思うところではありますが、私も色々とやることがありまして、私はここで失礼します」

 私がそう言うと、ルノアは少し残念そうな表情を見せた。

「そうですか。わかりました。では、王宮の正門までお送りいたしますね」

 そして、ルノアに送られて私は王宮を後にした。
 尚、色々とやることがあるの本当だ。早速今日から行動するつもりである。

14:アーリア◆Z.:2018/08/01(水) 22:11

(9)

 私は、王宮を後にしてからは行商人が行きかう市場へと来ていた。
 とある情報を収集するためである。
 
 と言うのも、現在私がいるこの国はバイレン王国ということが判った。その上で、「色々とやることがある」という話の1つとして、私は何としてでもザクセランド王国という国へ行きたいのだ。
 つまり、ここバイレン王国からザクセランド王国まで行くための方法を知りたいわけである。

「おっとお兄さん! これ安いよ! ザクセランド王国産の漬物ですぜ! 」

 市場を歩いていると、何と私に向けて営業をかけてきた行商人が現れた。そして、なんて運の良いことか……! 私に売りつけようとしている漬物とやらがザクセランド王国産であるとはすばらしい。

「ほう、そうですか。で、その漬物は大体いくらくらいですかね? 」

「おっと、買ってくれますか! 俺はこの壺ごとに売っています。で、壺1つあたり、銀貨10枚ってところです」

 その壺とやらを見てみると、それは小さかった。ただ、壺が小さいといっても日本のスーパでパッケージ化されているものよりは量は多い。5から6倍の量は入っているだろう。私の計算では銀貨10枚は日本円で大体1000円程度であるものとしているので、これが相場かもしれない。
 ただ、私は当然にその値段で買うつもりは無い。銀貨10枚で買うとしても条件はつけるつもりである。

「銀貨10枚ですか……ううん。ちょっとね? 」

「高いですかね? では、壺3つで銀貨25枚でどうですか」

「いや、銀貨10枚で壺1つでも買うつもりですが……確かその漬物はザクセランド王国産らしいですね? もしザクセランド王国までの移動手段と着くまでの平均的な日数を教えてくれれば、3つを銀貨30枚で買いましょう! 」

 別に私は商人ではない。であるので損をしようとも、そこまで細かく交渉するつもりは無いのだ。

「ザクセランド王国ですか? ああ、ここから馬車で3日程度着きますよ? 急行馬車ならもう少し早く着くとは思いますけどね」

 マジか……。近いのかよ、ここから。
 まあ良いや。壺3つ買ってしまおう。

「で、では銀貨30枚です」

 そう言って私は漬物が入った壺3つを買って自宅へと戻ったのであった。

15:アーリア◆Z.:2018/08/01(水) 22:49

(10)


 翌日(この世界に来てから3日目)。
 私は早速、ザクセランド王国に向かうことにしたので、王都バイレンシティの馬車駅に来ていた。

「すみません。ザクセランド王国まで行きたいのですけど」

 駅馬車の乗車券販売窓口の職員にそう言った。

「ザクセランド? で、具体的にどこよ」

 ああそうか。ザクセランド王国と言っても色々と町はあるだろうし、町ごとに値段は異なってくるであろう。

「ええっと……」

 私はポケットからとある紙を取り出して、行くべき場所を確かめた。尚、その紙は日本語で書かれている……と言うよりそもそもこの世界にやって来て、この紙以外についても何故か日本語で会話しているし、文書も何故か日本語で読めているのである。とても不思議だ。
 ところで、いま手にした紙は日本から持ってきたものであるので、当然、日本語で書かれている。

「どうやら……フレノバナという町ですね? 」

「フレノバナね。はい銀貨90枚ね」

「あ……、出来れば急行馬車をお願いしたのですが」

「急行馬車は金貨1枚と銀貨75枚だよ」

 窓口の職員にそう言われて、私は金貨2枚を差し出した。

「はい。銀貨25枚のお釣りだよ。ザクセランド王国方面行きの急行馬車は2番と書かれた札のある場所から出発する馬車だから間違いないように」

「ありがとうございます」

 私はそう言って、窓口の職員に言われた通り2番と書かれた札がある場所へと向かったところ、既にそこには馬車が停車していたので、私はその馬車に乗り込んだ。
 それからしばらくして、馬車は出発したのである。

 まあ、今回は急行馬車であるので少なくともザクセランド王国には3日もしないで着くだろう(昨日の行商人は、ザクセランド王国までは急行馬車ではない馬車で3日と言ったものだから、具体的にザクセランド王国領内のどこまでの距離で3日と言っているのかはわからないのだ)。

16:アーリア◆Z.:2018/08/01(水) 23:27

(11)


 異世界に飛ばされて3日目にして俺は、王都バイレンシティの近隣に来ていた。と言うも教官役の騎士がある程度の実践も必要であるということで、魔物狩りをしようということになったのである。
 
 今回はまだ魔法についての訓練は一切していないので、剣術による討伐となるらしい。

「よし! 今日は「デカ蜂」という魔物を中心に狩っていくぞ」

 教官役の騎士はそう言った。
 デカ蜂……って、蜂だよな? とすると、本当にデカい蜂が針を突き刺して攻撃してくるのではないか。

 そう考えると怖くて、逃げたくなる。

「まだこっちに来て3日しか経ってないけど、1匹でも多く倒せると良いね!

