てんさいの毎日

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14:Rika◆ck:2018/08/03(金) 17:13

「ふわぁぁ……」

 翌朝、志麻はいつも通りホームルームギリギリの時間に教室に入ってくる。
 夜更かししていたからか、かなり眠そうだ。

「志麻、また夜更かし?」

「うん。夜中の12時までスマホいじっててさー」

 椿の問いかけに、志麻は嘘を交えながら答えた。
 実際は、母親に深夜までの勉強を強要させられたのが原因であるが。

「もー、ちゃんと寝なよ?」

 椿は少し怒ったような表情で言う。

「善処しまーす」

 それに対し、志麻はやる気のなさそうな顔で答えた。
 ……その表情の裏では、「勉強させられてるからそんなの無理なんだけどねー」と考えていたのだが。

そんな志麻の様子に、椿は呆れたような顔をしてため息をつく。「ああ、言っても意味が無いだろな」と。

「おはよう!」

 その時、教室の扉が開いて藤吉が入ってくる。
 藤吉の挨拶に対し、児童達は「おはよーございまーす……」と活気のない挨拶を返した。

「はは……もうちょっと元気のある挨拶を返して欲しいかな」

 藤吉は児童達の顔を見ながら苦笑いをした。
 そろそろ暑くなってくる時期。児童達のやる気がなくなるのは分かるが、こうもやる気がないと藤吉の方も気分が落ちる。

「じゃあ、そろそろホームルームを始めます。……大葉さん、早くランドセル置いてきて」

「はいはーい」

 さっき来たばっかりの志麻は、まだランドセルから教科書を全部出していなかった。
 志麻は、藤吉に注意されてようやく教科書を机の引き出しの中に入れる。
 そして、ランドセルを後ろの棚の中に押し込んだ。

「気を取り直して、ホームルームを始めます」



「――――はい、ホームルーム終わり。休憩と言いたいところですが、ちょっと先生から話があります」

「えー、なにー?」

「誰かやらかした?」

 出席確認を終えて、藤吉が言う。
 こういう時は大抵誰かが悪いことをした時である。児童達は何となく察しがついてるらしく、教室がざわざわとしだした。

「……うん、まあやらかしてるね。森さん、ちょっと来て」

「はい……」

 森と呼ばれた児童は、立ち上がって藤吉の所へ歩いていく。

「うわ、上靴めっちゃ汚れてるじゃん」

「かわいそ……」

 そう、彼女が履いている上靴には泥がこびりついており、かなり酷い状態であったのだ。

「誰か、心当たりはないか?」

 教室はシーンと静まり返る。
 本当にこの教室に犯人はいないか。もしくは、犯人がいるのにも関わらず、名乗り出ないか。

「……いるんだろ」

 その時、祐樹が呟いた。
 大きい声ではなかったが、シーンとした教室に入ってくる。十分響くものだったので、クラス中の視線が祐樹に集中する。

「俺たちさ、最悪のクラスって呼ばれてんじゃん。んで、その通りだろ。そんなクラスの奴がこんな目に逢うってことは、俺たちしか犯人いなくね?」

 実際のところ、祐樹の主張は間違ってはいなかった。
 喧嘩が勃発するこのクラス。それから、陰湿さも他のクラスと比べて圧倒的。

「ね、先生。1、2時間目の学活、犯人探しにしない?」

 誰も喋れずにいると、庵が藤吉にそう提案した。

「……ああ。予定もなかったし、いいよ」

 このまま犯人が見つからないのも胸糞悪い。藤吉はそう思い、その提案を受け入れた。

「だってさ。皆、学級会の体形にして」

 庵の指示を聞いて、児童達は机を動かし、学級会を行う体形にする。

「司会者はあたしと……男子誰か出てくれる?」

「……俺が、やる」

 庵が言うと、祐樹が名乗り出た。

「祐樹ね、了解。さ、話し合い始めよ」

 こうして、突然の学級会は始まった。


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