「夢の中で魔物討伐か……。なんか今までプレイしてきたゲームより現実味があって面白いじゃん! このまま夢が醒めないで欲しいよね」

「魔物討伐…………頑張る」

 女性3人は相変わらず精神に余裕があるようで……。本当にその精神的余裕を分けてくれませんかね? 本当に。

 そして、しばらく森の中を進み、俺はヤバいものを見てしまった。本当にこれはヤバい。
 と言うのも、日本の平均的な一軒家程度の大きさのある蜂の巣があるのを見てしまったのである。

「え……? 」

 俺はそれしか声を出せなかった。
 一軒家並みの蜂の巣に、そこに群がる蜂の大きさは、パッと見でトイプードルくらいはあるのではないだろうか? 本当にデカい蜂だよ。スズメバチが可愛いくらいだ。

「さて、これがデカ蜂だ。今日はこの蜂の巣に群がっているやつを全部討伐するまで帰さないからな」

 えっ……? 
 ちょっと……勘弁してくれよ。俺死んじゃうよ!

「よし、皆で協力して1匹残らず倒そうね! 」

「さすが、夢の中だね。こんないデカい蜂がいるなんて」

「がっ……頑張る」

 そして、女性3人組はこの光景を目撃しても、相変わらず余裕である。
 本当にマジで、その精神的余裕をわけてくれない? マジで。

17:アーリア◆Z.:2018/08/01(水) 23:29

王都バイレンシティの近隣に来ていた。

王都バイレンシティの近隣にある森に来ていた。




以上の通り訂正。

18:総督:2018/08/01(水) 23:42

明らかに拉致なのだが王国の法律はどうなってるの?

19:アーリア◆Z.:2018/08/01(水) 23:44

>>18
王様=法

と思ってくれれば。

20:総督:2018/08/02(木) 00:21

>>19
絶対王政ですか。ありがとうございます

21:アーリア◆Z.:2018/10/27(土) 01:06

(12)

「これで、13匹目だぜ! 」

 俺は今、とても最高の気分だった。
 と言うのも意外と容易くこの「デカ蜂」とやらを狩ることができているからのだ。

「ミサトもやればできるじゃん! 」

「夢の中なんだしさ! 張り切っちゃおうよ」

「ミサト……頑張ったね」

 女子生徒3人も無事だったようである。俺としても良かったと思うところだ。とは言っても、俺よりも士気は高いし既に実力の差もある程度ついているかもしれないが。

「ま、まさか、『デカ蜂』の巣を4つも壊滅させるとはな。これぞまさに勇者としてのパワーなのだろうか」

 教官役の騎士はそう言いながら、少し離れたところから俺たちを眺めていた。今回の戦果は結構、良かったのだろうか?
 ちょっとばかり嬉しいかも……?

 こうして、俺たちは良い戦果を得て王宮へと戻るのであった。



 こんなに乗り心地の悪い乗り物は初めてである。
 と言うのも私は今、ザクセランド王国のフレノバナまで行くため急行馬車に乗っているのだ。

「あんた、酔っちまったのか。まあ、急行馬車なんかに乗っちまったのが運の尽きってやつだね」

 私ともう一人の乗客である男が、小馬鹿にした感じでそう言ってきた。
 なるほど、急行馬車はこの世界の人間でもよく酔うものなのだろう。

「ええ。あまり馬車には乗らないものでしてね。まさかこんなに乗り心地が悪くて酔うとは思いませんでしたよ」

「そうか。なら尚更、馬車慣れもしてないわけだから急行馬車なんかに乗っちまったからさぞ地獄なんだろうね? 」

「馬車慣れしておくべきでしたよ本当に」

 そもそも現代日本に生まれたならば、馬車に乗る機会というもの自体なかなかないわけなので仕方ない話である。そして、この世界に来てまだ日は極めて浅い。

「まあ、急ぎなら仕方ないが今後しばらくはなるべく急行馬車を使わずに済む予定を立てるべきだね」

「仰るとおりです」

 とはいえ、既に半日(6時間)ほどひたすら乗り続けているので、そろそろ休憩になるのではないかと期待している。

 私の期待通り、馬車駅(急行馬車停車駅)に到着し、馬車を引く馬の交換となったので、わずかながら外を歩く時間ができた。
 尚、通常の馬車用の馬は質の悪いものらしくあまり体力がないことから、単に速度が遅いのみならず、頻繁に馬を交換するのでいくつもの馬車駅に停車することになるらしい。

 そして、馬の交換作業が終わり再び馬車が動き出した。
 一緒に乗っている男がいうには、今日中にはザクセランド王国領内に入るとのことである。


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